説明

反転式加熱器

【課題】加熱器の延命化にかかる作業量の低減と、ケーシングの変形や伝熱性の低下を抑制する。
【解決手段】一端側に供給口12aを、他端側に排出口12bを有するケーシング12と、供給口12aからケーシング12内に供給された例えば飛灰5を加熱するヒータ13と、ケーシング12内を軸方向に貫通するパドル軸14aの長さ方向複数個所に取付けられ、ケーシング12内に供給されて加熱状態にある飛灰5を攪拌するパドル14とを備えた反転式加熱器11である。ケーシング12は、円筒状となされると共にパドル14が配設された長手方向の中央部分12cとこの中央部分12cの両側に位置する部分12d、12eに分割する。これら分割されたケーシング部分を分割が可能な態様で一体的となす。
【効果】加熱器の延命化にかかる作業量が低減できるのと共に、ケーシングの歪みによる変形や伝熱性の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば焼却炉で発生した飛灰を処理するための反転式加熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼却炉で発生した飛灰は、有害なダイオキシンを含有するため、加熱器内で飛灰を約400℃程度に加熱した上で攪拌することで、ダイオキシンを熱分解することが行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
図4に示すように、この加熱器では、ケーシング1の一方から投入された飛灰は、ケーシング1内で加熱されつつ、ケーシング1内を軸方向に貫通するパドル軸2の長さ方向複数個所に取付けられた複数のパドル3により攪拌されて他方から排出される。なお、図4中の4はパドル軸2を回転させるモータである。
【0004】
この際、攪拌される過程で飛灰がパドルとケーシング内面の間に入り込むので、長時間の使用により、前記入り込んだ飛灰によってケーシング内面の下半分が摩耗して減肉するという問題がある。
【0005】
このようにケーシングの内面下部が減肉した場合、従来は、全く新しいものに更新するか、延命化を図ることで対応している。
【0006】
後者の延命化は、減肉した箇所を含む部分をケーシングの長手方向に分断すべく、ケーシングを切断し、この分断した減肉箇所を含む部分のうちの減肉していない部分を下方に位置させて、再度溶接して接続するもので、前者に対して比較的安価である。
【0007】
しかしながら、ケーシングの切断、溶接に相当な作業量が必要であり、溶接時の位置決めも煩雑である。また、溶接方法によっては、ケーシングの歪みによる変形や伝熱性(加熱効率)の低下につながるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−90590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、加熱器のケーシングの内面下部が摩耗して減肉した場合の従来の延命化対策では、相当な作業量が必要で、溶接時の位置決めも煩雑であり、溶接方法によってはケーシングの変形や伝熱性の低下につながるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の反転式加熱器は、
加熱器の延命化にかかる作業量の低減と、ケーシングの変形や伝熱性の低下を抑制するために、
一端側に供給口を、他端側に排出口を有するケーシングと、
前記供給口からケーシング内に供給された例えば飛灰を加熱するヒータと、
前記ケーシング内を軸方向に貫通するパドル軸の長さ方向複数個所に取付けられ、前記ケーシング内に供給されて加熱状態にある飛灰を攪拌するパドルと、
を備えた反転式加熱器であって、
前記ケーシングは、円筒状となされると共に前記パドルが配設された長手方向の中央部分とこの中央部分の両側に位置する部分に分割され、これら分割されたケーシング部分を分割が可能な態様で一体的となしたものであることを最も主要な特徴としている。
【0011】
本発明では、長手方向に分割した円筒状ケーシングを分割が可能な態様で一体的となしたので、ケーシングの長手方向中央部分の下部が摩耗して減肉した場合は、当該中央部分を取り外して、減肉していない部分を下部に位置させて一体化するだけで良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、予め長手方向に分割して分割が可能な態様で一体的となした円筒状ケーシングを採用したので、加熱器の延命化にかかる作業量が低減できるのと共に、ケーシングの歪みによる変形や伝熱性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の反転式加熱器の要部を示した図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】本発明の反転式加熱器を構成するケーシングの中央部分と端部部分の接続構造の一例を示す要部断面で、(a)は供給側の端部部分と中央部分、(b)は排出側の端部部分と中央部分の図面である。
【図3】本発明の反転式加熱器を構成するケーシングの中央部分と端部部分の接続構造の他の例を示す図2と同様の図である。
【図4】従来の反転式加熱器の概略図で、(a)はヒータを省略した全体斜視図、(b)は(a)図の横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、加熱器の延命化にかかる作業量の低減と、ケーシングの変形や伝熱性の低下を抑制するという目的を、予め長手方向に分割して分割が可能な態様で一体的となした円筒状ケーシングを採用することで実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図3を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の反転式加熱器の要部を示した図である。
【0016】
図1において、11は本発明の反転式加熱器であり、以下の構成からなっている。
12は、一端側に供給口12aを、他端側に排出口12bを有するケーシングであり、前記供給口12aからケーシング12内に供給された飛灰、ばいじん等の被加熱物(以下、飛灰と略す)5はヒータ13によって加熱され、パドル14によって攪拌される。
【0017】
前記ヒータ13は、ケーシング12の長手方向の中央部分12cを覆うように設けられ、中央部分12cの外周側からケーシング12の内部に供給された飛灰5を加熱する。また、前記パドル14は、前記ケーシング12内を軸方向に貫通するパドル軸14aに複数個取付けられている。
【0018】
本発明では、前記ケーシング12を円筒状となすと共に、長手方向に、例えば前記中央部分12cと、この中央部分の両側に位置する端部部分12d、12eの3つに分割している。そして、これら中央部分12cと端部部分12d、12eの3つに分割されたものを連結して一体となしている。
【0019】
これら中央部分12cと端部部分12d、12eの3つに分割されたものを連結して一体となす構造としては、これらの部分12c〜12eの接続端部を溶接またはフランジを設け、これらフランジ部をボルト締結することが一般的である。
【0020】
しかしながら、ただ単に前記部分12c〜12eの接続端部を溶接またはフランジを設け、これらフランジ部をボルト締結した場合は、以下の問題がある。
【0021】
先ず、中央部分12cのみならず端部部分12d、12eも摩耗するが、端部部分12d、12eは、供給口12a、排出口12bが設けられている関係で、摩耗しても反転することができないので、延命化の点では効果的でない。
【0022】
次に、分割したものを溶接、または、パッキン16を介してボルト締結しているだけであるため、パッキン16によって端部部分12d、12eへの伝熱が阻害され、端部部分12d、12eでの加熱が悪くなる。
【0023】
そこで、本発明では、端部部分12d、12eはそれぞれの両端にフランジ12da、12db、12ea、12ebを取付けるが、中央部分12cは長手方向の両端ではなく中央部よりにフランジ12ca、12cbを取付けている。
【0024】
例えば供給口12a側では、供給口から供給された被加熱材を直接受け取ることができるように、図2(a)に示すように、中央部分12cの供給口側端面12ccが供給口12aを通り越す位置にくるように、フランジ12caを取付けている。また、排出口12b側では、図2(b)に示すように、中央部分12cの排出口側端面12cdが排出口側の端部部分12eのフランジ12eaを通り越す位置にくるように、フランジ12cbを取付けている。
【0025】
このように、ケーシング12の中央部分12cを端部側に延長した分、単に12c〜12eの接続端部を溶接またはボルト締結した場合と比べて、端部側での摩耗が減少するため、効果的に延命化ができ、かつ伝熱性の阻害が回避されて端部側での加熱性も良くなる。加えて、ケーシング12の供給口12aから供給された飛灰5は、中央部分12cと端部部分12d、12eとの連結部を円滑に移動し、排出口12bから円滑に排出される。また、図2(a)に示した構成では、ケーシング12の供給口12aから供給された飛灰5は、供給側の端部部分12dを介さずに直接中央部分12cに受け渡される。なお、図1、図2中の12fはケーシング12の両端を塞ぐ蓋部材である。
【0026】
上記構成の本発明の反転式加熱器11にあっては、使用によりケーシング12の内面下部が減肉した場合の延命化作業は、次のような作業を行うだけで良い。
【0027】
中央部分12cと端部部分12d、12eの接続を外す。次に、中央部分12cを例えば120°回転させた位置で、再度中央部分12cと端部部分12d、12eを接続する。最後に、当初の供給口12aに板を溶接して塞ぐと共に、新たな供給口を開ける。
【0028】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0029】
例えば図1、図2に示した例は、ケーシング12の中央部分12cと端部部分12d、12eをフランジ12caと12db、12cbと12eaで連結したものを示しているが、これらを補強リング15を介して溶接したものでも良い。
【0030】
また、供給口から供給された飛灰5を直接受け取ることができる位置であれば、中央部分の供給口側端面の位置は供給口12aを通り越す位置でなくても良い。
【0031】
さらに、上記の例ではケーシング12を中央部分12cと端部部分12d、12eの3つに分割しているが、分割数は必ずしも3つでなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、焼却炉で発生した飛灰を処理するための反転式加熱器に限らず、ケーシング内部が摩耗して減肉するようなものであれば、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
5 飛灰
11 反転式加熱器
12 ケーシング
12a 供給口
12b 排出口
12c 中央部分
12ca、12cb フランジ
12cc 供給口側端面
12cd 排出口側端面
12d、12e 端部部分
12da、12db、12ea、12eb フランジ
13 ヒータ
14 パドル
14a パドル軸
15 補強リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に供給口を、他端側に排出口を有するケーシングと、
前記供給口からケーシング内に供給された被加熱物を加熱するヒータと、
前記ケーシング内を軸方向に貫通するパドル軸の長さ方向複数個所に取付けられ、前記ケーシング内に供給されて加熱状態にある被加熱物を攪拌するパドルと、
を備えた反転式加熱器であって、
前記ケーシングは、円筒状となされると共に前記パドルが配設された長手方向の中央部分とこの中央部分の両側に位置する部分に分割され、これら分割されたケーシング部分を分割が可能な態様で一体的となしたものであることを特徴とする反転式加熱器。
【請求項2】
前記長手方向の中央部分とこの中央部分の両側に位置する部分に分割されたケーシングは、一体的となされたときには、中央部分の供給口側端面が、供給口から供給された被加熱材を直接受け取ることができる位置にくるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の反転式加熱器。
【請求項3】
前記長手方向の中央部分とこの中央部分の両側に位置する部分に分割されたケーシングは、一体的となされたときには、中央部分の排出口側端面が、排出口側の端部部分との連結部を通り越す位置にくるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の反転式加熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94875(P2011−94875A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249140(P2009−249140)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】