説明

受信装置および受信システム

【課題】ループスルー機能を有する受信装置において、受信した信号を高品質の状態で外部に出力するとともに消費電力の抑制を可能にする。
【解決手段】受信装置10において、入力端子1には、高周波の受信信号が入力される。出力端子2は、入力端子1から入力された受信信号の少なくとも一部を後段の受信装置16に出力するとともに、後段の受信装置16から外部電源電圧Vaの供給を受けるために設けられる。第1の信号経路MSPは、入力端子1から信号処理回路5に至る信号経路である。第2の信号経路LTP1は、入力端子の位置でまたは入力端子よりも信号処理回路寄りの位置で第1の信号経路と接続され、受信信号の少なくとも一部を出力端子に伝送させるために設けられる。第1の高周波増幅器3は、第2の信号経路LTP1上に設けられ、出力端子2を介して受けた外部電源電圧Vaによって動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テレビジョン用の放送信号などの高周波信号を受信するための受信装置および受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、テレビジョン装置で放送信号を受信する場合には、アンテナで受信した放送信号はテレビジョン装置のRF入力端子に入力される。テレビジョン装置は、入力された放送信号を検波してディスプレイに表示する。
【0003】
ビデオデッキやDVDレコーダなどのように受信機能は持つがディスプレイなどの画像表示部を持たない装置で放送信号を受信する場合には、その装置単独では使用されずテレビジョン装置と併用して使用される場合がほとんどである。この場合、受信した放送信号を分配する必要があるが、その方法には大きく分けて2つの方法がある。第1の方法は、これら複数の装置の外部に分配器を設け、分配器によって分配された信号を各受信装置に入力する方法である。第2の方法は、一方の受信装置の内部に信号分配手段を設けて、分配された一方の信号成分をその装置自身の受信信号として利用し、別の信号成分を外部に出力して、別の装置の受信信号として利用する方法である。
【0004】
後者のように、受信装置の内部に設けられた信号分配手段によって、別の受信機の受信信号として使用できるように、受信信号の少なくとも一部を外部出力する機能を一般にループスルー機能とかスルーアウト機能などと呼ぶ。たとえば、ループスルー機能付きDVDレコーダのRF信号入力端子にアンテナで受けた放送信号を入力し、DVDレコーダであるチャンネルの番組を録画する。それと同時に、DVDレコーダのループスルー出力端子より出力される放送信号をテレビジョン装置のRF信号入力端子に接続し、テレビジョン装置で別のチャンネルの番組を視聴するというように使用される。
【0005】
特開2003−110447号公報(特許文献1)の図4には、ループスルー機能を有する複数の衛星受信機40〜60が縦続接続された例が開示されている。アンテナに設けられた低ノイズブロック(LNB)からの信号は、第1の端子を介して受信機に入力され増幅器で増幅される。増幅された信号は、第2の端子から後段の受信機に出力される。
【0006】
特開2007−228524号公報(特許文献2)にも、ループスルー機能を有する受信機の例が示されている。この文献に記載の装置では、アナログ用入力端子に入力された信号をそのまま出力するためのスルーアウト端子が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−110447号公報
【特許文献2】特開2007−228524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、現在、放送のデジタル化が進行しつつある。アナログ放送ではノイズやビートなど受信障害が発生するような悪い受信環境下でもデジタル放送ではある限界値近くまで受信障害のないきれいな画像を受信することができる。その一方で、悪い受信環境下でもアナログ放送の場合には、ノイズが発生するもののあるレベルまで受信できていたが、デジタル放送では受信限界値を超えると突然ブロックノイズやブラックアウトあるいはフリーズなどが発生して放送を受信できなくなってしまう。この結果、視聴者に不安感を与えてしまうことがある。このためデジタル放送用の受信機には、悪条件下においてでもできるだけ受信できるように、より高い受信感度が求められる。
【0009】
ここで、受信感度とは、規定の受信品質を維持するという条件で、受信機に入力される信号レベルをどれくらい低いレベルまで低下させることが可能かという指標である。受信感度は雑音指数と密接な関係がある。雑音指数は入力側のS/N比(Signal to Noise Ratio)を出力側のS/N比で除したものであり、雑音指数が低い方が受信感度も良い。
【0010】
複数の機能ブロックが縦続接続された受信システム全体の雑音指数を考えると、後段の機能ブロックの利得よりも前段の機能ブロックの利得が高いほうが受信システム全体の雑音指数が低くなる。さらには、後段の機能ブロックの雑音指数よりも前段の機能ブロックの雑音指数が低いほうが受信システム全体の雑音指数が低くなる。したがって、受信システム全体における受信感度を上げるには、より前段の機能ブロックでの損失を減らしていくことが重要になる。
【0011】
ループスルー機能を有する複数の受信装置を縦続接続した場合も同様に、後段の受信装置での受信品質を保つためには、前段の受信装置のループスルー機能によって信号をなるべく減衰させないようにすることが重要である。したがって、前段の受信装置では受信した放送信号をそのまま出力するよりも増幅器で増幅してから後段の受信装置に出力するほうが望ましい。
【0012】
たとえば、前述の特開2003−110447号公報(特許文献1)に記載の受信機の場合には、アンテナケーブルを介して第1の端子に入力された放送信号は、第1のコンデンサにより第1の端子に結合された増幅器に入力される。増幅器によって増幅された信号は、復調器に入力されて信号処理されるとともに、第2のコンデンサおよび第2の端子を介して後段の受信機に出力される。
【0013】
しかしながら、この文献に記載の受信機の場合には、受信機内部の電源装置から供給された電源電圧によって増幅器および復調器が駆動されているので、受信機がスタンバイモード状態にあるときでもループスルー機能を維持するために電源装置から増幅器に電源電圧を供給する必要がある。このため、電力消費の点で問題がある。
【0014】
したがって、この発明の目的は、ループスルー機能を有する受信装置において、受信した信号を高品質の状態で外部に出力するとともに消費電力の抑制を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は一局面において受信装置であって、入力端子と、出力端子と、信号処理回路と、電源回路と、第1の信号経路と、第2の信号経路と、第1の高周波増幅器とを備える。入力端子には、高周波の受信信号が入力される。出力端子は、入力端子から入力された受信信号の少なくとも一部を後段の受信装置に出力するとともに、後段の受信装置から外部電源電圧の供給を受けるために設けられる。信号処理回路は、受信信号の少なくとも一部を受けて信号処理を行なう。電源回路は、信号処理回路を駆動するための内部電源電圧を生成する。第1の信号経路は、入力端子から信号処理回路に至る信号経路である。第2の信号経路は、入力端子の位置でまたは入力端子よりも信号処理回路寄りの位置で第1の信号経路と接続され、受信信号の少なくとも一部を出力端子に伝送させるために設けられる。第1の高周波増幅器は、第2の信号経路上に設けられ、出力端子を介して受けた外部電源電圧によって動作する。
【0016】
好ましくは、受信装置は、第2の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに第2の信号経路を介した信号の伝送を遮断する第1のスイッチ部をさらに備える。
【0017】
好ましくは、受信装置は、出力端子から第1の高周波増幅器への外部電源電圧の供給経路上に設けられ、非導通状態のときに第1の高周波増幅器への外部電源電圧の供給を遮断する第2のスイッチ部をさらに備える。
【0018】
好ましくは、受信装置は、第3の信号経路と、第2の高周波増幅器とをさらに備える。第3の信号経路は、第1および第2の信号経路の接続点よりも信号処理回路寄りの位置で第1の信号経路と接続され、受信信号のうち信号処理回路に供給された残余の少なくとも一部を出力端子に伝送させるために設けられた信号経路である。第2の高周波増幅器は、第1および第2の信号経路の接続点と第1および第3の信号経路の接続点との間の第1の信号経路上に設けられ、内部電源電圧で動作する。
【0019】
好ましくは、受信装置は、第1および第2の信号経路の接続点と第1および第3の信号経路の接続点との間の第1の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに信号処理回路および第3の信号経路への受信信号の供給を遮断する第3のスイッチ部をさらに備える。
【0020】
好ましくは、受信装置は、第2の信号経路と並列に設けられ、いかなる高周波増幅器も介さずに受信信号を入力端子から出力端子に伝送させるための第4の信号経路をさらに備える。
【0021】
好ましくは、受信装置は、第4の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに第4の信号経路を介した信号の伝送を遮断する第4のスイッチ部をさらに備える。
【0022】
好ましくは、第1のスイッチ部は、外部電源電圧の供給を受けているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる。
【0023】
好ましくは、第1のスイッチ部は、さらに、電源回路から内部電源電圧が出力されているか否に基づいて導通状態または非導通状態に切替わる。
【0024】
好ましくは、第2のスイッチ部は、外部電源電圧の供給を受けているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる。
【0025】
好ましくは、第2のスイッチ部は、さらに、電源回路から内部電源電圧が出力されているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる。
【0026】
好ましくは、第3のスイッチ部は、電源回路から内部電源電圧が出力されているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる。
【0027】
好ましくは、第4のスイッチ部は、外部電源電圧の供給を受けているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる。
【0028】
好ましくは、第4のスイッチ部は、さらに、電源回路から内部電源電圧が出力されているか否に基づいて導通状態または非導通状態に切替わる。
【0029】
好ましくは、受信装置が、上記の第1のスイッチ部、第2のスイッチ部、第3の信号経路、第2の高周波増幅器、第3のスイッチ部、第4の信号経路、および第4のスイッチ部を備えている場合において、第1〜第4のスイッチ部は次の条件に従って、導通状態または非導通状態に切替わる。すなわち、電源回路から内部電源電圧が出力されておらず、かつ、外部電源電圧の供給を受けている場合には、第1および第2のスイッチ部が導通状態になるともに、第3および第4のスイッチ部が非導通状態になる。電源回路から内部電源電圧が出力されておらず、かつ、外部電源電圧の供給を受けていない場合には、第1および第3のスイッチ部が非導通状態になるとともに、第4のスイッチ部が導通状態になる。電源回路から内部電源電圧が出力されている場合には、第1および第4のスイッチ部が非導通状態になるとともに、第3のスイッチ部が導通状態になる。
【0030】
好ましくは、上記の条件のうち、電源回路から内部電源電圧が出力され、かつ、外部電源電圧の供給を受けていない場合には、さらに、第2のスイッチ部が非導通状態になる。
【0031】
この発明は他の局面において、受信システムであって、高周波の受信信号が入力される第1の受信装置と、信号線および接地線を有するケーブルと、第1の受信装置とケーブルを介して接続された第2の受信装置とを備える。第2の受信装置は、ケーブルの信号線を介して第1の受信装置が受信した受信信号を受けるとともに、直流の外部電源電圧を生成してケーブルの信号線を介して第1の受信装置に出力する。ケーブルの接地線の一端は第1の受信装置の基準電位を与える接地ノードに接続され、ケーブルの接地線の他端は第2の受信装置の基準電位を与える接地ノードに接続される。第1の受信装置は、入力端子と、出力端子と、信号処理回路と、電源回路と、第1の信号経路と、第2の信号経路と、第1の高周波増幅器とを含む。入力端子には、高周波の受信信号が入力される。出力端子は、ケーブルの信号線と接続されることによって、入力端子から入力された受信信号の少なくとも一部を第2の受信装置に出力するとともに、第2の受信装置から外部電源電圧の供給を受けるために設けられる。信号処理回路は、受信信号の少なくとも一部を受けて信号処理を行なう。電源回路は、信号処理回路を駆動するための内部電源電圧を生成する。第1の信号経路は、入力端子から信号処理回路に至る信号経路である。第2の信号経路は、入力端子の位置でまたは入力端子よりも信号処理回路寄りの位置で第1の信号経路と接続され、受信信号の少なくとも一部を出力端子に伝送させるために設けられた信号経路である。第1の高周波増幅器は、第2の信号経路上に設けられ、出力端子を介して受けた外部電源電圧によって動作する。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、入力端子から信号処理回路に至る第1の信号経路とは別に、受信信号の少なくとも一部を出力端子に伝送させるための第2の信号経路が設けられ、さらに、この第2の信号経路上には、後段の受信装置から供給された外部電源電圧によって動作する第1の高周波増幅器が設けられる。このため、受信した高周波信号を高品質の状態で外部に出力するとともに消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施の形態1による受信機A(10)の構成を示すブロック図である。
【図2】電源電圧Vm,Vaに応じたスイッチ部SW1〜SW6の動作を説明するための図である。
【図3】図1の第3のループスルー経路LTP3に配置されるスイッチ部SW1の構成の一例を示す回路図である。
【図4】Nチャネルディプレッション型FETの特性を示す図である。
【図5】第1のループスルー経路LTP1に配置されるスイッチ部SW2,SW3の構成の一例を示す回路図である。
【図6】図1の高周波増幅器3への電源電圧Vaの供給経路に設けられたスイッチ部SW4の構成の一例を示す回路図である。
【図7】図1のスイッチ部SW5,SW6の構成の一例を示す回路図である。
【図8】図1の受信機において、RF入力端子1からループスルー出力端子2までの受信信号の通過特性の一例を示す図である。
【図9】図1の受信機において、RF入力端子1からループスルー出力端子2までの受信信号の通過特性の他の例を示す図である。
【図10】図1の受信機A(10),B(16)の比較例としての受信機A(31),B(40)の構成を示すブロック図である。
【図11】図10のループスルー経路LTP3に設けられたスイッチ部SW8の構成の一例を示す回路図である。
【図12】この発明の実施の形態2による受信機A(50)の構成を示すブロック図である。
【図13】図12の切換え制御部9の構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0035】
<実施の形態1>
[受信機の全体構成]
図1は、この発明の実施の形態1による受信機A(10)の構成を示すブロック図である。図1には、ループスルー機能を有する受信機A(10)と伝送ケーブル11を介して接続される受信機B(16)も併せて示される。受信機A(10)および受信機B(16)によって受信システムが構成される。
【0036】
(受信機Aの構成)
図1を参照して、受信機A(10)は、RF入力端子1と、受信回路5と、ループスルー出力端子2と、高周波増幅器3,4と、分配器6と、電源スイッチ7と、内部電源回路8と、スイッチ部SW1〜SW6とを含む。
【0037】
アンテナ(図示省略)で受信された高周波信号である放送信号は、RF入力端子1に入力される。受信回路5は、主信号経路MSPを介してRF入力端子1と接続される。受信回路5は、入力された放送信号の少なくとも一部を検波するために設けられた信号処理回路である。
【0038】
電源スイッチ7は、ユーザが受信機Aを起動するためのスイッチである。内部電源回路8は、電源スイッチ7を介して受信機A(10)の外部の電源(たとえば、商用電源)と接続され、高周波増幅器4および受信回路5などを駆動するための直流の電源電圧Vmを生成する。
【0039】
ループスルー出力端子2は、伝送ケーブル11の信号線を介して後段の受信機B(16)のRF入力端子12と接続され、入力された放送信号の少なくとも一部を後段の受信機B(16)に出力する。図1に示すように、受信機A(10)には3つのループスルー経路が設けられている。
【0040】
第1のループスルー経路LTP1は、RF入力端子1の位置でまたはRF入力端子1よりも受信回路5寄りの位置で主信号経路MSPと接続される。第1のループスルー経路LTP1を介して、RF入力端子1に入力された放送信号の少なくとも一部がループスルー出力端子2に伝送する。
【0041】
第1のループスルー経路LTP1上には、高周波増幅器3およびスイッチ部SW2,SW3が設けられる。図1の場合には、スイッチ部SW2は高周波増幅器3の入力側に設けられ、スイッチ部SW3は高周波増幅器3の出力側に設けられる。高周波増幅器3の電源端子は、スイッチ部SW4を介してループスルー出力端子2に接続される。出力端子2には後段の受信機Bから直流の電源電圧Vaが供給されている。スイッチ部SW4が導通状態のときには高周波増幅器3に電源電圧Vaが供給され、スイッチ部SW4が非導通状態のときには高周波増幅器3への電源電圧Vaの供給が遮断される。
【0042】
第2のループスルー経路LTP2は、分配器6で分配された一方の信号をループスルー出力端子2より出力するための信号経路である。分配器6は、主信号経路MSP上で、第1のループスルー経路LTP1との接続点ND1よりも受信回路5寄りの位置に設けられる。分配器6で分配された他方の信号は、受信回路5に入力される。
【0043】
接続点ND1と分配器6との間の主信号経路MSP上には、スイッチ部SW5と電源電圧Vmで動作する高周波増幅器4とが設けられる。第2のループスルー経路LTP2上にはスイッチ部SW6が設けられる。図1の場合、スイッチ部SW5は高周波増幅器4の入力側に設けられる。スイッチ部SW5,SW6が導通状態のとき、RF入力端子1に入力された放送信号は、高周波増幅器4によって増幅された後、一部が受信回路5に入力されるとともに残りが第2のループスルー経路LTP2を介してループスルー出力端子2に伝送される。スイッチ部SW5,SW6が非導通状態のとき、受信回路5および第2のループスルー経路LTP2への放送信号の供給が遮断される。
【0044】
第3のループスルー経路LTP3は、第1のループスルー経路LTP1と並列に設けられる。第3のループスルー経路LTP3は、いかなる高周波増幅器も介さずに、RF入力端子1に入力された放送信号の少なくとも一部をループスルー出力端子2に伝送する。
【0045】
第3のループスルー経路LTP3には、スイッチ部SW1が設けられる。スイッチ部SW1が導通状態のとき、RF入力端子1に入力された放送信号の少なくとも一部が、第3のループスルー経路LTP3を介してループスルー出力端子2に伝送される。スイッチ部SW1が非導通状態のとき、第3のループスルー経路LTP3を介した信号の伝送が遮断される。
【0046】
(受信機Bの構成)
受信機B(16)は、RF入力端子12と、受信回路15と、コイルL1と、スイッチ部SW7と、直流電源13とを含む。
【0047】
RF入力端子12は、伝送ケーブル11の信号線によって前段の受信機A(10)のループスルー出力端子2と接続される。伝送ケーブル11の信号線を介して受信機A(10)から受信機B(16)に放送信号が伝送されるとともに、受信機B(16)から受信機A(10)に直流の電源電圧Vaが供給される。
【0048】
なお、伝送ケーブル11は信号線とともに接地線を有する。接地線の一端は受信機A(10)の基準電位を与える接地ノードに接続され、接地線の他端は受信機B(16)の基準電位を与える接地ノードに接続される。これによって、受信機A(10)および受信機B(16)のグランドが共通になる。
【0049】
受信回路15は、RF入力端子12と接続され、RF入力端子12を介して放送信号を受信する。受信回路15は、受信した放送信号の信号処理を行なう。
【0050】
コイルL1、スイッチ部SW7、および直流電源13は、この順でRF入力端子12と接地ノードGNDとの間に接続される。コイルL1は、高周波信号を遮断するために設けられる。直流電源13で生成された電源電圧Vaは、受信機A(10)の第1のループスルー経路LTP1に設けられた高周波増幅器3を駆動するために用いられる。
【0051】
なお、衛星放送受信機や地上波受信機にはアンテナ駆動用電源を持っている受信機が多い。前段の受信機A(10)のループスルー端子を介して放送信号を受ける場合には、後段の受信機B(16)からアンテナ駆動用の電源電圧を供給する必要がないため、このアンテナ駆動用の電源を高周波増幅器3の駆動用の電源として用いれば、直流電源13を新たに設ける必要がない。
【0052】
[スイッチ部SW1〜SW6の動作]
スイッチ部SW1〜SW6は、受信機A(10)の内部電源回路8から電源電圧Vmが出力されているか否かという条件と、ループスルー出力端子2を介して後段の受信機から電源電圧Vaが供給されているか否かという条件とに基づいて、導通状態(オン)または非導通状態(オフ)に切替わる。以下、スイッチ部SW1〜SW6の動作について説明する。
【0053】
図2は、電源電圧Vm,Vaに応じたスイッチ部SW1〜SW6の動作を説明するための図である。図2に示す真理値表において、電源電圧Vm,Vaについて、「1」のとき電源電圧が供給されていることを意味し、「0」のとき電源電圧が供給されていないことを意味する。スイッチ部SW1〜SW6について、「1」のときオン状態を意味し、「0」のときオフ状態を意味する。
【0054】
電源電圧Vm,Vaが共に供給されていないときには、高周波増幅器3,4は動作できないので、第3のループスルー経路LTP3を用いて放送信号を後段に出力する必要がある。このため、スイッチ部SW1のみオン状態になり、他のスイッチ部SW2〜SW6は全てオフ状態となる。なお、電源電圧Vmが供給されていない場合は、受信機A(10)の電源スイッチ7がオフ状態であり、内部電源回路8が動作していない場合に相当する。電源電圧Vaが供給されていない場合は、受信機B(16)が増幅器駆動用の直流電源13を有していない場合か、もしくは、増幅器駆動用の直流電源13を有していても、使用者がスイッチ部SW7をオフ状態に設定して使用している場合に相当する。
【0055】
電源電圧Vmが供給されていないが、後段の受信機B(16)から電源電圧Vaが供給されているときには、高周波増幅器3を動作させることによって受信機B(16)に入力される信号強度を増やすことができるので、第1のループスルー経路LTP1が用いられる。すなわち、スイッチ部SW2,SW3,SW4がオン状態になり、残りのスイッチ部SW1,SW5,SW6がオフ状態になる。なお、このような電源電圧Vm,Vaの供給状態は、受信機A(10)が電源オフ状態であり、かつ、受信機B(16)の直流電源13から電源電圧Vaが受信機A(10)に供給される場合に相当する。
【0056】
電源電圧Vmが供給されている場合には、後段の受信機B(16)からの電源電圧Vaの供給の有無にかかわらず、高周波増幅器4を動作できるので第2のループスルー経路LTP2が用いられる。すなわち、スイッチ部SW5,SW6がオン状態になり、残りのスイッチ部SW1〜SW4が全てオフ状態となる。これは受信機A(10)の電源スイッチ7がオン状態であり、受信機A(10)が使用中の場合に相当する。
【0057】
なお、上記のループスルー経路の切換えにおいて、受信機A(10)が電源オフの場合には、スイッチ部SW5,SW6によって受信回路5はループスルー経路LTP1またはLTP3から完全に切り離される。このため、オフ状態の受信回路5の影響で後段の受信機に供給される信号のVSWR(電圧定在波比)が増加したり、周波数特性が劣化したりすることはない。
【0058】
[スイッチ部SW1〜SW6の具体的な回路例]
以下、図2の真理値表を実現することができるスイッチ部SW1〜SW6の構成例について説明する。
【0059】
(スイッチ部SW1の回路例)
図3は、図1の第3のループスルー経路LTP3に配置されるスイッチ部SW1の構成の一例を示す回路図である。
【0060】
図3を参照して、スイッチ部SW1は、端子17〜20と、ディプレッション型のNチャネルFET(Field Effect Transistor)Q1と、コンデンサC1,C2と、抵抗素子R1〜R4と、ダイオードD1〜D3とを含む。高周波信号は、端子17,18のいずれか一方に入力されて他方から出力される(すなわち、高周波信号の通過方向はどちらでもよい)。端子19には電源電圧Vaが印加され、端子20には電源電圧Vmが印加される。以下では、FETQ1の主電極のうち、端子18側の主電極をソースとし、端子17側の主電極をドレインとする。ただし、FETQ1は構造的に対称であるので、端子17側の主電極をソースとし、端子18側の主電極をドレインとしてもよい。
【0061】
まず、これらの構成要素間の接続について説明する。コンデンサC1、FETQ1、およびコンデンサC2は、この順で端子17,18間に接続される。ダイオードD1のアノードはFETQ1のゲートに接続され、カソードは接地ノードGNDに接続される。抵抗素子R1およびダイオードD2は、FETQ1およびコンデンサC2の接続ノードND2と端子19との間に、ダイオードD2のアノードが端子19側となるように直列に接続される。ダイオードD3のカソードは、抵抗素子R1およびダイオードD2の接続ノードND3に接続され、アノードは端子20に接続される。抵抗素子R2は、接続ノードND3とFETQ1のゲートとの間に接続される。抵抗素子R3は、接続ノードND3と接地ノードGNDとの間に接続される。抵抗素子R4は、端子20と接地ノードGNDとの間に接続される。
【0062】
図4は、Nチャネルディプレッション型FETの特性を示す図である。図4のX軸はFETのソース電位を基準にしたゲート電位(ゲート・ソース間電圧Vgs)を表わし、Y軸はドレイン電流Idを表わす。図中のVpはピンチオフ電圧を意味し、このピンチオフ電圧Vpより低いゲート・ソース間電圧VgsであればFETのドレイン電流Idは流れずトランジスタはオフする。ゲート・ソース間電圧Vgsが0Vの場合はドレイン電流Idが流れる(トランジスタはオン状態)。
【0063】
再び図3を参照して、図3に示す回路の動作を説明する。
まず、端子19,20に電源電圧Va,Vmが供給されていない場合には、FETQ1のゲートとソースはともに0Vであり、ゲート・ソース間電圧Vgsが0VとなってFETQ1はオン状態となる。
【0064】
端子19に電源電圧Vaが供給され、端子20に電源電圧Vmが供給されていない場合には、ダイオードD1,D2がオンするので、FETQ1のゲート電位は約0.7[V]となり、ソース電位は(Va−0.7)[V]となる。したがって、ゲート・ソース間電圧Vgsは、
Vgs=0.7−(Va−0.7)=1.4−Va[V]
となる。よって、1.4−VaがFETのピンチオフ電圧Vpより低くなるような電源電圧Vaの値であればFETQ1はオフ状態となる。
【0065】
端子19に電源電圧Vaが供給されておらず、端子20に電源電圧Vmが供給されている場合には、ダイオードD1,D3がオンするので、FETQ1のゲート電位は約0.7[V]となり、ソース電位は(Vm−0.7)[V]となる。したがって、ゲート・ソース間電圧Vgsは、
Vgs=0.7−(Vm−0.7)=1.4−Vm[V]
となる。よって、1.4−VmがFETのピンチオフ電圧Vpより低くなるような電源電圧Vmの値であればFETQ1はオフ状態となる。
【0066】
端子19に電源電圧Vaが供給され、端子20に電源電圧Vmが供給されている場合には、ダイオードD1がオンするので、FETQ1のゲート電位は約0.7Vになる。さらに、ダイオードD2およびダイオードD3のうちの少なくとも一方のダイオードがオンする。1.4−Vaもしくは1.4−VmがFETQ1のピンチオフ電圧Vpより低くなるように電源電圧Vm,Vaの値が設定されていればFETQ1はオフ状態となる。
【0067】
以上のとおり、図2の真理値表に示したように、電源電圧Va,Vmが共に供給されないときのみスイッチ部SW1がオン状態になる。
【0068】
(スイッチ部SW2,SW3の回路例)
図5は、第1のループスルー経路LTP1に配置されるスイッチ部SW2,SW3の構成の一例を示す回路図である。スイッチ部SW2,SW3の構成は同じである。
【0069】
図5を参照して、スイッチ部SW2(またはSW3)は、端子21〜24と、ダイオードD4と、コンデンサC3,C4と、抵抗素子R5〜R8とを含む。高周波信号は、端子21,22のいずれか一方に入力されて他方から出力される(すなわち、高周波信号の通過方向はどちらでもよい)。端子23には電源電圧Vaが印加され、端子24には電源電圧Vmが印加される。
【0070】
まず、これらの構成要素間の接続について説明する。ダイオードD4のアノードND11は、コンデンサC3を介して端子21に接続されるとともに、抵抗素子R5を介して端子23に接続される。ダイオードD4のアノードND11は、さらに、抵抗素子R6を介して接地ノードGNDに接続される。ダイオードD4のカソードND12は、コンデンサC4を介して端子22に接続されるとともに、抵抗素子R7を介して端子24に接続される。ダイオードD4のカソードND12は、さらに、抵抗素子R8を介して接地ノードGNDに接続される。
【0071】
ここで、抵抗素子R5〜R8の抵抗値は、端子23,24に電源電圧Va,Vmが印加されているとき、ダイオードD4のアノードND11の電位V1がカソードND12の電位V2よりも小さくなるように、すなわち、V1<V2の関係を満たすように設定される。
【0072】
次に、図5に示す回路の動作について説明する。
まず、端子23,24に電源電圧Va,Vmが供給されていない場合には、ダイオードD4はオフ状態になる。
【0073】
端子23に電源電圧Vaが供給され、端子24に電源電圧Vmが供給されていない場合には、ダイオードD4は順バイアスとなるのでオンする。
【0074】
端子23に電源電圧Vaが供給されておらず、端子24に電源電圧Vmが供給されている場合には、ダイオードD4は逆バイアスとなるのでオフする。
【0075】
端子23に電源電圧Vaが供給され、端子24に電源電圧Vmが供給されている場合には、アノードND11の電位V1およびカソードND12の電位V2について、V1<V2の関係が成立するので、ダイオードD4は逆バイアスとなるのでオフする。
【0076】
以上のとおり、図2の真理値表で示したように、端子23に電源電圧Vaが供給され、かつ、端子24に電源電圧Vmが供給されていないときのみ、スイッチ部SW2およびSW3がオン状態になる。
【0077】
(スイッチ部SW4の回路例)
図6は、図1の高周波増幅器3への電源電圧Vaの供給経路に設けられたスイッチ部SW4の構成の一例を示す回路図である。
【0078】
図6を参照して、スイッチ部SW4は、端子25〜27と、PNP型のバイポーラトランジスタQ2と、NPN型のバイポーラトランジスタQ3,Q4と、抵抗素子R9〜R14とを含む。端子25には電源電圧Vmが印加され、端子26には電源電圧Vaが印加される。端子27は、高周波増幅器3の電源端子と接続される。
【0079】
まず、これらの構成要素間の接続について説明する。トランジスタQ2のエミッタは端子26に接続され、コレクタは端子27に接続され、ベースは抵抗素子R13を介して端子26に接続される。トランジスタQ3のコレクタは抵抗素子R11を介して端子26に接続され、エミッタは接地ノードGNDに接続され、ベースは抵抗素子R10を介して端子25に接続される。端子25は、抵抗素子R9を介して接地ノードGNDに接続される。トランジスタQ4のコレクタは抵抗素子R14を介してトランジスタQ2のベースに接続され、エミッタは接地ノードGNDに接続され、ベースは抵抗素子R12を介してトランジスタQ3のコレクタと接続される。
【0080】
次に、図6に示す回路の動作について説明する。
まず、端子25,26に電源電圧Vm,Vaが供給されていない場合には、トランジスタQ2はオフ状態になる。
【0081】
端子25に電源電圧Vmが供給されておらず、端子26に電源電圧Vaが供給されている場合には、トランジスタQ3はオフし、トランジスタQ4はオンするので、トランジスタQ2はオン状態になる。
【0082】
端子25に電源電圧Vmが供給され、端子26に電源電圧Vaが供給されていない場合には、トランジスタQ2はオフ状態になる。
【0083】
端子25に電源電圧Vmが供給され、端子26に電源電圧Vaが供給されている場合には、トランジスタQ3はオンし、トランジスタQ4はオフするので、トランジスタQ2はオフする。
【0084】
以上のとおり、図2の真理値表で示したように、電源電圧Vmが供給されておらず、かつ、電源電圧Vaが供給されている場合にのみスイッチ部SW4がオン状態になるので、電源電圧Vaが高周波増幅器3に供給され、これによって、高周波増幅器3が動作する。
【0085】
(スイッチ部SW5,SW6の回路例)
図7は、図1のスイッチ部SW5,SW6の構成の一例を示す回路図である。スイッチ部SW5,SW6の構成は同じである。
【0086】
図7を参照して、スイッチ部SW5(またはSW6)は、端子44〜46と、ダイオードD6と、コンデンサC7,C8と、抵抗素子R18,R19とを含む。高周波信号は、端子44,46のいずれか一方に入力されて他方から出力される(すなわち、高周波信号の通過方向はどちらでもよい)。端子45には電源電圧Vmが印加される。
【0087】
まず、これらの構成要素間の接続について説明する。ダイオードD6のアノードは、コンデンサC7を介して端子44に接続されるとともに、抵抗素子R18を介して端子45に接続される。ダイオードD6のカソードは、コンデンサC8を介して端子46に接続されるとともに、抵抗素子R19を介して接地ノードGNDに接続される。
【0088】
次に、図7に示す回路の動作について説明する。端子45に電源電圧Vmが供給されている場合にはダイオードD6はオンし、端子45に電源電圧Vmが供給されていない場合にはダイオードD6はオフする。したがって、スイッチ部SW5,SW6は、電源電圧Vmが供給されているときオン状態になり、電源電圧Vmが供給されていないときオフ状態になる。
【0089】
[ループスルー経路の通過特性]
(電源電圧Vaが供給され、Vmが供給されていない場合)
図8は、図1の受信機において、RF入力端子1からループスルー出力端子2までの受信信号の通過特性の一例を示す図である。図8には、図1において後段の受信機B(16)から電源電圧Vaが供給され、内部電源回路8によって電源電圧Vmが生成されていない場合、すなわち、第1のループスルー経路LTP1を介して受信信号が伝送される場合が示される。受信信号の周波数範囲は、47MHzから862MHzである。
【0090】
図8に示すように入出力端子1,2間の利得は0dBであり、第1のループスルー経路LTP1に設けられた高周波増幅器3で信号を増幅することによって、損失がほとんどない状態で受信信号を伝送することができる。なお、高周波増幅器3の利得をさらに増加させれば、入出力端子1,2間に正の利得を持たせることもできる。
【0091】
(電源電圧Va,Vmが供給されていない場合)
図9は、図1の受信機において、RF入力端子1からループスルー出力端子2までの受信信号の通過特性の他の例を示す図である。図9には、図1において後段の受信機B(16)から電源電圧Vaが供給されず、内部電源回路8によって電源電圧Vmも生成されていない場合、すなわち、第3のループスルー経路LTP3を介して受信信号が伝送される場合が示される。受信信号の周波数範囲は、47MHzから862MHzであり、図8と同じである。
【0092】
第3のループスルー経路LTP3に設けられたスイッチ部SW1を構成するFETQ1は、オン状態のときドレイン・ソース間にオン抵抗が存在する。このせいで、図9に示すように、約2dBの損失が生じる。
【0093】
[比較例の受信機]
以下、第1のループスルー経路LTP1が設けられていない受信機の例を比較例として挙げて、図1で説明した第1のループスルー経路LTP1が設けられた受信機A(10)と比較する。
【0094】
図10は、図1の受信機A(10),B(16)の比較例としての受信機A(31),B(40)の構成を示すブロック図である。
【0095】
図10の受信機A(31)は、第1のループスルー経路LTP1と、この経路上のスイッチ部SW2,SW3および高周波増幅器3とが設けられていない点で図1の受信機A(10)と異なる。さらに、図10の受信機B(40)は、コイルL1、スイッチ部SW7、および直流電源13が設けられていない点で図1の受信機B(16)と異なる。図10のその他の点は、ループスルー経路LTP3に設けられたスイッチ部SW8の構成を除いて、図1の場合と同じである。図10において、図1と対応する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0096】
図11は、図10のループスルー経路LTP3に設けられたスイッチ部SW8の構成の一例を示す回路図である。
【0097】
図11を参照して、スイッチ部SW8は、端子41〜43と、ディプレッション型のNチャネルFETQ5と、コンデンサC5,C6と、抵抗素子R15〜R17と、ダイオードD5とを含む。高周波信号は、端子41,43のいずれか一方に入力されて他方から出力される(すなわち、高周波信号の通過方向はどちらでもよい)。端子42には電源電圧Vmが印加される。以下では、FETQ5の主電極のうち、端子43側の主電極をソースとし、端子41側の主電極をドレインとする。ただし、FETQ5は構造的に対称であるので、端子41側の主電極をソースとし、端子43側の主電極をドレインとしてもよい。
【0098】
まず、これらの構成要素間の接続について説明する。コンデンサC5、FETQ5、およびコンデンサC6は、この順で端子41,43間に接続される。ダイオードD5のアノードはFETQ5のゲートに接続され、カソードは接地ノードGNDに接続される。抵抗素子R15は、FETQ5およびコンデンサC6の接続ノードND4と端子42との間に接続される。抵抗素子R16は、端子42とFETQ5のゲートとの間に接続される。抵抗素子R17は、端子42と接地ノードGNDとの間に接続される。
【0099】
次に、図11に示す回路の動作について説明する。まず、端子42に電源電圧Vmが供給されている場合、FETQ5のソース電位は電源電圧Vmに等しくなり、FETQ5のゲート電位はダイオードD5がオンするため約0.7Vの電位となる。したがって、FETQ5のゲート・ソース間電圧Vgsは(0.7−Vm)[V]に等しくなる。ここで、図4で説明したピンチオフ電圧Vpより(0.7−Vm)が十分低くなるようにしておけばFET(Q5)はオフし、端子41,端子43間には信号伝送がない。
【0100】
一方、端子42に電源電圧Vmが供給されていない場合、端子42は抵抗素子R17を介して接地ノードGNDに接続されているため、端子42の電位は0Vになる。したがって、FETQ5のソース電位およびゲート電位はともに0Vとなり、ゲート・ソース間電圧Vgsが0Vとなる。この結果、FETQ5がオン状態となることによって、端子41,43間を信号が伝送可能になる。
【0101】
このように、図10のスイッチ部SW8は、電源電圧Vmが供給されているときオフ状態になり、電源電圧Vmが供給されていないときオン状態なる。
【0102】
再び図10を参照して、比較例の受信機A(31)の動作について説明する。
まず、受信機A(31)の電源スイッチ7がオンの場合、スイッチ部SW5およびSW6はオン状態になり、スイッチ部SW8はオフ状態になるので、RF入力端子1に入力された放送信号はスイッチ部SW5を介して高周波増幅器4に入力される。増幅された信号は分配器6で分配され、分配された信号のひとつは受信回路5に伝送され、受信回路5によって、希望するチャンネルの信号が検波される。分配された別の信号はループスルー経路LTP2に設けられたスイッチ部SW6を介してループスルー出力端子2に伝送され、ループスルー出力端子2から伝送ケーブル11を介して後段の受信機B(40)のRF入力端子12に入力される。
【0103】
逆に、受信機A(31)の電源スイッチ7がオフの場合、内部電源回路8に電源供給されないため、高周波増幅器4や受信回路5は動作しない。スイッチ部SW8はオン状態になり、スイッチ部SW5,SW6はオフ状態になる。RF入力端子1に入力された放送信号は、ループスルー経路LTP3に設けられたスイッチ部SW8を介してループスルー出力端子2に伝送される。伝送された信号は、伝送ケーブル11を介して受信機B(40)のRF入力端子12に入力される。
【0104】
後者の場合には、ループスルー経路LTP3を介して信号が伝送するので、図9、図11で説明したように、スイッチ部SW8に設けられたFETQ5のオン抵抗によって約2dBの損失があるので信号品質が劣化してしまうという問題がある。この損失を回避するために、受信機A(31)の受信回路5が動作中でない場合でも高周波増幅器4に常に待機電力を供給するようにすれば、ループスルー経路LTP2を介して放送信号を出力することができるが、省電力の観点から好ましくない。高周波増幅器4に常に電力を供給し続けると増幅素子の寿命が短くなるので信頼性の劣化にもつながる。
【0105】
実施の形態1による受信機A(10)では、図1で説明したように、第1のループスルー経路LTP1に高周波増幅器3が設けられるとともに、高周波増幅器3に供給する駆動電圧が後段の受信機B(16)から供給される。さらに、受信機A(10)の内部電源回路8から電源電圧Vmが出力されているか否かという条件と、後段の受信機B(16)から電源電圧Vaが供給されているか否かという条件とに基づいてループスルー経路の切換えが行なわれる。このため、電源電圧Vm,Vaの供給の状況に応じて、消費電力と後段の受信機に出力する信号の品質とを最適化することができる。この結果、高性能かつ低消費電力の受信システムを構築できる。
【0106】
<実施の形態2>
図12は、この発明の実施の形態2による受信機A(50)の構成を示すブロック図である。
【0107】
図12の受信機A(50)は、切換え制御部9をさらに含む点で図1の受信機A(10)と異なる。切換え制御部9は、電源電圧Vm,Vaが供給されているか否かに基づいて、出力する制御電圧Vs1,Vs2をハイ(H)レベルまたはロー(L)レベルに切換える。なお、切換え制御部9は、電源スイッチ7がオフ状態の場合でも、すなわち、内部電源回路8が動作していない場合でも、待機電源から電源供給を受けて動作するように構成される。
【0108】
図12の受信機A(50)は、さらに、スイッチ部SW1〜SW4に代えてスイッチ部SW11〜SW14を含む点で図1の受信機A(10)と異なる。スイッチ部SW11〜SW14は、たとえば、ゲート電位がハイ(H)レベルのときドレイン-ソース間が導通状態(オン状態)となり、ゲート電位がロー(L)レベルのときドレイン-ソース間が非導通状態(オフ状態)となるエンハンスメント型のNチャネルFETによって構成される。
【0109】
図13は、図12の切換え制御部9の構成の一例を示す回路図である。図13を参照して、切換え制御部9は、端子61〜64と、NORゲート65と、ANDゲート66と、インバータ67とを含む。
【0110】
端子61には電源電圧Vmが印加され、端子62には電源電圧Vaが印加される。端子63からはスイッチ部SW11を構成するFETのゲートに制御電圧Vs1が出力される。端子64からはスイッチ部SW12,SW13,SW14を構成するFETのゲートに制御電圧Vs2が出力される。
【0111】
NORゲート65の第1の入力ノードは、端子61と接続されることによって電源電圧Vmを受ける。NORゲート65の第2の入力ノードは、端子62と接続されることによって電源電圧Vaを受ける。NORゲート65の出力ノードは端子63と接続される。
【0112】
ANDゲート66の第1の入力ノードは、インバータ67を介して端子61と接続されることによって、電源電圧Vmが供給されているときにLレベルの信号を受け、電源電圧Vmが供給されていないときにHレベルの信号を受ける。ANDゲート66の第2の入力ノードは、端子62と接続されることによって電源電圧Vaを受ける。ANDゲート66の出力ノードは端子64と接続される。
【0113】
以上の構成によって、電源電圧Vm,Vaが共に供給されていないときには、端子63からHレベルの信号が出力され、端子64からLレベルの信号が出力される。この結果、スイッチ部SW11はオン状態になり、スイッチ部SW12,SW13,SW14はオフ状態になる。
【0114】
電源電圧Vmが供給されていないが、電源電圧Vaが供給されている場合には、端子63からLレベルの信号が出力され、端子64からHレベルの信号が出力される。この結果、スイッチ部SW11はオフ状態になり、スイッチ部SW12,SW13,SW14はオン状態になる。
【0115】
電源電圧Vmが供給されているが、電源電圧Vaが供給されていない場合には、端子63,64の両方からLレベルの信号が出力される。この結果、スイッチ部SW11〜SW14はオフ状態になる。
【0116】
電源電圧Vm,Vaが共に供給されている場合にも、端子63,64の両方からLレベルの信号が出力される。この結果、スイッチ部SW11〜SW14はオフ状態になる。
【0117】
このように、図13の構成の切換え制御部9によって、図2と同じスイッチ部の制御が実現できていることがわかる(ただし、図2のスイッチ部SW1〜SW4は、スイッチ部SW11〜SW14にそれぞれ対応する)。したがって、実施の形態1の場合と同様に、電源電圧Vm,Vaの供給の状況に応じて、消費電力と後段の受信機に出力する信号の品質とを最適化することができる。ただし、実施の形態2の場合には、受信機A(40)が未使用の場合であっても、切換え制御部9に供給する待機電力が必要になる。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1,12 RF入力端子、2 ループスルー出力端子、3,4 高周波増幅器、5,15 受信回路、6 分配器、7 電源スイッチ、8 内部電源回路、9 切換え制御部、10,16,50 受信機、11 伝送ケーブル、13 直流電源、LTP1,LTP2,LTP3 ループスルー経路、MSP 主信号経路、SW1〜SW8,SW11〜SW14 スイッチ部、Va,Vm 電源電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波の受信信号が入力される入力端子と、
前記入力端子から入力された前記受信信号の少なくとも一部を後段の受信装置に出力するとともに、前記後段の受信装置から外部電源電圧の供給を受けるための出力端子と、
前記受信信号の少なくとも一部を受けて信号処理を行なう信号処理回路と、
前記信号処理回路を駆動するための内部電源電圧を生成する電源回路と、
前記入力端子から前記信号処理回路に至る第1の信号経路と、
前記入力端子の位置でまたは前記入力端子よりも前記信号処理回路寄りの位置で前記第1の信号経路と接続され、前記受信信号の少なくとも一部を前記出力端子に伝送させるための第2の信号経路と、
前記第2の信号経路上に設けられ、前記出力端子を介して受けた前記外部電源電圧によって動作する第1の高周波増幅器とを備えた受信装置。
【請求項2】
前記第2の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに前記第2の信号経路を介した信号の伝送を遮断する第1のスイッチ部をさらに備える、請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記出力端子から前記第1の高周波増幅器への前記外部電源電圧の供給経路上に設けられ、非導通状態のときに前記第1の高周波増幅器への前記外部電源電圧の供給を遮断する第2のスイッチ部をさらに備える、請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記第1および第2の信号経路の接続点よりも前記信号処理回路寄りの位置で前記第1の信号経路と接続され、前記受信信号のうち前記信号処理回路に供給された残余の少なくとも一部を前記出力端子に伝送させるための第3の信号経路と、
前記第1および第2の信号経路の接続点と前記第1および第3の信号経路の接続点との間の前記第1の信号経路上に設けられ、前記内部電源電圧で動作する第2の高周波増幅器とを備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記第1および第2の信号経路の接続点と前記第1および第3の信号経路の接続点との間の前記第1の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに前記信号処理回路および前記第3の信号経路への前記受信信号の供給を遮断する第3のスイッチ部をさらに備える、請求項4に記載の受信装置。
【請求項6】
前記第2の信号経路と並列に設けられ、いかなる高周波増幅器も介さずに前記受信信号を前記入力端子から前記出力端子に伝送させるための第4の信号経路をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記第4の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに前記第4の信号経路を介した信号の伝送を遮断する第4のスイッチ部をさらに備える、請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
前記第1のスイッチ部は、前記外部電源電圧の供給を受けているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる、請求項2に記載の受信装置。
【請求項9】
前記第1のスイッチ部は、さらに、前記電源回路から前記内部電源電圧が出力されているか否に基づいて導通状態または非導通状態に切替わる、請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
前記第2のスイッチ部は、前記外部電源電圧の供給を受けているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる、請求項3に記載の受信装置。
【請求項11】
前記第2のスイッチ部は、さらに、前記電源回路から前記内部電源電圧が出力されているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる、請求項10に記載の受信装置。
【請求項12】
前記第3のスイッチ部は、前記電源回路から前記内部電源電圧が出力されているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる、請求項5に記載の受信装置。
【請求項13】
前記第4のスイッチ部は、前記外部電源電圧の供給を受けているか否かに基づいて導通状態または非導通状態に切替わる、請求項7に記載の受信装置。
【請求項14】
前記第4のスイッチ部は、さらに、前記電源回路から前記内部電源電圧が出力されているか否に基づいて導通状態または非導通状態に切替わる、請求項13に記載の受信装置。
【請求項15】
前記受信装置は、さらに、
前記第2の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに前記第2の信号経路を介した信号の伝送を遮断する第1のスイッチ部と、
前記出力端子から前記第1の高周波増幅器への前記外部電源電圧の供給経路上に設けられ、非導通状態のときに前記第1の高周波増幅器への前記外部電源電圧の供給を遮断する第2のスイッチ部と、
前記第1および第2の信号経路の接続点よりも前記信号処理回路寄りの位置で前記第1の信号経路と接続され、前記受信信号のうち前記信号処理回路に供給された残余の少なくとも一部を前記出力端子に伝送させるための第3の信号経路と、
前記第1および第2の信号経路の接続点と前記第1および第3の信号経路の接続点との間の前記第1の信号経路上に設けられ、前記内部電源電圧で動作する第2の高周波増幅器と、
前記第1および第2の信号経路の接続点と前記第1および第3の信号経路の接続点との間の前記第1の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに前記信号処理回路および前記第3の信号経路への前記受信信号の供給を遮断する第3のスイッチ部と、
前記第2の信号経路と並列に設けられ、いかなる高周波増幅器も介さずに前記受信信号を前記入力端子から前記出力端子に伝送させるための第4の信号経路と、
前記第4の信号経路上に設けられ、非導通状態のときに前記第4の信号経路を介した信号の伝送を遮断する第4のスイッチ部とを備え、
前記電源回路から前記内部電源電圧が出力されておらず、かつ、前記外部電源電圧の供給を受けている場合には、前記第1および第2のスイッチ部が導通状態になるともに、前記第3および第4のスイッチ部が非導通状態になり、
前記電源回路から前記内部電源電圧が出力されておらず、かつ、前記外部電源電圧の供給を受けていない場合には、前記第1および第3のスイッチ部が非導通状態になるとともに、前記第4のスイッチ部が導通状態になり、
前記電源回路から前記内部電源電圧が出力されている場合には、前記第1および第4のスイッチ部が非導通状態になるとともに、前記第3のスイッチ部が導通状態になる、請求項1に記載の受信装置。
【請求項16】
前記電源回路から前記内部電源電圧が出力され、かつ、前記外部電源電圧の供給を受けていない場合には、さらに、前記第2のスイッチ部が非導通状態になる、請求項15に記載の受信装置。
【請求項17】
受信システムであって、
高周波の受信信号が入力される第1の受信装置と、
信号線および接地線を有するケーブルと、
前記第1の受信装置と前記ケーブルを介して接続された第2の受信装置とを備え、
前記第2の受信装置は、前記ケーブルの信号線を介して前記第1の受信装置が受信した前記受信信号を受けるとともに、直流の外部電源電圧を生成して前記ケーブルの信号線を介して前記第1の受信装置に出力し、
前記ケーブルの接地線の一端は前記第1の受信装置の基準電位を与える接地ノードに接続され、前記ケーブルの接地線の他端は前記第2の受信装置の基準電位を与える接地ノードに接続され、
前記第1の受信装置は、
高周波の前記受信信号が入力される入力端子と、
前記ケーブルの信号線と接続されることによって、前記入力端子から入力された前記受信信号の少なくとも一部を前記第2の受信装置に出力するとともに、前記第2の受信装置から外部電源電圧の供給を受けるための出力端子と、
前記受信信号の少なくとも一部を受けて信号処理を行なう信号処理回路と、
前記信号処理回路を駆動するための内部電源電圧を生成する電源回路と、
前記入力端子から前記信号処理回路に至る第1の信号経路と、
前記入力端子の位置でまたは前記入力端子よりも前記信号処理回路寄りの位置で前記第1の信号経路と接続され、前記受信信号の少なくとも一部を前記出力端子に伝送させるための第2の信号経路と、
前記第2の信号経路上に設けられ、前記出力端子を介して受けた前記外部電源電圧によって動作する第1の高周波増幅器とを備えた受信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−9226(P2013−9226A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141531(P2011−141531)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】