説明

受信回路、電子機器およびイメージ抑圧受信方法

【課題】 受信回路におけるチャンネルサーチ等に要する時間を短縮する。
【解決手段】 受信回路110は、直交ミキサー(複素ミキサー)CMIXと、イメージ抑圧回路150(例えば複素バンドパスフィルタ)と、制御部180と、を有する。制御部180は、第1期間においては、受信信号に含まれる第1周波数値よりも中間周波数値だけ高い周波数の第1信号、および受信信号に含まれる第1周波数値よりも中間周波数値だけ低い周波数の第2信号のうちのいずれか一方をイメージ信号として、イメージ抑圧回路150によるイメージ抑圧が実行されるように受信回路110を制御し、第2期間においては、第1信号および第2信号のうちのいずれか他方をイメージ信号として、イメージ抑圧回路150によるイメージ抑圧が実行されるように受信回路110を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信回路、電子機器およびイメージ抑圧受信方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号をアンテナで受信して得られる高周波数の受信信号(RF信号)を、ローカル信号(局部発振信号)のミキシングによって中間周波数の信号(IF)に変換するとき、所望信号(目的信号)およびイメージ信号(影像信号)の各々が同一の周波数信号に変換されることから混信が生じる。よって、イメージ信号の抑圧が必要となる。
【0003】
なお、例えば、ローカル周波数よりも所定周波数だけ高い信号が所望信号である場合、ローカル周波数よりも所定周波数だけ低い信号がイメージ信号となる(つまり、ローカル信号を中心として対称な周波数位置にある2つの信号のうちの一方が所望信号であり、他方がイメージ信号である)。
【0004】
イメージ信号を抑圧する回路としては、例えば、イメージ抑圧ミキサーがある(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。特許文献1では、I信号およびQ信号の信号間誤差を抑制するために、I信号とQ信号の入力信号経路を切り換え可能な回路構成が採用されている。
【0005】
また、特許文献2および特許文献3では、ローカル信号の周波数(ローカル周波数)よりも高い周波数の信号およびローカル周波数よりも低い信号のいずれか一方を所望信号(目的信号)とし、いずれか他方をイメージ信号として、選択的に受信できるようにした回路構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−052717号公報
【特許文献2】特開平11−355168号公報
【特許文献3】特開2008−118474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、近距離無線通信(短距離無線通信)の受信機が、使用する無線通信帯域における空きチャンネル(現在、使用されていないチャンネル)を検出する場合、局部発振回路の周波数を、1チャンネルの周波数帯域を単位として、ローカル信号の周波数を順番に変化させてチャネルサーチが実行される。
【0008】
チャンネルサーチでは、例えば、各チャンネルに含まれるパイロット信号の受信レベルを検出し、検出されたパイロット信号の受信レベルに基づいて、空きチャンネル(現在、使用されていないチャンネル)を検出する。つまり、チャンネルサーチでは、ローカル信号を順次に変化させて、全チャンネルを受信する必要があることから、使用可能な通信チャンネルの数が多い場合には、チャンネルサーチに時間がかかる。
【0009】
また、例えば、携帯用の受信機において、間欠的に動作期間を設け、動作期間以外の期間は受信機を待機状態として消費電力を削減する場合がある。この場合、チャンネルサーチの時間が長くなれば、受信機の動作期間が長くなり、受信機を待機モードに移行させるタイミングが遅れることから、消費電力が増大する。つまり、受信フロントエンド部では高周波数の信号を取り扱うことから消費電力が大きく、よって、チャンネルサーチ時間が長くなって、受信フロントエンド部が動作している期間が長くなれば、その分、受信機の消費電力が増加する。
【0010】
チャンネルサーチの高速化のために、例えば、ローカル信号の切り換えを高速に行うことも考えられるが、ローカル周波数が切り換えられる毎に、周波数を安定化させる時間が必要であり、ローカル信号の周波数の切り換えの高速化には限界がある。つまり、PLLによってローカル信号の周波数を制御する場合、ローカル信号の周波数が安定状態となるには、信号周波数のロックインレンジへの引き込み(引き込み過程)、所望周波数への収束(収束過程)を経る必要がある。よって、周波数安定化には所定の待ち時間が必要であり、この点で、ローカル信号の切り換え間隔の短縮には限界が生じる。
【0011】
上述の特許文献1〜特許文献3の各々に記載される技術は、このような課題の解決には貢献し得ない。すなわち、特許文献1は、I信号とQ信号とのミスマッチを低減して受信精度の向上を図る技術であり、例えばチャンネルサーチ時の時間短縮等や受信機の低消費電力化等とは関係がない。
【0012】
また、特許文献2および特許文献3に記載される技術によれば、ローカル信号よりも高い周波数の信号を所望信号(目的信号)とするか、ローカル信号よりも低い周波数の信号を所望信号とするかを選択できるようになり、受信機の利便性は向上するものの、これらの技術は、所望信号を選択して受信できる点に止まり、例えば、ローカル周波数よりも高い周波数の信号が所望信号であれば、その所望信号を受信して通信を終了する。したがって、特許文献2および特許文献3に記載される技術は、特許文献1の場合と同様に、例えばチャンネルサーチ時の時間短縮や、チャンネルサーチ等に要する時間の短縮に伴う受信機の低消費電力化等とは関係がない。
【0013】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、受信回路におけるチャンネルサーチ等に要する時間を短縮することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の受信回路の一態様は、無線信号を受信する受信回路であって、受信信号に対応する入力信号に、第1ローカル信号をミキシングして第1中間周波数信号を生成すると共に、前記入力信号に、前記第1ローカル信号と周波数が同じで、前記第1ローカル信号に対して位相が90°シフトされている第2ローカル信号をミキシングして第2中間周波数信号を生成するミキサー回路と、前記第1中間周波数信号と前記第2中間周波数信号を受けて、前記入力信号に含まれるイメージ信号が抑圧された第3中間周波数信号を出力するイメージ抑圧回路と、前記受信回路の動作を制御する制御部と、を含み、前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号の周波数値を中間周波数値とし、また、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が第1周波数値に設定されている場合に、前記制御部は、第1期間においては、前記受信信号に含まれる前記第1周波数値よりも前記中間周波数値だけ高い周波数の第1信号、および前記受信信号に含まれる前記第1周波数値よりも前記中間周波数値だけ低い周波数の第2信号のうちのいずれか一方をイメージ信号として、前記イメージ抑圧回路によるイメージ抑圧が実行されるように前記受信回路を制御し、第2期間においては、前記第1信号および前記第2信号のうちのいずれか他方をイメージ信号として、前記イメージ抑圧回路によるイメージ抑圧が実行されるように前記受信回路を制御する。
【0015】
本態様では、ローカル信号(第1ローカル信号および第2ローカル信号)の周波数が第1周波数値に設定されている状態で、2つのチャンネルの受信を行う。従来技術では、例えば、受信回路によるチャンネルサーチが行われる場合、実空間上で、ローカル信号の周波数を基準として対称の周波数位置にある2つの信号のうち、いずれか一方を所望信号(目的信号)として受信し、いずれか他方の信号はイメージ信号として抑圧し、次に、ローカル信号の周波数を変化させて、同様に所望信号(目的信号)を受信し、イメージ信号を抑圧するという動作が繰り返し実行される。
【0016】
しかし、例えば、ローカル信号の周波数が第1周波数値に設定されているときのイメージ信号の周波数が、ローカル信号の周波数が第m周波数値(mは2以上の整数であり、第m周波数値は第1周波数値とは異なる周波数値である)に設定されているときの、(利用しようとする通信方式の通信帯域内における)所望信号の周波数と一致する場合がある。この場合には、ローカル信号が第1周波数に設定されている状態で、所望信号とイメージ信号を入れ換えて、それまでイメージ信号とされていた信号を、所望信号とみなして抑圧せずに受信すれば、ローカル信号の周波数が第m周波数に設定された場合における所望信号の受信を先行的に実施できたことになる。
【0017】
このように、本態様では、ローカル信号の周波数がある周波数に設定されている状態で、第1期間にイメージ信号の抑圧を行いながら所望信号を受信し、第1期間に続く第2期間では、イメージ信号と所望信号を入れ換えて、イメージ信号の抑圧を行いながら所望信号を受信する。この方式の受信を行うと、上述の例でいえば、ローカル信号の周波数を第m周波数値に設定して無線信号を受信する動作が不要となる(ローカル信号の周波数が第1周波数値に設定されているときに、所望信号は受信済みであるため)。よって、例えば、チャンネルサーチを行う場合における、ローカル信号の周波数(局部発振器の発振周波数と表現することもできる)の切り換え回数を、従来の1/2とすることができる。よって、ローカル信号を発生する局部発振器(局部発振回路)の負担が軽減される。
【0018】
局部発振器の発振周波数は、例えば、PLL(フェーズロックドループ:位相負帰還制御系)を用いて高精度に制御されるのが通常であるが、上述のとおり、発振信号の周波数
が切り換えられる毎に、周波数を安定化させる時間が必要であり、このことが、高速なチャンネルサーチ(つまり、複数のチャンネルの各々の断続的な受信の高速化)の妨げとなっていた。本態様では、ローカル信号の周波数の切り換え回数が従来の半分となることから、周波数切り換えに伴う待ち時間(周波数が安定するのを待つ周波数安定待ち時間)が半分となる。一方、ローカル信号の周波数が固定されている状態で、所望信号とイメージ信号とを切り換える動作は、例えば、所望信号の伝達経路とイメージ信号の伝達経路とを内部スイッチで切り換えることにより実現でき(但し、これは一例である)、内部スイッチとしてはトランジスターを用いたスイッチ(トランスファースイッチ等)を用いることができ、スイッチの切り換えに要する時間は、周波数安定待ち時間に比べて格段に短い。よって、本態様によれば、例えば、チャンネルサーチに要する時間を、従来に比べて格段に短縮することができる。
【0019】
また、チャンネルサーチが短時間で終了すれば、受信回路(無線受信機)の動作時間を少なくすることができ、待機状態(例えば、必要最小限の回路以外の回路の動作を停止させて消費電力を低減させた状態)への移行タイミングが早められることから、その分、受信回路の低消費電力化も達成される。例えば、受信回路が、ボタン型電池(コイン型電池等)をバッテリーとする携帯用端末(例えばPDA等の携帯電子機器)に搭載される場合、電池の長寿命化は特に重要な課題である。本態様によれば、受信回路(ひいては電子機器)の低消費電力化が実現される。
【0020】
また、例えば、上述の内部スイッチを設けて、そのスイッチの切り換えタイミングを適切に処理する等の回路構成の実現は、通常のICでは容易である。つまり、本態様の受信回路の回路構成は比較的簡単であり、実現が容易である。本態様の受信回路は、RF段からベースバンド処理段までをすべてIC(集積回路装置)内に納め、外付け部品を用いない、いわゆるオンチップ受信機への適用が容易である。
【0021】
(2)本発明の受信回路の他の態様では、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が、前記第1周波数値とは異なる第2周波数値に設定された場合に、前記第2周波数値よりも前記中間周波数値だけ高い周波数である第3信号および前記第2周波数値よりも前記中間周波数値だけ低い周波数である第4信号の少なくとも一方の周波数が、受信済みの信号の周波数と不一致であるという条件が満足される場合に、前記制御部は、前記第2期間の終了後、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数を、前記第2周波数値に設定し、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が前記第2周波数値に設定されているときの第1期間においては、前記第3信号および前記第4信号のうちのいずれか一方をイメージ信号として、前記イメージ抑圧回路によるイメージ抑圧が実行されるように前記受信回路を制御し、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が前記第2周波数値に設定されているときの第2期間においては、前記第3信号および前記第4信号のうちのいずれか他方をイメージ信号として、前記イメージ抑圧回路によるイメージ抑圧が実行されるように前記受信回路を制御する。
【0022】
本態様では、受信回路が、受信信号(受信チャンネル)の重複を回避しつつ複数のチャンネルの受信を実行することを明確化した。上述の例でいえば、ローカル信号の周波数が第1周波数値に設定されているときに、所望信号は受信済みであるため、ローカル信号の周波数を第m周波数値に設定して無線信号を受信する動作は不要である。よって、制御部は、ローカル信号の周波数(ローカル周波数)を切り換える際に、受信信号(受信チャンネル)の重複が生じないように、ローカル周波数を設定する。
【0023】
すなわち、直交する第1ローカル信号および第2ローカル信号の周波数が、第1周波数値とは異なる第2周波数値に設定された場合を想定したとき、第2周波数値よりも中間周波数値だけ高い周波数である第3信号および第2周波数値よりも中間周波数値だけ低い周波数である第4信号の少なくとも一方の周波数が、受信済みの信号の周波数と不一致であるという条件が満足される場合に、制御部は、ローカル周波数を、第1周波数値から第2周波数値に切り換え、そして、第1期間において、所望信号の受信を行い、続いて、第2期間において、所望信号(第1期間においてイメージ信号であった信号)の受信を行う。ここで、「受信済みの信号」とは、具体的には、「その時点より前の受信動作の結果、第1期間で受信された所望信号または第2期間で受信された所望信号」のことであり、「過去の第1期間で受信された所望信号および過去の第2期間で受信された所望信号のいずれか一方(あるいは、少なくとも一方)」と言い換えることもできる。本態様によれば、重複した受信が回避されることから、上述のとおり、ローカル信号の周波数(ローカル周波数)の切り換え回数を、従来の半分とすることができる。
【0024】
なお、このように、一つのローカル周波数毎に2つの所望信号を受信し、受信信号の重複を排除しつつローカル周波数を変更しながら受信を続行する処理を行うと、受信信号を復調して得られる受信データの順番が、通常の受信を行う場合の順番とは異なるが、例えば、ベースバンド信号処理部において、受信データの配列を並び替える等の処理を実施すれば、問題は何ら生じない(例えば、バッファメモリに受信データを格納した後、格納された受信データの読み出し順番を調整することによって、受信データの配列を変更することができる)。
【0025】
(3)本発明の受信回路の他の態様では、前記制御部は、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数を設定した後、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が、設定された周波数に安定するのを待つ期間である周波数安定待ち期間を設け、前記周波数安定待ち期間の後に前記第1期間を設け、前記第1期間の終了後に前記第2期間を設ける。
【0026】
本態様では、ローカル信号(第1ローカル信号および第2ローカル信号)の周波数(ローカル周波数)の切り換えシーケンスの一例を明確化した。すなわち、制御部は、ローカル信号の周波数(ローカル周波数)をある周波数値に設定すると、設定された周波数に安定するのを待つ期間である周波数安定待ち期間を設け、周波数安定待ち期間の後に第1期間を設け、第1期間の終了後に第2期間を設けるという一連のシーケンスを実行し、必要に応じて、その一連のシーケンスを繰り返し実行する。本態様によれば、ローカル信号の周波数が安定化した状態で、2つのチャンネルの信号を連続的に受信することから、従来に比べて、周波数安定待ち時間が1/2となり、よって、利用しようとする通信の通信帯域に含まれる複数のチャンネルについて、イメージ抑圧受信を行う場合の必要時間を短縮することができる。
【0027】
(4)本発明の受信回路の他の態様では、前記制御部は、前記受信回路の動作期間が終了すると前記受信回路を待機期間に移行させ、前記待機期間が終了すると前記受信回路を前記動作期間に復帰させ、前記移行および前記復帰の各動作を繰り返し実行し、かつ、前記ミキサー回路および前記イメージ抑圧回路が、前記動作期間において動作状態となり、前記待機期間において低消費電力状態となるように制御する。
【0028】
本態様では、受信回路は常に動作状態にあるのではなく、動作期間にのみ動作し、動作期間が終了すると受信回路は待機状態に移行する。例えば、受信回路は、比較的短い動作期間の後、比較的長い待機期間に移行し、受信動作の必要が生じると待機状態(待機モード)から動作状態(動作モード)に復帰する。つまり、本態様では、受信回路は、間欠的に動作状態となる。待機状態では、例えば、受信回路中の少なくとも一つの回路が非動作状態となり、消費電力が低減される。消費電力の削減のためには、待機状態において、受信回路の常時動作が必要な一部の回路を除いて、他の回路の全部を非動作状態とするのが好ましい。
【0029】
例えば、第1回目の動作期間においてチャンネルサーチ(例えば、空きチャンネル探索のため)が実行され、そのチャンネルサーチが短時間で終了すれば、受信回路の動作時間を少なくすることができ、受信回路を待機状態に移行させるタイミングが早められることから、その分、受信回路の消費電力を抑制することができる。例えば、受信回路が、ボタン型電池(コイン型電池等)をバッテリーとする携帯用端末(例えばPDA等の携帯電子機器)に搭載される場合、電池の長寿命化が厳しく求められる。本態様によれば、受信回路(ひいては電子機器)の低消費電力化が実現され、よって、ユーザの要請に応えることができる。
【0030】
(5)本発明の受信回路の他の態様では、前記ミキサー回路は、前記前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号を生成するローカル信号生成回路と、前記受信信号に対応する前記入力信号に前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号のいずれか一方をミキシングするための第1ミキサーと、前記受信信号に対応する前記入力信号に前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号のいずれか他方をミキシングするための第2ミキサーと、前記第1ローカル信号を前記第1ミキサーに供給し、かつ前記第2ローカル信号を前記第2ミキサーに供給する第1ローカル信号供給経路と、前記第2ローカル信号を前記第1ミキサーに供給し、かつ前記第1ローカル信号を前記第2ミキサーに供給する第2ローカル信号供給経路と、を切り換える第1経路切換器と、を有し、前記制御部は、前記第1期間においては、前記第1経路切換器を、前記第1ローカル信号供給経路および前記第2ローカル信号供給経路のいずれか一方に切り換え、前記第2期間においては、前記第1経路切換器を、前記第1ローカル信号供給経路および前記第2ローカル信号供給経路のいずれか他方に切り換える。
【0031】
本態様では、第2期間において、第1期間ではイメージ信号とされていた信号を所望信号として受信するために、ローカル信号の供給経路に第1経路切換器(ローカル信号のための経路切り換え用スイッチ)を設ける。第1ローカル信号および第2ローカル信号の経路が切り換わるということは、結果的に、イメージ抑圧回路の2つの入力ノードに供給される、互いに直交する2つの中間周波数信号が入れ替わることを意味し、これによって、第2期間において、第1期間ではイメージ信号とされていた信号を所望信号として受信することができる。なお、第1経路切換器の「第1」という序数は、他の態様において用いられる経路切換器と区別するために便宜上、用いられる。
【0032】
中間周波数信号(IF信号)に含まれる所望信号成分とイメージ信号成分は、複素位相平面(直交するI軸およびQ軸の各々を実数軸および虚数軸に対応させた位相平面)において、互いに直交するベクトル(つまり、内積が零となる関係にあるベクトル)として区別され、各ベクトルは、実数成分が同じで虚数成分の符号が異なる共役複素数の関係にある。イメージ抑圧回路は、例えば、その虚数成分の符号の相違を利用して、イメージ信号成分を除去する。
【0033】
つまり、中間周波数信号(実空間におけるIF信号:実数軸のみのIF信号)のままでは、イメージ信号成分と所望信号成分の区別がつかないため、直交ミキサー(複素ミキサー:半複素ミキサーまたは全複素ミキサーのいずれも可)を用いて、中間周波数信号(IF信号)を、直交するI信号(インフェーズ信号)成分とQ信号(クォドラチャ信号)成分に区別して複素中間周波数信号(複素IF信号)を生成する。そして、複素位相平面上で、複素演算によってイメージ成分を抑圧する。具体的には、例えば、I信号成分(実数軸成分)とQ信号成分(虚数軸成分)の各々に異なる位相シフト処理を施し、その後に、I信号成分とQ信号成分を合成して、実数軸成分のみのIF信号に戻す。このとき、イメージ信号成分の実数軸成分と虚数軸成分は位相が180°ずれていることから打ち消し合い、よって信号振幅が抑圧され、一方、所望信号成分については、実数軸成分と虚数軸成分が同相であることから抑圧が生じない。このようにして、イメージ信号成分が抑圧された、所望信号成分(の実数軸成分)のみの中間周波数信号が得られる。
【0034】
ここで、イメージ抑圧回路に供給される2つの直交する信号(I信号とQ信号)を、第2期間において入れ換えると、上記の同様の処理によって、今度は、第1期間においてイメージ信号成分とみなされていた信号成分が抑圧されることなく出力され、第1期間において所望信号成分とみなされていた信号成分が抑圧されて信号振幅が抑えられる。
【0035】
このようにして、本態様によれば、簡単な構成によって、ローカル信号(第1ローカル信号および第2ローカル信号)の周波数がある周波数値に設定されている状態で、2つのチャンネル(2つの所望信号:周波数領域の周波数軸上で正の周波数側にある第1の所望信号と負の周波数側にある第2の所望信号の2つの所望信号)の受信を連続して行う、という新規な受信処理を、効率的に実現することができる。
【0036】
(6)本発明の受信回路の他の態様では、前記ミキサー回路と前記イメージ抑圧回路との間に設けられた第2経路切換器を有し、前記第2経路切換器は、前記ミキサー回路から出力される前記第1中間周波数信号を前記イメージ抑圧回路の第1入力ノードに供給し、かつ、前記ミキサー回路から出力される前記第2中間周波数信号を前記イメージ抑圧回路の第2入力ノードに供給する第1中間周波数信号供給経路と、前記ミキサー回路から出力される前記第2中間周波数信号を前記イメージ抑圧回路の第1入力ノードに供給し、かつ、前記ミキサー回路から出力される前記第1中間周波数信号を前記イメージ抑圧回路の前記第2入力ノードに供給する第2中間周波数信号供給経路と、を切り換え、前記制御部は、前記第1期間においては、前記第2経路切換器を、前記第1中間周波数信号供給経路および前記第2中間周波数信号供給経路のいずれか一方に切り換え、前記第2期間においては、前記第2経路切換器を、前記第1中間周波数信号供給経路および前記第2中間周波数信号供給経路のいずれか他方に切り換える。
【0037】
本態様では、第2期間において、第1期間ではイメージ信号とされていた信号を所望信号として受信するために、ミキサー回路とイメージ抑圧回路との間に第2経路切換器を設ける。つまり、本態様では、第2期間において、第2経路切換器によって、ミキサー回路からイメージ抑圧回路に供給される、2つの互いに直交する信号の経路を入れ換える。これによって、上述のとおり、第2期間において、第1期間ではイメージ信号とされていた信号を所望信号として受信することができる。
【0038】
(7)本発明の受信回路の他の態様では、前記イメージ抑圧回路は、前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号のいずれか一方を受ける第1入力ノードと、前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号のいずれか他方を受ける第2ノードと、入力信号の位相を90°シフトして出力する第1信号処理経路と、入力信号の位相のシフトを行わずに出力する第2信号処理経路と、前記第1信号処理経路の信号と前記第2信号処理経路の信号とを合成する合成器と、前記第1入力ノードからの信号を受ける信号経路を、前記第1信号処理経路および前記第2信号処理経路のいずれか一方とし、前記第2入力ノードからの信号を受ける信号経路を、前記第1信号処理経路および前記第2信号処理経路のいずれか他方とする第1回路構成と、前記第1入力ノードからの信号を受ける信号経路を、前記第1信号処理経路および前記第2信号処理経路のうちの前記いずれか他方とし、前記第2入力ノードからの信号を受ける信号経路を、前記第1信号処理経路および前記第2信号処理経路のうちの前記いずれか一方とする第2回路構成とを、切り換えるスイッチ回路と、を有し、前記制御部は、前記第1期間においては、前記スイッチ回路を、前記第1回路構成および前記第2回路構成のいずれか一方に切り換え、前記第2期間においては、前記スイッチ回路を、前記第1回路構成および前記第2回路構成のいずれか他方に切り換える。
【0039】
本態様では、イメージ抑圧回路の内部の回路構成を、第1期間と第2期間の各々に対応させて切り換える。上述のとおり、イメージ抑圧回路は、例えば、直交する2つの中間周波数信号を受け、一方の信号に対して位相を90°シフトさせる処理を実行し、他方の信号に対しては位相をそのままにするという信号処理を実行し、各信号を合成する。ここで、一方の信号に対して位相を90°シフトさせる処理を行う処理経路を第1信号処理経路とし、他方の信号に対して位相をシフトさせずに通過させる処理経路を第2信号処理経路とする。
【0040】
第1期間において、例えば、第1入力ノードの信号を第1信号処理回路が受け、第2入力ノードの信号を第2信号処理経路が受けるとする(第1回路構成)。次の第2期間においては、第2入力ノードの信号を第1信号処理回路が受け、第1入力ノードの信号を第2信号処理経路が受けるように変更する(第2回路構成)。
【0041】
このように、本態様では、第1期間では、第1回路構成または第2回路構成のいずれか一方を採用し、第2期間ではいずれか他方を採用するように、回路の内部構成を切り換える。このことは、イメージ抑圧回路に入力する2つの信号を、第1期間と第2期間に対応させて入れ換えたのと同じことである。よって、上述の(5)および(6)の態様と同様に、第2期間において、第1期間ではイメージ信号とされていた信号を所望信号として受信することができる。
【0042】
(8)本発明の受信回路の他の態様では、前記イメージ抑圧回路は、複素バンドパスフィルター回路である。
【0043】
イメージ信号の抑圧原理は上述のとおりであるが、実際の中間周波数信号には、所望信号成分およびイメージ信号成分の他、無数の周波数成分の信号が含まれることから、バンドパスフィルター回路によって帯域を制限し、不要な周波数成分の信号を除去する必要がある。そこで、本態様では、イメージ信号成分の抑圧(ならびに不要な信号成分の除去)のために、複素バンドパスフィルターを用いる。つまり、直交ミキサー(複素ミキサー)によって複素化された中間周波数信号から不要成分を除去するために、複素バンドパスフィルターを用いる。
【0044】
複素バンドパスフィルターは、例えば、2つのローパスフィルターを用いて構成することができる。例えば、上記(7)の例を用いると、第1信号処理経路に第1のローパスフィルターを設け、第2信号処理経路に第2のローパスフィルターを設ければ、各信号経路を通過する信号から、不要な信号成分を除去することができる。つまり、ローパスフィルターの周波数特性は、周波数軸(周波数スペクトルを取り扱う場合の、正の周波数と負の周波数をもつ周波数軸)上では、正負対称に現れるため、バンドパスフィルターとしての特性をもつ。よって、通過帯域の制限が可能である。また、例えば、第1信号処理経路の信号を第2信号処理経路に戻して合成した場合、その合成は、複素演算では、畳み込み積分におけるシフト演算に対応し、周波数軸上では信号周波数のシフト演算となることから、信号の周波数が正の周波数側あるいは負の周波数側にシフトし、したがって、零周波数を中心として対称の位置にある負の周波数側の信号成分、または正の周波数側の信号成分のいずれか一方(つまり、所望信号成分)のみが、ローパスフィルター(実質的にバンドパスフィルター)の帯域制限を受けずに通過することができ、いずれか他方の信号成分(つまりイメージ信号成分)は、フィルタリングによって抑制される。したがって、イメージ信号が抑圧される。
【0045】
複素バンドパスフィルターとしては、例えば、SAWフィルター(表面弾性波フィルタ)等のポリフェーズフィルタ(位相差のある複数の波を生成し、それらを合成して所望の波を生成するフィルター)等も使用することができる。但し、RF段からベースバンド処理段までをすべてIC(集積回路装置)内に納め、外付け部品を用いない、いわゆるオンチップ受信回路(オンチップ受信機)を構成する場合には、フィルター回路は極力簡単な回路構成とするのが好ましく、したがって、例えば、上述のローパスフィルターを用いた一次の複素バンドパスフィルター等を用いることができる。ローパスフィルターとして、例えば、抵抗(R)と容量(C)ならびにアンプを用いたRCアクティブローパスフィルターを用いることができ、このRCアクティブローパスフィルターの回路規模は、ある程度の規模に抑えることができることから、ICに集積することが可能である。
【0046】
(9)本発明の電子機器の一態様は、上記いずれかの受信回路を含む。
【0047】
高速なチャンネルサーチが可能であり、かつ低消費電力に優れた受信回路を備えることによって、電子機器(例えば、ボタン型電池(コイン型電池等)をバッテリーとする携帯用端末(例えばPDA等の携帯電子機器))も、同様の効果を享受することができる。
【0048】
(10)本発明のイメージ抑圧受信方法の一態様では、アンテナで受信された受信信号に対応する入力信号の周波数を、イメージ信号を抑圧しつつ、より低い周波数に変換して中間周波数信号を生成するイメージ抑圧受信方法であって、局部発振回路の発振周波数を第1周波数値に切り換えた後、位相負帰還制御によって前記発振周波数を前記第1周波数値に安定させ、前記局部発振回路の発振信号に基づいて生成される、位相が90°異なる第1ローカル信号および第2ローカル信号の各々を前記受信信号にミキシングして、周波数が変換された第1中間周波数信号および第2中間周波数信号を生成し、前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号の各々をイメージ抑圧回路に入力し、まず、前記受信信号に含まれる前記第1周波数値よりも前記中間周波数値だけ高い周波数の第1信号、および前記受信信号に含まれる前記第1周波数値よりも前記中間周波数値だけ低い周波数の第2信号のうちのいずれか一方をイメージ信号として第1のイメージ抑圧処理を実行し、次に、前記第1信号および前記第2信号のうちのいずれか他方をイメージ信号として第2のイメージ抑圧処理を実行する。
【0049】
本態様のイメージ抑圧受信方法では、ローカル信号の生成の基礎となる局部発振回路の発振周波数を切り換えた(設定した)後、発振周波数の安定を待ち、次に、直交ミキサー(複素ミキサー)によって、RF信号を、複素化された中間周波数信号(IF信号)に変換する。周波数変換(周波数のダウンコンバート)の対象となるRF信号は、例えば、アンテナで受信され、インピーダンス変換処理や増幅処理(さらに、必要に応じて周波数帯域の制限処理)等がなされた後の高周波信号であり、アンテナで受信された受信信号に対応する入力信号ということができる(但し、「受信信号に対応する入力信号」という用語は広義に解釈するものとし、例えば、アンテナで受信されたRF信号そのものを除外するものではない)。
【0050】
このミキシングによる周波数変換に際して、第1期間と第2期間が設けられ、第1期間では、ローカル周波数を基準として実空間上の対称の周波数位置にある2つの信号のうちのいずれか一方を所望信号とみなした受信処理(チューニング)が行われ、第2期間では、いずれか他方を所望信号とみなした受信処理(チューニング)が行われる。
【0051】
本態様のイメージ抑圧受信方法は、例えば、低IF(ローIFあるいはニアゼロIF)方式の受信を行う場合に採用することができる。低IF方式は、高周波信号(RF信号)を、受信処理が容易な、十分に低い周波数の信号に変換する方式であり、IF段をICに納めるのに適した方式である。例えば、ダイレクトコンバージョン(ゼロIF)方式では、周波数変換の対象であるRF信号の周波数とローカル信号の周波数が同じであることから自己ミキシングが生じて、ベースバンド信号のDCレベルが変動する(DCオフセットが生じる)という問題があり、また、ダイレクトコンバージョン方式では、高精度の受信を行うためには高価な部品を使用する必要があり、IF段をICに納めるのには適さない。本態様によれば、例えば、低IF方式を採用した受信回路を用いて、複数のチャンネル(複数の受信信号)を、短時間に効率的に受信することができる。よって、例えば、2.4GHz付近の高周波数帯を通信帯域として使用する近距離無線方式(いわゆるブルートゥース方式)を使用する携帯端末等における受信処理に利用することができる。
【0052】
なお、このように、一つのローカル周波数毎に2つの所望信号を受信し、受信信号の重複を排除しつつローカル周波数を変更しながら受信を続行する処理を行うと、受信信号を復調して得られる受信データの順番が、通常の受信を行う場合の順番とは異なるが、例えば、ベースバンド信号処理部において、受信データの配列を並び替える等の処理を実施すれば、問題は何ら生じない。
【0053】
(11)本発明のイメージ抑圧受信方法の他の態様では、チャンネルサーチを行う場合に、前記局部発振回路の発振周波数を、受信しようとする無線通信の1チャンネルの帯域幅を単位として変化させる発振周波数変更処理を実行し、前記発振周波数を変化させる毎に、前記発振周波数の安定化処理、前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号の生成処理、前記第1のイメージ抑圧処理および前記第2のイメージ抑圧処理を実行し、前記各処理を繰り返し、かつ、前記発振周波数変更処理においては、前記発振周波数が、前記第1周波数値とは異なる第2周波数値に設定された場合に、前記第2周波数値よりも、前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号の周波数である中間周波数値だけ高い周波数である第3信号および前記第2周波数値よりも前記中間周波数値だけ低い周波数である第4信号の少なくとも一方の周波数が、受信済みの信号の周波数と不一致である場合のみ、前記発振周波数を前記第1周波数値から前記第2周波数値に変更する。
【0054】
本態様では、受信信号(受信チャンネル)の重複を回避しつつ複数のチャンネルの受信を実行することを明確化した。ローカル信号の周波数(ローカル周波数)が切り換えられる場合、受信信号(受信チャンネル)の重複が生じないように、ローカル周波数が設定される。よって、本態様のイメージ抑圧受信方法によれば、ローカル周波数の切り換え回数を従来の半分にすることができる。したがって、例えば高速なチャンネルサーチが可能であり、受信回路(通信回路)の消費電力も効果的に低減することができる。
【0055】
(12)本発明のイメージ抑圧受信方法の他の態様では、前記チャンネルサーチは、空きチャンネルサーチである。
【0056】
例えば、近距離無線を利用した受信機(通信機)において、チャネル間の干渉を抑制するために、所定時間毎に利用する通信チャンネルの周波数を変更する周波数ホッピングが実行される場合がある。周波数ホッピングを行うためには、利用している近距離無線の通信帯域中における、その時点の空きチャンネルを高速にサーチし、次のチャンネル周波数(ホッピング先の周波数)を決定する必要がある。また、例えば、近距離通信端末が、通信先のアクセスポイントを切り換えるハンドオーバー時においても、空きチャンネルのサーチが必要となる場合がある。このような場合に、本態様のイメージ抑圧受信方法を利用すれば、イメージ信号を抑制しつつ(つまり、混信による不要輻射を低減しつつ)、高速に空きチャンネルを探索することができる。本態様のイメージ抑圧受信方法は、高速受信が可能で、低消費電力かつ小型(オンチップ受信機搭載)の携帯通信機器の実現に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】無線信号を受信する受信回路を含む無線受信機の要部の構成を示す図
【図2】図1に示される受信回路における受信動作について説明するための図
【図3】ローカル周波数の切り換えタイミングと第1期間および第2期間の切り換えタイミングとの関係、ならびに動作期間と待機期間の関係について説明するための図
【図4】図4(A)〜図4(E)はイメージ抑圧の原理を説明するための図
【図5】図5(A)〜図5(C)は、経路切り換えによる、所望信号とイメージ信号の入れ換えについての説明するための図
【図6】図6(A)〜図6(C)は、イメージ抑圧回路の内部構成の切り換えによる所望信号とイメージ信号の入れ換えについて説明するための図
【図7】図7(A)および図7(B)は複素バンドパスフィルター(複素BPF)の構成と機能を説明するための図
【図8】図8(A)〜図8(C)は、複素バンドパスフィルターの内部回路の構成の切り換えについて説明するための図
【図9】複素アクティブバンドパスフィルター(複素BPF)の具体的な構成の一例を示す回路図
【図10】図10(A)および図10(B)は、受信回路を備える通信機器の一例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0059】
(第1の実施形態)
まず、受信機の全体構成について説明する。
【0060】
(受信回路を含む受信機の回路構成)
図1は、無線信号を受信する受信回路を含む無線受信機の要部の構成を示す図である。無線受信機RXは、アンテナAN1と、受信回路110と、を含む。なお、受信回路110内にアンテナAN1を設けてもよい。
【0061】
受信回路110は、インピーダンス整合器90と、ローノイズアンプ(LNA)100と、を含むことができ、さらに、直交ミキサー(複素ミキサー)CMIXと、イメージ抑圧回路150(ここでは複素バンドパスフィルター(複素BPF)とする)と、リミッタ付きアンプ160と、FSK(周波数シフトキーイング)による変調信号を復調してベースバンド信号を出力する復調部(ここではFSK復調部とする)170と、ベースバンド信号の処理を行い、かつ受信機全体の動作を制御するベースバンド制御部(BB)180と、を含むことができる。なお、本明細書において、ベースバンド制御部(BB)180を、単に制御部ということがある。
【0062】
ここでは、無線受信機RX(受信回路110)は、例えば、CMOS回路や、オンチップインダクター等をワンチップに集積して構成される、オンチップ受信機(IC化された受信機)とすることができる。この場合、無線受信機RX(受信回路110)は、極めて小型であり、かつ極めて低消費電力である(但し、一例であり、この例に限定されるものではない)。無線受信機RXのバッテリーとしては、例えば、ボタン電池(コイン電池等)が使用される。
【0063】
直交ミキサー(複素ミキサー)CMIXは、局部発振器(局部発振回路)120と、位相スプリッタ130と、第1ミキサー140aおよび第2ミキサー140bと、を含む。第1ミキサー140aは、高周波入力信号(入力信号)RFに第1ローカル信号を混合(ミキシング)し、第2ミキサー140bは、高周波入力信号(入力信号)RFに、第1ローカル信号と直交する(つまり、位相が90°ずれている)第2ローカル信号を混合(ミキシング)する。
【0064】
なお、直交ミキサー(複素ミキサー)CMIXと、イメージ抑圧回路(複素バンドパスフィルター等)150とを含む回路は、イメージ抑圧ミキサー回路と呼ばれることがある。また、入力信号RFは、アンテナAN1で受信された受信信号(高周波受信信号)に対して、インピーダンス調整処理や増幅処理(その他、必要に応じて帯域制限処理等がなされる場合もある)等が施された結果として得られる、受信信号に対応する入力信号である。但し、入力信号RFに、アンテナAN1で受信された受信信号を含めて考えることも可能である。
【0065】
また、局部発振器(局部発振回路)120は、例えば、電圧制御発振器(VCO)5およびPLL(フェーズロックトループ)7を備えており、例えば周波数シンセサイザーによってローカル信号の周波数を可変に制御する(この構成は一例であり、この構成に限定されない)。局部発振器120から出力される第1ローカル信号および第2ローカル信号の周波数は、ベースバンド制御部(BB)180から出力される制御信号CTL0によって制御される。
【0066】
なお、図1の直交ミキサー(複素ミキサー)CMIXは、ローカル信号のみが複素化されている半複素ミキサーであるが、RF入力信号を複素化して全複素ミキサーとすることもできる。但し、全複素ミキサーの場合、さらに2つのミキサー(第3ミキサーおよび第4ミキサー)が必要である。
【0067】
また、図1の受信回路110には、第1経路切換器(第1経路切換回路)SW1、第2経路切換器(第2経路切換回路)SW2、第3経路切換器(第3経路切換回路)SW3のいずれか一つが設けられる(図1では、説明の便宜上、3つの経路切換器SW1〜SW3をまとめて記載しているが、実際はいずれか一つが設けられればよい)。
【0068】
第1経路切換器SW1は、図1において、第1経路切換器SW1を通過し、かつ実線で示される第1経路と、第1経路切換器SW1を通過し、かつ点線で示される第2経路とを切り換える。同様に、第2経路切換器SW2は、図1において、第2経路切換器SW2を通過し、かつ実線で示される第3経路と、第2経路切換器SW2を通過し、かつ点線で示される第4経路とを切り換える。
【0069】
また、第3経路切換器SW3が設けられる場合は、図1に示されるとおり、イメージ抑圧回路としての複素バンドパスフィルター(複素BPF)150には、例えば、処理経路Aおよび処理経路Bと、処理経路Bからの信号を処理経路Aの信号に合成するための折り返し経路に設けられる第1インバーターINV1と、第1インバーターINV1の入力ノードと出力ノード間に設けられる切り換えスイッチSW3aと、処理経路Aからの信号を処理経路Bの信号に合成するための折り返し経路に設けられる第2インバーターINV2と、第2インバーターINV2の入力ノードと出力ノード間に設けられる切り換えスイッチSW3bと、合成器(加算器)ADD1およびADD2と、を有する。切り換えスイッチSW3aおよび切り換えスイッチSW3bは相補的にオン/オフされる(つまり、いずれか一方がオン状態であるとき、いずれか他方はオフ状態となるように制御される)。第3経路切換器SW3は、イメージ抑圧回路(複素バンドパフフィルター)150内の内部構成の切り換えのために使用される(この点については後述する)。
【0070】
第1経路切換器SW1の経路切り換え動作は、ベースバンド制御部(BB)180から出力される制御信号CTL1によって制御される。第2経路切換器SW2の経路切り換え動作は、ベースバンド制御部(BB)180から出力される制御信号CTL2によって制御される。第3経路切換器SW3におけるスイッチSW3aおよびスイッチSW3bの各々の切り換え動作は、ベースバンド制御部(BB)180から出力される制御信号CTL3によって制御される。
【0071】
(受信動作の説明)
以下、図2を用いて、図1に示される受信回路における受信動作について説明する。図2は、図1に示される受信回路における受信動作について説明するための図である。
【0072】
図1に示される受信回路110は、ローカル信号LO(第1ローカル信号および第2ローカル信号)の周波数が第1周波数値に設定されている状態で、2つのチャンネル(2つの所望信号)の受信を行う。従来技術では、例えば、受信回路によるチャンネルサーチが行われる場合、実空間上で、ローカル信号の周波数を基準として対称の周波数位置にある2つの信号のうち、いずれか一方を所望信号(目的信号)として受信し、いずれか他方の信号はイメージ信号として抑圧し、次に、ローカル信号の周波数を変化させて、同様に所望信号(目的信号)を受信し、イメージ信号を抑圧するという動作が繰り返し実行されていた。
【0073】
しかし、ローカル信号の周波数が第1周波数値に設定されているときのイメージ信号の周波数が、ローカル信号の周波数が第m周波数値(mは2以上の整数であり、第m周波数値は第1周波数値とは異なる周波数値である)に設定されているときの、(利用しようとする通信方式の通信帯域内における)所望信号の周波数と一致する場合には、ローカル信号が第1周波数に設定されている状態で、所望信号とイメージ信号を入れ換えて、それまでイメージ信号とされていた信号を、所望信号とみなして抑圧せずに受信すれば、ローカル信号の周波数が第m周波数に設定された場合における所望信号の受信を先行的に実施できたことになる。
【0074】
このように、ローカル信号LOの周波数がある周波数値に設定されている状態で、第1期間TAにイメージ信号の抑圧を行いながら所望信号を受信し、第1期間TAに続く第2期間TBでは、イメージ信号と所望信号を入れ換えて、イメージ信号の抑圧を行いながら所望信号を受信する。
【0075】
「イメージ信号と所望信号を入れ換える処理」は、すなわち、ベースバンド制御部(BB)180が、制御信号CTL1〜CTL3のいずれかによって経路切換器SW1〜SW3のいずれかを制御し、経路の切り換えを実行させる処理に対応する。経路の切り換えが行われる前の期間が第1期間TAであり、経路の切り換えが行われた後の期間が第2期間TBである。つまり、本実施形態では、ローカル信号の周波数値を変化させずに、連続的に2つの所望信号を受信する。
【0076】
図2を参照して説明する。図2に示される例では、高周波入力信号RFを2400MHz(つまり、2.4GHz)帯の高周波信号(例えば、短距離無線通信用の周波数帯)とする。また、通信帯域に含まれるチャンネル数は、例えば60以上とする。また、説明の便宜上、一つのチャンネルの帯域(チャンネル帯域幅)は1MHzとし、このチャンネル帯域幅を単位としてローカル信号の周波数を変化させて、複数のチャンネルの各々を受信するものとする。例えば、空きチャンネルサーチのために、全チャンネル(複数のチャンネル)を横断的にサーチする場合を想定する。また、図2では、中間周波数(IF周波数)を1MHzとする。
【0077】
例えば、ローカル信号LOが2406MHzのとき、実空間において、ローカル周波数よりもIF周波数(1MHz)だけ高い周波数位置にある2407MHzのRF入力信号が所望信号(目的信号)とする。この場合、ローカル周波数よりもIF周波数(1MHz)だけ低い周波数位置にある2405MHzのRF入力信号がイメージ信号である。なお、図2において、ローカル周波数よりもIF周波数(1MHz)だけ高い周波数位置にあるRF信号を(H)と記載し、ローカル周波数よりもIF周波数(1MHz)だけ低い周波数位置にあるRF信号を(L)と記載している。
【0078】
従来技術ならば、ローカル信号LOを2406MHzに設定した後、2407MHzの所望信号を抑圧せず、かつ2405MHzのイメージ信号を抑圧して受信し(つまり、イメージ抑圧周波数変換を実行する)、以下、同様に、ローカル信号LOを、2405MHz,2404MHz,2403MHz,2402MHz,2401MHz,2400MHz,2399MHzの順に、順次、切り換えながら信号を受信する。この場合、ローカル周波数を8回切り換える必要がある(2406MHz〜2399MHzまでの8段階にわたる切り換え)。
【0079】
これに対して、本実施形態では、ローカル信号LOを2406MHzに設定した後、第1期間TAでは、2407MHzの所望信号を抑圧せず、かつ2405MHzのイメージ信号を抑圧して受信し、続いて、第2期間TBでは、2407MHzのイメージ信号を抑圧し、かつ2405MHzの所望信号を抑圧せずに受信する。つまり、第1期間と第2期間とでは、所望信号とイメージ信号とが入れ替わっている。次に、ローカル信号LOを2405MHzに設定し、同様に、第1期間TAでは、2406MHzの所望信号を抑圧せず、かつ2404MHzのイメージ信号を抑圧して受信し、続いて、第2期間TBでは、2404MHzの所望信号を抑圧せず、かつ2406MHzのイメージ信号を抑圧して受信する。
【0080】
従来技術ならば、次に、ローカル信号LOが2404MHzに設定されるのであるが、本実施形態の受信方式を採用した場合、この設定は不要である。図2において、「2404」の上に×印が付されているのは、このローカル周波数設定が実行されないことを示している。つまり、ローカル周波数が2404MHzに設定された場合に、第1期間TAでは2405MHzのRF信号が所望信号として受信されることになるが、この2405MHzの信号は、ローカル信号LOが2406MHzに設定されているときの第2期間TBにおいて、すでに受信されている。よって、重複した受信を避けるために、ローカル周波数を2404MHzに設定する動作は実行されない。
【0081】
ローカル信号LOが2403MHzに設定された場合において、第1期間TAにおいて受信される2404MHzの所望信号も、ローカル信号LOが2405MHzに設定されているときの第2期間TBにおいて、すでに受信されている。よって、重複した受信を避けるために、ローカル周波数を2403MHzに設定する動作も実行されない。
【0082】
したがって、ローカル周波数が2402MHzに設定され、第1期間TAにおける所望信号の受信および第2期間TBにおける所望信号の受信が実行される。続いて、ローカル周波数が2401MHzに設定され、第1期間TAにおける所望信号の受信および第2期間TBにおける所望信号の受信が実行される。
【0083】
ローカル信号LOを2400MHzに設定する動作ならびにローカル信号LOを2399MHzに設定する動作は実行されない。ローカル信号LOを2400MHzに設定したときに、第1期間TAにおいて受信される2401MHzの所望信号は、ローカル信号LOが2402MHzに設定されているときの第2期間TBにおいて、すでに受信されているからであり、同様に、ローカル信号LOを2399MHzに設定したときに、第1期間TAにおいて受信される2400MHzの所望信号は、ローカル信号LOが2401MHzに設定されているときの第2期間TBにおいて、すでに受信されているからである。
【0084】
このように、図1のベースバンド制御部(BB)180は、制御信号CTL0によって局部発振器20の発振周波数を制御してローカル信号の周波数(ローカル周波数)を切り換える際に、受信信号(受信チャンネル)の重複が生じないように、ローカル周波数を設定する。
【0085】
すなわち、本実施形態では、まず、ローカル信号(第1ローカル信号および第2ローカル信号)の周波数値を第1周波数値に設定し、第1周波数値よりも中間周波数値だけ高い周波数である第1信号および第1周波数値よりも中間周波数値だけ低い周波数である第2信号のいずれか一方を第1期間に所望信号として受信し、続いて、第2期間において、いずれか他方を受信する。
【0086】
次に、第1周波数値とは異なる第2周波数値に設定された場合を想定したときに、第2周波数値よりも中間周波数値だけ高い周波数である第3信号および第2周波数値よりも中間周波数値だけ低い周波数である第4信号の少なくとも一方の周波数が、受信済みの信号の周波数と不一致であるという条件が満足される場合に、ベースバンド制御部(BB)180は、制御信号CTL0によって局部発振器120の発振周波数を制御して、ローカル周波数を、第1周波数値から第2周波数値に切り換え、そして、第1期間において、所望信号の受信を行い、続いて、第2期間において、所望信号(第1期間においてイメージ信号であった信号)の受信を行い、以下、同様の動作が繰り返される。
【0087】
ここで、「受信済みの信号」とは、具体的には、「その時点より前の受信動作の結果、第1期間で受信された所望信号または第2期間で受信された所望信号」のことであり、「過去の第1期間で受信された所望信号および過去の第2期間で受信された所望信号のいずれか一方(あるいは、少なくとも一方)」と言い換えることもできる。本態様によれば、重複した受信が回避されることから、ローカル信号の周波数(ローカル周波数)の切り換え回数を、従来の半分とすることができる。つまり、図2の例では、使用するローカル周波数は、2406MHz,2405MHz,2402MHz,2401MHzの4つであり、よって、ローカル信号LOの周波数切り換えの回数は4回で済むことになる(従来は8回であったため、ローカル周波数の切り換え回数が半減したことになる)。よって、ローカル信号を発生する局部発振回路120の負担が軽減される。
【0088】
本実施形態の受信方法を採用すると、図2の例の場合、図2の下側に示されるように、8チャンネル(1ch〜8ch)の信号を効率的に受信することができる。なお、一つのローカル周波数毎に2つの所望信号を受信し、受信信号の重複を排除しつつローカル周波数を変更しながら受信を続行すると、受信信号を復調して得られる受信データの順番が、通常の受信を行う場合の順番とは若干異なるが(図2の下側の矢印参照)、例えば、ベースバンド制御部(BB)180内において、受信データの配列を並び替える等の処理を実施すれば、問題は何ら生じない(例えば、バッファメモリに受信データを格納した後、格納された受信データの読み出し順番を調整することによって、受信データの配列を変更することは簡単にできる)。
【0089】
図1の局部発振器120の発振周波数は、例えば、PLL(フェーズロックドループ:位相負帰還制御系)7を用いて高精度に制御されるが、発振信号の周波数が切り換えられる毎に、周波数を安定化させる時間が必要であり、このことが、高速なチャンネルサーチ(つまり、複数のチャンネルの各々の断続的な受信の高速化)の妨げとなっていた(なお、PLLを用いない局部発振器であっても、ローカル周波数を切り換える毎に周波数安定化のための待ち時間を設ける必要があるのは同様である)。
【0090】
本実施形態の受信方式(イメージ抑圧受信方式あるいはイメージ抑圧周波数変換方式)では、ローカル信号の周波数の切り換え回数が従来の半分となることから、周波数切り換えに伴う待ち時間(周波数が安定するのを待つ周波数安定待ち時間)が半分となる。一方、ローカル信号の周波数が固定されている状態で、所望信号とイメージ信号とを切り換える動作は、例えば、所望信号の伝達経路とイメージ信号の伝達経路とを経路切換器(内部スイッチ)で切り換えることにより実現でき(但し、これは一例である)、内部スイッチとしてはトランジスターを用いたスイッチ(トランスファースイッチ等)を用いることができ、スイッチの切り換えに要する時間は、周波数安定待ち時間に比べて格段に短くて済む。よって、本態様によれば、例えば、チャンネルサーチに要する時間を、従来に比べて格段に短縮することができる。
【0091】
また、チャンネルサーチ等が短時間で終了すれば、受信回路110(無線受信機RX)の動作時間を少なくすることができ、待機状態(例えば、必要最小限の回路以外の回路の動作を停止させて消費電力を低減させた状態)への移行タイミングが早められることから、その分、受信回路110の低消費電力化も達成される。例えば、受信回路110を含む通信機(RXの他、送信機TXも含むものとする)が、ボタン型電池(コイン型電池等)をバッテリーとする携帯用端末(例えばPDA等の携帯電子機器)に搭載される場合、電池の長寿命化は特に重要な課題である。本実施形態によれば、受信回路110(ひいては電子機器)の低消費電力化が実現される。
【0092】
また、例えば、上述の経路切換器(スイッチ)を設けて、そのスイッチの切り換えタイミングを適切に処理する等の回路構成の実現は、通常のICでは容易である。つまり、本実施形態の受信回路110の回路構成は比較的簡単であり、実現が容易であり、特に、RF段からベースバンド処理段までをすべてIC(集積回路装置)内に納め、外付け部品を用いない、いわゆるオンチップ受信機への適用が容易である。
【0093】
(ローカル周波数の切り換えタイミングと第1期間および第2期間の切り換えタイミングとの関係の説明)
図3は、ローカル周波数の切り換えタイミングと第1期間および第2期間の切り換えタイミングとの関係、ならびに動作期間と待機期間の関係について説明するための図である。図3の上側の図は、ローカル周波数の切り換えタイミングと第1期間および第2期間の切り換えタイミングとの関係を示し、図3の下側の図は、動作期間と待機期間の関係を示している。
【0094】
図3の上側の図において、TLock(時刻t0〜t1,時刻t3〜t4,時刻t6〜t7,時刻t9〜t10)はローカル周波数の安定待ち期間を示す。例えば、図1のベースバンド制御部(BB)180は、時刻t0において、制御信号CTL0によって局部発振器120の動作を制御して、ローカル信号(第1ローカル信号および第2ローカル信号)の周波数を設定する(切り換える)。図3の例では、ローカル周波数は2406MHzに設定される。次に、時刻t0〜時刻t1までの周波数安定待ち期間(TLock)において、ローカル周波数(第1ローカル信号および第2ローカル信号の周波数)が、設定された周波数に安定するのを待つ。その周波数安定待ち期間TLockの後に第1期間TA(時刻t1〜t2)が設けられる。
【0095】
第1期間TAにおいては、2407MHzのRF入力信号を所望信号とし、2405MHzのRF入力信号をイメージ信号として受信処理(イメージ抑圧周波数変換処理)が実行される。この第1期間TAにおいては、経路切換器(図1に示される3つの経路切換器SW1〜SW3のいずれか)が、第1期間に対応した経路に切り換えられている。この経路切り換え動作は、ベースバンド制御部(BB)180から出力される制御信号CTL1〜CTL3のいずれかによって制御される。
【0096】
第1期間TAの終了後に第2期間(時刻t2〜時刻t3)が設けられる。第2期間TBにおいては、2405MHzのRF入力信号を所望信号とし、2407MHzのRF入力信号をイメージ信号として受信処理(イメージ抑圧周波数変換処理)が実行される。この第2期間TBにおいては、経路切換器(図1に示される3つの経路切換器SW1〜SW3のいずれか)が、第2期間に対応した経路に切り換えられている。この経路切り換え動作は、ベースバンド制御部(BB)180から出力される制御信号CTL1〜CTL3のいずれかによって制御される。以下、同様の動作(上述の一連の切り換えシーケンス)が繰り返される。
【0097】
図3に示される切り換えシーケンスによれば、ローカル信号LOの周波数が安定化した状態で、2つのチャンネルの信号を連続的に受信することから、従来に比べて、周波数安定待ち時間TLock期間(TLockの通算期間)が1/2に短縮される。よって、利用しようとする通信の通信帯域に含まれる複数のチャンネルについて、イメージ抑圧受信を行う場合の必要時間を大幅に短縮することができる。
【0098】
また、図3の下側の図に示されるように、受信回路110は常に動作状態にあるのではなく、動作期間(Top1,Top2)にのみ動作し、動作期間が終了すると受信回路110は待機期間(Twait1,Twait2)に移行する。図3の上側の図に示される一連の受信シーケンスは、時刻t0〜tX1までの動作期間Top1中において実行される。動作期間Top1が終了すると、受信回路110(受信機RX)は、低消費電力期間である待機期間Twait1に移行する。
【0099】
近距離無線は広範な分野において利用され、利用形態によっては、例えば、24時間に1回だけ、かつごく短い間だけ動作期間となり、例えば目的地点の計測データをアクセスポイントに通信するといった利用態様も考えられる。受信機RXにおける消費電力を極力低減するために、例えば近距離無線の受信回路110(受信機RX)は、必要なときにのみ動作し、その後、待機期間(待機状態)に移行する。例えば、受信回路110は、比較的短い動作期間の後、比較的長い待機期間に移行し、受信動作の必要が生じると待機状態(待機モード)から動作状態(動作モード)に復帰する。つまり、受信回路110(受信機RX)は、間欠的に動作状態となる。待機状態(待機期間Twait1,Twait2における受信回路110の状態)では、例えば、受信回路110中の少なくとも一つの回路が非動作状態となり、消費電力が低減される。消費電力の削減のためには、待機状態において、受信回路110の常時動作が必要な一部の回路を除いて、他の回路の全部を非動作状態とするのが好ましい。
【0100】
例えば、第1回目の動作期間Top1において、上述の一連の切り換えシーケンスが実行されて、チャンネルサーチ(例えば、空きチャンネル探索のため)が実行され、そのチャンネルサーチが短時間で終了すれば、受信回路110の動作時間を少なくすることができ、受信回路110を待機状態に移行させるタイミング(ここでは時刻tX1)を早められることから、その分、受信回路110の消費電力を抑制することができる。例えば、受信回路110が、ボタン型電池(コイン型電池等)をバッテリーとする携帯用端末(例えばPDA等の携帯電子機器)に搭載される場合、電池の長寿命化が厳しく求められる。本態様によれば、受信回路(ひいては電子機器)の低消費電力化が実現され、よって、ユーザの要請に応えることができる。
【0101】
(イメージ抑圧の原理)
図4(A)〜図4(E)はイメージ抑圧の原理を説明するための図である。図4(A)に示すように、実空間の周波数軸上で、ローカル信号LOの周波数(ローカル周波数)を中心として、中間周波数値IFだけ高い周波数の信号を第1信号RF(H)とし、中間周波数値IFだけ低い周波数の信号を第2信号RF(L)とする。第1信号RF(H)および第2信号RF(L)のいずれか一方が所望信号であり、いずれか他方がイメージ信号である。
【0102】
実数ミキサー(実数成分のみのローカル信号を乗算するミキサー)でRF信号をミキシングダウン(ダウンコンバート)すると、図4(B)に示すように、第1信号RF(H)は中間周波数信号IF(H)に変換され、第2信号RF(L)は中間周波数信号IF(L)に変換されるが、IF(H)とIF(L)は同じ周波数であることから区別できず、よって、混信が生じ、不要輻射等が問題となる場合がある。したがって、イメージ信号の抑圧が必要となる。
【0103】
図4(C)に示すように、実空間における中間周波数信号IF(時間軸上の中間周波数信号IF)は、一つのベクトルIF(V)の振動(回転)として解析することが可能であり、このベクトルIF(V)は、複素位相平面(直交するI軸とQ軸で定義される位相平面であり、I軸をガウス平面における実数軸に対応させ、Q軸を虚数軸に対応させた位相平面)において、互いに直交する2つのベクトル(つまり、2つのベクトルIF(H)複とIF(L)複)に分解することができる。ベクトルIF(H)複は時計方向と反対に振動する正の周波数の信号に対応し、IF(L)複は時計方向に振動する負の周波数の信号に対応する。2つのベクトルIF(H)複とIF(L)複は、実数成分が同じで虚数成分の符号が異なる共役複素数の関係にある。イメージ抑圧回路150は、その虚数成分の符号の相違を利用して、例えば複素演算によってイメージ信号成分を除去する。
【0104】
つまり、中間周波数信号(実空間におけるIF信号:実数軸のみのIF信号)のままでは、イメージ信号成分と所望信号成分の区別がつかない。よって、図4(D)に示すように、直交ミキサー(複素ミキサー:半複素ミキサーまたは全複素ミキサーのいずれも可)を用いて、位相が90°ずれている第1ローカル信号および第2ローカル信号を入力信号に乗算して、直交するI信号(インフェーズ信号)成分とQ信号(クォドラチャ信号)成分をもつ複素中間周波数信号(複素IF信号)を生成する。例えば、ここでいうI信号(IF(I))は第1の中間周波数信号であり、Q信号(IF(Q))は第2の中間周波数信号である。
【0105】
イメージ抑圧回路150は、位相シフト量が零である信号処理経路Aと、位相シフト量が90°(+90°あるいは−90°)である信号処理経路Bと、合成器(加算器)60と、を有している。つまり、信号処理経路Aには0°の位相シフト回路40が設けられ、信号処理経路Bには、90°の位相シフト回路50が設けられていることになる。
【0106】
イメージ抑圧回路150は、I信号成分(実数軸成分)とQ信号成分(虚数軸成分)の各々に異なる位相シフト処理を施し(いずれか一方の位相を90°シフトさせ、いずれか他方については位相シフトを行わない)、その後に、I信号成分とQ信号成分を合成して、実数軸成分のみのIF信号に戻す。このとき、イメージ信号成分におけるI信号成分とQ信号成分は位相が180°ずれていることから打ち消し合い、よって信号振幅が抑圧され、一方、所望信号成分については、I信号成分とQ信号成分が同相であることから抑圧が生じない。I信号成分とQ信号成分が同相であるということはQ信号成分(虚数軸成分)が零であることを意味し、よって、I信号成分とQ信号成分を合成(加算)した後の中間周波数信号は実数の中間周波数信号に戻ったことになる。このようにして、イメージ信号成分が抑圧された、所望信号成分(の実数軸成分)のみの中間周波数信号(つまり、イメージ成分が抑圧された第3の中間周波数信号)が得られる。
【0107】
イメージ信号成分の抑圧の手順を図4(E)に示す。図4(E)では、実線の矢印で示されるIF(H)が所望信号成分であり、点線の矢印で示されるIF(L)がイメージ信号成分であるとする。
【0108】
複素化された中間周波数信号IF(H)複,IF(L)複の各々の実数軸成分IF(H)実と、IF(L)実は、図4(E)のE−1に示すようにI軸上において、同じ向きに位置する。一方、虚数軸成分IF(H)虚と、IF(L)虚は、虚数成分の符号が逆であることから、図4(E)のE−2に示すようにQ軸上において、互いに逆向きに位置する。実数軸成分であるIF(H)実とIF(L)実は、信号処理経路Aを通過することから、位相シフトを受けずに出力される。よって、信号処理経路Aを通過後には、E−3に示す状態となる。一方、虚数軸成分IF(H)虚とIF(L)虚は、信号処理経路Bを通過することから、90°の位相シフトを受けて出力される。よって、信号処理経路Bを通過後には、E−4に示す状態となる。そして、E−3に示される信号成分と、E−4に示される対応する信号成分同士を加算すると、IF(L)実とIF(L)虚は向きが逆であることから相殺される。一方、IF(H)実とIF(H)虚は、同相であることから相殺されない。IF(H)実とIF(H)虚が同相であるということは、虚数軸成分が零であることを意味し、よって、合成によって、イメージ成分が抑圧された、実数成分のみのIF(H)実が得られたことになる(E−5の状態)。
【0109】
(経路切り換えによる、所望信号とイメージ信号の入れ換えについての説明)
図1を用いて説明したように、受信回路110には、第1経路切換器(第1経路切換回路)SW1と、第2経路切換器(第2経路切換回路)SW2と、第3経路切換器(第3経路切換回路)SW3のいずれか一つが設けられる。なお、例えば、第1経路切換器の「第1」という序数は、他の経路切換器と区別するために便宜上、用いられる。
【0110】
図5(A)〜図5(C)は、経路切り換えによる、所望信号とイメージ信号の入れ換えについての説明するための図である。図5(A)は、第1経路切換器SW1が設けられている場合の受信回路110の構成を示す。なお、イメージ抑圧回路150の内部構成は、図4で説明した構成と同じである。第1経路切換器SW1は、第1ローカル信号LOと、位相が90°ずれている(つまり直交している)第2ローカル信号LO(π/2)とを入れ換える働きをする。
【0111】
図5(A)に示されるように、2つの入力端子Q1a,Q2aと、2つの出力端子Q3a,Q4aを有する。例えば、第1期間においては、入力端子Q1aと出力端子Q3aが接続され、入力端子Q2aと出力端子Q4aが接続される。図中、点線の矢印で示される経路が第1期間における第1ローカル信号供給経路である。第2期間においては、例えば、入力端子Q1aと出力端子Q4aが接続され、入力端子Q2aと出力端子Q3aが接続される。図中、実線の矢印で示される経路が第2期間における第2ローカル信号供給経路である。
【0112】
図5(B)は、第2経路切換器SW2が設けられている場合の受信回路110の構成を示す。なお、イメージ抑圧回路150の内部構成は、図4で説明した構成と同じである。第2経路切換器SW2は、第1中間周波数信号(IF(I))と、位相が90°ずれている(つまり直交している)第2中間周波数信号(IF(Q))とを、入れ換える働きをする。
【0113】
図5(B)に示されるように、2つの入力端子Q1b,Q2bと、2つの出力端子Q3b,Q4bを有する。例えば、第1期間においては、入力端子Q1bと出力端子Q3bが接続され、入力端子Q2bと出力端子Q4bが接続される。図中、点線の矢印で示される経路が第1期間における第1中間周波数信号供給経路である。第2期間においては、例えば、入力端子Q1bと出力端子Q4bが接続され、入力端子Q2bと出力端子Q3bが接続される。図中、実線の矢印で示される経路が第2期間における第2中間周波数信号供給経路である。
【0114】
図5(A)および図5(B)の回路構成が採用される場合、第1期間と第2期間とでは、イメージ抑圧回路150に入力される2つの信号が入れ換わっており、この点では共通である。第1期間におけるイメージ成分の抑圧の手順は、図4(E)を用いて説明したとおりである。第2期間におけるイメージ成分の抑圧の手順が図5(C)に示される。図5(C)では、実線の矢印で示されるIF(H)がイメージ信号成分であり、点線の矢印で示されるIF(L)が所望信号成分であるとする。
【0115】
複素化された中間周波数信号IF(H)複,IF(L)複の各々の虚数軸成分IF(H)虚と、IF(L)虚は、図5(C)のC−1に示すようにQ軸上において、虐向きに位置する。一方、実数軸成分IF(H)実と、IF(L)実は、C−2に示すようにI軸上において同じ向きに位置する。虚数軸成分であるIF(H)虚とIF(L)虚は、信号処理経路Aを通過することから、位相シフトを受けずに出力される。よって、信号処理経路Aを通過後には、C−3に示す状態となる。一方、実数軸成分IF(H)実とIF(L)実は、信号処理経路Bを通過することから、90°の位相シフトを受けて出力される。よって、信号処理経路Bを通過後には、C−4に示す状態となる。そして、C−3に示される信号成分と、C−4に示される対応する信号成分同士を加算すると、IF(H)実とIF(H)虚は向きが逆であることから相殺される。一方、IF(L)実とIF(L)虚は、同相であることから相殺されない。IF(L)実とIF(L)虚が同相であるということは、虚数軸成分が零であることを意味し、よって、合成によって、イメージ成分が抑圧された、実数成分のみのIF(L)実が得られたことになる(C−5の状態)。
【0116】
このようにして、第2期間においては、第1期間において抑圧されていたIF(L)を、抑圧せずに、所望信号に対応する中間周波数信号(IF(L)実)として出力することができる。
【0117】
図6(A)〜図6(C)は、イメージ抑圧回路の内部構成の切り換えによる所望信号とイメージ信号の入れ換えについて説明するための図である。図6(A)では、イメージ抑圧回路150の第1入力ノードTA1は、信号処理経路A(第1信号処理経路)に接続されており、第2入力ノードTA2は、信号処理経路B(第2信号処理経路)に接続されている。図6(A)の内部回路構成を第1回路構成とする。図6(B)では、イメージ抑圧回路150の第1入力ノードTA1は、信号処理経路B(第2信号処理経路)に接続されており、第2入力ノードTA2は、信号処理経路A(第1信号処理経路)に接続されている。図6(B)の内部回路構成を第2回路構成とする。
【0118】
第1期間では、図6(A)に示される第1回路構成が採用され、第2期間では、図6(B)に示される第2回路構成が採用される。図6(A)の第1回路構成におけるイメージ成分の抑圧の手順は、図4(E)を用いて説明したとおりである。
【0119】
図6(C)を用いて、第2期間におけるイメージ成分の抑圧の手順を説明する。複素化された中間周波数信号IF(H)複,IF(L)複の各々の実数軸成分IF(H)実と、IF(L)実は、図6(a)のC−1に示すようにI軸上において同じ向きに位置する。一方、虚数軸成分IF(H)虚と、IF(L)虚は、虚数成分の符号が逆であることから、C−2に示すようにQ軸上において、互いに逆向きに位置する。
【0120】
図6(B)に示される第2回路構成が採用される場合、実数軸成分であるIF(H)実とIF(L)実は、信号処理経路Bを通過することから、位相が90°シフトされる。よって、信号処理経路Bを通過した後には、C−3に示す状態となる。一方、虚数軸成分IF(H)虚とIF(L)虚は、信号処理経路Aを通過することから、位相シフトを受けずに出力される。よって、信号処理経路Aを通過した後には、C−4に示す状態となる。そして、C−3に示される信号成分と、C−4に示される対応する信号成分同士を加算すると、IF(H)実とIF(H)虚は向きが逆であることから相殺される。一方、IF(L)実とIF(L)虚は、同相であることから相殺されない。IF(L)実とIF(L)虚が同相であるということは、虚数軸成分が零であることを意味し、よって、合成によって、イメージ成分が抑圧された、実数成分のみのIF(L)実が得られたことになる(C−5の状態)。
【0121】
このように、第1期間では、第1回路構成または第2回路構成のいずれか一方を採用し、第2期間ではいずれか他方を採用することによって、イメージ抑圧回路150の内部構成の切り換えが実行され、結果的に、所望信号とイメージ信号を入れ換えて処理することができる。イメージ抑圧回路150の内部構成を切り換えることは、イメージ抑圧回路150に入力する2つの信号を、第1期間と第2期間に対応させて入れ換えたのと同じことである。よって、第1期間ではイメージ信号とされていた信号を所望信号として受信することができる。図6(C)の例では、第2期間において、第1期間において抑圧されていたIF(L)を、抑圧せずに、所望信号に対応する中間周波数信号(IF(L)実)として出力することができる。
【0122】
(複素バンドパスフィルターについての説明)
図1を用いて説明したように、イメージ抑圧回路150としては、複素バンドパスフィルター(複素BPF)を用いることができる。以下、図7〜図9を用いて、複素バンドパスフィルターについて説明する。
【0123】
イメージ信号の抑圧原理は上述のとおりであるが、実際の中間周波数信号には、所望信号成分およびイメージ信号成分の他、無数の周波数成分の信号が含まれることから、バンドパスフィルター回路によって帯域を制限し、不要な周波数成分の信号を除去する必要がある。そこで、イメージ信号成分の抑圧(ならびに不要な信号成分の除去)のために、複素バンドパスフィルターを用いることができる。つまり、直交ミキサー(複素ミキサー)によって複素化された中間周波数信号から不要成分を除去するために、複素バンドパスフィルター(複素BPF)を用いることができる。
【0124】
複素バンドパスフィルター(複素BPF)は、例えば、2つのローパスフィルター(LPF)を用いて構成することができる。例えば、図4〜図6に示したイメージ抑圧回路150の構成の場合、信号処理経路A(第1信号処理経路)に第1のローパスフィルターを設け、信号処理経路B(第2信号処理経路)に第2のローパスフィルターを設ければ、各信号経路を通過する信号から、不要な信号成分を除去することができる。つまり、ローパスフィルターの周波数特性は、周波数軸(周波数スペクトルを取り扱う場合の、正の周波数と負の周波数をもつ周波数軸)上では、正負対称に現れるため、バンドパスフィルターとしての特性をもつ。よって、通過帯域の制限が可能である。また、例えば、第1信号処理経路の信号を第2信号処理経路に戻して合成した場合、その合成は、複素演算(畳み込み積分)におけるシフト演算となり、周波数軸上では信号周波数のシフト演算となることから、信号の周波数が正の周波数側あるいは負の周波数側にシフトし、したがって、零周波数を中心として対称の位置にある負の周波数側の信号成分、または正の周波数側の信号成分のいずれか一方(つまり、所望信号成分)のみが、ローパスフィルター(実質的にバンドパスフィルター)の帯域制限を受けずに通過することができ、いずれか他方の信号成分(つまりイメージ信号成分)は、フィルタリングによって抑制される。したがって、イメージ信号が抑圧される。ここで、所望信号成分とイメージ信号成分の周波数値を周波数軸上で固定して考えた場合には、シフト演算によって、複素バンドパスフィルターの中心帯域が正の周波数側または負の周波数側にシフトしたとみることができる。このようにして、複素バンドパスフィルター(複素BPF)によって、イメージ抑圧が可能である。
【0125】
図7(A)および図7(B)は複素バンドパスフィルター(複素BPF)の構成と機能を説明するための図である。図7(A)は、1次の複素バンドパスフィルター(1次複素BPF)の伝達関数を示す図であり、図7(B)は、複素バンドパスフィルターのフィルタリング機能を示す図である。
【0126】
図7(A)の複素バンドパスフィルターは、1次の遅延素子15と、遅延素子15についての帰還経路(d)と、遅延素子17と、遅延素子17についての帰還経路(d)と、合成回路(加算回路)ADD1およびADD2と、ノードN10の信号を、位相をシフトせずにADD2に供給する信号経路(C)と、ノードN20の信号を、位相を180°シフトしてADD1に供給する信号経路(−C)と、を有する。1次の遅延素子15および遅延素子15についての帰還経路(d)をもつ回路構成は、例えば、オペアンプとRCフィルターを用いたRCアクティブローパスフィルターとして実現することができる。また、遅延素子17と、遅延素子17についての帰還経路(d)をもつ回路構成は、同様に、例えば、オペアンプとRCフィルターを用いたRCアクティブローパスフィルターとして実現することができる。
【0127】
上側の信号処理経路が、位相シフトを行わない信号処理経路A(第1信号処理経路)であり、下側の信号処理経路が、90°の位相シフトを行う信号処理経路B(第2信号処理経路)である。図4(D),図5(A),図6(A),図6(B)に示される加算器60は、図7(A)のADD1に対応する。また、図7(A)のADD1は、図4(D),図5(A),図6(A),図6(B)に示される位相シフト量零の位相シフト回路40にも相当し、また、図7(A)のADD2は、図4(D),図5(A),図6(A),図6(B)に示される位相シフト量が90°の位相シフト回路50に相当する。
【0128】
つまり、2つの入力信号IinとQinは互いに位相が90°ずれている。仮に、信号処理経路Aで位相シフトがないとすると、Iinと同相の信号が、ノードN10および経路(C)を経由してADD2に供給され、ADD2にて、そのIinと同相の信号がQinと加算される。周波数軸上では、この処理は、位相のシフト処理に対応することから、入力信号Qinの位相は90°シフトされることになる。よって、下側の経路は、位相を90°シフトする信号処理経路Bである。入力信号Qinの位相が90°シフトされたということは、Iinの位相を基準とすると位相が180°シフトされたことになる。ノード20からADD1に経路(−C)を経由して供給される信号は、さらに180°の位相シフトを受ける(符号がマイナスであるということは、位相が180°シフトされることを意味する)。よって、ノード20からADD1に経路(−C)を経由して供給される信号の位相は、Iinの位相を基準として360°シフトしていることになり(180°+180°=360°)、よって、ADD1では、Iinと同相の信号が加算されることになり、位相のシフトが生じない。よって、上側の経路は、位相シフト量が零の信号処理経路A(第1信号処理経路)ということになる。そして、先に説明したように、ADD1による加算処理によって、イメージ信号成分の実数軸成分と虚数軸成分とが相殺されて、イメージ信号成分の振幅が抑圧される。
【0129】
先に説明したように、実空間における波の合成は、周波数領域における複素演算(畳み込み積分)におけるシフト演算となる。この結果、図7(B)では、周波数軸上において、複素バンドパスフィルターの通過帯域が、例えば、正の周波数側にシフトしている。これによって、イメージ信号成分IF(L)を抑圧しつつ、所望信号成分IF(H)のみを通過させることができる。図7(A)において、信号経路(C)と、信号経路(−C)とを入れ換えれば、信号処理経路Aと信号処理経路Bとが入れ替わる。よって、この場合には、周波数軸上において、複素バンドパスフィルターの通過帯域が、負の周波数側にシフトする。したがって、この場合には、イメージ信号成分IF(H)を抑圧しつつ、所望信号成分IF(L)のみを通過させることができる。
【0130】
図8(A)〜図8(C)は、複素バンドパスフィルターの内部回路の構成の切り換えについて説明するための図である。図8(A)と図8(B)とでは、信号経路(C)と、信号経路(−C)とが入れ換えられている。図8(A)の回路構成が、図6(A)に示される第1回路構成に対応し、図8(B)の回路構成が、図6(B)に示される第2回路構成に対応する。
【0131】
信号経路(C)と信号経路(−C)の入れ換えは、例えば、図8(C)に示すように、第1インバーターINV1と、第1インバーターの入力ノードと出力ノードとの間に設けられる第1スイッチSW3aと、第2インバーターINV2と、第2インバーターの入力ノードと出力ノードとの間に設けられる第2スイッチSW3bと、を設けることによって実現することができる。第1スイッチSW3aと第2スイッチSW3bとは相補的にオン/オフされる。第1スイッチSW3aがオンした場合、第1インバーターINV1による位相反転が行われないことから、第1インバーターINV1が設けられている経路が経路(C)となり、第2インバーターINV2が設けられている経路が経路(−C)となる。逆に、第2スイッチSW3bがオンした場合、第2インバーターINV2による位相反転が行われないことから、第2インバーターINV2が設けられている経路が経路(C)となり、第1インバーターINV1が設けられている経路が経路(−C)となる。このようにして、イメージ抑圧回路150(複素バンドパフフィルター)の内部構成を切り換えることができる(但し、図6に示される回路構成は一例であり、この例に限定されるものではない)。
【0132】
(複素アクティブバンドパスフィルターの構成例)
複素バンドパスフィルターとしては、例えば、SAWフィルター(表面弾性波フィルタ)等のポリフェーズフィルタ(位相差のある複数の波を生成し、それらを合成して所望の波を生成するフィルター)等も使用することができる。但し、RF段からベースバンド処理段までをすべてIC(集積回路装置)内に納め、外付け部品を用いない、いわゆるオンチップ受信回路(オンチップ受信機)を構成する場合には、フィルター回路は極力簡単な回路構成とするのが好ましく、したがって、例えば、上述のローパスフィルターを用いた一次の複素バンドパスフィルター等を用いることができる。ローパスフィルターとして、例えば、抵抗(R)と容量(C)ならびにアンプを用いたRCアクティブローパスフィルターを用いることができ、このRCアクティブローパスフィルターの回路規模は、ある程度の規模に抑えることができることから、ICに集積することが可能である。
【0133】
図9は、複素アクティブバンドパスフィルター(複素BPF)の具体的な構成の一例を示す回路図である。なお、図9においては、内部構成を切り換えるために必要な構成(図8(C)に示されるインバーターやスイッチ等)は示されていない。
【0134】
図9の複素アクティブバンドパスフィルター(複素BPF)は、全差動構成の回路であり、入力抵抗R1およびR2と、オペアンプOPA1と、並列に設けられた抵抗R5および容量C1による帰還経路と、並列に設けられた抵抗R6および容量C2による帰還経路と、入力抵抗R3およびR4と、オペアンプOPA2と、並列に設けられた抵抗R11および容量C3による帰還経路と、並列に設けられた抵抗R12および容量C3による帰還経路と、下側の経路の出力信号を上側の経路の入力側に供給する経路(抵抗R7およびR8を有する)と、上側の経路の出力信号を下側の経路の入力側に供給する経路(抵抗R9およびR10を有する)と、を有する。なお、図9の複素バンドパスフィルター150では、虚数軸成分の信号であるQout(+),Qout(−)も出力されているが、先に説明したように、本実施形態のイメージ抑圧回路からは、実数軸成分のみの中間周波数を出力するため、これらの信号は不使用である(但し、複素化された中間周波数信号を利用する場合には、Qout(+),Qout(−)も出力される)。
【0135】
(第2の実施形態)
図10(A)および図10(B)は、受信回路を備える通信機器の一例を説明するための図である。第1実施形態で説明した受信回路110は、高速なチャンネルサーチが可能であり、かつ低消費電力に優れている。この受信回路110を電子機器(例えば、ボタン型電池(コイン型電池等)をバッテリーとする携帯用端末(例えばPDA等の携帯電子機器))に搭載すると、同様の効果を享受することができる。
【0136】
図10(A)の例では、近距離無線端末(通信機)500a,500bに受信回路110を含む受信機RXが搭載されている。近距離無線端末(通信機)500a,500bは、例えば、2.4GHz付近の高周波数帯を通信帯域として使用する近距離無線方式(いわゆるブルートゥース方式)を使用する携帯端末である(但し、一例であり、この通信方式に限定されるものではない)。
【0137】
図10(A)の例では、近距離無線用の近距離無線端末(通信機)500a,500bにおいて、例えば、電源オン直後に初期チャンネルサーチが実行される。あるいは、チャネル間の干渉を抑制するために、通信期間中において、所定時間毎に、利用する通信チャンネルの周波数を変更する周波数ホッピングが実行される。
【0138】
初期サーチでは、どのチャンネルが使用可能であるかを確認するために高速に空きチャンネルをサーチする必要がある。また、周波数ホッピングを行うためには、利用している近距離無線の通信帯域中における、その時点の空きチャンネルを高速にサーチし、次のチャンネル周波数(ホッピング先の周波数)を決定する必要がある。
【0139】
また、図10(B)の例では、近距離無線端末500が、通信先のアクセスポイントを、アクセスポイントAP1からアクセスポイントAP2に切り換えるハンドオーバー時において、空きチャンネルのサーチを実行する。この場合に、先に説明したイメージ抑圧受信方法(ローカル信号がある周波数に設定されている状態で、イメージと所望信号を入れ換えて受信する方法)を利用すれば、イメージ信号を抑制しつつ(つまり、混信による不要輻射を低減しつつ)、高速に空きチャンネルを探索することができる。
【0140】
このように、先に説明したイメージ抑圧受信方法は、高速受信が可能で、低消費電力かつ小型(オンチップ受信機搭載)の携帯通信機器の実現に貢献する。
【0141】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、受信回路におけるチャンネルサーチ等に要する時間を格段に短縮することができる。また、例えば、受信回路(および、この受信回路を備える通信機)の消費電力を極めて低減することができる。また、例えば、局部発振器(局部発振回路)の負担を軽減することができる。また、例えば、簡単な回路構成によって、新規なイメージ抑圧受信方法を実現することができる。また、例えば、低IF方式を利用したオンチップ受信機を実現することもできる(これらの効果は同時に得られるとは限らない)。
【0142】
以上、本発明をいくつかの実施形態を用いて説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。例えば、複素ミキサーの回路構成あるいはイメージ抑圧回路の回路構成としては、上述の例の回路構成の他、種々の回路構成を使用することができる。また、上述の例では、近距離無線(短距離無線)を例にとって説明したが、本発明は、広く無線通信の受信機に適用可能である。
【符号の説明】
【0143】
AN1 アンテナ、5 VCO(電圧制御発振器)、7 PLL、
90 インピーダンス整合器、100 ローノイズアンプ、110 受信回路、
120 局部発振器(局部発振回路)、130 位相スプリッタ、
140a,140b 第1ミキサーおよび第2ミキサー、
150 イメージ抑圧回路(例えば複素バンドパスフィルタ)、
160 リミッタ付きアンプ、170 FSK復調部、
180 ベースバンド制御部(BB)、CMIX 直交ミキサー(複素ミキサー)
SW1 第1経路切換器、SW2 第経路切換器、
SW3(SW3a,SW3b) 第3経路切換器、
INV1,INV2 第1インバーターおよび第2インバーター、
ADD1,ADD2 第1加算器(第1合成器)および第2加算器(第2合成器)
CTL0〜CTL3 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信する受信回路であって、
受信信号に対応する入力信号に、第1ローカル信号をミキシングして第1中間周波数信号を生成すると共に、前記入力信号に、前記第1ローカル信号と周波数が同じで、前記第1ローカル信号に対して位相が90°シフトされている第2ローカル信号をミキシングして第2中間周波数信号を生成するミキサー回路と、
前記第1中間周波数信号と前記第2中間周波数信号を受けて、前記入力信号に含まれるイメージ信号が抑圧された第3中間周波数信号を出力するイメージ抑圧回路と、
前記受信回路の動作を制御する制御部と、を含み、
前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号の周波数値を中間周波数値とし、また、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が第1周波数値に設定されている場合に、
前記制御部は、
第1期間においては、前記受信信号に含まれる前記第1周波数値よりも前記中間周波数値だけ高い周波数の第1信号、および前記受信信号に含まれる前記第1周波数値よりも前記中間周波数値だけ低い周波数の第2信号のうちのいずれか一方をイメージ信号として、前記イメージ抑圧回路によるイメージ抑圧が実行されるように前記受信回路を制御し、
第2期間においては、前記第1信号および前記第2信号のうちのいずれか他方をイメージ信号として、前記イメージ抑圧回路によるイメージ抑圧が実行されるように前記受信回路を制御する、
ことを特徴とする受信回路。
【請求項2】
請求項1記載の受信回路であって、
前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が、前記第1周波数値とは異なる第2周波数値に設定された場合に、前記第2周波数値よりも前記中間周波数値だけ高い周波数である第3信号および前記第2周波数値よりも前記中間周波数値だけ低い周波数である第4信号の少なくとも一方の周波数が、受信済みの信号の周波数と不一致であるという条件が満足される場合に、
前記制御部は、
前記第2期間の終了後、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数を、前記第2周波数値に設定し、
前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が前記第2周波数値に設定されているときの第1期間においては、前記第3信号および前記第4信号のうちのいずれか一方をイメージ信号として、前記イメージ抑圧回路によるイメージ抑圧が実行されるように前記受信回路を制御し、
前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が前記第2周波数値に設定されているときの第2期間においては、前記第3信号および前記第4信号のうちのいずれか他方をイメージ信号として、前記イメージ抑圧回路によるイメージ抑圧が実行されるように前記受信回路を制御する、
ことを特徴とする受信回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の受信回路であって、
前記制御部は、
前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数を設定した後、前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号の周波数が、設定された周波数に安定するのを待つ期間である周波数安定待ち期間を設け、前記周波数安定待ち期間の後に前記第1期間を設け、前記第1期間の終了後に前記第2期間を設ける、
ことを特徴とする受信回路。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の受信回路であって、
前記制御部は、
前記受信回路の動作期間が終了すると前記受信回路を待機期間に移行させ、前記待機期間が終了すると前記受信回路を前記動作期間に復帰させ、前記移行および前記復帰の各動作を繰り返し実行し、
かつ、前記ミキサー回路および前記イメージ抑圧回路が、前記動作期間において動作状態となり、前記待機期間において低消費電力状態となるように制御することを特徴とする受信回路。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の受信回路であって、
前記ミキサー回路は、
前記前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号を生成するローカル信号生成回路と、
前記受信信号に対応する前記入力信号に前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号のいずれか一方をミキシングするための第1ミキサーと、
前記受信信号に対応する前記入力信号に前記第1ローカル信号および前記第2ローカル信号のいずれか他方をミキシングするための第2ミキサーと、
前記第1ローカル信号を前記第1ミキサーに供給し、かつ前記第2ローカル信号を前記第2ミキサーに供給する第1ローカル信号供給経路と、前記第2ローカル信号を前記第1ミキサーに供給し、かつ前記第1ローカル信号を前記第2ミキサーに供給する第2ローカル信号供給経路と、を切り換える第1経路切換器と、
を有し、
前記制御部は、前記第1期間においては、前記第1経路切換器を、前記第1ローカル信号供給経路および前記第2ローカル信号供給経路のいずれか一方に切り換え、前記第2期間においては、前記第1経路切換器を、前記第1ローカル信号供給経路および前記第2ローカル信号供給経路のいずれか他方に切り換える、
ことを特徴とする受信回路。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の受信回路であって、
前記ミキサー回路と前記イメージ抑圧回路との間に設けられた第2経路切換器を有し、
前記第2経路切換器は、
前記ミキサー回路から出力される前記第1中間周波数信号を前記イメージ抑圧回路の第1入力ノードに供給し、かつ、前記ミキサー回路から出力される前記第2中間周波数信号を前記イメージ抑圧回路の第2入力ノードに供給する第1中間周波数信号供給経路と、前記ミキサー回路から出力される前記第2中間周波数信号を前記イメージ抑圧回路の第1入力ノードに供給し、かつ、前記ミキサー回路から出力される前記第1中間周波数信号を前記イメージ抑圧回路の前記第2入力ノードに供給する第2中間周波数信号供給経路と、を切り換え、
前記制御部は、前記第1期間においては、前記第2経路切換器を、前記第1中間周波数信号供給経路および前記第2中間周波数信号供給経路のいずれか一方に切り換え、前記第2期間においては、前記第2経路切換器を、前記第1中間周波数信号供給経路および前記第2中間周波数信号供給経路のいずれか他方に切り換える、
ことを特徴とする受信回路。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の受信回路であって、
前記イメージ抑圧回路は、
前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号のいずれか一方を受ける第1入力ノードと、
前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号のいずれか他方を受ける第2ノードと、
入力信号の位相を90°シフトして出力する第1信号処理経路と、
入力信号の位相のシフトを行わずに出力する第2信号処理経路と、
前記第1信号処理経路の信号と前記第2信号処理経路の信号とを合成する合成器と、
前記第1入力ノードからの信号を受ける信号経路を、前記第1信号処理経路および前記第2信号処理経路のいずれか一方とし、前記第2入力ノードからの信号を受ける信号経路を、前記第1信号処理経路および前記第2信号処理経路のいずれか他方とする第1回路構成と、
前記第1入力ノードからの信号を受ける信号経路を、前記第1信号処理経路および前記第2信号処理経路のうちの前記いずれか他方とし、前記第2入力ノードからの信号を受ける信号経路を、前記第1信号処理経路および前記第2信号処理経路のうちの前記いずれか一方とする第2回路構成とを、切り換えるスイッチ回路と、
を有し、
前記制御部は、前記第1期間においては、前記スイッチ回路を、前記第1回路構成および前記第2回路構成のいずれか一方に切り換え、前記第2期間においては、前記スイッチ回路を、前記第1回路構成および前記第2回路構成のいずれか他方に切り換える、
ことを特徴とする受信回路。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の受信回路であって、
前記イメージ抑圧回路は、複素バンドパスフィルター回路であることを特徴とする受信回路。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の受信回路を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
アンテナで受信された受信信号に対応する入力信号を、イメージ信号を抑圧しつつ、より低い周波数に変換して中間周波数信号を生成するイメージ抑圧受信方法であって、
局部発振回路の発振周波数を第1周波数値に切り換えた後、位相負帰還制御によって前記発振周波数を前記第1周波数値に安定させ、
前記局部発振回路の発振信号に基づいて生成される、位相が90°異なる第1ローカル信号および第2ローカル信号の各々を前記受信信号にミキシングして、周波数が変換された第1中間周波数信号および第2中間周波数信号を生成し、
前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号の各々をイメージ抑圧回路に入力し、まず、前記受信信号に含まれる前記第1周波数値よりも前記中間周波数値だけ高い周波数の第1信号、および前記受信信号に含まれる前記第1周波数値よりも前記中間周波数値だけ低い周波数の第2信号のうちのいずれか一方をイメージ信号として第1のイメージ抑圧処理を実行し、次に、前記第1信号および前記第2信号のうちのいずれか他方をイメージ信号として第2のイメージ抑圧処理を実行する、
ことを特徴とするイメージ抑圧受信方法。
【請求項11】
請求項10記載のイメージ抑圧受信方法であって、
チャンネルサーチを行う場合に、
前記局部発振回路の発振周波数を、受信しようとする無線通信の1チャンネルの帯域幅を単位として変化させる発振周波数変更処理を実行し、
前記発振周波数を変化させる毎に、前記発振周波数の安定化処理、前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号の生成処理、前記第1のイメージ抑圧処理および前記第2のイメージ抑圧処理を実行し、前記各処理を繰り返し、
かつ、前記発振周波数変更処理においては、
前記発振周波数が、前記第1周波数値とは異なる第2周波数値に設定された場合に、前記第2周波数値よりも、前記第1中間周波数信号および前記第2中間周波数信号の周波数である中間周波数値だけ高い周波数である第3信号および前記第2周波数値よりも前記中間周波数値だけ低い周波数である第4信号の少なくとも一方の周波数が、受信済みの信号の周波数と不一致である場合のみ、前記発振周波数を前記第1周波数値から前記第2周波数値に変更する、
ことを特徴とするイメージ抑圧受信方法。
【請求項12】
請求項11記載のイメージ抑圧受信方法であって、
前記チャンネルサーチは、空きチャンネルサーチであることを特徴とするイメージ抑圧受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−77611(P2011−77611A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224216(P2009−224216)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】