説明

反応処理装置及びそれに用いられる構造体

【課題】核酸の塩基配列等を解析するための装置において、溶液の処理量を少なくし、また構造を簡易化する。
【解決手段】処理プレート12上には基幹流路14に対して交差するように4つの溶液流路18が形成されている。4つの溶液流路18に対してそれぞれの所定の溶液を満たした上で、導入口14Aから洗浄液(バッファー液)を送り込めば、4つの交差点に存在する4つの溶液層がX方向の下流側に送り出される。これを繰り返せば、反応処理部に22に存在する核酸に対して循環的に溶液処理を行うことが可能となる。溶液処理によって生じた遊離基は光学的に検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応処理装置及びそれに用いられる構造体に関し、特に、複数の溶液及び洗浄液によって対象物を処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA等の核酸における塩基配列を解析するための手法として、パイロシーケンスが知られている(例えば特許文献1)。かかるパイロシーケンスでは、4種類の溶液(試薬)とバッファー液としての洗浄液とが順番に利用される。具体的には、対象物としての拡散に対して4種類の溶液を循環的に利用して多段階的に反応処理が実行され、各溶液ごとの個別的な反応処理後に所定の遊離物質(例えばピロリン酸)が生じたか否かが光学的に測定される。遊離物質が生じていれば酵素反応が生じたものとして現ステップにおける塩基の種類を特定可能である。なお、各溶液を用いた反応処理後において対象物が洗浄液によって洗浄される。
【0003】
【特許文献1】米国特許4863849号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パイロシーケンスを実施する装置に対しては、溶液処理や洗浄処理を速やかに行うこと、溶液や洗浄液の消費を少なくすること、及び、構造の簡易化が要望されている。その他の処理方式においても同様の課題を指摘できる。
【0005】
本発明の目的は、簡易な構成で溶液処理及び洗浄処理を能率的に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの基幹流路で構成され、上流側から下流側にかけて、溶液層配列生成部位、反応処理対象を有する反応処理部位及び測定部位が設定された第1流路構造と、前記第1流路構造における溶液層配列生成部位を横切る複数の溶液流路で構成される第2流路構造と、を有する構造体と、前記第1流路構造を構成する少なくとも1つの基幹流路の上流端部から洗浄液を導入する洗浄液供給手段と、前記第2流路構造を構成する複数の溶液流路の上流端部から複数の溶液を個別的に導入する溶液供給手段と、前記測定部位に設けられ、反応処理結果を測定する測定手段と、を含み、前記溶液層配列生成部位では、前記複数の溶液及び前記洗浄液の交互供給によって溶液層配列が生成され、前記反応処理部位では、前記溶液層配列によって前記反応処理対象に対する反応処理が間欠的に実行され、前記測定部位では、各溶液による反応処理結果が測定される、ことを特徴とする反応処理装置に関する。
【0007】
上記構成によれば、構造体には第1流路構造とそれを横切るように形成された第2流路構造とが設けられる。第1流路構造は少なくとも1つの基幹流路で構成され、第2流路構造は複数の溶液(望ましくは4つの溶液)に対応した並列関係にある複数の溶液流路で構成される。第1流路構造と第2流路構造との交差部位が溶液層配列生成部位となる。ここで、各溶液流路は、基幹流路と交わり、それらの交差点で相互に空間的に連通しており、交差点に溶液が満たされている状態で洗浄液を上流側から下流側へ流せば、交差点に満たされた溶液部分が切り出されて下流側へ送り出される。複数の溶液流路は並列関係にあるので、それら全体を横切るように洗浄液を下流側へ送り出せば、複数の溶液層が間欠的に存在する溶液層配列(の一単位)が構成される。各交差点に各溶液を再び満たした上で、上記同様の送り出しを行えば、複数の単位が並んでなる溶液層配列が構成される。各交差点に弁構造を設けることなく、複数の溶液及び洗浄液の交互供給を繰り返すだけで溶液層配列を容易に形成できる。また、上記構成によれば、基幹流路内に反応部位を有するので、従来方法のように比較的大きなデットボリュームがないために溶液の置換や洗浄を確実に行え、同時に溶液や洗浄液の無駄を大幅に改善できる。更に、構造体及び装置の構成がシンプルなので、容易かつ安価に構造体及び装置を製作できる。なお、基幹流路及び各溶液流路を微細流路として構成しておけば、溶液層配列において、個々の溶液と洗浄液との間の境界面が維持され、各溶液と洗浄液とが混じり合うことはない。
【0008】
後述の実施形態では、溶液層配列における各溶液層の長さ(基幹流路方向をX方向とし、それに交差する方向をY方向とした場合に、各溶液層のX方向の長さ)は各溶液流路のX方向の幅に相当し、溶液層配列における各洗浄液層のX方向の長さは溶液流路間の隙間のX方向の幅に相当する。つまり、交差部位である送液層配列生成部位の構造及び寸法を調整することによって、所望の送液層配列を生成することができる。測定部位における反応対象の存在幅よりも各溶液層の幅を長くしておくのが望ましい。
【0009】
望ましくは、前記溶液層配列は、所定順序で循環的に並んだ複数の溶液層と個々の溶液層間に挿入された複数の洗浄層とで構成される。望ましくは、前記処理対象は塩基配列解析対象となる核酸であり、前記複数の溶液は塩基配列を解析するためのものである。望ましくは、上記反応処理装置は上記パイロシーケンスの実行時に利用される。
【0010】
望ましくは、前記洗浄液供給手段及び前記溶液供給手段を制御する手段であって、前記洗浄液の供給と前記複数の溶液の供給とを交互に繰り返すことによって前記溶液層配列を生成する制御手段を含む。
【0011】
望ましくは、前記第1流路構造は並列的に設けられた複数の基幹流路で構成され、前記溶液層配列生成部位は前記複数の基幹流路に対して前記複数の溶液流路が交差した部位である。望ましくは、前記溶液層配列生成部位における前記複数の溶液流路についてのピッチが前記溶液層配列における複数の溶液層のピッチを規定する。望ましくは、前記反応処理部位には、前記処理対象としての核酸が付着された部材を含みつつ当該部材の流下を防止する構造が形成される。
【0012】
本発明は、処理対象としての核酸を複数の溶液で処理する場合に利用される構造体であって、少なくとも1つの基幹流路で構成され、上流側から下流側にかけて、溶液層配列生成部位、反応処理対象を有する反応処理部位及び測定部位が設定された第1流路構造と、前記第1流路構造における溶液層配列生成部位を横切る複数の溶液流路で構成される第2流路構造と、を有し、前記第1流路構造を構成する少なくとも1つの基幹流路の上流端部から洗浄液が導入され、前記第2流路構造を構成する複数の溶液流路の上流端部から複数の溶液が個別的に導入され、前記溶液層配列生成部位では、前記洗浄液の導入及び前記複数の溶液の導入が交互に繰り返され、これにより循環的に並んだ複数の溶液層と個々の溶液層間に挿入された複数の洗浄層とで構成される溶液層配列が生成され、前記反応処理部位では、前記溶液層配列によって前記反応処理対象に対する反応処理及び洗浄処理が実行され、前記測定部位では、各溶液による反応処理結果が測定される、ことを特徴とする反応処理用構造体に関する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構成で溶液処理及び洗浄処理を能率的に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1には、本発明に係る反応処理装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体的な構成を示す概念図である。図1に示される反応処理装置10は、DNA等の核酸の塩基配列を解析するための装置であり、本実施形態に係る反応処理装置は特にパイロシーケンスに従って塩基配列を解析する手法において用いられるものである。ただし、パイロシーケンス以外の塩基配列解析法においても利用することが可能であり、更に塩基配列解析以外の分析において利用することも可能である。
【0016】
反応処理装置10は複数の微小流路が形成されたチップとしての処理プレート12を有する。図1に示される構成において、処理プレート12には、第1流路構造としての1つの基幹流路14と、第2流路構造としての溶液流路群16と、を有する。基幹流路14は、図示されるようにX方向における上流端から下流端に渡って形成されている微小流路である。その上流端には導入口14Aが形成されており、その下流端には排出口14Bが形成されている。
【0017】
上記の溶液流路群16は、図1に示される構成において、4つの溶液流路18によって構成されており、それらは並列的に形成されている。具体的には、X方向に沿って形成された基幹流路14に対して、それを横切ってY方向に沿って各溶液流路18が形成されている。図1においては、基幹流路14が直線的に形成され、また、各溶液流路18も直線的に形成されているが、後述する交差部位20において所定の寸法関係が成立する限りにおいて、各流路は直線的に形成しなくてもよい。各溶液流路18の上流端には導入口18Aが形成されており、各溶液流路18の下流端には排出口18Bが形成されている。各流路14,18は処理プレート12の内部に形成されており、それらの流路14,18における導入口14A,18A及び排出口14B,18Bは、処理プレート12の上面側に形成された開口によって構成される。
【0018】
基幹流路14における上流側には交差部位20が設定されており、そこから下流側に所定距離隔てられた位置に反応処理部22が設定され、その直下部位に光学センサ24(測定部位)が設けられている。交差部位20は、X方向に沿って形成された基幹流路14に対して4つの溶液流路18が交差する4つの交差点からなるものであり、各交差点においては基幹流路14と各溶液流路18とが空間的に連なっている。各流路14,18は矩形の断面を有していてもよいし、円形の断面を有していてもよい。交差部位20は後に説明するように溶液層配列生成部として機能する。すなわち、4つの溶液流路18に4つの溶液が満たされた状態で、特に、4つの交差点に4つの溶液が満たされた状態で、基幹流路14に対して洗浄液としてのバッファー液を流し込むことにより4つの交差点に存在する溶液層がX方向の下流側に送り出され、これによって溶液層配列の1単位が構成される。これについては後に詳述する。
【0019】
基幹流路14における導入口14Aにはチューブを介してバッファー導入ポンプ40が接続されており、このバッファー導入ポンプ40はバッファーとしての洗浄液を供給するためのものである。4つの溶液流路18における4つの導入口18Aには4つのチューブを介して4つの溶液(試薬)導入ポンプ42が接続されている。4つの溶液導入ポンプ42は、それぞれ定められた溶液を供給するためのものである。パイロシーケンスの実施に当たっては、核酸の塩基配列を解析するために4種類の溶液が利用され、それらの4種類の溶液が4つの溶液導入ポンプ42によって4つの溶液流路18に流し込まれる。
【0020】
バッファー導入ポンプ40及び4つの溶液導入ポンプ42の動作は制御部44によって制御されており、制御部44はパーソナルコンピュータ、シーケンサー等のコントローラによって構成される。
【0021】
基幹流路14の排出口14Bにはチューブを介して廃液タンクが接続されており、必要に応じて廃液用のポンプが利用される。これと同様に、4つの排出口18Bにも4つのチューブを介して4つの廃液タンクあるいは共用廃液タンクが接続されており、4つの溶液の排出に当たっては必要に応じて廃液ポンプが利用される。
【0022】
次に、反応処理部22及び光学センサ24について説明する。反応処理部22は、図1における拡大図30に示されるように、反応処理対象を備えたビーズ群26を有している。そのビーズ群26は1つ又は複数のビーズ28により構成され、各ビーズは反応処理対象としての核酸が付着されたビーズである。それらのビーズ28が下流側に流れ出さないように保持構造32が設けられており、図1に示される保持構造32はスリット状の構造である。また、拡大図34に示されるように、各ビーズ28はビーズ本体36とそれに付着された核酸38とからなるものである。核酸38における塩基配列において各塩基に対して所定の溶液が反応し、それによって生じた遊離基が光学的に測定される。光学センサ24は、測定部位に配置され、それは反応処理部22の下流側に設定されている。光学センサ24は、上述した遊離基が生じると、その遊離基に起因する発光を検出する。
【0023】
図2には、図1に示した構造体としての処理プレート12の断面が示されている。処理プレート12には上述したように基幹流路が形成されている。その両端には導入口14A及び排出口14Bが設けられている。処理プレート12は、この図2に示す例において、上側の第1プレート12Aと下側の第2プレート12Bとを貼り合わせた構造を有し、それぞれのプレート12A,12Bには予め溝構造12C,12Dが形成されている。それらの溝構造12C,12Dが互いに接合し合うことにより、図1を用いて説明した基幹流路14及び複数の溶液流路18が形成される。もちろん、第1プレート12A及び第2プレート12Bの一方側にだけ溝構造を形成しても同様の構造体を構築することが可能である。
【0024】
図3には、図1及び図2に示した反応処理装置における動作が概念的に示されている。(A)には第1ステップの状態が示されている。すなわち、まず基幹流路14に対して全体的に洗浄液を満たした上で、それぞれの溶液流路18に対して所定の溶液が導入される。その状態が(A)に示されている。交差部位20における各交差点は所定の溶液が満たされた状態となる。そして、(B)に示すように、導入口14Aから洗浄液を送り込むと、4つの交差点に存在した4つの溶液(溶液層)がX方向の下流側に押し出され、これによって溶液層配列の1単位60Aが構成される。すなわち、その1単位60Aは、先頭から後尾にかけて4つの溶液層62,64,66,68を含むものであり、更に1単位60Aには溶液層間に介在する洗浄層も含まれる。1単位60Aに含まれる4つの溶液層62,64,66,68は、溶液流路群16に供給される4つの溶液の並びに対応した並びを有している。
【0025】
次に、(C)には第3ステップが示されており、第2ステップの実行後に、4つの溶液を4つの溶液流路に送り込むことにより4つの交差点が再び4つの溶液で満たされる。この場合において、各溶液流路18における交差点よりも下流側に洗浄層が送り出されることになるが、そのような洗浄層は各溶液流路18から外部へ排出ようにしてもよいし、交差点よりも下流側に留まるようにしてもよい。後者によれば溶液の消費量をより少なくできるという利点がある。ただし、図3にはそのような下流側に送り出された洗浄層については図示省略されている。
【0026】
上述した第3ステップの実行後、(D)に示す第4ステップが実行される。すなわち、導入口14Aから再び洗浄液が供給され、これによって再び1単位分が下流側へ送り出される。これにより、(D)に示すように、二つの1単位60A,60Bが生成されており、それら全体として溶液層配列が構成されている。このような溶液層配列を反応処理部位に流すと、先頭から間欠的に所定の溶液による溶液処理が実行されることになり、各溶液処理の合間においては洗浄処理が実行されることになる。そして、各溶液による反応処理後に生じた遊離基が光学的に測定される。(E)には第5ステップが示されており、すなわち上述した工程を上記同様に繰り返すことにより、3つの単位60A,60B,60Cが構成されている。このようなことが循環的に繰り返されて、反応処理対象に対して多段階的な溶液反応処理が実行され、すなわちパイロシーケンスを実現することが可能となる。
【0027】
上記の動作例において各溶液層62,64,66,68のX方向の幅は、各溶液流路18のX方向の幅に相当しており、隣接溶液層間のX方向の幅は、隣接する溶液流路間の幅に相当している。つまり、基幹流路14に対して4つの溶液流路18をどのように設けるのかによって、具体的には、交差点の間隔(ピッチ)及び交差点を横切る幅を適宜調整することにより、所望の溶液層配列を構成することが可能である。この場合において、弁を採用する必要はないので、構造を簡略化でき、また各溶液の処理量を極めて少なくできるという利点がある。従来においては、比較的大きな容器を利用して溶液反応処理や洗浄処理が行われていたが、本発明においては微小流路内で溶液反応処理や洗浄処理を行えるので効率的あるいは能率的な処理を実現できるという利点がある。溶液層配列における溶液層と洗浄層との間の境界面は微小流路内に存在しているため、溶液と洗浄液とが混じり合うことは殆どない。
【0028】
上記構成において、4つの溶液の供給及び洗浄液の供給は交互に実行されており、その制御は図1に示した制御部44によってなされている。もちろん、そのような制御をマニュアルで行うことも可能であるが、多段階のステップを実行する場合においてはその制御を自動化するのが望ましい。ただし、パイロシーケンス以外の他の処理方法を適用する場合には、マニュアル制御によって各液体の供給を行うことも可能である。
【0029】
図4には、図1に示した保持構造の変形例が示されている。すなわち、図4に示す例では反応処理部22A内にビーズ群26が保持されているが、その保持は壁46の作用によってなされている。壁46は基幹流路内の一部を除いた空間をせき止めているものであり、つまり、壁46によって液体の通過が許容されつつ各ビーズ28の流下が防止されている。もちろん、反応処理部の構造としては上述したもの以外の構造を採用することも可能である。反応処理部22を交差部位に近づけても上述した作用と同様の作用を得られる。
【0030】
次に、図5を用いて他の実施形態について説明する。図5には処理プレート72が示されている。処理プレート72には第1流路構造としての8つの基幹流路76が形成されており、また、それを横切るように第2流路構造としての4つの溶液流路80が形成されている。8つの基幹流路76の上流端には共用導入口74Aが形成されており、8つの基幹流路76の下流端には共有排出口74Bが形成されている。各溶液流路80にはその上流端に導入口80Aが形成されており、それらの下流端には共用排出口78Bが形成されている。複数の導入口80Aはチューブ接続部材の設置スペースを確保する観点から互いに離間されており、つまり4つの溶液流路80の上流側は分散化されている。ちなみに、各流路76,80の幅は例えば200μmであり、第1流路構造74における基幹流路間隔は例えば200μmである。よって、第1流路構造74の横幅は全体として例えば3mmである。図においてはその幅がWで表されている。第1流路構造74には保持部位84が設定されており、その下流側には光学的センサ86が設けられている。各基幹流路は、溶液流路との合流位置により下流側にビーズ群を有している。光学的センサ86は単一のセンサであって、その受光開口としてのスリット86Aは8つの基幹流路76を横切る方向に広がっている。図5の処理プレートにおいて、洗浄液の導入口は基幹流路毎に設けてもよい。このような構成とすれば、基幹流路からビーズを導入する場合に、各流路に種類の異なるビーズを導入しやすくなる。
【0031】
図6には、光学的センサ86の具体的な構成例が示されており、フレーム88内にはCCDイメージセンサ90、光学的フィルタ92、レンズ94及び絞り96が設けられている。絞り96はスリット86Aを規定するものであり、レンズ94は集光作用を発揮するものである。フィルタ92は分析対象となる特定波長の光を透過させるものであり、その光はCCDイメージセンサ90に到達し、電気信号に変換される。もちろん、CCDイメージセンサ以外のセンサを利用するようにしてもよい。いずれにしても、センサによって撮像されたイメージにおいて8つの基幹流路それぞれについて弁別した光学的測定を行えるよう測定部を構成するのが望ましい。
【0032】
図7には、図5に示した処理プレート72における動作が模式的に示されている。(A)には第1ステップを実行した状態が示されている。すなわち、第1流路構造74を構成する各基幹流路に対して洗浄液が導入されてそれら全体が洗浄液で満たされた上で、第2流路構造を構成する各溶液流路に対して所定の溶液が流され、それぞれの溶液流路が所定の溶液で満たされる。符号98は交差部位を表している。その交差部位98は8×4=32(個)の交差点よりなるものである。
【0033】
第1ステップの実行後、(B)に示すように第2ステップが実行される。すなわち、8つの基幹流路における上流側から洗浄液が送り込まれる。これによって、交差部位98に2次元的に存在していた複数の溶液層がX方向の下流側に押し出され、その結果、溶液層配列100が構成される。この溶液層配列100は図3の(B)等に示した1単位60AをY方向に複数並べたものに相当する。すなわち、図5に示した実施形態によれば、8つの対象物を同時進行で処理することが可能である。(B)に示した第2ステップの実行後、再び(A)に示したように4つの溶液が各交差点に満たされ、再び8つの基幹流路に対して洗浄液が送り込まれると、図7の符号100に示したものがさらにもう一つ生成され、このような工程が順次繰り返されると、8つの対象物に対して、8つのパイロシーケンスを並列的に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る反応処理装置の好適な実施形態を示す概念図である。
【図2】図1に示した処理プレートの断面図である。
【図3】図1に示した装置の動作例を示す説明図である。
【図4】反応処理部の他の構成例を示す図である。
【図5】他の実施形態に係る処理プレートの構成を表す概念図である。
【図6】光学的センサの具体例を説明するための図である。
【図7】図5に示した処理プレート上の動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10 反応処理装置、12 処理プレート、14 基幹流路(第1流路構造)、16 溶液流路群(第2流路構造)、20 交差部位(溶液層配列生成部)、22 反応処理部、24 光学的センサ(測定部位)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基幹流路で構成され、上流側から下流側にかけて、溶液層配列生成部位、反応処理対象を有する反応処理部位及び測定部位が設定された第1流路構造と、前記第1流路構造における溶液層配列生成部位を横切る複数の溶液流路で構成される第2流路構造と、を有する構造体と、
前記第1流路構造を構成する少なくとも1つの基幹流路の上流端部から洗浄液を導入する洗浄液供給手段と、
前記第2流路構造を構成する複数の溶液流路の上流端部から複数の溶液を個別的に導入する溶液供給手段と、
前記測定部位に設けられ、反応処理結果を測定する測定手段と、
を含み、
前記溶液層配列生成部位では、前記複数の溶液及び前記洗浄液の交互供給によって溶液層配列が生成され、前記反応処理部位では、前記溶液層配列によって前記反応処理対象に対する反応処理が間欠的に実行され、前記測定部位では、各溶液による反応処理結果が測定される、ことを特徴とする反応処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記溶液層配列は、所定順序で循環的に並んだ複数の溶液層と個々の溶液層間に挿入された複数の洗浄層とで構成される、ことを特徴とする反応処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記処理対象は塩基配列解析対象となる核酸であり、前記複数の溶液は塩基配列を解析するためのものである、ことを特徴とする反応処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置において、
前記洗浄液供給手段及び前記溶液供給手段を制御する手段であって、前記洗浄液の供給と前記複数の溶液の供給とを交互に繰り返すことによって前記溶液層配列を生成する制御手段を含む、ことを特徴とする反応処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置において、
前記第1流路構造は並列的に設けられた複数の基幹流路で構成され、
前記溶液層配列生成部位は前記複数の基幹流路に対して前記複数の溶液流路が交差した部位である、ことを特徴とする反応処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置において、
前記溶液層配列生成部位における前記複数の溶液流路についてのピッチが前記溶液層配列における複数の溶液層のピッチを規定する、ことを特徴とする反応処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置において、
前記反応処理部位には、前記処理対象としての核酸が付着された部材を含みつつ当該部材の流下を防止する構造が形成された、ことを特徴とする反応処理装置。
【請求項8】
処理対象としての核酸を複数の溶液で処理する場合に利用される構造体であって、
少なくとも1つの基幹流路で構成され、上流側から下流側にかけて、溶液層配列生成部位、反応処理対象を有する反応処理部位及び測定部位が設定された第1流路構造と、
前記第1流路構造における溶液層配列生成部位を横切る複数の溶液流路で構成される第2流路構造と、
を有し、
前記第1流路構造を構成する少なくとも1つの基幹流路の上流端部から洗浄液が導入され、
前記第2流路構造を構成する複数の溶液流路の上流端部から複数の溶液が個別的に導入され、
前記溶液層配列生成部位では、前記洗浄液の導入及び前記複数の溶液の導入が交互に繰り返され、これにより循環的に並んだ複数の溶液層と個々の溶液層間に挿入された複数の洗浄層とで構成される溶液層配列が生成され、
前記反応処理部位では、前記溶液層配列によって前記反応処理対象に対する反応処理及び洗浄処理が実行され、
前記測定部位では、各溶液による反応処理結果が測定される、
ことを特徴とする反応処理用構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−286665(P2008−286665A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132550(P2007−132550)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】