説明

反転ユニット

【課題】 回転駆動用のモーターを1個として構造を簡素にし、かつ、ワークの反転を高速で行える反転ユニットの提供。
【解決手段】 ヘッド5とヘッドの回転機構3及び1個のカム部材4を備え、ヘッド5は、前端部に貫通したワーク配置孔14を有するワーク収納部材11とこれの上下両面にそれぞれ配置され、前後に移動してワーク配置孔14を開閉できるフィンガー12,13とを備え、回転機構3はモーター6により、ヘッド5を正転位置、反転位置とする構造であり、カム部材4は固定位置にあって、ヘッドの回転機構3によりワーク収納部材11の両面のフィンガー12,13を交互に前後移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体チップなどの微小部品(ワーク)を表裏反転させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器関連の表面実装部品のコンデンサ・抵抗・トランスなどの受動部品やトランジスタなどの半導体部品、小形電池、その他さまざまな微小部品について、表裏反転を必要とする作業は多い。例えば、表面で測定(検査)を行った後、裏面でも測定を行う、表面の検査をして表裏反転し、梱包(エンボステープへのテーピング)を行う、表面に加工をし、ついで裏面にも加工を施す、などである。このような場合にPPU(ピックアンドプレースユニット)などと共に反転ユニットが用いられる。
従来の反転ユニットについてみると、特許文献1のように、2個の反転ヘッドによる受け渡し方式が主である。また、先願として特願2004−292765号(特許文献2)を出願済みである。
【0003】
【特許文献1】特開平06−115687号公報
【特許文献2】特願2004−292765号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の受け渡し方式では、2個のヘッドをタイミングよく駆動する機構、ワークを受け渡しするためのタイミングを合わせたエア機構を必要として構造が複雑である上、ワークを受ける位置とこれを反転したワークを渡す位置が異なる。このため、PPUの先端作業部を移動させたり、反転ヘッドの先端作業部を移動させたりする必要がある。また、ワークを保持したヘッドの回転やエアによるワークの押し込みと吸い込みのタイミングを常に監視していないと、受け渡しミスの生じることがある。さらに、エア回路は応答にロス時間を見込む必要があり、反転操作を高速化するときに支障を生じることがある。
【0005】
先願である特願2004−292765号の発明は、ヘッドと間欠駆動機構及び制御機構を備えたユニットであって、前端部にワーク配置孔を有するワーク収容部材とワーク配置孔の両面を開閉できるフィンガー(蓋部材)とでヘッドを構成し、第1のステッピングモーターによる間欠駆動機構でヘッドを正転、反転させ、これと同時に、第2のステッピングモーターによる制御機構でフィンガーの開閉を制御する構造である。これにより、ワークをワーク配置孔に収容してフィンガーで閉じ、ついで、ヘッド全体を回転して内部のワークを反転させ、取り出す構造である。
【0006】
先願の構造は、ヘッドの回転とフィンガーの作動をそれぞれのステッピングモーターで行うので、ヘッドの回転位置とフィンガーの開閉作動のタイミングをいろいろと組み合わせることができるなど、自由度が高く,その分用途が広い利点がある。また、ワークの反転がヘッドの回転軸を中心に行われることから、反転によってワークの位置(中心位置)が変化せず、反転のためにワークを納めたり、取り出したりする操作が簡素化される利点がある。
【0007】
しかし、ヘッドを回転するための間欠駆動機構とフィンガーの開閉を行う制御機構とが合わさって機構が複雑である。さらに、制御面の設定なども負担が大きいなどの難点がある。
この発明は、ワークの反転そのものには、格別なタイミングの設定が要求されず、ワーク反転のための機構が簡素で、かつ、反転作動(180°の回転)を高速化できる反転ユニットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
正転、反転されるヘッドのワーク収納部材前端部にワーク配置孔を設け、これをワーク収納部材の両面に沿って前後に移動するフィンガーで開閉する。ワーク配置孔が開かれているときにワークを出し入れし、ヘッドが回転してワークを反転するときはフィンガーによりワーク配置孔が閉じられているようにする。ヘッドの回転をステッピングモーターで行い、このモーターの回転を利用してカムにより両面のフィンガーを開閉する。
【発明の効果】
【0009】
ワークの転回を同一個所で行えるので、ワークの受け入れと取り出しを省スペースで行える。
同一個所で転回できるので、PPUなどの先端作業部の移動を単純な一方向とでき、PPUなどの制御や機構を簡単なものとできる。
ワーク配置孔はワークの形状に合わせ、内部で回転が生じない貫通孔でよく、通常単純な形態となるので加工が容易であり、反転ユニットのコストダウンを図ることができる。
ヘッドの回転とフィンガーの作動を1個のモーターで行うので機構が簡素であり、反転作動を高速化できる。
フィンガーの動作がカム曲線によるので、動作が高速でもシリンダーによる場合のように動き出し、停止の際にショックがないので、ショックに起因するワークの飛び出しなどがない。
受け渡しにエア回路を用いないので、制御にエア応答のロス時間を見込む必要がなく、ワークの反転作動を高速化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ヘッドとヘッドの回転機構及び1個のカム部材を備えたものとする。ヘッドは、前端部に貫通したワーク配置孔を有するワーク収納部材とこれの両面に配置され、前後に移動してワーク配置孔を開閉できるフィンガーとを備える。ステッピングモーターなどで駆動される回転機構により、ヘッドを正転位置、反転位置とする。カム部材は、固定位置にあって、ヘッドの回転にともなってフィンガーが回転することにより、フィンガーを交互に前後移動させる。これにより、ワーク配置孔を開閉させる。
【実施例1】
【0011】
図1は、反転ユニット1の全体を機構的に示している。反転ユニット1は、機体2と回転機構3、1個のカム部材4及びヘッド5を備える。
回転機構3は、ステッピングモーター6と回転軸7とからなり、ステッピングモーター6は、円筒形をした機体2の後端(底部)外面に固定され、回転軸7は、機体2を貫通して前後方向(図1の左が前、右が後)に配置され、前後のベアリング8,9で回転可能に軸支されている。回転軸7の後端はステッピングモーター6の出力軸と連結されている。
【0012】
カム部材4は、この実施例において円筒溝カムであり、円筒の周面にカム曲線に沿った溝を形成してある。円筒面に沿って形成されるカム溝は連続し、かつ、閉じた1本の曲線であり、その展開図(カム割付表)は図2(イ)のとおりである。図2(ロ)は、カム割付表の角度とワーク収納部材11(後述)の姿勢を対応させたものである。図2(ロ)では0°の状態にあり、右回りに回転する。ワークwがワーク収納部材11の先端部に収容さている。
カム部材4は、回転軸7へ同軸に嵌合され、後端を機体2の後端内面にボルト10により固定されている。回転軸7の後方を軸支するベアリング10はこのカム部材4に取り付けられ、カム部材4が機体2に固定されることで回転軸7が機体2に軸支されている。
【0013】
ヘッド5は、ワーク収納部材11と第1のフィンガー12及び第2のフィンガー13を有する。ワーク収納部材11は、この実施例において平らな板体であり(図3)、前端部に図1において上下方向に貫通したワーク配置孔14が形成され、後端が中央結合部材15で前記の回転軸7の前端に固定されている。ワーク収納部材11の長手方向中心軸線は幅方向、厚み方向ともに、回転軸7の軸線に一致させてある。
【0014】
第1のフィンガー12は、図1においてワーク収納部材11の上面側にあって、ワーク収納部材11の上面に摺接して前後に移動可能とされており、第2のフィンガー13は同下面にあってワーク収納部材11の下面に摺接して前後に移動可能とされている。第1、第2のフィンガー12,13は蓋部材であって、これは前方へ移動したとき、前記のワーク配置孔14を覆って閉じ、後方に移動したときはワーク配置孔14を開放して開く。第1のフィンガー12は、回転軸7と平行に配置された前結合部材16と後結合部材17によりカム部材4と連携され、第2のフィンガー13も、同様に前結合部材18と後結合部材19によりカム部材4と連携されている。
【0015】
前結合部材16は、前端に第1のフィンガー12を固定するとともに、後端が後結合部材17に固定されている。同様に、前結合部材18は、前端に第2のフィンガー13を固定するとともに、後端が後結合部材19に固定されている。そして、後結合部材17と19は、それぞれ、中間部で回転軸7の上下位置に固定したリニアガイドのスライドプレート20,21に固定され、後端にカムフォロア22,23を有している。カムフォロア22,23は縦軸のローラー構造であり、ローラー部分がカム部材4のカム溝24(図3)に嵌め込まれる。カム溝24は閉じた1本のもので、前記のカム割付表に沿って形成されており、カムフォロア22と、カムフォロア23は、上下位置、すなわち、180°の位相差をもってカム溝24と関連している。
【0016】
一方、後結合部材17,19は軸支部材25を貫通してスライド可能に配置されている。軸支部材25は回転軸7と一体の部材であり、機体2との間に前記のベアリング8を介して回転可能に取り付けられている。すなわち、回転軸7の前部は、軸支部材25を介してベアリング8により回転可能に機体2へ取り付けられている。
【0017】
ステッピングモーター6が駆動されると、ヘッド5が回転する。これにともない、カム部材4との連携によって、第1、第2のフィンガー12,13が180°の位相差をもって前後に移動してワーク配置孔14を開閉する。ステッピングモーター6の回転は、ヘッド5のワーク配置孔14が水平となる0°と180°の位置で一時停止する間歇回転に設定する。なお、ワークwを高速で反転する必要のないときは、連続回転とすることもある。このような場合、ステッピングモーター6は通常のDCモーターであってもよい。
【0018】
したがって、例えば、図4のように、ワーク収納部材11が水平で、ワーク配置孔14が水平となっており、かつ、第1のフィンガー12が開き位置(後端)にあってワーク配置孔14を開き、第2のフィンガー13が閉じ位置(前端)にあってワーク配置孔14の底を形成しているとき(回転角度0)に、上方からPPUなどでワークwをワーク配置孔14に収め、PPUが上方へ退避した後、ヘッド5が回転されて第1のフィンガー12が前方に移動してワーク配置孔14を閉じた後(図5、回転角度90°)、さらに、ヘッド5が回転されてワークwを反転し、回転角度180°では上方位置となった第2のフィンガー13が開き位置にあるので(図6)、PPUで反転されたワークwを取り出す。回転角度180°〜270°及び270°〜360°(0°)の場合も、同様である。したがって、ヘッド5の1回転で2個のワークwを受け入れ、反転することができる。
【0019】
ヘッド5の回転角度とカム部材4による第1、第2のフィンガー12,13の位置について具体的にまとめると下記の表となる。この作動は図2のカム割付表と一致する。
【0020】
【表2】

【0021】
以上は、1つの実施例である。ヘッド5の回転角度とカム部材4によるワーク配置孔14の開閉の関係はカム割付表の範囲で変更することができる。例えば、ワークwの収納と取り出しを行う位置(第1のフィンガー12がワーク配置孔14を開く位置)をワーク配置孔14が垂直となっている位置とすることもできる。
したがって、請求の範囲を含め、この明細書において、第1、第2のフィンガーの位置を上、下としているのは、説明上で相互の位置関係を明確にするためであって、具体的に上下に限定されるものではない。
第1、第2のフィンガー12,13によるワーク配置孔14の開閉は、前後移動ではなく、水平な回転によって開閉させることもできる。
円筒溝カムのカム溝は第1、第2のフィンガーそれぞれに分離したものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】全体の機構を概略で示した側面図
【図2】(イ)カム割付表、(ロ)割付位置とワーク収納部材の姿勢を示す図
【図3】要部を取り出して示した斜視図(一部を破断)
【図4】作動の状態を示した要部の斜視図(ヘッド回転角度0°)
【図5】作動の状態を示した要部の斜視図(ヘッド回転角度90°)
【図6】作動の状態を示した要部の斜視図(ヘッド回転角度180°)
【符号の説明】
【0023】
1 反転ユニット
2 機体
3 回転機構
4 カム部材
5 ヘッド
6 ステッピングモーター
7 回転軸
8 ベアリング(前)
9 ベアリング(後)
10 ボルト
11 ワーク収納部材
12 第1のフィンガー
13 第2のフィンガー
14 ワーク配置孔
15 中央結合部材
16 前結合部材(第1のフィンガー)
17 後結合部材(第1のフィンガー)
18 前結合部材(第2のフィンガー)
19 後結合部材(第2のフィンガー)
20 スライドプレート(第1のフィンガー)
21 スライドプレート(第21のフィンガー)
22 カムフォロア(第1のフィンガー)
23 カムフォロア(第2のフィンガー)
24 カム溝
25 軸支部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドとヘッドの回転機構及び1個のカム部材を備え、ヘッドは、前端部に貫通したワーク配置孔を有するワーク収納部材とこれの上下両面にそれぞれ配置され、前後に移動してワーク配置孔を開閉できるフィンガーとを備え、回転機構はモーターにより、ヘッドを正転位置、反転位置とする構造であり、カム部材は固定位置にあって、ヘッドの回転機構によりワーク収納部材両面のフィンガーを交互に前後移動させてワーク配置孔を交互に開閉させるカム溝を有していることを特徴とした反転ユニット。
【請求項2】
カム部材は円筒の周面に前記のカム溝を形成した溝カムであって、ヘッドの回転軸と同軸であるが固定して配置されており、ヘッドの回転に関して180°の位相差を持った位置にフィンガーを溝カムに連携させるカムフォロアが配置されていることを特徴とした請求項1に記載の反転ユニット。
【請求項3】
回転機構によるヘッドの回転位置とフィンガーの前後移動のタイミングを、ワーク配置孔が水平であるとき、上位置にあるフィンガーが後退してワーク配置孔を開くものであることを特徴とした請求項1または2に記載の反転ユニット。
【請求項4】
カム溝の割り付けを回転機構によるヘッドの回転位置との関係で下記の表に拠ったものとしたことを特徴とした請求項1〜3のいずれかひとつに記載の反転ユニット。
【表1】

【請求項5】
カム溝が連続し閉じた1本の曲線で構成されていることを特徴とした請求項2〜4のいずれか1つに記載の反転ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−306516(P2006−306516A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127783(P2005−127783)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000137351)株式会社マシンエンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】