説明

反射防止積層体

【課題】電離放射線硬化性基を有する中空シリカ微粒子を含む電離放射線硬化型樹脂組成物のコーティング層を形成した、低屈折率でかつ機械的強度に優れる反射防止積層体を提供する。
【解決手段】光透過性基材上に、少なくとも屈折率が1.45以下の低屈折率層が設けられてなる反射防止積層体であって、前記低屈折率層が、電離放射線硬化型樹脂組成物と、外殻層を有し、内部が多孔質または空洞であるシリカ微粒子とを含んでなり、前記シリカ微粒子の一部もしくは全部が、電離放射線硬化性基を有するシランカップリング剤により、そのシリカ微粒子表面の少なくとも一部が処理されてなる、反射防止積層体とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電離放射線硬化性基を有する中空シリカ微粒子を含む電離放射線硬化型樹脂組成物のコーティング層を形成した、低屈折率でかつ機械的強度に優れる反射防止積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレー(LCD)や陰極管表示装置(CRT)等の画像表示装置の表示面は、その視認性を高めるために、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射が少ないことが求められる。
【0003】
従来、透明な物体の表面を屈折率の小さい透明皮膜で被覆することにより反射率が小さくなる現象が知られている。このような現象を利用した反射防止膜を画像表示装置の表示面に設けることにより、視認性を向上させることが可能である。反射防止膜は、表示面上に低屈折率層を設けた単層構成のものや、または、反射防止性能を向上させるために表示面の上に中〜高屈折率層を一層ないし複数層設け、その上に低屈折率層を設けた多層構成のものがある。
【0004】
単層型の反射防止膜は、多層型のものと比べて層構成が単純なことから、生産性やコストパフォーマンスに優れる。一方、多層型の反射防止膜は、層構成を組み合わせて反射防止性能を向上させることが可能であり、単層型と比べて高性能化を図り易い。
【0005】
低屈折率層を形成する方法として、一般に気相法と塗布法とに大別される。気相法には真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的方法と、CVD法等の化学的方法とがあり、塗布法にはロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、スプレー法、浸漬法、スクリーン印刷法等がある。
【0006】
気相法により低屈折率層を形成する場合には、高機能かつ高品質な透明薄膜形成が可能である一方で、高真空系での精密な雰囲気制御を必要とする。また、特殊な加熱装置またはイオン発生加速装置を用いるために製造装置が複雑で大型化し、必然的に製造コストが高くなるという問題がある。また、気相法による場合には、大面積の透明薄膜を形成したり、複雑な形状を有するフィルム等の表面に透明薄膜を均一に形成することが困難である。
【0007】
一方、塗布法のうちスプレー法により形成する場合には、塗工液の利用効率が悪く、成膜条件の制御が困難である等の問題がある。ロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、浸漬法、およびスクリーン印刷法等による場合には、成膜原料の利用効率が良く大量生産や設備コスト面で優れるものの、一般的に、塗布法により得られる透明薄膜は、気相法により得られるものと比較して、機能や品質が劣るという問題点がある。
【0008】
塗布法としては、分子中にフッ素原子を含むポリマーからなる塗工液を、基材の表面に塗布し乾燥させるか、あるいは、分子中に電離放射線や熱で硬化する官能基を含むモノマーからなる塗工液を、基材の表面に塗布、乾燥した後、UV照射や熱などによって該モノマーを硬化させて低屈折率層を形成することが知られている。
【0009】
フッ素原子を含むバインダーからなる塗膜は、フッ素原子含有量が高い程屈折率が低くなる。また、塗膜のフッ素原子含有量が高くなると、防汚性が向上する。しかしながら、塗膜中のフッ素原子含有量が高くなると、塗膜の硬度や強度が低下するという問題がある。
【0010】
屈折率を低下させる他の方法として、屈折率が1である空気を、可視光線の波長以下の大きさにして、塗膜内部に含有させることによって、塗膜全体の屈折率を低下させることが知られている。
【0011】
特開2000−64601号公報(特許文献1)には、フッ素原子含有ポリマーからなる塗膜中に平均径200nm以下のミクロボイドを形成することにより、非常に微小な多孔質構造を有する低屈折率層が開示されている。しかしながら、屈折率を下げるためにミクロボイドの量を多くし過ぎると、塗膜の硬度や強度が低下するといった問題があった。
【0012】
また、特開平6−3501号公報(特許文献2)には、抽出や加熱分解などで発生するガスによって形成される空隙などを利用することにより、非常に微小な多孔質構造を有する低屈折率層が開示されている。しかしながら、上記と同様に、これら空隙の量を多くしすぎると塗膜の硬度や強度が低下するといった問題があった。
【0013】
さらに、特開2001−167637号公報(特許文献3)や特開2002−225866号公報(特許文献4)には、内部に空洞を有する中空シリカ等の中空微粒子を、アルコキシシランの加水分解重縮合物から得られる無機成分を含むバインダー中に分散させた低屈折率層が開示されている。この低屈折率層は、多数のミクロボイドを有する低屈折率層と同等の効果を有し、かつミクロボイドがシリカ等の硬い外殻に保護された形となっているため、ある程度の塗膜硬度を有する。
【0014】
しかしながら、無機成分を含むバインダーにより硬い塗膜が形成される反面、外部からの衝撃に対して脆いために、塗膜の機械強度、特に耐擦傷性が劣るといった問題があった。
【0015】
さらに、中空シリカ粒子の凝集効果により塗膜単独の場合に比べてより硬い塗膜が得られる反面、脆性も増すため、低屈折率でかつ機械強度に優れる塗膜の実現は困難であった。
【0016】
本願出願人がした先の出願では、ミクロボイドの形成効果が期待できる多孔質微粒子や、粒子同士の凝集により空隙が形成された微粒子凝集体を用い、かつバインダー成分に膜の機械物性(弾性等)の制御が容易な電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることにより、機械強度が改善された反射防止膜が得られることを提案している。
【0017】
しかしながら、シリカ粒子の添加量をある程度増やすとシリカ微粒子の凝集が起こり、塗膜の機械強度が一気に低下してしまうことから、依然として低屈折率を有し、かつ機械強度に優れる反射防止膜の要求がある。
【特許文献1】特開2000−64601号公報
【特許文献2】特開平6−3501号公報
【特許文献3】特開2001−167637号公報
【特許文献4】特開2002−225866号公報
【発明の概要】
【0018】
本発明は上記問題に鑑みて成し遂げられたものであり、その目的とするところは、電離放射線硬化性基を有する中空シリカ微粒子を含む電離放射線硬化型樹脂組成物のコーティング層を形成した、低屈折率でかつ機械的強度に優れる反射防止積層体を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明による反射防止積層体は、光透過性基材上に、少なくとも屈折率が1.45以下の低屈折率層が設けられてなる反射防止積層体であって、
前記低屈折率層が、電離放射線硬化型樹脂組成物と、外殻層を有し、内部が多孔質または空洞であるシリカ微粒子とを含んでなり、
前記シリカ微粒子の一部もしくは全部が、電離放射線硬化性基を有するシランカップリング剤により、そのシリカ微粒子表面の少なくとも一部が処理されてなるものである。
【0019】
本発明によれば、上記シリカ微粒子は、微細な空隙を外部や内部に有しており、気体、例えば、屈折率1の空気が充填されているので、それ自身の屈折率が低く、塗膜中に集合体を形成せずに均一に分散した場合でも、塗膜の屈折率を低下させることができる。即ち、空隙を有するシリカ微粒子は、内部に気体を有しない通常のシリカ微粒子(屈折率n=1.46程度)に比べると、屈折率が1.20〜1.45と低く、塗膜の屈折率を1.45以下、好ましくは1.40以下にすることができる。さらに、空隙が微粒子の外殻に保護されているため、硬化した樹脂組成物中に分散している微粒子の凝集力および硬さによって、形成された塗膜が引き締められ、塗膜の機械強度が向上する。
【0020】
また、これらの微粒子は塗膜中でわずかに凝集し、特に塗膜の最表面に可視光の波長以下程度の細かな凹凸を形成する。その結果として、塗膜内部や表面にナノポーラス構造が形成されるため、通常の平坦な膜となる樹脂のみに比べて、空気が取り込まれる構造が実現される。そのため、微粒子の持つ屈折率の効果以上の効果が期待できる。また、樹脂組成物に対するシリカ微粒子含有量を非常に多くした場合でも、塗膜の硬度および強度の著しい低下を避けることができる。
【0021】
さらに、シリカ微粒子表面の少なくとも一部に、電離放射線硬化性基を有するシランカップリング剤が導入されているため、バインダー成分との親和性が向上し、塗工液や塗膜中へのシリカ微粒子の均一分散が可能となる。
【0022】
またさらに、この表面に導入されたシランカップリング剤の電離放射線硬化性基は、バインダー成分の前記電離放射線硬化性基と直接、および/または遊離シランカップリング剤の電離放射線硬化性基を介して、化学反応により共有結合を形成するため、シリカ微粒子がバインダー成分の架橋剤となり、樹脂組成物に対するシリカ微粒子の量を非常に多くした場合でも、塗膜の硬度および強度の著しい低下を避けることができ、屈折率が低くかつ機械強度に優れる低屈折率層を実現できる。
【発明の具体的説明】
【0023】
本発明による反射防止積層体を構成する低屈折率層は、バインダー成分として機能する電離放射線硬化型樹脂組成物とシリカ微粒子とを含んでなるものである。以下、これらの各成分について説明する。
【0024】
1.電離放射線硬化型樹脂組成物
本発明において用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物は、1分子中に少なくとも1つ以上の水素結合形成基と、3個以上の電離放射線で硬化する官能基(単に「電離放射線硬化性基」と呼ぶことがある)とを有する化合物が含まれることが望ましい。このように、樹脂組成物が、電離放射線で硬化する電離放射線硬化性基と、単独であるいは硬化剤との併用により熱硬化する水素結合形成基とを有することにより、樹脂組成物からなる塗工液を被塗工体の表面に塗布し、乾燥し、電離放射線の照射または電離放射線の照射と加熱とを行った際に、塗膜内に架橋結合等の化学結合が形成され、塗膜を効率よく硬化させることができる。
【0025】
本願明細書中の「電離放射線硬化性基」とは、電離放射線の照射により重合反応やまたは架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、光ラジカル重合、光カチオン重合、光アニオン重合のような重合反応、あるいは、光二量化を経て進行する付加重合または縮重合等の反応形式により反応が進行するものが挙げられる。特に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合は、紫外線や電子線等の電離放射線の照射により、直接または開始剤の作用を受けて間接的に、光ラジカル重合反応を生じさせることができるため、光硬化工程を含む取り扱いが比較的容易である。これらの中でも(メタ)アクリロイル基は生産性に優れ、また、硬化後の塗膜の機械強度のコントロールが容易であるため好ましい。
【0026】
本願明細書中の「水素結合形成基」とは、加熱によって同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応または架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、等を例示することができる。
【0027】
これらの官能基の中でも水酸基は、表面処理シリカ微粒子との親和性にも優れるため、表面処理シリカ微粒子のバインダー中での分散性を向上させることができる。水酸基は、バインダー成分への導入が容易であり、また、シリカ微粒子表面の水酸基に吸着するため、塗工液や塗膜中に均一に分散させることができる。したがって、塗工液の寿命が向上するとともに、シリカ微粒子の凝集による塗膜の透明性低下や膜強度の低下が起こらず、均一な塗膜を形成することができる。
【0028】
さらに、硬化に際しては、単独あるいは硬化剤と併用して熱硬化させることにより、バインダー成分同士、あるいはバインダーとシリカ微粒子表面の水酸基とが、共有結合を形成して、塗膜強度の更なる向上を図ることができる。この場合、シリカ微粒子は、バインダー中で架橋剤として作用する。
【0029】
上記の電離放射線硬化型樹脂組成物に好ましく使用されるモノマー類としては、水酸基等の水素結合形成基を持つものが用いられる。水素結合形成基は、合成時に副生され、モノマーの一部として混在するものであってもよい。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート誘導体やジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、等を例示することができる。
【0030】
これらに加え、OH残基を有するエポキシアクリレート樹脂(共栄社化学製「エポキシエステル」や昭和高分子製「リポキシ」等)や、各種イソシアナートと水酸基を有するモノマーとが、ウレタン結合を介して重付加によって得られるウレタンアクリレート樹脂(日本合成化学工業製「紫光」や共栄社化学製「ウレタンアクリレート」)等の、水素結合形成基を含有する数平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算数平均分子量)が2万以下のオリゴマー類も好ましく使用できる。
【0031】
これらのモノマー類やオリゴマー類は、塗膜の架橋密度を高める効果に優れていることに加え、数平均分子量が2万以下と小さいので流動性が高く、塗工適性に優れる。
【0032】
さらに、必要に応じて、水素結合形成基を有するモノマーを含む(共)重合体であって、主鎖や側鎖に(メタ)アクリレート基を有する数平均分子量2万以上の反応性ポリマーなども好ましく使用することができる。これらの反応性ポリマーは、例えば、「マクロモノマー」(東亞合成製)等の市販品を使用することもでき、また、メタクリル酸メチルとグリシジルメタクリレートとの共重合体をあらかじめ重合しておき、後から共重合体のグリシジル基と、メタクリル酸やアクリル酸のカルボキシル基とを縮合させることで、(メタ)アクリレート基を有する反応性ポリマーを得てもよい。
【0033】
これら分子量が大きい成分を含むことにより、防眩層などの複雑な形状の基材に対する成膜性が向上し、また硬化時の体積収縮による反射防止積層体のカールや反りが低減される。
【0034】
上記したモノマー、オリゴマー、ポリマー、および、上記に属しないモノマー、オリゴマー、ポリマーを適宜組み合わせて、成膜性、塗工適性、電離放射線硬化の架橋密度、熱硬化性を有する水素結合形成基の含有量等、の諸性質を調節することができる。例えば、モノマー、オリゴマーにより架橋密度と加工適性が向上し、ポリマーによりコーティング組成物の成膜性が向上する。
【0035】
本発明においては、数平均分子量が2万以下のモノマーおよび/またはオリゴマーと数平均分子量が2万以上のポリマーを適宜組み合わせ、塗膜の諸性質を容易に調節することが可能である。
【0036】
2.シリカ微粒子
本願明細書中の「外殻層を有し、内部が多孔質または空洞となっているシリカ微粒子」とは、シリカ微粒子の内部に気体が充填された構造および/または気体を含む多孔質構造を有するものを意味する。気体が屈折率1.0の空気である場合、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の空気の占有率に比例して屈折率が低下する。
【0037】
本発明による反射防止積層体に使用するシリカ微粒子は、屈折率が1.20〜1.44であればよく、特に限定されるものではない。このようなシリカ微粒子としては、特開平7−133105号公報、特開2001−233611号公報等に開示された複合酸化物ゾルまたは中空シリカ微粒子が挙げられる。このような中空シリカ微粒子は、具体的には、以下の第1〜第3工程により製造することができる。本発明の好ましい態様においては、さらに第4工程に付してもよい。
【0038】
すなわち、第1工程として、予めシリカ原料およびシリカ以外の無機酸化物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、両者の混合水溶液を調製する。次に、目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、得られた上記水溶液を、pH10以上のアルカリ水溶液中に撹拌しながら徐々に添加する。なお、第1工程の代わりに、予めシード粒子を含む分散液を出発原料とすることも可能である。
【0039】
次に、第2工程として、上記の工程で得られた複合酸化物からなるコロイド粒子から、珪素と酸素以外の元素の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的には、複合酸化物中の元素を、鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、あるいは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
【0040】
続いて、第3工程として、この一部元素が除去された複合酸化物のコロイド粒子に、加水分解性の有機ケイ素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、コロイド粒子の表面を加水分解性有機ケイ素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆する。このようにして、上記公報に記載の複合酸化物ゾルを製造することができる。
【0041】
さらに、本発明においては、第4工程として、上記で得られたシリカ微粒子を50〜300℃の範囲で水熱処理することが好ましい。上記の製造工程により得られたシリカ微粒子は、その表面に、イオン性不純物として各種低分子化合物がイオン性不純物として存在する。これら不純物は、シリカ微粒子の原料中に含まれていたものや、製造工程で加えられた添加物等に起因するものである。本発明においては、このイオン性不純物を、水熱処理により除去することにより、シリカ微粒子表面の不純物量を所定量以下とするものである。
【0042】
具体的には、シリカ微粒子中のアルカリ金属酸化物の含有量は、10ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは2ppm以下である。特に、アルカリ金属酸化物の含有量を5ppm以下とすることにより、シリカ微粒子を含む塗工液の安定性が向上する。すなわち、塗工液を長期保存したような場合でも、塗工液の粘度上昇が抑えられ、優れた保存安定性を実現できる。また、アルカリ金属酸化物の含有量を上記の範囲とすることにより、シリカ微粒子表面とシランカップリング剤との反応がより強固に起こると推察され、結果的に塗膜強度も向上する。アルカリ金属酸化物の含有量が10ppmを越えると、膜形成性が低下し、得られる塗膜の強度が不充分となる。なお、アルカリ金属酸化物の含有量は、MO(Mはアルカリ金属元素を表す)としての含有量を意味し、一般的な原子吸光法またはICP MS測定によって、含有量を測定できる。
【0043】
また、シリカ系微粒子中のアンモニア(アンモニウムイオンを含む)の含有量は、2000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下である。特に、アンモニアの含有量を1500ppm以下とすることにより、シリカ微粒子を含む塗工液の安定性が向上する。すなわち、塗工液を長期保存したような場合でも、塗工液の粘度上昇が抑えられ、優れた保存安定性を実現できる。また、アンモニアの含有量を上記の範囲とすることにより、シリカ微粒子表面とシランカップリング剤との反応がより強固に起こると推察され、結果的に塗膜強度も向上する。アンモニアの含有量が2000ppmを越えると、上記と同様に、膜形成性が低下し、得られる塗膜の強度が不充分となる。なお、シリカ系微粒子中のアンモニア(アンモニウムイオンを含む)の含有量は、NHとしての含有量を意味し、一般的な化学分析法によって、含有量を測定できる。
【0044】
シリカ微粒子中の不純物化合物の含有量を上記範囲とするため、本発明においては、第4工程として、水熱処理工程を複数回繰り返しても良い。水熱処理を繰返すことによって、得られるシリカ系微粒子中のアルカリ金属酸化物および/またはアンモニア(アンモニウムイオンを含む)の含有量を低減することができる。
【0045】
水熱処理温度が50℃未満の場合は、最終的に得られるシリカ微粒子またはシリカ微粒子分散液中のアルカリ金属酸化物および/またはアンモニアの含有量が効果的に低減しないため、塗工液の保存安定性が向上せず、また被膜強度の向上が期待できない。一方、水熱処理温度が300℃を超えると、塗工液の保存安定性や被膜強度が向上しないばかりか、場合によってはシリカ微粒子が凝集することがある。
【0046】
本発明において用いられるシリカ微粒子の平均粒子径は、5〜100nm、好ましくは30〜60nmの範囲であることが望ましい。使用されるシリカ微粒子は、形成される塗膜の厚さに応じて適宜選択され、塗膜の厚みの2/3〜1/10の範囲であることが望ましい。
【0047】
シリカ微粒子の平均粒子径が5〜100nmの範囲にある場合、シリカ微粒子の外殻層は1〜30nm、好ましくは2〜20nmの範囲にあることが望ましい。外殻層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、バインダー成分などが微粒子内部に侵入して内部の空洞や多孔質構造が減少し、低屈折率の効果が充分得られないことがある。また、外殻層の厚さが30nmを越えると、微粒子の多孔性が低下し低屈折率の効果が充分得られなくなることがある。
【0048】
本発明におけるシリカ微粒子は、シリカの硬い外殻層の内部に空洞や多孔質構造を持つため、バインダー成分と組合せた時の膜強度も向上し、低屈折率層として必要な屈折率1.45以下を容易に達成できる。
【0049】
上記シリカ微粒子は、さらに、アクリロイル基および/あるいはメタクリロイル基を有するシランカップリング剤によって表面処理がなされているものである。シリカ微粒子の表面処理によって、主に有機成分から成る電離放射線硬化型樹脂組成物バインダーに対する親和性が向上し、塗工液や塗膜中でのシリカ微粒子の均一分散が可能となり、シリカ微粒子同士の凝集、大粒子化による透明性や塗膜強度の低下を防ぐことができる。
【0050】
上記アクリロイル基および/あるいはメタクリロイル基を有するシランカップリング剤は、電離放射線硬化性を有しており、バインダー成分の電離放射線硬化性基と容易に反応し、塗膜中のシリカ微粒子がバインダー成分に固定される。すなわち、シリカ微粒子がバインダー中で架橋剤として作用する。これにより、膜全体の引き締め効果による塗膜の硬度が向上し、またバインダー成分が本来有する柔軟性を残したまま硬さを付与することができる。したがって、塗膜がそれ自体変形することにより、外部衝撃に対する吸収力や変形後の復元力を有するため、傷の発生を抑えることができる。
【0051】
本発明にあっては、シリカ微粒子中の不純物化合物、すなわち、アルカリ金属酸化物およびアンモニアの含有量を上記範囲とし、このような不純物の少ないシリカ微粒子にシランカップリング剤を導入することにより、より塗膜強度に優れる反射防止積層体を得ることができる。この理由は定かではないが、不純物を所定量以下にすることでシリカ微粒子表面とシランカップリング剤との反応がより強固に起こるためと推察される。
【0052】
シリカ微粒子の表面処理に必要なシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを例示することができる。
【0053】
シリカ微粒子へのシランカップリング剤の処理量は、シリカ微粒子に対して1〜50重量、特に2〜30重量%の範囲であることが好ましい。シリカ微粒子へのシランカップリング剤の処理量が1重量%未満では、電離放射線硬化型樹脂組成物バインダーに対するシリカ微粒子の親和性が不十分となる。一方、50重量%を超えると、シリカ微粒子の処理に使用されなかった遊離のシランカップリング剤が多量に存在するため、塗膜が硬くなり、外部衝撃に対する復元性が低下して脆くなり、割れや傷の発生が増す。
【0054】
シリカ微粒子へのシランカップリング剤の処理方法としては、有機溶剤への分散性と、電離放射線硬化型樹脂組成物との親和性とを向上させることができれば、特に制限されるものではなく、従来の方法により処理することができる。例えば、シリカ粒子の分散液に所定量のシランカップリング剤を加え、必要に応じて、酸またはアルカリ処理、もしくは加熱処理をすることにより、シリカ微粒子の表面処理を行うことができる。
【0055】
本発明においては、全てのシランカップリング剤がシリカ微粒子表面に導入されず、単独あるいは縮合体として塗工液中に存在してもよい。シランカップリング剤は、バインダー成分やシリカ微粒子との親和性に優れるため、シリカ微粒子を塗工液中で安定的に分散させることができる。また、シランカップリング剤は、電離放射線や加熱による硬化の際に、膜中に取りこまれて架橋剤として作用するため、シランカップリング剤全量がシリカ微粒子表面に導入された場合と比べて、塗膜の性能が向上する。
【0056】
本発明による反射防止積層体を構成する低屈折率層は、電離放射線硬化型樹脂組成物100重量部に対して、上記表面処理シリカ微粒子が70〜250重量部、好ましくは80〜220重量部、より好ましくは100〜200重量部の範囲で含まれている。70重量部以下の場合は所望の屈折率が得られず、250重量部以上ではシリカ微粒子に対するバインダー量が低下し、塗膜強度が低下する。
【0057】
3.その他の成分
本発明による反射防止積層体の低屈折率層は、さらに、電離放射線硬化型樹脂組成物およびシリカ微粒子の何れに対しても相溶性を有するフッ素系および/またはケイ素系化合物を含んでなることが好ましい。このようにフッ素系化合物等を含むことにより、塗膜表面を平坦化することができ、また、反射防止積層体に必要とされる防汚性や耐擦傷性の向上に効果がある、滑り性を付与することができる。なお、「相溶性」とは、フッ素系および/またはケイ素化合物を、電離放射線硬化型樹脂組成物やシリカ微粒子が存在する塗膜中に、上記の添加効果が確認できる程度の量を加えた場合でも、塗膜の白濁やヘイズの上昇などによる透明性の低下が確認できない程度の親和性を有することを意味する。
【0058】
本発明においては、さらに、フッ素系および/またはケイ素化合物の少なくとも一部が、電離放射線硬化型樹脂組成物と、化学反応により共有結合を形成して塗膜最表面に固定されていることが好ましい。これにより、滑り性を安定的に付与でき、反射防止積層体が製品化後に必要となる、長期に渡り防汚性や耐擦傷性を維持することができる。
【0059】
上記フッ素系化合物としては、C2d+1 (dは1〜21の整数)で表されるパーフルオロアルキル基、−(CF2CF)g−(gは1〜50の整数)で表されるパーフルオロアルキレン基、またはF−(−CF(CF)CFO−)−CF(CF)(ここで、eは1〜50の整数)で表されるパーフルオロアルキルエーテル基、ならびに、CF=CFCFCF−、(CF2C=C(C25)−、および((CFCF)2C=C(CF)−等で例示されるパーフルオロアルケニル基を有することが好ましい。
【0060】
上記の官能基を含む化合物であれば、フッ素系化合物の構造は特に限定されるものではなく、例えば、含フッ素モノマーの重合体、または含フッ素モノマーと非フッ素モノマーの共重合体等を用いることもできる。それらの中でも特に、含フッ素モノマーの単独共重合体、または含フッ素モノマーと非フッ素モノマーとの共重合体のいずれかで構成される含フッ素系重合体セグメントと、非フッ素系重合体セグメント、とから成るブロック共重合体またはグラフト共重合体が好ましく用いられる。このような共重合体においては、含フッ素系重合体セグメントが、主に防汚性・撥水撥油性を高める機能を有し、一方、非フッ素系重合体セグメントが、バインダー成分との相溶性を高める、アンカー機能を有する。したがって、このような共重合体を用いた反射防止積層体においては、繰り返し表面を擦られた場合にもこれらのフッ素系化合物が除去されにくく、また、長期に渡り防汚性などの諸性能を維持できる。
【0061】
上記フッ素系化合物は市販の製品として入手することができ、例えば、日本油脂製モディパーFシリーズ、大日本インキ化学工業社製ディフェンサMCFシリーズ等が好ましく用いられる。
【0062】
上記フッ素系または/およびケイ素系化合物は、下記一般式、
【化1】

(式中、Raはメチル基などの炭素数1〜20のアルキル基を示し、Rbは非置換、もしくはアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、パーフルオロアルキル基、 パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキルエーテル基、または(メタ)アクリロイル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはポリエーテル変性基を示し、各Ra、Rbは互いに同一でも異なっていても良い。また、mは0〜200、nは0〜200の整数である。)
で示される構造を有することが好ましい。
【0063】
上記一般式のような基本骨格を持つポリジメチルシリコーンは、一般に表面張力が低く、撥水性や離型性に優れていることが知られているが、側鎖あるいは末端に種々の官能基を導入することで、更なる効果を付与することができる。例えば、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基、アルコキシ基等を導入することにより反応性を付与でき、前記電離放射線硬化型樹脂組成物との化学反応により共有結合を形成できる。また、パーフルオロアルキル基、 パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキルエーテル基を導入することで、耐油性や潤滑性等を付与でき、さらに、ポリエーテル変性基を導入することで、レベリング性や潤滑性を向上させることができる。
【0064】
このような化合物は、市販の製品として入手することができ、例えば、フルオロアルキル基をもつシリコーンオイルFL100(信越化学工業社製)や、ポリエーテル変性シリコーンオイルTSF4460 (商品名、GE東芝シリコーン社製)等、目的に合わせて種々の変性シリコーンオイルを入手できる。
【0065】
また本発明の好ましい態様として、フッ素系または/およびケイ素系化合物は下記一般式、
RaSiX4−n
(式中、Raはパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基、またはパーフルオロアルキルエーテル基を含む炭素数3〜1000の炭化水素基を示し、Xはメトキシ基、エトキシ基、もしくはプロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、もしくはメトキシエトキシ基等のオキシアルコキシ基、または、クロル基、ブロモ基もしくはヨード基等のハロゲン基等の加水分解性基であり、同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数を示す。)
で示される構造であってもよい。
【0066】
このような加水分解性基を含むことにより、特に無機成分、本発明においてはシリカ成分の水酸基と共有結合や水素結合を形成し易く、密着性を保持できるという効果がある。
【0067】
このような化合物として、具体的には、TSL8257(GE 東芝シリコーン社製)等のフルオロアルキルシランが挙げられる。
【0068】
上記フッ素系および/またはケイ素系化合物は、電離放射線硬化型樹脂組成物とシリカ微粒子の総重量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%の含有量であることが好ましい。含有量が0.01重量%未満であると、反射防止積層体に充分な防汚性や滑り性を付与することができず、また10重量%を超えると塗膜の強度を極端に低下させる。
【0069】
これらフッ素系化合物やケイ素系化合物は、期待する効果の程度に応じて単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。これらの化合物を適宜組み合わせることにより、防汚性、撥水撥油性、滑り性、耐擦傷性、耐久性、レベリング性等の諸性質を調節し、目的とする機能を発現させることができる。
【0070】
本発明による反射防止積層体を構成する低屈折率層は、必須成分として、上記の電離放射線硬化型樹脂組成物成分および上記表面処理シリカ微粒子成分を含有し、好ましい態様として、上記フッ素系および/またはケイ素化合物を含有するが、さらに必要に応じて、上記したような電離放射線硬化型樹脂組成物成分以外のバインダー成分も含まれていてもよい。さらに、低屈折率層形成用塗工液には、溶剤、重合開始剤、硬化剤、架橋剤、紫外線遮断剤、紫外線吸収剤、表面調整剤(レベリング剤)、あるいは、その他の成分が含まれていても良い。
【0071】
重合開始剤は、本発明においては必ずしも必要ではない。しかしながら、電離放射線硬化型樹脂組成物成分、表面処理シリカ微粒子成分、および、任意成分である他のバインダー成分の電離放射線硬化性基が、電離放射線照射によって直接重合反応を生じにくい場合には、バインダー成分およびシリカ微粒子の反応形式に合わせて、適切な開始剤を用いるのが好ましい。
【0072】
例えば、電離放射線硬化型樹脂組成物成分の電離放射線硬化性基が(メタ)アクリロイル基である場合には、光ラジカル重合開始剤を用いる。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物などが用いられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等を例示できる。これらのうちでも、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、および、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンは、少量でも電離放射線の照射による重合反応を開始し促進するので、本発明において好ましく用いられる。これらは、いずれか一方を単独で、または、両方を組み合わせて用いることができる。これらは市販のものを用いてもよく、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンは、イルガキュア184(Irgacure 184)の商品名でチバスペシャリティーケミカルズ(株)から入手できる。
【0073】
光ラジカル重合開始剤を用いる場合には、電離放射線硬化型樹脂組成物を主体とするバインダー成分の合計100重量部に対して、光ラジカル重合開始剤を通常は3〜15重量部の割合で配合する。
【0074】
硬化剤は、電離放射線硬化型樹脂組成物の一部に含まれる水素結合形成基、表面処理シリカ微粒子表面に存在するシラノール基、表面処理に用いたシランカップリング剤、およびその縮合体の未反応部などの熱硬化反応を促進するために配合される。
【0075】
熱硬化性極性基が水酸基である場合には、硬化剤として、通常、メチロールメラミン等の塩基性基を有する化合物、または、金属アルコキシド等の加水分解により水酸基を発生する加水分解性基を有する化合物が用いられる。塩基性基としては、アミン、ニトリル、アミド、イソシアネート基が好ましく用いられ、加水分解性基としては、アルコキシ基が好ましく用いられる。後者の場合は特に、下記一般式、
AlR3
(式中、残基Rは、同一でも異なってもよく、ハロゲン、炭素数10以下、好ましくは4以下のアルキル、アルコキシ、もしくはアシルオキシ、またはヒドロキシであり、これらの基は全部または一部がキレート配位子により置き換えられていてもよい。)
で表されるアルミニウム化合物および/またはその誘導体が、水酸基との相性が良く、特に好ましく用いられる。なお、上記化合物は、アルミニウム化合物および/またはそこから誘導されるオリゴマーおよび/または錯体、ならびに無機または有機酸のアルミニウム塩の中から選定することができる。
【0076】
具体的には、アルミニウム-sec- ブトキシド、アルミニウム-iso- プロポキシド、およびそのアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、アルカノールアミン類、グリコール類、およびその誘導体との錯体等を挙げることができる。
硬化剤を用いる場合には、電離放射線硬化型樹脂組成物を主体とするバインダー成分の合計100重量部に対して、硬化剤を通常は0.05〜30.0重量部の割合で配合する。
【0077】
4.低屈折率層形成用組成物
上記各成分からなる低屈折率層は、溶剤に上記の各成分を溶解させて低屈折率層形成用組成物を調整し、該組成物を一般的な調製法に従って分散処理することにより塗工液を作製し、該塗工液を基材に塗布乾燥することにより形成できる。
以下、溶剤、低屈折率層形成用組成物の調整方法、および塗膜の形成方法について説明する。
【0078】
(1)溶剤
バインダー成分として液状の電離放射線硬化型樹脂組成物を比較的多量に用いる場合には、組成物中のモノマーおよび/またはオリゴマーが、液状媒体としても機能し得るので、溶剤を用いなくても塗工液の状態に調製できる場合がある。従って、本発明において溶剤は必ずしも必要ではない。しかしながら、固形成分を溶解分散し、濃度を調整して、塗工適性に優れた塗工液を調製するために溶剤を使用する場合が多い。
【0079】
本発明における低屈折率層の固形成分を溶解分散するために用いる溶剤は、特に制限されず、種々の有機溶剤、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、またはキシレン等の芳香族炭化水素、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0080】
上記溶媒は、ケトン系の有機溶剤を用いるのが好ましい。ケトン系溶剤を用いて塗工液を調製すると、基材表面に容易に薄く均一に塗布することができ、かつ、塗工後において溶剤の蒸発速度が適度で乾燥むらを起こし難いので、均一な薄さの大面積塗膜を容易に得ることができる。
【0081】
反射防止積層体の支持層であるハードコート層に防眩層としての機能を付与するために、ハードコート層の表面を微細凹凸状に形成し、その上に、中屈折率層または高屈折率層を介して(または介さずに)、低屈折率層を形成する場合がある。塗工液をケトン系溶剤を用いて調製すると、このような微細凹凸状の表面にも均一に塗工することができ、塗工むらを防止できる。
【0082】
ケトン系溶剤としては、1種のケトンからなる単独溶剤、2種以上のケトンからなる混合溶剤、および、1種または2種以上のケトンと共に他の溶剤を含有しケトン溶剤としての性質を失っていないものを用いることができる。好ましくは、溶剤の70重量%以上、特に80重量%以上、1種または2種以上のケトンを含有するケトン系溶剤が用いられる。
【0083】
また、溶剤の量は、各成分を均一に溶解、分散することができ、調製後放置してもシリカ微粒子が凝集せず、かつ、塗工時に希薄すぎない濃度となるように適宜調節する。この条件が満たされる範囲内で溶剤の添加量を少なくして高濃度の塗工液を調製することが好ましい。そうすることにより、容量をとらない状態で保存でき、塗工作業時に適度な濃度に希釈して使用することができる。固形分と溶剤の合計量を100重量部とした時に、全固形分0.5〜50重量部に対して、溶剤を50〜95.5重量部、さらに好ましくは、全固形分10〜30重量部に対して、溶剤を70〜90重量部の割合で用いることにより、特に分散安定性に優れ、長期保存に適した低屈折率組成物が得られる。
【0084】
(2)組成物の調整
上記の各必須成分および各所望成分を任意の順序で混合して、低屈折率層形成用組成物を調製できる。表面処理シリカ微粒子がコロイド形状であれば、そのまま混合することが可能である。また、粉状であえば、得られた混合物にビーズ等の媒体を投入し、ペイントシェーカーやビーズミル等で適切に分散処理することにより、低屈折率層形成用組成物が得られる。
【0085】
(3)塗膜の形成
上記低屈折率層形成用組成物を用いて塗膜を形成するには、電離放射線硬化型樹脂組成物、表面処理シリカ微粒子、フッ素系および/またはケイ素系化合物、および各種添加剤を含有する塗工液を、被塗工体の表面に塗布、乾燥した後、電離放射線の照射および/または加熱により硬化させる。
【0086】
低屈折率層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等が挙げられる。
【0087】
5.基材
本発明による反射防止積層体を構成する基材は、板状であってもフィルム状であっても良い。好ましい基材としては、例えば、トリアセテートセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルホン、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、トリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリロニトリル、環状ポリオレフィン等の各種樹脂で形成したフィルム等を例示することができる。基材の厚さは、通常30〜200μm程度であり、好ましくは50〜200μmである。
【0088】
上記の低屈折率層形成用組成物の塗工液を被塗工体である基材の表面に直接、あるいはハードコート層等の他の層を介して塗布し、乾燥させることによって、熱硬化性を有する極性基の作用により被塗工体表面に対する密着性に優れた塗膜が得られる。
【0089】
6.反射防止積層体
次に、本発明の好ましい態様による反射防止積層体を説明する。
【0090】
本発明による反射防止積層体は、光透過性を有しかつ互いに屈折率の異なる層(光透過層)を一層以上積層してなる単層型または多層型の反射防止膜であって、そのうちの一層、特に低屈折率層が上記組成物により形成されている。なお、本発明においては、多層型反射防止膜の中で最も屈折率の高い層を「高屈折率層」と称し、最も屈折率の低い層を「低屈折率層」と称し、それ以外の中間的な屈折率を有する層を「中屈折率層」と称する。
【0091】
反射防止積層体により被覆される面、例えば画像表示装置の表示面に、本発明に用いられる組成物からなる塗膜を一層設けただけでも、被覆面自体の屈折率とその塗膜の屈折率とのバランスが良い場合には、反射防止効果が得られる。従って、本発明の反射防止積層体は、単層の反射防止積層体としても有効に機能する場合がある。
【0092】
本発明による反射防止積層体は、特に、液晶表示装置(LCD)や陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置の表示面やプロジェクションスクリーン等の画像形成媒体の表面を被覆する多層型反射防止膜の少なくとも一層、特に低屈折率層を形成するのに好適に用いられる。
【0093】
本発明による反射防止積層体の層構成は、所望の反射防止効果を得るために、低屈折率層を最表層として、低屈折率層単独、高屈折率層/低屈折率層、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層のいずれかであってよい。これら全ての層の膜厚は0.05〜0.15μmの範囲、好ましくは0.07〜0.12μmの範囲である。膜厚が上記範囲であると、充分な反射防止効果を得ることができる。
【0094】
上記反射防止積層体は基材に直接設けてもよく、あるいはハードコート層上に設けてもよい。外部からの光を拡散させて眩しさを低減させるために、ハードコート層の表面を凹凸形状にしてもよい。さらに、ハードコート層の内部に無機や有機のフィラーを分散させてハードコート層内部で光を散乱させる機能を持たせた防眩層(アンチグレア層)を設ける場合は、その防眩層上に反射防止積層体を設けてもよい。
【0095】
さらに、帯電防止性あるいは静電性を付与する必要がある場合には、導電層を基材フィルム上に設けてもよい。またハードコート層中に導電性粒子を含有させてもよい。さらにまた、屈折率が1.46〜2.00の範囲の中屈折率層や高屈折率層中に導電性粒子を分散させたり、屈折率の高い無機酸化物微粒子自体に導電性を有するものを用いることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0096】
さらに所望の屈折率が得られる範囲であれば、有機成分からなる帯電防止剤を低屈折率層に直接加えたり、低屈折率層の最表面に帯電防止層を反射防止積層体の性能に影響を与えない膜厚30nm以下の範囲で設けることもできる。
【0097】
表面抵抗は1012Ω/□以下であることが望ましいが、1012Ω/□以上であっても、いずれかの層に導電性を持たせることで帯電防止性能を付与することができ、導電性を有しないものに比べて埃付着しにくい。
以下、各層について詳細に説明する。
【0098】
(1)ハードコート層
ハードコート層は、電離放射線硬化型樹脂組成物を使用して形成する。なお、本明細書において、「ハードコート層」とは、JIS5600−5−4:1999で示される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を示すものをいう。
【0099】
ハードコート層を形成するのに好適な電離放射線硬化型樹脂組成物としては、好ましくはアクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエーテル樹脂、多価アルコール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート誘導体やジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどの多官能化合物などのモノマー類やエポキシアクリレートやウレタンアクリレートなどのオリゴマーなどを使用することができる。
【0100】
上記電離放射線硬化型樹脂組成物に光重合開始剤は、先に例示したものの中から適宜選定して使用する。
【0101】
ハードコート層は硬化後の膜厚が0.1〜100μm、好ましくは0.8〜20μmの範囲にあることが望ましい。膜厚が0.1μm以下の場合は充分なハードコート性能が得られず、100μm以上の場合は外部からの衝撃に対して割れやすくなる。
【0102】
また、本発明においては、上記電離放射線硬化型樹脂組成物からなるハードコート層が、下記に説明するような中屈折率層または高屈折率層の機能を兼ね備えるものであっても良い。
【0103】
(2)防眩層
防眩層は、電離放射線硬化型樹脂組成物と、屈折率1.40〜1.60を有する樹脂ビーズとから本質的に構成される。樹脂ビーズを含むことで、ハードコート性に加えて、防眩性能を付与することができる。
【0104】
電離放射線硬化型樹脂組成物としては、先のハードコート層に好ましく用いられるものの中から適宜選定することができる。
【0105】
樹脂ビーズの屈折率を上記範囲に限定する理由は以下の通りである。すなわち、電離放射線硬化型樹脂、特にアクリレートまたはメタクリレート系樹脂の屈折率は通常1.45〜1.55であり、電離放射線硬化型樹脂の屈折率にできるだけ近い屈折率を持つ樹脂ビーズを選択することにより、塗膜の透明性を損なわずに防眩性を向上させることができるからである。
【0106】
電離放射線硬化型樹脂の屈折率に近い屈折率を持つ樹脂ビーズとしては、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ(1.49)、ポリカーボネートビーズ(1.58)、ポリスチレンビーズ(1.50)、ポリアクリルスチレンビーズ(1.57)、ポリ塩化ビニルビーズ(1.54)などがあるが、屈折率が上記範囲にあれば、これ以外のものでも使用することができる。
【0107】
これらの樹脂ビーズの粒径は、3〜8μmのものが好適に用いられ、樹脂100重量部に対して2〜10重量部、通常4重量部程度用いられる。上記樹脂中に樹脂ビーズを混合した塗工液においては、使用時に沈殿した樹脂ビーズをよく攪拌して分散させる必要がある。このような不都合を無くすために、前記の塗工液に沈降防止剤として、粒径0.5μm以下、好ましくは0.1〜0.25μmのシリカビーズを添加してもよい。なお、このシリカビーズは添加するほど有機フィラーの沈降防止に有効であるが、塗膜の透明性に悪影響を与える。したがって、塗膜の透明性を損なわず、かつ沈降防止することができる範囲、すなわち、樹脂100重量部に対して0.1重量部未満程度シリカビーズを添加するのが好ましい。
【0108】
防眩層は硬化後の膜厚が0.1〜100μm、好ましくは0.8〜20μmの範囲にあることが望ましい。膜厚が0.1μm以下の場合は充分なハードコート性能が得られず、100μm以上の場合は外部からの衝撃に対して割れやすくなる。
【0109】
(3)帯電防止層
本発明による反射防止積層体は、静電気の発生を抑えてゴミの付着を防止したり、液晶ディスプレイなどに組みこまれた際の外部からの静電気障害を防止するために、必要に応じて帯電防止層を形成してもよい。この場合の帯電防止層の性能としては反射防止積層体形成後の表面抵抗が1012Ω/□以下となることが好ましい。しかし、1012Ω/□以上であっても、帯電防止層を設けていないものに比べて、埃付着が抑えられる。
【0110】
帯電防止層形成用樹脂組成物に含まれる帯電防止剤には、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン系帯電防止剤、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性の帯電防止剤、スズやチタンのアルコキシドのような有機金属化合物やそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物などの各種界面活性剤型帯電防止剤、さらには上記の如き帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤等が挙げられる。また、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基、金属キレート部を有し電離放射線により重合可能なモノマーやオリゴマー、そして電離放射線により重合可能な官能基を持つカップリング剤のような有機金属化合物などの重合性帯電防止剤も使用できる。
【0111】
帯電防止層形成用樹脂組成物に含まれる他の帯電防止剤として、粒子径が100nm以下の超微粒子、例えば酸化スズ、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、インジウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化アンチモン、酸化インジウムなどを用いることができる。特に、粒径が可視光線の波長以下の100nm以下とすることで、成膜後透明になり、反射防止フィルムの透明性が損なわれない。
【0112】
上記帯電防止剤を、上記ハードコート層や防眩層を形成する塗工液中に混合することにより、帯電防止性能とハードコート性能の2つの性質、または帯電防止性能と防眩性能の2つの性質を同時に改善した塗膜を得ることができる。
【0113】
(4)高屈折率層および中屈折率層(屈折率1.46〜2.00の範囲の屈折率層)
本発明の高屈折率層および中屈折率層は、主に、電離放射線硬化型樹脂と、粒子径が100nm以下の超微粒子の酸化亜鉛(屈折率1.90、以下数値は屈折率を示す)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(1.80)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.0)からなる群から選ばれた1種以上の微粒子とから構成される。微粒子は、電離放射線硬化型樹脂バインダーよりも屈折率が高いものが好ましい。屈折率は屈折率層中の微粒子の含有率によって決まる。すなわち、微粒子の含有量が多いほど屈折率が高くなるので、電離放射線硬化型樹脂と微粒子の構成比率を変えることで、屈折率を1.46〜2.00の範囲で自由に制御することができる。
【0114】
電離放射線硬化型樹脂、光重合開始剤、各種添加剤は、上記と同様のものが使用でき、また、形成方法についても上記と同様の方法を用いることができる。
【0115】
また、中屈折率層および高屈折率層は、化学蒸着法(CVD)や物理蒸着法(PVD)などの蒸着法により形成した酸化チタンや酸化ジルコニウムのような屈折率の高い無機酸化物の蒸着膜としたり、あるいは、酸化チタンのような屈折率の高い無機酸化物微粒子を分散させた塗膜とすることができる。中屈折率層としては、屈折率1.46〜1.80の範囲の光透過層を使用し、また、高屈折率層としては屈折率1.65以上の光透過層を使用することができる。
【0116】
(5)反射防止フィルム
反射防止フィルムは、光透過性を有する基材フィルムの一面側または両面に、直接または他の層を介して、光透過性を有しかつ互いに屈折率が異なる光透過層を一層以上積層した構造を有し、その光透過層のうちの少なくとも一つを本発明による反射防止積層体で形成したものである。基材フィルムおよび光透過層は、反射防止フィルムの材料として使用できる程度の光透過性を有する必要があり、できるだけ透明に近いものが好ましい。
【0117】
反射防止フィルムに耐擦傷性、強度等の性能を与える目的でハードコート層を設けても良い。あるいは、反射防止フィルムに防眩性能を与える目的で、他の層として、防眩層を設けても良い。
【0118】
図1は、本発明による反射防止積層体からなる反射防止フィルムの一例の断面を模式的に示したものである。反射防止フィルム1は、光透過性を有する基材フィルム2の一面側に、高屈折率層3が設けられており、さらに高屈折率層3上には、本発明に使用される低屈折率組成物を塗布して形成した低屈折率層4が設けられている。また、基材フィルム2と高屈折率層3との間には、ハードコート層5が設けられている。この態様においては、互いに屈折率の異なる光透過層が、高屈折率層および低屈折率層の二層のみから構成されているが、さらに、光透過層や光透過性の帯電防止層を三層以上設けてもよい。また、このようにして光透過層等を設ける場合には、本発明に使用される低屈折率層形成用組成物を塗布して形成した中屈折率層を、さらに低屈折率層4に加えて設けても良い。
【実施例】
【0119】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0120】
1.シリカ微粒子Iの調製
平均粒子径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと、純水1900gとの混合物を80℃に加熱し反応母液を作製した。この反応母液のpHは10.5であった。この母液に、SiO2として1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gと、Alとして0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、この混合溶液を80℃に保持した。添加直後、混合溶液のpHは12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、混合溶液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al核粒子分散液を調製した。
【0121】
得られた核粒子分散液500gに、純水1700gを加えて98℃に加温し、温度を保持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られた珪酸液(SiO2濃度3.5重量%)3000gを添加した。このようにして、第1シリカ被覆層が形成された核粒子の分散液を得た。
【0122】
この分散液を限外濾過膜で洗浄し、シリカ被覆核粒子の固形分濃度13重量%の分散液を得た。この分散液500gに純水1125gを加え、さらに分散液がpH1.0になるまで濃塩酸(35.5%)を滴下して、脱アルミニウム処理を行った。次いで、この分散液にpH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lとを加え、限外濾過膜で濾過することにより、溶解したアルミニウム塩を分離した。このようにして、核粒子の構成成分の一部が除去されたSiO2・Al多孔質粒子の分散液を調製した。
【0123】
上記多孔質粒子分散液1500g、純水500g、エタノール1750g、および28%アンミニア水626gの混合液を、35℃に加熱した後、該混合液にエチルシリケート(SiO228重量%)104gを添加し、シリカ被覆層が形成された多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆することにより、第一シリカ被覆層の上に第2シリカ被覆層が形成された多孔質微粒子分散液を得た。
【0124】
このシリカ微粒子分散液を、エバポレーターを用いて固形分濃度5重量%まで濃縮し、濃度15重量%のアンモニア水を加えてpH10とした。
【0125】
この分散液をオートクレーブ中で180℃、2時間加熱処理した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK1B、三菱化学(株)製)400gを用いて3時間イオン交換を行い、次いで、陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンSA20A、三菱化学(株)製)200gを用いて3時間イオン交換を行った後、洗浄し固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液を得た。
【0126】
この時、シリカ系微粒子の水分散液のNaO含有量およびNH含有量は、シリカ微粒子当たり各7ppmおよび1600ppmであった。
【0127】
続いて、限外濾過膜を用いて溶媒をイソプロピルアルコールに置換することにより、固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子Iの分散液を調製した。
【0128】
2.シリカ微粒子IIの調製
平均粒子径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと、純水1900gとの混合物を80℃に加熱し反応母液を作製した。この反応母液のpHは10.5であった。この母液に、SiO2として1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gと、Alとして0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、この混合溶液を80℃に保持した。添加直後、混合溶液のpHは12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、混合溶液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al核粒子分散液を調製した。
【0129】
得られた核粒子分散液500gに、純水1700gを加えて98℃に加温し、温度を保持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られた珪酸液(SiO2濃度3.5重量%)3000gを添加した。このようにして、第1シリカ被覆層が形成された核粒子の分散液を得た。
【0130】
この分散液を限外濾過膜で洗浄し、シリカ被覆核粒子の固形分濃度13重量%の分散液を得た。この分散液500gに純水1125gを加え、さらに分散液がpH1.0になるまで濃塩酸(35.5%)を滴下して、脱アルミニウム処理を行った。次いで、この分散液にpH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lとを加え、限外濾過膜で濾過することにより、溶解したアルミニウム塩を分離した。このようにして、核粒子の構成成分の一部が除去されたSiO2・Al多孔質粒子の分散液を調製した。
【0131】
上記多孔質粒子分散液1500g、純水500g、エタノール1750g、および28%アンモニア水626gの混合液を、35℃に加熱した後、混合液にエチルシリケート(SiO228重量%)104gを添加し、シリカ被覆層が形成された多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆することにより、第一シリカ被覆層の上に第2シリカ被覆層が形成された多孔質微粒子分散液を得た。
【0132】
このシリカ微粒子分散液を、エバポレーターを用いて固形分濃度5重量%まで濃縮し、濃度15重量%のアンモニア水を加えてpH10とした。
【0133】
次に、この分散液をオートクレーブ中で180℃、2時間加熱処理した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK1B、三菱化学(株)製)400gを用いて3時間イオン交換を行い、次いで、陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンSA20A、三菱化学(株)製)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換を行った後、洗浄し固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液を得た。
【0134】
この時、シリカ系微粒子の水分散液のNaO含有量およびNH含有量は、シリカ微粒子当たり各6ppmおよび1200ppmであった。
【0135】
次いで、再び、得られたシリカ系微粒子分散液を、150℃にて11時間水熱処理した後、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液を得た。
【0136】
この時、シリカ系微粒子の水分散液のNaO含有量およびNH含有量は、シリカ微粒子当たり各0.5ppmおよび600ppmであった。続いて限外濾過膜を用いて溶媒をイソプロピルアルコールに置換することにより、固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子IIの分散液を調製した。
【0137】
さらに、得られたシリカ微粒子IおよびIIの表面処理を、下記の方法により行った。
【0138】
1.表面処理A(処理量:5重量%)
上記で得られたシリカ微粒子IおよびIIの各分散液について、ロータリーエバポレーターを用いてイソプロピルアルコールからメチルイソブチルケトンに溶媒置換を行い、シリカ微粒子20重量%の分散液を得た。このメチルイソブチルケトン分散液100重量%に3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを5重量%添加し、50℃で1時間加熱処理することにより、表面処理された中空シリカ微粒子20重量%のメチルイソブチルケトン分散液IAおよびIIAを得た。
【0139】
2.表面処理B(処理量:10重量%)
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを10重量%添加した以外は、上記表面処理Aと同様にして、表面処理された中空シリカ微粒子20重量%のメチルイソブチルケトン分散液IBおよびIIBを得た。
【0140】
3.表面処理C(処理量:0.9重量%)
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを0.9重量%添加した以外は、上記表面処理Aと同様にして、表面処理された中空シリカ微粒子20重量%のメチルイソブチルケトン分散液ICおよびIICを得た。
【0141】
実施例1
低屈折率層形成用組成物の調製
下記組成の成分を混合して低屈折率層形成用組成物を調製した。
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IA) 12.85重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 85.22重量部
ハードコート層形成用組成物の調製
下記の組成の成分を配合してハードコート層形成用組成物を調製した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 5.0質量部
イルガキュア184(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)0.25質量部
メチルイソブチルケトン 94.75質量部
基材/ハードコート層/低屈折率層フィルムの作製
厚み80μmのトリアセテートセルロース(TAC)フィルム上に,上記組成のハードコート層形成用組成物をバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後,紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株),光源Hパルプ)を用いて、照射線量100mJ/cm2 で紫外線照射を行い,ハードコート層を硬化させて、膜厚約5μmのハードコート層を有する、基材/ハードコート層フィルムを得た。
【0142】
得られた基材/ハードコート層フィルム上に,上記の低屈折率層形成用組成物をバーコーティングし、乾燥させることより溶剤を除去した後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株)、光源Hバルブ)を用いて,照射線量200mJ/cm2 で紫外線照射を行い、塗膜を硬化させて、基材/ハードコート層/低屈折率層の積層体を得た。
【0143】
実施例2
実施例1にて用いた低屈折率層形成用組成物を、下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、実施例2の積層体を得た。
【0144】
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IB) 12.85重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 85.22重量部
実施例3
実施例1にて用いた低屈折率層形成用組成物を、下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、実施例3の積層体を得た。
【0145】
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IB) 12.85重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 85.22重量部
実施例4
実施例1にて用いた低屈折率層形成用組成物を、下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、実施例4の積層体を得た。
【0146】
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IB) 12.85重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
TSF4460(商品名、GE東芝シリコーン(株)製) 0.12重量部
メチルイソブチルケトン 85.5重量部
実施例5
実施例1にて用いた低屈折率層形成用組成物を、下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、実施例5の積層体を得た。
【0147】
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IIA) 12.85重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 85.22重量部
実施例6
実施例1にて用いた低屈折率層形成用組成物を、下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、実施例6の積層体を得た。
【0148】
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IIB) 12.85重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 85.22重量部
実施例7
帯電防止層形成用組成物の調製
下記組成の成分を混合して帯電防止層形成用組成物を調製した。
アンチモンドープ酸化スズ分散液
(固形分45%、ペルトロンC−4456S−7:商品名、日本ペルノックス製)
25重量部
HDDA(KS−HDDA:商品名、日本化薬製 10.5重量部
イルガキュア184(商品名、チバスペシャルティケミカルズ製) 0.84重量部
酢酸ブチル 76.5重量部
シクロヘキサノン 32.8重量部
積層体(基材/帯電防止層/ハードコート層/低屈折率層)の作製
上記組成の帯電防止層形成用組成物をTACフィルム上にバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後、紫外線照射装置を用いて照射線量約20mJ/cm2で紫外線照射を行い,帯電防止層を硬化させて、膜厚約1μmの帯電防止層を作成した。
【0149】
次に、得られた基材/帯電防止層フィルム上に、実施例2と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成し、実施例7の積層体を得た。
【0150】
帯電防止性能の評価
(1)埃拭き取り試験
得られた積層体5の上に、ティッシュペーパーの埃をふりかけベンコットで表面を軽く拭いたところ、埃は容易に拭き取れた。
(2)帯電減衰測定
上記で得られた積層体5、および帯電防止層を設けない基材/ハードコート層フィルムの帯電減衰を、オネストメーター(シンド静電気(株)製)を用いて測定した。測定条件を以下に示す。
印加電圧 :+10kV
プローブ位置 :20cm
測定時間 :5分間
結果を以下に示す。帯電防止層の効果が確認された。
【表1】

【0151】
実施例8
中屈折率帯電防止層形成用組成物の調製
下記組成の成分を混合して帯電防止層形成用組成物を調製した。
【0152】
酸化インジウム分散液
(固形分35%、EI−3:商品名、大日本塗料製) 14.3重量部
イソプロピルアルコール 85.7重量部
積層体(基材/ハードコート層/帯電防止層/低屈折率層)の作製
厚み100μmのPETフィルム上に、実施例1と同様にしてハードコート層を形成した。次に、上記組成の帯電防止層形成用組成物をバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後、紫外線照射装置を用いて照射線量100mJ/cm で紫外線照射を行い、塗膜を硬化させて膜厚約80nm、屈折率1.65の帯電防止層を得た。
【0153】
得られた積層体(基材/ハードコート層/帯電防止層)上に、実施例2と同様にして低屈折率層を形成し、実施例8の積層体を得た。
【0154】
帯電防止性能の評価
(1)埃拭き取り試験
得られた積層体5の上に、ティッシュペーパーの埃をふりかけベンコットで表面を軽く拭いたところ、埃は容易に拭き取れた。
【0155】
(2)表面抵抗率測定
得られた塗膜の表面抵抗率(Ω/□)の測定については高抵抗率計(ハイレスタ・UP、三菱化学 (株)製)を用い、印加電圧100Vにて積層体最表面の測定を行った。結果、2.0×10(Ω/□)であった。
【0156】
実施例9
防眩層形成用組成物の調製
下記組成の成分を混合して防眩層形成用組成物を調製した。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 25重量部
スチレンビーズ(粒径3.5μm) 6重量部
トルエン 50重量部
イルガキュア184(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 2重量部
積層体(基材/防眩層/低屈折率層)の作製
上記組成の防眩層形成用組成物をTACフィルム上にバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後,紫外線照射装置を用いて、照射線量100mJ/cm2 で紫外線照射を行い防眩層を硬化させて、膜厚約4μmの防眩層を有する基材/防眩層フィルムを得た。
【0157】
次に、得られた基材/防眩層フィルム上に、実施例2と同様にして低屈折率層を形成し、実施例9の積層体を得た。
【0158】
実施例10
中屈折率ハードコート層形成用組成物の調製
下記組成の成分を混合して屈折率1.63の中屈折率ハードコート層形成用組成物を調製した。
KZ7973(商品名、JSR社製) 47重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 5重量部
イルガキュア184(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1重量部
シクロヘキサノン 12重量部
積層体(基材/中屈折率ハードコート層/低屈折率層)の作製
上記組成の中屈折率ハードコート層形成用組成物をTACフィルム上にバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後、紫外線照射装置を用いて、照射線量100mJ/cm2 で塗膜を硬化させて、膜厚約5μmの中屈折率ハードコート層を有する基材/中屈折率ハードコート層フィルムを得た。
【0159】
次に、得られた基材/中屈折率ハードコート層フィルム上に、実施例2と同様にして低屈折率層を形成し、実施例10の積層体を得た。
【0160】
実施例11
防汚層形成用組成物の調製
下記組成の成分を混合して防汚層形成用組成物を調製した。
【0161】
KP−801M(商品名、信越化学工業(株)製) 6.7重量部
FC−40(商品名、住友3M(株)製) 93.3重量部
積層体(基材/ハードコート層/低屈折率層/防汚層)の作製
実施例2と同様にして、基材上にハードコート層、低屈折率層を形成した。
その後、上記組成の防汚層形成用組成物をバーコーティングし、70℃で4分間熱硬化させることにより、実施例11の積層体を得た。
【0162】
実施例12
高屈折率層形成用組成物の調製
下記の成分を混合して屈折率1.90の高屈折率層形成用組成物を調製した。
【0163】
ルチル型酸化チタン(商品名:MT−500HDM、テイカ社製) 10重量部
Disperbyk163 (商品名、ビックケミー・ジャパン製) 2重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 4重量部
イルガキュア184(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.2重量部
メチルイソブチルケトン 37.3重量部
中屈折率層形成用組成物の調製
上記屈折率1.90のチタニア分散液10重量部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリルペースト(SR399E:商品名、日本化薬社製)を2.5重量部加え、屈折率1.76の中屈折率層形成用組成物を調製した。
【0164】
積層体(基材/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)の作製
実施例1と同様にして作製した基材/ハードコート層フィルム上に、上記組成の中屈折率層形成用組成物をバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後、紫外線照射装置を用いて照射線量100mJ/cm2 で紫外線照射を行い、塗膜を硬化させて膜厚約80nmの中屈折率層を得た。
さらに、上記組成の高屈折率層形成用組成物を同条件にて塗工し、膜厚約60nmの高屈折率層を得た。
得られた積層体(基材/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層)上に、実施例2と同様にして低屈折率層を形成し、実施例12の積層体を得た。
【0165】
実施例13
高屈折率層形成用組成物の調製
下記の成分を混合して屈折率1.70の高屈折率層形成用組成物を調製した。
ルチル型酸化チタン(商品名:MT−500HDM、テイカ社製) 10重量部
Disperbyk163 (商品名、ビックケミー・ジャパン製) 2重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 7.5重量部
イルガキュア184(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.2重量部
メチルイソブチルケトン 37.3重量部
積層体(基材/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層)の作製
実施例1と同様にして作製した基材/ハードコート層フィルム上に、上記組成の高屈折率層形成用組成物をバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後、紫外線照射装置を用いて照射線量100mJ/cm2 で紫外線照射を行い、塗膜を硬化させて膜厚約80nmの高屈折率層を得た。
得られた積層体(基材/ハードコート層/高屈折率層)上に、実施例2と同様にして低屈折率層を形成し、実施例13の積層体を得た。
【0166】
比較例1
実施例1において低屈折率層形成用組成物を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、比較例1の積層体を得た。
【0167】
表面未処理中空シリカゾル(シリカ系微粒子Iの分散液) 12.85重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 85.22重量部
比較例2
実施例1において低屈折率層形成用組成物を、以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、比較例2の積層体を得た。
【0168】
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IC) 12.85重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 85.22重量部
比較例3
実施例1において低屈折率層形成用組成物を、以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、比較例3の積層体を得た。
【0169】
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IB) 12.85重量部
ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製) 0.1重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 85.22重量部
比較例4
実施例1において低屈折率層形成用組成物を、以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、比較例4の積層体を得た。
【0170】
表面処理中空シリカゾル(中空シリカ微粒子分散液IB) 12.85重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.43重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.1重量部
メチルイソブチルケトン 85.62重量部
比較例5
実施例1において低屈折率層形成用組成物を、以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層、および低屈折率層を形成して、比較例5の積層体を得た。
【0171】
表面未処理中空シリカゾル(シリカ系微粒子Iの分散液) 7.5重量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 2.5重量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)0.15重量部
F3035(商品名、日本油脂(株)製) 0.4重量部
メチルイソブチルケトン 88.45重量部
このようにして得られた各積層体について、反射率、耐擦過性、および防汚性の試験評価を行った。
【0172】
(1)反射率測定
島津製作所(株)製分光光度計(UV−3100PC)を用いて絶対反射率を測定した。なお、低屈折率層の膜厚は、反射率の極小値が波長550nm付近になるように設定した。
得られた反射率曲線から、シミュレーションを用いて低屈折率層の屈折率を求めた。
【0173】
(2)擦過性評価試験
#0000のスチールウールを用い、荷重200gで20往復した時の傷の有無を目視により確認した。評価基準は以下の通りとした。
【0174】
◎:全く傷が認められないもの
○:細かい傷(5本以下)が認められるもの
△:傷は著しくつくが、剥離は認められないもの
×:剥離するもの
(3)防汚性評価試験
サンプル表面に油性インクのマジックで描き、それをベンコットンで拭き取った時の状態を観察した。評価基準は以下の通りとした。
【0175】
◎:インクが撥いており、容易にインクを拭き取れたもの
○:インクが撥いており、しっかり擦ればインクを拭き取れたもの
△:インクの一部が拭き取れずに残ったもの
×:インクを拭取れなかったもの
評価結果を以下に示す。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本発明による反射防止積層体からなる反射防止フィルムの一例の断面を模式的に示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材上に、少なくとも屈折率が1.45以下の低屈折率層が設けられてなる反射防止積層体であって、
前記低屈折率層が、1分子中に3個以上の電離放射線硬化性基を有する電離放射線硬化型樹脂組成物と、外殻層を有し、内部が多孔質または空洞であるシリカ微粒子とを含んでなり、
前記シリカ微粒子が、50〜300℃の範囲で水熱処理することにより、シリカ微粒子中に含まれるアルカリ金属酸化物およびアンモニアの量を、それぞれ10ppmおよび2000ppm以下としたものであることを特徴とする、反射防止積層体。
【請求項2】
前記低屈折率層が、前記紫外線硬化型組成物および前記シリカ微粒子の何れに対しても相溶性を有するフッ素系および/またはケイ素系化合物を更に含んでなる、請求項1に記載の。
【請求項3】
前記シリカ微粒子の一部もしくは全部が、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有するシランカップリング剤により、そのシリカ微粒子表面の少なくとも一部が処理されたものである、請求項1または2に記載の。
【請求項4】
前記アルカリ金属酸化物がNaOであり、前記シリカ微粒子中のNaOの含有量が0.5〜7ppmの範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の。
【請求項5】
前記シリカ微粒子中のアンモニアの含有量が600〜1600ppmの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の。
【請求項6】
前記シリカ微粒子の平均粒子径が、5〜100nmの範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項7】
前記シリカ微粒子が、前記電離放射線硬化型樹脂組成物100重量部に対して、70〜250重量部含まれてなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項8】
前記シリカ微粒子が、表面に導入されたシランカップリング剤のアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を介して、前記電離放射線硬化型樹脂組成物と直接および/または遊離シランカップリング剤のアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を介して化学反応により共有結合を形成してなる、請求項3〜7のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項9】
前記フッ素系および/またはケイ素系化合物の少なくとも一部が、前記電離放射線硬化型樹脂組成物と、化学反応により共有結合を形成してなる、請求項2〜8のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【請求項10】
前記フッ素系化合物が、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキルエーテル基、およびパーフルオロアルケニル基の少なくとも1つを有する化合物、ならびにそれらの化合物の混合物からなる群から選択されるものである、請求項2〜9のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【請求項11】
前記フッ素系および/またはケイ素系化合物が、下記一般式、
【化1】

(式中、Raは炭素数1〜20のアルキル基を示し、Rbは非置換、もしくはアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、パーフルオロアルキル基、 パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキルエーテル基、または(メタ)アクリロイル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはポリエーテル変性基を示し、各Ra、Rbは互いに同一でも異なっていても良い。また、mは0〜200、nは0〜200の整数である。)
で表される化合物からなる、請求項2〜9のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【請求項12】
前記フッ素系および/またはケイ素系化合物が、下記一般式、
RaSiX4−n
(式中、Raは、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキルエーテル基を含む炭素数3〜1000の炭化水素基を示し、Xは炭素数1〜3のアルコキシ基、オキシアルコキシ基、ハロゲン基を示し、nは1〜3の整数を示す)
で表される化合物からなる、請求項2〜9のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【請求項13】
前記フッ素系および/またはケイ素系化合物が、前記電離放射線硬化型樹脂組成物と前記シリカ微粒子との総重量に対して、0.01〜10重量%含まれてなる、請求項2〜12のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項14】
前記基材と前記低屈折率層との間に、ハードコート層が設けられてなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項15】
前記ハードコート層が、防眩性能を有してなる、請求項14に記載の反射防止積層体。
【請求項16】
前記低屈折率層の基材側と反対の側の面に、防汚層が設けられてなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項17】
前記ハードコート層と前記低屈折率層との間に、屈折率が1.46〜2.00の範囲で、かつ膜厚が0.05〜0.15μmの範囲である屈折率層が、少なくとも一層以上設けられてなる、請求項14〜16のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項18】
前記ハードコート層、前記屈折率層、および前記低屈折率層からなる群から選択される少なくとも一層が、帯電防止性能を有する、請求項17に記載の反射防止積層体。
【請求項19】
前記基材と前記ハードコート層との間に、帯電防止層が設けられてなる、請求項14〜18のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項20】
前記低屈折率層が、その層内および/または表面に、ナノポーラス構造を有してなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項21】
前記低屈折率層の膜厚が、0.05〜0.15μmの範囲である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の反射防止積層体。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の反射防止積層体を、表示面に備えた画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−203745(P2011−203745A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109692(P2011−109692)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2004−246625(P2004−246625)の分割
【原出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】