説明

反応性の官能基を有するマイクロカプセルから形成された被覆物品

被服物品は、支持体と該支持体の少なくとも1部を覆う被覆を含む。該被覆は、ガラス転位温度が−110℃〜−40℃の範囲にあるバインダーを含む。該被覆はまた、サイズが1ミクロン〜15ミクロンの範囲にある1式のマイクロカプセルを含み、該1式のマイクロカプセルの少なくとも1個は、該支持体及び該バインダーのどちらか又は両方と化学的に結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に被覆物品に関する。例えば、反応性の官能基を有するマイクロカプセルから形成された被覆物品が記載される。
【背景技術】
【0002】
相転位物質を含む被覆は、衣服又は他の布から作られる製品に対してのみならず布自体に対して温度調整性(thermal regulating properties)を付与するため、布に適用されてきた。典型的には、相転位物質を含むマイクロカプセルがバインダーと混合されて混合物を形成し、この混合物が次いで布上に硬化されて該布を覆う被覆を形成する。残念ながら、該被覆はマイクロカプセルの保持の点で十分な耐久性を欠くことがあり、かくて、数回の着用と洗濯のサイクルの後に温度調整を提供する能力を次第に失うことがある。また、該被覆は、呼吸性、ドレープ性、弾力性、柔軟性、見た目のよさ、及び水吸収性の望ましくない低下をもたらすことがあり、皮膚の炎症をもたらす傾向を持つこともある。例えば、該被覆布は堅く且つ「厚紙様(boardy)」である傾向を持つことがあり、該被覆の比較的非透過的な性質は該被覆布の空気又は水蒸気を輸送する能力を著しく減少させることがある。衣服に組み込まれた場合、該被覆布は該衣服を着用する個人にとって十分な快適さが得られないことがあり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここに記載される被覆物品を開発する必要性はこの技術背景に対してのものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、本発明は被覆物品に関する。1つの実施態様において、該被覆物品は、支持体及び該支持体の少なくとも1部を覆う被覆を含む。該被覆はガラス転位温度が−110℃〜−40℃の範囲にあるバインダーを含む。該被覆はまた、サイズが1から15ミクロンの範囲にある一式のマイクロカプセルであって、該マイクロカプセルの少なくとも1個は該支持体及び該バインダーのどちらか一方又は両方と化学的に結合しているものを含む。
【0005】
もう1つの実施態様において、該被覆物品は支持体と、該支持体に隣接した被覆を含む。該被覆は、バインダー、及び該バインダー中に分散した一式のマイクロカプセルを使用して形成されている。該マイクロカプセルの少なくとも1個は、内部分画に境界をつける殻、及び該内部分画中に配置された相転位物質を含む。該殻は該支持体及び該バインダーのどちらか一方又は両方に化学的に結合する一式の官能基を含み、そして該相転移物質は少なくとも40J/gの潜熱と0℃〜50℃の範囲の転位温度を持つ。
【0006】
更なる実施態様において、該被覆物品は支持体と該支持体の少なくとも1部を覆う被覆を含む。該被覆は、エポキシ基を持つ珪素含有重合体、エポキシ基を持つポリグリコール、及びエポキシ基を持つ炭化水素樹脂から選ばれたバインダーを含む。該被覆はまた、該バインダー中に分散した一式のマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセルは1〜15ミクロンの範囲のサイズを持つ。
【0007】
本発明の他の態様及び実施態様もまた期待される。例えば、本発明の他の態様は、被覆物品を形成する方法、被覆物品を用いて温度調整を提供する方法、被覆組成物、及び被覆組成物を形成する方法、に関する。前記の要約及び以下の詳細な記載は本発明を特別な実施態様に制限することを意味するものではなく、単に本発明のある種の実施態様を記載することを意味するだけである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施態様は、官能基を持つマイクロカプセルから形成された被覆物品に関する。該マイクロカプセルは、該被覆物品を通した熱移動を調節又は制御することによる温度調整を提供し得る。特に、該マイクロカプセルは相転位物質を含むことが出来、それにより該マイクロカプセルは熱を吸収又は放出し熱移動を調節する能力を持つ。有利なことに、該マイクロカプセルの官能基は化学的な結合を与え、かくして、該マイクロカプセルの保持の点で該被覆物品の耐久性を高める。そのようにして、該マイクロカプセルにより提供される温度調整性は多数回の着用及び洗濯のサイクルの後でさえ実質的に保持され得る。そのような長期の温度調整性と共に、該被覆物品は改善された呼吸性、改善されたドレープ性、改善された弾力性、改善された柔軟性、改善された目視外観、改善された水吸収性、及び皮膚炎症を起す傾向の低減を示し得る。
【0009】
本発明の様々な実施態様による被覆物品は、着用され又はその他個人により使用される製品中に組み込まれ、より高い程度の快適さを提供する場合に特に有用であり得る。例えば、該被覆物品は、衣服(例えば室外用衣類、ドライスーツ(drysuits)、防護服)及び履物類(例えば靴下、ブーツ及び中敷)に組み込まれ得る。有利なことに、該被覆物品は異なった環境条件の下でも改善された程度の快適さを提供し得る。相転位物質の使用は、該被覆物品に、「静的な」又は「単一方向の」温度調整と言うよりはむしろ「動的な」又は「多方向の」温度調整の提供を与える。特に、相転位物質の使用は、該被覆物品に暖かい天候のときの温度エネルギーの吸収、及び寒い天候のときの温度エネルギーの放出を与える。そのようにして、該被覆物品は異なる環境条件の下でそれらの温度調整性を調節し得る。例えば、該被覆物品は暖かい天候のときに冷却をそして寒い天候のときに加温を提供出来、かくして天候条件が変っても望ましい程度の快適さを保つ。そればかりでなく、該被覆物品は、湿気又は陽光のような外部的な引きがね機構を必要とせずにそれらの温度調整性を調節できる。
【0010】
提供される温度調整性と共に、本発明の様々な実施態様による被覆物品は、例えば衣服又は履物類に組み込まれた場合、快適さの程度における他の種々の改良を提供し得る。例えば、該被覆物品は発汗によるような個人の皮膚の湿気の減少を提供し得る。特に、該被覆物品は皮膚の温度又は相対湿度を低めることが出来、それにより低度の皮膚湿気と高度の快適さを提供する。特定の材料、及び衣服又は履物類の特定のデザイン態様の使用は快適さの程度を更に向上させ得る。例えば、該被覆物品は、ある種の添加剤又は処理剤と共に使用出来、温度調整性及び湿気管理性に更なる有利を提供する。
【0011】
衣服及び履物類に加え、本発明の様々な実施態様による被覆物品は、数多くの他の製品中に組み込む事が出来、それらの製品に温度調整性を提供する。特に、該被覆物品は、医療製品(例えば、温毛布、治療用パッド、失禁用パッド、及び温/冷パック)、容器及び包装資材(例えば、飲料/食物容器、食物保温器、座布団、及び回路板積層物(circuit board laminates))、建築材料(例えば、壁又は天井の保温材、壁紙、カーテン裏地、管被覆材、カーペット、タイル)、器具(例えば家庭用器具の保温材)、及び他の製品(例えば、自動車用裏打ち材、寝袋、家具、マットレス、室内装飾材料、及び寝具類)に組み込まれ得る。
【0012】
定義
次の定義は本発明の幾つかの実施態様に関して記載される幾つかの要素に適用する。
【0013】
ここで用いる、「1つの」及び「その」という単数の用語は、文脈が明確にその他を規定していない限り、複数の指示物を含む。かくて、例えば、「1つの相転位物質」という指示は、文脈が明確にその他を規定していない限り、複数の相転位物質を含み得る。
【0014】
ここで用いる、「一式の」という用語は、1つ又はより多くの要素の集合を指す。かくて、例えば、「一式のマイクロカプセル」は、単一の又は多数のマイクロカプセルを含み得る。一式の要素はまた、該一式の構成メンバーとして指され得る。
【0015】
ここで用いる、「隣接」という用語は、近いか又は隣り合っていることを指す。隣接している物体は互いに離れて空間的に配置され、又は互いに実際上又は直接に接触状態にあることができる。幾つかの例において、隣接している物体は互いに結合し又は互いに融合的(integrally)に形成されていることが出来る。
【0016】
ここで用いる、「サイズ」という用語は、ある物体の最大寸法を指す。かくて、例えば、回転楕円体のサイズは該回転楕円体の長軸を指す。他の例として、球体のサイズは該球体の直径を指し得る。
【0017】
ここで用いる、「単分散」という用語は、一式の性質に関して実質的に均一であることを指す。かくて、例えば、単分散である一式のマイクロカプセルは、サイズ分布の平均値のようなサイズ分布のモード近傍の狭い分布を持つマイクロカプセルを指し得る。幾つかの例において、単分散である一式のマイクロカプセルは、サイズの平均値に関して20パーセント未満、例えば10パーセント未満又は5パーセント未満のような標準偏差を示すサイズを持つことが出来る。
【0018】
ここで用いる、「潜熱」という用語は、物質が2つの状態の間で転位を受ける際物質によって吸収され又は放出される熱の量を指す。かくて、例えば、潜熱は、液体状態と結晶固体状態との間、液体状態と気体状態との間、結晶固体状態と気体状態との間、又は2つの結晶固体状態の間、で転位を受けた場合に物質が吸収し又は放出する熱の量を指し得る。
【0019】
ここで用いる、「転位温度」という用語は、物質が2つの状態の間で転位を受ける温度を指す。かくて、例えば、転位温度は、液体状態と結晶固体状態との間、液体状態と気体状態との間、結晶固体状態と気体状態との間、又は2つの結晶固体状態の間、で物質が転位を受ける温度を指す。物質が液体状態と非晶質固体状態との間で転移を受ける温度は、該物質の「ガラス転位温度」と言われ得る。
【0020】
ここで用いる、「相転位物質」という用語は、熱を吸収又は放出する能力を持ち、ある温度又は温度安定化領域の中で熱移動を調節する物質を指す。温度安定化領域は、特定の転位温度又は転位温度の領域を含み得る。幾つかの例において、相転位物質は、典型的に相転位物質は2つの状態の間での転位を受けるので、相転位物質が熱を吸収又は放出するある期間中の熱移動を抑制し得ることが出来る。この作用は典型的には1時的であり、加熱または冷却過程の間、該相転位物質の潜熱が吸収され又は放出されるまで起る。熱は追う転位物質に蓄積され又は除去され、そして該相転位物質は典型的には加熱又は冷却源によって効果的にリチャージされ得る。ある種の実施態様において、相転位物質は2種又はより多くの物質の混合物でありえる。2種又はより多くの異なる物質を選択し混合物とすることにより、温度安定化領域が如何なる所望の適用に対しても調節可能となる。該得られた混合物は、ここに記載される該被覆物品中に組み込まれた場合、2つ又はより多くの異なる転位温度又は単一の改変された転位温度を示し得る。
【0021】
相転位物質の例は様々な有機及び無機物質を含み得、それらは次の様なものである:アルカン、アルケン、アルキン、アレン、水和塩(例えば、塩化カルシウム6水和物、臭化カルシウム6水和物、硝酸マグネシウム6水和物、硝酸リチウム3水和物、フッ化カリウム4水和物、アンモニウム明礬、塩化マグネシウム6水和物、炭酸ナトリウム10水和物、燐酸二ナトリウム12水和物、硫酸ナトリウム10水和物、及び酢酸ナトリウム3水和物)、ワックス、油、水、脂肪酸、脂肪酸エステル、2塩基酸、2塩基酸エステル、1-ハロゲン化物、一級アルコール、包接化合物、半包接化合物、気体包接化合物、酸無水物(例えば、ステアリン酸無水物)、エチレンカーボネート、多価アルコール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ペンタグリセリン、テトラメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、テトラメチロールプロパン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、モノアミノペンタエリスリトール、ジアミノペンタエリスリトール、及びトリス(ヒドロキシメチル)酢酸)、重合体(例えば、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンマロネート、ポリネオペンチルグリコールセバケート、ポリペンタングルタレート、ポリビニルミリステート、ポリビニルステアレート、ポリビニルラウレート、ポリヘキサデシルメタクリレート、ポリオクタデシルメタクリレート、グリコール(又はそれらの誘導体)と2塩基酸(又はそれらの誘導体)との重縮合により得られるポリエステル、及び、例えばポリアクリレート又はポリメタクリレートとアルキル炭化水素側鎖又はポリエチレングリコール側鎖との様な共重合体、及びポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールを含む共重合体)、金属、及びそれらの混合物。相転位物質の他の例は、Magill等の特許出願、米国特許出願番号 2005/0208300、名称" Multi-component Fibers Having Enhanced Reversible Thermal Properties and Methods of Manufacturing Thereof "(その記載は全体が引用によりここに包含される)、の中に記載されているものを含む。相転位物質の更なる例は、日本特許出願公開番号2004-003087、名称「蓄熱性複合繊維及び蓄熱性布部材」(その記載は全体が引用によりここに包含される)、の中に記載されているものを含む。
【0022】
ここで用いる、「重合体」という用語は、一式の高分子を含む物質を指す。重合体に含まれる高分子は同一であるか又は夫々幾分相異することができる。高分子は任意の様々な骨格構造を持ち得、1種又はより多くのタイプのモノマー単位を含み得る。特に、高分子は線状又は非線状の骨格構造を持ち得る。非線状骨格構造の例は、星状(star)枝分かれ、櫛状枝分かれ、又は樹木状枝分かれのような枝分かれ骨格構造、及び網状骨格構造を含む。ホモポリマー中に含まれる高分子は、典型的に1つのタイプのモノマー単位を含み、一方共重合体中に含まれる高分子は典型的に2つ又はより多くのタイプのモノマー単位を含む。共重合体の例は、ランダム共重合体(statistical copolymer、random copolymer)、交互共重合体、周期(periodic)共重合体、ブロック共重合体、ラジカル共重合体、及びグラフト共重合体を含む。幾つかの例において、重合体の反応性及び官能価は、一式の官能基の付加により変更し得、かかる官能基は次のようなものである:酸無水物基、アミノ基、N-置換アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シクロヘキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、水酸基、イソシアネート基、及びそれらの組合せ。そのような官能基は、例えば、ランダムに又は規則的に該重合体に沿って分散されて、重合体の各種末端において、該重合体に懸垂した側部基として、又は該重合体の主鎖に直接 に、のように、重合体に沿った様々な場所へ付加し得るものである。また、重合体は、その機械的強度又は環境下もしくは加工条件下での変質への抵抗性を高めるため、架橋、絡み合い、又は水素結合させる可能性があり得る。認識され得るように、重合体は、該重合体の分子量は該重合体を形成するために用いられる加工条件に依存させ得るので、種々の分子量を持つ様々な形で提供され得る。従って、重合体は、特定の分子量又は分子量範囲を持つものとして指示され得る。ここで重合体に関して用いられる「分子量」という用語は、数平均分子量、重量平均分子量、又は重合体のメルトインデックスを指し得る。
【0023】
重合体の例は次のものを含む:ポリヒドロキシアルコネート、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアクリル系重合体(例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、及びメタクリル酸及びアクリル酸のエステル)、ポリカーボネート(例えば、ポリビスフェノールAカーボネート及びポリプロピレンカーボネート)、ポリジエン(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びポリノルボルネン)、ポリエポキシド、ポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリプロピレンスクシネート、テレフタル酸を基材としたポリエステル、及びフタル酸を基材としたポリエステル)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシド、ポリブチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレン又はパラホルムアルデヒド、ポリテトラメチレンエーテル又はポリテトラヒドロフラン、及びポリエピクロロヒドリン)、ポリフルオロカーボン、ホルムアルデヒド系重合体(例えば、尿素-ホルムアルデヒド、メラミン-ホルムアルデヒド、及びフェノールホルムアルデヒド)、天然重合体(例えば、セルロース、キチン、キトサン、及び澱粉のような多糖類;リグニン;蛋白質;及びワックス)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブテン、及びポリオクテン)、ポリフェニレン、珪素含有重合体(例えば、ポリジメチルシロキサン、及びポリカーボメチルシラン)、ポリウレタン、ポリビニル(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールのエステル又はエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、及びポリビニルメチルケトン)、ポリアセタール、ポリアリレート、アルキド基材重合体(例えば、グリセリド油を基材とした重合体)、共重合体(例えば、ポリエチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエチレン-アクリル酸共重合体)、及びそれらの混合物。
【0024】
ここで用いる、「化学結合」という用語及びその文法的な変形は、引力相互作用に基づく2つ又はより多くの原子の結合であって、それによりそれらの原子が安定な構造を形成し得る結合を指す。化学結合の例は、共有結合及びイオン結合を含む。化学結合のその他の例は、カルボキシル基とアミド基との間の引力相互作用を含む。
【0025】
ここで用いる、「基」という用語は、分子の1部を形成する一式の原子を指す。幾つかの例において、基は、互いに化学的に結合して分子の1部を形成する2つ又はより多くの原子を含み得る。基は、1価又は多価(例えば2価)であって分子の1式付加基への化学的結合を可能にする。例えば、1価の基は、1式の水素残基(hydride group)が除かれた分子であって分子のもう1つの基への化学的結合を可能にするものとして描写し得る。基は、中性、正荷電、又は負荷電であり得る。例えば、正荷電基は付加された1つ又はより多くのプロトン(即ち、H)を持つ中性基として描写し得る。特有の反応性又は他の式の性質を示す基は、官能基と言われる。基の例は、次のものを含む:酸無水物基、アルケニル基、アルキル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、N-置換アミノ基、アリール基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、ハロゲン基、水素残基、水酸基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、尿素基、及びウレタン基。
【0026】
ここで用いる、「アルカン」という用語は、飽和炭化水素分子を指す。ある種の実施例として、アルカンは1〜100個の炭素原子を含み得る。「低級アルカン」という用語は1〜20個、例えば1〜10個のような炭素原子を含むアルカンを指し、一方、「高級アルカン」という用語は20個超の、例えば21〜100個の炭素原子を含むアルカンを指す。「非線状アルカン」という用語は1式の枝を含むアルカンを指し、一方「線状アルカン」という用語は直鎖状のアルカンを指す。「シクロアルカン」という用語は1式の環構造を含むアルカンを指す。「ヘテロアルカン」という用語は、N、Si、S、O、及びPのような1式の複素原子で置換された1式の炭素原子を持つアルカンを指す。「置換アルカン」という用語は1式のその水素残基が1式の他の基により置換されたアルカンを指し、一方「非置換アルカン」という用語はそのような置換の無いアルカンを指す。上記用語の組合せは、組合わされた性質を持つアルカンを指すのに用いられ得る。
【0027】
ここで用いる、「アルキル基」という用語は、アルカンの1つの1価の形を指す。例えば、アルキル基は、1式の水素残基が除かれて分子の他の基への結合が可能になったアルカンとして描写し得る。「低級アルキル基」という用語は低級アルカンの1価の形を指し、一方「高級アルキル基」という用語は高級アルカンの1価の形を指す。「非線状アルキル基」という用語は非線状アルカンの1価の形を指し、一方「線状アルキル基」という用語は線状アルカンの1価の形を指す。「シクロアルキル基」という用語はシクロアルカンの1価の形を指し、そして「ヘテロアルキル基」という用語はヘテロアルカンの1価の形を指す。「置換アルキル基」という用語は置換アルカンの1価の形を指し、一方「非置換アルキル基」という用語は非置換アルカンの1価の形を指す。上記用語の組合せは組合わされた性質を持つアルキル基を指すのに用いられ得る。
【0028】
ここで用いる、「アルケン」という用語は、1式の炭素-炭素二重結合を含む不飽和炭化水素分子を指す。ある種の実施態様において、アルケンは2〜100個の炭素原子を含み得る。「低級アルケン」という用語は2〜20個例えば2〜10個のような炭素原子を含むアルケンを指し、一方「高級アルケン」という用語は20個超の、例えば21〜100個のような炭素原子を含むアルケンを指す。「シクロアルケン」という用語は1式の環構造を含むアルケンを指す。「ヘテロアルケン」という用語はN、Si、S、O、及びPのような1式の複素原子により置換された1式の炭素原子を持つアルケンを指す。「置換アルケン」という用語はその1式の水素残基が他の基により置換されたアルケンを指し、一方「非置換アルケン」という用語はそのような置換の無いアルケンを指す。上記用語の組合せは組合わされた性質を持つアルケンを指すのに用いられ得る。
【0029】
ここで用いる、「アルケニル基」という用語は、アルケンの1価の形を指す。例えば、アルケニル基は、1式の水素残基が除かれて分子の他の基への結合が可能になったアルケンとして描写し得る。「低級アルケニル基」という用語は低級アルケンの1価の形を指し、一方「高級アルケニル基」という用語は高級アルケンの1価の形を指す。「シクロアルケニル基」という用語はシクロアルケンの1価の形を指し、そして「ヘテロアルケニル基」という用語はヘテロアルケンの1価の形を指す。「置換アルケニル基」という用語は置換アルケンの1価の形を指し、一方「非置換アルケニル基」という用語は非置換アルケンの1価の形を指す。上記用語の組合せは組合わされた性質を持つアルケニル基を指すのに用いられ得る。
【0030】
ここで用いる、「アルキン」という用語は、1式の炭素-炭素3重結合を含む不飽和炭化水素を指す。幾つかの例において、アルキンはまた、1式の炭素-炭素2重結合を含み得る。ある種の適用として、アルキンは2〜100個の炭素原子を含み得る。「低級アルキン」という用語は2〜20個、例えば2〜10個のような炭素原子を含むアルキンを指し、一方、「高級アルキン」という用語は20個超の、例えば21〜100個の炭素原子を含むアルキンを指す。「シクロアルキン」という用語は1式の環構造を含むアルキンを指す。「ヘテロアルキン」という用語は、N、Si、S、O、及びPのような1式の複素原子で置換された1式の炭素原子を持つアルキンを指す。「置換アルキン」という用語は1式のその水素残基が1式の他の基により置換されたアルキンを指し、一方「非置換アルキン」という用語はそのような置換の無いアルキンを指す。上記用語の組合せは、組合わされた性質を持つアルキンを指すのに用いられ得る。
【0031】
ここで用いる、「アルキニル基」という用語は、アルキンの1価の形を指す。例えば、アルキニル基は、1式の水素残基が除かれて分子の他の基への結合が可能になったアルキンとして描写し得る。「低級アルキニル基」という用語は低級アルキンの1価の形を指し、一方「高級アルキニル基」という用語は高級アルケンの1価の形を指す。「シクロアルキニル基」という用語はシクロアルキンの1価の形を指し、そして「ヘテロアルキニル基」という用語はヘテロアルキンの1価の形を指す。「置換アルキニル基」という用語は置換アルキンの1価の形を指し、一方「非置換アルキニル基」という用語は非置換アルキンの1価の形を指す。上記用語の組合せは組合わされた性質を持つアルキニル基を指すのに用いられ得る。
【0032】
ここで用いる、「アレン」という用語は、芳香族炭化水素分子を指す。ある種の適用において、アレンは5〜100個の炭素原子を含み得る。「低級アレン」という用語は5〜20個、例えば5〜14個のような炭素原子を含むアレンを指し、一方「高級アレン」という用語は20個超、例えば21〜100個のような炭素原子を含むアレンを指す。「単環アレン」という用語は単一の芳香族環構造を含むアレンを指し、一方「多環アレン」という用語は、例えば2個又はより多くの芳香族環構造が炭素-炭素結合を介して、又は互いに融合して結合しているような、複数個の芳香族環構造を含むアレンを指す。「ヘテロアレン」という用語は、N、Si、S、O、及びPのような1式の複素原子で置換された1式の炭素原子を持つアレンを指す。「置換アレン」という用語は1式のその水素残基が1式の他の基により置換されたアレンを指し、一方「非置換アレン」という用語はそのような置換の無いアレンを指す。上記用語の組合せは、組合わされた性質を持つアレンを指すのに用いられ得る。
【0033】
ここで用いる、「アリール基」という用語は、アレンの1価の形を指す。例えば、アリール基は、1式の水素残基が除かれて分子の他の基への結合が可能になったアレンとして描写し得る。「低級アリール基」という用語は低級アレンの1価の形を指し、一方「高級アリール基」という用語は高級アレンの1価の形を指す。「単環アリール基」という用語は単環アレンの1価の形を指し、一方「多環アリール基」という用語は多環アレンの1価の形を指す。「ヘテロアリール基」という用語はヘテロアレンの1価の形を指す。「置換アリール基」という用語は置換アレンの1価の形を指し、一方「非置換アリール基」という用語は非置換アレンの1価の形を指す。上記用語の組合せは組合わされた性質を持つアリール基を指すのに用いられ得る。
【0034】
ここで用いる、「酸無水物基」という用語は、-CO-O-CO- を指す。
【0035】
ここで用いる、「アルデヒド基」という用語は、-CHO を指す。
【0036】
ここで用いる、「アミド基」という用語は、
【化1】

を指す。
【0037】
ここで用いる、「アミノ基」という用語は、-NH2 を指す。
【0038】
ここで用いる、「N-置換アミノ基」という用語は、1式のその水素残基が1式の他の基により置換されたアミノ基を指す。N-置換アミノ基の例は次のものを含む:-NR(1)R(2)、但しR(1)及びR(2)は水素残基、アルキル基、アルキニル基、及びアリール基から選ばれ、そしてR(1)及びR(2)の少なくとも1つは水素残基ではない。
【0039】
ここで用いる、「カルボニル基」という用語は、-CO- を指す。
【0040】
ここで用いる、「カルボキシル基」という用語は、-COOH を指す。
【0041】
ここで用いる、「エポキシ基」という用語は、
【化2】

を指す。
【0042】
ここで用いる、「エステル基」という用語は、-CO-O- を指す。エステル基の例は、離脱基トシテアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、又はブタノール)を基材とするもの、離脱基として酢酸を基材とするもの、燐酸を基材とするもの、硫酸又は硫酸塩を基材とするもの、及びトリフルオロ酢酸を基材とするもの、を含む。
【0043】
ここで用いる、「エーテル基」という用語は、-O- を指す。エーテル基の例は離脱基としてアルコールを基材とするものを含む。
【0044】
ここで用いる、「グリシジル基」という用語は、
【化3】

を指す。
【0045】
ここで用いる、「ハロゲン基」という用語は、-Xを指す、但しXはハロゲン原子である。ハロゲン基の例は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを含む。
【0046】
ここで用いる、「水素残基」という用語は、-Hを指す。
【0047】
ここで用いる、「水酸基」という用語は、-OHを指す。
【0048】
ここで用いる、「イソシアネート基」という用語は、-NCOを指す。
【0049】
ここで用いる、「チオール基」という用語は、-SHを指す。
【0050】
ここで用いる、「ジスルフィド基」という用語は、-S-S-を指す。
【0051】
ここで用いる、「シリル基」という用語は、-SiR(3)R(4)R(5)を指す、但しR(3)、R(4)、及びR(5)は、独立に、水素残基、ハロゲン基、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基のような様々な基から選ばれる。
【0052】
ここで用いる、「尿素基」という用語は、
【化4】

を指す。
【0053】
ここで用いる、「ウレタン基」という用語は、
【化5】

を指す。
【0054】
被覆物品
注目は先ず、本発明の実施態様により実施された被覆物品100を示す図1に向う。特に、図1は、第1層102及び該第1層102に隣接した第2層104を含む、被覆物品100の側部断面図を示す。
【0055】
該示された実施態様において、該第1層は支持体として実施され、例えば繊維状材料又は重合体のような任意の適切な材料で形成される。かくて、例えば、該第1層102は天然又は合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、ポリ乳酸、ポリオレフィン、ポリウレタン、天然又は再生セルロース、絹、又は羊毛、で形成された繊維)、天然又は合成フィラメント、天然又は合成繊維で形成された紡績糸、天然又は合成繊維で形成された布(例えば、ニット、織布、又は不織布)、フィルム、皮革、ボール紙、紙、又は木片、であり得る。図1に示されてはいないが、該第1層102は、同一の又は異なる材料で形成され得る2つ又はより多くの副層を含むように形成され得ると期待される。
【0056】
該第1層102を形成する材料の選択は、該第2層104との親和性、その熱移動を減じ又は除去する能力、その呼吸性、そのドレープ性、その弾力性、その柔軟性、その水吸収性、そのフィルム形成能力、その環境下又は加工条件下での耐劣化性、及びその機械的強度、のような様々な考慮すべき事項に依存する。特に、ある種の実施については、該第1層102を形成する材料は、次のような官能基の1式を含むように選択され得る:酸無水物基、アルデヒド基、アミノ基、N-置換アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、水酸基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、シリル基、グリオキサールを基材とする基、アジリジンを基材とする基、活性メチレン化合物又は他のb-ジカルボニル化合物(例えば、2,4-ペンタンジオン、マロン酸、アセチルアセトン、酢酸エチルアセトン、マロン酸アミド、アセトアセトアミド及びそのメチル相似体、エチルアセト酢酸、及びイソプロピルアセト酢酸)を基材とする基、又はそれらの組合せ。少なくとも幾つかのこれらの官能基は、該第1層102の上表面106上に露出されることが出来、そして該第2層104中に含まれる1式の補足的な官能基との化学的結合を可能にすることができ、それにより、加工中又は使用中の該被覆物品100の耐久性が向上する。かくて、例えば、該第1層102はセルロースで形成でき、該第2層104中に含まれる1式のカルボキシル基と化学的に結合し得る、1式の水酸基を含むことが出来る。もう1つの例として、該第1層102は絹又は羊毛で形成でき、該第2層104中に含まれるカルボキシル基と化学的に結合し得る、1式のアミノ基を含むことが出来る。認識され得るように、1対の官能基間の化学的結合は、アミド基、エステル基、エーテル基、尿素基、又はウレタン基のようなもう1つの官能基の形成をもたらし得る。かくて、例えば、水酸基とカルボキシル基との間の化学結合はエステル基の形成をもたらし得、一方アミノ基とカルボキシル基との間の化学結合はアミド基の形成をもたらし得る。
【0057】
ある種の実施として、該第1層102を形成する材料は、最初1式の官能基が無くてもよく、しかし、次いで変性して官能基を含むようにすることが出来る。特に、該第1層102は、1式の官能基を含まない材料とそれらの官能基を含む材料、という異なった材料の組合せによって形成することが出来る。これらの異種材料は均一に混合することが出来、又は別々の領域又は別々の副層中に組み込むことが出来る。例えば、該第1層102は、ポリエステル繊維とある量(例えば、25重量%又はより多く)の、1式の官能基を含む木綿又は羊毛繊維とを組み合わせることにより形成し得る。該ポリエステル繊維は、外側副層に混和でき、一方該木綿又は羊毛繊維は、それに隣接して該第2層104が形成され得る内側副層に混和できる。もう1つの例として、該第1層102を形成する材料は1式の官能基を含むように化学的に変性することができる。化学変性は、酸化剤の使用、コロナ処理、又はプラズマ処理のような適切な技術を用いて行うことができる。化学変性はまた、Kanazawaの米国特許第6,830,782、名称"Hydrophilic Polymer Treatment of an Activated Polymeric and Use Thereof"中に記載されているように行うことができる(この記載は全部が参考としてここに包含される)。幾つかの例において、該第1層102を形成する材料は、1式の官能基を含むモノマーと反応し得るラジカルを形成するように処理され得る。そのようなモノマーの例は、酸無水物基を持つもの(例えば、マレイン酸無水物)、カルボキシル基を持つもの(例えば、アクリル酸),水酸基を持つもの(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)、及びエポキシ又はグリシジル基を持つもの(例えば、グリシジルメタクリレート)を含む。他の例において、該第1層102を形成する材料は、望ましい湿気管理性を提供するのみならず1式の官能基を付加する1式の機能性材料で処理され得る。これらの機能性材料は、例えばポリビニルアルコール、ポリグリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、親水性ポリエステル、及びそれらの共重合体を含み得る。例えば、これらの機能性材料は、繊維製造工程中、布染色工程中、又は布仕上げ工程中に添加し得る。別法として又は合せて、これらの機能性材料は、イグゾースト(exhaust)染色、パッド(pad)染色、又はジェット(jet)染色を介して布中に混和され得る。
【0058】
図1に示されるように、該第2層104は、任意の適切な被覆技術を用いて、該第1層に隣接して形成される被覆として実施される。使用中、該第2層104は、内部分画又は個人の肌に隣接しそれにより内部被覆として役立つように配置され得る。該第2層104は、外部環境に曝されそれにより外部被覆として役立つように配置され得る。図2を参照するに、該第2層104は該上表面106の少なくとも1部を覆っている。該第1層の特性又は使用される特定の被覆技術により、該第2層104は該上表面106の下に貫通(penetrate)しそして該第1層の少なくとも1部を透過(permeate)し得る。図1には2つの層が示されているが、該被覆物品100は、他の実施のため多少の層を含み得ると期待される。特に、第1層102の底部表面108の少なくとも1部を覆うための第3層(図1に示さず)が含まれると期待される。そのような第3層は、該第2層104と同様の仕方で実施され得、又は、撥水性もしくは耐汚染性のような他の機能を提供するため別の仕方で実施され得る。該第2層104を形成する材料(類)が該第1層中に含まれることにより、該第2層104を省き得ることも又期待される。
【0059】
該示された実施態様において、該第2層104は、バインダー110及び該バインダー110中に分散された1式のマイクロカプセル112で形成される。該バインダー110は、その中に該マイクロカプセル112が分散される母材として役立ち、それにより該マイクロカプセル112に環境もしくは加工条件に対して又は使用中における磨耗(abrasion or wear)に対してある程度の抵抗性を提供する、任意の適切な材料であり得る。例えば、該バインダー110は、重合体又はある種の被覆技術で用いられる任意の他の適切な媒体であり得る。ある種の実施として、該バインダー110は、望ましくは、ガラス転位温度が約−110℃〜約−40℃の範囲、例えば約−110℃〜約−75℃のような範囲、である重合体である。水溶性又は水分散性の重合体が特に望ましいが、水不溶性又は僅かに水溶性の重合体も、ある種の実施については該バインダー110として使用され得る。
【0060】
該バインダー110の選択は次のような様々な考慮すべき事項に依存し得る:その、該マイクロカプセル112又は該第1層102との親和性、その、熱移動を減らし又は除く能力、その呼吸性、そのドレープ性、その弾性、その柔軟性、その水吸収性、その被覆形成能力、環境又は加工条件下での耐劣化性、及びその機械的強度。特に、ある種の実施において、該バインダー110は、次のような1式の官能基を含むように選択され得る:酸無水物基、アルデヒド基、アミノ基、N-置換アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、水酸基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、シリル基、グリオキサールを基材とする基、アジリジンを基材とする基、活性メチレン化合物又は他のb-ジカルボニル化合物(例えば、2,4-ペンタンジオン、マロン酸、アセチルアセトン、酢酸エチルアセトン、マロン酸アミド、アセトアセトアミド及びそのメチル相似体、エチルアセト酢酸、及びイソプロピルアセト酢酸)を基材とする基、又はそれらの組合せ。これらの官能基は、該マイクロカプセル112及び該第1層102のどちらか又は両方に含まれる1式の補完的な官能基との化学的結合を可能にすることができ、それにより加工中又は使用中における該被覆物品100の耐久性を向上させる。かくて、例えば、該バインダー110は、該マイクロカプセル112中に含まれる1式のカルボキシル基と化学的に結合し得る、1式のエポキシ基を含む重合体であり得る。もう1つの例として、該バインダー110は、マイクロカプセル112中に含まれる1式のカルボキシル基と化学的に結合し得る、1式のイソシアネート基又は1式のアミノ基を含む重合体であり得る。
【0061】
該バインダー110として使用し得る重合体の例は、例えばグリシジル基、エーテル基を介して化学的に結合したグリシジル基、シクロヘキシルエポキシ基、又は任意の他のエポキシ基を基材とする機能性成分のような形態でエポキシ基を持つものであり得る。ある種の実施として、該バインダー110は、1式のエポキシ基を含む珪素含有重合体、例えばエポキシ基含有量が約0.2〜約5.0重量%又は約0.4〜約2.0重量%の範囲にあるもの、であり得る。珪素含有重合体の望ましい分子量は約500ダルトン〜約50,000ダルトンの範囲であり得る。硬化温度が150℃超である高温適用については、約20,000ダルトン〜約50,000ダルトンの範囲のような高分子量が望ましい。そのような高分子量は、該珪素含有重合体の蒸発を減らすのに役立ち、それにより煙及び臭いの発生が減る。一方、低温適用には、約500ダルトン〜約20,000ダルトンの範囲の低分子量が望ましい。適切な珪素含有重合体の例は、Siltech Corp.により供給される、SILMER EP C50、SILMER EP J10、SILMER EP Di-50、及びSILMER EP Di-100を含む。適切な珪素含有重合体の更なる例は、Dow Corning Inc.により供給される、8650 epoxy silicon、BY16-876、及びSM8715 Exを含む。
【0062】
該バインダー110として使用できる重合体の更なる例は、エポキシ基を持つポリグリコール、エポキシ基を持つ炭化水素樹脂、又はエポキシ基を持つ任意の他の重合体を含み得る。例えば、該バインダー110は、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、又はそれらの共重合体のようなポリグリコールであり得る。適切な重合体の他の例は、Resolution Performance Products, Inc.により供給される、HELOXY Modifier 48(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを基材とする)、HELOXY 68(ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテルを基材とする)、HELOXY 71(ダイマー酸ジグリシジルエーテルを基材とする)、HELOXY 84(脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルを基材とする)、及びHELOXY 505(ヒマシ油のポリグリシジルエーテルを基材とする)を含む。更なる適切な重合体は、CVC Speciality Chemicals Inc.により供給される、テトラグリシジルメタキシレンジアミンを基材とするもの、及び長鎖アクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体を含む。
【0063】
該バインダー110として使用できる重合体の他の例は、イソシアネート基を持つポリオールであってイソシアネート基の含有量が約5〜約30重量%の範囲又は約10〜約25重量%の範囲にあるもの、を含む。そのような重合体の例は、Rhodia Corp.により供給される、TOLONATE HDB-LV、TOLONATE HDT-LV2、RHODOCOAT WT 2102、及びRHODOCOAT WAT 1を含む。そのようなポリオールの他の例は、Bayer Chemicals Inc.により供給される、BAYHYDUR VPLS 2336、BAYHYDUR VPLS 2319、BAYHYDUR XP7165、BAYHYDUR VPLS 2306、BAYHYDUR XP2547、及びBAYHYDUR 303を含む。ブロックされたイソシアネート基を持つ水分散性重合体もまた適切であり、特に高温適用に適する。そのような重合体の例は、Eastern Chemicalsにより供給されるECCO X-link AP-900、Mitsubishi Chemicals Corp.により供給されるREPEARL MF、Bayer Chemicals Inc.により供給されるBAYHYDUR VPLS 2240、及びRhodia Corp.により供給されるRHODOCOAT WT 1000を含む。
【0064】
該バインダー110として使用できる重合体の更なる例は、アミノ基を持つものを含む。1式のアミノ基を持つ重合体はまた、他の重合体の1式のエポキシ基又は1式のイソシアネート基と架橋するための改質剤として使用できる。ある種の実施において、該バインダー110は、1式のアミノ基を含む珪素含有重合体であり得、該重合体のアミノ基含有量は約0.1〜約20重量%又は約0.5〜約5重量%の範囲である。適切な珪素含有重合体の例は、Ciba Specialty Chemicals、 Siltech Corp.、Wacker Silicones Corp.、Dow Corning Company、Goldschmidt Chemical Corp.、及びGeneral Electric Companyにより供給されるものを含む。
【0065】
図1を参照するに、該マイクロカプセル112は、同じ形又は異なる形でよく、そして同じ大きさでも異なる大きさでもよい。幾つかの例において、該マイクロカプセル112は、実質的に回転楕円体又は球体でよく、約0.1〜約1000ミクロン、例えば約0.1〜約500ミクロン、約0.1〜約100ミクロン、約1〜約15ミクロン、約1〜約10ミクロン、約1〜約5ミクロン、約2〜約3ミクロンのような範囲のサイズを持ち得る。ある種の実施において、マイクロカプセル112の、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%のような実質的な画分が、約1〜約15ミクロン又は約1〜約5ミクロンのような特定の範囲内のサイズであることが望ましい。該マイクロカプセル112は形及びサイズのどちらか、又は両方に関して単分散であることもまた望ましい。
【0066】
示された実施態様において、該マイクロカプセル112は、熱を吸収又は放出することにより該被覆物品を通した熱移動を減じ又は除去するのに役立つ相転位物質を含むように実施される。特に、該マイクロカプセル112は、該相転位物質が中に位置する内部分画の境界を定める殻として形成される。該殻は、該相転位物質を含有するのに役立つ任意の適切な材料により形成され得、かくして、該相転位物質に、環境もしくは加工条件、又は使用中の損失もしくは漏れに対するある程度の防止性を提供する。例えば、該殻は重合体又は任意の他の適切なカプセル化材料により形成され得る。
【0067】
該殻を形成する材料の選択は、例えばその、該バインダー110又は該第1層との親和性、その、該相転位物質との反応性又は非反応性、その、環境又は加工条件下での耐劣化性、及びその、機械的強度、のような様々な考慮すべき事項に依存し得る。特に、ある種の実施において、該殻を形成する材料は次のような1式の官能基を含むように選択され得る:酸無水物基、アルデヒド基、アミノ基、N-置換アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、水酸基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、シリル基、グリオキサールを基材とする基、アジリジンを基材とする基、活性メチレン化合物又は他のb-ジカルボニル化合物(例えば、2,4-ペンタンジオン、マロン酸、アセチルアセトン、酢酸エチルアセトン、マロン酸アミド、アセトアセトアミド及びそのメチル相似体、エチルアセト酢酸、及びイソプロピルアセト酢酸)を基材とする基、又はそれらの組合せ。これら官能基の少なくとも1部は該殻の外部表面に露出することができ、そしてバインダー110及び該第1層102のどちらか又は両方に含まれる1式の相補的な官能基との化学的結合を可能にし、それにより加工又は使用時における該被覆物品100の耐久性が増す。そのような仕方において、該マイクロカプセルの少なくとも幾つかは該バインダー110及び該第1層102のどちらか又は両方と化学的に結合され得、それにより、該マイクロカプセル112により提供される温度調整性は数多くの着用及び洗濯のサイクルの後にも実質的に維持され得る。また、そのような化学結合は、該マイクロカプセル112の該第2層104へのより均一な分散のみならずより高い充填レベルの混和を容易にする。更に、望みの充填レベルの該マイクロカプセル112を混和するのに必要な該バインダーの量がより少なくて済み、かくて、皮膚の炎症を引起こす傾向を減少させるのみならず、改良された呼吸性、改良されたドレープ性、改良された弾力性、改良された柔軟性、改良された目視外観、改良された水吸収性を可能にする。かくて、例えば、該殻を形成する材料は、該第1層102に含まれる1式の水酸基と化学的に結合し得る、1式のカルボキシル基を含み得る。もう1つの例として、該殻に含まれるそれらのカルボキシル基は、該第1層102に含まれる1式のアミノ基の化学的に結合し得る。更なる実施例として、該殻を形成する材料は、該バインダー110に含まれる1式の相補的な官能基と化学的に結合することにより該バインダー110の架橋を可能にする、1式の官能基を含み得る。
【0068】
該殻を形成するのに用い得る重合体の例は、例えばアクリル酸又はメタクリル酸を基材とするモノマー単位を含む重合体のような、カルボキシル基を持つものを含む。ある種の実施において、該殻は、約1〜約100モル%の、例えば約20〜約80モル%、約25〜約60モル%、又は約40〜50モル%の、カルボキシル基を含むモノマー単位を含む重合体により形成され得る。幾つかの例においては、該モノマー単位のモルパーセントを該マイクロカプセル112のサイズに基づいて調節するのが望ましい。例えば、個々の該マイクロカプセルのサイズが小さくなれば、そのマイクロカプセルの外部表面積も又典型的に減少する。かくて、化学結合のための露出した官能基の望ましい量を維持するためには、そのマイクロカプセルのサイズが小さくなるに従い該モノマー単位のモルパーセントを増加するのが望ましい。もう1つの例として、個々のマイクロカプセル112のサイズが大きくなれば、そのマイクロカプセルの重さも又典型的に増加する。かくて、重量増加を考慮するため、そのマイクロカプセルのサイズが大きくなるに従い該モノマー単位のモルパーセントを増加するのが望ましい。表1は該マイクロカプセル112のサイズの関数としての該モルパーセントの範囲の例を提供する。表1を参照するに、該マイクロカプセル112は表示の容易さのため球状と仮定される。同様の考慮及びモルパーセントはまた、他のタイプの官能基を持つ重合体にも適用し得る。
【表1】

【0069】
該殻を形成するのに使用し得る重合体の他の例は、任意の適切な重合技術を用いてモノマーから形成されたものを含む。下記表2は、様々なタイプの官能基を含むそのようなモノマーの例を示す。
【表2】

【0070】
該相転位物質の選択は、該相転位物質の潜熱及び転位温度に依存する。該そう転移物質の潜熱は、その、熱移動を低減し又は排除する能力に関係する。幾つかの例において、該相転移物質は少なくとも約40J/g、例えば少なくとも約50J/g、少なくとも約60J/g、少なくとも約70J/g、少なくとも約80J/g、少なくとも約90J/g、又は少なくとも約100J/gの潜熱を持ち得る。かくて、例えば、該相転移物質は、約40J/g〜約400J/g、例えば約60〜約400J/g、約80〜約400J/g、又は約100〜400J/gの範囲の潜熱を持ち得る。該相転移物質の転位温度は、典型的に、該相転移物質により維持し得る所望の温度又は温度範囲に関係する。幾つかの例において、該相転移物質は約−10℃〜約110℃、例えば約0℃〜約100℃、約0℃〜約50℃、約10℃〜約50℃、約15℃〜約45℃、約22℃〜約40℃、又は約22℃〜約28℃、の範囲の転位温度を持ち得る。該相転移物質の選択は、その、該核を形成する材料との反応性又は非反応性、その、環境又は加工条件下での耐劣化性、その生分解性及びその毒性のような他の考慮すべき事項に依存し得る。
【0071】
ある種の実施において、該相転移物質は、n個の炭素原子を持つ線状アルカン、即ちnが正の整数であるCn パラフィン系炭化水素を含み得る。表3は該相転移物質として使用し得るC13-C28のパラフィン系炭化水素のリストを提供する。認識され得るように、パラフィン系炭化水素の炭素原子の数はその融点に関係する。例えば、1分子当り20個の直鎖状炭素原子を含むn-エイコサンは36.8℃の融点を持つ。比較して、1分子当り14個の直鎖状炭素原子を持つn-テトラデカンは5.9℃の融点を持つ。
【表3】

【0072】
該被覆物品100に望まれる特定の特性に依存して、該第2層104は該第1層102の上表面106の約1〜約100%を覆い得る。かくて、例えば、該第2層104は、該最上表面106の約20〜約100%、約50〜約100%、又は約80〜約100%、を覆い得る。該被覆物品100の温度調整性が制御すべき事項である場合は、該第2層104は該上表面106をより大きいパーセンテージで覆い得る。一方、該被覆物品100のその他の性質が制御すべき事項の場合は、該第2層104は該上表面106をより少ないパーセンテージで覆い得る。別法として、又は併合的に、被覆物品100の温度調整性とその他の性質をバランスさせる場合は、該第2層104の厚さ又は該第2層104中への該マイクロカプセル112の充填レベルを調節するのが望ましくあり得る。
【0073】
ある種の実施において、該第2層104は、マイクロカプセル112の充填レベルが、該マイクロカプセルの乾燥重量によるパーセントとして約1〜約100%の範囲であり得る。かくて、例えば、該第2層104は、該マイクロカプセルの乾燥重量によるパーセントとして約40〜90%、約50〜約80%、又は約60〜70%の範囲の充填レベルを持ち得る。該被覆物品100の温度調整性が制御事項である場合、該第2層104はより高いマイクロカプセル112の充填レベルを持ち得る。一方、該被覆物品のその他の性質が制御事項である場合、該第2層104はより低いマイクロカプセル112の充填レベルを持ち得る。別法として又は併合的に、該被覆物品の温度調整性とその他の性質をバランスさせる場合は、該第2層104の厚さ又は該第2層104により覆われる該上表面106のパーセンテージを調節することが又望ましくあり得る。該マイクロカプセル112における相転位物質対殻の重量比を、例えば約10/90〜約90/10の範囲、約50/50〜約90/10、約75/25〜約90/10、又は約80/20〜約90/10の範囲の値に調節することもまた望ましくあり得る。幾つかの例において、該第2層104は、該バインダー110中に分散された1式の付加的なマイクロカプセル(図1に示さず)を含むように形成され得る。これらの付加的なマイクロカプセルは、該マイクロカプセル112とは、例えば形又はサイズが違うことにより、違う材料で形成された殻を含むもしくは違う官能基を含むことにより、又は違う相転位物質を含むことにより、ある面で相違し得る。これら付加的なマイクロカプセルの少なくとも幾つかは、該バインダー110、1個又はより多くのマイクロカプセル112、該第1層102、又はそれらの組合せ、と化学的に結合し得ることが期待される。
【0074】
幾つかの例において、該第2層104は、該第1層102の最上層を通した実質的均一な特性を提供するように形成され得る。かくて、図1に示すように、該マイクロカプセル112は該第2層104中に実質的均一に分散される。そのような該マイクロカプセル112の分散の均一性は、他の部分より該マイクロカプセル112の密度が低い該被覆物品100のある部分を通して熱が優先的にそして望ましくなく伝導するのを防ぐのに役だち得る。そのような分散の均一性は該被覆物品100によりむらのない触感を提供し得る。しかしながら、該被覆物品に望まれる特定の特性によっては、該マイクロカプセル112の分散は該第2層104の1個所又はより多くの個所で変化され得る。かくて、例えば、該マイクロカプセル112は、該第2層の1個所又はより多くの個所で高い濃度とされ、又は該第2層104中の1方向又はより多くの方向に沿った濃度分布に従って分散され得る。
【0075】
該被覆物品100を形成する間、該バインダー110と乾燥した粉末の形で提供され得る該マイクロカプセル112とを混合することにより、水性又は非水性の被覆用組成物が形成され得る。ある種の実施において、該バインダー110は乳化された形で提供され得、それは、該バインダー110と該マイクロカプセル112との溶媒(例えば、水)中での、それらの持つ官能基は未反応のままでの、均質な溶液混合を可能にする。該被覆用組成物は、該第1層102に適用されれば、相補的な官能基間での化学結合は、乾燥、加熱又はその他の方法による溶媒除去を引き金とし得る。乳化された形での該バインダー110の使用は水不溶性の又は僅かに水溶性の成分の混合をも又可能にする。
【0076】
幾つかの例において、該被覆用組成物を形成する際1式の触媒が添加され得る。そのような触媒は、該バインダー110中に含まれるものと該マイクロカプセル112中に含まれるものとの間、又は該第1層中に含まれるものと該マイクロカプセル中に含まれるものとの間のような相補的な官能基間の化学結合を促進し得る。触媒として使用され得る材料の例は、硼素塩、次亜燐酸塩(例えば、次亜燐酸アンモニウム及び次亜燐酸ナトリウム)、燐酸塩、錫塩(例えば、ジブチル錫ジラウリン酸塩及びジブチル錫ジ酢酸塩のような、Sn+2又はSn+4の塩)、及び亜鉛塩(例えば、Zn+2の塩)を含む。該被覆用組成物に添加される錫塩又は亜鉛塩の望ましい量は、乾燥重量%として約0.001〜約1.0%、例えば約0.01〜約0.1%の範囲であり得る。該被覆用組成物に添加される硼素塩又は燐酸塩の望ましい量は、乾燥重量%として約0.1〜約5%、例えば約1〜約3%の範囲であり得る。触媒として使用し得る材料のその他の例は、金属アルキル化物、金属塩、金属ハロゲン化物、及び金属酸化物を含み、その場合適切な金属は、Sn、Zn、Ti、Zr、Mn、Mg、B、Al、Cu、Ni、Sb、Bi、Pt、Ca、及びBaを含む。有機酸及び有機塩基、例えば硫黄を基材とするもの(例えば、硫酸)、窒素を基材とするもの(例えば、硝酸)、リンを基材とするもの(例えば、燐酸)、又はハロゲン化物(例えば、F、Cl、Br、及びI)、も又触媒として使用し得る。触媒として使用し得る材料の更なる例は、クエン酸、イタコン酸、乳酸、フマール酸、及び蟻酸のような酸を含む。
【0077】
ある種の実施において、1式の反応性成分又は改質剤もまた、該被覆用組成物を形成する際に添加され得る。そのような改質剤は該バインダーの架橋を可能にし、耐久性及びその他の性質のような性質の改善を提供し得る。改質剤として使用し得る材料の例は、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、酸無水物重合体、及びポリアミン、のような重合体を含む。該被覆用組成物に添加される改質剤の望ましい量は、乾燥重量%として約1〜約10%、例えば約1〜約5%の範囲であり得る。1式の添加剤もまた、該被覆用組成物を形成する際に添加され得る。幾つかの例において、これらの添加剤は該マイクロカプセル112中又は該バインダー110中に分散される1式の付加的なマイクロカプセル(図1中に示さず)中に含有され得る。これら付加的なマイクロカプセルの少なくとも幾つかは、該バインダー110、1個又はより多くのマイクロカプセル112、該第1層102、又はそれらの組合せ、と化学的に結合し得ることが期待される。添加剤の例は、水吸収性、水吸上げ能力、撥水性、耐汚染性、耐汚れ性、及び耐臭気性を改善するものを含む。添加剤の更なる例は、抗微生物剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、及び増粘剤を含む。添加剤の更なる例は下記表4中に示される。
【表4】

【0078】
形成されると、該被覆用組成物は任意の適切な被覆技術を用いて該第1層102の上表面106上に適用され又は付着される。かくて、例えば、該被覆用組成物は、パジング;空気噴霧スプレー、空気不使用噴霧スプレー、又は静電スプレーのようなスプレー塗布;ロール式ナイフ塗布;スロットダイ塗布;気泡(foam)塗布;又はスクリーン印刷(screenprint)塗布、を用いて適用され得る。該被覆用組成物が該上表面106に適用された後、該被覆用組成物は硬化され、乾燥され、架橋され、反応され、又は固形化(solidify)され、該第2層104を形成することができる。
【0079】
パジングの場合、例えば、布が、全固形物(例えば、該マイクロカプセル112、該バインダー110、及び任意の触媒)を約5〜25重量パーセント、例えば約10〜20重量パーセント含む該被覆用組成物中に浸漬されそして含浸され得る。過剰の溶液は、約5〜約45ポンド/平方インチ(「psi」)、例えば約5〜30psi又は約5〜15psiの範囲の圧力で操作し得るニップロールによる処理により除去し得る。次いで、該パジングされた布は、約1〜約5分間、例えば約2〜約3分間、約80〜約120℃、例えば約90〜約100℃の範囲の温度で乾燥され得る。該乾燥された布は、次いで、約1〜約5分間、例えば約2〜約3分間、約150〜約180℃、例えば約150〜約165℃の範囲の温度で硬化され得る。乾燥及び硬化は、例えば高強度赤外線照射、標準的なガスだき硬化炉、標準的な電気加熱硬化炉、又はそれらの組合せを用いるような適切な加熱技術を用いて実施し得る。
【0080】
スプレー塗布の場合、布は、全固形物を約5〜約25重量%、例えば約10〜約20重量%含み得る該被覆用組成物をスプレーされ得る。幾つかの例において、該被覆用組成物は、約50〜約200重量%、例えば約50〜約100%の湿潤含浸量となるように該布上にスプレーされ得る。スプレーは、末口サイズが約10〜約50ミクロン、例えば約20〜約20ミクロンである1式のノズルを用いて達成し得る。望ましくは、該被覆用組成物は、約10〜約50psi、例えば約10〜約20psiの範囲の空気圧を用いて噴霧され得る。該被覆用組成物は、貯蔵タンクから、又は1式のスプレー配管及びノズルを通して、空気圧又はメカニカルポンプ(例えば、ダイヤフラムポンプ)によりポンプ輸送され得る。スプレーされた該布は、次いで、パジングについて上記したようにして硬化され得る。スプレーによる完成衣料品の場合、硬化はまた、標準的な家庭用の洗濯物回転乾燥機中でも実施でき、その場合該衣料品は、約20〜約60分、例えば約30〜約45分、約50〜約120℃、例えば約65〜約110℃の範囲の温度で回転乾燥され得る。そのような回転乾燥機の使用は比較的長く且つゆっくりした硬化過程を提供し、それにより相補的な官能基間の化学結合を促進する。更に、そのような回転乾燥機の使用は上質な手触り及び触感のための改良された柔軟性を提供し得る。
【0081】
スクリーン印刷塗布の場合、該被覆用組成物は、約100メッシュのスクリーンを用い、約10%の乾燥含浸量となるように適用され得る。硬化は、約3〜約10分、例えば約3〜約5分、約140〜約170℃、例えば約140〜約160℃の範囲の温度で実施し得る。
【0082】
注目は、次に、本発明のもう1つの実施態様により実施された被覆物品200を示す図2に向う。特に、図2は、該低く物品200の上部断面図を示し、それは第1層202及び該第1層に隣接する第2層204を含む。
【0083】
該被覆物品200のある特徴は図1について先に記載したのと同様の仕方で実施され、かくて、更に詳細に記載する必要は無い。かくて、例えば、該第1層202は支持体として実施され、繊維質材料又は重合体のような任意の適切な材料で形成される。また、該第2層204は被覆として実施され、バインダー(図2には示さず)及び該バインダー中に分散した1式のマイクロカプセル(図2中に示さず)から形成される。
【0084】
図2に示すように、該第2層204は十文字のパターンに形成される。この十文字パターンは、距離を持って離れた第1の1式の被覆領域(例えば、被覆ストライプ)を含み、それらは距離を持って離れた第2の1式の被覆領域と角度を持って交差する。示された実施態様において、該第1の1式の被覆ストライプは互いに実質的に平行で且つ同じ間隔であり、該第2の1式の被覆ストライプもまた互いに実質的に平行で且つ同じ間隔である。第1及び第2の1式の被覆ストライプは約90度の角度で交差し、実質的に菱形又は四角形(即ち、図2の上部図から分るように)の不連続領域212を作り出し、それは該第1層202の上表面に渡って分布される。所望により、該被覆ストライプの間隔、幅、又は交差角度は該不連続領域の間隔、形状、又はサイズを調節するため変えることができる。該被覆物品200又は使用される特定の塗布技術に望まれる特別な特性に依存して、該被覆ストライプの厚さは、該上表面206に渡って実質的に均一とし又は変えることができる。該示された実施態様において、該被覆ストライプの厚さは約20mmまで、例えば約0.1〜約20mm、そして典型的には約2mmまで、例えば約0.1〜約2mmであり得る。
【0085】
示された実施態様において、該不連続領域212は互いに分離されそして該第2層204で覆われない、該上表面206の残部を露出する。そのような仕方において、該不連続領域212は、皮膚炎症を引き起こす傾向を減じるのみならず、例えば改善された呼吸性、改善されたドレープ性、改善された弾力性、改善された柔軟性、改善された水吸収性のような改善された性質を提供し得る。例えば、該不連続領域212は、1つ又はより多くの該不連続領域212を横切る線に沿った該被覆物品200の曲げを容易にすることにより改善された弾力性を提供し得る。また、該上表面206の残部を露出することにより、該不連続領域212は該第1層202との接触が可能となり、該被覆物品200の柔軟性に全体としての改善を提供する。更に、該不連続領域212は該被覆物品200を通した空気又は水蒸気の移動を容易にする通路又は開口部として役立ち、それにより呼吸性における改善を提供する。
【0086】
該第2層204は、様々な他の規則的な又は不規則なパターンで、且つ様々な他の形およびサイズを持った該不連続領域212と共に形成され得ると認識されるべきである。実施例として、該第2層204は、ハニカム状パターン(例えば、6角形の該不連続領域212を持つ)、格子状パターン(例えば、正方形又は長方形の該不連続領域212を持つ)、又はランダムパターン(例えば、ランダムに分布した該不連続領域212を持つ)、に形成され得る。一般に、該不連続領域212は、規則的に距離を持つ又は不規則に距離を持つ間隔で該上表面206に渡って分布し得る。該不連続領域212は、次のような様々な規則的な又は不規則な形で形成され得る:円形、半円形、菱形、6角形、マルチローバル(multi-lobal)、8角形、楕円形、5角形、長方形、正方形、星形、台形、三角形、及びクサビ形。所望により、1個又はより多くの該不連続領域212はロゴ、文字又は数字として形成され得る。該不連続領域212は約100mmまでのサイズ(即ち、図2の上部図から分るように)、例えば約0.1〜約100mm、そして典型的には約1〜約10mmの範囲のサイズを持ち得る。一般に、該不連続領域212は、同じ又は違う形、そして同じ又は違うサイズを持ち得る。
【0087】
次に図3に向うに、本発明の更なる実施態様により実施される被覆物品300が示される。特に、図3は、該被覆物品300の上部断面図を示し、それは第1層302及び該第1層302に隣接する第2層304を含む。
【0088】
該被覆物品200と同様に、該被覆物品300のある特徴は図1について先に記載されたのと同様の仕方で実施され、かくて、更に詳細に記載する必要は無い。かくて、例えば、該第1層302は支持体として実施され、繊維質材料又は重合体のような任意の適切な材料により形成される。又、該第2層304は被覆として実施され、バインダー(図3に示さず)及び該バインダー中に分散する1式のマイクロカプセル(図3に示さず)により形成される。
【0089】
図3を参照するに、該第2層304は点パターンで形成される。特に、該第2層304は、実質的に円形で(即ち、図3の上部図から分るように)、且つ該第1層302の上表面312に渡って分布する1式の被覆領域312として形成される。示された実施態様において、該被覆領域312は該上表面306に渡り実質的にランダムな仕方で分布される。該被覆物品300に望まれる特別な特性又は使用される特定の塗布技術に依存して、個々の該被覆領域312の厚さは均一又は不均一であり得る。示された実施態様において、個々の該被覆領域312の厚さは約20mmまで、例えば約0.1〜約20mmであり得、そして典型的には約2mmまで、例えば約0.1〜約2mmであろう。
【0090】
図3に示したように、該被覆領域312は互いに分離され、且つ、該第2層304で覆われていないが以上表面306の残部を露出する。そのような仕方において、該被覆領域312の分離は、皮膚炎症を引き起こす傾向を減じるのみならず、例えば改善された呼吸性、改善されたドレープ性、改善された弾力性、改善された柔軟性、改善された水吸収性のような改善された性質を提供し得る。例えば、この分離は該被覆物品300の曲げを容易にすることにより改善された弾力性を提供する。また、該上表面306の残部を露出することにより、この分離は該第1層との接触を可能にし、該被覆物品300のため柔軟性における全体的な改善を提供する。更に、この分離は該被覆物品300を通した空気又は水蒸気の移動を容易にする通路又は開口部を提供でき、それにより呼吸性における改善を提供する。
【0091】
該被覆物品300に望まれる特別な特徴又は使用される特定の塗布技術に依存して、該被覆領域の間隔、形又はサイズは図3に示したものから変えることができる。一般に、該被覆領域312は規則的に又は不規則に距離を持つ間隔で該上表面306に渡って分布され得る。例えば、図3に示されたランダムな分布の代わりに、該被覆領域312は想像上の格子又は任意の2次元ネットワークの交差点に位置し得る。該被覆領域312は、次のような様々な規則的な又は不規則な形で形成され得る:円形、半円形、菱形、6角形、マルチローバル(multi-lobal)、8角形、楕円形、5角形、長方形、正方形、星形、三角形、台形及びクサビ形。所望により、1個又はより多くの該被覆領域312はロゴ、文字又は数字として形成され得る。該被覆領域312は、約10mmまで(即ち、図3の上部図から分るように)、例えば約0.1〜約10mmのサイズを持ち得、そして典型的には約1〜約4mmの範囲のサイズを持つであろう。一般に、該被覆領域312は、同じ又は違う形、そして同じ又は違うサイズを持ち得る。
【実施例】
【0092】
次の実施例は、当業者のための記載を示し且つ提供するために、本発明の幾つかの実施態様の特定の特徴を記載する。この実施例は、単に本発明を理解し幾つかの実施態様を実行するのに有用な特定の方法論を提供するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例1
【0093】
6種の異なる被覆用組成物が下記表5に示した成分を使用して調製された。重合体A(Dow Corning Corp.により、8650エポキシシリコン(100%固体)として供給)及び重合体B(Dow Corning Corp.により、SM8715EXエポキシシリコン(40%固体)として供給)はエポキシ基を持つ珪素含有重合体であった。重合体C(Dow Corning Corp.により、Q2-8818アミンシリコン(40%固体)として供給)はアミン基を持つ珪素含有重合体であった。重合体D(Bayer Chemicals Inc.により、BAYHYDUR VPLS 2336イソシアネート(100%固体)として供給)はイソシアネート基を持つポリオールであった。重合体E(Siltech Corp.により、SILSURE J100親水性シリコン(100%固体)として供給)は水酸基を持つ珪素含有重合体であった。マイクロカプセル((45%溶液)Ciba Specialty Chemicalsにより供給)は相転位物質を含む、カルボキシル基を持つ殻を含んだ。
【表5】

【0094】
該被覆用組成物は、櫂形翼混合機で成分を混合して調製された。該被覆様組成物は全固形分が約15重量%となるように水で希釈され、次いで、4.5オンス/平方ヤード(「osy」)のブラッシングしたポリエステル100%の織布、及び3.2osyの綿100%のニット、を含む様々な布に適用された。
【0095】
被覆用組成物1から5は、パジングにより夫々の布に適用されたが、それは、各々の布の該被覆用組成物の1つへの浸漬及び含浸、約30psiの圧力で操作するニップロールを通した過剰溶液の搾り出し、約110℃、3分間の乾燥、及びその後の約170℃、1分間の硬化を含んでいた。パジングは約60〜約80重量%の間の湿潤含浸量をもたらし、そして、硬化後、約8〜約12重量%の間の乾燥含浸量をもたらした。被覆用組成物6は綿布上にスプレーされ、約131重量%の湿潤含浸量をもたらした。スプレーされた布は次いで標準的な家庭用回転乾燥機中に置かれて約30分間高熱で乾燥され約18重量%の乾燥含浸量をもたらした。
【0096】
得られた被覆布の性質の測定は様々な試験プロトコールにより実施された。比較目的のため、測定は対照布1から3についてもなされた。対照布1は2.0osyの絹タフタ布であり、対照布2は6.0osyの330デニールCORDURA布であり、そして対照布3(Outlast Technologies, Lnc.により供給)は、相転位物質を含むマイクロカプセル(直径20ミクロン)を65乾燥重量%含む1.0osyのポリアクリル酸被覆(polyacrylic coating)、で覆われた、2.0osyのポリエステルスーツ裏地織布(woven polyester suit lining fablic)であった。測定結果は下記表6に示される。
【表6】

【0097】
表6を参照するに、潜熱の測定は示差走査熱量計を用いた標準的な仕方で行なった。動力学的温度測定は、Hittle 等の米国特許6,408,256、名称"Apparatus and Method for Thermal Evaluation of any Thin Material"、及びAmerican Society for Testing and Materials(「ASTM」)-Standard Test Method for Steady State and Dynamic Thermal Performance of Textile Materials、に記載されたようにして実施された。これら文献の記載はその全文が引用によってここに包含される。特に、該動力学的温度測定は、50±25W/m2の動力学的 フラックス設定(flux setting)と約363秒のサイクル時間を用いて実施された。該動力学的温度測定の結果は温度調製因子(Temperature Regulating Factor)「TRF」として示された。認識されるように、該TRFは、0〜1の範囲の値を持ち、0は完全な温度緩衝を、又1は温度緩衝が全く無いことの指標である。
【0098】
ドレープ性の測定は、1から10の等級で布を判定する1団の個人によって実施され、1は乏しいドレープ性を、又10は極めて優れたドレープ性の指標である。同様に、布の目視外観は布上の被覆が目視で検知できるか否かにより判定された。
【0099】
弾力性測定は、ASTM D5732 Standard Test Method for Stiffness of Nonwoven Fabrics Using the Cantilever Testに記載のようにして実施された。この文献の記載は引用によって全文がここに包含される。特に、該弾力性測定は、各々の布を制御された速度で水平の支持プラットホームに渡り一端が該プラットホームを張り出すようにスライドさせることにより実施した。該張り出し長さが増加するに従って、該布は下方に曲がる。下方への曲がりの角度が41.50度になったときに該張り出し長さが測定された。該張り出し長さ、布の質量、及び該布の面積が、次いで曲げ長さを算出するのに用いられ、より小さい曲げ長さはより大きな弾力性の指標となる。
【0100】
耐久性測定は、American Association of Textile Chemists and Colorists(「AATCC」) Test Method 150-1995に記載のようにして実施された。この文献の記載は引用によりその全文がここに包含される。特に、該耐久性測定は、各々の布を10回の家庭洗濯サイクルに付し、それら10サイクルの後の潜熱の損失パーセントを測定することにより実施した。より少ない損失パーセントはより大きい耐久性の指標である。
【0101】
水吸収性測定は、AATCC Test Method 79-1995の記載のようにして実施した。この文献の記載は引用により全文がここに包含される。特に、該水吸収性測定は各々の布上にある量の水(例えば、1滴の水)を置き、該水の鏡面反射が消失する時間の長さを測定することにより実施された。より短い時間はより大きい水吸収性の指標である。
【0102】
表6を参照することにより分るように、被覆用組成物1〜6を用いて被覆された布は、8J/g超の潜熱、0.5より小さいTRF、12mmより小さい曲げ長さ、及び典型的に10秒よりも短い水吸収時間、を含む数多くの望ましい性質を示した。また、被覆用組成物1,3,4および6を用いて被覆された布は21%よりも大きくない潜熱の損失パーセントを示した。更に、被覆用組成物1を用いて被覆された布は、対照布3に比し極めて優れたドレープ性と改善された目視外観を示した。
実施例2
【0103】
ある種の被覆布について皮膚炎症の検討が試験プロトコールにより実施された。該被覆布は、被覆用組成物Aでパジング被覆されたポリエステル布(実施例1の被覆用組成物3のそれと同様の成分を用いて調製されたもの)及び被覆用組成物Bによりスプレー被覆された綿布(実施例1の被覆用組成物6のそれと同様の成分を用いて調製されたもの)、を含んでいた。比較目的のため、該検討はまた、対照布A〜Cを含んでいた。対照布Aは未処理ポリエステル布、対照布Bは未処理綿布、そして対照布Cは標準的な被覆用組成物を用いて被覆された布であった。120のヒト被験者が該検討に使用された。cachタイプの布の試料が適用され、ヒト被験者の背中にテープ止めされた。新しい試料が10日間毎日同じ個所に適用され、皮膚の反応があらゆる急性及び持続性の反応について評価された。
【0104】
下記表7は、総数で1120の誘導段階判断(induction phase readings)(即ち、ヒト被験者総数×ヒト被験者1人当り10の判断)の結果を示す。この結果は。次の等級を基準として示された:0-皮膚反応なし;1-布当て個所に紅斑(例えば、皮膚の赤み)あり;2-布当て個所に紅斑と水腫(例えば、組織細胞間での漿液の異常な盛り上り)あり;3-布当て個所に紅斑、水腫及び小水疱(例えば、液で満たされた嚢疱)あり;4-布当て個所に紅斑、水腫及び水疱(例えば、水疱)あり;X-激しい皮膚炎症及び試料の継続使用不可。表7を参照することで分るように、被覆用組成物A及びBを用いて被覆された布はヒト被験者の誰にも如何なる観察できる皮膚炎症も起さず、一方対照布Cは3人のヒト被験者に僅かな皮膚炎症を起し、その内の2人は激しい皮膚炎症に進行した。
【表7】

【0105】
上記された本発明の実施態様は例として提供されたもので、様々な他の実施態様が期待されると認識されるべきである。例えば、本発明の幾つかの実施態様は反応性の官能基を含むマイクロカプセルに関して記載されてきたが、本発明の他の実施態様はそのような反応性の官能基を含まないマイクロカプセルを用いて実施し得ると期待される。そのような他の実施態様として、バインダーは、エポキシ基を持つ珪素含有重合体、エポキシ基を持つポリグリコール、エポキシ基を持つ炭化水素樹脂、又は他のエポキシ基を持つ重合体、を含むのが望ましくあり得る。
【0106】
本発明の幾つかの実施態様は、マイクロカプセルと置換えて又は合同させて、他のタイプの封じ込め構造を使用して実施し得ると期待される。一般に、封じ込め構造は相転位物質を含み、吸収し又はそれと反応するように使用でき、化学結合を可能にする反応性の官能基を含み得る。幾つかの例において、封じ込め構造は、様々な形、及び約0.1〜約1000ミクロン、例えば約0.1〜約500ミクロン、約0.1〜約100ミクロン、約1〜約15ミクロン、約1〜約10ミクロン、約1〜約5ミクロン、又は約2〜約3ミクロンの範囲のサイズ、を持つ微粒子として提供され得る。ある種の実施として、該微粒子の実質的な画分、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、が例えば約1〜約15ミクロン又は約1〜約5ミクロンのような特定された範囲のサイズを持つことが望まれ得る。該微粒子は、形とサイズのどちらか又は両方に関して単分散であることが又望まれ得る。微粒子の例は、沈降シリカ微粒子又はフュームドシリカ微粒子のようなシリカ微粒子、ゼオライト微粒子、黒鉛微粒子又は活性炭微粒子のような炭素微粒子、及び吸収性材料又は超吸収性材料類で形成された微粒子を含む。微粒子の更なる例はここに記載されたマイクロカプセルを含む。
【0107】
当業者はここに記載された該被覆物品を開発するのに更なる説明を必要としないが、次の参考文献を検討することによりマイクロカプセルの形成に関して手助けとなるものを見出すかも知れない:Tsuei 等の米国特許第5,589,194号、名称"Method of Encapsulation and Microcapsules Produced Thereby;", Tsuei 等の米国特許第5,433,953号、名称"Microcapsules and Method for Making Same;", Hatfieldの米国特許第4,708,812号、名称"Encapsulation of Phase Change Materials;",
及びChen 等の米国特許第4,505,953号、名称"Method for Preparing Encapsulated Phase Change Materials;", これら文献の開示事項は引用によりその全体がここに包含される。当業者は、Brice 等の米国特許出願公開第2004/0033743、名称"Coated Articles Having Enhanced Reversible Thermal Properties and Exhibiting Improved Flexibility, Softness, Air Permeability, or Water Vapor Transport Properties,"を検討することにより不連続的被覆の実施に手助けとなるものを見出すかもしれない、この文献の開示事項は引用によりその全体がここに包含される。
【0108】
本発明はその特定の実施態様に関して記載されてきたが、様々な変更がされ得、そして、該付加された請求項により定義された本発明の真の思想及び技術範囲から逸脱することなしに等価のものに置換え得ると理解されるべきである。更に、本発明の目的、思想及び技術範囲に対して、特定の状況、材料、組成物、方法、操作に適合させるため多くの改変が為され得る。そのような改変の全てはここに付加される請求項の範囲の中にあると意図される。特に、ここに記載された方法は特定の順序で実施される特定の操作に関して記載されてきたかもしれないが、これらの操作は、本発明の教示から逸脱することなしに、組み合わされ、細分化され、又は順序を変えて、等価の方法を形成し得ると理解されるであろう。従って、ここにおいて特に指示しない限り、操作の順序とグループ分けは本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
本発明の幾つかの実施態様の性質と目的のよりよい理解のため、添付された図面と合せて次の詳しい説明が参照される。
【0110】
【図1】図1は、本発明の1実施態様により実施される被覆物品を示す;
【0111】
【図2】図2は、本発明のもう1つの実施態様により実施される被覆物品を示す;そして
【0112】
【図3】図3は、本発明の更なる実施態様により実施される被覆物品を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体;及び
該支持体の少なくとも1部を覆い、そして、ガラス転位温度が−110℃〜−40℃の範囲にあるバインダー;及びサイズが1ミクロン〜15ミクロンの範囲にある複数個のマイクロカプセル、を含む被覆
を含み、該複数個のマイクロカプセルの少なくとも1個は該支持体及び該バインダーの内の少なくとも1つと化学的に結合している、被覆物品。
【請求項2】
該支持体が、布、紡績糸、繊維及び皮革の内の1つである、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項3】
該支持体がセルロース、絹及び羊毛の内の少なくとも1つで形成されている、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項4】
該バインダーのガラス転位温度が−110℃〜−75℃の範囲にある、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項5】
該バインダーが一式のエポキシ基を含む珪素含有重合体である、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項6】
該珪素含有重合体が、該一式のエポキシ基を0.2〜5重量%含む、請求項5に記載の被覆物品。
【請求項7】
該バインダーが、一式のアミノ基を含む珪素含有重合体である、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項8】
該珪素含有重合体が、該一式のアミノ基を0.1〜20重量%含む、請求項7に記載の被覆物品。
【請求項9】
該バインダーが、一式のエポキシ基を含むポリグリコールである、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項10】
該バインダーが、一式のイソシアネート基を含むポリオールである、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項11】
該ポリオールが、該一式のイソシアネート基を5〜30重量%含む、請求項10に記載の被覆物品。
【請求項12】
該複数個のマイクロカプセルの少なくとも1個が該支持体と該バインダーの両方に化学的に結合している、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項13】
該複数個のマイクロカプセルの少なくとも1個が、アミド基、エステル基、エーテル基、尿素基及びウレタン基の内の少なくとも1つを介して共有結合している、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項14】
該複数個のマイクロカプセルの少なくとも1個が、該支持体及び該バインダーの内の少なくとも1つとイオン結合している、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項15】
該複数個のマイクロカプセルのサイズが1〜5ミクロンの範囲にある、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項16】
該複数個のマイクロカプセルが、それらのサイズに関して単分散である、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項17】
該複数個のマイクロカプセルが、潜熱が少なくとも40J/gであり且つ転位温度が0℃〜50℃の範囲にある相転位物質を含む、請求項1に記載の被覆物品。
【請求項18】
該相転位物質が、吸着と該転位温度における該潜熱の放出の内の少なくとも1つに基づき、該被覆物品を通しての熱移動を制御する、請求項17に記載の被覆物品。
【請求項19】
該被覆が、該相転位物質を含む該複数個のマイクロカプセルを40〜90乾燥重量%含む、請求項17に記載の被覆物品。
【請求項20】
該被覆が、該相転位物質を含む該複数個のマイクロカプセルを50〜80乾燥重量%含む、請求項19に記載の被覆物品。
【請求項21】
該複数個のマイクロカプセルと該相転位物質が、第1の複数個のマイクロカプセルと第1の相転位物質に夫々対応し、そして該被覆が更に該バインダー中に分散した第2の複数個のマイクロカプセルを含む、請求項17に記載の被覆物品。
【請求項22】
該第2の複数個のマイクロカプセルの少なくとも1個が、該支持体及び該バインダーの内の少なくとも1つと化学的に結合している、請求項21に記載の被覆物品。
【請求項23】
該第2の複数個のマイクロカプセルが、該第1の相転位物質とは異なる第2の相転位物質を含む、請求項21に記載の被覆物品。
【請求項24】
支持体;及び
該支持体に隣接し、そして
バインダー;及び該バインダー中に分散した複数個のマイクロカプセル
を使用して形成されている被覆
を含み、
該複数個のマイクロカプセルの少なくとも1個は
内部分画に境界をつけそして該支持体及び該バインダーの内の少なくとも1つと化学的に結合する一式の官能基を含む殻;及び
該内部分画中に配置された、潜熱が少なくとも40J/gで且つ転位温度が0℃〜50℃の範囲にある相転位物質
を含む、
被覆物品。
【請求項25】
該被覆が、更に、該支持体及び該バインダーの内の少なくとも1つに対する該一式の官能基の化学的結合を促進する触媒を使用して形成されている、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項26】
該触媒が、硼素塩、次亜リン酸塩、リン酸塩、錫塩、及び亜鉛塩の内の少なくとも1つを含む、請求項25に記載の被覆物品。
【請求項27】
該一式の官能基の化学結合が、アミド基、エステル基、尿素基、及びウレタン基の内の少なくとも1つを形成する、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項28】
該バインダーが該複数個のマイクロカプセルの少なくとも1個を介して架橋している、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項29】
該殻が、該一式の官能基を含む単量体単位を25〜60モル%含む、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項30】
該殻が、該一式の官能基を含む単量体単位を40〜50モル%含む、請求項29に記載の被覆物品。
【請求項31】
該殻が、アクリル酸及びメタクリル酸の内の少なくとも1つを基材とする単量体単位を含む、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項32】
該一式の官能基が、酸無水物基、アルデヒド基、アミノ基、N-置換アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、水酸基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、及びシリル基の内の少なくとも1つを含む、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項33】
該相転位物質の潜熱が、少なくとも60J/gである、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項34】
該相転位物質の転位温度が、22℃〜40℃の範囲にある、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項35】
該相転位物質が、炭素数14〜23の線状アルカンを含む、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項36】
該被覆が、該複数個のマイクロカプセルを60〜70乾燥重量%含む、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項37】
該被覆物品の温度調整因子が0.5未満である、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項38】
該被覆物品の水吸収時間が10秒未満である、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項39】
該被覆物品の潜熱が8J/g超である、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項40】
該被覆物品の潜熱のパーセンテージ損失が、該被覆物品に10回の洗濯サイクルを受けさせた後に21パーセント未満である、請求項39に記載の被覆物品。
【請求項41】
該複数個のマイクロカプセルと該相転位物質が第1の複数個のマイクロカプセルと第1の相転位物質に夫々対応し、そして該被覆が、更に、該バインダー中に分散した第2の複数個のマイクロカプセルを使用して形成されている、請求項24に記載の被覆物品。
【請求項42】
該第2の複数個のマイクロカプセルの少なくとも1個が、その中に吸収された第2の相転位物質を含む、請求項41に記載の被覆物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−524542(P2009−524542A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552584(P2008−552584)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/061081
【国際公開番号】WO2007/130709
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(503107196)アウトラスト テクノロジーズ,インコーポレイティド (10)
【Fターム(参考)】