説明

受信器

【課題】視覚障害者を対象とした歩行者支援システムにおいて、視覚障害者が横断歩道を横断するときに、LED式歩行者信号灯器の方向を把握できるようにする。
【解決手段】LED式歩行者信号灯器100からの可視光信号を受光して電気信号を出力する受光素子11を備え、前記受光素子11の出力信号に基づいて「横断不可」と「横断可」の信号情報を主音声で歩行者に伝達し、これに加えて、受光素子11の出力信号の強度に応じて受信器1の受信状況(受信器1の方向)に関する情報を歩行者に補助音声で伝達する。このようにして受信状況を視覚障害者に伝達することにより、受信器1の方向がLED式歩行者信号灯器100からずれている場合、その状況を把握することが可能となるので、視覚障害者が横断歩道を渡る際に、横断歩道から大幅に外れることなく安全に渡ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者などの歩行者の交差点の横断を支援する歩行者支援システムに用いられる受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、歩行者信号灯器としては、従来、白熱電球(光源)と、この白熱電球の背面側に配置される反射板と、白熱電球の前面側に配置される前面カバーとからなり、その前面カバー(赤色もしくは青色の透光性カバー)に白色の人形部(人形図柄)が形成された信号灯器が一般に使用されている。このような電球式の歩行者信号灯器は、全面発光タイプであり、「横断不可」が赤地に白人形、「横断可」が青地に白人形の図柄となっており、人形部が電球色(白色)による発光で、その周囲が赤色または青色に発光する仕様となっている。
【0003】
また、最近では、消費電力の低減化や保守・管理に要する手間の削減等をはかること、及び、西日等による擬似点灯の問題を解消することなどを目的として、LED式歩行者信号灯器が実用化されてきている。
【0004】
LED式歩行者信号灯器としては、例えば、複数の赤色LEDと青色LEDとを光源とし、それらLED群を灯器ケース内に収容するとともに、LED群の前面側に配置する前面カバーに、歩行者を形どった図柄(人形)の透光部分(人形部)と遮光部分とを設けた構造で、人形部のみが赤色または青色に発光する仕様の信号灯器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、横断歩道が設けられた交差点には、視覚障害者の横断を支援するために、横断可能時(信号が青のとき)に、歩行者信号灯器の近傍に配置したスピーカから誘導音を発する音響装置付信号機が設置されている(例えば特許文献2参照)。このような音響装置付歩行者信号機では、誘導音の工夫により、横断歩道の方向性を視覚障害者に知らせるようにしている。例えば、交差点において東西方向の青信号に対して「カッコー」、南北方向の青信号に対しては「ピヨピヨ」というように、異なる鳥の鳴き声を横断方向に応じて発するようにしている。ところが、音響装置付歩行者信号機においては、付近の住民に配慮して夜間(例えば午後8以降)には誘導音を発しないようにしている交差点もあり、視覚障害者の夜間における横断の安全確保が困難である。
【0006】
このような点を考慮して、歩行者信号灯器の近傍に配置した投光器から、赤外線通信により歩行者信号情報を送信し、その送信信号を視覚障害者側の受信器(例えば携行端末装置)で受信して音声に変換することで、視覚障害者に横断可(あるいは横断不可)である旨を知らせる赤外通信式の歩行者信号灯器がある(例えば、特許文献3参照)。また、最近では、低エネルギで安全な可視光を用いた歩行者支援システムが注目されている。
【0007】
可視光通信式の歩行者支援システムにおいては、LEDが高速点滅可能である点を利用し、LED式歩行者信号灯器に、音声信号を変調(FM変調等)する変調部とLED駆動部とを有する点灯制御回路を設け、変調部にて変調された変調信号に基づいて信号灯器の青色LED(または赤色LED)を所定周波数(例えば約200kHz)で高速点滅して可視光信号(パルス化した信号)を出力する。歩行者(視覚障害者)側の受信器では、LED式歩行者信号灯器からの可視光信号を受光素子で受光して電気信号に変換し、その電気信号を復調部で復調(FM復調等)して音声信号をイヤホンやヘッドホンあるいはスピーカから出力することにより、歩行者(視覚障害者)に横断可(または横断不可)である旨を伝達するシステムである。
【特許文献1】特開2001−081738号公報
【特許文献2】特開2000−123281号公報
【特許文献3】特開2002−150475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、可視光通信式の歩行者支援システムにおいて、視覚障害者が、横断歩道を渡っているときに、「横断可」を示す音声が聞こえなくなる状況になると、横断歩道から外れてしまう等の安全上の問題が懸念される。また、「横断可」を示す音声が聞こえなくなったときに、LED式歩行者信号灯器の方向を見失うことがある。なお、「横断可」を示す音声が聞こえなくなったときに、受信領域から外れたのか、受信器の故障により音声が聞こえないのか、あるいは、他の要因により音声が聞こえない状況になったのかを判断することができないため、視覚障害者が不安を覚えることもある。
【0009】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、視覚障害者を対象とした歩行者支援システムにおいて、視覚障害者が横断歩道を横断するときに、LED式歩行者信号灯器の方向を把握することができ、視覚障害者の交差点横断の安全性を高めることが可能な受信器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光源が赤色LEDで構成され「横断不可」を表示する赤色発光部と、光源が青色LEDで構成され「横断可」を表示する青色発光部とを備え、前記赤色発光部の赤色LEDと前記青色発光部の青色LEDとを所定周波数で点滅して可視光信号を出力するLED式歩行者信号灯器を用いた可視光通信式の歩行者支援システムにおいて、歩行者(視覚障害者)が携行し、前記LED式歩行者信号灯器が出力する可視光信号を受信する受信器であって、前記LED式歩行者信号灯器からの可視光信号を受光して電気信号を出力する受光素子と、前記受光素子の出力信号に基づいて「横断不可」と「横断可」の信号情報を歩行者に伝達する主伝達手段と、前記受光素子の出力信号の強度に基づいて当該受信器の受信状況に関する情報を歩行者に伝達する補助伝達手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、受光素子の出力信号の強度が低いときには、受信器の方向(向き)がLED式歩行者信号灯器からずれている旨の情報を歩行者(視覚障害者)に伝達することができる。これによって、視覚障害者が横断歩道を横断しているときに、LED式歩行者信号灯器の方向を把握することが可能となり、横断歩道から大幅に外れることなく安全に渡ることができる。
【0012】
本発明の具体的な構成として、「横断不可」と「横断可」の信号情報を主音声で出力し、当該受信器の受信状況に関する情報を、前記主音声とは異なる補助音声で出力するという構成を挙げることができる。この場合、「横断不可」と「横断可」を示す主音声に、前記受信状況を示す補助音声を重畳して出力するようにしてもよい。
【0013】
本発明において、受光素子の出力信号の強度を、レベル高さを段階的に変化させた複数の判定レベルと比較し、その各判定レベルとの比較結果に基づいて、当該受信器の受信状況に関する情報を歩行者(視覚障害者)に伝達するようにしてもよい。
【0014】
本発明において、受光素子の出力信号の最大値を採取し、その最大値を最高判定レベルとしてレベル高さを段階的に変化させた複数の判定レベルを設定して、前記受光素子の出力信号のレベルと比較するようにしてもよい。このように、判定レベルを可変としておくと、LED式歩行者信号灯器に対して受信器が離れている場合(例えば受光素子に到達する可視光信号のレベルが低い場合)であっても、判定レベルを自動的に調整することが可能になるので、受信状況(受信器の方向ずれ)を適切に把握することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受光素子の出力信号の強度に基づいて受信器の受信状況に関する情報を歩行者(視覚障害者)に伝達するようにしているので、視覚障害者が、横断歩道を横断しているときに、受信器の方向がLED式歩行者信号灯器からずれている場合、その状況を把握することができる。これによって、視覚障害者が横断歩道を渡る際に、横断歩道から大幅に外れることなく安全に渡ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
まず、可視光通信式の歩行者支援システムに用いるLED式歩行者信号灯器の一例を図2〜図5を参照して説明する。
【0018】
−LED式歩行者信号灯器−
この例のLED式歩行者信号灯器100は、可視光通信により歩行者(視覚障害者)の交差点横断を支援する歩行者支援システムに用いられる信号灯器であって、「横断不可」を表示する赤色発光部100Aと、「横断可」を表示する青色発光部100Bとが上下に配置されている。LED式歩行者信号灯器100の前面側には、赤色発光部100A及び青色発光部100Bの前方側の上方領域を覆う庇104,104が配置されている。
【0019】
赤色発光部100A及び青色発光部100Bは灯器ケース102内に収容され、これら発光部100A,100Bの各前面カバー113がそれぞれ前面扉103の開口部103A,103Bを通じて灯器前面側に臨んでいる。なお、「横断不可」を表示する赤色発光部100Aと、「横断可」を表示する青色発光部100Bとは、後述する人形透光板140の人形図柄及びLEDの発光色以外の構成は同じであるので、青色発光部100Bの構成についてのみ説明する。
【0020】
青色発光部100Bは、図4に示すように、多数の青色LED101B・・101Bが実装されたLED基板110、前面カバー113、人形透光板140、押えカバー板115、及び、ユニットケース120などを備えている。ユニットケース120は、樹脂成形品(例えばABS樹脂製)で、ケース内部にLED基板110が収容されている。
【0021】
前面カバー113は、透明樹脂(例えばポリカーボネート樹脂)の成形品である。人形透光板140は、透明樹脂板(例えばメタクリル樹脂板)に遮光膜を施した部材であって、人形図柄の透光部141及びその透光部141以外の部分を遮光する遮光部142が設けられている。人形透光板140と押えカバー板115とは相互に重ね合わされた状態でユニットケース120の前端面と前面カバー113との間に配置され、この状態で前面カバー113をユニットケース120にねじ止め固定することにより、ユニットケース120と前面カバー113との間に保持される。
【0022】
以上の構造の青色発光部100Bは、図3に示すように、LED式歩行者信号灯器100の前面扉103に、前面カバー113を前面扉103の開口部103Bに嵌め込んだ状態で、前面扉103に対してねじ(もしくは押え金具)で止めることにより固着される。なお、前面カバー113のフランジ部113A(前面扉103に当接する部分)には防水用のパッキン116(図4)が配置されている。また、赤色発光部100Aも同様にして前面扉103に取り付けられる。
【0023】
そして、この例のLED式歩行者信号灯器100においては、LED基板110の青色LED101B・・101Bが点灯すると、それら青色LED101B・・101BからのLED光が人形透光板140に照射され、その人形透光板140の透光部141を透過したLED光が前面カバー113を通じて前方に放出される。これにより、人形透光板140の透光部141つまり人形図柄C2のみが青色で点灯表示される。
【0024】
なお、図4に示す青色発光部100Bでは、人形透光板140の人形図柄C2を「横断可」を示す形態としているが、赤色発光部100Aの場合は図2に示す人形図柄C1とする。また、赤色発光部100Aの場合、光源として多数の赤色LED101A・・101A(図6参照)を用いる。
【0025】
そして、以上の構成のLED式歩行者信号灯器100は、図5に示すように、横断歩道のある交差点に設置された信号機ポール301に支持アーム302,302を介して支持される。
【0026】
次に、この例のLED式歩行者信号灯器100の点灯制御回路200について図6を参照しながら説明する。
【0027】
まず、LED式歩行者信号灯器100の点灯制御回路200は、図6に示すように、制御部201、音声信号生成部202、変調部203、LED駆動部204、及び、LED駆動用の電源電圧を制御部201に供給する電源部205を備えている。音声信号生成部202は、LED式歩行者信号灯器100が赤信号(横断不可)である旨を示す音声信号と青信号(横断可)である旨を示す音声信号とを生成する。変調部203は音声信号生成部202からの音声信号をFM変調する。なお、「横断不可」を示す音声としては、例えば「信号は赤です」という音声を挙げることができる。また、「横断可」を示す音声としては、例えば「カッコー」または「ピヨピヨ」という音声を挙げることができる。
【0028】
以上の回路構成の点灯制御回路200においては、信号制御器210から送信される信号点灯信号(AC100V)に応じて、赤色発光部100Aまたは青色発光部100Bのいずれか一方をFM変調で高速点滅する。具体的には、赤信号の表示期間である場合、制御部201の指令により音声信号生成部202が赤信号(横断不可)である旨を示す音声信号を発し、その音声信号を変調部203にてFM変調する。この変調部203にて変調された変調信号に基づいて、LED駆動部204が、赤色発光部100Aの赤色LED101A・・101Aを所定周波数(例えば約200kHz)で高速点滅することによってパルス化した可視光信号を出力する。一方、青信号の表示期間である場合、制御部201の指令により音声信号生成部202が青信号(横断可)である旨を示す音声信号を発し、その音声信号を変調部203にてFM変調する。この変調部203にて変調された変調信号に基づいて、LED駆動部204が青色発光部100Bの青色LED101B・・101Bを所定周波数(例えば約200kHz)で高速点滅することによってパルス化した可視光信号を出力する。
【0029】
なお、この例のように、各LED101A,101Bを高速(約200kHz)で点滅すると、LEDの点滅は人の目では感じられないので、健常な歩行者への視覚的な横断情報の伝達に影響を与えることなく、視覚障害者が携行している受信器1との可視光通信を行うことができる。
【0030】
−受信器−
次に、本発明の受信器の一例を図1のブロック図を参照して説明する。この例の受信器1は、可視光通信式の歩行者支援システムにおいて、歩行者(視覚障害者)が携行し、上記したLED式歩行者信号灯器100が出力する可視光信号を受信する受信器である。
【0031】
この例の受信器1は、受光素子(例えばフォトダイオード)11、交流結合部12、プリアンプ13、BPF(バンドパスフィルタ)14、FM復調部15、RMS−DCコンバータ回路16、コンパレータ17、補助音声発生部18、音声合成部19、オーディオアンプ20、オーディオジャック21、及び、電源部22を備えており、受光素子11、交流結合部12及びプリアンプ13は受光基板24に実装されている。また、BPF14、RMS−DCコンバータ回路16、FM復調部15、コンパレータ17、補助音声発生部18、音声合成部19、オーディオアンプ20、オーディオジャック21及び電源部22は増幅・復調基板25に実装されている。なお、受信器1の各部には、当該受信器1に内蔵される電池23から電源が供給される。
【0032】
この例の受信器1では、LED式歩行者信号灯器100からの可視光信号を受光素子11で受光して電気信号(電圧信号)に変換する。受光素子11の出力信号は交流結合部12に低周波成分がカットされた後に、プリアンプ13によって増幅される。交流結合部12による低周波成分のカットは、太陽光の影響を防ぐために行われる。プリアンプ13の出力はBPF14に入力され、所定周波数(例えば約200kHz)成分の信号が抽出される。BPF14を通過した電圧信号は、FM復調部15とRMS−DCコンバータ回路16とに導かれる。
【0033】
FM復調部15は、入力電圧信号をFM復調して音声信号(主音声信号)に変換して音声合成部19に出力する。
【0034】
一方、RMS−DCコンバータ回路16は、BPF14を通過した電圧信号の実効値を演算してコンパレータ17に出力する。
【0035】
コンパレータ17には、実効値演算後の信号Sに対し、レベル高さが異なる2段階の判定レベルL1,L2(L1>L2)が設定されており、その各判定レベルL1,L2と信号Sとを比較し、その比較結果を示す信号を出力する。具体的には、信号Sのレベルが[信号S≧L1]であるときには指令信号Shighを補助音声発生部18に出力し、信号Sのレベルが[L1>信号S>L2]であるときには指令信号Smidを補助音声発生部18に出力する。また、信号Sのレベルが[信号S≦L2]であるときには指令信号Slowを補助音声発生部18に出力する。
【0036】
ここで、コンパレータ17の判定レベルL1,L2について説明する。まず、図7に示すように、LED式歩行者信号灯器100に対する受信位置の距離(横断歩道の進行方向の距離)を「D」とすると、受信器1から出力され実効値演算後の信号Sの電圧(実効値)と距離Dとは図8(a)に示すような関係となる。また、LED式歩行者信号灯器100を中心とする横断歩道の幅方向の距離を「W」,「−W」とすると、信号Sの電圧(実効値)と距離W,−Wとは図8(b)に示すような関係となる。このような信号Sと距離との関係を考慮して、この例では、図8(a)及び(b)に示すような判定レベルL1,L2をコンパレータ17に設定している。
【0037】
次に、補助音声発生部18は、「ピー」の断続音を発生する音声信号を生成する機能部であって、コンパレータ17の出力信号が「Shigh」であるときには、断続音の間隔を短くした高レベルの音声「ピッ・ピッ・ピッ」を発生する補助音声信号を音声合成部19に出力し、コンパレータ17の出力信号が「Slow」であるときには、断続音の間隔を長くした低レベルの音声「ピーー・ピーー・ピーー」を発生する補助音声信号を音声合成部19に出力する。また、補助音声発生部18は、コンパレータ17の出力信号が「Smid」であるときには、信号Shighのときの断続音と信号Slowのときの断続音との間の中間レベルの音声「ピー・ピー・ピー」を発生する補助音声信号を音声合成部19に出力する。
【0038】
音声合成部19は、FM復調部15が出力する主音声信号に、補助音声発生部18からの補助音声信号を合成する。この合成後の音声信号はオーディオアンプによって増幅された後にオーディオジャック21に導かれる。オーディオジャック21には、イヤホン(もしくはヘッドホン)のピンジャックが接続され、歩行者(視覚障害者)はイヤホンを通じて、「横断不可」を示す主音声(例えば「信号は赤です」)、及び、「横断可」を示す主音声(例えば「カッコー」または「ピヨピヨ」)に、補助音声(例えば「ピッ・ピッ・ピッ」)を重畳した合成音声を聞くことができる。
【0039】
なお、受信器1としては、例えばベルトや帽子を利用して受信器1を歩行者に装着するベルトタイプや帽子タイプの受信器を挙げることができる。また、オーディオジャック21に替えて、スピーカを接続して主音声・補助音声を出力するようにしてもよい。
【0040】
以上の受信器1及びLED式歩行者信号灯器100によって構成される可視光通信式の歩行者支援システムにおいて、LED式歩行者信号灯器100の赤色発光部100Aの赤色LED101A・・101Aの高速点滅により出力される可視光信号を視覚障害者側の受信器1で受信すると、「横断不可」を示す音声(例えば「信号は赤です」)がオーディオジャック21を介してイヤホンから出力され視覚障害者に伝達される。従って視覚障害者はイヤホンから出力される音声により、交差点の横断が不可であることを認識することができる。また、青色発光部100Bの青色LED101B・・101Bの高速点滅により出力される可視光信号を視覚障害者側の受信器1で受信すると、「横断可」を示す音声(例えば「カッコー」)がオーディオジャック21を介してイヤホンから出力され視覚障害者に伝達される。従って視覚障害者はイヤホンから出力される音声により、交差点の横断が可能であることを認識することができる。
【0041】
さらに、LED式歩行者信号灯器100の青色発光部100Bの青色LED101B・・101Bの高速点滅(または赤色発光部100Aの赤色LED101A・・101Aの高速点滅)により出力される可視光信号を視覚障害者側の受信器1で受信すると、その可視光信号の受信強度つまり受光素子11が出力する信号で実効値演算後の信号Sの電圧のレベルが、コンパレータ17で比較され、その比較結果に応じて、「ピッ・ピッ・ピッ」、「ピー・ピー・ピー」、または、「ピーー・ピーー・ピーー」の補助音声が主音声(例えば「カッコー」)に重畳してイヤホンから出力される。
【0042】
具体的には、視覚障害者が横断歩道を渡っているときに、受信器1の方向(向き)がLED式歩行者信号灯器100に向いているときには、受信強度(受信信号のレベル)が高くなるので、高レベルの補助音声「ピッ・ピッ・ピッ」がイヤホンから出力される。
【0043】
一方、受信器1の方向(向き)が、LED式歩行者信号灯器100から少しずれているときには、受信強度(受信信号のレベル)が低くなるので、中間レベルの補助音声「ピー・ピー・ピー」がイヤホンから出力され、さらに、受信器1の方向(向き)が大きくずれているときには、受信強度(受信信号のレベル)が更に低くなるので、低レベルの補助音声「ピーー・ピーー・ピーー」がイヤホンから出力される。
【0044】
このようにLED式歩行者信号灯器100に対する受信器1の方向(向き)のずれに応じて補助音声を変化させることにより、視覚障害者が、横断歩道を渡っているときに、受信器1の方向(向き)がずれているときには、その状況を容易に把握することができる。
【0045】
従って、例えば、補助音声が中間レベルの音声「ピー・ピー・ピー」である場合、視覚障害者は、補助音声を聞きながら、補助音声が「ピー・ピー・ピー」から高レベルの音声「ピッ・ピッ・ピッ」に変わるまで、受信器1を左右に振ることによって、LED式歩行者信号灯器100に対する受信器1の方向ずれを修正することができるので、視覚障害者が横断歩道を渡る際に、横断歩道から大幅に外れることなく安全に渡ることができる。また、補助音声が低レベルの音声「ピーー・ピーー・ピーー」である場合も、同様に、補助音声が、[低レベルの音声「ピーー・ピーー・ピーー」]→[中間レベルの音声「ピー・ピー・ピー」]→[高レベルの音声「ピッ・ピッ・ピッ」]となるように、受信器1の左右の向きを調整する操作を行うことによって、受信器1の方向ずれを修正することができるので、視覚障害者が横断歩道を渡る際に、横断歩道から大幅に外れることなく安全に渡ることができる。
【0046】
また、視覚障害者が横断歩道を渡っているときに、「横断可」を示す音声が聞こえなくなってLED式歩行者信号灯器100の方向を見失った場合であっても、受信器1の向きを左右に動かす操作を補助音声が聞こえるまで行うことにより、LED式歩行者信号灯器100の方向を探し出すことが可能になる。
【0047】
なお、以上の例では、「横断不可」を示す主音声(例えば「信号は赤です」)に補助音声(例えば「ピッ・ピッ・ピッ」)を重畳した合成音声を出力しているので、視覚障害者は、信号待ちをしているときに、補助音声つまり「ピー」の断続音の間隔によって受信器1の方向(向き)ずれを把握することが可能となり、LED式歩行者信号灯器100に対して受信器1の方向がずれている場合、補助音声を聞きながら受信器1を左右に振ることにより、LED式歩行者信号灯器100の方向を特定することができる。
【0048】
−他の実施形態−
以上の例では、補助音声として「ピー」の断続音を出力するようにしているが、これに限られることなく、受光素子11の出力信号レベル(信号Sの電圧レベル)が高いときには、例えば「信号器の方を向いています」という補助音声を出力し、信号レベルが低いときには、例えば「受信器の向きを調整して下さい」という補助音声を出力するようにしてもよい。また、受光素子11の出力信号レベル(信号Sの電圧レベル)に応じて補助音声のトーンを変化させるようにしてもよい。
【0049】
以上の例では、コンパレータ17に設定する判定レベルを固定値としているが、受光素子11の出力信号レベル(信号Sの電圧レベル)に応じて、判定レベルを変化させてもよい。具体的には、ピークホールド回路によりRMS−DCコンバータ回路16の出力信号Sの最大値(電圧値)をピークホールドし、その最大値を最高判定レベルとしてレベル高さを段階的に変化させた複数の判定レベル(をコンパレータ17に設定することで、判定レベルを可変としてもよい。このように受光素子11の出力信号(実効値演算後の信号S)に対して設定する判定レベルを可変としておくと、LED式歩行者信号灯器100に対して受信器1が離れている場合(例えば受光素子11に到達する可視光信号のレベルが低い場合)であっても、判定レベルを自動的に調整することが可能になるので、受信状況(受信器1の方向ずれ)を適切に把握することができる。なお、判定レベルを可変とする場合、受信器1を最初に使用する際に、受信器1を左右方向に振って多くの感度情報(可視光信号の受信レベル)を受信器1に与え、感度の最大値をホールドするという処理を行う必要がある。また、可視光信号を所定時間(例えば10秒間)受信できない場合には、ピークホールド値をクリアし、判定レベルのデフォルト値をコンパレータ17に設定するという処理を実行する。
【0050】
以上の例では、受光素子11の出力信号(実効値演算後の信号S)に対して2つの判定レベルL1,L2を設定しているが、これに限られることなく、3つ以上の任意複数の判定レベルを設定してもよい。
【0051】
以上の例では、受光素子11の出力信号レベルの強度に応じて、補助音声を段階的に変化させているが、これに限られることなく、断続音「ピ」の周期や音声のトーンを出力信号レベルの強度に応じてリニアに変化させるようにしてもよい。
【0052】
以上の例の構成に加えて、受信器1の内部に加速度センサを設け、この加速度センサのセンサ出力に基づく情報を補助音声に加えて出力するようにしてもよい。この場合、例えば、受信器1を左右に振ったときに、受光素子11の出力信号レベル(信号Sの電圧レベル)が上昇または下降するのかを判定するとともに、加速度センサの出力に基づいて受信器1を左方向または右方向に振ったのかを判定し、受信器1の方向(向き)に関する情報を補助音声に加えて出力するようにしてもよい。具体的には、受信器1を右方向(または左方向)に振ったときに、信号Sの電圧レベルが現時点から低下したときには、受信器1を左方向(または右方向)に動かす旨の音声を補助音声に加えて出力する。また、受信器1を左方向(または右方向)に振ったときに、信号Sの電圧レベルが現時点から上昇したときには、受信器1を左方向(または右方向)に動かす旨の音声を補助音声に加えて出力する。このような処理を行うことにより、視覚障害者は、受信器1のずれの方向(向き)を容易に把握することができる。
【0053】
以上の例では、受信器1の受信状況(受信器1の方向ずれ)に関する情報を補助音声で歩行者に伝達しているが、これに限られることなく、バイブレータ等を利用した振動で歩行者に伝達するようにしてもよい。
【0054】
なお、LED式歩行者信号灯器100からの可視光信号を受光するデバイスとして、フォトダイオード等を1列に並べたラインセンサ、または、フォトダイオード等を2次元状に配列した面センサを用いると、LED式歩行者信号灯器100の方向をセンサ出力から特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の受信器の回路構成の一例を示すブロック図である。
【図2】歩行者支援システムに用いるLED式歩行者信号灯器の一例を示す正面図である。
【図3】図2のLED式歩行者信号灯器の縦断面図である。
【図4】図2のLED式歩行者信号灯器の青色発光部の分解斜視図である。
【図5】図2のLED式歩行者信号灯器の設置状態を示す図である。
【図6】図2のLED式歩行者信号灯器の点灯制御回路の回路構成の一例を示すブロック図である。
【図7】LED式歩行者信号灯器に対する受信位置の距離Dと、LED式歩行者信号灯器を中心とする横断歩道の幅方向の距離W,−Wとを示す図である。
【図8】図1の受信器のコンパレータに設定する判定レベルを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 受信器
11 受光素子
12 交流結合部
13 プリアンプ
14 BPF
15 FM復調部
16 RMS−DCコンバータ回路
17 コンパレータ
18 補助音声発生部
19 音声合成部
20 オーディオアンプ
21 オーディオジャック
22 電源部
23 電池
25 増幅・復調基板
100 LED式歩行者信号灯器
100A 赤色発光部(「横断不可」)
101A 赤色LED
100B 青色発光部(「横断可」)
101B 青色LED
200 点灯制御回路
210 信号制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が赤色LEDで構成され「横断不可」を表示する赤色発光部と、光源が青色LEDで構成され「横断可」を表示する青色発光部とを備え、前記赤色発光部の赤色LEDと前記青色発光部の青色LEDとを所定周波数で点滅して可視光信号を出力するLED式歩行者信号灯器を用いた可視光通信式の歩行者支援システムにおいて、歩行者が携行し、前記LED式歩行者信号灯器が出力する可視光信号を受信する受信器であって、
前記LED式歩行者信号灯器からの可視光信号を受光して電気信号を出力する受光素子と、前記受光素子の出力信号に基づいて「横断不可」と「横断可」の信号情報を歩行者に伝達する主伝達手段と、前記受光素子の出力信号の強度に基づいて当該受信器の受信状況に関する情報を歩行者に伝達する補助伝達手段とを備えていることを特徴とする受信器。
【請求項2】
請求項1記載の受信器において、
前記主伝達手段は、「横断不可」と「横断可」の信号情報を主音声で出力し、前記補助伝達手段は、前記受信状況に関する情報を前記主音声とは異なる補助音声で出力することを特徴とする受信器。
【請求項3】
請求項2記載の受信器において、
前記「横断不可」と「横断可」を示す主音声に、前記受信状況を示す補助音声を重畳して出力することを特徴とする受信器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の受信器において、
前記受光素子の出力信号の強度を、レベル高さを段階的に変化させた複数の判定レベルと比較し、その各判定レベルとの比較結果に基づいて、前記受信状況に関する情報を歩行者に伝達することを特徴とする受信器。
【請求項5】
請求項4に記載の受信器において、
前記受光素子の出力信号の最大値を採取し、その最大値を最高判定レベルとしてレベル高さを段階的に変化させた複数の判定レベルを設定して、前記受光素子の出力信号のレベルと比較することを特徴とする受信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−117206(P2008−117206A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300460(P2006−300460)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000195029)星和電機株式会社 (143)
【Fターム(参考)】