説明

取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造及び圧縮機取り付け構造

【課題】簡易な構成により、容易にプッシュナットを取り外すことが可能な取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造及び圧縮機取り付け構造を提供する。
【解決手段】フランジ部2と複数の爪部3とを有し中央部に貫通孔が形成されたプッシュナット5を嵌挿させて取り付けるための取り付け用シャフト1には、嵌挿方向手前側の先端部に形成された挿入部と、径が嵌挿方向手前側から奥側に向かうにつれて増大する拡径部1eとが形成されている。プッシュナット5は、複数の爪部3の先端部が挿入部の最も嵌挿方向奥側である取り付け位置に来たときに嵌挿が完了する。そして、複数の爪部3の先端部が取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と複数の爪部3に沿った直線とが成す鋭角の角度θ2よりも、軸方向に沿った直線と拡径部1eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度θ1の方が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュナットを取り付けるための取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造及び圧縮機取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換装置等に用いられる圧縮機の防振支持構造には、シャフトと、このシャフトに挿入されるゴム製のクッション筒と、シャフトに係止されることでクッション筒の上面を押さえるプッシュナットとを有して構成されるものがある。例えば、特許文献1の技術においては、キャビネット2側にロッド15(シャフトに相当)が取り付けられ、圧縮機3側にクッション筒(ゴム製部材)16,19が取り付けられている。そして、ロッド15の外周に嵌合するようにクッション筒16,19が取り付けられ、ロッド15の上端部には、これらが抜けないように、さらにスピードナット20(プッシュナットに相当)が取り付けられる(特許文献1の図1、5等参照)。そして、クッション筒16,19全体の圧縮変形等により、圧縮機3動作時の上下方向の振動が吸収されるようになっている。
【0003】
一般に、プッシュナット(スピードナット)は、特許文献2に記載されているように、環状且つ板状のフランジ部と、フランジ部の内周縁部から平面視において求心方向に突出形成された複数の爪片(爪部)とを有して構成されている(例えば、特許文献2の図1参照)。そして、プッシュナットの中央部に形成された貫通孔をスルーピン(軸部材)が貫通することでプッシュナットがスルーピンに取り付けられる。
【0004】
また、一般に、プッシュナットを取り付けるための取り付け用シャフトは、軸状に形成され、その先端部分にプッシュナットを取り付けるように構成されている(例えば、特許文献1の図5、特許文献2の図1、特許文献3の図3参照)。
【0005】
そして、このようなプッシュナットを一旦シャフトに取り付けた後に、シャフトから取り外す場合がある。これは、例えば熱交換器の圧縮機の防振支持構造にプッシュナットが用いられており、メンテナンスのために圧縮機を取り外すような場合である。
【0006】
しかし、その取り外し作業は容易ではない。具体的には、プッシュナットの複数の爪片がシャフトの側面に食い込んでいる状態からプッシュナットを取り外すという作業になるため、大きな力が必要となり、無理にプッシュナットを取り外そうとすれば、殆どの場合、シャフト側面を著しく損傷してしまい、プッシュナットは勿論、シャフトの再利用が不可能となってしまう。
【0007】
そこで、例えば、特許文献3に記載されているような、各羽板(爪片)に脆弱部を有するプッシュナットを用いることで、爪片を座屈させて、シャフト側面に食い込んでいたプッシュナットを容易に取り外すことができる。これにより、シャフトの再利用が可能になる。
【0008】
【特許文献1】特許第2719999号公報
【特許文献2】特開2002−133509号公報
【特許文献3】特開2003−4022号公報
【特許文献4】特開平10−47328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、特許文献3に記載されているプッシュナットを用いることで、シャフトを損傷することなくプッシュナットを取り外すことが可能となるが、このプッシュナットの取り外しは、手作業ではなく、治具を用いて行なう必要がある(特許文献3の図4,5参照)。しかし、治具を用いることなくプッシュナットの取り外しができることが望ましい。
【0010】
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成により、容易にプッシュナットを取り外すことが可能な取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造及び圧縮機取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明にかかる取り付け用シャフトは、環状且つ板状のフランジ部と当該フランジ部の内周側から中心へ向かって突出形成された複数の爪部とを有し中央部に貫通孔が形成されたプッシュナットを、嵌挿させて取り付けるための軸状の取り付け用シャフトであって、嵌挿方向手前側の先端部に形成され、前記プッシュナットの取り付け時には前記貫通孔に挿入される挿入部と、前記挿入部よりも嵌挿方向奥側に形成され、径方向断面における径が、嵌挿方向手前側から奥側に向かうにつれて増大する拡径部と、を有し、前記プッシュナットは、前記複数の爪部の先端部が前記挿入部の最も嵌挿方向奥側である取り付け位置に来たときに嵌挿が完了し、前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さい。
【0012】
この取り付け用シャフトでは、嵌挿完了時における爪部と軸部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、当該直線と拡径部の輪郭に沿った直線とがなす鋭角の角度の方が小さいことにより、さらに嵌挿方向へプッシュナットを押したときに、爪部が根元から曲げられて塑性変形する。その結果、プッシュナットは、嵌挿完了状態よりも、平面視において中央の貫通孔の径が拡がった状態になるので、シャフトから容易に取り外すことができるようになる。そのため、簡易な構成により、容易にプッシュナットを取り外すことが可能となる。また、シャフトを殆ど損傷することがないので、シャフトを再利用できる。
【0013】
第2の発明にかかる取り付け用シャフトは、第1の発明にかかる取り付け用シャフトにおいて、前記プッシュナットを、前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にある状態から、さらに嵌挿方向奥側に押し込むことによって、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の角度が、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度に等しくなるような取り外し用曲げ起こし位置まで、前記複数の爪部が前記フランジ部に対して曲げ起こされ、前記複数の爪部が前記取り外し用曲げ起こし位置まで曲げ起こされた後の前記プッシュナットを取り外す時には、前記貫通孔の径は、前記挿入部の径よりも大きい。
【0014】
この取り付け用シャフトでは、プッシュナットの爪部が根元から曲げられて塑性変形し、平面視において中央の貫通孔の径が拡がった状態になり、且つ、シャフトの挿入部の径よりも、プッシュナットの貫通孔の径の方が大きいので、プッシュナットをより容易に取り外すことが可能となる。また、シャフトの損傷を確実に抑止できる。
【0015】
第3の発明にかかる取り付け用シャフトは、第1又は第2の発明にかかる取り付け用シャフトにおいて、前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成すそれぞれの鋭角の角度には、少なくとも二つの異なる角度が含まれ、且つ、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の最大角度よりも、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さい。
【0016】
この取り付け用シャフトでは、プッシュナットの複数の爪部において、曲げ起こし角度に二つ以上の角度が含まれている場合であっても、軸方向に沿った直線と複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の最大角度よりも、軸方向に沿った直線と拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さければ、プッシュナットを容易に取り外すことが可能となる。
【0017】
第4の発明にかかる取り付け用シャフトは、第1乃至第3の発明のいずれかにかかる取り付け用シャフトにおいて、前記拡径部の表面は、円錐面の一部として構成されている。
【0018】
この取り付け用シャフトでは、プッシュナットの爪部を容易に変形させることができ、且つ、拡径部の設計、形成が容易なものとなる。
【0019】
第5の発明にかかる取り付け用シャフトは、第1乃至第4の発明のいずれかにかかる取り付け用シャフトにおいて、前記取り付け位置の外周部の少なくとも一部には、前記プッシュナットの軸方向についての位置決めを行なうための位置決め用溝が周方向に沿って形成されている。
【0020】
この取り付け用シャフトでは、位置決め用溝にプッシュナットの先端部が入り込むので、プッシュナットの位置決めが容易にできる。
【0021】
第6の発明にかかる取り付け用シャフトは、第5の発明にかかる取り付け用シャフトにおいて、前記位置決め用溝の溝幅は、前記複数の爪部の厚み以下である。
【0022】
この取り付け用シャフトでは、プッシュナットの爪部と溝との間に隙間が生じないので、プッシュナットの嵌挿完了時におけるガタ防止ができ、取り付け状態が安定する。
【0023】
第7の発明にかかる取り付け用シャフトは、第1乃至第6の発明のいずれかにかかる取り付け用シャフトにおいて、前記拡径部よりも嵌挿方向奥側には、径方向外側へ向かって突出形成されたストッパが設けられている。
【0024】
この取り付け用シャフトでは、ストッパがあることによってプッシュナットが必要以上に奥側に移動することがないので、プッシュナットにかける力を最小限に抑えることができる。
【0025】
第8の発明にかかるプッシュナット取り付け構造は、環状且つ板状のフランジ部及び当該フランジ部の内周側から中心へ向かって突出形成された複数の爪部を有し中央部に貫通孔が形成されたプッシュナットと、前記プッシュナットを嵌挿させて取り付けるための軸状の取り付け用シャフトと、を備えるプッシュナット取り付け構造であって、前記取り付け用シャフトは、嵌挿方向手前側の先端部に形成され、前記プッシュナットの取り付け時には前記貫通孔に挿入される挿入部と、前記挿入部よりも嵌挿方向奥側に形成され、径方向断面における径が、嵌挿方向手前側から奥側に向かうにつれて増大する拡径部と、を有し、前記プッシュナットは、前記複数の爪部の先端部が前記挿入部の最も嵌挿方向奥側である取り付け位置に来たときに嵌挿が完了し、前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さい。
【0026】
このプッシュナット取り付け構造では、簡易な構成により、容易にプッシュナットを取り外すことが可能となる。また、シャフトを殆ど損傷することがないので、シャフトを再利用できる。
【0027】
第9の発明にかかる圧縮機取り付け構造は、圧縮機を支持するための圧縮機取り付け構造であって、圧縮機のベース部と、環状且つ板状のフランジ部及び当該フランジ部の内周側から中心へ向かって突出形成された複数の爪部を有し中央部に貫通孔が形成されたプッシュナットと、前記プッシュナットを嵌挿させて取り付けるための軸状の取り付け用シャフトと、を備えている。そして、前記取り付け用シャフトは、嵌挿方向手前側の先端部に形成され、前記プッシュナットの取り付け時には前記貫通孔に挿入される挿入部と、前記挿入部よりも嵌挿方向奥側に形成され、径方向断面における径が、嵌挿方向手前側から奥側に向かうにつれて増大する拡径部と、を有し、且つ、前記ベース部に取り付けられており、前記プッシュナットは、前記複数の爪部の先端部が前記挿入部の最も嵌挿方向奥側である取り付け位置に来たときに嵌挿が完了し、前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さい。
【0028】
この圧縮機取り付け構造では、圧縮機のメンテナンス等の際に、容易にプッシュナットを取り外すことが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0030】
第1の発明では、嵌挿完了時における爪部と軸部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、当該直線と拡径部の輪郭に沿った直線とがなす鋭角の角度の方が小さいことにより、さらに嵌挿方向へプッシュナットを押したときに、爪部が根元から曲げられて塑性変形する。その結果、プッシュナットは、嵌挿完了状態よりも、平面視において中央の貫通孔の径が拡がった状態になるので、シャフトから容易に取り外すことができるようになる。そのため、簡易な構成により、容易にプッシュナットを取り外すことが可能となる。また、シャフトを殆ど損傷することがないので、シャフトを再利用できる。
【0031】
また、第2の発明では、プッシュナットの爪部が根元から曲げられて塑性変形し、平面視において中央の貫通孔の径が拡がった状態になり、且つ、シャフトの挿入部の径よりも、プッシュナットの貫通孔の径の方が大きいので、プッシュナットをより容易に取り外すことが可能となる。また、シャフトの損傷を確実に抑止できる。
【0032】
また、第3の発明では、プッシュナットの複数の爪部において、曲げ起こし角度に二つ以上の角度が含まれている場合であっても、軸方向に沿った直線と複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の最大角度よりも、軸方向に沿った直線と拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さければ、プッシュナットを容易に取り外すことが可能となる。
【0033】
また、第4の発明では、プッシュナットの爪部を容易に変形させることができ、且つ、拡径部の設計、形成が容易なものとなる。
【0034】
また、第5の発明では、位置決め用溝にプッシュナットの先端部が入り込むので、プッシュナットの位置決めが容易にできる。
【0035】
また、第6の発明では、プッシュナットの爪部と溝との間で隙間が生じないので、プッシュナットの嵌挿完了時におけるガタ防止ができ、取り付け状態が安定する。
【0036】
また、第7の発明では、ストッパがあることによってプッシュナットが必要以上に奥側に移動することがないので、プッシュナットにかける力を最小限に抑えることができる。
【0037】
また、第8の発明では、簡易な構成により、容易にプッシュナットを取り外すことが可能となる。また、シャフトを殆ど損傷することがないので、シャフトを再利用できる。
【0038】
また、第9の発明では、圧縮機のメンテナンス等の際に、容易にプッシュナットを取り外すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明する。ここでは、本発明にかかる取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造及び圧縮機取り付け構造が、エアコン室外機の圧縮機における防振支持構造に用いられている一実施形態について説明する。
【0040】
(全体構成)
まず、本発明にかかる取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造及び圧縮機取り付け構造を含むエアコン室外機の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるエアコン室外機の内部構成を示す概略図であり、(a)は内部上面概略図を示し、(b)は室外機下部の内部正面概略図を示している。また、図1には主要部分のみ示している。
【0041】
本実施形態にかかるエアコン室外機20は、ベース部12、圧縮機10、ファン11を有して構成されている。ベース部12は、金属製の板状部材であり、エアコン室外機20の底板部を構成する。そしてベース部12には、各種構成機械等が設置されている。以下、ベース部12は、圧縮機10のベース部であるとして説明する。圧縮機10は、図示しない室内機から送られてくる冷媒を圧縮するためのものであり、プッシュナット取り付け構造6を介してベース部12に取り付けられている。ファン11は、放熱機構を構成するものであり、モータの駆動により回転する。
【0042】
室内機から送られてくる冷媒は圧縮機10で圧縮され、ここで冷媒の温度は急上昇する。そして、ファン11や図示しない放熱孔等の放熱機構によって冷媒の熱が室外機20の外部へ放散され、冷媒は液体となる。その後、冷媒は減圧により冷却され、再び室内機へと送られる。
【0043】
(プッシュナット取り付け構造)
次に、圧縮機10の防振支持構造であるプッシュナット取り付け構造6の詳細な構成について説明する。図2は、図1の(a)におけるA−B−C組み合わせ断面概略図であり、ベース部材12に対する圧縮機10の防振支持構造を示すものである。また、図3は、図2のG部分を拡大した拡大断面概略図(軸方向断面)である。プッシュナット取り付け構造6は、本実施形態においては、圧縮機10の上下方向の振動を主に吸収しつつ、ベース部12に対して圧縮機10を取り付けるためのものであり、プッシュナット5、取り付け用シャフト1、さらに、支持部材8、クッション筒9を有して構成されている(図1乃至3参照)。
【0044】
図1乃至3に示すように、圧縮機10の外周部の、上面視において外周を三等分する部位には、三つの支持部材8,8,8が、外周面から径方向外側へ突出するように設けられている。一方で、ベース部12の、三つの支持部材8,8,8に対応する位置には、三本の取り付け用シャフト1,1,1が、ベース部12の平面部の法線方向に軸方向が一致するように固定設置されている(図1(b)、図2、図3参照)。より具体的には、取り付け用シャフト1の底部には、軸本体部1mよりも大きな径を有する円板状の底部1bが形成されており、さらに、底部1bの底には、筒状に突出形成された固定用突出部1tが形成されている。そして、底部5bの底面とベース部12の平面部とが接触し、且つ、固定用突出部5tがベース部12に形成された固定用溝に挿入されることで、取り付け用シャフト1がベース部12に固定されている(図3参照)。
【0045】
支持部材8は板状に形成されており、その中央部には貫通孔8hが設けられている。また、クッション筒9はゴム製であり、筒状に形成され、径方向の厚みが厚い部分(凸部)と薄い部分(凹部)とを軸方向について交互に有している。そして、厚みが薄い部分を支点として、ベース部12と支持部材8との間でクッション筒9が弾性変形して伸縮を繰り返すことにより、ベース部12と支持部材8との間の距離が振動的に変化して、圧縮機10の上下方向についての振動がクッション筒9により吸収・減衰されるようになっている。
【0046】
プッシュナット取り付け構造6の組み立てについて、図3を参照しつつ説明する。まず、圧縮機10の支持部材8に対して、クッション筒9の先端部9tが、図の下方から上方へ向かって、貫通孔8hを貫通して取り付けられる。先端部9tにはフック部9fが設けられており、このフック部9fは、支持部材8に対するクッション筒9の外れ防止機構として機能する。そして、ベース部材12に固定された取り付け用シャフト1に対して、取り付け用シャフト1がクッション筒9の貫通孔9hを貫通するように、支持部材8及びクッション筒9が取り付けられる。さらに、取り付け用シャフト1の先端部にプッシュナット5が取り付けられる。これは、クッション筒9及び支持部材8の取り付け用シャフト1に対する変位量を規制するため、さらには、これらが取り付け用シャフト1から抜けてしまうことを防止するためである。プッシュナット取り付け構造6は以上のように構成されている。
【0047】
次に、図1、2を参照しつつ、圧縮機取り付け構造について説明する。圧縮機取り付け構造7は、ベース部12、プッシュナット5、取り付け用シャフト1、さらに、支持部材8、クッション筒9を有して構成されている。そして、取り付け用シャフト1は、ベース部12に取り付けられている。すなわち、プッシュナット取り付け構造6とベース部12とを組み合わせたものが、圧縮機取り付け構造7となっている。
【0048】
(プッシュナット)
以下、プッシュナット5の構成について、図4を参照しつつ、より詳細に説明する。図4はプッシュナット5の構成を表す概略図であり、(a)は上面視概略図(平面視概略図)、(b)は(a)のE−E’位置における断面概略図である。なお、図4(b)は、断面を中心に示しており、奥側に見える部分については省略して示している。
【0049】
図4に示すように、プッシュナット5は、フランジ部2と複数の爪部3とを有して構成されており、中央部の貫通孔4を取り付け用シャフト1が貫通することで取り付け用シャフト1に取り付けられるものである。フランジ部2は環状且つ板状に形成されており、複数の爪部3は、環状のフランジ部2の内周側から中心へ向かって突出形成されている。また、プッシュナット5の貫通孔4の外周は、複数の爪部3の先端縁によって形成されている。
【0050】
また、取り付け用シャフト1に取り付けられていない状態において、複数の爪部3の全ては、フランジ部2に対して、フランジ部2の一方の面の側(図4(b)における上面の側)へ曲げ起こされている。また、フランジ部2と法線方向(図4(b)における方向n参照)が共通である平面(図4(b)における平面2e)、及び、複数の爪部3が成す角度をそれぞれの爪部3の曲げ起こし角度とすると、複数の爪部3におけるそれぞれの曲げ起こし角度は、θとなっている(図4(b)参照)。本実施形態においては、複数の爪部3の曲げ起こし角度は均一であるが、上記の曲げ起こし角度には二つ以上の異なる角度が含まれていてもよい(後述する第3変形例参照)。
【0051】
また、それぞれの爪部3は、貫通孔4と同心の円周上に均等間隔で配置されている(図4の(a)参照)。また、爪部3は6個設けられている。また、複数の爪部3の突出方向長さはLであり、均一となっている(図4(b)参照)。なお、プッシュナットの形態はこのようなものには限られない。
【0052】
(取り付け用シャフト)
以下、取り付け用シャフト1の構成について、図5を参照しつつ、より詳細に説明する。図5はプッシュナット取り付け構造6の構成を表す側面視概略図である。
【0053】
取り付け用シャフト1は、プッシュナット5を嵌挿させて取り付けるためのものであり、図5に示すように、軸状に形成されている。また、プッシュナット5が嵌挿される方向を嵌挿方向とすると(図5の矢印方向参照)、取り付け用シャフト1は、嵌挿方向手前側から順に、挿入部1i、拡径部1e、本体部1m、及び、円板部1bを有して構成されている。
【0054】
挿入部1iは、取り付け用シャフト1の嵌挿方向手前側の先端部に形成され、プッシュナット5の取り付け時には貫通孔4に挿入される部分となる。また、挿入部1iの最も嵌挿方向奥側を、取り付け位置1pとする(図5参照)。後述するように、プッシュナットは、複数の爪部3の先端部が取り付け位置1pに来たときに嵌挿が完了する。
【0055】
拡径部1eは、挿入部1iよりも嵌挿方向奥側に形成され、径方向断面における径が、嵌挿方向手前側から奥側に向かうにつれて増大するように構成されている。また、拡径部1eの表面は、円錐面の一部として構成されている。すなわち、軸方向断面において、拡径部の輪郭は直線的である(図7の断面概略図参照)。本実施形態ではこのように構成されているが、拡径部は、その表面が円錐面の一部として構成されていなくても、径方向断面における径が嵌挿方向奥側へ向かうに連れて増大するように構成されていればよく、図14の説明断面概略図に示すように、軸方向断面において、拡径部の輪郭が曲線的であってもよい(図14(a)の拡径部401e、(b)の拡径部501e参照)。この場合、以下の説明における「拡径部の輪郭に沿った直線」とは、例えば、軸方向断面において、拡径部の始点と終点とを結んだ直線をいう(図14(a)の直線401z、(b)の501z参照)。
【0056】
また、拡径部1e表面の軸方向からの傾きは、取り付け位置1pに来たときの複数の爪部3の軸方向からの傾きとの関係で定められている。拡径部1eの傾きの詳細については後述する。
【0057】
(動作)
次に、上記のように構成される取り付け用シャフト1、プッシュナット取り付け構造6及びの圧縮機取り付け構造7におけるプッシュナット5の取り付け・取り外し動作について、図6乃至10を参照しつつ説明する。図6乃至図10は、プッシュナット5の取り付け・取り外し動作における各状態を示す説明断面概略図(軸方向断面)であり、プッシュナット5については、図4(b)と同様の断面を用いて概略的に示している。なお、図6乃至10では、クッション筒9、支持部材8、ベース部12を省略して示している。また、以下の説明において、上下方向は、図6乃至10における上下方向(すなわち嵌挿方向)であるとする。プッシュナット5は、取り付け用シャフト1の上方(嵌挿方向手前側)から、貫通孔4に取り付け用シャフト1が挿入されるような位置関係において、下方へ(嵌挿方向奥側へ)と嵌挿される。以下、段階的に説明する。
【0058】
(取り付け前の状態)
まず、最初の状態では、プッシュナット5は、取り付け用シャフト1の上方において、貫通孔4に挿入部1iが挿入されるような位置関係となるように配置される(図6参照)。
【0059】
(嵌挿及び嵌挿完了状態)
次に、プッシュナット5が取り付け用シャフト1に対して取り付けられる。具体的には、フランジ部2を下方に押圧することにより、複数の爪部3の先端部が挿入部1iの側面に接触しながら、貫通孔4に挿入部1iが挿入されることで、プッシュナット5が取り付け用シャフト1に嵌挿される。そして、プッシュナット5は、取り付け位置1p(図5参照)に来たときに嵌挿が完了する(図7参照)。ここで、嵌挿が完了した状態とは、取り付け用シャフト1の側面に複数の爪部3の先端が食い込み、図1乃至図3に示すように、プッシュナット5が取り付け用シャフト1から外れることなく、エアコン室外機20について通常の使用が可能となった状態(取り付け完了状態)を意味する。
【0060】
ここで、取り付け用シャフト1の拡径部1eについてより詳細に説明する。図7に示すように、複数の爪部3の先端部が取り付け位置1pにあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と複数の爪部3に沿った直線とが成す鋭角の角度(θ2)よりも、軸方向に沿った直線と拡径部1eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度(θ1)の方が小さくなっている。取り付け用シャフト1は、拡径部1eについて、取り付けられるプッシュナット5と、このような関係を満たすように設計されることになる。
【0061】
(塑性変形した状態)
そして、プッシュナット5(フランジ部2)が、複数の爪部3の先端部が取り付け位置1pにある状態から、さらに嵌挿方向奥側に押し込まれる。これによって、軸方向に沿った直線と複数の爪部3に沿った直線とが成す鋭角の角度が、軸方向に沿った直線と拡径部1eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度(θ1)に等しくなるような取り外し用曲げ起こし位置まで、複数の爪部3がフランジ部2に対して曲げ起こされる(図8参照)。すなわち、複数の爪部の下面と、拡径部1eの表面とが面接触するような角度まで、複数の爪部3が曲げ起こされる。なお、本実施形態においては、複数の爪部3をこのような角度にまで曲げ起こしているが、曲げ起こしの角度はこの角度以下であってもよい(取り付け位置での曲げ起こし角度より大きく且つ取り外し用曲げ起こし位置での角度より小さくてもよい)。
【0062】
(取り外し状態)
次に、プッシュナット5が嵌挿方向手前側(上方向)へと持ち上げられることにより、プッシュナット5が取り外される(図9参照)。この状態では、すなわち、複数の爪部3が取り外し用曲げ起こし位置まで曲げ起こされた後のプッシュナット5を取り外す時には、貫通孔4の径(D2)は、挿入部1iの径より(D1)も大きくなっている。すなわち、取り外し用曲げ起こし位置まで複数の爪部3を曲げ起こした状態で、複数の爪部3の根元部は塑性変形しており、取り付け前のプッシュナット5の状態に対して、貫通孔4の径が拡がっている。具体的には、複数の爪部3の根元部分(図8のF部分)において、軸方向に沿った直線と複数の爪部3に沿った直線とが成す鋭角の角度がθ2からθ1へと至るまでの間に、曲げについて弾性限度となる角度があり、そこを超えて曲げられることで、塑性変形により、複数の爪部3の曲げ起こし角度が当初の曲げ起こし角度に戻らなくなる。その結果、貫通孔4の径が大きくなっている。
【0063】
また、本実施形態においては、複数の爪部3が取り外し用曲げ起こし位置まで曲げ起こされた後のプッシュナット5を取り外す時には、貫通孔4の径は、挿入部1iの径よりも大きくなっている。しかし、このような形態には限られず、複数の爪部を、取り外し用曲げ起こし位置まで曲げ起こした後、貫通孔の径が、取り付け前の貫通孔の径よりも大きくなっていればよく、プッシュナット5の取り外しが容易化されるのであれば、貫通孔の径が、挿入部の径よりも小さくてもよい(当初の貫通孔の径よりも大きく且つ挿入部の径よりも小さくてもよい)。
【0064】
(取り外し完了状態)
そして、さらにプッシュナット5が嵌挿方向手前側(上方向)へと持ち上げられることにより、プッシュナット5の取り外しが完了する(図10参照)。
【0065】
[本発明の特徴]
本実施形態にかかる取り付け用シャフト1、プッシュナット取り付け構造6及び圧縮機用取り付け構造には、以下のような特徴がある。
【0066】
本実施形態の取り付け用シャフト1では、複数の爪部3の先端部が取り付け位置1pにあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と複数の爪部3に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と拡径部1eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さい。そのため、嵌挿完了時における爪部3と軸部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、当該直線と拡径部1eの輪郭に沿った直線とがなす鋭角の角度の方が小さいことにより、さらに嵌挿方向へプッシュナット5を押したときに、爪部3が根元から曲げられて塑性変形する。その結果、プッシュナット5は、嵌挿完了状態よりも、平面視において中央の貫通孔4の径が拡がった状態になるので、取り付け用シャフト1から容易に取り外すことができるようになる。また、このような爪部3の塑性変形は、治具を用いることなく手作業により可能であるので、治具を必要としない簡易な構成が実現できる。そのため、簡易な構成により、容易にプッシュナット5を取り外すことが可能となる。また、シャフトを殆ど損傷することがないので、シャフトを再利用できる。
【0067】
また、本実施形態の取り付け用シャフト1では、プッシュナット5を、複数の爪部3の先端部が取り付け位置1pにある状態から、さらに嵌挿方向奥側に押し込むことによって、軸方向に沿った直線と複数の爪部3に沿った直線とが成す鋭角の角度が、軸方向に沿った直線と拡径部1eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度に等しくなるような取り外し用曲げ起こし位置まで、複数の爪部3がフランジ部2に対して曲げ起こされ、複数の爪部3が取り外し用曲げ起こし位置まで曲げ起こされた後のプッシュナット5を取り外す時には、貫通孔4の径は、挿入部1iの径よりも大きい。そのため、プッシュナット5の爪部3が根元から曲げられて塑性変形し、平面視において中央の貫通孔4の径が拡がった状態になり、且つ、取り付け用シャフト1の挿入部の径よりも、プッシュナット5の貫通孔4の径の方が大きいので、プッシュナット5をより容易に取り外すことが可能となる。また、シャフトの損傷を確実に抑止できる。
【0068】
また、本実施形態に係る取り付け用シャフト1では、拡径部1eの表面は、円錐面の一部として構成されている。そのため、プッシュナット5の爪部3を容易に変形させることができ、且つ、拡径部1eの設計、形成が容易なものとなる。
【0069】
また、本実施形態に係るプッシュナット取り付け構造6では、プッシュナット5と、取り付け用シャフト1と、を備え、複数の爪部3の先端部が取り付け位置1pにあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と複数の爪部3に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と拡径部1eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さいので、簡易な構成により、容易にプッシュナットを取り外すことが可能となる。また、シャフトを殆ど損傷することがないので、シャフトを再利用できる。
【0070】
また、本実施形態に係る圧縮機取り付け構造7は、圧縮機10を支持するための圧縮機取り付け構造であって、圧縮機10のベース部12と、プッシュナット5と、取り付け用シャフト1と、を備えているおり、取り付け用シャフト1は、ベース部12に取り付けられており、複数の爪部3の先端部が取り付け位置1pにあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と複数の爪部3に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と拡径部1eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さいので、圧縮機のメンテナンス等の際に、容易にプッシュナットを取り外すことが可能となる。
【0071】
(変形例)
次に、上記の実施形態に係る取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造の変形例について、上記の実施形態と異なる部分を中心に説明する。図11、12、13は第1、第2、第3変形例に係る取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造の構成を表す概略図であり、図11、12は側面視概略図を、図13は断面概略図を示している。なお、上記の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図11乃至13では、クッション筒9、支持部材8を省略して示している。
【0072】
(第1変形例)
第1変形例について説明する。本変形例に係る取り付け用シャフト101、プッシュナット取り付け構造106においては、取り付け用シャフト101の取り付け位置101pの外周部に、プッシュナット5の軸方向についての位置決めを行なうための位置決め用溝101dが周方向に沿って形成されている(図11参照)。取り付け用シャフト101がこのように構成されていることにより、位置決め用溝101dにプッシュナット5の先端部が入り込むので、プッシュナット5の位置決めが容易にできる。
【0073】
また、取り付け用シャフト101において、位置決め用溝101dの溝幅は、複数の爪部3の厚み以下となっている。位置決め用溝の溝幅が複数の爪部の厚みよりも大きい場合には、プッシュナットの爪部と溝との間に隙間が生じ、プッシュナット嵌挿完了時にガタが発生してしまうが、この取り付け用シャフト101を用いることにより、プッシュナット5の爪部3と溝101dとの間に隙間が生じないので、プッシュナット5の嵌挿完了時におけるガタ防止ができ、取り付け状態が安定する。
【0074】
なお、本変形例においては、取り付け位置101pの外周部の全周に亘って位置決め用溝101dが形成されているが、取り付け用シャフト101において、取り付け位置101pの外周部の少なくとも一部に、位置決め用溝101dが周方向に沿って形成されていればよく、全周に亘って溝が形成されていなくてもよい。例えば、プッシュナットの爪部が接触する位置にのみ、部分的に位置決め用溝が形成されていてもよい。また、位置決め用溝の溝幅は、爪部の厚み以上であってもよい。
【0075】
(第2変形例)
第2変形例について説明する。本変形例に係る取り付け用シャフト201、プッシュナット取り付け構造206においては、取り付け用シャフト201の拡径部201eよりも嵌挿方向奥側に、径方向外側へ向かって突出形成されたストッパ201sが設けられている(図12参照)。この取り付け用シャフト201では、ストッパ201sがあることによって、プッシュナット5が必要以上に奥側に移動することがないので、プッシュナット5にかける力を最小限に抑えることができる。なお、このようなストッパはなくてもよい。
【0076】
(第3変形例)
第3変形例について説明する。本変形例に係る取り付け用シャフト301、プッシュナット取り付け構造306においては、複数の爪部303の先端部が取り付け位置301pにあるときの軸方向断面である図13において、プッシュナット305の、軸方向に沿った直線と複数の爪部303に沿った直線とが成すそれぞれの鋭角の角度には、二つの異なる角度(θ2,θ3)が含まれており、θ2,θ3は、θ3<θ2の関係を満たしている。すなわち、図中の左側の爪部303は、右側の爪部303に比べて曲げ起こし角度が大きくなっている。また、θ2は、軸方向に沿った直線と複数の爪部303に沿った直線とが成す鋭角の最大角度(θmax)ということになる。また、θ1との関係では、θ3<θ1<θ2の関係が成立している。
【0077】
そして、複数の爪部303の先端部が取り付け位置301pにあるときの軸方向断面である図13において、軸方向に沿った直線と複数の爪部303に沿った直線とが成す鋭角の最大角度(θ2)よりも、軸方向に沿った直線と拡径部301eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度(θ1)の方が小さい。そのため、この取り付け用シャフト301では、プッシュナット305の複数の爪部303において、曲げ起こし角度に二つ以上の角度が含まれている場合であっても(例えば、一つの爪部のみ極端に大きく曲げ起こしたような場合であっても)、軸方向に沿った直線と複数の爪部303に沿った直線とが成す鋭角の最大角度θ2よりも、軸方向に沿った直線と拡径部301eの輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度θ1の方が小さくなるように設計することで、プッシュナット305を容易に取り外すことが可能となる。なお、図13においては、左側の爪部303と取り付け用シャフト301との間に隙間があるが、右側の爪部303と曲げ起こし角度が等しい爪部(断面では図示されない)が、図示したもの以外にも複数設けられることで、プッシュナット305が取り付け用シャフト301に対してセンタリングされる。
【0078】
なお、本変形例においては、軸方向に沿った直線と複数の爪部303に沿った直線とが成すそれぞれの鋭角の角度には、二つの異なる角度(θ2,θ3)が含まれているが、軸方向に沿った直線と複数の爪部303に沿った直線とが成すそれぞれの鋭角の角度には、少なくとも二つの異なる角度が含まれていればよく、三つ以上の角度が含まれていてもよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0080】
例えば、上記の実施形態においては、本発明にかかる取り付け用シャフト及びプッシュナット取り付け構造を、圧縮機取り付け構造として適用しているが、本発明の用途はこのようなものには限られず、プッシュナットを用いる取り付け構造の全てに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明を利用すれば、簡易な構成により、容易にプッシュナットを取り外すことが可能な取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造及び圧縮機取り付け構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアコン室外機の内部構成を示す概略図。(a)は内部上面概略図。(b)は室外機下部の内部正面概略図。
【図2】図1の(a)におけるA−B−C組み合わせ断面概略図。
【図3】本実施形態にかかる取り付け用シャフト、プッシュナット取り付け構造及び圧縮機取り付け構造を示す、図2のG部分を拡大した拡大断面概略図。
【図4】本実施形態にかかるプッシュナットの構成を表す概略図。(a)は上面視概略図。(b)は(a)のE−E’位置における断面概略図。
【図5】本実施形態に係るプッシュナット取り付け構造の構成を表す側面視概略図。
【図6】図5のプッシュナット取り付け構造において、プッシュナットの取り付け前の状態を示す説明断面概略図。
【図7】図5のプッシュナット取り付け構造において、プッシュナットの嵌挿完了状態を示す説明断面概略図。
【図8】図5のプッシュナット取り付け構造において、プッシュナットが塑性変形した状態を示す説明断面概略図。
【図9】図5のプッシュナット取り付け構造において、プッシュナットを取り外している状態を示す説明断面概略図。
【図10】図5のプッシュナット取り付け構造において、プッシュナットの取り外し完了状態を示す説明断面概略図。
【図11】第1変形例にかかるプッシュナット取り付け構造の構成を表す側面視概略図。
【図12】第2変形例にかかるプッシュナット取り付け構造の構成を表す側面視概略図。
【図13】第3変形例にかかるプッシュナット取り付け構造の構成を表す断面概略図。
【図14】拡径部の輪郭が曲線的である場合の「拡径部の輪郭に沿った直線」の例を説明するための説明断面概略図。(a)は下に凸の曲線、(b)は上に凸の曲線。
【符号の説明】
【0083】
1,101,201,301 取り付け用シャフト
1e,201e,301e 拡径部
1i 挿入部
1p,301p 取り付け位置
101d 位置決め用溝
201s ストッパ
2 フランジ部
3,303 爪部
4,104 貫通孔
5,305 軸部材
6,106,206,306 プッシュナット取り付け構造
7 圧縮機取り付け構造
12 ベース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状且つ板状のフランジ部(2)と当該フランジ部の内周側から中心へ向かって突出形成された複数の爪部(3)とを有し中央部に貫通孔(4)が形成されたプッシュナット(5)を、嵌挿させて取り付けるための軸状の取り付け用シャフト(1)であって、
嵌挿方向手前側の先端部に形成され、前記プッシュナットの取り付け時には前記貫通孔に挿入される挿入部(1i)と、
前記挿入部よりも嵌挿方向奥側に形成され、径方向断面における径が、嵌挿方向手前側から奥側に向かうにつれて増大する拡径部(1e)と、を有し、
前記プッシュナットは、前記複数の爪部の先端部が前記挿入部の最も嵌挿方向奥側である取り付け位置(1p)に来たときに嵌挿が完了し、
前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さいことを特徴とする取り付け用シャフト(1)。
【請求項2】
前記プッシュナット(5)を、前記複数の爪部(3)の先端部が前記取り付け位置にある状態から、さらに嵌挿方向奥側に押し込むことによって、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の角度が、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度に等しくなるような取り外し用曲げ起こし位置まで、前記複数の爪部が前記フランジ部に対して曲げ起こされ、
前記複数の爪部が前記取り外し用曲げ起こし位置まで曲げ起こされた後の前記プッシュナットを取り外す時には、前記貫通孔(4)の径は、前記挿入部(1i)の径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の取り付け用シャフト。
【請求項3】
前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成すそれぞれの鋭角の角度には、少なくとも二つの異なる角度が含まれ、且つ、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の最大角度よりも、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の取り付け用シャフト。
【請求項4】
前記拡径部(1e)の表面は、円錐面の一部として構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の取り付け用シャフト。
【請求項5】
前記取り付け位置の外周部の少なくとも一部には、前記プッシュナットの軸方向についての位置決めを行なうための位置決め用溝(101d)が周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の取り付け用シャフト。
【請求項6】
前記位置決め用溝(101d)の溝幅は、前記複数の爪部の厚み以下であることを特徴とする請求項5に記載の取り付け用シャフト。
【請求項7】
前記拡径部よりも嵌挿方向奥側には、径方向外側へ向かって突出形成されたストッパ(201s)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の取り付け用シャフト。
【請求項8】
環状且つ板状のフランジ部(2)及び当該フランジ部の内周側から中心へ向かって突出形成された複数の爪部(3)を有し中央部に貫通孔(4)が形成されたプッシュナット(5)と、前記プッシュナットを嵌挿させて取り付けるための軸状の取り付け用シャフト(1)と、を備えるプッシュナット取り付け構造(6)であって、
前記取り付け用シャフトは、嵌挿方向手前側の先端部に形成され、前記プッシュナットの取り付け時には前記貫通孔に挿入される挿入部(1i)と、前記挿入部よりも嵌挿方向奥側に形成され、径方向断面における径が、嵌挿方向手前側から奥側に向かうにつれて増大する拡径部(1e)と、を有し、
前記プッシュナットは、前記複数の爪部の先端部が前記挿入部の最も嵌挿方向奥側である取り付け位置(1p)に来たときに嵌挿が完了し、
前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さいことを特徴とするプッシュナット取り付け構造(6)。
【請求項9】
圧縮機を支持するための圧縮機取り付け構造(7)であって、
圧縮機のベース部(12)と、
環状且つ板状のフランジ部(2)及び当該フランジ部の内周側から中心へ向かって突出形成された複数の爪部(3)を有し中央部に貫通孔(4)が形成されたプッシュナット(5)と、
前記プッシュナットを嵌挿させて取り付けるための軸状の取り付け用シャフト(1)と、を備え、
前記取り付け用シャフトは、嵌挿方向手前側の先端部に形成され、前記プッシュナットの取り付け時には前記貫通孔に挿入される挿入部(1i)と、前記挿入部よりも嵌挿方向奥側に形成され、径方向断面における径が、嵌挿方向手前側から奥側に向かうにつれて増大する拡径部(1e)と、を有し、且つ、前記ベース部に取り付けられており、
前記プッシュナットは、前記複数の爪部の先端部が前記挿入部の最も嵌挿方向奥側である取り付け位置(1p)に来たときに嵌挿が完了し、
前記複数の爪部の先端部が前記取り付け位置にあるときの軸方向断面において、軸方向に沿った直線と前記複数の爪部に沿った直線とが成す鋭角の角度よりも、軸方向に沿った直線と前記拡径部の輪郭に沿った直線とが成す鋭角の角度の方が小さいことを特徴とする圧縮機取り付け構造(7)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−241020(P2008−241020A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86699(P2007−86699)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】