説明

反応物質供給装置及び反応装置

【課題】 モバイル機器に組み込める簡素な構成でありながら、反応ガスを空間的にも、時間的にも制御性よく供給することのできる反応物質供給装置、及びその反応物質供給装置を有する反応装置を提供すること。
【解決手段】 電気化学エネルギー生成装置50を、燃料電池10、燃料供給システム20、燃料電池10の運転状態を測定する測定部30、および、測定結果に基づいて運転条件を決定する制御部40で構成し、制御部40によって決定された最適量の燃料ガス13を燃料供給システム20から供給する。燃料供給システム20では、原燃料21に濡れにくい材料からなり、貫通孔が設けられた支持部26と、濡れやすい材料からなり、網状又は多孔体状に形成された浸透蒸発部27とで燃料気化部25を構成する。原燃料21であるメタノールなどの液体燃料を貫通孔29から両者の間隙に供給し、浸透蒸発部27の表面から気体状の燃料ガス13として蒸発させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接型メタノール燃料電池(DMFC)などに好適に用いられる反応物質供給装置、及びその反応物質供給装置を有する反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池の特性を示すものとして、エネルギー密度と出力密度とがある。エネルギー密度とは電池の単位質量あたりのエネルギー蓄積量であり、出力密度とは電池の単位質量あたりの出力量である。リチウムイオン2次電池は、比較的高いエネルギー密度と非常に高い出力密度という2つの特徴を合わせもっており、完成度も高いことから、モバイル機器の電源として多く採用されている。しかし、近年、モバイル機器は高性能化にともなって消費電力が増加する傾向にあり、リチウムイオン2次電池にも更なるエネルギー密度と出力密度の向上が求められている。
【0003】
その解決策として正極および負極を構成する電極材料の変更、電極材料の塗布方法の改善、電極材料の封入方法の改善などが挙げられ、リチウムイオン2次電池のエネルギー密度を向上させる研究が行われている。しかし、実用化に向けてのハードルはまだ高い。また、現在のリチウムイオン2次電池に使用されている構成材料が変わらない限り、大幅なエネルギー密度の向上を期待することはできない。
【0004】
このため、リチウムイオン2次電池に代わる、よりエネルギー密度が高い電池の開発が急務とされており、燃料電池はその候補の一つとして有力視されている。
【0005】
燃料電池はアノード、カソード、および電解質などからなり、アノード側に燃料が供給され、カソード側に空気または酸素が供給される。この結果、燃料が酸素によって酸化される酸化還元反応がアノードおよびカソード上で起こり、燃料がもつ化学エネルギーの一部が電気エネルギーに変換されて取り出される。
【0006】
既に、様々な種類の燃料電池が提案または試作され、一部は実用化されている。これらの燃料電池は、用いられる電解質によって、アルカリ電解質型燃料電池(AFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)および固体高分子型燃料電池(PEFC)などに分類される。このうち、固体高分子型燃料電池(PEFC)には、他の燃料電池に比べて低い温度、例えば30℃〜130℃程度の温度で動作させることができる利点がある。
【0007】
燃料電池の燃料としては、水素やメタノールなど、種々の可燃性物質を用いることができる。しかし、水素などの気体燃料は、貯蔵用のボンベなどが必要になるため、小型化には適していない。一方、メタノールなどの液体燃料は、貯蔵しやすいという利点がある。とりわけ、メタノールを直接負極に供給して反応させる直接型メタノール燃料電池(DMFC)には、燃料から水素を取り出すための改質器を必要とせず、構成がシンプルになり、小型化が容易であるという利点がある。
【0008】
DMFCでは、燃料のメタノールは、通常、低濃度または高濃度の水溶液として、もしくは純メタノールが気体の状態でアノード側に供給され、アノード側の触媒層で二酸化炭素に酸化される。このとき生じたプロトンは、アノードとカソードを隔てる電解質膜を通ってカソードへ移動し、カソード側で酸素と反応して水を生成する。アノード、カソードおよびDMFC全体で起こる反応は、それぞれ、下記の反応式で示す通りである。
【0009】
アノード:CH3OH + H2O → CO2 + 6e- + 6H+
カソード:(3/2)O2 + 6e- + 6H+ → 3H2
DMFC全体:CH3OH + (3/2)O2 → CO2 + 2H2
【0010】
DMFCの燃料であるメタノールのエネルギー密度は、理論的に4.8kW/Lであり、一般的なリチウムイオン2次電池のエネルギー密度の10倍以上である。すなわち、燃料としてメタノールを用いる燃料電池は、リチウムイオン2次電池のエネルギー密度を凌ぐ可能性を大いに持っている。以上の点から、DMFCは、種々の燃料電池の中で最も、モバイル機器や電気自動車などのエネルギー源として使用される可能性が高い。
【0011】
しかしながら、DMFCには、理論電圧は1.23Vであるにもかかわらず、実際に発電している時の出力電圧は約0.6V以下に低下してしまうという問題がある。出力電圧が低下する原因は、DMFCの内部抵抗によって生じる電圧降下であって、DMFC内部には、両電極で生じる反応にともなう抵抗、物質の移動にともなう抵抗、プロトンが電解質膜を移動する際に生じる抵抗、更に接触抵抗などの内部抵抗が存在している。メタノールの酸化から電気エネルギーとして実際に取り出すことができるエネルギーは、発電時の出力電圧と、回路を流れる電気量との積で表されるから、発電時の出力電圧が低下すると、実際に取り出すことができるエネルギーはその分だけ小さくなる。なお、メタノールの酸化によって回路に取り出せる電気量は、メタノールの全量が前述の反応式に従ってアノードで酸化されるなら、DMFC内のメタノール量に比例する。
【0012】
また、DMFCには、メタノールクロスオーバーの問題がある。メタノールクロスオーバーとは、アノード側とカソード側でのメタノールの濃度差によってメタノールが拡散移動する現象と、プロトンの移動にともなって引き起こされる水の移動によって、水和したメタノールが運搬される電気浸透現象の2つの機構によって、メタノールがアノード側から電解質膜を透過してカソード側に到達してしまう現象のことである。
【0013】
メタノールクロスオーバーが生じると、透過したメタノールはカソード側の触媒上で酸化される。カソード側でのメタノール酸化反応は、前述したアノード側での酸化反応と同じであるが、DMFCの出力電圧を低下させる原因になる(例えば、「解説 燃料電池システム」,オーム社,p.66参照。)。また、メタノールがアノード側で発電に使われず、カソード側で浪費されるので、回路に取り出せる電気量がその分だけ減少する。また、カソード側の触媒は、Pt−Ru合金触媒ではなく、Pt触媒であることから、触媒表面にCOが吸着されやすく、触媒の被毒が生じるなどの不都合がある。
【0014】
以上のように、DMFCには、内部抵抗とメタノールクロスオーバーとによって生じる電圧低下、およびメタノールクロスオーバーによる燃料の浪費という2つの問題があり、これらはDMFCの発電効率を低下させる原因になっている。そこで、DMFCの発電効率を高めるために、DMFCを構成する材料の特性を向上させる研究・開発や、DMFCの運転条件を最適化する研究・開発が精力的に行われている。
【0015】
DMFCを構成する材料の特性を向上させる研究では、DMFCの電解質膜として、現在ポリパーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂膜(例えばナフィオン(登録商標)膜)が一般的に用いられているが、これよりも高いプロトン伝導率と高いメタノール透過阻止性能を有する膜の研究開発や、DMFCのアノード触媒として現在Pt−Ru触媒が一般的に用いられているが、これよりも高活性な触媒の研究開発などが挙げられる。
【0016】
上記のように燃料電池を構成する材料の特性を向上させる研究開発は、燃料電池の発電効率を向上させる手段として的確であるが、一方、運転条件を適切に制御する研究開発もまた重要である。例えば、燃料電池の特徴である高エネルギー密度を活かすためには、燃料電池の負極に対して燃料を効率的かつ安定的に供給し、発電効率を向上させることが必須である。
【0017】
DMFCにおける燃料供給方法は、液体状のメタノールをアノードに供給する液体供給型と、メタノールを蒸発させ、気体状のメタノールをアノードに供給する気体供給型の2種類に分類される。従来、様々なメタノール燃料供給システムが提案されているが、小型のDMFCに好適なものは限られている。
【0018】
小型化に好適なものとしては、例えば、後述の特許文献1では、蒸発部に隣接する燃料保持部を、毛管現象を示す部材によって構成し、液体燃料を燃料保持部に浸透させることによって蒸発部に供給し、気体状の燃料を燃料電池に供給する燃料電池が提案されている。この燃料電池には、ポンプやブロアなどを必要とせず、燃料供給系を簡素化、小型化できるメリットがある。しかも、アノードに気体状の燃料が供給されるため、電極反応活性が高く、メタノールクロスオーバーも生じにくいため、高負荷でも高い性能が得られると述べられている。
【0019】
また、後述の特許文献2にも、多孔質構造体による毛管力によってアノードの反応面に液体燃料を供給する燃料供給システムが提案されている。この燃料供給システムでも、燃料供給のためのポンプなどの駆動部をなくすことができ、燃料供給系を簡素化、小型化できるメリットがあると述べられている。
【0020】
また、後述の特許文献3には、燃料濃度の高い濃縮燃料として燃料を貯蔵し、燃料濃度の低い循環燃料を燃料電池に供給する燃料電池において、燃料の損失を抑え、発電量が変動しても濃縮燃料を高い精度で送液できる燃料電池が提案されている。
【0021】
【特許文献1】特開2000−353533号公報(第3−7頁、図1及び8)
【特許文献2】特表2005−524952号公報(第4−6頁、図2−4)
【特許文献3】特開2005−93116号公報(第5及び6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、毛管力で供給される燃料量はほぼ一定であるから、毛管現象を利用する燃料供給法では供給量を細かく制御することはできない。したがって、特許文献1で提案されている燃料電池や、特許文献2で提案されている燃料供給システムでは、初めに定められたほぼ一定の発電条件でしか燃料電池を発電させることができず、低負荷条件下では燃料供給量が過剰である状態に陥ってしまい、高負荷条件下では燃料供給量が不足する状態に陥ってしまう。
【0023】
また、直接型メタノール燃料電池(DMFC)では、アノード側触媒で起こるCO被毒、カソードで起こる溢汪(フラッディング)、電解質膜の劣化などにより、燃料電池の内部特性は刻々と変化することから、一定条件で発電させていても最適な燃料供給量が刻々と変化してしまうことが知られている。実際にDMFCを利用して発電を行う場合、少なくとも数ヶ月から1年以上使用することが想定され、その間に燃料電池の内部特性は必ず変化し、DMFCの発電効率を最大にする運転条件は刻々と変化する。毛管力のみに頼る燃料供給システムでは、このように時間とともに変化する燃料電池の内部特性に対応することができず、燃料供給量の微調整ができないことから、クロスオーバーなどの無駄な燃料の消費を起こしてしまい、燃料電池の劣化を招くとともに、燃料電池の発電効率を大幅に低下させてしまうことから、高エネルギー密度である燃料電池本来の特性を活かすことができない。
【0024】
さらに、燃料タンクに燃料が残っている状態で燃料供給を停止できるようにするためには、別途シャッターなどの燃料供給制御機構を設ける必要がある。このように、毛管現象を利用する燃料供給法でも、実用的な機能を実現するためには、何らかの燃料供給制御機構を必要とし、これにともない大型化することは避けられない。最近のマイクロポンプなどの技術の進歩はめざましいことから、毛管現象を利用する燃料供給法が、マイクロポンプなどを用いる燃料供給法に比べて、小型化、低消費電力化において必ず優位であると言うことはできない。
【0025】
特許文献3の燃料電池では、濃縮燃料と循環燃料との両方を保持するため、装置が大型化および複雑化する。また、循環燃料では濃縮燃料と水とを混合するため、DMFC本来の特性である高エネルギー密度である特性を活かすことができない。
【0026】
以上のように、DMFCの特徴である高エネルギー密度を活かしつつ、微細な燃料供給制御が行え、刻々変化する燃料電池の内部特性に対応可能な燃料供給システムは、まだ実現されていない。
【0027】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、モバイル機器に組み込める簡素な構成でありながら、反応ガスを空間的にも、時間的にも制御性よく供給することのできる反応物質供給装置、及びその反応物質供給装置を有する反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
即ち、本発明は、液体状の反応物質を蒸発させ、気体状の反応物質として反応領域に供給する反応物質供給装置であって、
前記液体状の反応物質に濡れにくい第1の支持体と、前記液体状の反応物質に濡れや すい材料からなり、前記液体状の反応物質を保持して蒸発させる第2の支持体とが、対 向又は対接して配置され、
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に前記液体状の反応物質が供給される
ように構成されている、反応物質供給装置に係るものである。
【0029】
また、前記反応物質供給装置と、前記反応物質が反応する前記反応領域とを有する、反応装置に係るものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の反応物質供給装置は、
前記液体状の反応物質に濡れにくい第1の支持体と、前記液体状の反応物質に濡れや すい材料からなり、前記液体状の反応物質を保持して蒸発させる第2の支持体とが、対 向又は対接して配置され、
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に前記液体状の反応物質が供給される
ように構成されている。
【0031】
この場合、前記第2の支持体が前記液体状の反応物質に濡れやすい材料からなり、前記液体状の反応物質を保持して蒸発させる性質を有するため、前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に供給された前記液体状の反応物質は、前記第2の支持体に保持され、その表面から蒸発することができる。この際、前記第1の支持体が前記液体状の反応物質に濡れにくい材料からなるため、前記液体状の反応物質は前記第1の支持体にはじかれ、前記第1の支持体の側を空間的に塞がれた状態になる。このため、前記第1の支持体がない場合に比べて、前記液体状の反応物質が前記第2の支持体に保持され、その表面から蒸発しようとする傾向が強められる。この結果、本発明の反応物質供給装置は、前記液体状の反応物質を前記第2の支持体に接した状態で広範囲に展開させ、広い表面から効率よく蒸発させ、気体状の反応物質として反応領域に供給することができる。
【0032】
また、本発明の反応装置は、前記反応物質供給装置と、前記反応物質が反応する前記反応領域とを有するので、前記液体状の反応物質を前記反応物質供給装置で効率よく蒸発させ、気体状の反応物質として前記反応領域に供給することができるので、前記反応物質の反応を安定して行わせることのできる反応装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の反応物質供給装置において、
前記第1の支持体の表面が平坦化され、裏面側から前記表面に達する貫通孔が設けら れ、
前記第2の支持体は、前記液体状の反応物質を保持できる形状、即ち、網状又は多孔 体状に形成され、
前記第2の支持体は、前記第1の支持体の前記表面に接するか、又は前記表面からわ ずかに離間して保持され、
前記貫通孔を通じて前記蒸発板と前記基体との間隙に供給された前記液体状の反応物 質が、前記蒸発板に浸透した後、その表面から蒸発するように構成されている、
のがよい。
【0034】
このようであれば、前記液体状の反応物質は、前記貫通孔を介して前記第1の支持体と前記第2の支持体との間隙に導かれる。前記第1の支持体は前記液体状の反応物質に濡れにくい材料からなり、表面が平坦化されているため、前記液体状の反応物質は、前記第1の支持体の平坦な前記表面に沿って展開することはできるものの、前記第1の支持体の側を完全に塞がれた状態になる。一方、間隙の反対側には前記液体状の反応物質に濡れやすい材料からなり、網状又は多孔体状に形成され、前記液体状の反応物質を保持し、蒸発させることのできる前記第2の支持体が存在する。このため、前記第1の支持体の側を塞がれた前記液体状の反応物質は、前記第1の支持体の平坦な前記表面に沿って広く展開し、すみやかに前記第2の支持体に浸透し、前記第2の支持体を伝わって上方および面方向に薄い層状に広がった後、広く形成された表面から気相へ効率よく蒸発する。
【0035】
また、前記第1の支持体と前記第2の支持体との間隙の距離は、前記第1の支持体上で前記液体状の反応物質が形成する液滴の高さ以下であるのがよい。これは、前記第1の支持体の前記表面上に導入された前記液体状の反応物質が、前記第2の支持体に接触するために必要な条件である。
【0036】
また、前記第1の支持体と前記液体状の反応物質との接触角が、0度以上であり、前記第1の支持体の表面張力が燃料の表面張力より小さいのがよい。
【0037】
また、前記第2の支持体の表面張力が前記液体状の反応物質の表面張力より大きいのがよい。
【0038】
また、前記第2の支持体の厚さが1mm以下であるのがよい。前記第2の支持体に保持された前記液体状の反応物質の層の厚さは、前記第2の支持体の厚さによって決まるため、前記液体状の反応物質をできるだけ広く展開させるには、前記第2の支持体の層の厚さが薄いほどよい。
【0039】
また、前記液体状の反応物質は自然蒸発するのがよい。このようであれば、蒸発させるための加熱手段が不要になり、前記反応物質供給装置の小型化及び低消費エネルギー化に有利である。
【0040】
本発明の反応物質供給装置は、前記反応領域として、電解質がアノードとカソードとの間に配置された電気化学デバイス部を有し、電気化学デバイスとして構成されているのがよい。
【0041】
また、前記電気化学デバイスが電気化学エネルギーを生成する電気化学デバイスであり、
前記電気化学デバイスの運転状態を測定する測定部と、
前記運転状態の測定の結果に基づき、前記電気化学デバイス部の運転条件を決定する 制御部と、
前記決定に基づいて前記電気化学デバイス部の運転条件を設定する設定部と
を有する、電気化学エネルギー生成装置として構成されたのがよい。
【0042】
また、前記電気化学デバイス部が、前記アノードに燃料を供給し、前記カソードに酸素含有ガスを供給する燃料電池として構成されているのがよい。この際、前記燃料電池の運転条件として燃料供給量が設定されるのがよく、前記燃料供給量の設定が繰り返して行われ、前記燃料電池の特性変動に即応して前記アノードにおける燃料濃度が最適化されるのが更によい。
【0043】
以下、本発明の実施の形態に基づく反応物質供給装置および反応装置の一例として、前記反応物質供給装置が、メタノールなどの気体状燃料ガスを供給する燃料供給システムとして構成され、前記電気化学デバイス部が、気体状の燃料ガスが反応物質として供給される、直接型メタノール燃料電池(DMFC)などの燃料電池として構成され、前記反応装置が電気化学エネルギー生成装置である例につき、図面を参照しながら説明する。
【0044】
初めに、高い発電特性でDMFCを運転するために必要な燃料供給システム、および燃料供給構造の中心となる概念について説明する。これは、DMFCの内部特性は経時変化するため、細かい調節が可能な燃料供給システム、ならびに燃料供給手段なしでは、最適な発電特性でDMFCを運転することは非常に難しいからである。
【0045】
図10は、アノードにおけるメタノール濃度がメタノールクロスオーバー量に及ぼす影響を示すグラフである。メタノール濃度とメタノール供給量とが比例する関係にある場合には、図10のグラフを、アノードにおけるメタノール供給量がメタノールクロスオーバー量に及ぼす影響を示すグラフであるとみなすこともできる。図10に示されているように、アノードにおけるメタノール濃度が高くなる(メタノール供給量が大きくなる)ほど、メタノールクロスオーバー量は増加する。従って、アノードにおけるメタノール濃度が適切な濃度でなければ、クロスオーバーの増加による燃料の浪費、および出力電圧の低下によって発電特性が大いに低下してしまうことは確認されている(「携帯機器用燃料電池」,技術情報協会,p.110参照。)。つまり、適切な燃料量が常に供給されるような燃料供給システムでなければ上記の問題が発生する。
【0046】
先述したように、毛管力で液体燃料をDMFCセル内に導入する燃料供給システムでは、メタノールクロスオーバーの問題に対応することができない。もし、DMFC内部特性が常に一定であれば、負荷が一定の場合、毛管力のみを利用した燃料供給システムで対応可能だが、実際には内部特性は刻々と変化してしまう。このため、最適な燃料供給量は、DMFC発電時間とともに変化するため、過剰供給によるメタノールクロスオーバーが生じる可能性は高く、大幅に発電効率を低下させてしまうことになる。
【0047】
従って、高い発電特性でDMFCを運転するためには、燃料供給システムは、時々刻々変化するDMFCの内部特性に対応して、常に最適な燃料供給量を維持し、供給過剰によるメタノールクロスオーバーの発生を抑制できるシステムでなければならない。
【0048】
さて、図1は、本実施の形態に基づく電気化学エネルギー生成装置50の構成を示す説明図である。電気化学エネルギー生成装置50は、燃料のもつ化学エネルギーの一部を電気エネルギーに変換する燃料電池10、燃料電池10に燃料ガスを供給する燃料供給システム20、燃料電池10の運転状態を測定する測定部30、および、測定結果に基づいて運転条件を決定する制御部40を有し、制御部40によって決定された最適量の燃料を燃料供給システム20から気体の状態で供給することによって、燃料電池10の運転を最適化する。
【0049】
より詳しくは、燃料電池10の運転中に燃料電池10の動作電圧および動作電流を測定し、燃料電池の動作出力を算出する。これらの測定結果を基に、燃料電池10の運転条件として燃料供給量の制御を行う。この測定と燃料供給量の設定とを頻繁に繰り返し、燃料電池10の特性変動に追従して、燃料電池10のアノードにおける燃料濃度を最適化する。なお、燃料電池10は前記電気化学デバイス部に相当する。
【0050】
燃料供給システム20では、原燃料21は燃料貯蔵手段22内に貯蔵され、燃料電池10に供給される燃料供給量が燃料供給手段23によって設定されるように構成されている。燃料供給手段23は、制御部40からの信号で駆動され得るものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、モーターや圧電素子で駆動されるバルブからなるもの、あるいは電磁ポンプなどからなるものがよい。
【0051】
原燃料21は液体状の燃料、例えばメタノールであり、燃料電池10に供給される前は燃料貯蔵手段22であるタンクまたはカートリッジに貯蔵されている。原燃料21は、制御部40において決定された量だけ燃料供給手段23によって燃料貯蔵手段22から取り出され、燃料供給ライン24を通って、燃料気化部25に供給される。燃料気化部25に供給された原燃料21はここで自然蒸発して気体状に変化する。気体状の燃料ガス13は、燃料気化部25から、燃料電池10のアノード6側に設置されている燃料供給部11へ供給される。
【0052】
図2(a)は、燃料気化部25の構成を示す説明図である。燃料気化部25は、主として、下部の支持部26および上部の浸透蒸発部27からなる。支持部26は前記第1の支持体に相当し、浸透蒸発部27は前記第2の支持体に相当する。支持部26の表面28は平坦化され、裏面側から表面28に達する貫通孔29が設けられている。貫通孔29は、燃料供給ライン24を介して燃料供給手段23に接続されており、孔径は100μm〜2mm程度であり、100μm〜300μmがより好ましい。浸透蒸発部27は、液体状の燃料を保持できる形状、即ち、網状又は多孔体状に形成されており、支持部26の表面28に接するか、または表面28からわずかに離間して保持されている。
【0053】
燃料供給手段23から供給される原燃料21は、燃料供給ライン24を通過後、貫通孔29を介して支持部26と浸透蒸発部27との間隙に導かれる。支持部26は原燃料21に濡れにくい材料からなるため、間隙に導かれた原燃料21は支持部26にはじかれ、下部を塞がれた(下部から支持された)状態になる。一方、間隙の上部には原燃料21に濡れやすい材料からなり、液体状の燃料を保持できる形状、即ち、網状又は多孔体状に形成された浸透蒸発部27が存在する。このため、下方を塞がれた原燃料21はすみやかに浸透蒸発部27に浸透し、浸透蒸発部27を伝わって上方および面方向に薄い層状に広がった後、浸透蒸発部27の全表面から気相へ蒸発する。このとき、原燃料21と支持部26および浸透蒸発部27との接触領域における表面張力のアンバランスによって、原燃料21が面方向により広がりやすくなることも考えられる。
【0054】
図2(b)は、燃料気化部25における上記の特徴的構成の効果を説明するための比較例の説明図である。図2(b−2)に示すように、燃料気化部25に浸透蒸発部27がなければ、支持部26にはじかれた原燃料21は高さhの高い液滴を形成して、支持部26の上で大きく広がることはない。また、図2(b−1)に示すように、燃料気化部25に支持部26がなく、浸透蒸発部27のみに原燃料21を保持させた場合には、原燃料21が下方へ垂れ下がる空間があるため、原燃料21が厚い層状になり、浸透蒸発部27において原燃料21が面方向に広がろうとする傾向が、原燃料21の表面張力によって減じられることになる。
【0055】
すなわち、本発明の効果は、浸透蒸発部27が、支持部26の表面28に接するか、または表面28からわずかに離間して保持されていることによって発現する。この際、上記の説明からわかるように、浸透蒸発部27と支持部26との間隙の距離は小さいほど望ましい。また、大きくとも、原燃料21が支持部26の表面28上で形成する液滴の高さ(図2(b−2)中のh)以下であることが必要であり、蒸発部25の効果が効果的に発揮されるためには、1mm以下であることが好ましい。
【0056】
浸透蒸発部27の厚さは、0.1mmから0.5mmまでであることが好ましい。浸透蒸発部27に保持された原燃料21の層の厚さは、浸透蒸発部27によって大きく影響されるので、原燃料21をできるだけ広く展開させるには、浸透蒸発部27の層の厚さが薄いほどよい。
【0057】
支持部26の厚さは、薄ければ薄いほどよい。なぜなら、燃料供給システム20を含んだ燃料電池の厚み方向を大幅に縮小できるからである。又、浸透蒸発部27からアノード6までの距離は、2mm以下であることが好ましい。
【0058】
ここでは貫通孔29を介して裏面側から間隙に原燃料21を供給する例を示したが、チューブなどを介して側方から間隙に原燃料21を供給することもできる。
【0059】
燃料気化部25に使用する材料は、特に限定されるものではないが、接触角、材料の表面張力、燃料の表面張力の値から最適な構成を選ぶ。以下、支持部26および浸透蒸発部27を構成する材料の選択など、燃料気化部25の設計の詳細について説明する。
【0060】
一般的に知られている幾つかの材料の表面張力を表1、幾つかの液体の表面張力を表2に示す。又、メタノールと幾つかの材料との接触角の測定値を表3に示す。表面張力の小さな材料は、対称性が高く、極性を持たないため、水などに濡れにくい。表面張力が大きいほど液体で濡れやすくなり、表面上に液体が広がりやすくなる。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
燃料気化部25の構造は、原燃料21と材料との接触角、原燃料21の表面張力、ならびに、構成する材料の表面張力に依存する。
【0065】
接触角とは、固体表面に置かれた液滴が固体と接した部分が作る角度θである。θが0度の場合は、液体は、固体表面全体を完全に濡らし、表面全体に広がる。θが0度より大きく、90度より小さい場合には、液体は限られた範囲に広がり、液滴のままで存在する。θが90度より大きい場合には、液体は全く固体表面に広がらず、表面を濡らすことはない。少量では球形に近くなり、接触面積を極小にする。
【0066】
表面張力とは、単位面積あたりの表面自由エネルギーのことを指し、液体が表面積を最小にしようとして縮まろうとする力のことである。
【0067】
燃料気化部25は、2つ以上の層からなってよく、最下位層は支持部26であり、最上位層は浸透蒸発部27である。支持部26は、材料の接触角と表面張力(表面エネルギー)および使用する燃料の表面張力の値で規定する。支持部26以外は、材料の表面張力(表面エネルギー)および原燃料21の表面張力の値で規定する。浸透蒸発部27は、材料の接触角、表面張力(表面エネルギー)、原燃料21の表面張力によって用いる材料を決定する。
【0068】
本実施の形態では、原燃料21がメタノールである例を説明するが、燃料は特に限定されるものではなく、メタノール以外のアルコールでも構わない。
【0069】
燃料貯蔵手段22に貯蔵されている液体メタノール(濃度99.9%)は、ポンプ等の燃料供給手段23から支持部26の表面上に放出される。支持部26では、原燃料21ができるだけ広がらないようにする。また、支持部26が原燃料21を吸収しないように、支持部26は非浸透性材料からなることが必要である。
【0070】
支持部26の材料は、基材と原燃料21との接触角の値で決定する。上記で述べたように、支持部26では、原燃料21を基材表面に広げないため、基材と燃料との接触角の値は、限定しないものの、その値は、大きければ大きいほど良い。つまり、支持部26に使用する基材は、原燃料21をはじく性質を有することを特徴とし、原燃料21は球状で存在する方が好ましい。この球状になる性質を利用し、縦方向に燃料を動かす。
【0071】
又、基材の表面エネルギーと原燃料21の表面張力も考慮する必要がある。本説明は、純液体メタノールを使用した場合を想定している。表2の液体の表面張力から分かるように、メタノールの表面張力は、22.6dyne/cmである。この値より高い表面張力を有する材料の表面上では、メタノールは、その材料の表面を濡らし、広がる。しかし、この値より低い表面張力を有する材料の表面上では、メタノールは広がらない。
【0072】
支持部26の基材上では、原燃料21は球状で存在する方が好ましいことから、基材と原燃料21との接触角が0度以上であるとともに、支持部26の基材の表面張力は、原燃料21として使用する液体の表面張力より低いことが望ましい。よって、メタノールを燃料として用いた場合、テフロン(登録商標)ベース、あるいは、シリコーン樹脂ベースの基材を用いるのが好ましい。
【0073】
拡張層が2層からなる場合、構成は、支持部26と浸透蒸発部27になる。最上位層である浸透蒸発部27からメタノールが自然揮発してアノード電極に供給される。上記で述べたように、支持部26の表面張力の性質を利用し、原燃料21を縦方向へ動かす。そのため、原燃料21を横方向へ広げる役割は、燃料気化部25の最上位層である浸透蒸発部27が担う。
【0074】
浸透蒸発部27は、支持部26の表面から反発するメタノールと接触時に、素早く横方向に燃料を広げ、全面から燃料を揮発させ、電極に供給することから浸透蒸発部27の材料の性質として、細孔が無数存在し、燃料が浸透できるような構造でなくてはならない。浸透蒸発部27の細孔の数は、限定しないが、多孔質構造体であることが好ましい。
浸透蒸発部27では、燃料が広がり、浸透することから、接触角は、測定不能である。よって、この層は、燃料と基材との表面張力の値に依存する。この層の基材全面に広がってほしいことから、燃料であるメタノール(22.6dyne/cm)より高い表面張力を有する材料を基材として用いる必要がある。
【0075】
しかし、浸透蒸発部27として利用する基材の表面張力は、ただ22.6dyne/cmより高ければ良いというわけではない。浸透蒸発部27に選択性を持たせたい場合は、的確な表面張力を有する基材を選定する必要がある。
【0076】
例えば、安定かつ効率よく燃料供給を行いたい際には、混合物による燃料濃度の変化は好ましくない。なぜなら、燃料濃度の変化は、燃料揮発速度などの変化を招き、燃料電池特性が安定しなくなるからである。
【0077】
前述したように、DMFCではアノードおよびカソードで起こる反応に必ず水が関与する。純メタノール(99.9%)を燃料として使用した場合、少量存在する水からアノード側で化学反応がスタートし、メタノール1molにつき、カソード側で3molの水が生成する。このような化学反応で発生した水は、濃度勾配による逆拡散により、カソード側からアノード側に戻され、再度化学反応に使用される。
【0078】
逆拡散してカソード側からアノード側に戻ってくる水の量は、燃料電池の発電時の電流値に比例する。特に高電流領域では、逆拡散してきた水は、反応に使用される水より多くなり、アノード側で蓄積する可能性が高い。
【0079】
純メタノールを安定的に自然揮発させたいことから、逆拡散してくる水などの溶剤との混合は好ましくない。メタノールと水が自然揮発層で混合しないように、メタノールは広げ、吸収するが、水は弾くような材料を用いることが必須条件になる。よって、的確な表面張力を有する自然揮発層の選定が必須条件である。水の表面張力は、72.7dyne/cmであることから、表面張力が、72.7から22.6dyne/cmの範囲におさまる材料を用いれば、メタノールと水は、自然揮発層で混合することはない。自然揮発層で弾かれた水を効果的に回収、もしくは、蒸発させる機構を取り入れることは簡単であることからアノード側で蓄積する水は、問題にはならない。
【0080】
もし、水とメタノールの混合物を燃料として用いた場合は、表面張力が、72.7dyne/cm以上の材料を自然揮発層に導入すればよい。
【0081】
つまり、燃料電池の燃料によって表面張力の値は変化し、又、浸透蒸発部27の材料も変化するため、浸透蒸発部27に使用する材料は、特に限定しない。
【0082】
図3は、本実施の形態に基づく電気化学エネルギー生成装置を構成する前記電気化学デバイス部である燃料電池10の断面図である。この燃料電池10を6つ直列につなぎ、平面スタックを形成した。ただし、図3では、見やすくするため、燃料電池10は各部材を分解した状態で示されている。組み上がった燃料電池10の断面図は、図1に示されている。
【0083】
図3に示すように、燃料電池10では、前記電解質である固体高分子電解質膜1を中心とし、その両側に触媒層(アノード側触媒層2とカソード側触媒層3)、拡散層(アノード側拡散層4とカソード側拡散層5)、アノード6とカソード7(アノード側集電体6とカソード側集電体7)が配置され、これらは一体化されてMEA(膜電極接合体構造)8を形成している。
【0084】
MEA8を構成する材料は、特に限定されるものではなく、適宜公知のものの中から好適なものを選択して用いることができる。例えば、固体高分子電解質膜1としては、パーフルオロスルホン酸樹脂(例えばデュポン社製のナフィオン(登録商標))等のプロトン伝導膜などを用いることができる。アノード側触媒層2とカソード側触媒層3を構成する触媒としては、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)およびルテニウム(Ru)などの単体、あるいはこれらの金属の合金などを用いることができる。また、アノード側拡散層4とカソード側拡散層5は、カーボンクロス、カーボンペーパーまたはカーボンシートなどで構成され、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などによって撥水化処理が行われているのがよい。
【0085】
本発明の前記電気化学デバイス部である燃料電池10の特徴は、燃料を効率よく、及び、安定的に燃料供給を行うことができる燃料気化部25が設けられていることにある。燃料13は気化した状態で燃料供給システム20を介して燃料供給部11に供給される。
【0086】
発電時には、液体燃料は浸透蒸発部27で蒸発し、メタノールガス等の気体状の燃料ガス13がアノード6に供給され、アノード側の触媒層2で二酸化炭素に酸化される。このとき生じたプロトンは、アノード側触媒層2とカソード側触媒層3を隔てる固体高分子電解質膜1を通ってカソード側へ移動し、カソード側で酸素と反応して水を生成する。このとき、アノード、カソードおよびDMFC全体で起こる反応は、それぞれ、例えば、下記の反応式で示す通りであり、メタノール等の化学エネルギーの一部が電気エネルギーに変換され、燃料電池10から電流が取り出される。
【0087】
アノード:CH3OH + H2O → CO2 + 6e- + 6H+
カソード:(3/2)O2 + 6e- + 6H+ → 3H2
DMFC全体:CH3OH + (3/2)O2 → CO2 + 2H2
【0088】
本実施の形態では、原燃料21がメタノールである例を説明するが、燃料は特に限定されるものではなく、メタノール以外のアルコールを燃料として用いることができる。原燃料21の状態は、液体であることが好ましい。
【0089】
測定部30は、燃料電池10の電圧を測定する電圧測定回路31と、燃料電池10の電流を測定する電流測定回路32とを有する。これらの測定手段で得られた測定結果は、運転中に通信ライン33を介して制御部40の通信部43に送信される。
【0090】
制御部40は、例えばマイクロコンピュータ等を用いることができ、測定部30から送られてきた測定結果から、一定間隔でサンプリングした燃料電池10の電圧および電流から出力を算出し、これらの算出値に基づいて燃料供給システム20を制御する。
【0091】
より具体的には、制御部40は、演算部41、記憶(メモリー)部42および通信部43などからなる。通信部43は、測定部30からのデータを受け取り、記憶(メモリー)部42に入力する機能と、通信ライン44を介して燃料供給手段23に対して燃料供給量を設定する信号を出力する機能などを備える。記憶部(メモリー)42は、通信部43が受け取った測定部30からの各種測定値や、演算部41が算出した各種平均値などを記憶する。演算部41は、記憶部(メモリー)42に入力された各種測定結果から一定間隔でサンプリングしたアノード電位、カソード電位、燃料電池の出力電圧および出力電流を平均して、平均アノード電位、平均カソード電位、平均出力電圧および平均出力電流を算出する。また、比較演算部は、記憶部(メモリー)42に保存されている各種平均値を相互比較し、燃料供給量の過不足を判定する。
【0092】
より具体的には、制御部40は、演算部41、記憶(メモリー)部42および通信部43などからなる。通信部43は、測定部30からのデータを受け取り、記憶(メモリー)部42に入力する機能と、通信ライン44を介して燃料供給手段23に対して燃料供給量を設定する信号を出力する機能などを備える。記憶部(メモリー)42は、通信部43が受け取った測定部30からの各種測定値や、演算部41が算出した各種平均値などを記憶する。演算部41は、記憶部(メモリー)42に入力された各種測定結果から一定間隔でサンプリングした燃料電池電圧、燃料電池電流から燃料電池出力を算出する。また、比較演算部は、記憶部(メモリー)42に保存されている各種平均値を相互比較し、燃料供給量の過不足を判定する。
【0093】
外部回路60(負荷)は、モバイル機器(携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant:個人用の携帯情報機器)など)を表し、燃料電池10で発電される電気エネルギーによって駆動される。
【0094】
以上のように、本実施の形態に基づく燃料供給システム20によれば、燃料気化部25において、原燃料21に濡れにくい材料からなる支持部26と、原燃料21に濡れやすい材料からなり、液体状の燃料を保持できる形状、即ち、網状又は多孔体状に形成された浸透蒸発部27とが、対接または対向して配置されているので、両者の間隙に導かれた原燃料21はすみやかに浸透蒸発部27に浸透し、浸透蒸発部27を伝わって上方および面方向に薄い層状に広がった後、浸透蒸発部27の全表面から気相へ蒸発する。この結果、燃料気化部25では、原燃料21を広い表面から効率よく蒸発させ、気体状の燃料ガス13を反応領域に供給することができる。
【0095】
また、本実施の形態に基づく電気化学エネルギー生成装置50によれば、反応領域である燃料電池10に燃料ガス13を供給する燃料供給システム20を有するので、液体状の原燃料21を効率よく蒸発させ、気体状の燃料ガス13として燃料電池10に供給することができるので、燃料ガス13の反応を安定して行わせることができる。さらに、燃料電池10の運転中に燃料電池10の動作状態の測定と、測定結果に基づく燃料供給量の制御とを頻繁に繰り返し、燃料電池10の特性変動に即応して、燃料電池10のアノード6における燃料濃度を最適化し、この結果として発電効率を高めることができる。とくに、燃料電池10がDMFCである場合には、メタノールクロスオーバーを最小限に抑えることができるので、その効果が著しい。しかも、アノード6に気体状の燃料ガス13が供給されるため、電極反応活性が高く、メタノールクロスオーバーも生じにくいため、高負荷でも高い性能が得られる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、本発明が下記の実施例に限られるものではないことは言うまでもない。
【0097】
実施例1
実施の形態で説明した燃料気化部25(図1および図2参照。)を作製し、燃料気化部25の浸透蒸発部27から自然蒸発するメタノールガスの濃度を、高感度室温型メタノールセンサを用いてリアルタイムで測定した。このセンサでは、メタノール濃度と検知される電流量とが比例関係にあるので、メタノール濃度は検知電流の電流値で示した。
【0098】
燃料気化部25の支持部26の材料としては、一般的に購入可能である、厚さ1.5mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)板を用いた。このPTFE板の中心部に直径2mm程度の細孔を形成し、この細孔と、燃料供給ライン24であるシリコンチューブとを直接接続した。燃料気化部25の浸透蒸発部27としては、厚さ0.2mmの多孔質材料(商品名:サンマップ、日東電工製超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム)を用いた。
【0099】
本実施例では、支持部26にPTFE板、チューブにはシリコンベースのものを用いているが、これらの材料に限定するものではないことは言うまでもない。又、PTFE板の厚さ、および細孔の孔径は、限定しない。この厚さに限定するものではないことはいうまでもない。
【0100】
一方、燃料貯蔵手段22には、純メタノールを注入した。燃料貯蔵手段22内の純メタノールに、燃料供給手段23であるポンプの吸い口を浸し、ポンプの吐き出し口には、燃料供給ライン24であるシリコンチューブを接続し、このチューブを介して燃料気化部25の貫通孔28から、支持部26と浸透蒸発部27との間隙にメタノールが供給されるように接続した。
【0101】
まず、燃料気化部25内での面方向の燃料の広がり方について、2つのメタノールセンサAおよびBを用いて検証した。図4は、燃料気化部25によって生成したメタノールガスの濃度の時間変化を示すグラフ(a)と、センサの位置を示す説明図(b)である。図4(b)に示すように、2つのメタノールセンサAおよびBを燃料電池10のアノード6側の燃料供給部11の二箇所に取り付けた。センサBは、燃料の噴き出し口(貫通孔28)がある中心部に、センサAは、端部に取り付けた。
【0102】
図4(a)に示すように、センサBによって中心部で測定したメタノール濃度の時間変化と、センサAによって端部で測定したメタノール濃度の時間変化とは、ほぼ一致する。これによって、中心部の燃料の噴き出し口(貫通孔28)から供給されたメタノールは、燃料気化部25において面方向へ瞬時に広がることから、6個の燃料電池10の全ての電極に対して、ほぼ同一濃度のメタノールガスを安定的に供給できることが証明された。
【0103】
従って、本発明の燃料供給システム20を用いることにより、微細な燃料供給コントロールが可能であるとともに、全ての反応領域に均等に安定的に燃料供給が行えるのである。その結果、燃料電池10の内部特性の変化に対応することができ、常に発電効率を最大にすることができるのである。
【0104】
次に、本発明の燃料気化部と燃料供給手段を組み合わせることで燃料供給量を制御できることを示す。図5は、燃料気化部25によって生成したメタノールガスの濃度の時間変化を示すグラフである。
【0105】
図5(a)は、3個のポンプを同時に用いて燃料気化部25に液体メタノールを3回供給した場合を示している。1個のポンプからは1回につき約8〜10μLの燃料が供給される(以下、同様。)。図5(a)に記号A3で示した時点が燃料供給を行った時点である。
【0106】
図5(b)は、3個のポンプまたは5個のポンプを同時に用いて燃料気化部25に液体メタノールを3回供給した場合を示している。図5(b)に記号B3で示した時点が3個のポンプを同時に用いて燃料供給を行った時点であり、図5(b)に記号B5で示した時点が5個のポンプを同時に用いて燃料供給を行った時点である。
【0107】
図5(c)は、7個のポンプを同時に用いて燃料気化部25に液体メタノールを2回供給した場合を示している。図5(c)に記号C7で示した時点が7個のポンプを同時に用いて燃料供給を行った時点である。
【0108】
図6は、比較例の毛管現象によって燃料が供給される燃料気化部によって生成したメタノールガスの濃度の時間変化を示すグラフである。
【0109】
図5(a)〜(c)を図6と比べるとわかるように、本発明の燃料気化部25と燃料供給手段23を組み合わせることによって、燃料供給量を細かくコントロールすることが可能である。これに対し、比較例の毛管現象による燃料供給では、安定的に燃料供給を行うことができるものの、燃料供給量を制御できないので、燃料電池の内部特性の変化に対応することができない。また、高電圧発電および低電圧発電などの切り替えを行うことができない。この結果、毛管現象を利用した燃料供給方法では、発電効率を最大にすることができない。
【0110】
実施例2
実施例1で作製した燃料気化部25を組み込み、図1の電気化学エネルギー発生装置を作製し、性能を評価した。
【0111】
<燃料電池の作製>
前記電気化学デバイス部として、図3に示した燃料電池10を作製した。
【0112】
アノード触媒層2は、PtとRuの比が所定の比からなる合金触媒が担持されたカーボンとナフィオン分散溶液とを所定の比で混合して作製した。カソード触媒層3は、触媒であるPtが担持されたカーボンとナフィオン分散溶液とを所定の比で混合して作製した。
【0113】
上記のように作製したアノード触媒層2とカソード触媒層3の間に電解質膜1(デュポン社製;Nafion NRE211(登録商標))を挟み、温度150度、圧力249kPaの条件下で10分間熱圧着した。
【0114】
アノード触媒層2とカソード触媒層3とが圧着された電解質膜1を、アノード側拡散層4およびカソード側拡散層5に相当するカーボンペーパー(東レ株式会社製;商品名 HGP-H-090)、さらにアノード(アノード側集電体)6およびカソード(カソード側集電体)7に相当するチタンメッシュで挟んで一体化し、MEA8を作製した。このMEAを6つ作製し、これらを直列につないで、6直列平面スタック型DMFCの電気化学デバイス部を作製した。
【0115】
<電気化学エネルギー生成装置の作製>
上記の燃料電池10を図1に示した電気化学エネルギー生成装置50に組み込み、電気化学測定装置(ソーラートロン社製、マルチスタット1480)に接続し、定電圧出力(0.3V)モードおよび定電流出力(100mA)モードの動作を行わせ、燃料不足検出、空気不足検出および燃料クロスオーバー検出を行った。
【0116】
一方、液体燃料収容容器には、100%メタノールを収容した。この液体燃料収容容器は、燃料供給ライン24であるシリコンチューブを介して燃料供給手段23であるポンプの吸い口に接続され、ポンプの吐き出し口は、シリコンチューブを介して燃料気化部25に供給されるように接続した。
【0117】
<電気化学エネルギー生成装置の特性>
ここでは、燃料電池の発電特性の低下に関わる主要な原因を特定し、いくつかのモデル的実験によって、これらの原因と、参照電極を基準とするアノードおよびカソードの電位、並びに燃料電池の出力電圧および出力電流との関係を明らかにして、異なる運転条件下であっても、参照電極を用いることで適切な制御を行う方法を確立することができた。
こうした構造の燃料気化部25を用いて、室温で発電を行った。
【0118】
図7は、本実施例の電気化学エネルギー生成装置の測定初期における、参照電極9を基準とするアノードおよびカソードの電位、並びに燃料電池10の出力電圧の経時変化を示すグラフである。
燃料電池10は、電圧制御運転させ、電圧は、1.5Vから1.7V(低電圧)の範囲で動作させ、燃料電池の出力が200mWを下回ったら、最適な燃料量は、ポンプを介して供給した結果を図3に示す。このデータは、2.5時間発電を行った際のものであり、200mWを下回った際には最適な燃料量が供給され、出力は、上がっている。出力は、安定していることから、信頼性の高い小型燃料であることが確認された。
【0119】
図8は、比較例として毛管現象を用いて燃料を供給し、燃料電池10で発電させたときの特性を示す。燃料供給量が一定であるため、ほぼ一定条件動作させなければならない。毛管現象を用いて燃料を供給した場合、燃料供給量を細かく制御することができないため、燃料電池の運転状態によっては、燃料不足状態、あるいは、料過剰状態に落ちってしまう。このような状態に陥ってしまわないように安定的に発電できる電圧領域(1.5V付近)で動作させた。図4の特性から分かるように出力は、平均で350W取り出せているものの、発電に伴う内部変化に柔軟に対応しきれず、特性は安定していないことが伺える。又、その結果、発電効率は、低く、燃料1mLあたり、446mW(446mW/mL)であることが分かった。
【0120】
図9は、実施例の燃料電池を、高い電圧で動作するように制御した結果、2.0V以上で燃料電池は動作している。つまり、燃料気化部および燃料供給手段を導入することで燃料電池をさまざまなモードで運転させることができることを証明した。図7では、燃料電池を低電圧で運転させていたが、図9では、燃料電池を高電圧で運転させ、発電効率を大幅に向上させている。この燃料供給手段、及び、燃料気化部を用いることで燃料電池の特性に応じた燃料供給ができることが分かった。その結果、発電効率は、毛管現象のみに頼る燃料電池よりも高く、燃料1mLあたり、790mW(790mW/mL)であることが分かった。
【0121】
以上のように、本実施例の燃料供給シシテム20によれば、液体燃料を広範囲に広げ、安定的に気化供給して発電効率を最大にすることができる。本実施例の燃料供給システム20を用いることにより、燃料電池の内部特性変化に影響を受けることなく、常に安定的かつ効率的に燃料を供給することができる。よって、燃料電池が有するエネルギー密度の高さを活かすことができる。
【0122】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、上述の例は、本発明の技術的思想に基づき種々に変形が可能である。
【0123】
例えば、本発明に基づく電気化学エネルギー生成装置において、電気化学デバイスの形状、材質等は適宜選択可能である。また、本発明に基づく装置を構成する制御部、測定部、調整部、電気化学デバイス等の設置位置なども特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施の形態に基づく電気化学エネルギー生成装置の構成を示す説明図である。
【図2】同、燃料気化部の構成およびその効果を説明する説明図(a)および比較例の問題点を説明する説明図(b)である。
【図3】同、電気化学デバイス部である燃料電池の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1の燃料気化部によって生成したメタノールガスの濃度の時間変化を示すグラフ(a)と、センサの位置を示す説明図(b)である。
【図5】同、燃料気化部によって生成したメタノールガスの濃度の時間変化を示すグラフである。
【図6】比較例の燃料気化部によって生成したメタノールガスの濃度の時間変化を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2の燃料電池による発電出力の時間変化を示すグラフである(低電圧モードで動作させた場合)。
【図8】比較例の燃料電池による発電出力の時間変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例2の燃料電池による発電出力の時間変化を示すグラフである(高電圧モードで動作させた場合)。
【図10】アノードにおけるメタノール濃度がメタノールクロスオーバー量に及ぼす影響を示すグラフである。
【符号の説明】
【0125】
1…電解質膜、2…アノード側触媒層、3…アノード側触媒層、
4…アノード側拡散層、5…アノード側拡散層、6…アノード(アノード側集電体)、
7…カソード(カソード側集電体)、8…MEA、10…燃料電池、
11…燃料供給部、12…空気(酸素)供給部、13…燃料、14…空気(酸素)、
20…燃料供給システム、21…原燃料、22…燃料貯蔵手段、23…燃料供給手段、
24…燃料供給ライン、25…燃料気化部、26…支持部、27…浸透蒸発部
28…表面、29…貫通孔、30…測定部、31…電圧測定部、32…電流測定部、
33…通信ライン、40…制御部、41…演算部、42…制御部、43…演算部、
44…通信ライン、50…電気化学エネルギー生成装置、60…外部回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の反応物質を蒸発させ、気体状の反応物質として反応領域に供給する反応物質供給装置であって、
前記液体状の反応物質に濡れにくい第1の支持体と、前記液体状の反応物質に濡れや すい材料からなり、前記液体状の反応物質を保持して蒸発させる第2の支持体とが、対 向又は対接して配置され、
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に前記液体状の反応物質が供給される
ように構成されている、反応物質供給装置。
【請求項2】
前記第1の支持体の表面が平坦化され、裏面側から前記表面に達する貫通孔が設けら れ、
前記第2の支持体は、前記液体状の反応物質を保持できる形状、即ち、網状又は多孔 体状に形成され、
前記第2の支持体は、前記第1の支持体の前記表面に接するか、又は前記表面からわ ずかに離間して保持され、
前記貫通孔を通じて前記蒸発板と前記基体との間隙に供給された前記液体状の反応物 質が、前記蒸発板に浸透した後、その表面から蒸発するように構成されている、
請求項1に記載した反応物質供給装置。
【請求項3】
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間隙の距離は、前記第1の支持体上で前記液体状の反応物質が形成する液滴の高さ以下である、請求項1に記載した反応物質供給装置。
【請求項4】
前記第1の支持体と前記液体状の反応物質との接触角が0度以上であり、前記第1の支持体の表面張力が燃料の表面張力より小さい、請求項1に記載した反応物質供給装置。
【請求項5】
前記第2の支持体の表面張力が前記液体状の反応物質の表面張力より大きい、請求項1に記載した反応物質供給装置。
【請求項6】
前記第2の支持体の厚さが1mm以下である、請求項1に記載した反応物質供給装置。
【請求項7】
前記液体状の反応物質は自然蒸発する、請求項1に記載した反応物質供給装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載した反応物質供給装置と、前記反応物質が反応する前記反応領域とを有する、反応装置。
【請求項9】
前記反応領域として、電解質がアノードとカソードとの間に配置された電気化学デバイス部を有し、電気化学デバイスとして構成された、請求項8に記載した反応装置。
【請求項10】
前記電気化学デバイスが電気化学エネルギーを生成する電気化学デバイスであり、
前記電気化学デバイスの運転状態を測定する測定部と、
前記運転状態の測定の結果に基づき、前記電気化学デバイス部の運転条件を決定する 制御部と、
前記決定に基づいて前記電気化学デバイス部の運転条件を設定する設定部と
を有する、電気化学エネルギー生成装置として構成された、請求項9に記載した反応装置。
【請求項11】
前記電気化学デバイス部が、前記アノードに燃料を供給し、前記カソードに酸素含有ガスを供給する燃料電池として構成されている、請求項9に記載した電気化学エネルギー生成装置。
【請求項12】
前記燃料電池の運転条件として燃料供給量が設定される、請求項11に記載した電気化学エネルギー生成装置。
【請求項13】
前記燃料供給量の設定が繰り返して行われ、前記燃料電池の特性変動に追従して前記アノードにおける燃料濃度が最適化される、請求項12に記載した電気化学エネルギー生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−317588(P2007−317588A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147650(P2006−147650)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】