説明

収納ケース、搬送台車および浸漬型膜分離装置

【課題】搬送のために多数枚の板状物を同時に安定して保持できる収納ケースを提供する。
【解決手段】収納ケース1は、複数枚の板状物を両側から保持する保持部15が設置された前フレーム10および後フレーム20と、前フレーム10及び後フレーム20の両側方で、それぞれ鉛直姿勢の回動軸19で回動可能に連結された一対のサイドフレーム30を備え、平面視矩形となるように各フレームを回動させ各板状物を保持部15に沿って略鉛直姿勢で収納する収納姿勢と、前フレーム10および後フレーム20がサイドフレーム30と対向するように各フレームを回動させた折畳み姿勢とが切替自在に構成され、収納姿勢で前フレーム10および後フレーム20と一対のサイドフレーム30とが回動軸19の取付部を含む領域で重畳するように配置され、当該取付部以外の重畳領域に収納姿勢を保持する姿勢固定機構40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の板状物を収納する収納ケース、搬送台車および浸漬型膜分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、汚水中の汚泥などの固形分を含んだ被処理水から分離膜を透過した処理水を得る浸漬型膜分離装置は、ケーシング本体に複数枚の平板状の膜エレメントが配設され、散気装置によってその下方より膜面が気体で散気洗浄されるように構成されている。このような浸漬型膜分離装置には、一台当たり例えば10〜200枚の膜エレメントが使用され、大規模な汚水処理設備では、当該浸漬型膜分離装置が複数台設置されている。
【0003】
浸漬型膜分離装置では、処理槽の水頭差や、膜エレメントに接続された吸引ポンプによる吸引圧によって、処理槽内の被処理水が膜エレメントにより重力ろ過または吸引ろ過されることにより、膜エレメントの膜面を透過した透過液が処理水として集水管を通じて槽外へ導出される。このとき、散気装置から噴出される曝気空気の気泡およびそれにより生起される上昇流によって膜エレメントの膜面が洗浄されることにより膜分離性能の低下が抑制され、膜分離装置が機能不全に到ることが防止される。
【0004】
しかし、膜エレメントの膜面に経時的に形成されるファウリング層により、ろ過抵抗が増大するため、ある程度の継続的使用によって膜透過流束が低下する。このため、一定期間毎、例えば数カ月に一度膜エレメントが引き上げられ、機械、または人手によって洗浄が行なわれる。さらに、膜分離性能がある程度低下する数年単位、例えば3年から7年毎に膜エレメントが交換される。
【0005】
また、浸漬型膜分離装置の稼動中に、被処理水に混入した異物等により分離膜が破れるなどして膜エレメントが破損した場合には、その都度、破損した膜エレメントが個別に交換される。
【0006】
工場で製造された交換用の膜エレメントは、物流過程等で分離膜表面が破損しないように、数枚例えば5枚ずつ合紙を挟んでダンボール箱に梱包された状態で汚水処理設備に搬入される。
【0007】
ところで、特許文献2には、保管および搬送時の占有スペースを小さくすることのできるリネンワゴンを提供することを目的として、車輪取付け板と、該車輪取付け板に取付けられた車輪と、前記車輪取付け板から鉛直に立設された左右一対の側枠部と、該側枠部の下端近傍に配設された底枠部と、前記左右の側枠部を連結する自在アーム部材とを備えたリネンワゴンであって、前記底枠部は、中央および側枠部との連結部に蝶番を有すると共に中央部で折曲自在に構成されたことを特徴とするリネンワゴンが開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、側枠が過度に開放されないようにして、事故の発生を未然に防ぐことができる安全性に優れた商品展示兼手動運搬車を提供することを目的として、枠体と、この枠体に掛けられる棚と、枠体の下部に取付けられたキャスタとを具備し、枠体は、後枠と、この後枠に連結された両側枠とを具備し、両側枠のそれぞれは、後枠に固着された後部半側枠と、この後部半側枠にヒンジ連結部を介して回転自在に連結された前部半側枠とを具備し、ヒンジ連結部は、後部半側枠に対する前部半側枠の一定以上の開放回動を禁止する禁止手段を有している商品展示兼手動運搬車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001―334130号公報
【特許文献2】特開2004―130932号公報
【特許文献3】登録実用新案第3021477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
トラック等の搬送車両で汚水処理設備に搬入された膜エレメントの梱包品は、作業員によって搬送車両から台車に移載されて作業場に搬送され、手作業で開梱された後、個々の膜エレメントが取り出され、浸漬型膜分離装置に装着される。
【0011】
しかし、このような開梱作業や浸漬型膜分離装置への装着のための移送作業に際して、作業者は、膜エレメントが破損しないように注意深く作業を進める必要があり、その数が増えると非常に煩雑な作業になるという問題があった。
【0012】
さらに、開梱後に残る多量の梱包材を廃棄処理すると非常に無駄が多く、省資源化の流れに反することとなり、梱包材を再資源化する場合であっても、そのための回収、搬送作業を伴なうため、そのための費用が発生する。そのため、多数の膜エレメントを一括して梱包すれば、梱包材の使用量を低減できるようになるが、重量が増して運搬、開梱等の作業の安全性を損なう虞もある。
【0013】
そこで、多数の膜エレメントを個別に梱包しなくとも、膜表面が破損する等の事故が発生しないように、安全に運搬作業や装着作業が行なえるような運搬用の収納ケースが望まれていた。
【0014】
上述した特許文献2に記載されたようなリネンワゴンは、未使用時に折り畳みコンパクトに保管できるのであるが、洗濯物のような軽量かつ不定形のもので、容易に破損しない繊維製品等を搬送することを目的として収納部が構成されているため、膜エレメント等、一定の形を有し、接触により破損し易い板状物を多数枚同時に安定姿勢で収納することが非常に困難である。
【0015】
また、特許文献3に記載されたような商品展示兼手動運搬車は、枠体に掛けられる棚に商品を載置して展示することを目的とするものであり、膜エレメント等の板状物を安定姿勢で保持できる構成ではなく、上述と同様に、接触により破損し易い板状物を多数枚同時に安定姿勢で収納することが困難である。
【0016】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、搬送のために多数枚の板状物を同時に安定して保持できる収納ケース、搬送台車および浸漬型膜分離装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明による収納ケースの第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、複数枚の板状物を収納する収納ケースであって、各板状物の側縁部を両側から保持する一対の保持部が設置された前フレームおよび後フレームと、前記前フレームおよび後フレームの両側方で、それぞれ鉛直姿勢の回動軸で回動可能に連結された一対のサイドフレームとが立設され、平面視で矩形となるように各フレームを回動させ、各板状物を前記保持部に沿って略鉛直姿勢で収納する収納姿勢と、前記前フレームおよび後フレームが前記サイドフレームと対向するように各フレームを回動させた折畳み姿勢との間で姿勢切替自在に構成され、前記収納姿勢で前記前フレームおよび後フレームと前記一対のサイドフレームとが、前記回動軸の取付部を含む領域で重畳するように配置され、当該取付部以外の重畳領域に前記収納姿勢を保持する姿勢固定機構が設けられている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、回動軸周りに各フレームが回動され、収納姿勢に展開された状態で、前フレームおよび後フレームに設置された一対の保持部が対向姿勢となり、各板状物の側縁部が保持部で保持されて略鉛直姿勢で収納されることによって、板状物同士が接触して破損することもなく、重量が増しても多数枚の板状物を安定的に収納して搬送できるようになる。
【0019】
搬送先では、各板状物を保持部に沿って収納ケースから上方に引き上げることによって、容易に取り出すことができ、取り出した後に回動軸周りに各フレームが回動されると、収納ケースをコンパクトな折畳み姿勢で保管できるようになる。
【0020】
そして、前フレームおよび後フレームと一対のサイドフレームとが重畳する領域に回動軸が取り付けられ、収納姿勢に展開された状態で当該回動軸の取付部以外の重畳領域、つまり回動軸と離隔した領域に姿勢固定機構が設けられ、当該回動軸と干渉することがないので、簡単な構造の姿勢固定機構を採用することができるばかりか、姿勢固定機構が回動軸と離隔した領域に取り付けられることによって、回動軸周りの回動を強い力で阻止する保持力を得ることができる。その結果、板状物が収納された後に、運搬或は搬送中に収納ケースが衝撃を受ける場合であっても、板状物の収納姿勢を損なうことなく安定した収納状態を維持することができるようになる。
【0021】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記前フレームおよび後フレームに、横梁と前記横梁の両端に設けられた延出部とからなる平面視コの字形の連結部が設けられ、前記収納姿勢で当該延出部と前記サイドフレームに備えた横梁の端部とが上下に重畳するように配置され、当該重畳領域に前記回動軸および前記姿勢固定機構が設けられている点にある。
【0022】
上述の構成によれば、前フレームおよび後フレームに備えた平面視コの字形の連結部の端部である延出部で、サイドフレームに備えた横梁の端部が重畳するように構成され、当該重畳領域に回動軸および姿勢固定機構が設けられているので、前フレームおよび後フレームとサイドフレームとを対向させるように各フレームを回動させた折畳み姿勢で、前フレームおよび後フレームとサイドフレームとの対向部が接触することなく離隔した状態を維持することができ、その結果、サイドフレームと保持部との接触が回避でき、保持部が破損するような事故を未然に回避できるようになる。
【0023】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記折畳み姿勢で前記前フレームまたは後フレームと前記サイドフレームとが所定距離だけ離隔するように、前記延出部に前記回動軸が設けられている点にある。
【0024】
上述の構成によれば、延出部には、折畳み姿勢で前フレームまたは後フレームとサイドフレームとが所定距離だけ離隔するように、調整された位置に回動軸が設けられているので、前フレームまたは後フレームとサイドフレームとが対向する折畳み姿勢で、前フレームまたは後フレームとサイドフレームとの接触を確実に回避しながらも、延出部の長さを極力短くして、収納ケースの折畳み姿勢での占有スペースを極めてコンパクトにすることができる。
【0025】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記前フレームおよび後フレームのうち、前記保持部の下部に前記保持部に沿って収納された板状物を弾性支持する緩衝部材が設けられている点にある。
【0026】
上述の構成によれば、板状物の下端が緩衝部材によって弾性支持されるため、保持部に側縁部が保持された状態で板状物が収納部に落下しても、板状物の衝撃による破損を回避することができ、搬送中に収納ケースに加わる振動によって板状物が加振されることによる損傷を回避することができる。さらには、緩衝部材を設けることにより、保持部に側縁部が保持された状態で板状物を収納部に落下させるように収容することも可能になり、収納作業を軽減できるようにもなる。
【0027】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記保持部は、各板状物の側縁部を板厚方向に所定間隔で保持する複数の案内溝が形成されている点にある。
【0028】
上述の構成によれば、各板状物の側縁部は、案内溝によって板厚方向に夫々所定間隔をもって保持されるため、板状物同士の接触による破損の虞がなくなる。
【0029】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記板状物が、平板状のろ板の表面に分離膜を備えた膜分離装置に用いられる膜エレメントである点にある。
【0030】
上述の構成によれば、膜エレメントを、収納ケースに安定して収納できるので、分離膜の破損の虞を低減できる。
【0031】
本発明による搬送台車の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成を備えた収納ケースと、前記収納ケースの底部に固定され、前記収納ケースを床面に沿って移動させる移動機構とを備えている点にある。
【0032】
上述の構成によれば、搬送台車は、収納ケースの底部に固定された移動機構により、多数枚の板状物を同時に安定して保持した状態で搬送することができる。
【0033】
本発明による浸漬型膜分離装置の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成を備えた収納ケースと、平板状のろ板の表面に分離膜を備えた複数枚の膜エレメントとを備え、前記収納姿勢で前記板状物として前記膜エレメントを収納した状態で処理水槽に浸漬配置される点にある。
【0034】
上述の構成によれば、収納ケースに、板状物として平板上のろ板の表面に分離膜を備えた膜エレメントを複数枚収納した状態で処理水槽に浸漬配置することで、浸漬型膜分離装置となる。膜エレメントを交換する際は、収納ケースごと交換すればよいため、膜エレメントの交換作業のための浸漬型膜分離装置の停止時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明した通り、本発明によれば、搬送のために多数枚の板状物を同時に安定して保持できる収納ケース、搬送台車および浸漬型膜分離装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による収納ケースの説明図
【図2】収納姿勢の説明図
【図3】折畳み姿勢の説明図
【図4】(a)は収納ケースの収納姿勢の説明図、(b)は収納ケースの折畳み姿勢の説明図、(c)は別実施形態による収納ケースの収納姿勢の説明図、(d)は別実施形態による収納ケースの折畳み姿勢の説明図
【図5】(a)は後フレームの一部断面斜視図、(b)は延出部の説明図
【図6】(a)は姿勢固定機構の説明図、(b)はサイドフレームの一部断面斜視図
【図7】(a)は別実施形態の説明図、(b)は別実施形態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明による収納ケース、搬送台車および浸漬型膜分離装置の実施形態を説明する。
【0038】
図1に示すように、収納ケース1は、板状物としての浸漬型膜分離装置に用いられる膜エレメント2の側縁部を両側から保持する一対の保持部15が設置された前フレーム10および後フレーム20と、前フレーム10および後フレーム20の両側方で、それぞれ鉛直姿勢の回動軸19で回動可能に連結された一対のサイドフレーム30とが立設されている。
【0039】
収納ケース1は、図2,4(a)に示すように、平面視で矩形となるように各フレームを回動させ、膜エレメント2を保持部15に沿って略鉛直姿勢で収納する収納姿勢と、図3,図4(b)に示すように、前フレーム10および後フレーム20がサイドフレーム30と対向するように各フレームを回動させた折畳み姿勢との間で姿勢切替自在に構成されている。
【0040】
膜エレメント2は、ABS樹脂等を素材とする平板状のろ板3の表面に分離膜4を備え、ろ板3と分離膜4との間、およびろ板3の内部に透過液流路が形成され、上縁部に、透過液流路に連通する透過液取出口5と、膜エレメント2を吊上げる係止部6が突出形成されている。
【0041】
まず、収納ケース1の前フレーム10および後フレーム20について説明する。なお、前フレーム10と後フレーム20の各部は同一の構成であるので、夫々同一の符号を付し、前フレーム10と後フレーム20の一方について説明し、他方については説明を省略する。
【0042】
図2に示すように、前フレーム10は、横梁11,12,13と、一対の縦柱14を備え、横梁11,12,13の各両端は一対の縦柱14に溶接され固定されている。前フレーム10を構成する部材は、強度と耐食性の観点からステンレス製の等辺山形鋼が好ましく用いられる。
【0043】
保持部15は、ボルトとナット(図示せず)等の固定機構により前フレーム10の横梁11,12,13に固定されている。
【0044】
保持部15の表面には収納される各膜エレメント2の側縁部を板厚方向に所定間隔で保持する複数の案内溝15aが形成されている。膜エレメント2の側縁部は、案内溝15aによって板厚方向に夫々所定間隔をもって保持されるため、膜エレメント2同士の接触による分離膜4等の破損の虞がなくなるのである。
【0045】
保持部15は、収納される膜エレメント2の破損を防ぐため、ポリ塩化ビニル等の樹脂素材の押出成形によって得られ、保持溝15aは、収納した膜エレメント2が板厚方向にガタつかない程度、かつ、膜エレメント2の収納および取り出しがスムーズに行なえる程度に、膜エレメント2の側縁部の厚みより僅かに幅広に形成されている。
【0046】
なお、本実施形態では、案内溝15aが50本形成され、収納ケース1は膜エレメント2を50枚収納可能に構成されているが、予め、収納したい膜エレメント2の枚数に応じて前フレーム10および後フレーム20の水平方向長さおよび保持部15の案内溝15aの数を設定することで、膜エレメント2の収納枚数を変更できる。
【0047】
保持部15の下部に保持部15の案内溝15aに沿って収納された膜エレメント2を弾性支持する緩衝部材15bが設けられている。なお、緩衝部材15bは、収納される板状物の材質に対して軟らかい材料が好ましく用いられる。ここでは、緩衝部材15bは、例えばゴムで構成されている。
【0048】
これにより、膜エレメント2の下端は緩衝部材15bによって弾性支持されるため、保持部15に側縁部が保持された状態で膜エレメント2が収納部に落下しても、膜エレメント2の衝撃による破損を回避することができ、搬送中に収納ケース1に加わる振動による膜エレメント2の加振による損傷を回避することができ、また、緩衝部材15bを設けることにより、保持部15に側縁部が保持された状態で膜エレメント2を収納部に落下させるように収容することも可能になり、収納作業を軽減できるようになるのである。
【0049】
図2,図5(a)に示すように、横梁11,13は、夫々の両端に平面視コの字形となるように延出部16,17が設けられ連結部18を構成し、図5(a),(b)に示すように、延出部16,17の横梁11,13側の端部から所定間隔離れた位置には鉛直姿勢の回動軸19が備えられている。なお、図5(a)は、後フレーム20の一部断面斜視図を示しているが、前フレーム10も同様の構成である。
【0050】
回動軸19は、上部と下部が縮径した棒状部材19aの縮径部19b,19cに筒状部材19d,19eが回動自在に遊嵌されて構成され、棒状部材19aの上端19fが延出部16に、下端19gが延出部17に溶接され固定されている。なお、筒状部材19eの下部には筒状部材19eの下端を支持する鍔部材19hが取付けられている。棒状部材19aおよび筒状部材19d,19eは夫々ステンレス製の鋼管が好ましく用いられる。
【0051】
図2,図6(b)に示すように、サイドフレーム30は、横梁31,32,33と、一対の縦柱34を備え、横梁31,32,33の各両端は一対の縦柱34に溶接され固定されている。サイドフレーム30を構成する部材は、強度と耐食性の観点からステンレス製の等辺山形鋼が好ましく用いられる。
【0052】
サイドフレーム30の高さは、収納する膜エレメント2の係止部6よりも低くなるように設定されている。このように構成することで、図1に示すように、膜エレメント2の係止部6は、サイドフレーム30の上端より上方に突出することになるので、係止部6に形成された開口にジグ(図示せず)を挿通し、複数枚同時に容易に取り出すことができるのである。
【0053】
このとき保持部15による膜エレメント2の保持間隔を、膜エレメント2が設置される浸漬型膜分離装置における膜エレメント2の設置間隔と略同一とすることで、ジグを使って前記間隔を保持した状態で複数枚の膜エレメント2を同時に取り出し、そのまま浸漬型膜分離装置に挿入し設置することができる。
【0054】
図6(a)に示すように、サイドフレーム30の一方の縦柱34は前フレーム10の回動軸19の筒状部材19d,19eに溶接され固定され、他方の縦柱34は後フレーム20の回動軸19の筒状部材19d,19eに溶接され固定されている。これにより延出部16,17とサイドフレーム30に備えた横梁31,33の端部とが上下に重畳するように配置される。サイドフレーム30の縦柱34に回動軸19を固定すると、折畳み姿勢で、サイドフレーム30の水平方向両端部が、延出部16から外方に突出しない点で好ましい。
【0055】
延出部16とサイドフレーム30に備えた横梁31の重畳領域に姿勢固定機構40が設けられている。
【0056】
姿勢固定機構40は、ボルト41とナット42で構成されている。延出部16とサイドフレーム30の横梁31には、延出部16に形成した開口16aと鉛直方向に一致する位置にボルト41を挿通可能な開口31aが形成され、延出部16の開口16aの上面からボルト41を横梁31の開口31aの下面に固着されたナット42に螺着することで、サイドフレーム30の前フレーム10および後フレーム20に対する回動を抑止する。このように、姿勢固定機構40により、前フレーム10および後フレーム20の延出部16とサイドフレーム30の横梁31が回動軸19周りに回動することを抑止できるので、収納姿勢を安定的に維持できるのである。
【0057】
前フレーム10および後フレーム20に備えた平面視コの字形の連結部18の端部である延出部16で、サイドフレーム30に備えた横梁31の端部とが重畳するように構成され、当該重畳領域に回動軸19および姿勢固定機構40が設けられているので、前フレーム10および後フレーム20とサイドフレーム30とを対向させるように各フレームを回動させた折畳み姿勢で、前フレーム10および後フレーム20とサイドフレーム30との対向部が接触することなく離隔した状態を維持することができ、その結果、サイドフレーム30と保持部15との接触が回避でき、保持部15が破損するような事故を未然に回避できるようになる。
【0058】
さらに、前フレーム10および後フレーム20の例えば延出部16に、サイドフレーム30が前フレーム10および後フレーム20に対して、例えば、直角をなす角度まで回動すると当接し、それ以上回動することを規制する規制部材(図示せず)を備えることで、折畳み姿勢でサイドフレーム30が回動しすぎて、前フレーム10または後フレーム20の保持部15に接触して、保持部15を破損するような事故を確実に回避できる。なお、規制部材はサイドフレーム30側に備えてもよい。
【0059】
延出部16には、開口16bが形成され、開口16bにシャックルやリング等の吊り金具21を取付けることで、クレーン等のフックを係止して収納ケース1を吊上げることができる。よって、収納ケース1のトラックの荷台への積み上げ、積み下ろし作業が容易になる。
【0060】
さらに、収納ケース1の、例えば、横梁13の底面には、移動機構としてのキャスタ22が取付けられ、床面に沿って移動可能な搬送台車として機能し、該搬送台車、多数枚の膜エレメント2を同時に安定して保持した状態で搬送することができるのである。
【0061】
上述の構成により、図1,図2,図4(a)に示すように、収納ケース1は、前フレーム10および後フレーム20と一対のサイドフレーム30を平面視で矩形となるように回動させて、姿勢固定機構40によってサイドフレーム30を固定することで、各膜エレメント2を保持部20に沿って略鉛直姿勢で収納する収納姿勢となる。
【0062】
収納姿勢では、回動軸19周りに各フレームが回動されて平面視で矩形となるように展開された状態で、前フレーム10および後フレーム20に設置された一対の保持部15が対向姿勢となり、各膜エレメント2の側縁部が保持部15で保持されて略鉛直姿勢で収納されることによって、膜エレメント2同士が接触して破損することもなく、重量が増しても多数枚の膜エレメント2を安定的に収納して搬送できるようになるのである。
【0063】
さらに、搬送先では、各膜エレメント2を保持部15に沿って収納ケース1から上方に引き上げることによって、容易に取り出すことができる。
【0064】
そして、前フレーム10および後フレーム20と一対のサイドフレーム30とが重畳する領域に回動軸19が取り付けられ、収納姿勢に展開された状態で当該回動軸19の取付部以外の重畳領域、つまり回動軸19と離隔した領域に姿勢固定機構40が設けられ、当該回動軸19と干渉することがないので、簡単な構造の姿勢固定機構40を採用することができるばかりか、姿勢固定機構40が回動軸19と離隔した領域に取り付けられることによって、回動軸19周りの回動を強い力で阻止する保持力を得ることができる。その結果、膜エレメント2が収納された後に、運搬或は搬送中に収納ケース1が衝撃を受ける場合であっても、膜エレメント2の収納姿勢を損なうことなく安定した収納状態を維持することができるようになるのである。
【0065】
また、図3,図4(b)に示すように、姿勢固定機構40のボルト41を取り外すことで、サイドフレーム30は回動軸19周りに回動する。これにより、前フレーム10および後フレーム20がサイドフレーム30と対向するように各フレームを回動させた折畳み姿勢となる。
【0066】
折畳み姿勢では、膜エレメント2を取り出した後に回動軸19周りに各フレームが回動することで、収納ケース1をコンパクトに保管できるようになるのである。
【0067】
ここで、回動軸19は、延出部16,17の横梁11,13側の端部から所定間隔離れた位置、具体的には、折畳み姿勢で前フレーム10または後フレーム20とサイドフレーム30とが所定距離だけ離隔するように、調整された位置に設けられているので、前フレーム10または後フレーム20とサイドフレーム30とが対向する折畳み姿勢で、前フレーム10または後フレーム20とサイドフレーム30との接触を確実に回避しながらも、延出部16,17の長さを極力短くして、収納ケース1の折畳み姿勢での占有スペースを極めてコンパクトにすることができるのである。
【0068】
さらに、上述のように構成された収納ケース1は、内部に膜エレメント2を収納した状態で、吊り金具21にクレーン等のフックを係止して吊上げ、槽底に散気装置が配置された処理水槽に浸漬配置することで、浸漬型膜分離装置として機能する。このとき、キャスタ22は、取付けたままであってもよく、取り外した状態であってもよい。また、膜エレメント2の上方への移動を防止するために、膜エレメント2の位置を固定する固定手段を設けてもよい。
【0069】
膜エレメント2の透過液取出口5に吸引手段を接続し、膜エレメント2の分離膜4により、処理水槽内の被処理水を固液分離できるのである。固液分離された処理水は集水管から外部に排出される。
【0070】
膜エレメント2を交換する際は、処理水槽に浸漬配置されていた収納ケース1と、新しい膜エレメント2が収納された収納ケースとを交換すればよいため、膜エレメント2の交換作業のための浸漬型膜分離装置の停止時間を短くすることができる。
【0071】
以下、本発明による収納ケースの別実施形態について説明する。
なお、上述の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図4(c),(d)に示すように、収納ケース1を構成するサイドフレーム50の二本の横梁50a,50bを中央で蝶番51等により連結し、横梁50a,50bを連結する蝶番51で折り畳む構成にしてもよい。
【0072】
上述した実施形態では、姿勢固定機構40は延出部16と横梁31を固定する構成について説明したが、延出部17と横梁33も同様に姿勢固定機構を備える構成であってもよい。また、延出部17と横梁33のみに姿勢固定機構を備える構成であってもよい。
【0073】
また、姿勢固定機構40はボルトとナットに限らず、図7(a)に示すように、単に延出部16の開口16aと横梁31の開口31aに下端が開口16a,31aより細く上端が開口16a,31aより太いテーパ付きの棒状部材43であってもよい。また、L字形の棒状部材を挿通する構成であったり、延出部16と横梁31を紐やバンドにより結束する構成であってもよい。
【0074】
さらに、図7(b)に示すように、姿勢固定機構は、サイドフレーム30に取付けられ、収納姿勢では開口16a,31aを挿通するバネ45により上方に付勢された棒状部材44により構成してもよい。折畳み姿勢への切替時には、棒状部材44を指等で下方に押し下げることにより、棒状部材44が開口16aから外れ、サイドフレーム30は回動軸19に対して回動する。何れにしても、姿勢固定機構は、前フレーム10および後フレーム20に対して一対のサイドフレーム30の回動が抑止できる構成であればよい。
【0075】
上述した実施形態では、収納ケースを構成する部材の材質がステンレス製の等辺山形鋼である構成について説明したが、円管、角管、角材等を用いることもできる。また、ステンレス製に限らず、ポリ塩化ビニル製のアングル等であってもよい。収納される板状物の寸法や重量に応じて適当な部材により構成されればよい。
【0076】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1:収納ケース
2:膜エレメント
3:ろ板
4:分離膜
5:透過液取出口
6:係止部
10:前フレーム
11,12,13:横梁
14:縦柱
15:保持部
15a:案内溝
15b:緩衝部材
16,17:延出部
18:連結部
19:回動軸
20:後フレーム
30:サイドフレーム
31,32,33:横梁
34:縦柱
40:姿勢固定機構
41:ボルト
42:ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の板状物を収納する収納ケースであって、
各板状物の側縁部を両側から保持する一対の保持部が設置された前フレームおよび後フレームと、前記前フレームおよび後フレームの両側方で、それぞれ鉛直姿勢の回動軸で回動可能に連結された一対のサイドフレームとが立設され、
平面視で矩形となるように各フレームを回動させ、各板状物を前記保持部に沿って略鉛直姿勢で収納する収納姿勢と、前記前フレームおよび後フレームが前記サイドフレームと対向するように各フレームを回動させた折畳み姿勢との間で姿勢切替自在に構成され、
前記収納姿勢で前記前フレームおよび後フレームと前記一対のサイドフレームとが、前記回動軸の取付部を含む領域で重畳するように配置され、当該取付部以外の重畳領域に前記収納姿勢を保持する姿勢固定機構が設けられている収納ケース。
【請求項2】
前記前フレームおよび後フレームに、横梁と前記横梁の両端に設けられた延出部とからなる平面視コの字形の連結部が設けられ、前記収納姿勢で当該延出部と前記サイドフレームに備えた横梁の端部とが上下に重畳するように配置され、当該重畳領域に前記回動軸および前記姿勢固定機構が設けられている請求項1記載の収納ケース。
【請求項3】
前記折畳み姿勢で前記前フレームまたは後フレームと前記サイドフレームとが所定距離だけ離隔するように、前記延出部に前記回動軸が設けられている請求項2記載の収納ケース。
【請求項4】
前記前フレームおよび後フレームのうち、前記保持部の下部に前記保持部に沿って収納された板状物を弾性支持する緩衝部材が設けられている請求項1から3の何れかに記載の収納ケース。
【請求項5】
前記保持部は、各板状物の側縁部を板厚方向に所定間隔で保持する複数の案内溝が形成されている請求項1から4の何れかに記載の収納ケース。
【請求項6】
前記板状物が、平板状のろ板の表面に分離膜を備えた膜分離装置に用いられる膜エレメントである請求項1から5の何れかに記載の収納ケース。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の収納ケースと、前記収納ケースの底部に固定され、前記収納ケースを床面に沿って移動させる移動機構とを備えている搬送台車。
【請求項8】
請求項1から5の何れかに記載の収納ケースと、平板状のろ板の表面に分離膜を備えた複数枚の膜エレメントとを備え、前記収納姿勢で前記板状物として前記膜エレメントを収納した状態で処理水槽に浸漬配置される浸漬型膜分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25213(P2012−25213A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163502(P2010−163502)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(510199650)クボタメンブレン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】