説明

収容カバー及び収容カバー付き電線

【課題】非対称に複数の係止部を配置しても、係止部を容易に係止可能とする。
【解決手段】電線の端部に接続された端子が挿入される開口を有する箱状に形成された本体部21と、前記本体部21の開口を塞ぐ蓋体22と、前記蓋体22を前記本体部21の開口に対して開閉自在に前記本体部21に連結するヒンジ23と、前記本体部21を構成する複数の側壁の中の相対する一対の側壁の各々に非対称となるように設けられ且つ前記本体部21の開口が前記蓋体22で塞がれたときに前記本体部21と前記蓋体22とを係止する複数の係止部25と、を有し、前記端子を前記本体部内に収容する収容カバー2において、前記複数の係止部25のうちの何れか1つの前記係止部25に対応して設けられて、前記ヒンジ23を中心に回動する前記係止部25の移動軌跡から前記ヒンジ23に向かって逸脱する前記係止部25の移動を規制する移動規制手段26を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のエンジンのスタータモータなどに供給される電力が流れる相手側の端子に接続する端子を収容する収容カバー及び収容カバー付き電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンのスタータモータなどには、他の機器よりも大きな電流が供給される。このため、前述したスタータモータなど大電流が流れる電子機器に設けられた端子と該端子に接続する端子との接続箇所は、絶縁性の収容カバーなどで覆われることが多い。
【0003】
上述した収容カバーとしては、特許文献1等のものが知られている。例えば、図7,8に示す収容カバー100は、電線200の端末に接続した端子201を収容する箱状の本体部110と、該本体部110の開口111を塞ぐ蓋体120と、本体部110と蓋体120との間に介在して本体部110と蓋体120とを連結するヒンジ130と、を有している。
【0004】
収容カバー100は、ヒンジ130を中心として蓋体120を回動することで、本体部110の開口111を塞いだ閉状態(図7参照)から開口111を開放する開状態(図8参照)とにわたって変位自在となっている。そして、収容カバー100は、2つの第1ロック部140と、2つの第2ロック部150と、を有しており、前記塞いだ状態のときに本体部110と蓋体120をロック(係止)する。
【0005】
2つの第1ロック部140は、ヒンジ130が設けられた周壁101と相対する周壁102に並べて形成されている。そして、第1ロック部140の各々は、本体部110と蓋体120の一方側に設けられたロック突起141と、他方側に設けられたU字状のロックアーム142とを有している。また、2つの第2ロック部150は、ヒンジ130が設けられた周壁101と該周壁101に相対する周壁102の各々に設けられている。そして、2つの第2ロック部150は、収容カバー100の中心軸と垂直に交わる直線上で対称的に配置されている。第2ロック部150の各々も、第1ロック部140と同様に、ロック突起151とロックアーム152とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−71659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した2つの第2ロック部150は、本体部110が方形状に形成されていたために、対称的に配置することが可能であった。しかしながら、収容カバー100を取り付ける相手部材側の形状が特殊であったり、収容カバー100内に収容する端子の形状が特殊である場合、本体部110の形状も変形させる必要が生じる。そして、変形した収容カバー100の形状によっては、一対の相対する第2ロック部150を対照的に配置できず、非対称に配置しなければならない。
【0008】
一対の第2ロック部150を非対称で相対する周壁101,102の各々に形成すると、ヒンジ130を中心に蓋体120を回動させた場合、ヒンジ130が合成樹脂で形成されているために、一方の第2ロック部150でロック突起151にロックアーム152が乗り上げてしまい、第2ロック部150をロック(嵌合)できなくなる、若しくは、ロックし難くなるという問題が生じていた。
【0009】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、非対称に複数の係止部を配置しても、係止部を容易に係止することができる収容カバー及び収容カバー付き電線を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の収容カバーは、電線の端部に接続された端子が挿入される開口を有する箱状に形成された本体部と、前記本体部の開口を塞ぐ蓋体と、前記蓋体を前記本体部の開口に対して開閉自在に前記本体部に連結するヒンジと、前記本体部を構成する複数の側壁の中の相対する一対の側壁の各々に非対称となるように設けられ且つ前記本体部の開口が前記蓋体で塞がれたときに前記本体部と前記蓋体とを係止する複数の係止部と、を有し、前記端子を前記本体部内に収容する収容カバーにおいて、前記複数の係止部のうちの何れか1つの前記係止部に対応して設けられて、前記ヒンジを中心に回動する前記係止部の移動軌跡から前記ヒンジに向かって逸脱する前記係止部の移動を規制する移動規制手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の収容カバーにおいて、前記移動規制手段が、前記複数の係止部のうちの前記ヒンジから最も遠い前記係止部に対応して設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載の収容カバー付き電線は、請求項1又は2に記載の収容カバーと、端部に接続された前記端子が前記収容カバーに収容された電線と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1に記載した本発明によれば、本体部を構成する複数の側壁の中の相対する一対の側壁の各々に非対称となるように複数の係止部を設ける場合に、該複数の係止部のうちの何れか1つの係止部に対応して、ヒンジを中心に回動する係止部の移動軌跡からヒンジに向かって逸脱する係止部の移動を規制する移動規制手段を設けるようにしたことから、ヒンジの捻れ等によって非対称に設けられた係止が同じタイミングで係止されなくても、移動規制手段によって係止部の移動が規制されるため、係止部が係止できなくなる、係止し難くなるという問題を解消することができる。また、移動規制手段を本体部の相対する一対の側壁の一方に設けているので、係止部の一方のみを移動形成手段に合わせればよいため、組み付け作業の向上を図ることができる。さらに、移動規制手段を係止部に対する一方側のみに形成するようにしたことから、係止部の他方側は開放されているため、両側に移動規制手段が形成されている場合よりも、組み付け作業を容易とすることができる。従って、非対称に複数の係止部を配置しても、係止部を容易に係止することができるという効果を奏する。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、移動規制手段を複数の係止部のうちのヒンジから最も遠い係止部に対応して設けるようにしたことから、該最も遠い係止部を移動規制手段に向かってヒンジを中心に回動させれば、近くの係止部で係止する作業時よりも、回同時及び係止時の負荷を小さくすることができるため、より一層の組み付け作業の向上を図ることができる。
【0015】
以上説明したように請求項3に記載した本発明によれば、電線の端子を収容する収容カバーは、複数の係止部のうちの何れか1つの係止部に対応して、ヒンジを中心に回動する係止部の移動軌跡から前記ヒンジに向かって逸脱する係止部の移動を規制する移動規制手段を設けていることから、本体部を構成する複数の側壁の中の相対する一対の側壁の各々に複数の係止部を対称に設けることができなくても、移動規制手段によって係止部の移動が規制されるため、係止部が係止できなくなる、係止し難くなるという問題を解消することができる。また、移動規制手段を本体部の相対する一対の側壁の一方に設けているので、係止部の一方のみを移動形成手段に合わせればよいため、組み付け作業の向上を図ることができる。さらに、移動規制手段を係止部に対する一方側のみに形成するようにしたことから、係止部の他方側は開放されているため、両側に移動規制手段が形成されている場合よりも、組み付け作業を容易とすることができる。従って、収容カバーを取り付ける相手部材側の形状が特殊であっても、収容カバーをそれに対応した特殊形状に形成することができるため、収容カバー付き電線の配置に自由度を持たせることができる。また、電線の端部に設けられる端子が特殊な形状であっても、該端子に対応した形状に収容カバーを形成することができるとともに、収容カバーの共通化にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る収容カバー付き電線の開状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す収容カバー付き電線の第1収容カバーが開状態で第2収容カバーが閉状態を示す斜視図である。
【図3】図1中の第1収容カバーの開状態を示す側面図である。
【図4】図3に示す第1収容カバーの閉状態を示す側面図である。
【図5】第1収容カバーにおける係止部と移動規制手段との位置関係を説明するための図であり、(a)は上面図、(b)は側面図を示している。
【図6】第1収容カバーの移動規制手段の一例を示す斜視図である。
【図7】従来の収容カバーの閉状態を示す斜視図である。
【図8】従来の収容カバーの開状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る収容カバーを有する収容カバー付き電線の実施形態の一例を、図1〜図6の図面を参照して説明する。
【0018】
図1,2において、収容カバー付き電線1は、収容カバー2と、端部に接続された端子4が収容カバー2に収容される電線3と、を有して構成している。収容カバー付き電線1は、収容カバー2によって電線3の端子4が他部品と接触するのを防止すると共に、水・塵等から保護されている。
【0019】
まず、電線3は、導電性の芯線と、該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部と、を有している。電線3は、スタータモータなどの大電流が流れる電子機器に電力を供給する。なお、本実施形態では、電線3が所謂被覆電線である場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、複数の電線を束ねたワイヤハーネスとすることもできる。
【0020】
端子4は、電気接続部41と、該電気接続部41に連なって電線3の端部に圧着される電線圧着部42と、を有している。端子4は、電気接続部41と電線圧着部42が導電性の金属部材によって一体に形成されている。そして、電気接続部41は、電線圧着部42から延在された延在部41aと、該延在部41aから斜め方向に向かって立設した端子部41bと、を有している。端子部41bは、相手側のねじ軸(図示せず)を内側に通す孔41cが形成されており、前記ねじ軸が通されて例えば端子台や相手側端子に重ねられて電気的に接続される。
【0021】
電線圧着部42は、電気接続部41に連続した底面と、該底面の電線3の長手方向に沿った両側の縁部の各々から立設した一対のかしめ片と、を有している。一対のかしめ片は、皮むき処理が施された電線3の芯線を互いの間に位置付けるとともに、その先端部が互いに内向きに曲げられることにより該芯線をかしめて、該芯線と電気的に接続する。
【0022】
次に、収容カバー2は、端子4の電気接続部41を収容する第1収容カバー2Aと、端子4の電線圧着部42及び電線3の一部を収容する第2収容カバー2Bと、を有して構成している。収容カバー2は、第1収容カバー2Aと第2収容カバー2Bとが非導電性の合成樹脂で一体に形成されている。なお、本実施形態では、収容カバー2を第1収容カバー2Aと第2収容カバー2Bとに分けた場合について説明するが、上述した図7,8に示すように1つの収容カバーとしてもよい。
【0023】
第1収容カバー2Aは、本発明の収容カバーに相当している。第1収容カバー2Aは、図1乃至図4に示すように、本体部21と、蓋体22と、ヒンジ23と、一対の係止突起24と、一対の係止部25と、移動規制手段26と、を有し、それらは非導電性の合成樹脂等によって一体に形成されている。
【0024】
本体部21は、図5,6に示すように、電線3の端部に接続された端子4が本体部21内に挿入される開口21aを有する箱状に形成されている。本体部21は、開口21aが約七角形となる形状に形成されている。本体部21は、底板21bと、該底板21bの周縁から立設し且つその先端部にヒンジ23が形成された第1側壁21cと、該第1側壁21cが延在する方向Xと交わる方向Yに沿って相対して設けられた一対の第2側壁21d,第3側壁21eと、第1側壁の両端から第2側壁21d,第3側壁21eの各々に連なった一対の第4側壁21fと、を有している。
【0025】
蓋体22は、本体部21の開口21aを塞ぐような形状で形成されている。蓋体22は、図5,6に示すように、本体部21の開口21aを塞いだ状態で本体部21の底板21bと相対する天井22aと、該天井22aの縁部から本体部21に向かって立設する周壁22bと、を有している。そして、周壁22bは、第1周壁22cと、第2周壁22dと、第3周壁22eと、一対の第4周壁22fと、を有しており、それらは一体に形成されている。
【0026】
第1周壁22cは、本体部21の第1側壁21cに向かって天井22aから立設しており、ヒンジ23によって第1側壁21cと連なっている。第2周壁22d及び第3周壁22eは、相対する本体部21の第2側壁21dに向かって天井22aから立設している。一対の第4周壁22fは、相対する本体部21の一対の第4側壁21fの各々に向かって天井22aから立設している。
【0027】
ヒンジ23は、本体部21の第1側壁21cと蓋部22の第1周壁22cとに跨って形成されている。即ち、ヒンジ23は、本体部21の開口21aに対して蓋体22を開閉自在に本体部21に連結している。そして、本実施形態のヒンジ23は、図3に示す本体部21の開口21aを開放した開状態から、図4に示す本体部21の開口21aを蓋体22で塞いだ閉状態にわたって本体部21又は蓋体22の回動を、ヒンジ23を中心に可能としている。
【0028】
一対の係止突起24は、本体部21の相対する第2側壁21d及び第3側壁21eの各々の外側の開口21a寄りに、非対称となるように形成されている。なお、本発明の一対の係止突起24が非対称であるとは、図5に示すように、第1側壁21cと平行に延びる基準線C上に何れか一方の係止突起24しか位置しない状態を意味している。そして、係止突起24は、図1等に示すように、第2側壁21d又は第3側壁21eの立設方向の断面が略三角形となる突起状に、第2側壁21d又は第3側壁21eから外側に向かって突出している。
【0029】
一対の係止部25は、図5に示すように、一対の係止突起24に対応した非対称となるように、蓋体22の第2周壁22d及び第3周壁22eの各々の外側の本体部21寄りに形成されている。係止部25は、係止突起24と係止されるU字状のロックアームであり、基部25aと、該基部25aの両端から第2側壁21d又は第3側壁21eの外側に沿って立設する一対のアーム25b,25cと、を有している。そして、一対のアーム25b,25cの間に係止突起24が位置付けられて、係止突起24と基部25aとが係止されることで、係止突起24と係止部25は係止される。
【0030】
移動規制手段26は、図3に示すように、一対の係止部25のうちの何れか1つの係止部25に対応した第3側壁21eの外面に設けられて、ヒンジ23を中心に回動する係止部25の移動軌跡L1,L2から逸脱する係止部25の移動を規制する。そして、移動軌跡L1,L2は、一対のアーム25b,cの内周と外周をそれぞれ示しており、ヒンジ23を中心に回動した際の円周部と該円周部から係止突起24に沿って延びる延在部とを有している。なお、本実施形態では、係止部25の一対のアーム25b,25cの各々に対応した移動軌跡L1,L2に着目して説明するが、これに代えて、ヒンジ23を回動中心とした場合の係止部25の移動軌跡L1のみに着目したり、係止部25の中心の移動軌跡に着目するなどの種々異なる実施形態とすることができる。
【0031】
移動規制手段26は、図4に示すように、係止部25が係止突起24に係止されたときに、係止部25のアーム25bの延在方向に沿った方向に延びる柱状のリブとして、第3側壁21eのヒンジ23寄りに形成されている。本実施形態の移動規制手段26は、ヒンジ23を中心に回動している場合に、係止部25が移動軌跡L1からヒンジ23方向に逸脱する移動を規制している。さらに、移動規制手段26は移動軌跡L1に沿ったリブとして形成していることから、係止部25を係止突起24に向けて誘導することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、移動規制手段26を係止突起24に沿って平行に延在させる場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、係止部25の移動軌跡L1,L2に応じた方向(例えば斜め方向など)に延在させたり、係止部25を突起状に形成するなど、係止部25の移動を規制するものであれば、種々異なる実施形態とすることができる。
【0033】
また、本実施形態では、図5に示すように、一対の係止部25のうち、ヒンジ23から最も遠い方の係止部25に対応させて移動規制手段26を設ける、即ち、その係止部25が係止する係止突起24が設けられた第3側壁21eに移動規制手段26を設ける場合について説明した。これに代えて、一対の係止部25のうち、ヒンジ23に近い方の係止部25に対応させて移動規制手段26を設ける、即ち、その係止部25が係止する係止突起24が設けられた第2側壁21dに移動規制手段26を設けてもよい。
【0034】
以上説明した第1収容カバー2Aによれば、蓋体22を構成する複数の側壁の中の相対する一対の第2周壁22d及び第3周壁22eの各々に非対称となるように複数の係止部25を設ける場合に、該複数の係止部25のうちの何れか1つの係止部25に対応して、ヒンジ23を中心に回動する係止部25に移動軌跡L1,L2からヒンジ23に向かって逸脱する係止部25の移動を規制する移動規制手段26を設けるようにしたことから、ヒンジの捻れ等によって非対称に設けられた係止が同じタイミングで係止されなくても、移動規制手段26によって係止部25の移動が規制されるため、係止部25が係止できなくなる、係止し難くなるという問題を解消することができる。また、移動規制手段26を本体部21の第3側壁21eに設けているので、係止部25の一方のみを移動形成手段26に合わせればよいため、組み付け作業の向上を図ることができる。さらに、移動規制手段26を係止部25に対する一方側のみに形成するようにしたことから、係止部25の他方側は開放されているため、両側に移動規制手段26が形成されている場合よりも、組み付け作業を容易とすることができる。従って、非対称に複数の係止部25を配置しても、係止部25を容易に係止することができるという効果を奏する。
【0035】
また、移動規制手段26を複数の係止部25のうちのヒンジ23から最も遠い係止部25に対応して設けるようにしたことから、該最も遠い係止部25を移動規制手段26に向かってヒンジ23を中心に回動させれば、近くの係止部25で係止する作業時よりも、回同時及び係止時の負荷を小さくすることができるため、より一層の組み付け作業の向上を図ることができる。
【0036】
次に、第2収容カバー2Bは、電線3の端末に接続した端子4の電線圧着部42を収容する箱状の本体部210と、該本体部210の開口210aを塞ぐ蓋体220と、本体部210と蓋体220との間に介在して本体部210と蓋体220とを連結する複数(図1中では2つ)のヒンジ230と、を有している。
【0037】
第2収容カバー2Bは、ヒンジ230を中心として蓋体220を回動することで、本体部210の開口210aを塞いだ閉状態(図1参照)から開口210aを開放する開状態(図2参照)とにわたって回動自在となっている。そして、第2収容カバー2Bは、2つのロック突起240と、2つのロック部250と、を有しており、前記塞いだ閉状態のときに本体部210と蓋体220をロック突起240とロック部250によってロック(係止)する。
【0038】
2つのロック突起240は、複数のヒンジ230が設けられた側壁211と相対する側壁212に形成されている。2つのロック部250は、複数のヒンジ230が設けられた周壁221と相対する周壁222に並べて形成されている。そして、2つのロック突起240と2つのロック部250は、第2収容カバー2Bの中心軸と垂直に交わる直線上で対称的に配置されている。そして、蓋体220は、ヒンジ230を中心に回動されて、本体部210の開口210aを塞いだ閉状態になると、2つのロック部250が2つのロック突起240に係止される。
【0039】
次に、上述した構成の収容ケース付き電線1の組み付け例を、図1乃至図4の図面を参照して以下に説明する。
【0040】
まず、図1に示すように、第2収容カバー2Bの本体部210の開口210aから電線3の端子4を挿入して、電気接続部41を第1収容カバー2Aの本体部21内に開口21aから収容すると共に、電線圧着部42を本体部210内の収容位置に収容する。そして、第2収容カバー2Bの蓋体220をヒンジ230を中心に回動させて、本体部210の開口210aを蓋体220で塞ぎ、2つのロック部250と2つのロック突起240を係止して、図2に示すように、端子4を本体部210内に収容した状態で本体部210と蓋体220をロックする。これにより、端子4の電気接続部41は、第1収容カバー2Aの本体部21内の所定の収容位置に位置付けられ、第2収容カバー2Bの蓋体220の端部に設けられた当接部260が当接して、電線3の長手方向に対する移動が規制されている。
【0041】
続いて、第1収容カバー2Aのヒンジ23を中心に蓋体22を回動させて、複数の係止部25の各々を複数の係止突起24に近づけると、1つの係止部25のアーム25bが本体部21の移動規制手段26に沿って移動することになる。このとき、係止部25にヒンジ23に向かう移動軌跡L1,L2から逸脱する方向への力が加わると、移動規制手段26によってその移動は規制されるため、係止部25が移動軌跡L1,L2から逸脱するのを防止できる。そして、係止部25を移動規制手段26に沿うように、蓋体22をさらに回動させて2つの係止突起24と係止部25を係止させることで、本体部21の開口21aは蓋体22によって塞がれる。これにより、第1収容カバー2Aの内部に端子4の電気接続部41が収容され、第2収容カバー2Bの内部に端子4の電線圧着部42が収容され、電線圧着部42に接続された電線3が第2収容カバー2Bの外部に導出された状態の収容カバー付き電線3が完成する。
【0042】
以上説明した収容カバー付き電線1によれば、電線3を収容する第1収容カバー2Aは、複数の係止部25のうちの何れか1つの係止部25に対応して、ヒンジ23を中心に回動する係止部25の移動軌跡L1,L2からヒンジ23に向かって逸脱する係止部25の移動を規制する移動規制手段26を設けていることから、本体部21を構成する複数の側壁の中の相対する一対の側壁の各々に複数の係止部25を非対称に係止する場合でも、移動規制手段26によって係止部25の移動が規制されるため、係止部25が係止できなくなる、係止し難くなるという問題を解消することができる。また、移動規制手段26を本体部21の相対する一対の側壁の一方に設けているので、係止部25の一方のみを移動形成手段26に合わせればよいため、組み付け作業の向上を図ることができる。さらに、移動規制手段26を係止部25に対する一方側のみに形成するようにしたことから、係止部25の他方側は開放されているため、両側に移動規制手段26が形成されている場合よりも、組み付け作業を容易とすることができる。従って、第2収容カバー2Aを取り付ける相手部材側の形状が特殊であっても、第2収容カバー2Aをそれに対応した特殊形状に形成することができるため、収容カバー付き電線1の配置に自由度を持たせることができる。また、電線3の端部に設けられる端子4が特殊な形状であっても、該端子4に対応した形状に第2収容カバー2Aを形成することができるとともに、収容カバー2の共通化にも対応することができる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、第2収容カバー2Aの蓋体22の一対の第2周壁22d及び第3周壁22eの各々に1対1で係止部25を設ける場合について説明した。これに代えて、例えば、第2周壁22d及び第3周壁22eに1対2、2対1、2対2、等の割合で係止部25を配置することもできる。そして、この場合の移動規制手段26の配置は、ヒンジ23から最も遠い係止部25に対応させて本体部21に形成するのが望ましい。
【0044】
また、上述した実施形態では、第2収容カバー2Aの本体部21に係止突起24及び移動規制手段26、蓋体22に係止部25をそれぞれ形成する場合について説明したが、本体部21に係止部25を形成し、蓋体22に係止突起24及び移動規制手段26を形成する実施形態とすることもできる。
【0045】
さらに、上述した実施形態では、U字状の係止部25と突状の係止突起24を係止させる場合について説明したが、これに代えて、フック状の係止部と該係止部の端部に形成したフック部を本体部の係止穴に係止するなどの種々異なる実施形態とすることができる。
【0046】
また、図7,8の第2ロック部150に示すように、上述した実施形態の第2収容カバー2Bにおける2つの係止部240を周壁221と相対する周壁222の各々に形成する場合、例えば、ヒンジ230から遠い、複数のヒンジ230が設けられた側壁211と相対する側壁212に本発明の移動規制手段を形成することで、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0047】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 収容カバー付き電線
2 収容カバー
2A 第1収容カバー(収容カバー)
3 電線
4 端子
21 本体部
22 蓋体
23 ヒンジ
24 係止突起
25 係止部
26 移動規制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に接続された端子が挿入される開口を有する箱状に形成された本体部と、前記本体部の開口を塞ぐ蓋体と、前記蓋体を前記本体部の開口に対して開閉自在に前記本体部に連結するヒンジと、前記本体部を構成する複数の側壁の中の相対する一対の側壁の各々に非対称となるように設けられ且つ前記本体部の開口が前記蓋体で塞がれたときに前記本体部と前記蓋体とを係止する複数の係止部と、を有し、前記端子を前記本体部内に収容する収容カバーにおいて、
前記複数の係止部のうちの何れか1つの前記係止部に対応して設けられて、前記ヒンジを中心に回動する前記係止部の移動軌跡から前記ヒンジに向かって逸脱する前記係止部の移動を規制する移動規制手段を有することを特徴とする収容カバー。
【請求項2】
前記移動規制手段が、前記複数の係止部のうちの前記ヒンジから最も遠い前記係止部に対応して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の収容カバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の収容カバーと、端部に接続された前記端子が前記収容カバーに収容された電線と、を有することを特徴とする収容カバー付き電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−89373(P2012−89373A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235554(P2010−235554)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】