説明

反芻胃保護コリンの製造方法

【課題】反芻胃において微生物、pH及び水分によって分解されないコリン製品の製造方法を提供する。
【解決手段】(a)液状濃縮コリンを担体に固定化させた後、その固定化されたコリンから水分を除去して、固定化されたコリンを製造するステップ、(b)前記担体に固定化されたコリンを結合コーティング剤によりカプセル化させて一次カプセル化コリンを製造するステップ、(c)前記一次カプセル化コリンから0.5〜2.0mmの寸法を有する一次カプセル化コリンを選別するステップ、(d)前記選別された一次カプセル化コリンを極度硬化された油脂及び融点が40℃以上の脂肪酸よりなる群から選ばれるいずれか1種又は2種以上により二次カプセル化させるステップによって、コリンに二重コーティングを施し、それによって反芻胃において保護されたコリン製造を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反芻胃において微生物、pH及び水分により分解されないことから、安定して下部の消化器官に移動して吸収可能な反芻胃保護コリン(ルーメンプロテクトコリン;ruminally protected choline)の製造方法に係り、さらに詳しくは、(a)液状濃縮コリンを担体に固定化させた後、その固定化されたコリンから水分を除去することによって、担体に固定化されたコリンを製造するステップ、(b)前記担体に固定化されたコリンを結合コーティング剤によりカプセル化させて一次カプセル化コリンを製造するステップ、(c)前記一次カプセル化コリンから0.5〜2.0mmの寸法を有する一次カプセル化コリンを選別するステップ、(d)前記選別された一次カプセル化コリンを極度硬化された油脂(extremely hydrogenated oils and fats)及び融点が40℃以上の脂肪酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上により二次カプセル化させるステップ、を含む二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の家畜についての研究において、コリンは必須成分であることが知られているが、泌乳中の乳牛に対するコリン要求量はまだ明らかにされておらず、さらに、反芻動物の反芻胃内においてほとんどのコリンが分解されるため、反芻胃を通過して小腸において吸収されて利用可能なるように、反芻胃においてその分解からコリンを保護する技術の開発が望まれている。
【0003】
コリンに対する泌乳反応は必須アミノ酸であるメチオニンに対する反応とほとんど同様であり、コリン欠乏時の典型的な症状としては、筋肉弱化、脂肪肝の発生、腎臓出血などがある。
【0004】
コリンを注入する研究を通じて、搾乳乳牛においてコリンが制限栄養素であるということが確認され、コリン欠乏時には肝臓の脂肪代謝及び分泌機序の異常によって脂肪肝が発症するが、コリン注入量の増加に伴って脂肪酸移動量が増大し、その結果脂肪肝の発生が減少する。
【0005】
コリンは、血糖、プラズマコレステロール、血中インシュリン及びセラムNEFAに影響し、牛乳の生産、牛乳成分、増体率及び導体特性の改善にかなり寄与するが、飼料によって補充されたコリン塩化物は反芻胃内においてほとんど分解されると報告されている。
【0006】
反芻胃微生物は、飼料中のホスファチジルコリンをコリンとホスフォジグリセリドとに分解し、また、反芻胃の微生物は、コリンを中間代謝物質であるトリメチルアミンを経由してメタンに転化させることによりコリンを分解する。結局、飼料の中のコリンの1%未満が小腸に達することが知られている。
【0007】
コリンは、家畜用の動物にとっては必須の栄養成分であるが、反芻動物にとっては反芻胃において分解されてその効能が認められないという理由から、昔からコリン成分が反芻胃において分解されることを防ぐ技術の開発がなされてきている。
【0008】
例えば、反芻動物の体重を増加させるためのカプセル化コリン組成物(US5、807、594)が報告されている。しかしながら、このコリン組成物のカプセル化剤として用いられる種々の原料物質に起因して、実際に製品に適用するにはかなりの費用がかかるものと見られる。
【0009】
一方、授乳乳牛に給与すべきカプセル化コリン化合物が開示されており(US5、496、571)、コリンと同じ生理活性物質を疎水性コーティングを介して与えることによって、反芻胃において分解されるのが防止可能であると開示されているが(US5、190、775)、その製造方法の詳細については開示されていない。前記特許によれば、単なる疎水性物質を用いたコーティングまたはカプセル化だけでは、反芻胃の中で活性物質が反芻胃の微生物によって分解されることから、この活性物質を完全に保護するには限界がある。
【0010】
また、WO94/15480には、牛乳生産量を増大させる目的で反芻動物に、カプセル化したコリン組成物を食べさせることが開示されているが、同特許においても同様に、疎水性コーティングが用いられ、その製造方法については具体的に開示されていない。さらに、WO96/08168には、液状のコリン化合物を担体にカプセル化し、そして脂肪酸又は脂肪酸塩でコーティングすることによって、反芻動物の飼料添加物を製造することが開示されているが、液状コリンを脂肪酸塩でコーティングする場合、それが空気中の二酸化炭素と反応するという欠点がある。
【0011】
加えて、反芻胃においてコリンを安定化できる脂質コーティング(WO03/059088A1)及び二重コーティング(US2005/0019413A1)が開示されているが、上記のコーティング形成方法が複雑であるという欠点がある。
【0012】
以上述べたように、体重増加及び牛乳生産量の増加のためのコリン化合物に関する特許が多数出願されており、これら特許はほとんどが共通して反芻胃においてコリンが分解されないように特定の保護物質によりコーティングしてコリンを使用することに言及しているが、その製造方法の詳細は開示されていない。
【0013】
また、現在商業化されている反芻胃保護コリン製品のうち、コリンを保護物質と混ぜて冷凍噴射する方式によって製造される製品があるが、この場合、敷地及び装置にかかるコストが高く、用いられる冷風の温度が零下60℃の極めて冷たい空気を使用するため、製品の生産コストが増大する。
【0014】
さらに、瞬時に冷却させるような方法によって製品を生産するため、製品内に巨大な孔(マクロ孔)が形成される可能性があり、製品の生産時における運転条件が煩雑であるだけではなく、得られた反芻胃保護コリン製品の表面に配列されたコリンに対しては保護を行うことができないため、その効果が低下するという欠点がある。
【0015】
上記の理由から、反芻動物にも供給可能な、反芻胃分解に対して安定したコーティング済みコリン組成物に対する技術開発が至急望まれている。
【0016】
そこで、本発明者らは、コリンが反芻動物の反芻胃において分解されるという問題点を解消するために鋭意努力した結果、コリンを担体に固定化して、この固定化されたコリンから水分を除去した後、水分の除去された粒子を疎水性物質により一次カプセル化させ、ついで、極度硬化された油脂または融点が40℃以上の脂肪酸により二次カプセル化させることによって得られた反芻胃保護コリンが、反芻胃において微生物とpH及び水分により分解されずに安定して下部の消化器官に移動して吸収されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【特許文献1】米国特許第5、807、594号公報
【特許文献2】米国特許第5、496、571号公報
【特許文献3】米国特許第5、190、775号公報
【特許文献4】国際公開第WO94/15480号公報
【特許文献5】国際公開第WO96/08168号公報
【特許文献6】国際公開第WO03/059088号公報
【特許文献7】米国特許公開第2005/0019413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、反芻胃において微生物、pH及び水分によって分解されない、二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の目的を達成するために、本発明は、(a)液状濃縮コリンを担体に固定化させた後、この固定化されたコリンから水分を除去することによって、担体に固定化されたコリンを製造するステップ、(b)前記の担体に固定化されたコリンを結合コーティング剤によりカプセル化して一次カプセル化コリンを製造するステップ、(c)前記一次カプセル化コリンから0.5〜2.0mmの寸法を有する一次カプセル化コリンを選別するステップ、及び(d)前記選別された一次カプセル化コリンを極度硬化された油脂(oil及びfat)及び融点が40℃以上の脂肪酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上により二次カプセル化させるステップ、を含む二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の他の特徴及び具現例は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲からなお一層明らかになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造方法を提供し、本発明により製造された反芻胃保護コリンは反芻胃において微生物、pH及び水分により分解されないことから、安定して下部の消化器官に移動して吸収可能になり、それが反芻家畜の飼育に用いられて反芻家畜の栄養素の利用効率を高めて家畜の生産性を高めることができ、そしてコリンの富化された機能性畜産物の生産を可能にする。
更に、本発明による反芻胃保護コリンの製造方法は、反芻胃による分解から種々の成分を保護するのに応用されて、種々の新たな飼料添加剤を生産するのに利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、反芻胃において微生物、pH及び水分により分解されないことから、安定して下部の消化器官に移動して吸収可能な、二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造方法に関するものである。
【0022】
本発明においては、二重コーティングされた反芻胃保護コリンを製造するために、先ず、液状濃縮コリンを担体に固定化した後、それから水分を除去して担体に固定化されたコリンを製造する。
【0023】
ここで、前記液状濃縮コリンは、塩化コリン、コリンジヒドロゲンシトレート、トリコリンシトレート及びコリンビタルトレートよりなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましく、前記の担体は、シリカ、セルロース、澱粉及びゼオライトよりなる群から選ばれる水不溶性の担体であることが好ましく、より好ましくは、前記担体はシリカである。
【0024】
次に、前記の製造された担体に固定化されたコリンを結合コーティング剤をカプセル化させて顆粒状または針状の一次カプセル化コリンが製造される。前記のカプセル化は、固定化されたコリン及び結合コーティング剤をリボンミキサー、一般攪拌機、ホモミキサー又はV字状混合機などの混合機で混合攪拌した後、その混合物を押出機又はプロッダーなどの押出機を通すことによって行われる。ここで、前記コリン及び結合コーティング剤は好ましくは1:0.1〜2.0の重量比で互いに混合され、前記押出機における多孔板の孔径は0.5〜2.5mmであるのが好ましく、前記押出機におけるバレルの温度は10〜60℃に維持されることが好ましい。
【0025】
さらに、前記結合コーティング剤は、一価石鹸、二価石鹸及び融点が40℃以上の脂肪酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の混合物であるのが好ましい。前記一価石鹸は、ナトリウム石鹸またはカリウム石鹸であるのが好ましく、前記二価石鹸は、蜜ろう、PEG、界面活性剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウムよりなる群から選ばれるのが好ましい。前記融点が40℃以上の脂肪酸は、硬化油、極度硬化油、パルミチン酸及びステアリン酸よりなる群から選ばれるのが好ましく、硬化油であることがより好ましい。
【0026】
前記一次カプセル化コリンから0.5〜2.0mmの寸法を有する一次カプセル化コリンを選別した後、前記選別されたカプセル化コリンに極度硬化された油脂(oil及びfat)及び融点が40℃以上の脂肪酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上で二次カプセル化することによって、二重コーティングされた反芻胃保護コリンが得られる。
【0027】
最終的に得られた二重コーティング済みの反芻胃保護コリンにおける二重コーティング層の含有量は、全体の15〜55%(w/w)であるのが好ましい。
【0028】
本発明により得られた二重コーティング済みの反芻胃保護コリンは、冷凍噴射方式によって製造される従来の商業化された製品で欠点として指摘されていた巨大孔が生じる恐れがなく、この製品が均一な形状で得られるというメリットがある。
【0029】
また、冷凍噴射方式により製造される製品の場合、この製品は、コリンが粒子の表面に位置して反芻胃における安定性が劣るという欠点があるのに対し、本発明により製造される二重コーティング済みの反芻胃保護コリンは、コリンを含有する一次コーティング製品にさらに二次コーティング過程を施すことから、コリンが粒子の表面に分布する恐れがなく、投入されたコリンのほとんどが安定性を維持できるというメリットがある。加えて、冷凍噴射方式において用いる冷媒を使用しないことから、製造コストを節減することができ、しかも、敷地と装置にかかるコストが低く抑えられるというメリットがあって、製品の生産コストを下げることができる。
【0030】
反芻胃保護されていないタイプのコリンを反芻動物に給与する場合、給与されたコリンのほとんどは反芻胃において分解されるため、コリン給与による効果を期待することは困難であり、その結果、コリンは無駄に使われることになる。このため、コリンの安定性を高めるための本発明による反芻胃保護コリンを家畜飼育に用いることによって、反芻動物の栄養素の利用効率を高めて反芻動物の生産性を高めることができ、畜産物の中における栄養素の効能を増加させて機能性畜産物を生産できる飼料添加剤を開発することができる。
【0031】
実施例
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、これらの実施例は単に本発明を一層詳しく説明するためのものであり、本発明の要旨によれば、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものでないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかである。
【0032】
実施例1:二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造
液状濃縮コリンをシリカ、セルロース、澱粉、ゼオライトなどの担体に固定化させたコリンから水分を除去することによって、担体に固定化されたコリンを製造した。
【0033】
次に、前記の担体に固定化されたコリンに蜜ろう、PEG、硬化油などの結合コーティング剤を添加し、リボンミキサー、一般攪拌機、ホモミキサー、V字状混合機などの混合機において混合攪拌した後、押出機、プロッダーなどの押出成形機を通して押出を行うことによって、一次カプセル化コーティングされたコリンを製造した。ここで、押出機又はプロッダーなどの押出成形機の押出バレルの温度は10〜60℃に維持した。
【0034】
前記一次カプセル化コリンのうち0.5〜2.0mmの粒子寸法を有する一次カプセル化コリンを選別した後、前記選別された一次カプセル化コリンに極度硬化された油脂及び融点が40℃以上の硬化植物油、硬化コーン油、硬化綿実油、硬化落花生油、硬化パーム核油、硬化パーム油、硬化パームステアリン油、硬化ヒマワリ油、硬化菜種油、パルミチン酸及びステアリン酸などの脂肪酸を1種または2種以上(二次カプセル化用物質)を添加し、一次カプセル化コリンを含むこの混合物に、ハイスピードミキサー、リボンミキサー、レディーゲミキサー又は流動床プロセッサーなどの二次カプセル化装置を用いる二次カプセル化工程を施して、二重コーティングされた反芻胃保護コリンを製造した。
【0035】
実験例1
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を直径1.0mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物(二次カプセル化物質)670gを添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0036】
実験例2
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を直径1.2mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0037】
実験例3
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を1.5mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0038】
実験例4
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、この混合物を2.0mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、それに、前記製造された一次カプセル物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0039】
実験例5
一価石鹸(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、この混合物を1.0mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0040】
実験例6
PEG(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を直径1.0mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0041】
実験例7
1kgのツイーン80(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)にコリン5kgを混合した後、前記混合物を1.0mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0042】
実験例8
1kgのスパン80(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)にコリン5kgを混合した後、前記混合物を1.0mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0043】
実験例9
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を1.2mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物500gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して33.3%であった。
【0044】
実験例10
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を1.2mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物350gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して25.9%であった。
【0045】
実験例11
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を1.2mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物250gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して20.2%であった。
【0046】
実験例12
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を1.2mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物150gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して13.0%であった。
【0047】
実験例13
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)1kgにコリン5kgを混合した後、前記混合物を直径1.2mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物50gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して4.8%であった。
【0048】
実験例14
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)2kgにコリン4kgを混合した後、前記混合物を2.0mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0049】
実験例15
液状の硬化油(一次カプセル化用物質:結合コーティング剤)3kgにコリン3kgを混合した後、前記混合物を2.0mmの孔径を有する多孔板を介して射出して一次カプセル化物質を製造した。その後、前記製造された一次カプセル化物質1kgをハイスピードミキサーに入れ、それに、液状の硬化油及び融点が40℃以上の脂肪酸のうちいずれか1種またはこれらの混合物670gを二次カプセル化用物質として添加して二次カプセル化物質を製造した。このとき、二次カプセル化用物質の含有量は、最終的に生成された二次カプセル化物質の総量に対して40.1%であった。
【0050】
実施例2:反芻胃保護コリンのインビトロ損失率
前記実験例1〜15によって製造された二重コーティング済みのコリンのそれぞれに対して反芻胃保護処理方法別のインビトロ損失率を下記のような方法により測定し、その結果を表1に示す。
【0051】
実験例1〜15によって製造された二重コーティング済みのコリンの試験管内における安定性を測定するために、製造された反芻胃保護コリンの各々を試験管に入れ、蒸留水を添加して5%のコリン水溶液を製造した後、前記水溶液をJEIO TECH MC−11多重攪拌機水浴槽を用いて40℃±0.1℃の温度条件下で2時間攪拌した。
【0052】
前記の撹拌された水溶液をワットマン紙NO.3を通してろ過し、固形分だけを濾取した後、前記固形分を45℃±0.1℃の温度条件下で12時間以上乾燥させて残余の水分を完全に除去した。
【0053】
前記の乾燥した試料をSANPLA DRY KEEPERにおいて常温まで冷却した後、この冷却した試料のうちの300mgをクロロホルムとメタノールを1:1の体積比で混合させた溶媒に添加して完全に溶かした後、5%のK2CrO4溶液を指示薬とし、且つ、0.1NAgNO3溶液を滴定試薬としてコリンの含有量を測定した。
【0054】
その結果、表1に示すように、多孔板の孔径の変化によるインビトロ損失率差はほとんどなかった(実験例1〜4)。一次カプセル化用物質の種類を異ならせた結果、一次カプセル化用物質として、一価石鹸及び二価石鹸であるPEGを使用した場合は、ツイーン80またはスパン80を使用した場合よりもインビトロ損失率が減少して、結局一次カプセル化用物質として一価石鹸及び二価石鹸であるPEG、ツイーン80またはスパン80を使用した場合よりも液状の硬化油を使用する場合にインビトロ損失率が減少することを確認した実験例5〜8)。
【0055】
二次カプセル化用物質の添加量を異ならせた結果、二次カプセル化用物質の添加量が多いほどインビトロ損失率が下がることが分かった(実験例9〜13)。
【0056】
また、コリンと一次カプセル化用物質の割合を異ならせた結果、コリンに対する一次カプセル化用物質の含有量の比が高いほどインビトロ損失率が下がることが分かった(実験例14及び15)。
【0057】
【表1】

【0058】
結果として、本発明による二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造において、一次カプセル化用物質として液状の硬化油を選択し、コリンと一次カプセル化用物質の含有量を1:0.5または1:1の比で混合した混合物を用いて一次カプセル化過程を行った後、二次カプセル化用物質の添加量を増加させて二次カプセル化過程を行うことにより、製造された二重コーティング済みの反芻胃保護コリンのインビトロ損失率が極力抑えられることが分かる。
【0059】
実施例3:反芻胃保護コリンの給餌試験
実施例2の試験管試験において、インビトロ損失率が小さく、製品のサイズが適当であると共に、コリンの含有量が高い、実験例15により製造された反芻胃保護コリンを用いて生体内における給餌試験を行った。
【0060】
反芻胃保護コリンを用いた乳牛搾乳牛の飼育試験のために泌乳中期の乳牛搾乳牛10頭に配合試料と粗試料とを混合した完全混合試料を1日につき2回、12時間置きに十分な量だけ与え、反芻胃保護コリン(コリン含量25%)の分量を1頭当たりに40g(コリン基準10g)として、これを完全混合試料を給餌するときに追加して与えた。搾乳は1日につき2回ずつ行って産乳量を測定し、牛乳サンプルを採取して乳成分及び体細胞自動分析器(LactoScopeR、MK2、Delta Instruments、The Netherlands)を用いて牛乳の成分及び体細胞数を測定した。
【0061】
その測定結果は、表2に示すように、反芻胃保護コリンを牛に給餌した場合、搾乳牛の1日産乳量は前記の給餌前の29.2kgから給餌後の32.1kgへと9.9%増加し、乳脂肪、乳たんぱく質、乳糖及び総固形分の含有量もそれぞれ7.9%、10.4%、12.7%及び10.1%増加した。また、体細胞数は反芻胃保護コリンの給餌により167000個/mlから103000個/mlへと61.9%減少して、乳質の改善にも効果を示し、コリンの含有量は44.85mg/mlから66.75mg/mlへと約48.8%増加してコリン強化の牛乳の生産が可能であることを確認することができた。
【0062】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
以上詳述したように、本発明は、二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造方法を提供し、本発明により製造された反芻胃保護コリンは反芻胃において微生物、pH及び水分により分解されないことから、安定して下部の消化器官に移動して吸収可能になり、それが反芻家畜の飼育に用いられて反芻家畜の栄養素の利用効率を高めて家畜の生産性を高めることができ、そしてコリンの富化された機能性畜産物の生産を可能にする。更に、本発明による反芻胃保護コリンの製造方法は、反芻胃による分解から種々の成分を保護するのに応用されて、種々の新たな飼料添加剤を生産するのに利用可能である。
【0064】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲及びそれと同等の記載によって定義されると言えるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含む二重コーティングされた反芻胃保護コリンの製造方法:
(a)液状濃縮コリンを担体に固定化させた後、その固定化されたコリンから水分を除去することによって、担体に固定化されたコリンを製造するステップ;
(b)前記担体に固定化されたコリンを結合コーティング剤によりカプセル化することによって一次カプセル化コリンを製造するステップ;
(c)前記一次カプセル化コリンから0.5〜2.0mmの寸法を有する一次カプセル化コリンを選別するステップ;及び
(d)前記選別された一次カプセル化コリンを、極度硬化された油脂及び融点が40℃以上の脂肪酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の組み合わせで二次カプセル化させるステップ。
【請求項2】
前記液状濃縮コリンが、塩化コリン、コリンジヒドロゲンシトレート、トリコリンシトレート及びコリンビタルトレートよりなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項3】
前記担体が、シリカ、セルロース、澱粉及びゼオライトよりなる群から選ばれる水不溶性の担体であることを特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項4】
前記結合コーティング剤が、一価石鹸、二価石鹸及び融点が40℃以上の脂肪酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項5】
前記一価石鹸が、ナトリウム石鹸またはカリウム石鹸であることを特徴とする請求項4に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項6】
前記二価石鹸が、蜜ろう、PEG、界面活性剤、カルシウムステアレート、亜鉛ステアレート及びマグネシウムステアレートよりなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項4に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項7】
前記融点が40℃以上の脂肪酸が、硬化油、極度硬化油、パルミチン酸及びステアリン酸よりなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項4に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項8】
前記極度硬化された油脂及び融点が40℃以上の脂肪酸は硬化植物油、硬化コーン油、硬化綿実油、硬化落花生油、硬化パーム核油、硬化パーム油、硬化パームステアリン油、硬化ヒマワリ油、硬化菜種油、パルミチン酸、ステアリン酸からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項9】
前記コリンと結合コーティング剤とが1:0.1〜2.0の重量比で互いに混合されることを特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)が、固定化されたコリンを混合機により混合攪拌した後、押出成形機でカプセル化することを 特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項11】
前記混合機が、リボンミキサー、一般攪拌機、ホモミキサー及びV字状混合機からなる群より選択されることを特徴とする請求項10に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項12】
前記押出成形機が、押出機またはプロッダーであることを特徴とする請求項10に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項13】
前記一次カプセル化コリンが、顆粒状または針状であることを特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項14】
前記押出成形機における多孔板の寸法が0.5〜2.5mmであることを特徴とする請求項10または請求項12に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項15】
前記押出成形機における押出バレルの温度が10〜60℃であることを特徴とする請求項12に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項16】
前記ステップ(d)が、ハイスピードミキサー、リボンミキサー、レディーゲミキサー及び流動床プロセッサーからなる群より選択される二次カプセル化装置によって行われることを特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。
【請求項17】
二重コーティング層の含有量が、全体の15〜55%(w/w)であることを特徴とする請求項1に記載の反芻胃保護コリンの製造方法。

【公表番号】特表2009−535056(P2009−535056A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509394(P2009−509394)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004773
【国際公開番号】WO2007/126191
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508327216)ルーラル ディベロップメント アドミニストレーション ナショナル ライブストック リサーチ インスティチュウト (1)
【氏名又は名称原語表記】RURAL DEVELOPMENT ADMINISTRATION,NATIONAL LIVESTOCK RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】San−9,Eoryong−ri,Seonghwan−eup,Cheonan−si,Chungnam,330−801,Republic of Korea
【出願人】(508327238)ヌーボ ビー アンド ティ コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】NUVO B&T CORPORATION
【住所又は居所原語表記】335,Sangpae−dong,Dong−doochun−si,Gyeonggi−do,483−120,Republic of Korea
【Fターム(参考)】