説明

受信装置、無線通信システム、位置推定方法、及びプログラム

【課題】無線信号を用いた位置の推定の精度を向上させること。
【解決手段】周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号をそれぞれ受信する複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部と、前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された送信アンテナから前記複数の受信アンテナのうち任意の2つの受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部と、を備える受信装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、無線通信システム、位置推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信により送受信される無線信号を用いて、通信装置の位置や通信相手との間の距離を推定する方法が提案されている。無線信号を用いて通信相手との間の距離を推定する方法としては、例えば、通信相手へ送信した信号が折り返して戻ってくるまでの時間に応じて推定する方法や、通信相手から送信された信号の電界強度に応じて推定する方法などがある。また、通信装置の位置を推定する方法としては、GPS(Global Positioning System)からの信号を用いる方法や、前述の距離測定方法と三点測位法などとを組み合わせた方法などがある。
【0003】
下記特許文献1には、無線信号の折り返し時間に応じて距離を決定する手法の一例が開示されている。下記特許文献1で開示された手法は、送受信装置間の同期に着目し、所定のインパルスレスポンスに基づいて折り返し時間を補正することで、精度の高い距離の測定を実現しようとしている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−148457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばGPSからの信号を用いて距離又は位置を計算あるいは取得する方法は、GPS衛星からの電波が届かない屋内や地下などでは使用することができない。また、GPS衛星からの電波が建物の窓などによって反射して届いた場合には、もはや実用的な精度の距離又は位置を計算あるいは取得することができない。
【0006】
また、例えば折り返し時間に応じて通信相手との間の距離を推定する方法では、通信相手が無線信号を受信して折り返すまでの時間を厳密に取り決めて保証する必要がある。さらに、無線LAN(Local Area Network)による無線信号の折り返し時間を用いる場合には、信号の伝播速度やサンプルクロックの制約から通常の同期回路では十分な分解能が得られず、分解能を補償するためには計算コストの大きい処理が必要であった。
【0007】
さらに、例えば電界強度に応じて距離を決定する方法では、通信相手の送信電力のばらつきや通信環境の雑音などから受ける影響が大きくなるなどといった問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、無線信号を用いた位置の推定の精度を向上させることのできる、新規かつ改良された受信装置、無線通信システム、位置推定方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号をそれぞれ受信する複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部と、前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された送信アンテナから前記複数の受信アンテナのうち任意の2つの受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部と、を備える受信装置が提供される。
【0010】
かかる構成によれば、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号が複数の受信アンテナによりそれぞれ受信され、各無線信号に含まれる副搬送波ごとに、基準信号との間の位相差が位相計算部により計算される。そして、位相計算部により計算された位相差に基づいて、無線信号が送信された送信アンテナから複数の受信アンテナのうち任意の2つの受信アンテナまでの距離の差である行路差が、行路差計算部により計算される。
【0011】
また、前記位相計算部は、前記副搬送波ごとの前記位相差を用いて前記受信アンテナごとに位相差平均と位相勾配とを計算し、前記行路差計算部は、前記位相計算部により計算された前記位相差平均と前記位相勾配とに基づいて前記行路差を計算してもよい。
【0012】
また、前記行路差計算部は、前記複数の受信アンテナのうち2組以上の受信アンテナについて前記行路差を計算し、前記受信装置は、前記行路差計算部によって2組以上の受信アンテナについて計算された前記行路差を用いて前記送信アンテナの位置を推定する位置推定部、をさらに備えてもよい。
【0013】
また、前記基準信号は、前記複数の受信アンテナのうちの1つの受信アンテナにより受信される無線信号であってもよい。
【0014】
また、前記位相計算部は、前記基準信号の複素共役値を計算し、計算された前記基準信号の前記複素共役値と各無線信号に含まれる副搬送波ごとの信号値とを乗算することにより前記位相差を計算してもよい。
【0015】
また、前記行路差計算部は、前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、部分空間法により前記行路差を計算してもよい。
【0016】
また、前記位相計算部は、前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに前記基準信号との間の前記位相差を複数回計算し、前記行路差計算部は、前記位相計算部により複数回計算された複数の前記位相差を用いて前記行路差を計算することにより、前記行路差に含まれる誤差を低減させてもよい。
【0017】
また、前記受信装置は、前記複数の受信アンテナにより受信される無線信号の周波数帯を制御する制御部、をさらに備え、前記複数の受信アンテナは、前記制御部による制御に応じて、周波数の異なる副搬送波がそれぞれ多重化された第1の周波数帯の無線信号と第2の周波数帯の無線信号とを受信し、前記行路差計算部は、前記第1の周波数帯の無線信号について計算された前記受信アンテナごとの第1の位相勾配と、前記第2の周波数帯の無線信号について計算された前記受信アンテナごとの第2の位相勾配とを用いて、前記行路差の計算に用いる位相勾配の誤差を低減させてもよい。
【0018】
また、前記無線信号は、直交周波数分割多重方式に従って変調された無線信号であってもよい。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の送信アンテナからそれぞれ送信される複数の無線信号であって、周波数の異なる副搬送波がそれぞれ多重化された無線信号を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部と、前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された前記複数の送信アンテナのうち任意の2つの送信アンテナから前記受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部と、を備える受信装置が提供される。
【0020】
また、前記位相計算部は、前記基準信号との間の前記副搬送波ごとの前記位相差を用いて、前記送信アンテナごとに位相差平均と位相勾配とを計算し、前記行路差計算部は、前記位相差平均と前記位相勾配とに基づいて前記行路差を計算してもよい。
【0021】
また、前記行路差計算部は、前記複数の送信アンテナのうち2組以上の送信アンテナについて前記行路差を計算し、前記受信装置は、前記行路差計算部によって2組以上の送信アンテナについて計算された前記行路差を用いて自装置の位置を推定する位置推定部、をさらに備えてもよい。
【0022】
また、前記位置推定部は、さらに前記無線信号のデータ部から取得した前記複数の送信アンテナの絶対位置に関する情報を用いて自装置の絶対位置を推定してもよい。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号をそれぞれ送信する複数の送信アンテナ、を備える送信装置と、前記複数の送信アンテナから送信された複数の無線信号を受信する受信アンテナ、前記受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部、前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された前記複数の送信アンテナのうち任意の2つの送信アンテナから前記受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部、を備える受信装置と、を含む無線通信システムが提供される。
【0024】
また、前記受信装置の前記行路差計算部は、前記複数の送信アンテナのうち2組以上の送信アンテナについて前記行路差を計算し、前記受信装置は、前記行路差計算部によって2組以上の送信アンテナについて計算された前記行路差を用いて自装置の相対位置を推定する位置推定部、をさらに備えてもよい。
【0025】
また、前記送信装置は、前記複数の送信アンテナの絶対位置に関する情報を前記無線信号を用いて前記受信装置へ送信し、前記受信装置の前記位置推定部は、前記無線信号から取得した前記複数の送信アンテナの前記絶対位置に関する情報を用いて自装置の絶対位置を推定してもよい。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号を複数の受信アンテナによりそれぞれ受信するステップと、前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算するステップと、計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された送信アンテナから前記複数の受信アンテナのうち任意の2つの受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算するステップと、を含む位置推定方法が提供される。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号をそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信装置を制御するコンピュータを、前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部と、前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された送信アンテナから前記複数の受信アンテナのうち任意の2つの受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部と、として機能させるための、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る受信装置、無線通信システム、位置推定方法、及びプログラムによれば、無線信号を用いた位置の推定の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
また、以下の順序にしたがって当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
〔1〕無線通信システムの概要
〔2〕第1の実施形態(位相差平均と位相勾配を用いた位置推定の一例)
〔3〕第2の実施形態(複数の周波数チャネルを使用する一例)
〔4〕第3の実施形態(送信側から受信側へ位置を通知する一例)
【0031】
〔1〕無線通信システムの概要
まず、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る無線通信システム1の概要について説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システム1について概略的に示した模式図である。図1を参照すると、無線通信システム1は、送信装置50と受信装置100とを含む。
【0033】
図1では、送信装置50及び受信装置100としてPC(Personal Computer)を示しているが、送信装置50及び受信装置100はPCなどの情報処理装置に限られない。例えば、送信装置50又は受信装置100は、携帯電話端末やPDA(Personal Digital Assistants)、ゲーム端末などの端末装置、無線アクセスポイントやルータなどの通信専用装置、又はこれら装置に接続される無線通信モジュールなどであってもよい。
【0034】
送信装置50と受信装置100との間は、例えばOFDM(直交周波数分割多重:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式に従った無線通信によって接続される。OFDM方式とは、直交する関係にある複数の周波数の副搬送波(Sub−Carrier)を並列的に用いて変調を行う変調方式であり、IEEE802.11a、g、nやワイヤレスUSBなどの標準仕様に採用されている。
【0035】
図1の例において、送信装置50と受信装置100との間に、搬送波C1が示されている。そして、搬送波C1には、周波数の異なる複数の副搬送波SC〜SCが多重化されている。受信装置100は、このような搬送波C1を用いて伝送される無線信号を受信し、送信装置50の位置を推定する。
【0036】
なお、送信装置50と受信装置100との間の無線通信方式はOFDM方式に限定されない。本明細書にて説明する各実施形態は、周波数の異なる複数の副搬送波を用いるマルチキャリア方式の無線通信に一般的に適用され得る。
【0037】
〔2〕第1の実施形態(位相差平均と位相勾配を用いた位置推定の一例)
次に、図2〜図13を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0038】
図2は、第1の実施形態に係る受信装置100の論理的な構成を示したブロック図である。図2を参照すると、受信装置100は、4本の受信アンテナ110−n(n=1〜4)、4つの無線受信部120−n(n=1〜4)、復調部130、復号部140、位相計算部150、行路差計算部160、及び位置推定部170を備える。
【0039】
受信アンテナ110−nは、それぞれ対応する無線受信部120−nと接続され、4つの受信ブランチを形成する。無線受信部120−nは、並列的に復調部130と接続される。復調部130は、復号部140及び位相計算部150に接続される。位相計算部150は、行路差計算部160と接続される。行路差計算部160は、位置推定部170と接続される。そして、復号部140及び位置推定部170は、例えばそれぞれホストCPU(Central Processing Unit)と接続される。
【0040】
受信アンテナ110−nは、送信装置50から送信された無線信号をそれぞれ受信し、受信した無線信号を同一の受信ブランチの無線受信部120−nへ出力する。
【0041】
無線受信部120−nは、同一の受信ブランチの受信アンテナ110−nから出力された無線信号に対し、周波数変換やフィルタリング等の処理を行う。
【0042】
図3は、無線受信部120−nの詳細な構成を示すブロック図である。図3を参照すると、無線受信部120−nは、RF回路122−n、AD(アナログ−デジタル)変換器124−n、フィルタ126−n、及びインバランス補正部128−nをそれぞれ含む。
【0043】
受信アンテナ110−nから出力された無線信号は、まずRF回路122−nにおいて増幅及び周波数変換される。RF回路122−nから出力されたアナログ信号は、AD変換器124−nによってデジタル信号に変換される。AD変換器124−nによってデジタル信号に変換された受信信号は、フィルタ126−nによってフィルタリング処理される。その後、フィルタ126−nから出力された信号は、インバランス補正部128−nによってIQインバランスの影響が除去され、復調部130へ入力される。
【0044】
図2に戻り、受信装置100の説明を継続する。復調部130は、4本の受信ブランチからそれぞれ入力された受信信号を復調する。
【0045】
図4は、復調部130の詳細な構成を示すブロック図である。図4を参照すると、復調部130は、同期回路132、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)回路134−n、チャネル推定部136−n、及び合成部138を含む。
【0046】
同期回路132は、4本の受信ブランチから入力された受信信号からパケットを検出し、同期タイミングと周波数オフセットとを測定した後、各受信信号からOFDMシンボルを切り出して、対応するFFT回路134−nへ出力する。同期回路132から出力されたOFDMシンボルは、FFT回路134−nによって高速フーリエ変換され、副搬送波ごとに分離される。FFT回路134−nによって副搬送波ごとに分離された受信信号は、チャネル推定部136−nにおけるチャネル推定結果に基づいて決定された信号合成比に従って、合成部138により合成される。そして、合成部138により合成された信号は、復調済みのストリーム信号として、復号部140へ出力される。
【0047】
また、FFT部134−nにより副搬送波ごとに分離された受信信号は、チャネル推定部136−nへ入力されるのと並行して、位相計算部150へ入力される。位相計算部150における処理については、後に詳しく説明する。
【0048】
図2に戻り、受信装置100の説明を継続する。復号部140は、前述のように復調部130から入力された復調済みのストリーム信号を復号する。
【0049】
図5は、復号部140の詳細な構成を示すブロック図である。図5を参照すると、復号部140は、等化器142及び復号器144を含む。
【0050】
復号部140へ入力された復調済みのストリーム信号は、等化器142によってデジタル復調された後、復号器144によって復号される。復号されたデータ信号は、ホストCPUへ出力される。
【0051】
図6は、本実施形態において送信装置50から受信装置100へ送信される可能性のある無線信号に含まれるパケットの構成の一例を示している。
【0052】
図6(A)は、OFDM方式を採用したIEEE802.11nの通信仕様において規定されているパケットP1の構成の一例である。
【0053】
図6(A)を参照すると、パケットP1は、L−STF(Legacy−Short Training Field)、L−LTF(Legacy−Long Training Field)、L−SIG(Legacy−SIGnal field)、HT−SIG(High Throughput−SIG)、HT−STF、HT−LTF、及びData(データ部)の各フィールドを含む。
【0054】
このうち、L−STFは、例えば前述の同期回路132によるパケットを検出に用いられる。L−LTFは、例えば同期回路132による周波数オフセットの測定やチャネル推定部136−nによるチャネル推定に用いられる。L−SIGやHT−SIGには、例えばデータ長や通信レート、変調方式などの制御情報が含まれる。HT−STFは例えば利得調整に、HT−LTFはMIMO(Multiple Input Multiple Output)チャネル行列の取得に用いられる。データ部には、データシンボルが含まれる。
【0055】
一方、図6(B)は、OFDM方式を採用したIEEE802.11aの通信仕様において規定されているパケットP2の構成の一例である。図6(B)を参照すると、パケットP2は、STF、LTF、SIG、及びDataの各フィールドを含む。
【0056】
ここで、例えば1つの送信アンテナから送信された1つの無線信号を複数の受信アンテナ110−nを用いて受信する場合、受信アンテナ110−nの位置に応じて無線信号が通信経路上を伝送される行路長には差異が生じる。
【0057】
図7は、そのような受信アンテナ110−nの位置に応じた無線信号の行路長の差異を、概念的に示した説明図である。図7を参照すると、送信アンテナTxから受信アンテナ110−1、110−2、110−3及び110−4までの無線信号の行路が示されている。
【0058】
図7において、弧STDは、送信アンテナTxとの間に、送信アンテナTxから受信アンテナ110−4までの無線信号の行路長と等しい距離を有する位置の軌跡を示している。
【0059】
この受信アンテナ110−4までの行路長を基準とすると、送信アンテナTxから受信アンテナ110−1までの行路長は距離d1だけ長い。また、送信アンテナTxから受信アンテナ110−2までの行路長は距離d2、送信アンテナTxから受信アンテナ110−3までの行路長は距離d3だけ長いことが分かる。本明細書では、このような受信アンテナ間の行路長の差、即ち、例えば距離d1、d2、d3などを、行路差と称する。
【0060】
このように受信アンテナ110−nの間で行路差dが存在した場合、受信アンテナ110−nによって受信される無線信号の位相にずれが生じる。受信アンテナ110−nによって受信される無線信号の位相のずれ、即ち受信アンテナ110−n間の位相差φと行路差dの関係は、次式で表される。
【0061】
【数1】

(1)
【0062】
ここで、λは無線信号の波長、mは行路差dの間に位相が何周したかを示す整数である。
【0063】
式(1)によれば、行路差dが一定であった場合には、位相差φは、無線信号の波長λに依存する。よって、無線信号として周波数の異なる副搬送波が多重化された例えばOFDM方式の無線信号を用いた場合には、同一の受信アンテナ110−nであっても、当該受信アンテナ110−nにより受信された無線信号の副搬送波ごとに、検知される位相が異なる。
【0064】
図8は、同一の受信アンテナ110−nにおける副搬送波ごとの位相差を概念的に示した説明図である。
【0065】
図8(A)〜(C)のうち、図8(A)は、基準となるアンテナとの間の行路差dがd=0である場合の、副搬送波ごとの位相差を示している。これに対し、図8(B)は行路差dが中程度の場合、図8(C)は行路差dが大きい場合の副搬送波ごとの位相差を示している。
【0066】
図8(A)〜(C)に示した多数の小さい矢印は、無線信号に含まれる各副搬送波を表す。各図の横軸は、副搬送波の周波数に対応する。即ち、図中右側に示した矢印は、図中左側に示した矢印よりも高い周波数の(即ち、波長が短い)副搬送波に対応する。また、横軸に対する矢印の回転角は、対応する副搬送波について検知される位相差φを表す。
【0067】
図8(A)を参照すると、行路差d=0の場合、位相差φは副搬送波の周波数によらず一定である。一方、図8(B)の例では、副搬送波間の位相差の平均を矢印AVGとすると、周波数の低い副搬送波では位相差φは矢印AVGよりも大きく、周波数の高い副搬送波では位相差φは矢印AVGよりも小さい。このような位相のねじれは、周波数の所定の変化量に対する位相の変化量として定量化することができる。本明細書では、このような位相の変化量を、位相勾配と称する。行路差dがより大きい図8(C)の例では、位相のねじれはさらに大きくなっている。
【0068】
一例として、IEEE802.11nの標準仕様の40MHzモードにおいて、無線信号の周波数帯の中央周波数をfmid=5[GHz]、下端周波数fbtm=4.98[GHz]、上端周波数ftop=5.02[GHz]とする。そうすると、中央周波数に対する波長λmid=6.00[cm]、下端周波数に対する波長λbtm=6.024[cm]、上端周波数に対する波長λtop=5.976[cm]となる。
【0069】
ここで、行路差d=6[cm]であったとする。その場合、中央周波数において位相差φmid=2πであり、即ち1つの周波数帯内の全副搬送波の位相差平均φAVG=2πとなる。一方、下端周波数における位相差φbtm=2π×(6.00/6.024)、上端周波数における位相差φtop=2π×(6.00/5.976)である。よって、周波数帯の両端の間の位相のねじれφtop−φbtm=約2.88[deg]となる。
【0070】
受信アンテナ110−n間の位相差平均φAVG、及び受信アンテナ110−nにおける位相勾配θと、受信アンテナ110−n間の行路差dとの関係についてさらに説明する。
【0071】
離散フーリエ変換の等式から、信号xと1サンプル推移した信号xn+1との間の関係は、次式で表される。
【0072】
【数2】

(2)

(3)

(4)
【0073】
即ち、1周波数帯内の全ての副搬送波にわたって、1周分(360°)に相当する位相のねじれが生じる。40[MHz]の周波数帯の両端の間のねじれに相当する行路差は、3×10[m]/40[MHz]=7.5[m]である。よって、行路差d=7.5[m]で位相のねじれが1周分に達する。行路差d=6[cm]では、2.88[deg]に相当する。
【0074】
ここで、仮に受信アンテナ110−n間の位相差平均φAVG=0[deg]であった場合には、行路差dは、0又は波長λの整数倍のいずれかの値となり、位相差平均φAVGの値だけでは行路差dは一意に定まらない。そこで、本実施形態では、以下の関係式に基づき、さらに位相勾配θを考慮して行路差dを決定する。
【0075】
まず、中央周波数(キャリア周波数に相当)の波長λmidと任意の副搬送波の波長λとの関係は、式(1)から次式のように導かれる。
【0076】
【数3】

(5)

(6)
【0077】
ここで、δφは、中央周波数における位相と当該副搬送波における位相の間の位相差である。周波数軸上で隣り合う副搬送波間の位相差を位相勾配θと定義すると、位相差δφは次式で与えられる。
【0078】
【数4】

(7)
【0079】
ここで、Nは中央周波数から当該副搬送波の周波数までの間に存在する副搬送波の本数である。また、波長λmidと波長λの関係は、中央周波数fmid及び副搬送波の周波数fを用いて、次式で表される。
【0080】
【数5】

(8)
【0081】
式(5)、式(6)、式(8)より、次式が導かれる。
【0082】
【数6】

(9)
【0083】
さらに、当該副搬送波における位相のねじれの割合θλを次式のように定義する。
【0084】
【数7】

(10)
【0085】
そうすると、式(9)及び式(10)から、行路差dと位相差φとの間の関係式(1)における整数mが、次式のように導かれる。
【0086】
【数8】

(11)
【0087】
式(11)において、mを決定するパラメータのうち、θλは行路差dに依存しない。よって、受信アンテナ110−nの位置に応じて行路差dが変化した場合、受信アンテナ110−nごとの位相差平均φAVGと、δφを決定するための位相勾配θとを用いて、行路差dの間に位相が何周したかを表す整数mを決定できることが理解される。
【0088】
そして、整数mが決定されれば、さらに中央周波数における波長λmid及び位相平均φAVGを用いて、受信アンテナ110−n間の行路差dを式(1)により計算することができる。
【0089】
図2において、位相計算部150は、復調部130から入力される復調済みのストリーム信号を用いて、前述した受信アンテナ110−n間の行路差dの計算に必要とされる位相差平均φAVG及び位相勾配θを計算する。
【0090】
図9は、位相計算部150の詳細な構成を示すブロック図である。図9を参照すると、位相計算部150は、複素共役計算部152、乗算器154−m(m=1、2、3)、平均計算部156−m、及び勾配計算部158−mを含む。
【0091】
図9の例では、位相計算部150は、受信アンテナ110−nのうち、受信アンテナ110−4により受信された無線信号に対応する入力信号を、位相差の計算の基準信号としている。そのため、受信アンテナ110−4により受信され復調されたストリーム信号Sは、複素共役計算部152に入力される。一方、受信アンテナ110−1、2、3により受信され復調されたストリーム信号S、S、Sは、それぞれ乗算器154−1、154−2、及び154−3に入力される。
【0092】
複素共役計算部152は、ストリーム信号Sの複素共役値を計算し、その結果得られた信号を乗算器154−1、154−2、及び154−3へ入力する。
【0093】
乗算器154−1、154−2、及び154−3は、複素共役計算部152から入力されたストリーム信号Sの複素共役値とストリーム信号S、S、Sとをそれぞれ乗算する。その結果、ストリーム信号S、S、Sに含まれる副搬送波ごとの信号値について、それぞれ基準信号との間の位相差が計算される。
【0094】
そして、平均計算部156−1は、乗算器154−1により計算されたストリーム信号Sの副搬送波ごとの位相差を用いて、受信アンテナ110−1についての位相差平均φAVG1を計算する。また、勾配計算部158−1は、当該位相差を用いて、受信アンテナ110−1についての位相勾配θを計算する。
【0095】
同様に、平均計算部156−2は、受信アンテナ110−2についての位相差平均φAVG2を、勾配計算部158−2は、受信アンテナ110−2についての位相勾配θを計算する。さらに、平均計算部156−3は、受信アンテナ110−3についての位相差平均φAVG3を、勾配計算部158−3は、受信アンテナ110−3についての位相勾配θを計算する。
【0096】
これら処理の結果得られた位相差平均φAVG1及び位相勾配θ、位相差平均φAVG2及び位相勾配θ、並びに位相差平均φAVG3及び位相勾配θは、行路差計算部160へ出力される。
【0097】
なお、ここでは、位相差の計算の基準とする基準信号を受信アンテナ110−4により受信された信号とする例について説明した。しかしながら、基準信号は、いずれかの受信アンテナにより受信された信号、又は例えば予め与えられる既知の信号であってもよい。
【0098】
図2において、行路差計算部160は、位相計算部150から入力される受信アンテナ110−nごとの位相差平均及び位相勾配を用いて、前述の式(1)〜式(11)に従い、無線信号が送信された送信アンテナから受信アンテナ110−nのうち任意の2つの受信アンテナまでの行路差を計算する。
【0099】
ここで、行路差計算部160による計算の結果、受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4の間の行路差d14が得られたとする。そうすると、無線信号が送信された送信アンテナの位置は、受信アンテナ110−1及び受信アンテナ110−4からの距離の差が一定(即ちd14)となる曲面上にあると考えることができる。
【0100】
図10は、受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4を通る二次元平面上において、行路差d14から推定される送信アンテナの位置を示した説明図である。
【0101】
図10において、原点を通る水平軸上の座標(−1、0)、(1、0)に、受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4がそれぞれ位置している。
【0102】
受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4の間の行路差d14がd14=0となる場合、送信アンテナは、受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4の中間点を通る直線L0上に位置する。
【0103】
また、行路差d14≠0の場合、送信アンテナの位置の描く軌跡は、論理的には双曲線を描く。そして、その双曲線の焦点に、受信アンテナ110−1及び受信アンテナ110−4が位置する。
【0104】
例えば、行路差d14が受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4の間隔の20%であれば、送信アンテナは、双曲線L1又はL6上に位置する。このうち、受信アンテナ110−1の位相が受信アンテナ110−4に対して進んでいるか遅れているかを判定することによって、送信アンテナが双曲線L1とL6のいずれに位置するかを決定することができる。
【0105】
同様に、行路差d14が受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4の間隔の40%であれば、送信アンテナは、双曲線L2又はL7上に位置する。行路差d14が受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4の間隔の60%であれば、送信アンテナは、双曲線L3又はL8上に位置する。さらに、行路差d14が受信アンテナ110−1と受信アンテナ110−4の間隔の80%であれば、送信アンテナは、双曲線L4又はL9上に位置する。
【0106】
図11は、受信アンテナ110−nのうち、受信アンテナ110−aと110−bの間の行路差、及び受信アンテナ110−bと110−cの間の行路差に基づいて、送信アンテナの位置を推定する一例について説明するための説明図である。
【0107】
図11において、受信アンテナ110−aと110−bの間の行路差に基づき、例えば曲線L10上に送信アンテナが位置していると推定されたとする。また、受信アンテナ110−bと110−cの間の行路差に基づき、例えば曲線L20上に送信アンテナが位置していると推定されたとする。そうすると、送信アンテナは、曲線L10及び曲線L20の交点P1又はP2上に位置すると推定される。
【0108】
図12は、受信アンテナ110−aと110−bの間の行路差、及び受信アンテナ110bと110−cの間の行路差に基づいて、送信アンテナの位置を推定する他の例について説明するための説明図である。
【0109】
図12において、受信アンテナ110−aと110−bの間の行路差に基づき、例えば曲線L30上に送信アンテナが位置していると推定されたとする。また、受信アンテナ110−bと110−cの間の行路差に基づき、例えば曲線L40上に送信アンテナが位置していると推定されたとする。そうすると、送信アンテナは、曲線L30及びL40の交点P3上に位置すると推定される。
【0110】
図11及び図12を用いて説明したように、受信アンテナ110−nのうち2組の受信アンテナについてそれぞれ計算された行路差を用いることで、二次元平面上の送信アンテナの位置を推定することができる。また、こうした考え方を拡張し、受信アンテナ110−nのうち3組以上の受信アンテナについてそれぞれ計算された行路差を用いることで、三次元空間内の送信アンテナの位置を推定できることが理解される。
【0111】
図2において、位置推定部170は、このようにして、行路差計算部160によって2組以上の受信アンテナ110−nについて計算された行路差を用いて、無線信号が送信された送信アンテナの位置を推定する。
【0112】
図13は、本実施形態に係る受信装置100による送信アンテナの位置推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0113】
図13を参照すると、まず、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号を、複数の受信アンテナ110−nがそれぞれ受信する(S502)。
【0114】
次に、無線受信部120−nによりデジタル信号に変換された受信信号が復調部130により復調され、副搬送波ごとの信号にそれぞれ分離される(S504)。
【0115】
そして、副搬送波ごとに分離されたそれぞれの信号について、位相計算部150により基準信号との間の位相差が計算される(S506)。ここで、位相計算部150は、例えば受信アンテナ110−nのうちの1つの受信アンテナにより受信された信号を基準信号とし、当該基準信号の複素共役値と副搬送波ごとの信号値とを乗算し、副搬送波ごとの位相差を計算する。このとき、基準信号は、1つの受信アンテナにより受信された信号ではなく、予め与えられる既知の信号であってもよい。
【0116】
その後、位相計算部150は、副搬送波ごとに計算した位相差を用いて、受信アンテナ110−nごとに位相差平均を計算する(S508)。また、位相計算部150は、副搬送波ごとに計算した位相差を用いて、受信アンテナ110−nごとに位相勾配を計算する(S510)。
【0117】
そして、行路差計算部160は、位相計算部150により計算された受信アンテナごとの位相差平均と位相勾配とに基づいて、無線信号が送信された送信アンテナから受信アンテナ110−nのうち任意の2つの受信アンテナまでの行路差を計算する(S512)。
【0118】
さらに、行路差計算部160によって2組以上の受信アンテナについて計算された行路差を用いて、位置推定部170により送信アンテナの位置が推定される(S514)。
【0119】
ここまで、図2〜図13を用いて、本発明の第1の実施形態に係る受信装置100について説明を行った。本実施形態によれば、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号を複数の受信アンテナで受信し、各無線信号に含まれる副搬送波ごとに計算された位相差に基づいて、送信アンテナから任意の2つの受信アンテナまでの行路差が計算される。それにより、例えば信号の折り返し時間の保証などの追加的な要件を通信相手に求めることなく、無線信号を用いた位置の推定の精度を向上させることができる。
【0120】
このとき、副搬送波ごとの位相差を、例えば基準信号の複素共役値と副搬送波ごとの信号値との乗算により計算してもよい。また、送信アンテナから2つの受信アンテナまでの行路差を、受信アンテナごとの位相差平均と位相勾配とに基づいて計算してもよい。そうした場合には、受信アンテナ間の行路差の計算を、比較的小さい計算コストにより行うことができる。
【0121】
また、行路差の計算を、任意の2組以上の受信アンテナについて行ってもよい。例えば、2組の受信アンテナについて行路差を計算することにより、二次元平面上での通信相手の位置を推定することができる。また、3組以上の受信アンテナについて行路差を計算することにより、三次元空間内での通信相手の位置を推定することができる。
【0122】
また、副搬送波ごとの位相差の基準となる基準信号として、複数の受信アンテナのうちの1つの受信アンテナにより受信される無線信号を用いてもよい。かかる場合には、同一の通信環境を経て届いた無線信号間で位相差が計算されるため、通信環境が信号に与える影響が相互に打ち消され、位置推定の精度が向上され得る。
【0123】
なお、本実施形態では、送信アンテナから受信アンテナ110−nまでの行路差を位相差平均と位相勾配とを用いて計算した。しかしながら、その代わりに、例えばMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法などの部分空間法を用いて、受信アンテナ110−nまでの行路差を計算してもよい。
【0124】
また、前述した位相計算部150による位相差の計算処理を1つの無線信号について複数回実行し、その結果得られた複数の位相差に基づいて受信アンテナ間の行路差を計算してもよい。例えば、同一の副搬送波について複数回計算した位相差の平均値や中央値に基づいて行路差を計算することにより、行路差の計算結果に含まれる誤差を低減させることができる。
【0125】
〔3〕第2の実施形態(複数の周波数チャネルを使用する一例)
本発明の第1の実施形態では、周波数の異なる副搬送波が多重化された1つの周波数チャネルの無線信号を複数のアンテナで受信して送信アンテナの位置を推定する受信装置100について説明した。例えば、図8に関連する説明においては、中央周波数fmidを5[GHz]とするIEEE802.11nの1つの周波数チャネルを例に挙げて行路差と位相差平均、位相勾配との関係について述べた。
【0126】
ここで、各副搬送波のアンテナ間の位相差や位相勾配は周波数チャネルの帯域幅が広い方がより明確に現れる。また、計算される行路差の精度は搬送波の波長が短いほど高くなり、位相差は搬送波の波長が長いほど行路差に対して緩やかに現れる。そこで、本発明の第2の実施形態に係る受信装置200では、周波数チャネルを複数の周波数帯に変えながら位相差を計算し、位置推定処理の精度を向上させる。
【0127】
図14は、第2の実施形態に係る受信装置200の論理的な構成を示したブロック図である。図2を参照すると、受信装置200は、4本の受信アンテナ110−n、4つの無線受信部120−n、復調部130、復号部140、位相計算部150、行路差計算部260、位置推定部170、及び周波数制御部280を備える。
【0128】
周波数制御部280は、無線受信部120−nに周波数制御信号を出力することにより、受信アンテナ110−nにより受信される無線信号の周波数帯を制御する。そして、受信アンテナ110−nは、周波数制御部280による制御に応じて、例えば周波数の異なる副搬送波がそれぞれ多重化された第1の周波数帯の無線信号と第2の周波数帯の無線信号とを受信する。第1及び第2の周波数帯の無線信号とは、例えば中央周波数fmid=5.00[GHz]の周波数チャネル及び中央周波数fmid=5.08[GHz]の周波数チャネルの無線信号であってもよい。
【0129】
受信アンテナ110−nにより第1の周波数帯の無線信号が受信されると、第1の実施形態に関連して説明した処理に従って、受信アンテナ110−nごとに第1の周波数帯の無線信号についての第1の位相勾配が、位相計算部150により計算される。また、受信アンテナ110−nにより第2の周波数帯の無線信号が受信されると、同様に、第2の周波数帯の無線信号についての第2の位相勾配が、位相計算部150により計算される。
【0130】
そして、行路差計算部260は、例えば第1の位相勾配と第2の位相勾配の平均を計算して位相勾配の誤差を低減した上で、受信アンテナ110−n間の行路差を計算する。また、その代わりに、行路差計算部260は、例えば式(1)の整数mを式(11)を用いて決定する際に、第1の位相差平均と第2の位相差平均から計算した新たな位相勾配をさらに用いて整数mを決定し、それにより行路差計算の精度を高めてもよい。
【0131】
図15は、本実施形態に係る受信装置200による送信アンテナの位置推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0132】
図15を参照すると、まず、第1の周波数帯において、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号を、複数の受信アンテナ110−nが受信する(S602)。
【0133】
次に、無線受信部120−nによりデジタル信号に変換された受信信号が復調部130により復調され、副搬送波ごとの信号にそれぞれ分離される(S604)。
【0134】
そして、副搬送波ごとに分離されたそれぞれの信号について、位相計算部150により基準信号との間の位相差が計算される(S606)。
【0135】
その後、位相計算部150は、副搬送波ごとに計算した位相差を用いて、受信アンテナ110−nごとに位相差平均を計算する(S608)。また、位相計算部150は、副搬送波ごとに計算した位相差を用いて、受信アンテナ110−nごとに第1の位相勾配を計算する(S610)。
【0136】
位相計算部150による位相差平均と位相勾配の計算が終了した後、周波数制御部280は、無線受信部120−nに周波数制御信号を出力し、受信アンテナ110−nにより受信される無線信号の周波数帯を第1の周波数帯から第2の周波数帯へ変更する(S612)。
【0137】
それにより、第2の周波数帯において、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号が複数の受信アンテナ110−nにより受信され(S614)、復調部130により復調され(S616)、位相計算部150により基準信号との間の位相差が計算される(S618)。
【0138】
そして、位相計算部150は、副搬送波ごとに計算した位相差を用いて、受信アンテナ110−nごとに第2の位相勾配を計算する(S620)。
【0139】
そして、行路差計算部160は、位相計算部150により計算された受信アンテナごとの位相差平均と第1及び第2の位相勾配とに基づいて、送信アンテナから任意の2つの受信アンテナまでの行路差を計算する(S622)。
【0140】
さらに、行路差計算部160により2組以上の受信アンテナについて計算された行路差を用いて、位置推定部170により送信アンテナの位置が推定される(S624)。
【0141】
ここまで、図14及び図15を用いて、本発明の第2の実施形態に係る受信装置200について説明を行った。本実施形態によれば、2つ以上の異なる周波数帯で受信した無線信号について、副搬送波ごとの位相勾配が計算される。それにより、位相勾配に基づいて計算される行路差の誤差が低減され、位置推定の精度が向上される。
【0142】
なお、本実施形態では、第1の周波数帯で計算した第1の位相勾配と第2の周波数帯で計算した第2の位相勾配とに基づいて送信アンテナからの行路差を計算する例について説明した。しかしながら、その代わりに、隣り合う第1の周波数帯と第2の周波数帯を帯域幅を広げられた仮想的な1つの周波数帯とみなし、その1つの周波数帯について副搬送波ごとの位相差から1つの位相勾配を計算してもよい。例えば、第1の周波数帯と第2の周波数帯が共に40MHzの帯域幅を有していた場合には、それぞれ計算した副搬送波ごとの位相差に基づいて、80MHzの帯域幅を持つ仮想的な周波数帯について1つの位相勾配を計算することができる。その場合にも、位相勾配に基づいて計算される行路差の誤差が低減され、位置推定の精度が向上される。
【0143】
〔4〕第3の実施形態(送信側から受信側へ位置を通知する一例)
第1及び第2の実施形態では、複数の受信アンテナを受信装置に設け、当該複数の受信アンテナで受信した無線信号に含まれる副搬送波について計算された位相差に基づいて、送信アンテナの位置を推定した。これに対し、本実施形態では、送信装置に複数の送信アンテナを設け、受信装置の1本の受信アンテナで複数の送信アンテナからの無線信号を受信し、同様の考え方に基づいて位置の推定を行う。
【0144】
図16は、第3の実施形態に係る無線通信システム3について概略的に示した模式図である。図16を参照すると、無線通信システム3は、送信装置52と受信装置300とを含む。
【0145】
図16では、送信装置52として無線アクセスポイントを示しているが、送信装置52は無線アクセスポイントに限られない。例えば、送信装置52は、PCやワークステーションなどの情報処理装置、携帯電話端末やPDA、ゲーム端末などの端末装置、ルータなどの通信専用装置、又はこれら装置に接続される無線通信モジュールなどであってもよい。
【0146】
送信装置52と受信装置300との間は、例えばOFDM方式に従った無線通信によって接続される。
【0147】
本実施形態において、送信装置52は、後述するように複数の送信アンテナを有する。そして、複数の送信アンテナから受信装置300へ、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号がそれぞれ送信される。受信装置300は、このような複数の送信アンテナから送信された無線信号を受信し、位置の推定を行う。
【0148】
図17は、第3の実施形態に係る受信装置300の論理的な構成を示したブロック図である。図17を参照すると、受信装置300は、受信アンテナ310、無線受信部320、復調部330、復号部340、位相計算部350、行路差計算部360、及び位置推定部370を備える。
【0149】
本実施形態において、受信アンテナ310は、複数の送信アンテナからそれぞれ送信される無線信号を受信する。
【0150】
図18は、一例として4本の送信アンテナから送信された無線信号が受信アンテナ310に届く様子を概念的に示した説明図である。図18を参照すると、送信アンテナTx−1、Tx−2、Tx−3及びTx−4から受信アンテナ310までの無線信号の行路が示されている。これら送信アンテナTx−1、Tx−2、Tx−3及びTx−4は、例えば図16に示したような送信装置52に設けられる。
【0151】
図18において、弧STDは、受信アンテナ310との間に、送信アンテナTx−4から受信アンテナ310までの行路長と等しい距離を有する位置の軌跡を示している。
【0152】
例えば、この送信アンテナTx−4から受信アンテナ310までの行路長を基準とする。そうすると、送信アンテナTx−1についての行路差はd4、送信アンテナTx−2についての行路差はd5、送信アンテナTx−3についての行路差はd6となる。そして、これら行路差は、各送信アンテナTx−nから送信され受信アンテナ310において受信された無線信号に含まれる副搬送波ごとの位相差から求めることができる。
【0153】
図17に戻り、無線受信部320は、受信アンテナ310から出力された無線信号に対し、増幅、周波数変換、アナログ−デジタル変換、フィルタリング、及びインバランス補正等を行う。
【0154】
復調部330は、無線受信部320から出力された受信信号に対し、パケットの検出、同期タイミングと周波数オフセットの測定、OFDMシンボルの切り出し、高速フーリエ変換、チャネル推定等を行う。復調部330によって復調されたストリーム信号は、復号部340及び位相計算部350へ出力される。
【0155】
復号部340は、復調部330から入力された復調済みのストリーム信号のデジタル復調及び復号を行う。復号されたデータ信号は、復号部340から例えばホストCPUへ出力される。
【0156】
また、位相計算部350は、送信アンテナTx−nからそれぞれ送信された各無線信号について、復調部330によって復調されたストリーム信号に含まれる副搬送波ごとに、任意の基準信号との間の位相差を計算する。位相差の計算は、基準信号の複素共役値と副搬送波ごとの信号値とを乗算することにより行ってもよい。さらに、位相計算部350は、計算した位相差を用いて、各送信アンテナTx−nについての位相差平均と位相勾配とを計算する。
【0157】
そして、行路差計算部360は、位相計算部340により計算された各送信アンテナについての位相差平均と位相勾配に基づいて、送信アンテナTx−nのうち任意の2つの送信アンテナTx−nから受信アンテナ310までの行路差を計算する。行路差の計算は、例えば前述した式(1)〜式(11)に従って行われる。
【0158】
ここで、受信装置300は、受信アンテナ310から送信アンテナTx−nまでの行路差を得られたとしても、送信アンテナTx−nの相互の位置関係が分からなければ、送受信装置の位置を特定することができない。
【0159】
そこで、本実施形態では、送信装置52において例えば図6に示したパケットのデータ部(DATA)等に各送信アンテナTx−nの位置情報を挿入する。そして、受信装置300では、復号部340が復号したデータ信号を位置推定部370へ出力し、位置推定部370が各送信アンテナTx−nの当該位置情報を取得する。
【0160】
例えば、送信装置52においてパケットのデータ部に各送信アンテナTx−nの絶対位置情報を挿入したとする。その場合、受信装置300の位置推定部370は、復号部340が復号したデータ信号の中から当該絶対位置情報を取得する。そして、位置推定部370は、取得した絶対位置情報と送信アンテナTx−nのうち2組以上の送信アンテナTx−nの行路差に基づいて、図10〜図12を用いて説明した手法により、受信アンテナ310の絶対位置を推定することができる。
【0161】
このような位置推定方法は、一例として図16に示したように、送信装置52が固定された無線アクセスポイント(又は無線基地局など)、受信装置300が移動可能な端末装置であった場合には特に有効である。その場合、送信装置52は、例えば自らの記憶装置に自装置の絶対位置情報を記録しておき、受信装置300へ送信するパケットにその絶対位置情報を含めて送信してもよい。
【0162】
ここまで、図16〜図18を用いて、本発明の第3の実施形態に係る送信装置52及び受信装置300について説明を行った。本実施形態によれば、送信装置52に設けた複数の送信アンテナTx−nから受信装置300へ、周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号が送信される。受信装置300の位相計算部350は、複数の送信アンテナから受信された前述の各無線信号について、基準信号との間の副搬送波ごとの位相差を計算する。そして、行路差計算部360は、位相計算部350により計算された位相差に基づいて、任意の2つの送信アンテナTx−nから受信アンテナ310までの行路差を計算する。
【0163】
このとき、送信アンテナTx−nの絶対位置情報が例えば無線信号のデータ部を用いて受信装置300へ送信され、受信装置300の位置推定部370によって取得される。それにより、位置推定部370は、取得した絶対位置情報と前述の行路差とに基づいて、受信装置300の受信アンテナ310の絶対位置を推定することができる。
【0164】
ここで、本明細書において説明した第1〜第3の実施形態に係る一連の処理をハードウェアで実現するかソフトウェアで実現するかは問わない。一連の処理又はその一部をソフトウェアで実行させる場合には、ソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ、又は例えば図19に示した汎用コンピュータなどを用いて実行される。
【0165】
図19において、CPU(Central Processing Unit)902は、汎用コンピュータの動作全般を制御する。ROM(Read Only Memory)904には、一連の処理の一部又は全部を記述したプログラム又はデータが格納される。RAM(Random Access Memory)906には、CPU902が演算処理に用いるプログラムやデータなどが一時的に記憶される。
【0166】
CPU902、ROM904、及びRAM906は、バス908を介して相互に接続される。バス908にはさらに、入出力インタフェース910が接続される。
【0167】
入出力インタフェース910は、CPU902、ROM904、及びRAM906と、入力部912、出力部914、記憶部916、通信部918、及びドライブ920とを接続するためのインタフェースである。
【0168】
入力部912は、例えばボタン、スイッチ、レバー、マウスやキーボードなどの入力装置を介して、利用者からの指示や情報入力を受け付ける。出力部914は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)などの表示装置、又はスピーカなどの音声出力装置を介して利用者に対して情報を出力する。
【0169】
記憶部916は、例えばハードディスクドライブ又はフラッシュメモリなどにより構成され、プログラム、プログラムデータ、画像データなどを記憶する。通信部918は、LAN(Local Area Network)又はインターネットなどのネットワークを介する通信処理を行う。ドライブ920は、必要に応じて汎用コンピュータに設けられ、例えばドライブ920にはリムーバブルメディア922が装着される。
【0170】
第1〜第3の実施形態に係る一連の処理をソフトウェアで実行する場合には、例えば図19に示したROM904、記憶部916、又はリムーバブルメディア922に格納されたプログラムが、実行時にRAM906に読み込まれ、CPU902によって実行される。
【0171】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0172】
例えば、図13を用いて説明した第1の実施形態に係る位置推定処理を、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って実行しなくてもよい。各処理ステップは、並列的あるいは個別に独立して実行される処理を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】第1及び第2の実施形態に係る無線通信システムを示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る受信装置の論理的な構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る無線受信部の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係る復調部の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態に係る復号部の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】通信パケットの構成の一例を示す説明図である。
【図7】送信アンテナから各受信アンテナまでの行路差を例示する説明図である。
【図8】副搬送波ごとの位相差と位相のねじれを例示する説明図である。
【図9】第1の実施形態に係る位相計算部の構成の一例を示すブロック図である。
【図10】行路差に基づいて推定される送信アンテナの位置の一例を示す説明図である。
【図11】行路差に基づいて推定される送信アンテナの位置の他の例を示す説明図である。
【図12】行路差に基づいて推定される送信アンテナの位置のさらに別の例を示す説明図である。
【図13】第1の実施形態に係る位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】第2の実施形態に係る受信装置の論理的な構成を示すブロック図である。
【図15】第2の実施形態に係る位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】第3の実施形態に係る無線通信システムを示す模式図である。
【図17】第3の実施形態に係る受信装置の論理的な構成を示すブロック図である。
【図18】各送信アンテナから受信アンテナまでの行路差を例示する説明図である。
【図19】汎用コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0174】
1、3 無線通信システム
50、52 送信装置
100、200、300 受信装置
110−n、310 受信アンテナ
150、350 位相計算部
160、260、360 行路差計算部
170、370 位置推定部
280 制御部(周波数制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号をそれぞれ受信する複数の受信アンテナと;
前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部と;
前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された送信アンテナから前記複数の受信アンテナのうち任意の2つの受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部と:
を備える受信装置。
【請求項2】
前記位相計算部は、前記副搬送波ごとの前記位相差を用いて前記受信アンテナごとに位相差平均と位相勾配とを計算し、
前記行路差計算部は、前記位相計算部により計算された前記位相差平均と前記位相勾配とに基づいて前記行路差を計算する、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記行路差計算部は、前記複数の受信アンテナのうち2組以上の受信アンテナについて前記行路差を計算し;
前記受信装置は:
前記行路差計算部によって2組以上の受信アンテナについて計算された前記行路差を用いて前記送信アンテナの位置を推定する位置推定部;
をさらに備える、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記基準信号は、前記複数の受信アンテナのうちの1つの受信アンテナにより受信される無線信号である、請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記位相計算部は、前記基準信号の複素共役値を計算し、計算された前記基準信号の前記複素共役値と各無線信号に含まれる副搬送波ごとの信号値とを乗算することにより前記位相差を計算する、請求項1に記載の受信装置。
【請求項6】
前記行路差計算部は、前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、部分空間法により前記行路差を計算する、請求項1に記載の受信装置。
【請求項7】
前記位相計算部は、前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに前記基準信号との間の前記位相差を複数回計算し;
前記行路差計算部は、前記位相計算部により複数回計算された複数の前記位相差を用いて前記行路差を計算することにより、前記行路差に含まれる誤差を低減させる;
請求項1に記載の受信装置。
【請求項8】
前記受信装置は:
前記複数の受信アンテナにより受信される無線信号の周波数帯を制御する制御部;
をさらに備え;
前記複数の受信アンテナは、前記制御部による制御に応じて、周波数の異なる副搬送波がそれぞれ多重化された第1の周波数帯の無線信号と第2の周波数帯の無線信号とを受信し;
前記行路差計算部は、前記第1の周波数帯の無線信号について計算された前記受信アンテナごとの第1の位相勾配と、前記第2の周波数帯の無線信号について計算された前記受信アンテナごとの第2の位相勾配とを用いて、前記行路差の計算に用いる位相勾配の誤差を低減させる;
請求項2に記載の受信装置。
【請求項9】
前記無線信号は、直交周波数分割多重方式に従って変調された無線信号である、請求項1に記載の受信装置。
【請求項10】
複数の送信アンテナからそれぞれ送信される複数の無線信号であって、周波数の異なる副搬送波がそれぞれ多重化された無線信号を受信する受信アンテナと;
前記受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部と;
前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された前記複数の送信アンテナのうち任意の2つの送信アンテナから前記受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部と:
を備える受信装置。
【請求項11】
前記位相計算部は、前記基準信号との間の前記副搬送波ごとの前記位相差を用いて、前記送信アンテナごとに位相差平均と位相勾配とを計算し、
前記行路差計算部は、前記位相差平均と前記位相勾配とに基づいて前記行路差を計算する、請求項10に記載の受信装置。
【請求項12】
前記行路差計算部は、前記複数の送信アンテナのうち2組以上の送信アンテナについて前記行路差を計算し;
前記受信装置は:
前記行路差計算部によって2組以上の送信アンテナについて計算された前記行路差を用いて自装置の位置を推定する位置推定部;
をさらに備える、
請求項10に記載の受信装置。
【請求項13】
前記位置推定部は、さらに前記無線信号のデータ部から取得した前記複数の送信アンテナの絶対位置に関する情報を用いて自装置の絶対位置を推定する、請求項12に記載の受信装置。
【請求項14】
周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号をそれぞれ送信する複数の送信アンテナ;
を備える送信装置と:
前記複数の送信アンテナから送信された複数の無線信号を受信する受信アンテナ;
前記受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部;
及び、前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された前記複数の送信アンテナのうち任意の2つの送信アンテナから前記受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部:
を備える受信装置と:
を含む無線通信システム。
【請求項15】
前記受信装置の前記行路差計算部は、前記複数の送信アンテナのうち2組以上の送信アンテナについて前記行路差を計算し;
前記受信装置は:
前記行路差計算部によって2組以上の送信アンテナについて計算された前記行路差を用いて自装置の相対位置を推定する位置推定部;
をさらに備える、
請求項14に記載の無線通信システム。
【請求項16】
前記送信装置は、前記複数の送信アンテナの絶対位置に関する情報を前記無線信号を用いて前記受信装置へ送信し;
前記受信装置の前記位置推定部は、前記無線信号から取得した前記複数の送信アンテナの前記絶対位置に関する情報を用いて自装置の絶対位置を推定する、請求項15に記載の無線通信システム。
【請求項17】
周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号を複数の受信アンテナによりそれぞれ受信するステップと;
前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算するステップと;
計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された送信アンテナから前記複数の受信アンテナのうち任意の2つの受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算するステップと;
を含む、位置推定方法。
【請求項18】
周波数の異なる副搬送波が多重化された無線信号をそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信装置を制御するコンピュータを:
前記複数の受信アンテナにより受信された各無線信号について、当該無線信号に含まれる前記副搬送波ごとに基準信号との間の位相差を計算する位相計算部と;
前記位相計算部により計算された前記位相差に基づいて、前記無線信号が送信された送信アンテナから前記複数の受信アンテナのうち任意の2つの受信アンテナまでの距離の差である行路差を計算する行路差計算部と:
として機能させるための、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−19803(P2010−19803A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182961(P2008−182961)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】