説明

反応器を洗浄する方法

本発明は、固体の堆積によるファウリングの傾向がある反応器を洗浄する方法であって、固体がその中に可溶性であり、少なくとも約75℃の温度を持つ高温の溶媒を、反応器に施し、固体が実質的に溶解し、溶解した固体が反応器から排出され、反応器を周囲の雰囲気に開放せずに行われる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体の堆積によるファウリング(fouling)の傾向のある反応器を洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応器のファウリングは、特に、ポリマー技術、すなわち、オリゴマー化反応および重合反応、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの重合に関連する問題である。
【0003】
「ファウリング」の結果として、反応器は定期的に洗浄しなければならず、予備の反応器を用意することが好ましい。
【0004】
固体(例えば、高分子量オリゴマー/ポリマー)が堆積した反応器を洗浄するために、反応器を開けなければならず、通常、プラントの作業員が、反応器を機械的に洗浄するためにそこに入らなければならない。洗浄後、反応器は通常、その後のオリゴマー化反応または重合反応の準備ができているように不活性化(inertised)しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄時の一般的な反応器の休止期間は約1週間である。それゆえ、洗浄操作で、生成すべき生成物のコストが増えてしまう。
【0006】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服した、固体の堆積によるファウリングの傾向のある反応器を洗浄する方法を提供することにある。特に、機械的な洗浄を必要とせず、反応器の休止時間を減少させ、洗浄の前/後にパージング/不活性化を必要とせず、プラントの安全性を改善する方法を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、固体がその中に可溶性であり、少なくとも約75℃の温度を持つ高温の溶媒が、反応器に施され、その固体が実質的に溶解し、溶解した固体が反応器から排出されることにより達成され、その方法は、反応器を周囲の雰囲気に開放せずに行われる。
【0008】
意外なことに、反応器を洗浄する本発明の方法を使用すると、機械的洗浄が必要なく、洗浄のための反応器の休止時間が著しく減少することが分かった。さらに、反応器を開かなくてよいので、洗浄前後の反応器のパージング/不活性化はもはや必要ない。また、シーケンス制御により自動洗浄手順を設けてもよく、予備の反応器が必要なくなる。最後に、プラントの作業員が洗浄のために反応器に入らなくて済み、炭化水素の周囲雰囲気への曝露の虞がなくなるので、プラントの安全性が改善される。
【0009】
ここに用いる「反応器」という用語は、反応容器自体に関連するだけでなく、パイプ、供給容器、蒸留塔などの反応容器に連結された全ての設備を包含する。したがって、当業者には、「反応器」という用語に含まれる必要な設備が分かる。本発明の方法は、固体の堆積によるファウリングの傾向がある全ての化学反応器、特に、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリスチレンの重合などのポリマー技術に適用されるであろう。
【0010】
反応器はオリゴマー化反応器または重合反応器であることが好ましい。
【0011】
反応器が、エチレンの線状アルファオレフィンへのオリゴマー化のためのオリゴマー化反応器であることが最も好ましい。
【0012】
溶媒が有機溶媒であることが好ましく、炭化水素溶媒であることがより好ましい。
【0013】
溶媒が、トルエン、キシレン、ベンゼンまたはそれらの混合物から選択されてよい。トルエンが最も好ましい溶媒である。
【0014】
ある態様において、溶解した固体は溶媒回収ユニットに移送される。
【0015】
さらに別の態様において、溶媒は、蒸留、結晶化、薄膜式蒸発、ワイプトフイルム式(wiped-film)蒸発および/または流下液膜式蒸発により回収してもよい。
【0016】
好ましい実施の形態において、溶媒は、外部加熱および/または反応器中で行われる反応の暴走により加熱される。
【0017】
外部加熱が熱交換器により提供されることがより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の方法は、反応器中で定期的に行われるプロセスが完了した直後に反応器に適用されることが好ましい。本発明の方法は、線状アルファオレフィンを得るためのエチレンのオリゴマー化のためのオリゴマー化反応器において利用されることが好ましい。オリゴマー化反応が完了した後、約100から130℃の温度を持つ高温溶媒、好ましくは高温トルエンを反応器およびその設備中に導入する。代わりの方法において、溶媒を、反応器中に導入した後に加熱してもよい。次いで、高温トルエンを反応器およびその設備の全体に亘り分配して、固体堆積物、特に、反応器壁上の高分子量オリゴマー/ポリマー堆積物を溶解させる。堆積物は高温トルエン中に可溶性であるので、それらは、トルエンを排出することによって、反応器から容易に排出されるであろう。次いで、高温のトルエン中に溶解した固体は、蒸留塔などの溶媒回収ユニットに移送されて、溶解した固体を溶媒から分離してもよい。次いで、溶媒を、さらなる洗浄のために反応器中に再循環させても、またはその後に使用するために貯蔵してもよい。
【0019】
高分子量オリゴマー/ポリマーの特有の溶解性のために、トルエンは、オリゴマー化反応および重合反応に使用するための最も好ましい溶媒である。
【0020】
先の説明および特許請求の範囲に開示された特徴は、別々とその任意の組合せの両方において、本発明をその多様な形態で実現するための素材であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の堆積によるファウリングの傾向がある反応器を洗浄する方法であって、前記固体がその中に可溶性であり、少なくとも約75℃の温度を持つ高温の溶媒を、前記反応器に施し、該固体が実質的に溶解し、溶解した固体が前記反応器から排出され、該反応器を周囲の雰囲気に開放せずに行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応器がオリゴマー化反応器または重合反応器であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応器が、線状アルファオレフィンを得るためのエチレンのオリゴマー化のためのオリゴマー化反応器であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が有機溶媒であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、トルエン、キシレン、ベンゼンまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒がトルエンであることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記溶解した固体が溶媒回収ユニットに移送されることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、蒸留、結晶化、薄膜式蒸発、ワイプトフイルム式蒸発および/または流下液膜式蒸発により回収されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が、外部加熱および/または反応器中で行われる反応の暴走により加熱されることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記外部加熱が熱交換器により提供されることを特徴とする請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2009−504808(P2009−504808A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525403(P2008−525403)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005644
【国際公開番号】WO2007/016995
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(507055615)リンデ アーゲー (29)
【氏名又は名称原語表記】LINDE AG
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】