説明

受信装置

【課題】主に自動車のドアの施解錠や開閉等に用いられる受信装置に関し、小型化が図れ、安価で確実な操作の可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、導電線材製のアンテナ11の受信部11Bに、誘電手段13を設けることによって、アンテナ11の長さを、受信する電波の波長λの約1/4よりも短く形成できるため、全体の小型化が図れると共に、安価で確実な操作の可能な受信装置を得ることができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車に装着され、ドアの施解錠や開閉等の遠隔操作に使用される受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のドアの施解錠や開閉等を、機械式キーにより直接操作することに加え、運転者が携帯した送信装置によって、離れた箇所から遠隔操作することが広く行われており、この送信装置からの電波信号を受信する受信装置においても、安価で確実な操作の可能なものが求められている。
【0003】
このような従来の受信装置について、図8を用いて説明する。
【0004】
図8は従来の受信装置のブロック回路図であり、同図において、1は銅合金や鋼等の導電金属線材製のアンテナで、垂直に延出した給電部1Aと、この給電部1Aにほぼ直角に連結されると共に、複数の箇所で折曲されて水平方向に延出した受信部1Bから形成されている。
【0005】
また、2は上下面に複数のランドや配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、この配線基板2にアンテナ1の給電部1A下端が半田付け等によって固定装着されている。
【0006】
さらに、3は配線基板2に実装されたIC等の復調手段、4は同じくマイコン等の制御手段で、アンテナ1の給電部1Aが、コイルやコンデンサを介して復調手段3に接続されると共に、この復調手段3に制御手段4が接続され、これらを略箱形で絶縁樹脂製のケース(図示せず)が覆って、受信装置が構成されている。
【0007】
そして、このような受信装置が自動車内に装着され、コネクタやリード線(図示せず)等によって、車両の電子回路やバッテリ(図示せず)に電気的に接続されると共に、制御手段4がモータやソレノイド(図示せず)等から形成された駆動手段5に接続される。
【0008】
以上の構成において、運転者が自動車からある程度離れた場所で、機械式キーと共に携帯した送信装置(図示せず)を操作すると、識別コードや駆動コードから形成された所定の電波信号が送信装置から送信される。
【0009】
そして、この電波信号を受信装置のアンテナ1が受信し、復調手段3から制御手段4に、電波信号が復調されたパルス信号が出力され、これによって制御手段4が運転者を確認すると共に、駆動手段5を駆動して、例えばフロントドア(図示せず)の解錠や、トランクドア(図示せず)の開扉が遠隔操作によって行われる。
【0010】
つまり、車両に接近し機械式キーによって、各ドアの施解錠や開閉等を直接行うことに加え、携帯した送信装置を操作することによって、車両からある程度離れた場所からでも、各ドアの施解錠や開閉等を遠隔操作できるように構成されている。
【0011】
そして、このような車両の遠隔操作には、一般に周波数312〜450MHzの電波が用いられており、受信装置のアンテナ1は受信する電波の波長λの約1/4の長さが必要なため、例えば受信する電波の周波数が434MHz前後であった場合には、アンテナ1は給電部1Aが20mm前後、受信部1Bが150mm前後の長さに形成されている。
【0012】
なお、受信する電波の周波数がこれより大きな場合には、アンテナ1の全長はこれより短く、小さな周波数の場合には長い寸法に形成される。
【0013】
また、このような受信装置を車両に装着した際、アンテナ1の近傍に誘電性の電線や金属部品等が配置されていると、これらの外部誘電体によって、0.03pF以下の値ではあるが、アンテナ1の静電容量が変化してしまう場合がある。
【0014】
したがって、このような場合には、所定の周波数の電波を確実に受信できるようにするために、給電部1Aと復調手段3の間のコイルのインダクタンスを変化させて、アンテナ1の静電容量を合致させる等の、調整が行われているものであった。
【0015】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−219220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来の受信装置においては、受信装置のアンテナ1は受信する電波の波長λの約1/4の長さが必要なため、受信する電波の周波数によってアンテナ1の全長が決まってしまい、全体の小型化を図ることが困難であるという課題があった。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、小型化が図れ、安価で確実な操作の可能な受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0020】
本発明の請求項1に記載の発明は、給電部及びこれに連結された受信部から形成された導電線材製のアンテナの受信部に、誘電手段を設けて受信装置を構成したものであり、受信部に設けられた誘電手段によって、アンテナの長さを受信する電波の波長λの約1/4よりも短く形成できるため、全体の小型化が図れると共に、安価で確実な操作の可能な受信装置を得ることができるという作用を有する。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、複数のランドや配線パターンが形成された配線基板にアンテナを装着すると共に、このランドによって誘電手段を形成したものであり、コンデンサ等の別部品を用いる必要がなくなるため、より安価に受信装置を形成することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、小型化が図れ、安価で確実な操作の可能な受信装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態による受信装置のブロック回路図
【図2】同部分斜視図
【図3】同他の実施の形態による部分斜視図
【図4】同部分斜視図
【図5】同部分斜視図
【図6】同部分斜視図
【図7】同部分斜視図
【図8】従来の受信装置のブロック回路図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図7を用いて説明する。
【0025】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0026】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による受信装置のブロック回路図であり、同図において、11はアンテナで、線径0.5〜1.5mm前後の銅合金や鋼、アルミニウム等の導電金属線材から形成され、この表面には金や錫、ニッケル等のメッキが施されている。
【0027】
そして、このアンテナ11は、垂直に延出した給電部11Aと、この給電部11Aにほぼ直角に連結され水平方向に延出した受信部11B、及びこの受信部11Bにほぼ直角に連結された折曲部11Cによって、略コの字状の形状に形成されている。
【0028】
また、12はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状、または紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の配線基板で、上下面には銅箔等によって複数のランドや配線パターン(図示せず)が形成されると共に、この配線基板12にアンテナ11の給電部11A下端が半田付け等によって固定装着されている。
【0029】
さらに、配線基板12の下面には、図2の部分斜視図に示すように、折曲部11C下端が挿通する貫通孔12Aが形成されると共に、この外周には銅箔のランドによって略リング状の接続部13Aが設けられている。
【0030】
そして、この接続部13Aの外周には配線基板12の素地が露出した間隙部13Bと、銅箔のランドによってグランド部13Cが設けられると共に、これらの接続部13Aと間隙部13B、グランド部13Cによって、誘電手段13が形成されている。
【0031】
また、この誘電手段13は接続部13Aの直径Dと間隙部13Bの幅Lの寸法によって、接続部13Aとグランド部13C間の静電容量値が0.1〜5pFとなるように、例えば接続部13Aの直径Dを3.2mm、間隙部13Bの幅Lを0.35mmとすることで、静電容量値が0.5pFとなるように形成されている。
【0032】
そして、アンテナ11の折曲部11C下端が貫通孔12Aに挿入され、接続部13Aに半田付け等によって固着されて、受信部11B先端に、例えば静電容量0.5pFの誘電手段13が接続された構成となっている。
【0033】
さらに、3は配線基板12に実装されたIC等の復調手段、4は同じくマイコン等の制御手段で、アンテナ11の給電部11Aが、コイルやコンデンサを介して復調手段3に接続されると共に、この復調手段3に制御手段4が接続され、これらを略箱形で絶縁樹脂製のケース(図示せず)が覆って、受信装置が構成されている。
【0034】
そして、このような受信装置が自動車内に装着され、コネクタやリード線(図示せず)等によって、車両の電子回路やバッテリ(図示せず)に電気的に接続されると共に、制御手段4がモータやソレノイド(図示せず)等から形成された駆動手段5に接続される。
【0035】
以上の構成において、運転者が自動車からある程度、例えば10m前後離れた場所で、機械式キーと共に携帯した送信装置(図示せず)を操作すると、識別コードや駆動コードから形成された所定の電波信号が送信装置から送信される。
【0036】
そして、この電波信号を受信装置のアンテナ11が受信し、復調手段3から制御手段4に、電波信号が復調されたパルス信号が出力され、これによって制御手段4が運転者を確認すると共に、駆動手段5を駆動して、例えばフロントドア(図示せず)の解錠や、トランクドア(図示せず)の開扉が遠隔操作によって行われる。
【0037】
つまり、車両に接近し機械式キーによって、各ドアの施解錠や開閉等を直接行うことに加え、携帯した送信装置を操作することによって、車両からある程度離れた場所からでも、各ドアの施解錠や開閉等を遠隔操作できるように構成されている。
【0038】
そして、このような車両の遠隔操作には、一般に周波数312〜450MHzの電波が用いられ、受信装置のアンテナ11は通常、受信する電波の波長λの約1/4の長さが必要であるが、本発明の受信装置は上述したように、受信部11B先端の折曲部11C下端に、例えば静電容量0.5pFの誘電手段13が設けられているため、アンテナ11の長さを波長λ/4よりも短く形成できるようになっている。
【0039】
すなわち、例えば受信する電波の周波数が434MHz前後であった場合、通常アンテナ11の長さは、背景技術の項で説明したように170mm前後の全長が必要であるが、本実施の形態においては、給電部11Aが20mm前後、受信部11Bが90mm前後、折曲部11Cが20mm前後の長さとなっており、全長として40mm程短く形成されている。
【0040】
つまり、アンテナ11の受信部11B先端の折曲部11C下端に、誘電手段13を設けることによって、アンテナ11の長さを、受信する電波の波長λの約1/4よりも短く形成できるため、受信装置全体の小型化が図れ、安価に受信装置を形成できるように構成されている。
【0041】
また、このような受信装置を車両に装着した際、アンテナ11の近傍に誘電性の電線や金属部品等が配置されていた場合には、これらの外部誘電体によるアンテナ11の静電容量の変化を防ぐため、給電部11Aと復調手段3の間のコイルのインダクタンスを変化させる等の調整が必要となるが、本発明においてはこのような調整も不要となる。
【0042】
すなわち、これらの外部誘電体によるアンテナ11の静電容量の変化は、通常0.03pF以下の値であるが、これに対し、本発明の誘電手段13の静電容量値は0.1〜5pF、上記実施の形態では例えば0.5pFと大きく形成されているため、上記のような調整を行わなくとも、これら外部誘電体による影響を殆んど受けることなく、所定の周波数の電波を確実に受信し、確実な操作が行えるようになっている。
【0043】
なお、別部品のコンデンサ等を配線基板12に実装し、これを配線パターンによってアンテナ11に接続して、誘電手段13を形成しても本発明の実施は可能であるが、上記のように配線基板12下面の銅箔のランドによって、誘電手段13を形成することで、コンデンサ等の別部品が不要となると共に、誘電手段13も簡易に形成することができるため、より安価に受信装置を構成することが可能となる。
【0044】
すなわち、上下面に複数のランドや配線パターンが形成された配線基板12を製作するには、一般に上下面の全面に銅箔の層が形成された配線基板12にエッチング加工を行い、ランドや配線パターン以外の不要な箇所の銅箔を除去して製作が行われるが、この時、同時に接続部13Aや間隙部13B、グランド部13Cを形成することで、配線基板12を通常製作すると同じ手間と時間で、誘電手段13を配線基板12に形成することができる。
【0045】
なお、以上の説明では、受信部11Bの両端に給電部11Aと折曲部11Cを連結して、アンテナ11を形成した構成について説明したが、図3の部分斜視図に示すように、受信部11Dを略コの字状の形状に形成し、この先端の折曲部11Cに誘電手段13を設けたものや、図4の部分斜視図に示すように、受信部11Eを略渦巻き状に折曲し、この先端に誘電手段13を設けた構成としてもよい。
【0046】
つまり、受信する電波の周波数が同じであれば、受信部11Dや11Eの全長は、図1に示した受信部11Bと同じ寸法でよいため、このように受信部11Dや11Eを折曲した形状にすることによって、左右方向はやや大きな形状となるが、前後方向の寸法をさらに小さくし、より小型化を図ることが可能となる。
【0047】
また、図5の部分斜視図に示すように、受信部11Dの中間部に下方へ突出する保持部11Fを設け、この下面を配線基板12の上面に当接させるようにすれば、アンテナ11の傾きやがたつき等を防ぎ、配線基板12上にアンテナ11を安定した状態で保持することができる。
【0048】
さらに、図6の部分斜視図に示すように、折曲部11Cの誘電手段13に加え、受信部11D中間部の保持部11Fにも誘電手段14を接続すれば、この誘電手段14によってアンテナ11の長さをより短くし、受信装置全体をさらに小型化することができる。
【0049】
なお、この時、図7の部分斜視図に示すように、誘電手段14の接続部14Aや間隙部14B、グランド部14Cを、配線基板12下面の銅箔のランドによって形成することで、上述した場合と同様に、コンデンサ等の別部品が不要となり、受信装置を安価に形成することが可能となる。
【0050】
このように本実施の形態によれば、導電線材製のアンテナ11の受信部11Bや11D等に、誘電手段13や14を設けることによって、アンテナ11の長さを、受信する電波の波長λの約1/4よりも短く形成できるため、全体の小型化が図れると共に、安価で確実な操作の可能な受信装置を得ることができるものである。
【0051】
そして、この誘電手段13や14を、配線基板12の銅箔のランドによって形成することで、コンデンサ等の別部品を用いる必要がなくなるため、より安価に受信装置を形成することが可能となる。
【0052】
なお、以上の説明では、送信装置から受信装置へ電波信号を送信する、所謂キーレスシステムについて説明したが、送信装置と受信装置の双方に送信手段と受信手段を設け、送信装置と受信装置が互いに通信を行う、所謂スマートエントリシステムの構成においても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による受信装置は、小型化が図れ、安価で確実な操作の可能なものが得られ、主に自動車のドアの施解錠や開閉操作用として有用である。
【符号の説明】
【0054】
3 復調手段
4 制御手段
5 駆動手段
11 アンテナ
11A 給電部
11B、11D、11E 受信部
11C 折曲部
11F 保持部
12 配線基板
12A 貫通孔
13、14 誘電手段
13A、14A 接続部
13B、14B 間隙部
13C、14C グランド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電部及びこれに連結された受信部から形成された導電線材製のアンテナと、このアンテナの給電部に接続された復調手段と、この復調手段に接続された制御手段からなり、上記アンテナの受信部に誘電手段を設けた受信装置。
【請求項2】
複数のランドや配線パターンが形成された配線基板にアンテナを装着すると共に、このランドによって誘電手段を形成した請求項1記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−15120(P2011−15120A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156699(P2009−156699)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】