説明

収容検出センサ及び凝固活性測定装置

【課題】より少ない量でより正確に検査対象である凝固する液体の凝固活性を測定することができる。
【解決手段】収容検出センサ20は、供給口23と振動板26とを有し検査対象である血液40を収容する収容部21に血液40を収容させる際に、供給口23から血液40を供給すると収容部21に設けられた排出孔25からこの収容部21内の空気が排出されつつ収容部21内へ血液40が導入される。そして、振動板26に配設された圧電素子30により血液40に超音波振動を付与し、この血液40の振動状態の変化を検出することにより血液40の凝固速度などの情報を得る。このように、収容部21から空気が抜けやすいため、収容部21に収容した血液40に気泡が残ってしまうのを抑制可能である。また、排出孔25から収容部21内の空気を排出可能であるため、より少ない量の血液40であっても収容部21に導入可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容検出センサ及び凝固活性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凝固活性測定装置としては、血液試料の光学変化を時間の経過と共に検出することにより血液凝固時間を測定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された装置は、測定開始から凝固反応終了までの間に少なくとも1つのチェック領域を設け、その領域の反応状態(反応速度の低下など)を監視することにより、反応初期の異常を検出する。また、その他の凝固活性測定装置では、検査対象である血液に磁性体を投入し、この磁性体を回転させながらこの磁性体の動きが鈍くなるのを検出することにより血液凝固時間を測定するものが提案されている。
【特許文献1】特開2003−169700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者(特許文献1に記載された装置)では、光学変化を検出するため、検査対象の粘度にかかわらず凝固活性を検出することができるが、光量変化が小さいことから、検出精度が低いという問題があった。また、後者では、磁性体の動きの変化を見るため、ある一定の粘度がなければ凝固活性を検出することができない問題があった。また、前者及び後者では、比較的大きな検査対象の量を要した。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、より少ない量で、より正確に検査対象の凝固活性を測定することができる収容検出センサ及び凝固活性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の収容検出センサは、
検査対象である凝固する液体の凝固活性を測定する凝固活性測定装置に用いられる収容検出センサであって、
前記検査対象を供給可能な供給口と前記検査対象と接触する振動板とを有し前記検査対象を収容する収容部と、
前記収容部に設けられ前記供給口から前記検査対象を供給すると該収容部に収容されている気体を排出可能な排出孔と、
前記振動板に配設され前記収容部へ収容された前記検査対象に振動を付与する振動付与手段と、
前記検査対象へ付与された該検査対象の振動状態を検出する振動検出手段と、
を備えたものである。
【0007】
この収容検出センサでは、検査対象(凝固する液体)を供給可能な供給口と検査対象と接触する振動板とを有し検査対象を収容する収容部に、検査対象を収容させる際に、供給口から検査対象を供給すると収容部に設けられた排出孔からこの収容部に収容されていた気体が排出されつつ、収容部内へ検査対象が導入される。そして、振動板に配設された振動付与手段により検査対象に振動を付与し、この検査対象へ付与された検査対象の振動状態を検出することにより、検査対象の凝固活性の情報を得るのである。このように、検査対象を収容部に収容する際に、気体が抜けることから、収容部に収容した検査対象に気泡が残ってしまうのを抑制可能である。また、排出孔により収容部から気体を排出して検査対象を導入可能であるから、より少ない量の検査対象であっても収容部に収容可能である。したがって、より少ない量で、より正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。ここで、「凝固活性」とは、検査対象の凝固に関する状態及びその状態の変化をいい、例えば検査対象の粘度や粘度の変化、凝固速度などを含む。このとき、前記排出孔は、前記検査対象の表面張力により該検査対象は排出されない大きさに形成されているものとしてもよい。
【0008】
本発明の収容検出センサにおいて、前記収容部は、前記供給口と前記排出孔とが前記検査対象の供給方向に設けられ、前記振動付与手段と前記振動検出手段とが前記検査対象の供給方向に直交する方向の面に設けられているものとしてもよい。こうすれば、振動の付与及び検出を行う面に供給口や排出孔がないため、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。
【0009】
本発明の収容検出センサにおいて、前記収容部は、側面と底面とにより形成され、前記側面に前記振動付与手段と前記振動検出手段とが設けられており、前記底面に排出孔が設けられているものとしてもよい。このとき、前記振動板は、前記検査対象が収容される側と異なる側に向かって凸形状となるように形成されているものとしてもよい。こうすれば、振動の検出側に集中して振動するため、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。また、前記収容部は、前記底面が前記検査対象が収容される側と異なる側に向かって凸形状となるように形成されているものとしてもよい。こうすれば、底面で生じた振動が検出されるのを抑制することができ、ひいては一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。このとき、前記供給口は、前記収容部の上面に設けられ、前記排出孔は、前記収容部の底面に設けられているものとしてもよい。また、前記収容部は、前記底面が振動を吸収する部材により形成されているものとしてもよい。こうすれば、振動の発生、振動の検出に関与しない底面での振動の発生を抑制可能であるため、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。また、前記収容部は、前記底面に複数の前記排出孔が設けられているものとしてもよい。こうすれば、収容部にある気体をより一層排出しやすいため、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。
【0010】
本発明の収容検出センサにおいて、前記排出孔は、孔サイズが1μm以上100μm以下に形成されているのが好ましく、2μm以上10μm以下に形成されていることがより好ましい。孔サイズが1μm以上では排出孔を形成しやすいし、100μm以下では排出孔から検査対象の液体が漏れ出るのを抑制することができる。ここで、孔サイズは、排出孔が矩形であるときには最も長い辺の長さをいい、円や楕円であるときは最も長い内径をいうものとする。
【0011】
本発明の収容検出センサにおいて、前記排出孔は、前記収容部に配設された孔サイズが0.01μm以上10μm以下のメッシュにより形成されているものとしてもよい。こうすれば、メッシュを用いることにより比較的容易に排出孔を形成することができる。このメッシュは、孔サイズが0.01μm以上10μm以下に形成されていることが好ましく、0.1μm以上5μm以下に形成されていることがより好ましい。孔サイズが0.01μm以上ではメッシュを形成しやすく、10μm以下では、メッシュから検査対象の液体が漏れ出るのを抑制することができる。ここで、孔サイズは、排出孔が矩形であるときには最も長い辺の長さをいい、円や楕円であるときは最も長い内径をいうものとする。
【0012】
本発明の収容検出センサにおいて、前記振動検出手段は、前記振動付与手段を兼ねた圧電素子であるものとしてもよい。こうすれば、振動の付与と振動の検出とを圧電素子を利用して1つの部材で行うことができるため、構成を簡略化することができる。
【0013】
本発明の収容検出センサにおいて、前記振動検出手段は、前記振動付与手段と対向して前記収容部に設けられているものとしてもよい。こうすれば、振動の付与と振動の検出とを別の場所で行うことにより振動板の振動が振動の検出に影響するのを抑制可能であるため、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。
【0014】
本発明の収容検出センサは、前記収容部の前記振動板の面と該振動板に対向する面との間の側壁部分に振動を吸収可能な振動遮断層、を備えたものとしてもよい。こうすれば、振動遮断層により収容部の側壁部分を通じて振動が伝播するのを抑制可能であるため、より一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。
【0015】
本発明の収容検出センサにおいて、前記収容部は、前記供給口から前記振動付与手段と前記振動検出手段とが設けられた位置までの内部が粗面によって形成されているものとしてもよい。こうすれば、前記振動付与手段と前記振動検出手段とが設けられた位置まで検査対象を導きやすい。
【0016】
本発明の収容検出センサにおいて、前記検査対象である凝固する液体は、血液であり、前記収容部は、前記血液を凝固させる薬品が設けられているものとしてもよい。血液は、その凝固速度を測定することが多いため、本発明を適用する意義が高い。また、血液は、薬品と混合して凝固させることが多いため、収容部にその薬品を設けることにより、凝固活性の測定を実行しやすい。
【0017】
本発明の凝固活性測定装置は、
検査対象である凝固する液体の凝固活性を測定する凝固活性測定装置であって、
上述したいずれか一つに記載の収容検出センサと、
前記収容検出センサの前記振動付与手段及び前記振動検出手段と接続・接続解除可能な接続手段と、
前記収容部へ収容された前記検査対象に振動を付与するよう前記振動付与手段を制御すると共に前記振動検出手段が検出した検査対象の振動状態の変化に基づいて前記検査対象の凝固活性を算出する制御手段と、
を備えたものである。
【0018】
この凝固活性測定装置は、上述したいずれかに記載の収容検出センサの振動付与手段及び振動検出手段と接続し、収容部へ収容された検査対象に振動を付与すると共に、検出した検査対象の振動状態の減衰に基づいて前記検査対象の凝固活性を算出する。このように、上述したいずれか一つの収容検出センサを備えるから、より少ない量で、より正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である凝固活性測定装置10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、凝固活性測定装置10に装着される収容検出センサ20の説明図であり、図2(a)が斜視図、図2(b)が平面図、図2(c)が正面図、図2(d)が図2(b)のA−A断面図である。凝固活性測定装置10は、検査対象である血液の凝固特性を検出する装置として構成され、装置全体の制御を司るコントローラ11と、血液を収容し収容した血液の凝固活性を検出するセンサである収容検出センサ20と、検査者へ情報を表示可能であり検査者の指示を入力可能である操作パネル15と、収容検出センサ20とコントローラ11とを電気的に接続・接続解除可能な接続コネクタ16とを備えている。コントローラ11は、CPU12を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、情報を記憶消去可能であり各種処理プログラムを記憶したフラッシュROM13と、一時的にデータを記憶するRAM14とを備えている。操作パネル15は、検査者が凝固活性測定装置10に対して各種の指示を入力するためのデバイスであり、各種の指示に応じた文字や画像が表示されるカラー液晶パネルにより構成された表示部15aや、各種操作を行うボタン等を配置した操作部15bなどが設けられている。
【0020】
収容検出センサ20は、図2に示すように、血液40をピペッタ18などにより供給可能な供給口23が上面に開口し供給された血液40を収容する収容部21と、収容部21の下面にある底面部材24に設けられ血液40を収容部21へ供給する際の空気抜き孔として用いられる排出孔25と、収容部21に収容された血液40に接触して振動可能な振動板26と、振動板26を振動させて超音波の振動を発生すると共に血液40を介して反射板36で反射した振動を電気信号に変換する圧電素子30と、を備えている。
【0021】
収容部21は、外形が略直方体であり内部空間が略直方体の容器として構成されており、側面のうちの1面(図2(a)の手前側の面)が振動板26であり、この振動板26に対向する面が反射板36として構成されている。この収容部21は、例えば安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライトなどのセラミックスにより形成することができる。この収容部21の血液40が収容される側の面には、血液40と混合すると血液40の凝固が開始される乾燥試薬42が乾燥した状態で固定されている。ここでは、乾燥試薬42は、振動板26に固定されているものとした。この乾燥試薬42は、例えば、組織トロンボプラスチン含有試薬、リン脂質含有試薬、トロンビン含有試薬などを用いることができる。この収容部21は、凝固活性測定装置10により血液40の凝固活性を計測するのに十分な容積を経験的に求め、この求めた容積、例えば1μL以上10μL以下の容積となるように形成されている。供給口23に対向する収容部21の底面を構成する底面部材24は、血液40が収容される側と異なる側、即ち、外部に向かってドーム状の凸形状になるように形成されている。この底面部材24は、振動をより吸収する材料、例えば硬質ウレタンの発泡体などにより形成されている。この底面部材24の略中央、ドーム形状の頂点には排出孔25が形成されている。この排出孔25は、その孔サイズdが血液40の表面張力により空気は抜けるが血液40は外部に漏れないような大きさ、例えば1μm以上100μm以下の大きさに形成されるのが好ましい。ここでは、孔サイズdは、2〜10μmに形成されている。なお、孔サイズdは、排出孔25が矩形であるときには最も長い辺の長さをいい、円や楕円であるときは最も長い内径をいうものとする。この収容部21は、振動板26側の部材と反射板36側の部材とに分割され、これらの部材の間に振動をより吸収可能な振動遮断層27が設けられている(図2(d)参照)。この振動遮断層27は、振動を吸収する材料、例えば硬質ウレタンの発泡体などにより形成されている。
【0022】
圧電素子30は、略矩形状に形成されて振動板26の外側に配設されている、即ち、供給口23から供給された血液40の供給方向に直交する面に設けられている。この圧電素子30は、接続コネクタ16を介して入力した信号により体積変化すると共に、振動板26によって加えられた圧力に応じた信号を接続コネクタ16を介してコントローラ11へ出力する。この圧電素子30は、1つの素子により収容部21に収容された血液40に対し振動板26を介して超音波振動を与えると共に、血液40を介して反射板36で反射した反射波を検出するよう構成されている。この圧電素子30としては、例えば、チタン酸ビスマスやニオブ酸リチウム、これらにナトリウム、カリウムなどを添加したものなどを用いることができる。
【0023】
次に、こうして構成された本実施形態の凝固活性測定装置10の動作、特に血液40の凝固活性の測定について図1を用いて説明する。まず、検査者は、接続コネクタ16に収容検出センサ20を接続し、操作部15bを操作して図示しない測定画面を表示部15aに表示させる。次に、検査者は、検査対象である血液40をピペッタ18を用いて収容部21の供給口23から供給する。すると、収容部21内部の空気が排出孔25から排出されながら血液40が収容部21に収容されていく。ここで、排出孔25が底面部材24のドーム形状の頂点に設けられており、順次供給される血液40により徐々に押し出されるから、収容部21内部の空気が収容部21の隅などに残りにくい。
【0024】
続いて、検査者は、操作部15bを操作して測定開始指示を入力する。すると、凝固活性測定装置10のCPU12は、所定時間のあいだ、圧電素子30へ接続コネクタ16を介して撹拌用の駆動パルス電圧を印加する。すると、振動板26が逆圧電効果により振動し、振動板26の内側に固定された乾燥試薬42が血液40中に溶け出す。ここで、「所定時間」や「撹拌用の駆動パルス電圧」は、乾燥試薬42が血液40に十分まざるような値に経験的に定められているものとした。所定時間が経過すると、CPU12は、圧電素子30へ接続コネクタ16を介して測定用の駆動パルス電圧を印加する。すると、振動板26が逆圧電効果により強く振動し、血液40に超音波振動が伝わるようになる。
【0025】
そして、血液40を伝わる超音波振動が反射板36で反射して再び振動板26に到達する。この反射板36から到達した超音波振動によって振動板26が振動し、圧電効果により電圧が生じ、この生じた電圧を検出信号としてコントローラ11へ入力される。このとき、収容部21に収容された血液40は気泡などの残留が抑制されている状態であり、底面部材24からの不要な振動を抑制した状態で、且つ振動板26側の振動が振動遮断層27により側壁部を伝って反射板36へ伝わるのを抑制した状態で、血液40の凝固活性を測定可能である。また、血液40の凝固中に水分などが生じた場合には、排出孔25から排出可能である。続いて、CPU12は、検出した電圧波形の振幅電圧と測定用の駆動パルス電圧との比(減衰率)の変化によって、経時的な血液40の粘度の変化を検出する。そして、CPU12は、この粘度の変化に基づいて、血液40の凝固活性、例えば凝固速度などを算出し、表示部15aに表示出力する。
【0026】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の圧電素子30が本発明の振動付与手段及び振動検出手段に相当し、接続コネクタ16が接続手段に相当し、コントローラ11が制御手段に相当する。
【0027】
以上詳述した本実施形態の凝固活性測定装置10によれば、検査対象である血液40を供給可能な供給口23と振動板26とを有し血液40を収容する収容部21に血液40を収容させる際に、供給口23から血液40を供給すると収容部21に設けられた排出孔25からこの収容部21内の空気が排出されつつ、収容部21内へ血液40が導入される。そして、振動板26に配設された圧電素子30により血液40に超音波振動を付与し、この血液40の振動状態を検出することにより、血液40の凝固活性、例えば粘度や凝固速度などの情報を得るのである。このように、血液40を収容部21に収容する際に空気が抜けることから、収容部21に収容した血液40に気泡が残ってしまうのを抑制可能であり、気泡による超音波の散乱や減衰が抑えられるため測定精度が向上する。また、排出孔25により収容部21から空気を排出して血液40を導入可能であるから、より少ない量の血液40であっても収容部21に導入可能である。したがって、より少ない量で、より正確に血液40の凝固活性を測定することができる。また、収容部21は、互いに対向する側面に振動板26と反射板36とが設けられた互いに対向した側面と、この側面と直交する方向に設けられた底面部材24とにより形成され、供給口23に対向する底面部材24に排出孔25が設けられているため、振動の付与及び検出を行う面に供給口23や排出孔25がなく、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができるし、供給口23と排出孔25とが同じ方向にあるから供給口23から血液40を供給すると排出孔25から空気が抜けやすく、より気泡の残留を抑制することができる。更に、収容部21は、底面部材24が外部に向かって凸形状であり、振動を吸収する部材により形成されているから、底面部材24で生じる振動が圧電素子30で検出されるのを抑制することができ、ひいては一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。更にまた、排出孔25は、孔サイズが1μm以上100μm以下に形成されているから、排出孔25を形成しやすいし、排出孔25から検査対象の液体が漏れ出るのを抑制することができる。そして、圧電素子30は、振動の発生と振動の検出を兼ねているため、構成を簡略化することができる。そしてまた、収容部21の振動板26と反射板36との間の側壁部分に振動を吸収可能な振動遮断層27を備えているため、収容部21の側壁部分を通じて振動が伝播するのを抑制可能であり、より一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。そして更に、検査対象である凝固する液体はその凝固速度を測定することが多い血液であるため、本発明を適用する意義が高く、収容部21は、血液を凝固させる乾燥試薬42が設けられているため、血液と混合して凝固させる薬品を設けることにより、凝固活性の測定を実行しやすい。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
例えば、上述した実施形態では、収容部21に乾燥試薬42が固定されているものとしたが、これを省略してもよい。このとき、凝固用の試薬と血液40とを混合してから収容部21へ導入するものとしてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、血液40の凝固活性を、検出した電圧波形の振幅電圧と測定用の駆動パルス電圧との比(減衰率)の変化によって求めるものとしたが、検出した電圧波形の周波数と駆動パルス電圧の周波数との変化によって求めるものとしてもよい。また、本実施形態では、減衰量の差で粘度の変化を検出したが、測定用パルス発信から電圧信号を検出するまでの時間差から粘度を算出するものとしてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、血液40の凝固活性の測定前に所定時間のあいだ、圧電素子30を振動させて乾燥試薬42と血液40とが混ざるように撹拌するものとしたが、これを省略しても構わない。
【0032】
上述した実施形態において、供給口23は、上面の全体が開口しているものとしたが、その一部のみが開口しているものとしてもよい。
【0033】
例えば、図3に示すように収容検出センサを構成してもよい。図3は、別の収容検出センサの説明図であり、図3(a)が収容検出センサ20Bの平面図、図3(b)が収容検出センサ20Bの正面図、図3(c)が収容検出センサ20Cの平面図、図3(d)が収容検出センサ20Dの平面図、図3(e)が収容検出センサ20Eの平面図、図3(f)が収容検出センサ20Fの平面図、図3(g)が収容検出センサ20Fの正面図である。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、振動遮断層27を備え、底面部材24が外部に向かって凸形状に形成され振動をより吸収可能な部材で形成した収容検出センサ20としたが、図3(a),(b)に示すように、振動遮断層27を省略し、平らに形成し、且つ振動を吸収可能でない部材で形成した底面部材24Bを有する収容部21Bを備えた収容検出センサ20Bとしてもよい。こうしても、排出孔25によって、より少ない量でより正確に血液40の凝固活性を測定することができる。なお、振動遮断層27の省略、底面部材24の形状及び底面部材24の部材のうち少なくとも1以上を適宜組み合わせて省略してもよい。なお、図3では、振動遮断層27を省略したものを示したが、振動遮断層27も適宜組み合わせて採用したり省略したりしてもよい。
【0035】
また、上述した実施形態では、振動板26を平面で形成した収容検出センサ20としたが、図3(c)に示すように、血液40が収容される側と異なる側(外部側)に向かって凸形状となるように形成された振動板26Cを有する収容部21Cを備えた収容検出センサ20Cとしてもよい。こうすれば、側壁側への振動の伝播を抑制し、検出側に集中して振動するため、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。
【0036】
また、上述した実施形態では、圧電素子30を振動の発生と振動の検出とに共用した収容検出センサ20としたが、図3(d)に示すように、振動検出用の圧電素子32を反射板36D側にも設けた収容部21Dを備えた収容検出センサ20Dとしてもよい。こうすれば、振動の付与と振動の検出とを別の場所で行うことにより振動板26の振動が振動の検出に影響するのを抑制可能であるため、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができる。なお、図3(d)では、振動板26及び反射板36Bが外部に向かって凸形状のものを示したが、振動板26及び反射板36Bの少なくとも一方が平面であるものとしてもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、排出孔25を1つ設けた収容検出センサ20としたが、図3(e)に示すように、複数の排出孔25を設けた収容部21Eを備えた収容検出センサ20Eとしてもよい。こうすれば、より空気抜きをしやすいから、一層正確に検査対象の凝固活性を測定することができるし、例えば血液40が凝固する際に液体が生じる場合などには、その生じた液体をより速やかに排出することができる。
【0038】
また、上述した実施形態では、底面部材24に排出孔25を設けた収容検出センサ20としたが、図3(f),(g)に示すように、メッシュ28を底面に設けた収容部21Fを備えた収容検出センサ20Fとしてもよい。こうすれば、メッシュを利用して比較的容易に排出孔を多数形成することができる。このメッシュ28は、孔サイズが0.01μm以上10μm以下に形成されていることが好ましく、0.1μm以上5μm以下に形成されていることがより好ましい。孔サイズが0.01μm以上ではメッシュを形成しやすく、10μm以下では、メッシュから検査対象の液体が漏れ出るのを抑制することができる。ここで、孔サイズは、メッシュの開口部(排出孔)が矩形であるときには最も長い辺の長さをいい、円や楕円であるときは最も長い内径をいうものとする。
【0039】
あるいは、上述した実施形態では、略立方体の収容部21を備えた収容検出センサ20としたが、図4に示すように、血液40の供給方向を長手方向とする矩形状の収容部121を備えた収容検出センサ120としてもよい。図4は、収容検出センサ120の説明図であり、図4(a)が斜視図、図4(b)が断面図、図4(c)が血液40を収容した断面図である。この収容検出センサ120は、図4(a)において手前側に設けられた幅広な供給口123と、供給口123に対向する図4(a)において奥側の面に設けられ供給口123と同形状の排出孔125と、供給口123や排出孔125と直交する面(ここでは上面)に設けられた略矩形状の圧電素子30と、を備えている。収容部121は、その略中央が振動板126であり、これに対向する面が反射板136となっており、振動板126に圧電素子30が設けられている。この収容部121の内部空間において、供給口123から圧電素子30の下部まではその内壁が粗面121aとなっており、圧電素子30の下部から排出孔125まではその内壁が鏡面121bとなっている。これにより、図4(c)に示すように、血液40を供給すると、粗面121aの領域までは液体が入りやすく、鏡面121bから先は液体が進みにくいようになっている。この収容検出センサ120も上述したように血液40を内部に導入し、圧電素子30を振動させて血液40を介して反射板136で反射した振動を検出する。ここでは、比較的強い振動を圧電素子30により発生させて生じた共振周波数を圧電素子30により検出する処理を繰り返すことにより血液40の凝固活性を測定するものとした。こうしても、より少ない量で、より正確に血液40の凝固活性を測定することができる。なお、粗面121a及び鏡面121bは、上述した実施形態や以下に説明する形態にも適宜採用することができる。また、収容検出センサ120において、粗面121aや鏡面121bを省略してもよい。
【0040】
あるいは、図5に示すように、血液40の供給方向を長手方向とし、供給口223と排出孔225とが直交する面にそれぞれ設けられた矩形状の収容部221を備えた収容検出センサ220としてもよい。図5は、収容検出センサ220の説明図であり、図5(a)が斜視図、図5(b)が断面図、図5(c)が血液40を収容した断面図である。この収容検出センサ220は、図5(a)において手前側の面に設けられた幅広な供給口223と、供給口223に直交する、図5(a)において上面に設けられた排出孔225と、上面の排出孔225より供給口223側に設けられた略矩形状の圧電素子30と、を備えている。収容部221は、その略中央が振動板226であり、これに対向する面が反射板236となっており、振動板226に圧電素子30が設けられている。この収容検出センサ220も上述したように血液40を内部に導入し、圧電素子30を振動させて血液40を介して反射板236で反射した振動を検出する。こうしても、より少ない量で、より正確に血液40の凝固活性を測定することができる。
【0041】
あるいは、図6に示すように、圧電素子30の配置方向を長手方向とし、供給口323と排出孔325と圧電素子30とが同一の面にそれぞれ設けられた矩形状の収容部321を備えた収容検出センサ320としてもよい。図6は、収容検出センサ320の説明図であり、図6(a)が斜視図、図6(b)が断面図、図6(c)が血液40を収容した断面図である。この収容検出センサ320は、図6(a)において手前側の上面に設けられた幅広な供給口323と、図6(a)において奥側の上面に設けられた幅広な供給口323と、供給口323と排出孔325との間に設けられた略矩形状の圧電素子30と、を備えている。収容部321は、その略中央が振動板326であり、これに対向する面が反射板336となっており、振動板326に圧電素子30が設けられている。この収容検出センサ320も上述したように血液40を内部に導入し、圧電素子30を振動させて血液40を介して反射板336で反射した振動を検出する。こうしても、より少ない量で、より正確に血液の凝固活性を測定することができる。
【0042】
なお、上述した収容検出センサ20〜20Fの態様を、適用可能な範囲で収容検出センサ120,220,320に適宜適用してもよい。
【0043】
上述した実施形態では、検査対象として血液について説明したが、時間の経過と共に凝固するものであれば特に限定されずに検査対象として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、凝固する検査対象の凝固活性の測定分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】凝固活性測定装置10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】凝固活性測定装置10に装着される収容検出センサ20の説明図であり、図2(a)が斜視図、図2(b)が平面図、図2(c)が正面図、図2(d)が図2(b)のA−A断面図である。
【図3】別の収容検出センサの説明図であり、図3(a)が収容検出センサ20Bの平面図、図3(b)が収容検出センサ20Bの正面図、図3(c)が収容検出センサ20Cの平面図、図3(d)が収容検出センサ20Dの平面図、図3(e)が収容検出センサ20Eの平面図、図3(f)が収容検出センサ20Fの平面図、図3(g)が収容検出センサ20Fの正面図である。
【図4】収容検出センサ120の説明図であり、図4(a)が斜視図、図4(b)が断面図、図4(c)が血液40を収容した断面図である。
【図5】収容検出センサ220の説明図であり、図5(a)が斜視図、図5(b)が断面図、図5(c)が血液40を収容した断面図である。
【図6】収容検出センサ320の説明図であり、図6(a)が斜視図、図6(b)が断面図、図6(c)が血液40を収容した断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 凝固活性測定装置、11 コントローラ、12 CPU、13 フラッシュROM、14 RAM、15 操作パネル、15a 表示部、15b 操作部、16 接続コネクタ、18 ピペッタ、20,20B〜20F,120,220,320 収容検出センサ、21,21B〜21F,121,221 収容部、23,123,223,323 供給口、24,24B 底面部材、25,125,225,325 排出孔、26,26C,126,226,326 振動板、27 振動遮断層、28 メッシュ、30,32 圧電素子、36,36B,36D,136,236,336 反射板、40 血液、42 乾燥試薬、121a 粗面、121b 鏡面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である凝固する液体の凝固活性を測定する凝固活性測定装置に用いられる収容検出センサであって、
前記検査対象を供給可能な供給口と前記検査対象と接触する振動板とを有し前記検査対象を収容する収容部と、
前記収容部に設けられ前記供給口から前記検査対象を供給すると該収容部に収容されている気体を排出可能な排出孔と、
前記振動板に配設され前記収容部へ収容された前記検査対象に振動を付与する振動付与手段と、
前記検査対象へ付与された該検査対象の振動状態を検出する振動検出手段と、
を備えた収容検出センサ。
【請求項2】
前記収容部は、前記供給口と前記排出孔とが前記検査対象の供給方向に設けられ、前記振動付与手段と前記振動検出手段とが前記検査対象の供給方向に直交する方向の面に設けられている、請求項1に記載の収容検出センサ。
【請求項3】
前記収容部は、側面と底面とにより形成され、前記側面に前記振動付与手段と前記振動検出手段とが設けられており、前記底面に排出孔が設けられている、請求項1又は2に記載の収容検出センサ。
【請求項4】
前記収容部は、前記振動板が前記検査対象が収容される側と異なる側に向かって凸形状となるように形成されている、請求項3に記載の収容検出センサ。
【請求項5】
前記収容部は、前記底面が前記検査対象が収容される側と異なる側に向かって凸形状となるように形成されている、請求項3又は4に記載の収容検出センサ。
【請求項6】
前記収容部は、前記底面が振動を吸収する部材により形成されている、請求項3〜5のいずれか1項に記載の収容検出センサ。
【請求項7】
前記収容部は、前記底面に複数の前記排出孔が設けられている、請求項3〜6のいずれか1項に記載の収容検出センサ。
【請求項8】
前記排出孔は、孔サイズが1μm以上100μm以下に形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の収容検出センサ。
【請求項9】
前記排出孔は、前記収容部に配設された孔サイズが0.01μm以上10μm以下のメッシュにより形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の収容検出センサ。
【請求項10】
前記振動検出手段は、前記振動付与手段を兼ねた圧電素子である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の収容検出センサ。
【請求項11】
前記振動検出手段は、前記振動付与手段と対向して前記収容部に設けられている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の収容検出センサ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の収容検出センサであって、
前記収容部の前記振動板の面と該振動板に対向する面との間の側壁部分に振動を吸収可能な振動遮断層、を備えた収容検出センサ。
【請求項13】
前記収容部は、前記供給口から前記振動付与手段と前記振動検出手段とが設けられた位置までの内部が粗面によって形成されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の収容検出センサ。
【請求項14】
前記検査対象である凝固する液体は、血液であり、
前記収容部は、前記血液を凝固させる薬品が設けられている、
請求項1〜13のいずれか1項に記載の収容検出センサ。
【請求項15】
検査対象である凝固する液体の凝固活性を測定する凝固活性測定装置であって、
請求項1〜14のいずれか1項に記載の収容検出センサと、
前記収容検出センサの前記振動付与手段及び前記振動検出手段と接続・接続解除可能な接続手段と、
前記収容部へ収容された前記検査対象に振動を付与するよう前記振動付与手段を制御すると共に前記振動検出手段が検出した検査対象の振動状態の変化に基づいて前記検査対象の凝固活性を算出する制御手段と、
を備えた凝固活性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−53047(P2009−53047A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220143(P2007−220143)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】