説明

受信装置及びその方法並びにレーダ装置及びその受信方法

【課題】受信系のダイナミックレンジの拡大等を図る。
【解決手段】送信系20から目標に向けて送信信号を放射する。目標で反射されて戻る反射信号は、受信手段40で受信される。受信手段40から第1の受信系40及び第2の受信系40に入力される。基準信号発生器30から送信信号のデットタイム時に基準信号が第1の受信系40及び第2の受信系40に入力される。第1の受信系40及び第2の受信系40の振幅位相検出器27,37から出力される受信信号の振幅及び位相を振幅位相補正/選択器38で補正して基準信号の振幅値に基づいて第1の受信系40及び第2の受信系40のうちの1つを選択して受信信号の補正された振幅及び位相をRCS算出器28へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信装置及びその方法並びにレーダ装置及びその受信方法に関し、詳しくは、受信系のダイナミックレンジの改良に役立つ受信装置及びその方法並びにレーダ装置及びその受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に知られているレーダ装置(以下、従来技術という)として、図6に示すものがある。図6に示すレーダ装置において、変調器11から出力された送信信号は、送信機12及びデュプレクサ13、そしてアンテナ14を介して目標に向けて放射される。
そして、目標で反射されて戻る反射信号(受信信号ともいう)は、以下のように構成される受信系50で受信され、目標のレーダ反射面積(RCS;Radar Cross Section)の算出に供される。
受信系50は、アンテナ14と、デュプレクサ13と、高周波増幅器21と、ミクサ22と、中間周波数増幅器23と、I/Q検波器25と、A/D変換器26と、振幅検出器27とで構成される。
【0003】
この受信系50において、上記反射信号をアンテナ14で受信し、デュプレクサ13で分岐されて高周波増幅器21に入力する。その受信信号を高周波増幅器21で増幅した後、ミクサ22で周波数変換する。周波数変換された信号を中間周波数増幅器23で増幅し、I/Q検波器25でI/Q検波を行う。
I/Q検波器25から出力された信号は、A/D変換器25でデジタル信号に変換される。このデジタル信号を受け取る振幅検出器27が、目標から反射して来た信号の振幅を検出する。検出された振幅値を受け取るRCS算出器28が、目標のレーダ反射面積(RCS)を算出する。
上記レーダ装置においては、受信信号のS/N比が十分あるときには、その所期の目的を達成することができる。
【0004】
特許文献1には、RCSターゲットの反射信号位相を高精度で測定し得るレーダ反射断面積測定装置が記載されている。この装置は、RCSターゲットの反射信号位相の検出にアンテナからの距離が固定されている基準反射器からの反射信号位相を空間的な比較位相信号として用いるものである。つまり、何らかの原因により、RCSターゲットの反射信号位相の変化が生じても、送受信機の位相安定度に左右されないRCSの測定にある。ここでは、送受信機内部での処理に現れる反射信号のS/Nのことについては論じられていない。
【0005】
特許文献2には、航空機等の実際の飛行なしにその飛行をさせた場合と同等なレーダ装置の評価試験を為し得る擬似目標信号発生装置が記載されている。この装置は、被試験レーダ装置からの送信信号を受信し、受信した送信信号に基づいて擬似目標信号を被試験レーダ装置へ再送信するものである。したがって、被試験装置で受信する擬似目標信号も、送信信号と同様の信号劣化を与えられて受信される。被試験レーダ装置において信号劣化に対する処置は見出せない。
【0006】
特許文献3には、送信信号と受信信号とを混合して、つまり、ビート信号に変換して物標の方位を検出するレーダ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−052044号公報
【特許文献2】特開平11−160418号公報
【特許文献3】特開平09−152478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来技術では、その受信系50において、目標で反射して戻る反射信号をアンテナ14で受信し、デュプレクサ13、高周波増幅器21、そしてミクサ22を経て中間周波数増幅器23で単純に増幅し、I/Q検波器25でI/Q検波を行う。そして、I/Q検波された信号は、そのまま、A/D変換器25でデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を振幅検出器27で目標から反射して来た信号の振幅を検出する。検出された振幅値を用いてRCS算出器28で目標のレーダ反射面積(RCS)を算出している。したがって、受信信号のS/N比が劣化したときの対策は、何ら、講じられていない。
それ故、上記レーダ装置においては、受信信号のS/N比が劣化して来ると、その所期の目的を達成することができない。
特許文献1乃至特許文献3に記載される技術も、受信信号のS/N比が劣化して来たときに対する技術的配慮は見出せないから、それらの技術にも、上記従来技術と同種の技術的課題がある。
【0009】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、受信信号のS/N比に劣化があっても、受信系の信号処理範囲(ダイナミックレンジ)を拡大させて受信情報の受信誤差の改善を達成し得る受信装置及びその方法並びにレーダ装置及びその受信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、信号処理範囲を拡大させる受信装置に係り、受信信号を受信する受信手段と、該受信手段に接続され、信号成分検出手段を含み入力される信号の処理を該信号の異なる信号成分毎に行う少なくとも2つの受信処理系と、上記受信信号の受信時刻と所定の値だけ異なる時刻に、上記受信信号の校正に用いる基準信号を少なくとも2つの上記受信処理系の所定の入力位置で入力する基準信号入力手段と、上記受信処理系の上記信号成分検出手段から出力される上記基準信号の所定の信号成分に基づいて上記受信処理系のうちの1つを選択する選択手段とを備えることを特徴としている。
【0011】
この発明の第2の構成は、信号処理範囲を拡大させるレーダ装置に係り、レーダから放射された送信信号が目標で反射されて戻る受信信号を受信する受信手段と、該受信手段に接続され、振幅位相検出手段を含み入力される信号の処理を該信号の異なる振幅及び位相毎に行う少なくとも2つの受信処理系と、上記送信信号のデットタイム時に、上記受信信号の校正に用いる基準信号を上記受信処理系の所定の入力位置に入力する基準信号入力手段と、上記受信処理系の上記振幅位相検出手段から出力される上記受信信号の振幅及び位相を補正して上記基準信号の振幅値に基づいて上記受信処理系のうちの1つを選択する選択手段とを備えることを特徴としている。
【0012】
この発明の第3の構成は、信号処理範囲を拡大させる受信装置の受信方法に係り、受信信号を受信手段で受信し、受信される上記受信信号を、信号成分検出手段を含み入力される信号の処理を該信号の異なる信号成分毎に行う少なくとも2つの上記受信処理系に入力すると共に、上記受信信号の受信時刻と所定の値だけ異なる時刻に、上記受信信号の校正に用いる基準信号を少なくとも2つの上記受信処理系の所定の入力位置に入力し、上記信号成分検出手段から出力される上記基準信号の所定の信号成分に基づいて上記受信処理系のうちの1つを選択することを特徴としている。
【0013】
この発明の第4の構成は、信号処理範囲を拡大させるレーダ装置の受信方法に係り、レーダから放射された送信信号が目標で反射されて戻る受信信号を受信手段で受信し、受信される上記受信信号を、振幅位相検出手段を含み入力される信号の処理を該信号の異なる振幅及び位相毎に行う少なくとも2つの受信処理系に入力すると共に、上記送信信号のデットタイム時に、上記受信信号の校正に用いる基準信号を少なくとも2つの上記受信処理系の所定の入力位置に入力し、上記振幅位相検出手段から出力される上記受信信号の振幅及び位相を補正して上記基準信号の振幅値に基づいて上記受信処理系のうちの1つを選択することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、少なくとも2つの受信系の選択のための基準信号と、少なくとも2つの受信系のうちの少なくとも1つを受信信号に対する信号処理範囲の拡大用に用いて基準信号に基づいて少なくとも2つの受信系の選択を行うようにしたので、受信系の信号処理範囲(ダイナミックレンジ)の拡大が図れる。
このダイナミックレンジの拡大により、RCSが小さい目標や遠距離の目標などからの反射信号のようなS/N比が小さい反射信号であっても、そのような反射信号に対するS/N比を向上させ得るから、RCS算出結果に入る誤差の大幅な改善を実現させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態1であるレーダ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】同レーダ装置で用いる基準信号の発生タイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】同レーダ装置で振幅選択を行うことによりダイナミックレンジが拡大することの説明図である。
【図4】この発明の実施形態2であるレーダ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施形態3であるレーダ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】従来のレーダ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施形態1】
【0016】
図1は、この発明の実施形態1であるレーダ装置の電気的構成を示すブロック図、図2は、同レーダ装置で用いる基準信号の発生タイミングを示すタイミングチャート、図3は、同レーダ装置で振幅選択を行うことによりダイナミックレンジが拡大することの説明図である。
【0017】
この実施形態のレーダ装置10は、RCSが小さい目標や遠距離の目標などからの反射信号のようなS/N比が小さい反射信号であっても、そのような反射信号に対するS/N比を向上させてRCS算出結果に入る誤差を大幅に改善させ得る装置に係り、この装置は、図1に示すように、送信系20と、受信系40とで構成される。
送信系20は、変調器11、送信機12及びデュプレクサ13の送信機能部及びアンテナ14を有して構成される。
受信系40は、受信手段40と、2つの受信処理系、すなわち、受信処理系40(以下、第1の受信系ともいう)と受信処理系40(以下、第2の受信系ともいう)とからなる。
【0018】
受信手段40は、アンテナ14及びデュプレクサ13の受信機能部とからなる。第1の受信系40は、共用部402,3と個別部4021とを有し、第2の受信系40は、共用部402,3と個別部4031とを有する。この共用部402,3は、基準信号発生器30、カプラ31、高周波増幅器21、ミクサ22、分配器32及び振幅位相補正/選択器38を有する。
受信処理系40の個別部4021は、中間周波数増幅器23、I/Q増幅器25、A/D変換器(アナログ/デジタル変換器)26及び振幅増幅器27を有して構成され、受信処理系40の個別部4031は、中間周波数増幅器33、増幅器34、I/Q増幅器35、A/D変換器36及び振幅増幅器37を有して構成される。
振幅位相補正/選択器38の出力は、RCS算出器28に接続されてこの実施形態の全体が構成されている。
【0019】
送信系20及び受信系40の各構成要素について説明する。
先ず、送信系20について説明する。
送信系20の各構成要素は、〔背景技術〕の項で説明した変調器11、送信機12、デュプレクサ13及びアンテナ14と同じであるので、それらの説明は繰り返さない。受信手段40も、〔背景技術〕の項で説明したアンテナ14、デュプレクサ13の受信機能部と同じであるので、それらの説明は繰り返さない。
次に、受信系40のうちの第1の受信系40について説明するが、その共用部402,3のうちの高周波増幅器21及びミクサ22、そして個別部4021の中間周波数増幅器23、I/Q増幅器25、A/D変換器26及び振幅増幅器27についても〔背景技術〕の項で説明したものと同じであるので、同様とする。受信処理系40の中の振幅増幅器27は、振幅位相補正/選択器38へ振幅位相の値を供給する。
【0020】
次に、受信系40のうちの受信処理系40及び受信処理系40の共用部402,3の残りの構成要素について説明する。基準信号発生器30は、図2に示すように、レーダ動作のデッドタイム中に振幅及び位相の校正に用いる基準信号を発生する。カプラ31は、デュプレクサ13で分岐されて受信される受信信号と基準信号発生器30から出力される基準信号とを混合して高周波増幅器21へ伝達する(伝播させる)。分配器32は、ミクサ22から出力される信号を中間周波数増幅器23及び中間周波数増幅器33へ分配する。
【0021】
次に、受信系40のうちの第2の受信系40の個別部4031について説明する。増中間周波数増幅器33は、中間周波数増幅器23と同様の機能を果たす。幅器34は、中間周波数増幅器33で増幅された信号に利得を与えるもので、その利得は、A/D変換器25とA/D変換器35とのダイナミックレンジがオーバーラップするように設定される。I/Q検波器35は、入力信号のI/Q検波を行う。
A/D変換器36は、A/D変換器26と同様、アナログ信号をデジタル信号に変換する。振幅位相検出器37は、振幅位相検出器27と同様、第2の受信系40にを介して伝達されて来た信号の振幅位相値を検出する。
そして、第1の受信系40と第2の受信系40との終端となる振幅位相補正/選択器38は、振幅位相増幅器27及び振幅位相増幅器37から出力される信号のうちの基準信号発生器30から出力された基準信号の振幅値に基づいて、増幅器33を含む受信系の系統差を補正する。
【0022】
次に、図1乃至図3を参照して、この実施形態の動作を説明する。
変調器11から出力された信号は、送信機12及びデュプレクサ13、そしてアンテナ14を介して目標に向けて送信信号が放射される。
目標で反射されて戻る反射信号は、アンテナ14で受信され、デュプレクサ13を経てカプラ31に入力される。その信号は、カプラ31で基準信号発生器30から上述したタイミングで入力される基準信号と混合された後、高周波増幅器21及びミクサ22を介して分配器32に入力される。
【0023】
分配器32で分配される信号は、上述した2つの系統(第1の受信系40及び第2の受信系40)の個別部4021及び個別部4031に供給される。その信号は、先ず、中間周波数増幅器23及び中間周波数増幅器33へ入力される。中間周波数増幅器33は、中間周波数増幅器23と同様、入力される信号の増幅を行う。中間周波数増幅器33で増幅された信号は、増幅器34において、後段に配置されているA/D変換器25とA/D変換器35とのダイナミックレンジをオーバーラップさせるだけの利得を与えられて、すなわち、入力された信号に対する線形性を拡大させるための処理を行われて出力する。
【0024】
こうして利得を与えられた信号は、I/Q検波器35において増幅器34から出力された信号のI/Q検波を行う。このとき、中間周波数増幅器23で増幅された出力された信号も、従来と同様、I/Q検波器25で同様、I/Q検波される。
検波されて出力される各系統の信号は、それぞれ、A/D変換器26,36でデジタル信号に変換され、それらのデジタル信号は、対応する振幅位相検出器27及び振幅位相検出器37へ入力され、各検出器で入力された信号の振幅及び位相の検出が行われる。
振幅位相検出器27及び振幅位相検出器37で検出されたそれぞれの振幅及び位相は、振幅位相補正/選択器38に入力される。
【0025】
振幅位相補正/選択器38は、入力された信号の振幅のうちの基準信号発生器30から出力された基準信号の振幅及び位相に基づいて増幅器34を含む受信系の系統差を補正して系統の選択を行う。
系統差の補正は、次のようにして行う。増幅器34を含まない第1の受信系(受信処理系)40の振幅位相検出器27における基準信号の検出振幅をMa(dB)、検出位相をPa(deg)とし、増幅器34の利得をA(dB)、増幅器34を含む第2の受信系(受信処理系)40の振幅位相検出器37における基準信号の検出振幅をMb(dB)、検出位相をPb(deg)とすると、増幅器34を含む第2の受信系40の補正値は、式(1)で表される。
[式1]
振幅補正値=(Ma+A)−Mb
位相補正値=Pa−Pb
したがって、増幅器34を含む第2の受信系40の計測結果は、振幅位相検出器37の結果に補正値を加算することにより、系統差を補正することができる。
【0026】
そして、振幅位相補正/選択器38における系統の選択を図3に基づいて説明すると、振幅位相検出器27から入力される振幅値が基準信号の振幅値以上の場合は、図3の(b)に示すように、第1の受信系40、すなわち、振幅位相検出器27から入力される振幅位相値を採用する。これに対して、振幅位相検出器27から入力される振幅値が基準信号の振幅値未満の場合は、図3の(a)に示すように、第2の受信系40、すなわち、振幅位相検出器37から入力される振幅位相値を採用する。この選択を行うことにより、系統差の影響を無くなり、図3の(c)に示すように、ダイナミックレンジは拡大される。
したがって、RCSが小さい目標や遠距離の目標などからの反射信号のように、S/N比が小さい場合でも、上述した新たな系統の採用で、反射信号のS/N比を向上させることができ、RCS算出結果の誤差を改善させ得る。
【0027】
このように、この実施形態によれば、レーダ装置において、第1の受信系又は第2の受信系の選択のための基準信号と、受信信号に対するダイナミックレンジ拡大用の第2の受信系と、従来の第1の受信系とダイナミックレンジ拡大用の第2の受信系との選択を基準信号に基づいて行うこととを採用したので、レーダ受信系のダイナミックレンジの拡大が図れる。
このダイナミックレンジの拡大により、RCSが小さい目標や遠距離の目標などからの反射信号のようなS/N比が小さい反射信号であっても、そのような反射信号に対するS/N比を向上させ得るから、RCS算出結果に入る誤差の大幅な改善を実現させ得る。
【実施形態2】
【0028】
図4は、この発明の実施形態2であるレーダ装置の電気的構成を示すブロック図である。
この実施形態の構成が、実施形態1のそれと大きく異なる点は、送信信号のデットタイムの中に基準信号を挿入し、その基準信号をカプラで分岐して受信信号と混合させ、実施形態1と同様に2つの受信系に分配するようにした点である。
すなわち、この実施形態のレーダ装置10Aは、図4に示すように、基準信号を送信信号のデットタイムの中に挿入させる変調器11aと、カプラ31aとを付加した送信系20Aと、基準信号発生器30から出力される基準信号の代わりにカプラ31aで分岐される基準信号とデュプレクサ13で分岐される受信信号とをカプラ31で混合させ、カプラ31以降の構成を実施形態1と同じ構成とした受信系40Aとでその全体が構成されることにその特徴部分がある。
この構成以外の本実施形態の構成は、実施形態1と同じであるので、それらの構成の逐一の説明は省略する。
【0029】
次に、図4を参照して、この実施形態の動作を説明する。
この実施形態の動作は、以下の点、すなわち、基準信号が変調器11aにおいて送信信号のデットタイムの中に挿入されて送信機12を介してカプラ31aに入力され、カプラ31aにおいて基準信号が送信信号の中から分岐される。そして、分岐された基準信号とデュプレクサ13からの受信信号とがカプラ31で混合されることを除いて、実施形態1と同じである。したがって、カプラ31以降の信号処理は、実施形態1と全く同じである。
それ故、この実施形態で得られる基本的な効果は、基準信号の入力箇所を除いて、実施形態1と同等である。
【実施形態3】
【0030】
図5は、この発明の実施形態3であるレーダ装置の電気的構成を示すブロック図である。
この実施形態の構成が、実施形態1のそれと大きく異なる点は、受信信号と基準信号との混合信号を3つの受信系に分配するようにした点である。
すなわち、この実施形態のレーダ装置10Bは、図5に示すように、その受信系40Bを次のように構成したことにその特徴部分がある。受信系40Bは、次の3つの受信系からなる。
【0031】
第1の受信系(受信処理系)40、第2の受信系(受信処理系)40及び第3の受信系(受信処理系)40の共用部402,3,4は、基準信号発生器30、カプラ31、高周波増幅器21、ミクサ22及び分配器32を有して構成される。そして、第1の受信系40の個別部4021は、実施形態1及び実施形態2の第1の受信系40と同じである、すなわち、分配器32の第1の分配出力を受け取る中間周波数増幅器23、I/Q増幅器25、A/D変換器26及び振幅位相増幅器27を有して構成される。
第2の受信系40及び第1の受信系40の共用部403,4は、分配器32bからなる。分配器32bは、分配器32の第2の分配出力を受ける。
第2の受信系40の個別部4031は、実施形態1及び実施形態2の第2の受信系40と同じである、すなわち、分配器32bの第1の分配出力を受け取る中間周波数増幅器33、増幅器34、I/Q増幅器35、A/D変換器36及び振幅位相増幅器37を有して構成される。
【0032】
第3の受信系40の個別部4041は、分配器32bの第2の分配出力を受け取る中間周波数増幅器33b、増幅器34b、I/Q増幅器35b、A/D変換器36b及び振幅位相増幅器37bを有して構成される。
そして、振幅位相増幅器27、振幅位相増幅器37及び振幅位相増幅器37bの出力信号を振幅位相補正/選択器38bに入力させて受信系40Bの全体が構成されている。
【0033】
第2及び第3の受信系40,40内に設けられる増幅器34,34bは、第1、第2及び第3の受信系40,40,40内に設けられるA/D変換器26,36,36bのダイナミックレンジをオーバーラップさせる利得を入力信号に与える。振幅位相補正/選択器38は、第1、第2及び第3の受信系40,40,40に入力される受信信号の振幅及び位相を補正して基準信号の振幅に基づいて第1、第2及び第3の受信系のうちのいずれか1つの受信系の振幅位相値を選択する。
そして、RCS算出器28は、振幅位相補正/選択器38で選択された振幅位相値に基づいてRCSを算出する。
この構成以外の本実施形態の構成は、実施形態1と同じであるので、それらの構成の逐一の説明は省略する。
次に、図5を参照して、この実施形態の動作を説明する。
この実施形態の動作は、以下の点、すなわち、第3の受信系40での信号処理を除いて、実施形態2と同じである。したがって、第3の受信系40では受信系40Bのダイナミックレンジを実施形態1及び実施形態2以上に拡大させる機能を果たす。
それ故、この実施形態で得られる基本的な効果は、実施形態1,2と変わるところはない。目標からの反射信号のS/N比がさらに悪い状況においても、RCS算出結果に入る誤差を抑えることができる。
【0034】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、この発明の具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらはこの発明に含まれる。
例えば、基準信号は、受信系40,40,40内のA/D変換回路26,36,36b前のいずれかの信号伝播位置(入力位置)で入力させるようにしてもよい。その際に、信号の伝播時間等を考慮に入れる。また、A/D変換回路26,36,36から出力されるそれぞれの信号と混合して、各別に、振幅位相検出器27,37,37bに入力するようにしてもよい。
分配器の増設で受信系のダイナミックレンジの拡大を図ることが可能である。
いずれの実施形態でも、基準信号の振幅を用いての選択を示したが、その選択に役立つその他の信号成分であってもよい。
また、基準信号の入力手段は、受信系(受信処理系)別に設けてよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
ここに開示している受信装置及びその方法並びにレーダ装置及びその受信方法は、受信信号のS/N比の劣化があっても受信系のダイナミックレンジを拡大させて受信誤差を改善したい各種の受信装置に利用し得る。
【符号の説明】
【0036】
10 受信装置
11,11a 変調器(送信系の一部、基準信号入力手段の一部)
12 送信機(送信系の一部)
13 デュプレクサ(送信系の一部、受信手段の一部、信号分離手段)
14 アンテナ(送信系の残部、受信手段の残部)
20,20A 送信系
21 高周波増幅器(第1、第2及び第3の受信系の共用部の一部)
22 ミクサ(第1、第2及び第3の受信系の共用部の一部)
23 中間周波数増幅器(第1の受信系の個別部の一部)
25 I/Q増幅器(第1の受信系の個別部の一部)
26 A/D変換器(第1の受信系の個別部の一部)
27 振幅増幅器(第1の受信系の個別部の一部)
28 RCS算出器
30 基準信号発生器(第1及び第2の受信系の共用部の一部、基準信号入力手段、基準信号出力部)
31,31a カプラ(第1、第2及び第3の受信系の共用部の残部、基準信号入力手段の残部、混合手段)
32,32b 分配器(第2の受信系の個別部の一部、第3の受信系の個別部の一部、分配手段)
33,33b 中間周波数増幅器(第2の受信系の個別部の一部、第3の受信系の個別部の一部)
34,34b 増幅器(第2の受信系の個別部の一部、第3の受信系の個別部の一部)
35,35b I/Q増幅器(第2の受信系の個別部の一部、第3の受信系の個別部の一部、振幅調整手段)
36,36b A/D変換器(第2の受信系の個別部の一部、第3の受信系の個別部の一部)
37,37b 振幅位相検出器(第2の受信系の個別部の一部、第3の受信系の個別部の一部、振幅位相検出手段)
38 振幅位相補正/選択器(選択手段)
40,40B 受信系
40 受信手段
40 第1の受信系
40 第2の受信系
40 第3の受信系
402,3 第1及び第2の受信系の共用部
402,3,4 第1、第2及び第3の受信系の共用部
4021 第1の受信系の個別部
4031 第2の受信系の個別部
4041 第3の受信系の個別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を受信する受信手段と、
該受信手段に接続され、信号成分検出手段を含み入力される信号の処理を該信号の異なる信号成分毎に行う少なくとも2つの受信処理系と、
前記受信信号の受信時刻と所定の値だけ異なる時刻に、前記受信信号の校正に用いる基準信号を少なくとも2つの前記受信処理系の所定の入力位置で入力する基準信号入力手段と、
前記受信処理系の前記信号成分検出手段から出力される前記基準信号の所定の信号成分に基づいて前記受信処理系のうちの1つを選択する選択手段とを備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記基準信号入力手段は、前記基準信号を前記受信処理系の共用部に設けられる基準信号出力部又は送信系の変調器から出力することを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記信号成分検出手段から出力される前記信号成分は、前記信号の振幅及び位相であることを特徴とする請求項1又は2記載の受信装置。
【請求項4】
前記基準信号の所定の前記信号成分は、振幅値であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の受信装置。
【請求項5】
前記受信処理系は、前記共用部に設けられる基準信号出力部から出力される前記基準信号と、前記受信手段の信号分離手段から出力される前記受信信号とを混合する混合手段を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の受信装置。
【請求項6】
前記受信処理系は、前記送信系の変調器から出力され、前記送信系の第1のデュプレクサで分岐される前記基準信号と、前記送信系の第2のデュプレクサで分岐される前記受信信号とを混合する混合手段を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の受信装置。
【請求項7】
前記受信処理系は、前記混合手段から出力される混合信号を少なくとも2つの前記受信処理系の個別部に分配する分配手段を前記受信処理系の共用部に有することを特徴とする請求項5又は6記載の受信装置。
【請求項8】
前記受信処理系は、前記受信処理系のうちの少なくとも1つの前記受信処理系の前記分配手段の後段に振幅調整手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか一に記載の受信装置。
【請求項9】
前記振幅調整手段は、少なくとも1つの前記受信処理系に設けられるアナログ/デジタル変換器のダイナミックレンジと少なくとも1つの前記受信処理系以外の前記受信処理系に設けられるアナログ/デジタル変換器のダイナミックレンジとをオーバーラップさせる利得を、少なくとも1つの前記受信処理系に設けられる前記アナログ/デジタル変換器に入力される信号に与える増幅器であることを特徴とする請求項8記載の受信装置。
【請求項10】
レーダから放射された送信信号が目標で反射されて戻る受信信号を受信する受信手段と、
該受信手段に接続され、振幅位相検出手段を含み入力される信号の処理を該信号の異なる振幅及び位相毎に行う少なくとも2つの受信処理系と、
前記送信信号のデットタイム時に、前記受信信号の校正に用いる基準信号を前記受信処理系の所定の入力位置に入力する基準信号入力手段と、
前記受信処理系の前記振幅位相検出手段から出力される前記受信信号の振幅及び位相を補正して前記基準信号の振幅値に基づいて前記受信処理系のうちの1つを選択して前記受信信号の補正された振幅及び位相を出力する選択手段とを備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項11】
前記基準信号入力手段は、前記基準信号を前記受信処理系の共用部に設けられる基準信号発生器又は送信系の変調器から出力することを特徴とする請求項10記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記受信処理系は、前記受信処理系の共用部に設けられる基準信号発生器から入力される前記基準信号と、前記受信手段のデュプレクサから出力される前記受信信号とを混合するカプラを有することを特徴とする請求項10又は11記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記受信処理系は、送信系の変調器から出力され、前記送信系の第1のデュプレクサで分岐される前記基準信号と、前記送信系の第2のデュプレクサで分岐される前記受信信号とを混合するカプラを有することを特徴とする請求項10又は11記載のレーダ装置。
【請求項14】
前記受信処理系は、前記カプラから出力される混合信号を少なくとも2つの前記受信処理系の個別部に分配する分配器を前記受信処理系の共用部に有することを特徴とする請求項12又は13記載のレーダ装置。
【請求項15】
前記受信処理系は、前記受信処理系のうちの少なくとも1つの前記受信処理系の前記分配器の後段に振幅調整手段を含むことを特徴とする請求項10、11、12、13又は14記載のレーダ装置。
【請求項16】
前記振幅調整手段は、少なくとも1つの前記受信処理系に設けられるアナログ/デジタル変換器のダイナミックレンジと少なくとも1つの前記受信処理系以外の前記受信処理系に設けられるアナログ/デジタル変換器のダイナミックレンジとをオーバーラップさせる利得を、少なくとも1つの前記受信処理系に設けられる前記アナログ/デジタル変換器に入力される信号に与える増幅器であることを特徴とする請求項15記載のレーダ装置。
【請求項17】
前記選択手段にレーダ反射断面積算出手段が接続されていることを特徴とする請求項10乃至16のうちの少なくとも1つに記載のレーダ装置。
【請求項18】
受信信号を受信手段で受信し、
受信される前記受信信号を、信号成分検出手段を含み入力される信号の処理を該信号の異なる信号成分毎に行う少なくとも2つの前記受信処理系に入力すると共に、前記受信信号の受信時刻と所定の値だけ異なる時刻に、前記受信信号の校正に用いる基準信号を少なくとも2つの前記受信処理系の所定の入力位置に入力し、
前記信号成分検出手段から出力される前記基準信号の所定の信号成分に基づいて前記受信処理系のうちの1つを選択することを特徴とする受信装置の受信方法。
【請求項19】
前記基準信号は、前記受信処理系の共用部に設けられる基準信号出力部又は送信系の変調器から出力されることを特徴とする請求項18記載の受信装置の受信方法。
【請求項20】
前記信号成分検出手段から出力される前記信号成分は、前記信号の振幅及び位相であることを特徴とする請求項18又は19記載の受信装置の受信方法。
【請求項21】
前記基準信号の所定の前記信号成分は、振幅値であることを特徴とする請求項18、19又は20記載の受信装置の受信方法。
【請求項22】
前記共用部から出力される前記基準信号と、前記受信手段の信号分離手段から出力される前記受信信号とが、前記共用部で混合されることを特徴とする請求項18、19、20又は21記載の受信装置の受信方法。
【請求項23】
送信系の変調器から出力され、前記送信系の第1のデュプレクサで分岐される前記基準信号と、前記送信系の第2のデュプレクサで分岐される前記受信信号とが、前記共用部で混合されることを特徴とする請求項18、19、20又は21記載の受信装置の受信方法。
【請求項24】
前記共用部で混合される混合信号は、少なくとも2つの前記受信処理系の個別部に分配されることを特徴とする請求項22又は23記載の受信装置の受信方法。
【請求項25】
少なくとも1つの前記受信処理系の個別部において、前記信号の振幅調整を行うことを特徴とする請求項18乃至24のうちのいずれか一に記載の受信装置の受信方法。
【請求項26】
前記振幅調整は、少なくとも1つの前記受信処理系に設けられるアナログ/デジタル変換器のダイナミックレンジと少なくとも1つの前記受信処理系以外の前記受信処理系に設けられるアナログ/デジタル変換器のダイナミックレンジとをオーバーラップさせる利得を、少なくとも1つの前記受信処理系に設けられる前記アナログ/デジタル変換器に入力される信号に与えて行うことを特徴とする請求項25記載の受信装置の受信方法。
【請求項27】
レーダから放射された送信信号が目標で反射されて戻る受信信号を受信手段で受信し、
受信される前記受信信号を、振幅位相検出手段を含み入力される信号の処理を該信号の異なる振幅及び位相毎に行う少なくとも2つの受信処理系に入力すると共に、前記送信信号のデットタイム時に、前記受信信号の校正に用いる基準信号を少なくとも2つの前記受信処理系の所定の入力位置に入力し、
前記振幅位相検出手段から出力される前記受信信号の振幅及び位相を補正して前記基準信号の振幅値に基づいて前記受信処理系のうちの1つを選択して前記受信信号の補正された振幅及び位相を出力することを特徴とするレーダ装置の受信方法。
【請求項28】
前記基準信号は、前記基準信号を前記受信処理系の共用部に設けられる基準信号発生器又は送信系の変調器から出力されることを特徴とする請求項27記載のレーダ装置の受信方法。
【請求項29】
前記受信処理系の共用部に設けられる基準信号発生器から入力される前記基準信号と、前記受信手段のデュプレクサから出力される前記受信信号とが、前記共用部で混合されることを特徴とする請求項27又は28記載のレーダ装置の受信方法。
【請求項30】
送信系の変調器から出力され、前記送信系の第1のデュプレクサで分岐される前記基準信号と、前記送信系の第2のデュプレクサで分岐される前記受信信号とが、前記共用部で混合されることを特徴とする請求項27又は28記載のレーダ装置の受信方法。
【請求項31】
前記共用部で混合された混合信号は、少なくとも2つの前記受信処理系の個別部に分配されることを特徴とする請求項29又は30記載のレーダ装置の受信方法。
【請求項32】
少なくとも1つの前記受信処理系の個別部において、前記信号の振幅調整を行うことを特徴とする請求項27、28、29、30又は31記載のレーダ装置の受信方法。
【請求項33】
前記振幅調整は、少なくとも1つの前記受信処理系に設けられるアナログ/デジタル変換器のダイナミックレンジと少なくとも1つの前記受信処理系以外の前記受信処理系に設けられるアナログ/デジタル変換器のダイナミックレンジとをオーバーラップさせる利得を、少なくとも1つの前記受信処理系に設けられる前記アナログ/デジタル変換器に入力される信号に与えて行うことを特徴とする請求項32記載のレーダ装置の受信方法。
【請求項34】
選択される振幅及び位相に基づいてレーダ反射断面積が算出されることを特徴とする請求項27乃至33のうちの少なくとも1つに記載のレーダ装置の受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281650(P2010−281650A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134548(P2009−134548)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】