受信装置
【課題】受信装置において、受信電波状況の判定を行うことなく、受信電波状況の最適化を図ることにある。
【解決手段】検波信号において不定値領域が除去され、不定値領域をその前後部分の一定値領域の信号レベルと同等の信号レベルとする。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、最も受信電波状況が良いアンテナ21,22を通じて受信されて検波された一定値領域からなる信号と同様の信号の波形が得られる。
【解決手段】検波信号において不定値領域が除去され、不定値領域をその前後部分の一定値領域の信号レベルと同等の信号レベルとする。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、最も受信電波状況が良いアンテナ21,22を通じて受信されて検波された一定値領域からなる信号と同様の信号の波形が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線信号を受信し、その信号を検波する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者が所持する電子キーと車両との間で無線通信を行うことにより、車両ドアの施錠や解錠などを自動的に行う、いわゆる電子キーシステムが周知である。電子キーシステムが搭載される車両には、通常、電子キーに対して各種無線信号を送信する送信装置と共に、電子キーから送信される各種無線信号を受信する受信装置が設けられている。そして、受信電波状況を改善する観点から、受信装置として例えば特許文献1に示されるダイバシティ方式を採用することが検討されている。
【0003】
ダイバシティ方式とは、複数のアンテナのうち最も受信電波状況の優れたアンテナを利用して通信を行う方式である。例えば、ダイバシティ方式を採用した受信装置は、図17に示すように、一対のアンテナ101,102と、分配器110と、受信回路109と、包絡線検波器105と、信号レベル検出部104と、制御装置106とを備える。一対のアンテナ101,102は、受信した信号を分配器110に出力する。分配器110は、当該信号を包絡線検波器105及び受信回路109に分配する。受信回路109は、一対のアンテナ101,102からの信号を復調することでデータ信号を生成し、同データ信号を各種機器に出力する。包絡線検波器105は、アンテナ101,102からの信号を包絡線検波する。包絡線検波は、信号の包絡線のみを取り出すことで検波を行う。包絡線検波器105により検波された信号は信号レベル検出部104に出力される。信号レベル検出部104は、検波された信号の信号レベルを検出し、検出結果を制御装置106に出力する。
【0004】
また、受信装置には両アンテナ101,102間で分配器110に接続されるアンテナを切り替えるスイッチング素子108が設けられている。制御装置106は、スイッチング素子108の制御を通じて、無線信号の受信を可能とするアンテナ101,102を切り替える。制御装置106は、無線信号の受信中に受信するアンテナ101,102を切り替えて、そのとき、信号レベル検出部104により検出される信号レベルを比較することで、何れのアンテナ101,102の受信電波状況が良好であるかを判定する。これにより、受信装置は、受信電波状況が良好なアンテナを使用して、より良い受信電波状況にて通信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−215040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記車載される受信装置は、電子キー以外とも無線通信を行うことがある。例えば、タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が知られている。TPMSを備える車両の各タイヤには、タイヤ空気圧を検出するセンサユニットが設けられている。各センサユニットは、タイヤ空気圧の検出結果を含む空気圧信号を受信装置に送信する。当該空気圧信号に含まれる情報量は、ドアの施解錠時等にやり取りされる信号に含まれる情報量に比べて少ない。これは、施解錠時にやり取りされる信号には高いセキュリティ性が要求されることに起因する。従って、空気圧信号の信号長は短く、すなわち、短時間で同信号の送信が完了する。よって、上記受信装置において、制御装置106による信号レベル検出部104を通じた信号レベルの比較中に、上記空気圧信号の送信が完了するおそれがある。また、たとえ、空気圧信号の送信完了前に、アンテナ101,102の受信電波状況の判定が完了しても、空気圧信号の一部しか受信電波状況が良好なアンテナ101,102にて受信できないおそれもある。特に、一方のアンテナ101は信号を受信できるものの、他方のアンテナ102は同信号を受信できない状況においては、受信するアンテナの切り替えの遅れにより正常な信号を受信できないことも想定される。
【0007】
以上により、ダイバシティ方式を採用した受信装置であるにも関わらず、信号レベルの比較を通じた受信電波状況の判定処理の実行時間に起因して受信電波状況の最適化という効果が得られない状況の発生が懸念される。このような問題は、車載される受信装置に限らず、ダイバシティ方式を採用した移動体通信において生じうる。また、アンテナの指向性を切り替え可能に構成される可変指向性アンテナにおいても、最適な受信電波状況となる指向性が判定される際に、上記同様の問題が生じる。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、受信電波状況の判定を行うことなく、受信電波状況の最適化が図られる受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、通信対象から送信される単一の送信信号を、複数の異なる受信レベルにて交互に受信可能としたアンテナ装置を備え、同アンテナ装置を介して受信した前記送信信号を検波して検波信号を生成する受信装置において、前記検波信号の信号レベルは、正常に受信できる前記送信信号の受信レベルの値である受信限界値以上の受信レベルの信号を受信したときに前記送信信号に応じた一定値になるとともに、前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したときに不定値になり、前記検波信号において、前記不定値となる領域が存在する場合には、これを除去して、同不定値の領域をその前後部分の前記一定値と同等の信号レベルとすることをその要旨としている。
【0010】
アンテナ装置が受信限界値以上の受信レベルの送信信号を受信したときには、検波信号の信号レベルは一定値となり、受信限界値未満の受信レベルの送信信号を受信したときには、検波信号の信号レベルは不定値となる。つまり、送信信号をアンテナ装置が受信限界値以上の受信レベルにて受信した場合、すなわち受信電波状況が良好な場合には、検波信号は一定値の領域のみからなる。また、送信信号をアンテナ装置が受信限界値未満の受信レベルにて受信した場合、すなわち受信電波状況が良好でない場合には、検波信号は不定値の領域のみからなる。
【0011】
上記構成によれば、アンテナ装置は単一の送信信号を複数の異なる受信レベルにて交互に受信する。よって、例えば、異なる受信レベル間に受信限界値が存在する等の電波状況であれば、検波信号の信号レベルは、一定値の領域及び不定値の領域を繰り返すことがある。このように、不定値領域、すなわち受信電波状況が良好でない信号が含まれる場合でも、不定値領域が除去され、不定値領域の信号レベルはその前後部分の一定値の領域の信号レベルと同等の信号レベルとされる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、上記受信電波状況が良好な場合における検波信号と同様の検波信号が得られる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の受信装置において、前記アンテナ装置は複数の指向性間で指向性が切り替え可能に構成される可変指向性アンテナ装置であることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、可変指向性アンテナ装置を通じて指向性を変化させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、単位ビットを受信するのに要する時間より高速で指向性を切り替え、前記検波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタを備え、前記可変指向性アンテナ装置における何れかの指向性にて受信限界値以上の受信レベルの信号を受信し、同指向性の他の指向性にて前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したとき、前記ローパスフィルタは前記検波信号における前記他の指向性にて受信された受信限界未満の受信レベルの信号が検波された領域である前記不定値の領域の高周波成分を除去することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、可変指向性アンテナ装置における何れかの指向性にて受信限界値未満の受信レベルの信号しか受信できなかった場合、その信号が検波されることで、検波信号に不定値領域が形成される。このとき、何れかの指向性にて受信限界値以上の受信レベルの信号を受信した場合には、検波信号の信号レベルは不定値及び一定値を繰り返す。この不定値及び一定値の繰り返しは、指向性の切り替え時間間隔に応じて決まる。指向性の切り替えは単位ビットを受信するのに要する時間より高速であるため、不定値及び一定値の繰り返しの周期は短い。
【0015】
ここで、不定値領域はローパスフィルタにより除去される。不定値領域は、広帯域なノイズを含むため、不定値領域の周波数は一定値領域の周波数よりも高くなる。よって、不定値領域及び一定値領域からなる検波信号をローパスフィルタに通過させることで、不定値領域の高周波成分を除去できる。上述のように、指向性の切り替えが高速であるのに伴い不定値及び一定値の繰り返しの周期は短くなるため、高周波成分が除去された不定値領域の信号レベルがその前後部分における一定値領域の信号レベルに引っ張られる形となって、例えばしきい値でHiレベル及びLowレベルの判定を行った場合には不定値領域があたかも除去されたようになる。よって、不定値領域を一定値領域と同等の信号レベルに補正することができる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、受信電波状況が良好な場合における検波信号と同様の検波信号が得られる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、単位ビットを受信するのに要する時間より高速で指向性を切り替えるとともに、その切り替え毎に前記検波信号の信号レベルを測定し、前記指向性毎に測定された前記検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、その指向性にて受信される前記検波信号を採用し、一定でない旨判断される場合、その指向性にて受信される検波信号を無効とすることで、前記不定値の領域を除去することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、可変指向性アンテナの指向性が切り替えられる毎に検波信号の信号レベルが測定される。そして、指向性毎に測定された検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、その指向性にて受信された信号を採用する。一方、指向性毎に測定された信号レベルが一定でない旨判断された場合、その指向性にて受信された信号にて不定値の領域が生成されていると考えられる。従って、その指向性にて受信された信号を無効とし、上記信号レベルが一定である旨判断された指向性にて受信された信号を採用することで、不定値領域を除去することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の受信装置において、前記指向性の切り替え毎に測定された前記検波信号の前記信号レベルが一定でない旨判断された場合、その指向性における信号レベルの測定を終了することをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、検波信号の信号レベルが一定でない旨判断された場合、それを受信していた指向性における信号レベルの測定は終了される。これは、信号レベルが一定でない場合には不定値領域であると考えられ、不定値領域の信号レベルを測定しても何ら意味がないからである。これにより、信号レベルが一定でない旨判断された以降の信号レベルの測定に関する消費電力の低減が図られる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、前記送信信号を受信する給電素子と、前記給電素子に設けられるとともに、前記給電素子の電気的な長さを変化させる切替装置と、を備えたことをその要旨としている。
【0021】
同構成によれば、切替装置を通じて給電素子の電気的な長さが変化する。これにより、送信信号の受信時において給電素子に誘起される電流の分布が変化する。これは、アンテナとしての性質、具体的には指向性が変化したことを意味する。これにより、アンテナを複数設けることなく、指向性の切り替えが可能となる。よって、受信装置がより簡易に構成される。
【0022】
また、複数のアンテナ間で受信可能なアンテナをスイッチ等の切替装置を通じて切り替えた場合と異なって、切替装置の切り替えに伴う送信信号を受信不能な期間が存在しない。よって、受信装置の受信性能を向上させることができる。
【0023】
なお、給電素子の電気的な長さとは、給電素子の物理的な長さも含む概念であり、コイル及びコンデンサ等の集中定数及びスタブ等の分布定数を含む。
請求項7に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、複数のアンテナと、それらアンテナの指向性を合成する合成器と、前記複数のアンテナのうち少なくとも何れか一つと、前記合成器との間に設けられるスイッチと、を備え、前記スイッチは、前記少なくとも何れか一つのアンテナを前記送信信号が受信可能な状態及び受信不能な状態間で切り替えることをその要旨としている。
【0024】
同構成によれば、スイッチを通じてアンテナが送信信号を受信可能な状態に切り替えられたときには、そのアンテナを含む複数のアンテナは合成器により一つの合成アンテナとして所定の指向性を有する。また、スイッチを通じてアンテナが送信信号を受信不能な状態に切り替えられたときには、残りのアンテナは上記所定の指向性とは異なる指向性を有する。これにより、指向性の切り替えが可能となる。
【0025】
本構成においても、複数のアンテナ間でスイッチを切り替えた場合と異なって、スイッチの切り替えに伴って送信信号が受信不能な期間が存在しない。よって、受信装置の受信性能を向上させることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、前記送信信号を受信する給電素子と、前記給電素子の指向性を自身と反対側に導く反射素子又は前記給電素子の指向性を自身側に強くする導波素子としての機能を有する無給電素子と、前記無給電素子の電気的な長さを変化させる切替装置と、を備えたことをその要旨としている。
【0027】
同構成によれば、切替装置が切り替えられることで無給電素子から放射される電磁波が変化する。無給電素子は、給電素子にとって反射素子若しくは導波素子として機能する。このように、無給電素子を設けるだけで容易にアンテナである給電素子の指向性を切り替えることが可能となる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の受信装置において、前記アンテナ装置は、位置的に離間した複数のアンテナを備えるとともに前記各アンテナの何れかの一が選択的に受信可能状態に切り替え可能に構成されることをその要旨としている。
【0029】
同構成によれば、複数のアンテナの何れかを受信可能状態に切り替えることで、単一の送信信号を複数の異なる受信レベルにて受信可能となる。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の受信装置において、前記複数のアンテナは一対のアンテナにて構成されるとともに、前記検波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタを備え、前記一対の前記アンテナのうち何れか一方が受信限界値以上の受信レベルの信号を受信し、他方が前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したとき、前記ローパスフィルタは前記検波信号における前記他方のアンテナが受信した信号が検波された受信限界未満の受信レベルの領域である前記不定値の領域の高周波成分を除去することをその要旨としている。
【0030】
同構成によれば、他方のアンテナが受信限界値未満の受信レベルの信号しか受信できなかった場合、その他方のアンテナが受信した信号が検波されることで、検波信号に不定値領域が形成される。このとき、一方のアンテナが受信限界値以上の受信レベルの信号を受信した場合には、検波信号の信号レベルは不定値及び一定値を繰り返す。この不定値及び一定値の繰り返しは、受信可能状態とされるアンテナの切り替え時間間隔に応じている。アンテナの切り替えは単位ビットを受信するのに要する時間より高速であるため、不定値及び一定値の繰り返しの周期は短い。
【0031】
ここで、不定値領域はローパスフィルタにより除去される。不定値領域は、広帯域なノイズを含むため、不定値領域の周波数は一定値領域の周波数よりも高くなる。よって、不定値領域及び一定値領域からなる検波信号をローパスフィルタに通過させることで、不定値領域の高周波成分を除去できる。上述のように、受信可能状態とされるアンテナの切り替えが高速であるのに伴い不定値及び一定値の繰り返しの周期は短いため、高周波成分が除去された不定値領域の信号レベルがその前後部分における一定値領域の信号レベルに引っ張られる形となって、例えばしきい値でHiレベル及びLowレベルの判定を行った場合には不定値領域があたかも除去されたようになる。よって、不定値領域を一定値領域と同等の信号レベルに補正することができる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、受信電波状況が良好な場合における検波信号と同様の検波信号が得られる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の受信装置において、受信可能状態とされる前記アンテナが単位ビットを受信するのに要する時間より高速に切り替えられる毎に前記検波信号の信号レベルを測定し、前記アンテナ毎に測定された前記検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、そのアンテナにて受信される前記検波信号を採用し、一定でない旨判断される場合、そのアンテナにて受信される検波信号を無効とすることで、前記不定値の領域を除去することをその要旨としている。
【0033】
同構成によれば、受信可能状態とされるアンテナが切り替えられる毎に検波信号の信号レベルが測定される。そして、アンテナ毎に測定された信号レベルが一定である旨判断された場合、そのアンテナにて受信された信号を採用する。一方、アンテナ毎に測定された検波信号の信号レベルが一定でない旨判断された場合、そのアンテナにて受信された信号にて不定値の領域が生成されていると考えられる。すなわち、そのアンテナの受信電波状況は良好でない。従って、そのアンテナにて受信された信号を無効とし、上記信号レベルが一定である旨判断されたアンテナにて受信された信号を採用することで、不定値領域を除去することが可能となる。
【0034】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の受信装置において、前記アンテナ毎に測定された前記検波信号の前記信号レベルが一定でない旨判断された場合、そのアンテナにおける信号レベルの測定を終了することをその要旨としている。
【0035】
同構成によれば、検波信号の信号レベルが一定でない旨判断された場合、それを受信していたアンテナにおける信号レベルの測定は終了される。これは、信号レベルが一定でない場合には不定値領域であると考えられ、不定値領域の信号レベルを測定しても何ら意味がないからである。これにより、信号レベルが一定でない旨判断された以降の信号レベルの測定に関する消費電力の低減が図られる。
【0036】
請求項13に記載の発明は、請求項3又は10に記載の受信装置において、前記ローパスフィルタは、前記アンテナ装置を介して受信した前記送信信号を検波して検波信号を生成し、その生成した信号を同ローパスフィルタに出力する検波部と、同ローパスフィルタを通過した信号の信号レベルとしきい値との比較を通じて同信号を2値化する比較部との間に設けられることをその要旨としている。
【0037】
同構成によれば、ローパスフィルタによって検波部からの検波信号の信号レベルにおける不定値の領域が除去される。このとき、不定値の領域は完全に除去されない。比較部はこの完全に除去されない不定値の領域を2値化することで不定値の領域を完全に除去する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、受信装置において、受信電波状況の判定を行うことなく、受信電波状況の最適化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態におけるTPMSの構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における受信装置の構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態におけるセンサユニットからの両アンテナへの信号の伝播態様を示す説明図。
【図4】第1の実施形態におけるタイヤ回転角に対する両アンテナの受信する受信レベルを示したグラフ。
【図5】第1の実施形態における(a)は検波信号の信号レベルを示すグラフ、(b)は一定値及び不定値領域を有する信号レベルを示すグラフ、(c)は、(b)の高周波成分を除去したグラフ。
【図6】第2の実施形態における(a)は一定値及び不定値領域を有する信号レベルを示すグラフ、(b)は一定値領域をサンプリングした信号レベルを示すグラフ、(c)は不定値領域をサンプリングした信号レベルを示すグラフ。
【図7】第3の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図8】第4の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図9】第5の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図10】第6の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図11】第7の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図12】第8の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図13】第9の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図14】他の実施形態におけるアンテナ装置を示す斜視図。
【図15】(a)は他の実施形態におけるアンテナ装置の構成図、(b)は他の実施形態におけるアンテナ装置の斜視図。
【図16】(a)は他の実施形態におけるアンテナ装置の構成図、(b)は他の実施形態におけるアンテナ装置の斜視図。
【図17】従来の受信装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、タイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)を搭載した車両に適用した第1の実施形態について図1〜図5を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、TPMSの構成及び動作を説明する。
【0041】
このTPMSは、タイヤの空気圧を走行しながらチェックするシステムである。詳しくは、図1に示すように、車両の各タイヤには、タイヤ空気圧を検出するセンサユニット30が設けられている。各センサユニット30から一定周期毎(例えば、1分毎)にタイヤの空気圧信号が送信される。アンテナ装置23を備える受信装置12は、これら空気圧信号を受信するとともに、これを検波して、検波した信号を車両制御装置13に出力する。
【0042】
本例では、空気圧信号の変調方式として周波数偏移変調(FSK; frequency shift keying)が採用されている。FSKでは、例えば、高周波数のとき「1」(Hiレベル)、低周波数のとき「0」(Lowレベル)といった周波数に情報が割り当てられている。FSKにて変調された空気圧信号が検波されることで、車両制御装置13は空気圧信号に含まれる情報、すなわち各タイヤの空気圧を認識する。なお、具体的な検波方法については後述する。車両制御装置13は、空気圧が異常であるタイヤが存在する旨判断した場合、例えば、運転席近傍に設けられる警告ランプ15の点灯を通じて、その旨を運転者に通知する。
【0043】
次に、図2を参照して、受信装置12の構成、並びに動作を詳述する。
同図2に示されるように、受信装置12は、空気圧信号を受信する第1アンテナ21及び第2アンテナ22からなるアンテナ装置23と、同信号を検波する検波部40と、を備える。また、アンテナ装置23と検波部40との間にはバンドパスフィルタ51が設けられている。バンドパスフィルタ51は、アンテナ装置23を介して受信される無線信号のうち、空気圧信号等の周波数に対応した周波数を有する無線信号を選択的に通過させる。すなわち、このバンドパスフィルタ51によって、空気圧信号の周波数と大きく異なる周波数を有する有害なノイズ信号を除去することが可能となっている。なお、第1アンテナ21及び第2アンテナ22は、単一の無線信号に対して異なる受信レベルにて受信可能に離間して設けられている。
【0044】
アンテナ装置23及びバンドパスフィルタ51間には、スイッチング素子24が設けられている。同スイッチング素子24は、車両制御装置13からの指令信号に基づき両アンテナ21,22間でバンドパスフィルタ51側に接続されるアンテナを選択的に切り替える。ここで、切り替え時間間隔は、受信レベルに無関係に一定の時間間隔である。アンテナ21,22はバンドパスフィルタ51側に接続されるとき、空気圧信号を受信することができる受信可能状態となる。車両制御装置13は、スイッチング素子24を通じて、受信可能状態のアンテナ21,22を高速で切り替える。本例では、0.1ms毎にアンテナ21,22間で受信可能状態とされるアンテナが切り替えられる。すなわち、アンテナ21,22の切り替え時間間隔は、0.1msとなる。ここで、本例では通信レートは1kbps(bit per second)であるため、1ms毎に1bitの情報が伝達される。よって、アンテナ21,22の切り替え時間間隔は、単位bitを受信するのに要する時間の10分の1となる。なお、単位bitを受信するのに要する時間は、通信レートの逆数に比例し、同時間が短いほどアンテナ21,22間での切り替えは高速となる。また、アンテナの切り替え時間間隔は、単位bitを受信するのに要する時間の数十分の一〜100分の一程度の範囲で任意に設定できる。
【0045】
バンドパスフィルタ51を通過した空気圧信号は、検波部40を通じて検波される。具体的には、図2に示すように、空気圧信号が増幅器41を通じて増幅され、この増幅された信号は、混合器42に入力されて、局部発振器43で生成される周波数f1の信号と混合される。これにより、空気圧信号の周波数がfraであるとすると、増幅器41で増幅された信号の周波数が「fra±f1」で示される周波数、すなわち中間周波数(IF;Intermediate Frequency)に変換される。中間周波数に変換された信号は混合器42の後段に設けられるバンドパスフィルタ52を通過する。バンドパスフィルタ52は、混合器42で生成される中間周波数の信号のうち、高い周波数(上述した「fra+f1」の周波数に相当)を有する信号、あるいは低い周波数(上述した「fra−f1」の周波数に相当)を有する信号を選択的にフィルタリングする。そして、このフィルタリングされた信号(IF信号)は検波器44に入力されて検波される。例えば、検波器44はクワドラチャ検波回路(図示略)を備え、クワドラチャ検波を行う。これにより、検波器44は、アナログ信号である信号の周波数に応じて高電圧レベル及び低電圧レベルの2種類の電圧レベルを出力する。詳しくは、FSKにて変調がされているため、検波器44は、高周波数のとき高電圧レベルを出力し、低周波数のとき低電圧レベルを出力する。また、検波器44は、バンドパスフィルタ52からの信号における受信レベルが一定値以下の場合、検波すべき対象となる信号がないため上記両電圧レベル付近であって広帯域の周波数成分を含む不定値、つまり雑音を出力する。検波器44からの信号が後述するローパスフィルタ45及び比較部33を通過することで、図5(a)に示すように、低電圧レベルに応じた「0」又は高電圧レベルに応じた「1」のデジタル信号が出力される。すなわち、本例では、符号化方式として高電圧レベルが「1」、低電圧レベルが「0」と符号化されるNRZ(Non Return to Zero)方式が採用されている。
【0046】
また、上述のように、空気圧信号の変調方式としてFSKが採用されている。FSKでは、周波数に情報が割り当てられている。よって、信号を受信するアンテナ21,22が切り替えられることで、信号の受信レベルが変動したとしても、受信レベルが受信限界値Lim以上であれば、同信号の周波数は変化しないため検波や通信に影響はない。
【0047】
図2に示すように、当該検波された空気圧信号(以下、検波信号という)は、ローパスフィルタ45を通過する。ローパスフィルタ45は、検波信号のうち低周波数信号を選択的に通過させる。すなわち、ローパスフィルタ45により、検波信号の高周波成分は除去される。詳しくは、後述するが、検波信号を当該ローパスフィルタ45に通過させることで、アンテナ21,22のうち最良の受信電波状況のアンテナを通じて受信した信号の波形を得ることができる。ここで、ローパスフィルタ45のカットオフ周波数は、正規の検波信号を通過させつつ、不定値領域T2の高周波成分を除去するべく決定される。上述のように、通信レートが1kbpsであるので、検波信号の1ms毎に1bitの情報が伝達される。よって、検波信号において「1」及び「0」が繰り返された場合、検波信号は2msで一周期として、2msの逆数で導出される0.5kHzの周波数を含む。よって、ローパスフィルタ45のカットオフ周波数は、正規の検波信号に含まれうる0.5kHzより大きく、例えば、1kHz以上に設定される。
【0048】
ここで、アンテナの切り替え時間間隔は、以下の理由により、単位bitの受信に要する時間の数十分の一〜100分の一程度の範囲で任意に設定できる。すなわち、アンテナの切り替え時間間隔は、遅すぎると不定値領域T2が十分にフィルタリングされないため、正規の信号を認識できない。逆に、アンテナの切り替え時間間隔が早すぎると不定値領域T2と一定値領域T1との識別ができず、両領域T1,T2がフィルタリングされる。いずれの場合であっても、ローパスフィルタ45の出力は比較部33にて正しく比較されない。
【0049】
ローパスフィルタ45を通過した空気圧信号は、比較部33に入力される。比較部33は、しきい値Vrと、ローパスフィルタ45を通過した空気圧信号の信号レベルとの比較を通じて、同信号を2値化する。すなわち、信号レベルがしきい値Vr以上の場合には「1」(Hiレベル)とされ、信号レベルがしきい値Vr未満の場合には「0」(Lowレベル)とされる。比較部33から出力される2値化された空気圧信号は車両制御装置13に入力される。この空気圧信号は、「0」及び「1」の組み合わせからなるデジタル信号となる。この「0」及び「1」の組み合わせにタイヤの空気圧に関する情報が含まれている。車両制御装置13は、前述のように、比較部33からの空気圧信号に基づきタイヤの空気圧の異常の有無を判断し、必要に応じて警告ランプ15を点灯する。
【0050】
次に、ローパスフィルタ45を通じた信号レベルの波形の補正方法について具体的に説明する。
上述のように、受信装置12は、一対のアンテナ21,22を備えている。よって、信号の到来状況によっては、アンテナ装置23のうち、一方のアンテナが空気圧信号を受信可能であり、他方のアンテナが同信号を受信不能である場合も考えられる。具体的には、主に以下のような場合が想定される。
【0051】
図3に示すように、空気圧信号は、センサユニット30から等方性を有し空気中を伝播していく。空気圧信号には、例えば、矢印80で示すように、センサユニット30からアンテナ装置23に向かって伝播する直接波がある。また、空気圧信号には、矢印81で示すように、センサユニット30から地面に反射した後、アンテナ装置23に向かって伝播する反射波もある。ここで、センサユニット30はタイヤに設けられているため、走行中にはタイヤと共にセンサユニット30も回転する。従って、センサユニット30からアンテナ装置23までの距離(矢印80)及びセンサユニット30から地面に反射したアンテナ装置23までの距離(矢印81)の関係は、タイヤの回転角度により変化する。従って、タイヤの回転角度により矢印80で示す経路にて到来する直接波及び矢印81で示す経路にて到来する反射波の両位相の関係は変化する。例えば、矢印80,81で示す経路にて到来する両波(両信号)の位相が180°ずれると、互いに干渉してしまい、アンテナが受信する信号の受信レベルは極端に小さくなる。特に、両信号の受信レベルが同一の場合には、干渉により受信レベルはゼロとなる。逆に、両信号の位相が一致すると、受信レベルは大きくなる。図4には、タイヤの回転角度による両アンテナ21,22により受信される空気圧信号の受信レベルの変化が示されている。なお、この図4のグラフは電波障害等がない理想的な状況における受信レベルの変化である。同図4に示すように、空気圧信号を正常に受信できる限界の受信レベルを基準に受信限界値Limが設定されている。前述のように、第1アンテナ21及び第2アンテナ22は離間して設けられているため、タイヤの回転角度に対して両アンテナ21,22が受信する信号の受信レベルの増減がずれて検出される。ちなみに、UHF帯を用いるシステムでは両アンテナ21,22間の離間距離は十数センチあればよく、両アンテナ21,22を同一の基板上に実装することも可能である。各アンテナ21,22の指向性が異なる場合には、前記離間距離は更に短くてもよい。図4に示すように、両アンテナ21,22における受信レベルの増減のずれ量ΔDに応じて、アンテナの種類(指向性)や離間距離を決定する。
【0052】
図4に示すように、角度範囲D1は、第2アンテナ22が受信する信号の受信レベルが受信限界値Lim未満の範囲に設定される。また、角度範囲D2は、第1アンテナ21が受信する信号の受信レベルが受信限界値Lim未満の範囲に設定される。また、本例では、角度範囲D1はタイヤ回転角180°を中心値として設定され、角度範囲D2はタイヤ回転角200°を中心値として設定される。角度範囲D1,D2においては、アンテナ21,22の何れか一方が受信する受信レベルが受信限界値Lim未満となり、他方が受信する受信レベルが受信限界値Lim以上となる。
【0053】
角度範囲D1においては、図5(b)に示すように、空気圧信号が検波器44により検波されると、その信号レベル(電圧レベル)は一定値領域T1及び不定値領域T2を繰り返す波形となる。すなわち、一定値領域T1は第1アンテナ21が受信した信号の検波信号の領域であり、不定値領域T2は第2アンテナ22が受信した信号の検波信号の領域である。すなわち、上述したアンテナ21,22の切り替え時間間隔は、各領域T1,T2に要する時間と同じであり、本例では0.1msである。ここで、両アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の信号レベルの信号を受信した場合、検波信号の信号レベルは、図5(a)に示すように、時刻t1までのHi領域においてはHiレベル(高電圧レベル)であり、時刻t1からのLow領域においてはLowレベル(低電圧レベル)となる。これと同様に図5(b)において、一定値領域T1の信号レベルは、時刻t1までのHi領域においてはHiレベルとなり、時刻t1からのLow領域においてはLowレベルとなる。
【0054】
不定値領域T2においては、受信した信号にノイズが含まれているため、信号レベルが不安定にHi及びLowレベル間を増減する。よって、不定値領域T2においては、信号レベルの周波数は高い。よって、図5(b)の波形の信号をローパスフィルタ45に通過させることで、図5(c)に示すように、信号レベルの高周波成分は除去され、不定値領域T2におけるHi領域は凹形状となり、Low領域は凸形状となる。これは、高周波成分が除去された不定値領域T2の信号レベルがその前後部分における一定値領域T1の信号レベルに引っ張られることに起因する。これにより、不定値領域T2が一定値領域T1の信号レベルと近いレベルとなる。
【0055】
上記のように、ローパスフィルタ45を通過させただけでは、不定値領域T2に凹凸形状が形成され、完全に不定値領域T2の信号レベルをHiレベル又はLowレベルにすることはできない。そこで、比較部33は、ローパスフィルタ45を通過した信号の信号レベルとしきい値Vrとの比較により信号レベルを2値化する。比較部33は、図2に示すように、コンパレータ33aと、抵抗Rと、コンデンサCとを備える。コンパレータ33aの一方の入力端子には、ローパスフィルタ45の出力が直接入力される。コンパレータ33aの他方の入力端子及びローパスフィルタ45間の接続線には抵抗Rが接続され、同接続線のコンパレータ33a側にはグランドに接続されたコンデンサCが接続される。そして、抵抗Rの抵抗値やコンデンサCの容量に基づき、しきい値Vrが決まる。
【0056】
ここで、上述のように、アンテナ21,22は高速で切り替えられるため、一定値領域T1及び不定値領域T2の繰り返し周期は短くなる。従って、不定値領域T2が長くなることで不定値領域T2の凹凸形状における信号レベルがしきい値Vrを跨ぐことはない。換言すると、ローパスフィルタ45を通過させたときに、不定値領域T2の信号レベルがしきい値Vrを跨ぐことがないように、アンテナ21,22の切り替え時間間隔は高速に設定されている。また、本例では、一対のアンテナ21,22が高速で切り替えられるところ、一定値領域T1及び不定値領域T2の比率は1:1である。よって、例えば、3つ以上のアンテナが高速で切り替えられる構成と異なり、一定値領域T1に対して不定値領域T2が長くなることはなく、不定値領域T2の凹凸形状における信号レベルがしきい値Vrを跨ぐことが防止される。
【0057】
当該しきい値Vrは、ローパスフィルタ45から出力されるHiレベル及びLowレベル間の信号に対してコンデンサCが充放電を繰り返すことで、Hiレベル及びLowレベル間に設定される。従って、図5(c)において、しきい値Vr以上の信号レベルは、Hiレベルとされ、しきい値Vr未満の信号レベルはLowレベルとされる。これにより、図5(a)に示すように、両アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信した場合と同一の波形が得られる。なお、角度範囲D2においては、一定値領域T1及び不定値領域T2の位置が図5(b)に示す波形と反対になるものの、上記同様に信号レベルの波形の補正が可能である。
【0058】
以上のように、ローパスフィルタ45を通じて信号レベルの波形の補正が可能となり、両アンテナ21,22のうち、最も受信電波状況の優れたアンテナを利用した場合と同様の波形が得られる。すなわち、最適な受信電波状況のアンテナの判定をすることはなく、上記従来技術で説明したダイバシティ方式と同様の効果が得られる。この効果は、空気圧信号のように信号長が短い信号であれ、同様に得られる。受信電波状況の判定に要する時間を省略できるためである。
【0059】
ここで、空気圧信号は連続的に送信されているわけではなく、例えば、1分に1回程度送信される信号であるところ、上記従来技術で説明したダイバシティ方式で、アンテナの切り替えが間に合わなかった場合、次回まで信号を待たなければならない。また、このとき最適なアンテナを判定したところで、センサユニット30を備えるタイヤは回転可能であるところ、次回の信号送信時には最適なアンテナが変わっていることが予想される。この点、本実施形態では、タイヤの回転等に関わらず、受信可能状態とされるアンテナ21,22が高速で切り替えられることで、最も受信電波状況の優れたアンテナを利用した場合と同様の波形が得られる。さらに、ダイバシティ方式で必要となる信号レベル検出部を省略できるため、受信装置12をより簡易に構成できる。また、制御装置による信号レベル検出部等を通じた最適なアンテナの判定に係る処理を省略できる。
【0060】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)検波信号の信号レベルは、受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信したときに一定値になり、前記受信限界値Lim未満の受信レベルの信号を受信したときに不定値になる。上記実施形態では、検波信号の信号レベルにおいて不定値領域T2が除去され、不定値領域T2をその前後部分の一定値領域T1の信号レベルと同等の信号レベルとされる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、最も受信電波状況が良いアンテナを通じて受信されて検波された一定値領域T1からなる信号と同様の検波信号が得られる。
【0061】
(2)不定値領域T2はローパスフィルタ45により除去される。詳しくは、不定値領域T2には一定値領域T1に比べて大きいノイズが含まれるため、不定値領域T2の周波数は一定値領域T1の周波数よりも高くなる。よって、不定値領域T2及び一定値領域T1からなる検波信号をローパスフィルタ45に通過させることで、不定値領域T2の高周波成分を除去できる。上述のように、受信可能状態とされるアンテナの切り替えが高速であるのに伴い不定値領域T2及び一定値領域T1の繰り返しの周期は短いため、高周波成分が除去された不定値領域T2の信号レベルがその前後部分における一定値領域T1の信号レベルに引っ張られる。よって、不定値領域T2を一定値領域T1と同等の信号レベルに補正することができる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、受信電波状況が良好な場合における検波信号と同様の検波信号が得られる。
【0062】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第2の実施形態について図6(a)〜(c)を参照して説明する。この実施形態の受信装置は、検波信号の信号レベルにおける不定値領域T2の除去方法が第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、本実施形態においては、図2において、ローパスフィルタ45及び比較部33が省略される点を除き、第1の実施形態の受信装置と同様の構成を備えている。
【0063】
車両制御装置13は、検波信号の信号レベルのサンプリングを行う。第1実施形態において図4を参照して説明したように、角度範囲D1においては、第1アンテナ21が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信し、第2アンテナ22が受信限界値Lim未満の受信レベルの信号を受信する。この場合、図6(a)に示すように、検波信号の信号レベルは一定値領域T1及び不定値領域T2を交互に繰り返す。また、本実施形態では、アンテナ21,22の切り替え時間間隔は、少なくとも単位bitを受信するのに要する時間より高速であればよい。すなわち、第1の実施形態ほどのアンテナ切り替えの高速性は必要としない。
【0064】
車両制御装置13は、一定値領域T1における時刻t1での信号レベルを測定し、不定値領域T2における時刻t2での信号レベルを測定する。同様に時刻t3,t4以降の信号レベルを測定する。車両制御装置13は、スイッチング素子24の制御を通じて、両アンテナ21,22間で受信可能状態のアンテナを切り替えているため、どの期間にどのアンテナを利用しているかを認識できる。
【0065】
ここで、時刻tn(nは自然数)において、時刻t1及び時刻t3等のnが奇数のときに測定される信号レベルは、第1アンテナ21で受信され、検波された信号に基づく値である。すなわち、図6(b)に示すように、時刻tn(nが奇数)における信号レベルに基づき、第1アンテナ21が受信し、それが検波された信号の信号レベルの波形が認識可能となる。図6(b)に示すように、Hi領域における信号レベルの測定においては、Hiレベルが測定され、Low領域における信号レベルの測定においてはLowレベルが測定される。
【0066】
また、時刻t2及び時刻t4等のnが偶数のときに測定される信号レベルは第2アンテナ22で受信され、検波された信号に基づく値である。すなわち、図6(c)に示すように、時刻tn(nが偶数)における信号レベルに基づき、第2アンテナ22が受信し、それが検波された信号の信号レベルの波形が認識可能となる。上述のように、第2アンテナ22が受信する信号の受信レベルは受信限界値Lim未満である。よって、時刻tn(nが偶数)においては、不定値領域T2の信号レベルが測定される。不定値領域T2においては、信号レベルはHiレベル及びLowレベル間で不規則に増減するため、測定される信号レベルはHiレベル及びLowレベル間でランダムである。従って、Hiレベル又はLowレベルが何ら規則性なく測定される。なお、車両制御装置13は、第1の実施形態において比較部33を通じて設定されるしきい値Vrを自身のメモリ(図示略)に記憶している。そして、時刻tn(nが偶数)において、測定した信号レベルがしきい値Vr以上の場合にはHiレベルである旨判断され、測定した信号レベルがしきい値Vr未満の場合にはLowレベルである旨判断される。
【0067】
車両制御装置13は、例えば、3回目の測定までの信号レベルに基づき、信号の妥当性を判断する。本例では、空気圧信号の先頭の部分はHiレベルである。よって、アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受けた場合には、少なくとも3回目の測定までの信号レベルはHiレベルとなる。
【0068】
図6(c)に示すように、第2アンテナ22が受信し、それが検波された信号は2回目(時刻t4)の測定によりLowレベルが測定されている。よって、車両制御装置13は、第2アンテナ22により受信されて検波された信号の信号レベルが一定でない旨判断し、同信号の受信レベルが受信限界値Lim未満であるとして、時刻tn(nが偶数)におけるサンプリングを終了する。このように、早い段階でサンプリングを終了することで、測定に係る電力消費を低減できる。なお、時刻tn(nが偶数)におけるサンプリングは終了するものの、時刻tn(nが奇数)におけるサンプリング及びアンテナ21,22間でのアンテナの切り替えは継続される。
【0069】
一方、図6(b)に示すように、第1アンテナ21が受信し、それが検波された信号の信号レベルは、時刻t1,t3,t5において、3回連続してHiレベルが測定されている。よって、車両制御装置13は、第1アンテナ21により受信されて検波された信号の信号レベルが一定である旨判断し、同信号の受信レベルが受信限界値Lim以上の信号を受信しているとして、以降も信号レベルのサンプリングを続ける。その後、Low領域において、信号レベルがLowレベルとなったとき、時刻t11,t13においては、Lowレベルが測定される。これにより、図6(b)の波形は、図5(a)と同様の波形となる。このように、時刻tn(nが奇数)における信号レベルを測定することで、一方のアンテナの受信した信号の受信レベルが受信限界値Lim未満であっても、図5(a)に示すような正規の検波信号の波形を得ることができる。
【0070】
なお、角度範囲D2においては、第2アンテナ22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信し、第1アンテナ21が受信限界値Lim未満の受信レベルの信号を受信する。この場合、時刻tn(nが偶数)において、3回連続Hiレベルが測定され、以降のサンプリングが継続される。また、時刻tn(nが奇数)において、3回目の測定までにLowレベルが測定され、サンプリングが終了される。また、両アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信した場合、両アンテナ21,22について、サンプリングが継続される。
【0071】
以上により、第1の実施形態と同様に、最適な受信電波状況のアンテナの判定をすることなく、上記従来技術で説明したダイバシティ方式と同様の効果が得られる。また、3回の測定までにLowレベルが測定された場合、Lowレベルが測定されたアンテナについて、以降のサンプリングを行わないため、サンプリングに係る電力消費を抑えることができる。
【0072】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)及び(2)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(3)受信可能状態とされるアンテナ21,22が切り替えられる毎に検波信号の信号レベルが測定される。そして、アンテナ21,22毎に測定された信号レベルが一定である旨判断された場合、そのアンテナにて受信された信号を採用する。一方、アンテナ21,22毎に測定された信号レベルが一定でない旨判断された場合、そのアンテナにて受信された信号にて不定値領域T2が生成されていると考えられる。すなわち、そのアンテナについては、受信電波状況が良好でない。従って、そのアンテナにて受信された信号を無効とすることで、不定値領域T2を除去することが可能となる。
【0073】
(4)信号レベルが一定でない旨判断されたアンテナ21,22の測定は終了される。信号レベルが一定でない場合には不定値領域T2であると考えられ、不定値領域T2の信号レベルを測定しても何ら意味がないからである。これにより、信号レベルが一定でない旨判断された以降の信号レベルの測定に関する消費電力の低減が図られる。
(第3の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第3の実施形態について図7を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第1及び第2の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。以下、第1及び第2の実施形態における受信装置との相違点を中心に説明する。
【0074】
図7に示すように、受信装置12には合成器70を介して1対のアンテナ71,72が接続されている。ここで、第1のアンテナ71は第1の指向性を有し、第2のアンテナ72は第2の指向性を有している。ここで、第1の指向性及び第2の指向性は同一であっても異なっていてもよい。第1のアンテナ71及び合成器70間にはスイッチ73が設けられている。このスイッチ73は、第1のアンテナ71及び擬似負荷74間で接続状態が切り替わる。この擬似負荷74のインピーダンスは第1のアンテナ71と同一値に設定されている。
【0075】
スイッチ73が擬似負荷74に接続されているとき、第2のアンテナ72のみが空気圧信号を受信する。このとき、アンテナ装置23は、第2のアンテナ72の指向性である第2の指向性を有している。
【0076】
また、スイッチ73が第1のアンテナ71に接続されているとき、第1のアンテナ71及び第2のアンテナ72は単一の合成アンテナとして空気圧信号を受信する。このとき、アンテナ装置23(合成アンテナ)は、第1の指向性と第2の指向性とが指向性の積の原理に基づき合成された第3の指向性を有する。
【0077】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(5)スイッチ73の第1のアンテナ71及び合成器70間での切り替えを通じて、第2及び第3の指向性間で指向性を切り替えることができる。よって、第1及び第2のアンテナ71,72間でスイッチ73を切り替えることなく、第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
(6)スイッチ73の第1のアンテナ71及び合成器70間での切り替え途中においても、第2のアンテナ72を通じて空気圧信号を受信することができる。よって、アンテナ装置23の受信性能を向上させることができる。
【0079】
(7)擬似負荷74及び第1のアンテナ71のインピーダンスは同一値に設定されている。このため、スイッチ73が第1のアンテナ71から擬似負荷74に切り替えられたとしても、合成器70にとって電気的に同一の状態が保たれる。従って、スイッチ73が切り替えられることで、第2のアンテナ72の指向性及び合成器70の合成比が変化することが防止される。これにより、指向性の積の原理に基づき所望の指向性を実現することができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第4の実施形態について図8を参照して説明する。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0080】
この実施形態においては第3の実施形態とほぼ同様に構成される。以下、第3の実施形態との相違点について説明する。
図8に示すように、スイッチ73及び第1のアンテナ71間にはLNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)76が設けられている。また、擬似負荷74として抵抗75が設けられている。
【0081】
以上、説明した実施形態によれば、第3の実施形態における(5)及び(6)の効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(8)LNA76は、第1のアンテナ71からの受信信号を、ノイズの付加を最小限に抑制しつつ増幅する。ここで、第1のアンテナ71及び受信装置12間での損失は受信装置12自体のNF(雑音指数)を増大させる原因となる。よって、LNA76が第1のアンテナ71からの受信信号を増幅することで、上記損失がNFとして計上されず、結果としてNFを小さくすることができる。これにより、受信装置12の受信性能が向上する。
(第5の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第5の実施形態について図9を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0082】
図9に示すように、アンテナ装置23は、受信装置12に接続されるアンテナ78と、同アンテナ78と離間した位置に設けられる金属体79とを備える。金属体79は無給電素子であって、アンテナ78は給電素子である。また、金属体79の一端はグランドに接続されている。さらに、金属体79にはスイッチ77が設けられている。
【0083】
スイッチ77は、金属体79の一端が開放された開放状態と、金属体79の一端がグランドに接続された接地状態との間で金属体79の状態を切り替える。接地状態においてはスイッチ77を含む金属体79の全長は空気圧信号の波長を「λ」とすると「λ/2」となるとともに、開放状態においては金属体79の全長は「λ/2」より小さくなる。
【0084】
接地状態において、金属体79は電磁波(空気圧信号)を受けると共振して電流を誘起する。金属体79はこの電流によって電磁波を再放射する。このとき、金属体79は反射素子又は導波素子として機能する。反射素子は、アンテナ78における同反射素子と反対側の指向性を強くする。導波素子は、アンテナ78における同導波素子側の指向性を強くする。
【0085】
一方、開放状態においては、金属体79の全長は「λ/2」でなくなるため共振せずに電磁波(空気圧信号)を受けてもほとんど電流を誘起しない。よって、開放状態においては、金属体79はアンテナ78に影響を及ぼすほどの電磁波を再放射しない。本例では、金属体79の全長を「λ/2」としたが、共振して電流が誘起する条件が変化すれば、その長さは「λ/2」でなくてもよい。
【0086】
アンテナ78の指向性は金属体79からの電磁波の影響の有無により変化する。例えば、金属体79が反射素子として機能する場合にはアンテナ78は金属体79と反対側の指向性が強くなる。
【0087】
以上、説明した実施形態によれば、第3の実施形態における(5)及び(6)の効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(9)アンテナ78の周辺に金属体79を設置するだけの簡易な構成にて、アンテナ78の指向性の切り替えが可能となる。
(第6の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第6の実施形態について図10を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0088】
図10に示すように、線状のアンテナ82はその一端が受信装置12に接続されるとともに、その他端がグランドに接続されている。このアンテナ82には、グランド側から順にコンデンサ83及びスイッチ84が設けられている。アンテナ82は、スイッチ84がオン状態となっているとき、その一端がグランドに接続された接地アンテナとなる。この状態において、コンデンサ83を通じてアンテナ82の電気的な長さが調整されている。
【0089】
また、スイッチ84がオフ状態となっているとき、アンテナ82の一端が開放された非接地アンテナとなる。
以上、説明した実施形態によれば、第3の実施形態における(6)の効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
【0090】
(10)スイッチ84のオン、オフ状態が切り替えられることで、アンテナ82の状態や物理的及び電気的長さが変わる。これにより、アンテナ82の指向性を変化させることができる。
(第7の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第7の実施形態について図11を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0091】
図11に示すように、フェイズドアレイアンテナ85は、図7の構成と同様に第1のアンテナ71と、第2のアンテナ72と、合成器70とを備える。また、第1のアンテナ71及び合成器70間には位相器86が設けられている。位相器86は第1のアンテナ71からの受信信号の位相を変化させる。これにより、合成器70に入力される第1のアンテナ71及び第2のアンテナ72からの受信信号の位相差は変化する。この位相差の変化により、第1のアンテナ71及び第2のアンテナ72からなる合成アンテナの指向性が変化する。この合成アンテナの指向性は、2つのアンテナ71,72の位置と、各アンテナ71,72の指向性とに基づき決まる。なお、位相器86は切替装置に相当する。
【0092】
以上、説明した実施形態によれば、第3の実施形態における(5)及び(6)の効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(11)フェイズドアレイアンテナ85を通じて多数の指向性を実現することができる。
(第8の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第8の実施形態について図12を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0093】
図12に示すように、アンテナ88は一部が離間したループ状に形成されている。その離間した2つの部分間にはスイッチ89が設けられている。すなわち、スイッチ89がオフ状態のとき、アンテナ88はその一端が開放された非接地アンテナとなる。また、スイッチ89がオン状態のとき、アンテナ88はループアンテナとなる。
【0094】
なお、アンテナ88は、アンテナ概形の一部にループ部を含めばよく、完全な円形でなくてもよい。図12の例ではスイッチ89がオン状態で展開図がO型となるが、例えば、P型やR型であってもよい。
【0095】
以上、説明した実施形態によれば、特に、以下の作用効果を奏することができる。
(11)スイッチ89のオンオフ状態が切り替えられることによりアンテナ88の性質、具体的には空気圧信号(電磁波)によりアンテナ88に誘起される電流の分布が変化する。これにより、アンテナ88の指向性が変化する。
(第9の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第9の実施形態について図13を参照して説明する。この実施形態においてはインピーダンスの整合を行う整合回路が設けられている点が第5の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0096】
図13に示すように、第5の実施形態における図9と同様に金属体79が設けられる。また、アンテナ78は伝送経路90を通じて受信装置12に接続されている。この伝送経路90には、アンテナ78及び伝送経路90間でのインピーダンスの整合を行う整合回路91が設けられている。整合回路91はコイル92と、第1及び第2のコンデンサ93,94とを備える。
【0097】
詳しくは、コイル92は伝送経路90に設けられる。また、伝送経路90におけるコイル92のアンテナ78側にはスイッチ95が接続されている。また、コンデンサ93,94の一端はそれぞれグランドに接続されている。そして、スイッチ95は、両コンデンサ93,94の他端間で接続状態が切り替わる。
【0098】
金属体79のスイッチ80がオンオフ状態間で切り替えられることで、アンテナ78のインピーダンスは変化する。このアンテナ78のインピーダンスの変化に応じて整合回路91のインピーダンスも変化する。具体的には、金属体79のスイッチ80がオン状態に切り替えられたとき、アンテナ78側のスイッチ95は第1のコンデンサ93に接続される。また、金属体79のスイッチ80がオフ状態に切り替えられたとき、アンテナ78側のスイッチ95は第2のコンデンサ94に接続される。ここで、両コンデンサ93,94の容量はそれぞれ異なる値に設定されている。
【0099】
以上、説明した実施形態によれば、特に、以下の作用効果を奏することができる。
(12)スイッチ95が切り替えられることで整合回路91のインピーダンスはアンテナ78のインピーダンスの変化に応じて変化する。これにより、金属体79側のスイッチ95が切り替えられた場合であってもインピーダンスの整合状態が保たれて、反射による電力損失が抑制される。
【0100】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第2の実施形態においては、両アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信した場合、両アンテナ21,22について、サンプリングが継続されていた。しかし、どちらか一方のサンプリングを終了してもよい。この場合には、サンプリングに係る電力消費をより低減することができる。
【0101】
・第2実施形態においては、受信装置12は、一対のアンテナ21,22を備えていた。しかし、複数であれば、アンテナは3つ以上であってもよい。アンテナを3つ以上設けることで、電波状況によっては、不定値領域T2に対し一定値領域T1が短くなる場合がある。例えば、3つのアンテナにおいて、1つのアンテナのみが受信限界値Lim以上の信号レベルの信号を受信していた場合、不定値領域T2及び一定値領域T1の比率は、2:1となる。このように不定値領域T2が長い場合、第1の実施形態においては、図5(c)を参照して説明したように、検波信号がローパスフィルタ45を通過することで、不定値領域T2に凹凸状の波形が形成され、当該凹凸状の波形がしきい値Vrを跨ぐという問題が生じるおそれがあった。しかし、第2の実施形態においては、そもそもローパスフィルタ45を使用しないため、このような問題は生じない。よって、各アンテナが受信した信号において、その検波信号の信号レベルをサンプリングすることで、図6(b)及び図6(c)のように、各アンテナに対応する信号レベルの波形の認識が可能となる。このように、アンテナの数を増やすことで、空気圧信号を受信できる可能性が高まる。
【0102】
・第2の実施形態においては、空気圧信号の先頭の部分はHiレベルであるため、最初の3回の信号レベルの測定がHiレベルである場合、アンテナが受信限界値Lim以上の信号レベルの信号を受信している旨判断されていた。しかし、空気圧信号の先頭部分をLowレベルとしてもよい。この場合には、最初の3回の信号レベルの測定がLowレベルである場合、アンテナが受信限界値Lim以上の信号レベルの信号を受信している旨判断される。
【0103】
・第2の実施形態においては、3回目までの信号レベルの測定にて、Lowレベルが測定されたとき、以降のサンプリングは行わないものの、両アンテナ21,22間で受信可能状態とされるアンテナの切り替えは継続されていた。しかし、例えば、上記Lowレベルが測定された時点で、両アンテナ21,22の切り替えを終了して、受信限界値Lim以上の受信レベルで信号を受信できるアンテナのみを受信可能状態としてもよい。この場合、それ以降のアンテナ21,22の切り替えに係る制御及びそれに関する電力が不要となる。
【0104】
・第2の実施形態においては、3回目までの信号レベルの測定にて、以降のサンプリングを継続するか否かの判断が行われていた。しかし、この信号レベルの測定回数は3回でなくてもよい。測定回数を増やすことで、アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受けたか否かの判断がより確実に行える。また、測定回数を減らすことで、より迅速にアンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受けたか否かの判断が可能となる。
【0105】
・第2の実施形態においては、各一定値領域T1及び各不定値領域T2につき、1回だけ信号レベルの測定が行われていたが、各一定値領域T1及び各不定値領域T2につき複数回に亘って信号レベルの測定が行われてもよい。
【0106】
・上記第1〜第9の実施形態においては、変調方式としてFSKが採用されていた。しかし、変調方式として位相偏移検波方式(PSK; Phase shift keying)を採用してもよい。PSKは、無線信号の位相の変化に「1」(Hiレベル)又は「0」(Lowレベル)の情報が割り当てられる。PSKにおいても、FSKと同様に、信号を受信するアンテナ21,22が切り替えられることで、信号レベルが変動したとしても位相に変化はないため検波可能な受信限界値Lim以上の信号の検波に影響をもたらさない。
【0107】
・上記第1〜第9の実施形態においては、受信装置12は車載されるTPMSに適用されていたが、TPMSに限らず、その他移動体通信に適用してもよい。
・第3の実施形態においては、第1のアンテナ71及び合成器70間にのみスイッチ73が設けられていた。しかし、第2のアンテナ72及び合成器70間に新たなスイッチを設けてもよい。新たなスイッチも、スイッチ73と同様に、擬似負荷及び第2のアンテナ72間で接続状態が切り替わる。
【0108】
・第3の実施形態におけるアンテナの数は2つに限らず3つ以上であってもよい。
・第4の実施形態において、図8の鎖線で示すように、第2のアンテナ72及び合成器70間にLNA76を設けてもよい。この場合、NFの増大をいっそう抑制することができる。
【0109】
・第5の実施形態においては、スイッチ77の切り替えを通じて金属体79を共振させるか否かを切り替えていた。しかし、スイッチ77の切り替えを通じてアンテナ78の指向性を変化させることができれば共振させるか否かを切り替えなくてもよい。具体的には、スイッチ77の切り替えを通じて金属体79の全長が変化すれば、金属体79に誘起される電流分布が変化する。従って、金属体79からの電磁波、ひいてはアンテナ78の指向性が変化する。
【0110】
・また、スイッチ77の切り替えを通じて金属体79を反射素子及び導波素子間で切り替えて指向性を変化させてもよい。
・第5の実施形態においては、金属体79はスイッチ77を介して直接グランドに接続されていた。しかし、スイッチ77及びグランド間にコイル若しくはコンデンサ又はその両方を設けてもよい。本構成によれば、金属体79の実際の長さを変えることなく、その電気的な長さを調整することができる。金属体79の電気的な長さを調整することで、金属体79から放射される電磁波を変化させることができる。また、コンデンサ及びコイルは可変コンデンサ及び可変コイルであってもよい。
【0111】
・第5の実施形態における金属体79は複数設けられていてもよい。例えば、図15においては、アンテナ78を中心としてその周囲に金属体79が計4つ設けられる。各金属体79におけるスイッチ77は、同時にオンオフ状態の切り替えが行われてもよい。さらに、別個にオンオフ状態の切り替えが行われてもよいし、金属体79において複数の組み合わせを構成してその組み合わせ毎にスイッチ77を切り替えてもよい。これにより、アンテナ78の指向性の種類を増やすことができる。
【0112】
・第6の実施形態においては、アンテナ82はコンデンサ83を備えるとともに、グランドに接続されていた。しかし、スイッチ84の切り替えを通じて、アンテナ82の物理的又は電気的な長さ等を変化させることができれば上記構成に限定されない。例えば、コンデンサ83に代えて金属体やコイルを設けてもよいし、コンデンサ83を省略してもよい。さらに、コンデンサ83に加えてコイルを直列に接続してもよい。また、コンデンサ及びコイルは可変コンデンサ及び可変コイルであってもよい。また、アンテナ82の一端はグランドに接続されなくてもよい。
【0113】
・第6の実施形態における図10に示したアンテナ82の形状はこれに限定されない。例えば、図16(a)及び(b)に示すように、アンテナ82の受信装置12と反対側の端部が2つに分岐していて、その一方がグランドに接続されて、その他方が開放されていてもよい。本構成においてもアンテナ82の一方及びグランド間にスイッチ84及びコンデンサ83が設けられる。そして、スイッチ84のオン、オフ状態の切り替えを通じて、アンテナ82の指向性が変化する。
【0114】
・第8の実施形態においてスイッチ89及びアンテナ88の一端間にコイルやコンデンサを設けて、アンテナ88の電気的な長さを調整してもよい。
・第9の実施形態における整合回路91は図7〜図16に示した構成においても適用可能である。
【0115】
・上記第1〜第9の実施形態においては、受信装置12は、一対のアンテナ21,22からなるアンテナ装置23を備えていた。しかし、アンテナ装置23の構成は複数のアンテナに限定されず、指向性の切り替えを可能とした単一のアンテナであってもよい。図14に、具体的に指向性の切り替えが可能なアンテナを備える可変指向性アンテナ装置65を示す。同図14に示すように、可変指向性アンテナ装置65は、装荷量の異なる2つのコンデンサ60,61を、スイッチ素子63を介してアンテナ62に接続されてなる。同スイッチ素子63を両コンデンサ60,61間で切り替えることで、アンテナ62の指向性が変わる。すなわち、アンテナ62は単一でありながらスイッチ素子63を両コンデンサ60,61間で切り替えることで、指向性の異なる一対のアンテナ間で切り替えられることになる。このように、アンテナ62の指向性を高速で切り替えることで、上記実施形態のように、受信可能状態とされるアンテナを高速で切り替えた場合と同様に作用する。
【0116】
・上記第1〜第9の実施形態においては、受信装置12は、アンテナ又は指向性毎の送信信号の電波の強さを判断していなかったが、その電波の強さを判断して、その判断結果に基づき、より強い電波を受けたアンテナ又は指向性のみを通じて受信を行ってもよい。具体的には、送信信号における最初の数〜数十ビット分に相当する一定時間は、上記各実施形態と同様にアンテナ又は指向性を高速で切り替える。このとき、車両制御装置13は、各アンテナ又は各指向性を通じて受信した電波の強さを判断する。そして、車両制御装置13は、上記一定時間経過時に、より強い電波を受けたアンテナ又は指向性を選択し、そのアンテナ又は指向性のみを通じて、上記一定時間経過後の送信信号を受信する。本構成は、例えばワイヤレスキーシステムのように、電子キーから複数フレームが一度に送信される構成において好適である。このように、複数フレームが送られる場合には、所定のフレームにて上記のようにアンテナ又は指向性を高速で切り替えつつ、より強い電波を受けたアンテナ又は指向性を選択し、その選択された受信環境が最適なアンテナ又は指向性にて、次のフレームを受信することができる。
【0117】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項4、5、11又は12に記載の受信装置において、受信可能状態とされるアンテナが切り替えられる毎に、又は前記可変指向性アンテナの指向性が切り替えられる毎に、複数回に亘って信号レベルを測定する受信装置。
【0118】
同構成によれば、受信可能状態とされるアンテナ又は可変指向性アンテナの指向性が切り替えられる毎に複数回に亘って検波信号の信号レベルが測定される。このように、信号レベルの測定回数を増やすことで、より確実に信号レベルが一定であるか否かの判断がされる。
【0119】
(ロ)請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、前記送信信号の受信時において自身に誘起される電流の分布を変化させる切替装置を備えた受信装置。
【0120】
同構成によれば、切替装置の切り替えを通じて送信信号の受信時において誘起される電流の分布が変化する。これは、アンテナとしての性質、具体的には指向性が変化したことを意味する。これにより、アンテナを複数設けることなく、指向性の切り替えが可能となる。よって、受信装置がより簡易に構成される。
【0121】
また、複数のアンテナ間で切替装置を切り替えた場合と異なって、切替装置の切り替えに伴う送信信号を受信不能な期間が存在しない。よって、受信装置の受信性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0122】
10…車載装置、12…受信装置、13…車両制御装置、14…制御対象、21…第1アンテナ、22…第2アンテナ、30…センサユニット、33…比較部、40…検波部、42…混合器、43…局部発振器、44…検波器、45…ローパスフィルタ、51…バンドパスフィルタ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線信号を受信し、その信号を検波する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者が所持する電子キーと車両との間で無線通信を行うことにより、車両ドアの施錠や解錠などを自動的に行う、いわゆる電子キーシステムが周知である。電子キーシステムが搭載される車両には、通常、電子キーに対して各種無線信号を送信する送信装置と共に、電子キーから送信される各種無線信号を受信する受信装置が設けられている。そして、受信電波状況を改善する観点から、受信装置として例えば特許文献1に示されるダイバシティ方式を採用することが検討されている。
【0003】
ダイバシティ方式とは、複数のアンテナのうち最も受信電波状況の優れたアンテナを利用して通信を行う方式である。例えば、ダイバシティ方式を採用した受信装置は、図17に示すように、一対のアンテナ101,102と、分配器110と、受信回路109と、包絡線検波器105と、信号レベル検出部104と、制御装置106とを備える。一対のアンテナ101,102は、受信した信号を分配器110に出力する。分配器110は、当該信号を包絡線検波器105及び受信回路109に分配する。受信回路109は、一対のアンテナ101,102からの信号を復調することでデータ信号を生成し、同データ信号を各種機器に出力する。包絡線検波器105は、アンテナ101,102からの信号を包絡線検波する。包絡線検波は、信号の包絡線のみを取り出すことで検波を行う。包絡線検波器105により検波された信号は信号レベル検出部104に出力される。信号レベル検出部104は、検波された信号の信号レベルを検出し、検出結果を制御装置106に出力する。
【0004】
また、受信装置には両アンテナ101,102間で分配器110に接続されるアンテナを切り替えるスイッチング素子108が設けられている。制御装置106は、スイッチング素子108の制御を通じて、無線信号の受信を可能とするアンテナ101,102を切り替える。制御装置106は、無線信号の受信中に受信するアンテナ101,102を切り替えて、そのとき、信号レベル検出部104により検出される信号レベルを比較することで、何れのアンテナ101,102の受信電波状況が良好であるかを判定する。これにより、受信装置は、受信電波状況が良好なアンテナを使用して、より良い受信電波状況にて通信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−215040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記車載される受信装置は、電子キー以外とも無線通信を行うことがある。例えば、タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が知られている。TPMSを備える車両の各タイヤには、タイヤ空気圧を検出するセンサユニットが設けられている。各センサユニットは、タイヤ空気圧の検出結果を含む空気圧信号を受信装置に送信する。当該空気圧信号に含まれる情報量は、ドアの施解錠時等にやり取りされる信号に含まれる情報量に比べて少ない。これは、施解錠時にやり取りされる信号には高いセキュリティ性が要求されることに起因する。従って、空気圧信号の信号長は短く、すなわち、短時間で同信号の送信が完了する。よって、上記受信装置において、制御装置106による信号レベル検出部104を通じた信号レベルの比較中に、上記空気圧信号の送信が完了するおそれがある。また、たとえ、空気圧信号の送信完了前に、アンテナ101,102の受信電波状況の判定が完了しても、空気圧信号の一部しか受信電波状況が良好なアンテナ101,102にて受信できないおそれもある。特に、一方のアンテナ101は信号を受信できるものの、他方のアンテナ102は同信号を受信できない状況においては、受信するアンテナの切り替えの遅れにより正常な信号を受信できないことも想定される。
【0007】
以上により、ダイバシティ方式を採用した受信装置であるにも関わらず、信号レベルの比較を通じた受信電波状況の判定処理の実行時間に起因して受信電波状況の最適化という効果が得られない状況の発生が懸念される。このような問題は、車載される受信装置に限らず、ダイバシティ方式を採用した移動体通信において生じうる。また、アンテナの指向性を切り替え可能に構成される可変指向性アンテナにおいても、最適な受信電波状況となる指向性が判定される際に、上記同様の問題が生じる。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、受信電波状況の判定を行うことなく、受信電波状況の最適化が図られる受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、通信対象から送信される単一の送信信号を、複数の異なる受信レベルにて交互に受信可能としたアンテナ装置を備え、同アンテナ装置を介して受信した前記送信信号を検波して検波信号を生成する受信装置において、前記検波信号の信号レベルは、正常に受信できる前記送信信号の受信レベルの値である受信限界値以上の受信レベルの信号を受信したときに前記送信信号に応じた一定値になるとともに、前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したときに不定値になり、前記検波信号において、前記不定値となる領域が存在する場合には、これを除去して、同不定値の領域をその前後部分の前記一定値と同等の信号レベルとすることをその要旨としている。
【0010】
アンテナ装置が受信限界値以上の受信レベルの送信信号を受信したときには、検波信号の信号レベルは一定値となり、受信限界値未満の受信レベルの送信信号を受信したときには、検波信号の信号レベルは不定値となる。つまり、送信信号をアンテナ装置が受信限界値以上の受信レベルにて受信した場合、すなわち受信電波状況が良好な場合には、検波信号は一定値の領域のみからなる。また、送信信号をアンテナ装置が受信限界値未満の受信レベルにて受信した場合、すなわち受信電波状況が良好でない場合には、検波信号は不定値の領域のみからなる。
【0011】
上記構成によれば、アンテナ装置は単一の送信信号を複数の異なる受信レベルにて交互に受信する。よって、例えば、異なる受信レベル間に受信限界値が存在する等の電波状況であれば、検波信号の信号レベルは、一定値の領域及び不定値の領域を繰り返すことがある。このように、不定値領域、すなわち受信電波状況が良好でない信号が含まれる場合でも、不定値領域が除去され、不定値領域の信号レベルはその前後部分の一定値の領域の信号レベルと同等の信号レベルとされる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、上記受信電波状況が良好な場合における検波信号と同様の検波信号が得られる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の受信装置において、前記アンテナ装置は複数の指向性間で指向性が切り替え可能に構成される可変指向性アンテナ装置であることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、可変指向性アンテナ装置を通じて指向性を変化させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、単位ビットを受信するのに要する時間より高速で指向性を切り替え、前記検波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタを備え、前記可変指向性アンテナ装置における何れかの指向性にて受信限界値以上の受信レベルの信号を受信し、同指向性の他の指向性にて前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したとき、前記ローパスフィルタは前記検波信号における前記他の指向性にて受信された受信限界未満の受信レベルの信号が検波された領域である前記不定値の領域の高周波成分を除去することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、可変指向性アンテナ装置における何れかの指向性にて受信限界値未満の受信レベルの信号しか受信できなかった場合、その信号が検波されることで、検波信号に不定値領域が形成される。このとき、何れかの指向性にて受信限界値以上の受信レベルの信号を受信した場合には、検波信号の信号レベルは不定値及び一定値を繰り返す。この不定値及び一定値の繰り返しは、指向性の切り替え時間間隔に応じて決まる。指向性の切り替えは単位ビットを受信するのに要する時間より高速であるため、不定値及び一定値の繰り返しの周期は短い。
【0015】
ここで、不定値領域はローパスフィルタにより除去される。不定値領域は、広帯域なノイズを含むため、不定値領域の周波数は一定値領域の周波数よりも高くなる。よって、不定値領域及び一定値領域からなる検波信号をローパスフィルタに通過させることで、不定値領域の高周波成分を除去できる。上述のように、指向性の切り替えが高速であるのに伴い不定値及び一定値の繰り返しの周期は短くなるため、高周波成分が除去された不定値領域の信号レベルがその前後部分における一定値領域の信号レベルに引っ張られる形となって、例えばしきい値でHiレベル及びLowレベルの判定を行った場合には不定値領域があたかも除去されたようになる。よって、不定値領域を一定値領域と同等の信号レベルに補正することができる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、受信電波状況が良好な場合における検波信号と同様の検波信号が得られる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、単位ビットを受信するのに要する時間より高速で指向性を切り替えるとともに、その切り替え毎に前記検波信号の信号レベルを測定し、前記指向性毎に測定された前記検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、その指向性にて受信される前記検波信号を採用し、一定でない旨判断される場合、その指向性にて受信される検波信号を無効とすることで、前記不定値の領域を除去することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、可変指向性アンテナの指向性が切り替えられる毎に検波信号の信号レベルが測定される。そして、指向性毎に測定された検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、その指向性にて受信された信号を採用する。一方、指向性毎に測定された信号レベルが一定でない旨判断された場合、その指向性にて受信された信号にて不定値の領域が生成されていると考えられる。従って、その指向性にて受信された信号を無効とし、上記信号レベルが一定である旨判断された指向性にて受信された信号を採用することで、不定値領域を除去することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の受信装置において、前記指向性の切り替え毎に測定された前記検波信号の前記信号レベルが一定でない旨判断された場合、その指向性における信号レベルの測定を終了することをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、検波信号の信号レベルが一定でない旨判断された場合、それを受信していた指向性における信号レベルの測定は終了される。これは、信号レベルが一定でない場合には不定値領域であると考えられ、不定値領域の信号レベルを測定しても何ら意味がないからである。これにより、信号レベルが一定でない旨判断された以降の信号レベルの測定に関する消費電力の低減が図られる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、前記送信信号を受信する給電素子と、前記給電素子に設けられるとともに、前記給電素子の電気的な長さを変化させる切替装置と、を備えたことをその要旨としている。
【0021】
同構成によれば、切替装置を通じて給電素子の電気的な長さが変化する。これにより、送信信号の受信時において給電素子に誘起される電流の分布が変化する。これは、アンテナとしての性質、具体的には指向性が変化したことを意味する。これにより、アンテナを複数設けることなく、指向性の切り替えが可能となる。よって、受信装置がより簡易に構成される。
【0022】
また、複数のアンテナ間で受信可能なアンテナをスイッチ等の切替装置を通じて切り替えた場合と異なって、切替装置の切り替えに伴う送信信号を受信不能な期間が存在しない。よって、受信装置の受信性能を向上させることができる。
【0023】
なお、給電素子の電気的な長さとは、給電素子の物理的な長さも含む概念であり、コイル及びコンデンサ等の集中定数及びスタブ等の分布定数を含む。
請求項7に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、複数のアンテナと、それらアンテナの指向性を合成する合成器と、前記複数のアンテナのうち少なくとも何れか一つと、前記合成器との間に設けられるスイッチと、を備え、前記スイッチは、前記少なくとも何れか一つのアンテナを前記送信信号が受信可能な状態及び受信不能な状態間で切り替えることをその要旨としている。
【0024】
同構成によれば、スイッチを通じてアンテナが送信信号を受信可能な状態に切り替えられたときには、そのアンテナを含む複数のアンテナは合成器により一つの合成アンテナとして所定の指向性を有する。また、スイッチを通じてアンテナが送信信号を受信不能な状態に切り替えられたときには、残りのアンテナは上記所定の指向性とは異なる指向性を有する。これにより、指向性の切り替えが可能となる。
【0025】
本構成においても、複数のアンテナ間でスイッチを切り替えた場合と異なって、スイッチの切り替えに伴って送信信号が受信不能な期間が存在しない。よって、受信装置の受信性能を向上させることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、前記送信信号を受信する給電素子と、前記給電素子の指向性を自身と反対側に導く反射素子又は前記給電素子の指向性を自身側に強くする導波素子としての機能を有する無給電素子と、前記無給電素子の電気的な長さを変化させる切替装置と、を備えたことをその要旨としている。
【0027】
同構成によれば、切替装置が切り替えられることで無給電素子から放射される電磁波が変化する。無給電素子は、給電素子にとって反射素子若しくは導波素子として機能する。このように、無給電素子を設けるだけで容易にアンテナである給電素子の指向性を切り替えることが可能となる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の受信装置において、前記アンテナ装置は、位置的に離間した複数のアンテナを備えるとともに前記各アンテナの何れかの一が選択的に受信可能状態に切り替え可能に構成されることをその要旨としている。
【0029】
同構成によれば、複数のアンテナの何れかを受信可能状態に切り替えることで、単一の送信信号を複数の異なる受信レベルにて受信可能となる。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の受信装置において、前記複数のアンテナは一対のアンテナにて構成されるとともに、前記検波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタを備え、前記一対の前記アンテナのうち何れか一方が受信限界値以上の受信レベルの信号を受信し、他方が前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したとき、前記ローパスフィルタは前記検波信号における前記他方のアンテナが受信した信号が検波された受信限界未満の受信レベルの領域である前記不定値の領域の高周波成分を除去することをその要旨としている。
【0030】
同構成によれば、他方のアンテナが受信限界値未満の受信レベルの信号しか受信できなかった場合、その他方のアンテナが受信した信号が検波されることで、検波信号に不定値領域が形成される。このとき、一方のアンテナが受信限界値以上の受信レベルの信号を受信した場合には、検波信号の信号レベルは不定値及び一定値を繰り返す。この不定値及び一定値の繰り返しは、受信可能状態とされるアンテナの切り替え時間間隔に応じている。アンテナの切り替えは単位ビットを受信するのに要する時間より高速であるため、不定値及び一定値の繰り返しの周期は短い。
【0031】
ここで、不定値領域はローパスフィルタにより除去される。不定値領域は、広帯域なノイズを含むため、不定値領域の周波数は一定値領域の周波数よりも高くなる。よって、不定値領域及び一定値領域からなる検波信号をローパスフィルタに通過させることで、不定値領域の高周波成分を除去できる。上述のように、受信可能状態とされるアンテナの切り替えが高速であるのに伴い不定値及び一定値の繰り返しの周期は短いため、高周波成分が除去された不定値領域の信号レベルがその前後部分における一定値領域の信号レベルに引っ張られる形となって、例えばしきい値でHiレベル及びLowレベルの判定を行った場合には不定値領域があたかも除去されたようになる。よって、不定値領域を一定値領域と同等の信号レベルに補正することができる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、受信電波状況が良好な場合における検波信号と同様の検波信号が得られる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の受信装置において、受信可能状態とされる前記アンテナが単位ビットを受信するのに要する時間より高速に切り替えられる毎に前記検波信号の信号レベルを測定し、前記アンテナ毎に測定された前記検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、そのアンテナにて受信される前記検波信号を採用し、一定でない旨判断される場合、そのアンテナにて受信される検波信号を無効とすることで、前記不定値の領域を除去することをその要旨としている。
【0033】
同構成によれば、受信可能状態とされるアンテナが切り替えられる毎に検波信号の信号レベルが測定される。そして、アンテナ毎に測定された信号レベルが一定である旨判断された場合、そのアンテナにて受信された信号を採用する。一方、アンテナ毎に測定された検波信号の信号レベルが一定でない旨判断された場合、そのアンテナにて受信された信号にて不定値の領域が生成されていると考えられる。すなわち、そのアンテナの受信電波状況は良好でない。従って、そのアンテナにて受信された信号を無効とし、上記信号レベルが一定である旨判断されたアンテナにて受信された信号を採用することで、不定値領域を除去することが可能となる。
【0034】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の受信装置において、前記アンテナ毎に測定された前記検波信号の前記信号レベルが一定でない旨判断された場合、そのアンテナにおける信号レベルの測定を終了することをその要旨としている。
【0035】
同構成によれば、検波信号の信号レベルが一定でない旨判断された場合、それを受信していたアンテナにおける信号レベルの測定は終了される。これは、信号レベルが一定でない場合には不定値領域であると考えられ、不定値領域の信号レベルを測定しても何ら意味がないからである。これにより、信号レベルが一定でない旨判断された以降の信号レベルの測定に関する消費電力の低減が図られる。
【0036】
請求項13に記載の発明は、請求項3又は10に記載の受信装置において、前記ローパスフィルタは、前記アンテナ装置を介して受信した前記送信信号を検波して検波信号を生成し、その生成した信号を同ローパスフィルタに出力する検波部と、同ローパスフィルタを通過した信号の信号レベルとしきい値との比較を通じて同信号を2値化する比較部との間に設けられることをその要旨としている。
【0037】
同構成によれば、ローパスフィルタによって検波部からの検波信号の信号レベルにおける不定値の領域が除去される。このとき、不定値の領域は完全に除去されない。比較部はこの完全に除去されない不定値の領域を2値化することで不定値の領域を完全に除去する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、受信装置において、受信電波状況の判定を行うことなく、受信電波状況の最適化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態におけるTPMSの構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における受信装置の構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態におけるセンサユニットからの両アンテナへの信号の伝播態様を示す説明図。
【図4】第1の実施形態におけるタイヤ回転角に対する両アンテナの受信する受信レベルを示したグラフ。
【図5】第1の実施形態における(a)は検波信号の信号レベルを示すグラフ、(b)は一定値及び不定値領域を有する信号レベルを示すグラフ、(c)は、(b)の高周波成分を除去したグラフ。
【図6】第2の実施形態における(a)は一定値及び不定値領域を有する信号レベルを示すグラフ、(b)は一定値領域をサンプリングした信号レベルを示すグラフ、(c)は不定値領域をサンプリングした信号レベルを示すグラフ。
【図7】第3の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図8】第4の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図9】第5の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図10】第6の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図11】第7の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図12】第8の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図13】第9の実施形態におけるアンテナ装置の構成図。
【図14】他の実施形態におけるアンテナ装置を示す斜視図。
【図15】(a)は他の実施形態におけるアンテナ装置の構成図、(b)は他の実施形態におけるアンテナ装置の斜視図。
【図16】(a)は他の実施形態におけるアンテナ装置の構成図、(b)は他の実施形態におけるアンテナ装置の斜視図。
【図17】従来の受信装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、タイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)を搭載した車両に適用した第1の実施形態について図1〜図5を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、TPMSの構成及び動作を説明する。
【0041】
このTPMSは、タイヤの空気圧を走行しながらチェックするシステムである。詳しくは、図1に示すように、車両の各タイヤには、タイヤ空気圧を検出するセンサユニット30が設けられている。各センサユニット30から一定周期毎(例えば、1分毎)にタイヤの空気圧信号が送信される。アンテナ装置23を備える受信装置12は、これら空気圧信号を受信するとともに、これを検波して、検波した信号を車両制御装置13に出力する。
【0042】
本例では、空気圧信号の変調方式として周波数偏移変調(FSK; frequency shift keying)が採用されている。FSKでは、例えば、高周波数のとき「1」(Hiレベル)、低周波数のとき「0」(Lowレベル)といった周波数に情報が割り当てられている。FSKにて変調された空気圧信号が検波されることで、車両制御装置13は空気圧信号に含まれる情報、すなわち各タイヤの空気圧を認識する。なお、具体的な検波方法については後述する。車両制御装置13は、空気圧が異常であるタイヤが存在する旨判断した場合、例えば、運転席近傍に設けられる警告ランプ15の点灯を通じて、その旨を運転者に通知する。
【0043】
次に、図2を参照して、受信装置12の構成、並びに動作を詳述する。
同図2に示されるように、受信装置12は、空気圧信号を受信する第1アンテナ21及び第2アンテナ22からなるアンテナ装置23と、同信号を検波する検波部40と、を備える。また、アンテナ装置23と検波部40との間にはバンドパスフィルタ51が設けられている。バンドパスフィルタ51は、アンテナ装置23を介して受信される無線信号のうち、空気圧信号等の周波数に対応した周波数を有する無線信号を選択的に通過させる。すなわち、このバンドパスフィルタ51によって、空気圧信号の周波数と大きく異なる周波数を有する有害なノイズ信号を除去することが可能となっている。なお、第1アンテナ21及び第2アンテナ22は、単一の無線信号に対して異なる受信レベルにて受信可能に離間して設けられている。
【0044】
アンテナ装置23及びバンドパスフィルタ51間には、スイッチング素子24が設けられている。同スイッチング素子24は、車両制御装置13からの指令信号に基づき両アンテナ21,22間でバンドパスフィルタ51側に接続されるアンテナを選択的に切り替える。ここで、切り替え時間間隔は、受信レベルに無関係に一定の時間間隔である。アンテナ21,22はバンドパスフィルタ51側に接続されるとき、空気圧信号を受信することができる受信可能状態となる。車両制御装置13は、スイッチング素子24を通じて、受信可能状態のアンテナ21,22を高速で切り替える。本例では、0.1ms毎にアンテナ21,22間で受信可能状態とされるアンテナが切り替えられる。すなわち、アンテナ21,22の切り替え時間間隔は、0.1msとなる。ここで、本例では通信レートは1kbps(bit per second)であるため、1ms毎に1bitの情報が伝達される。よって、アンテナ21,22の切り替え時間間隔は、単位bitを受信するのに要する時間の10分の1となる。なお、単位bitを受信するのに要する時間は、通信レートの逆数に比例し、同時間が短いほどアンテナ21,22間での切り替えは高速となる。また、アンテナの切り替え時間間隔は、単位bitを受信するのに要する時間の数十分の一〜100分の一程度の範囲で任意に設定できる。
【0045】
バンドパスフィルタ51を通過した空気圧信号は、検波部40を通じて検波される。具体的には、図2に示すように、空気圧信号が増幅器41を通じて増幅され、この増幅された信号は、混合器42に入力されて、局部発振器43で生成される周波数f1の信号と混合される。これにより、空気圧信号の周波数がfraであるとすると、増幅器41で増幅された信号の周波数が「fra±f1」で示される周波数、すなわち中間周波数(IF;Intermediate Frequency)に変換される。中間周波数に変換された信号は混合器42の後段に設けられるバンドパスフィルタ52を通過する。バンドパスフィルタ52は、混合器42で生成される中間周波数の信号のうち、高い周波数(上述した「fra+f1」の周波数に相当)を有する信号、あるいは低い周波数(上述した「fra−f1」の周波数に相当)を有する信号を選択的にフィルタリングする。そして、このフィルタリングされた信号(IF信号)は検波器44に入力されて検波される。例えば、検波器44はクワドラチャ検波回路(図示略)を備え、クワドラチャ検波を行う。これにより、検波器44は、アナログ信号である信号の周波数に応じて高電圧レベル及び低電圧レベルの2種類の電圧レベルを出力する。詳しくは、FSKにて変調がされているため、検波器44は、高周波数のとき高電圧レベルを出力し、低周波数のとき低電圧レベルを出力する。また、検波器44は、バンドパスフィルタ52からの信号における受信レベルが一定値以下の場合、検波すべき対象となる信号がないため上記両電圧レベル付近であって広帯域の周波数成分を含む不定値、つまり雑音を出力する。検波器44からの信号が後述するローパスフィルタ45及び比較部33を通過することで、図5(a)に示すように、低電圧レベルに応じた「0」又は高電圧レベルに応じた「1」のデジタル信号が出力される。すなわち、本例では、符号化方式として高電圧レベルが「1」、低電圧レベルが「0」と符号化されるNRZ(Non Return to Zero)方式が採用されている。
【0046】
また、上述のように、空気圧信号の変調方式としてFSKが採用されている。FSKでは、周波数に情報が割り当てられている。よって、信号を受信するアンテナ21,22が切り替えられることで、信号の受信レベルが変動したとしても、受信レベルが受信限界値Lim以上であれば、同信号の周波数は変化しないため検波や通信に影響はない。
【0047】
図2に示すように、当該検波された空気圧信号(以下、検波信号という)は、ローパスフィルタ45を通過する。ローパスフィルタ45は、検波信号のうち低周波数信号を選択的に通過させる。すなわち、ローパスフィルタ45により、検波信号の高周波成分は除去される。詳しくは、後述するが、検波信号を当該ローパスフィルタ45に通過させることで、アンテナ21,22のうち最良の受信電波状況のアンテナを通じて受信した信号の波形を得ることができる。ここで、ローパスフィルタ45のカットオフ周波数は、正規の検波信号を通過させつつ、不定値領域T2の高周波成分を除去するべく決定される。上述のように、通信レートが1kbpsであるので、検波信号の1ms毎に1bitの情報が伝達される。よって、検波信号において「1」及び「0」が繰り返された場合、検波信号は2msで一周期として、2msの逆数で導出される0.5kHzの周波数を含む。よって、ローパスフィルタ45のカットオフ周波数は、正規の検波信号に含まれうる0.5kHzより大きく、例えば、1kHz以上に設定される。
【0048】
ここで、アンテナの切り替え時間間隔は、以下の理由により、単位bitの受信に要する時間の数十分の一〜100分の一程度の範囲で任意に設定できる。すなわち、アンテナの切り替え時間間隔は、遅すぎると不定値領域T2が十分にフィルタリングされないため、正規の信号を認識できない。逆に、アンテナの切り替え時間間隔が早すぎると不定値領域T2と一定値領域T1との識別ができず、両領域T1,T2がフィルタリングされる。いずれの場合であっても、ローパスフィルタ45の出力は比較部33にて正しく比較されない。
【0049】
ローパスフィルタ45を通過した空気圧信号は、比較部33に入力される。比較部33は、しきい値Vrと、ローパスフィルタ45を通過した空気圧信号の信号レベルとの比較を通じて、同信号を2値化する。すなわち、信号レベルがしきい値Vr以上の場合には「1」(Hiレベル)とされ、信号レベルがしきい値Vr未満の場合には「0」(Lowレベル)とされる。比較部33から出力される2値化された空気圧信号は車両制御装置13に入力される。この空気圧信号は、「0」及び「1」の組み合わせからなるデジタル信号となる。この「0」及び「1」の組み合わせにタイヤの空気圧に関する情報が含まれている。車両制御装置13は、前述のように、比較部33からの空気圧信号に基づきタイヤの空気圧の異常の有無を判断し、必要に応じて警告ランプ15を点灯する。
【0050】
次に、ローパスフィルタ45を通じた信号レベルの波形の補正方法について具体的に説明する。
上述のように、受信装置12は、一対のアンテナ21,22を備えている。よって、信号の到来状況によっては、アンテナ装置23のうち、一方のアンテナが空気圧信号を受信可能であり、他方のアンテナが同信号を受信不能である場合も考えられる。具体的には、主に以下のような場合が想定される。
【0051】
図3に示すように、空気圧信号は、センサユニット30から等方性を有し空気中を伝播していく。空気圧信号には、例えば、矢印80で示すように、センサユニット30からアンテナ装置23に向かって伝播する直接波がある。また、空気圧信号には、矢印81で示すように、センサユニット30から地面に反射した後、アンテナ装置23に向かって伝播する反射波もある。ここで、センサユニット30はタイヤに設けられているため、走行中にはタイヤと共にセンサユニット30も回転する。従って、センサユニット30からアンテナ装置23までの距離(矢印80)及びセンサユニット30から地面に反射したアンテナ装置23までの距離(矢印81)の関係は、タイヤの回転角度により変化する。従って、タイヤの回転角度により矢印80で示す経路にて到来する直接波及び矢印81で示す経路にて到来する反射波の両位相の関係は変化する。例えば、矢印80,81で示す経路にて到来する両波(両信号)の位相が180°ずれると、互いに干渉してしまい、アンテナが受信する信号の受信レベルは極端に小さくなる。特に、両信号の受信レベルが同一の場合には、干渉により受信レベルはゼロとなる。逆に、両信号の位相が一致すると、受信レベルは大きくなる。図4には、タイヤの回転角度による両アンテナ21,22により受信される空気圧信号の受信レベルの変化が示されている。なお、この図4のグラフは電波障害等がない理想的な状況における受信レベルの変化である。同図4に示すように、空気圧信号を正常に受信できる限界の受信レベルを基準に受信限界値Limが設定されている。前述のように、第1アンテナ21及び第2アンテナ22は離間して設けられているため、タイヤの回転角度に対して両アンテナ21,22が受信する信号の受信レベルの増減がずれて検出される。ちなみに、UHF帯を用いるシステムでは両アンテナ21,22間の離間距離は十数センチあればよく、両アンテナ21,22を同一の基板上に実装することも可能である。各アンテナ21,22の指向性が異なる場合には、前記離間距離は更に短くてもよい。図4に示すように、両アンテナ21,22における受信レベルの増減のずれ量ΔDに応じて、アンテナの種類(指向性)や離間距離を決定する。
【0052】
図4に示すように、角度範囲D1は、第2アンテナ22が受信する信号の受信レベルが受信限界値Lim未満の範囲に設定される。また、角度範囲D2は、第1アンテナ21が受信する信号の受信レベルが受信限界値Lim未満の範囲に設定される。また、本例では、角度範囲D1はタイヤ回転角180°を中心値として設定され、角度範囲D2はタイヤ回転角200°を中心値として設定される。角度範囲D1,D2においては、アンテナ21,22の何れか一方が受信する受信レベルが受信限界値Lim未満となり、他方が受信する受信レベルが受信限界値Lim以上となる。
【0053】
角度範囲D1においては、図5(b)に示すように、空気圧信号が検波器44により検波されると、その信号レベル(電圧レベル)は一定値領域T1及び不定値領域T2を繰り返す波形となる。すなわち、一定値領域T1は第1アンテナ21が受信した信号の検波信号の領域であり、不定値領域T2は第2アンテナ22が受信した信号の検波信号の領域である。すなわち、上述したアンテナ21,22の切り替え時間間隔は、各領域T1,T2に要する時間と同じであり、本例では0.1msである。ここで、両アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の信号レベルの信号を受信した場合、検波信号の信号レベルは、図5(a)に示すように、時刻t1までのHi領域においてはHiレベル(高電圧レベル)であり、時刻t1からのLow領域においてはLowレベル(低電圧レベル)となる。これと同様に図5(b)において、一定値領域T1の信号レベルは、時刻t1までのHi領域においてはHiレベルとなり、時刻t1からのLow領域においてはLowレベルとなる。
【0054】
不定値領域T2においては、受信した信号にノイズが含まれているため、信号レベルが不安定にHi及びLowレベル間を増減する。よって、不定値領域T2においては、信号レベルの周波数は高い。よって、図5(b)の波形の信号をローパスフィルタ45に通過させることで、図5(c)に示すように、信号レベルの高周波成分は除去され、不定値領域T2におけるHi領域は凹形状となり、Low領域は凸形状となる。これは、高周波成分が除去された不定値領域T2の信号レベルがその前後部分における一定値領域T1の信号レベルに引っ張られることに起因する。これにより、不定値領域T2が一定値領域T1の信号レベルと近いレベルとなる。
【0055】
上記のように、ローパスフィルタ45を通過させただけでは、不定値領域T2に凹凸形状が形成され、完全に不定値領域T2の信号レベルをHiレベル又はLowレベルにすることはできない。そこで、比較部33は、ローパスフィルタ45を通過した信号の信号レベルとしきい値Vrとの比較により信号レベルを2値化する。比較部33は、図2に示すように、コンパレータ33aと、抵抗Rと、コンデンサCとを備える。コンパレータ33aの一方の入力端子には、ローパスフィルタ45の出力が直接入力される。コンパレータ33aの他方の入力端子及びローパスフィルタ45間の接続線には抵抗Rが接続され、同接続線のコンパレータ33a側にはグランドに接続されたコンデンサCが接続される。そして、抵抗Rの抵抗値やコンデンサCの容量に基づき、しきい値Vrが決まる。
【0056】
ここで、上述のように、アンテナ21,22は高速で切り替えられるため、一定値領域T1及び不定値領域T2の繰り返し周期は短くなる。従って、不定値領域T2が長くなることで不定値領域T2の凹凸形状における信号レベルがしきい値Vrを跨ぐことはない。換言すると、ローパスフィルタ45を通過させたときに、不定値領域T2の信号レベルがしきい値Vrを跨ぐことがないように、アンテナ21,22の切り替え時間間隔は高速に設定されている。また、本例では、一対のアンテナ21,22が高速で切り替えられるところ、一定値領域T1及び不定値領域T2の比率は1:1である。よって、例えば、3つ以上のアンテナが高速で切り替えられる構成と異なり、一定値領域T1に対して不定値領域T2が長くなることはなく、不定値領域T2の凹凸形状における信号レベルがしきい値Vrを跨ぐことが防止される。
【0057】
当該しきい値Vrは、ローパスフィルタ45から出力されるHiレベル及びLowレベル間の信号に対してコンデンサCが充放電を繰り返すことで、Hiレベル及びLowレベル間に設定される。従って、図5(c)において、しきい値Vr以上の信号レベルは、Hiレベルとされ、しきい値Vr未満の信号レベルはLowレベルとされる。これにより、図5(a)に示すように、両アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信した場合と同一の波形が得られる。なお、角度範囲D2においては、一定値領域T1及び不定値領域T2の位置が図5(b)に示す波形と反対になるものの、上記同様に信号レベルの波形の補正が可能である。
【0058】
以上のように、ローパスフィルタ45を通じて信号レベルの波形の補正が可能となり、両アンテナ21,22のうち、最も受信電波状況の優れたアンテナを利用した場合と同様の波形が得られる。すなわち、最適な受信電波状況のアンテナの判定をすることはなく、上記従来技術で説明したダイバシティ方式と同様の効果が得られる。この効果は、空気圧信号のように信号長が短い信号であれ、同様に得られる。受信電波状況の判定に要する時間を省略できるためである。
【0059】
ここで、空気圧信号は連続的に送信されているわけではなく、例えば、1分に1回程度送信される信号であるところ、上記従来技術で説明したダイバシティ方式で、アンテナの切り替えが間に合わなかった場合、次回まで信号を待たなければならない。また、このとき最適なアンテナを判定したところで、センサユニット30を備えるタイヤは回転可能であるところ、次回の信号送信時には最適なアンテナが変わっていることが予想される。この点、本実施形態では、タイヤの回転等に関わらず、受信可能状態とされるアンテナ21,22が高速で切り替えられることで、最も受信電波状況の優れたアンテナを利用した場合と同様の波形が得られる。さらに、ダイバシティ方式で必要となる信号レベル検出部を省略できるため、受信装置12をより簡易に構成できる。また、制御装置による信号レベル検出部等を通じた最適なアンテナの判定に係る処理を省略できる。
【0060】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)検波信号の信号レベルは、受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信したときに一定値になり、前記受信限界値Lim未満の受信レベルの信号を受信したときに不定値になる。上記実施形態では、検波信号の信号レベルにおいて不定値領域T2が除去され、不定値領域T2をその前後部分の一定値領域T1の信号レベルと同等の信号レベルとされる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、最も受信電波状況が良いアンテナを通じて受信されて検波された一定値領域T1からなる信号と同様の検波信号が得られる。
【0061】
(2)不定値領域T2はローパスフィルタ45により除去される。詳しくは、不定値領域T2には一定値領域T1に比べて大きいノイズが含まれるため、不定値領域T2の周波数は一定値領域T1の周波数よりも高くなる。よって、不定値領域T2及び一定値領域T1からなる検波信号をローパスフィルタ45に通過させることで、不定値領域T2の高周波成分を除去できる。上述のように、受信可能状態とされるアンテナの切り替えが高速であるのに伴い不定値領域T2及び一定値領域T1の繰り返しの周期は短いため、高周波成分が除去された不定値領域T2の信号レベルがその前後部分における一定値領域T1の信号レベルに引っ張られる。よって、不定値領域T2を一定値領域T1と同等の信号レベルに補正することができる。従って、受信電波状況の判定を何ら行うことなく、受信電波状況が良好な場合における検波信号と同様の検波信号が得られる。
【0062】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第2の実施形態について図6(a)〜(c)を参照して説明する。この実施形態の受信装置は、検波信号の信号レベルにおける不定値領域T2の除去方法が第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、本実施形態においては、図2において、ローパスフィルタ45及び比較部33が省略される点を除き、第1の実施形態の受信装置と同様の構成を備えている。
【0063】
車両制御装置13は、検波信号の信号レベルのサンプリングを行う。第1実施形態において図4を参照して説明したように、角度範囲D1においては、第1アンテナ21が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信し、第2アンテナ22が受信限界値Lim未満の受信レベルの信号を受信する。この場合、図6(a)に示すように、検波信号の信号レベルは一定値領域T1及び不定値領域T2を交互に繰り返す。また、本実施形態では、アンテナ21,22の切り替え時間間隔は、少なくとも単位bitを受信するのに要する時間より高速であればよい。すなわち、第1の実施形態ほどのアンテナ切り替えの高速性は必要としない。
【0064】
車両制御装置13は、一定値領域T1における時刻t1での信号レベルを測定し、不定値領域T2における時刻t2での信号レベルを測定する。同様に時刻t3,t4以降の信号レベルを測定する。車両制御装置13は、スイッチング素子24の制御を通じて、両アンテナ21,22間で受信可能状態のアンテナを切り替えているため、どの期間にどのアンテナを利用しているかを認識できる。
【0065】
ここで、時刻tn(nは自然数)において、時刻t1及び時刻t3等のnが奇数のときに測定される信号レベルは、第1アンテナ21で受信され、検波された信号に基づく値である。すなわち、図6(b)に示すように、時刻tn(nが奇数)における信号レベルに基づき、第1アンテナ21が受信し、それが検波された信号の信号レベルの波形が認識可能となる。図6(b)に示すように、Hi領域における信号レベルの測定においては、Hiレベルが測定され、Low領域における信号レベルの測定においてはLowレベルが測定される。
【0066】
また、時刻t2及び時刻t4等のnが偶数のときに測定される信号レベルは第2アンテナ22で受信され、検波された信号に基づく値である。すなわち、図6(c)に示すように、時刻tn(nが偶数)における信号レベルに基づき、第2アンテナ22が受信し、それが検波された信号の信号レベルの波形が認識可能となる。上述のように、第2アンテナ22が受信する信号の受信レベルは受信限界値Lim未満である。よって、時刻tn(nが偶数)においては、不定値領域T2の信号レベルが測定される。不定値領域T2においては、信号レベルはHiレベル及びLowレベル間で不規則に増減するため、測定される信号レベルはHiレベル及びLowレベル間でランダムである。従って、Hiレベル又はLowレベルが何ら規則性なく測定される。なお、車両制御装置13は、第1の実施形態において比較部33を通じて設定されるしきい値Vrを自身のメモリ(図示略)に記憶している。そして、時刻tn(nが偶数)において、測定した信号レベルがしきい値Vr以上の場合にはHiレベルである旨判断され、測定した信号レベルがしきい値Vr未満の場合にはLowレベルである旨判断される。
【0067】
車両制御装置13は、例えば、3回目の測定までの信号レベルに基づき、信号の妥当性を判断する。本例では、空気圧信号の先頭の部分はHiレベルである。よって、アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受けた場合には、少なくとも3回目の測定までの信号レベルはHiレベルとなる。
【0068】
図6(c)に示すように、第2アンテナ22が受信し、それが検波された信号は2回目(時刻t4)の測定によりLowレベルが測定されている。よって、車両制御装置13は、第2アンテナ22により受信されて検波された信号の信号レベルが一定でない旨判断し、同信号の受信レベルが受信限界値Lim未満であるとして、時刻tn(nが偶数)におけるサンプリングを終了する。このように、早い段階でサンプリングを終了することで、測定に係る電力消費を低減できる。なお、時刻tn(nが偶数)におけるサンプリングは終了するものの、時刻tn(nが奇数)におけるサンプリング及びアンテナ21,22間でのアンテナの切り替えは継続される。
【0069】
一方、図6(b)に示すように、第1アンテナ21が受信し、それが検波された信号の信号レベルは、時刻t1,t3,t5において、3回連続してHiレベルが測定されている。よって、車両制御装置13は、第1アンテナ21により受信されて検波された信号の信号レベルが一定である旨判断し、同信号の受信レベルが受信限界値Lim以上の信号を受信しているとして、以降も信号レベルのサンプリングを続ける。その後、Low領域において、信号レベルがLowレベルとなったとき、時刻t11,t13においては、Lowレベルが測定される。これにより、図6(b)の波形は、図5(a)と同様の波形となる。このように、時刻tn(nが奇数)における信号レベルを測定することで、一方のアンテナの受信した信号の受信レベルが受信限界値Lim未満であっても、図5(a)に示すような正規の検波信号の波形を得ることができる。
【0070】
なお、角度範囲D2においては、第2アンテナ22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信し、第1アンテナ21が受信限界値Lim未満の受信レベルの信号を受信する。この場合、時刻tn(nが偶数)において、3回連続Hiレベルが測定され、以降のサンプリングが継続される。また、時刻tn(nが奇数)において、3回目の測定までにLowレベルが測定され、サンプリングが終了される。また、両アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信した場合、両アンテナ21,22について、サンプリングが継続される。
【0071】
以上により、第1の実施形態と同様に、最適な受信電波状況のアンテナの判定をすることなく、上記従来技術で説明したダイバシティ方式と同様の効果が得られる。また、3回の測定までにLowレベルが測定された場合、Lowレベルが測定されたアンテナについて、以降のサンプリングを行わないため、サンプリングに係る電力消費を抑えることができる。
【0072】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)及び(2)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(3)受信可能状態とされるアンテナ21,22が切り替えられる毎に検波信号の信号レベルが測定される。そして、アンテナ21,22毎に測定された信号レベルが一定である旨判断された場合、そのアンテナにて受信された信号を採用する。一方、アンテナ21,22毎に測定された信号レベルが一定でない旨判断された場合、そのアンテナにて受信された信号にて不定値領域T2が生成されていると考えられる。すなわち、そのアンテナについては、受信電波状況が良好でない。従って、そのアンテナにて受信された信号を無効とすることで、不定値領域T2を除去することが可能となる。
【0073】
(4)信号レベルが一定でない旨判断されたアンテナ21,22の測定は終了される。信号レベルが一定でない場合には不定値領域T2であると考えられ、不定値領域T2の信号レベルを測定しても何ら意味がないからである。これにより、信号レベルが一定でない旨判断された以降の信号レベルの測定に関する消費電力の低減が図られる。
(第3の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第3の実施形態について図7を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第1及び第2の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。以下、第1及び第2の実施形態における受信装置との相違点を中心に説明する。
【0074】
図7に示すように、受信装置12には合成器70を介して1対のアンテナ71,72が接続されている。ここで、第1のアンテナ71は第1の指向性を有し、第2のアンテナ72は第2の指向性を有している。ここで、第1の指向性及び第2の指向性は同一であっても異なっていてもよい。第1のアンテナ71及び合成器70間にはスイッチ73が設けられている。このスイッチ73は、第1のアンテナ71及び擬似負荷74間で接続状態が切り替わる。この擬似負荷74のインピーダンスは第1のアンテナ71と同一値に設定されている。
【0075】
スイッチ73が擬似負荷74に接続されているとき、第2のアンテナ72のみが空気圧信号を受信する。このとき、アンテナ装置23は、第2のアンテナ72の指向性である第2の指向性を有している。
【0076】
また、スイッチ73が第1のアンテナ71に接続されているとき、第1のアンテナ71及び第2のアンテナ72は単一の合成アンテナとして空気圧信号を受信する。このとき、アンテナ装置23(合成アンテナ)は、第1の指向性と第2の指向性とが指向性の積の原理に基づき合成された第3の指向性を有する。
【0077】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(5)スイッチ73の第1のアンテナ71及び合成器70間での切り替えを通じて、第2及び第3の指向性間で指向性を切り替えることができる。よって、第1及び第2のアンテナ71,72間でスイッチ73を切り替えることなく、第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
(6)スイッチ73の第1のアンテナ71及び合成器70間での切り替え途中においても、第2のアンテナ72を通じて空気圧信号を受信することができる。よって、アンテナ装置23の受信性能を向上させることができる。
【0079】
(7)擬似負荷74及び第1のアンテナ71のインピーダンスは同一値に設定されている。このため、スイッチ73が第1のアンテナ71から擬似負荷74に切り替えられたとしても、合成器70にとって電気的に同一の状態が保たれる。従って、スイッチ73が切り替えられることで、第2のアンテナ72の指向性及び合成器70の合成比が変化することが防止される。これにより、指向性の積の原理に基づき所望の指向性を実現することができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第4の実施形態について図8を参照して説明する。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0080】
この実施形態においては第3の実施形態とほぼ同様に構成される。以下、第3の実施形態との相違点について説明する。
図8に示すように、スイッチ73及び第1のアンテナ71間にはLNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)76が設けられている。また、擬似負荷74として抵抗75が設けられている。
【0081】
以上、説明した実施形態によれば、第3の実施形態における(5)及び(6)の効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(8)LNA76は、第1のアンテナ71からの受信信号を、ノイズの付加を最小限に抑制しつつ増幅する。ここで、第1のアンテナ71及び受信装置12間での損失は受信装置12自体のNF(雑音指数)を増大させる原因となる。よって、LNA76が第1のアンテナ71からの受信信号を増幅することで、上記損失がNFとして計上されず、結果としてNFを小さくすることができる。これにより、受信装置12の受信性能が向上する。
(第5の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第5の実施形態について図9を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0082】
図9に示すように、アンテナ装置23は、受信装置12に接続されるアンテナ78と、同アンテナ78と離間した位置に設けられる金属体79とを備える。金属体79は無給電素子であって、アンテナ78は給電素子である。また、金属体79の一端はグランドに接続されている。さらに、金属体79にはスイッチ77が設けられている。
【0083】
スイッチ77は、金属体79の一端が開放された開放状態と、金属体79の一端がグランドに接続された接地状態との間で金属体79の状態を切り替える。接地状態においてはスイッチ77を含む金属体79の全長は空気圧信号の波長を「λ」とすると「λ/2」となるとともに、開放状態においては金属体79の全長は「λ/2」より小さくなる。
【0084】
接地状態において、金属体79は電磁波(空気圧信号)を受けると共振して電流を誘起する。金属体79はこの電流によって電磁波を再放射する。このとき、金属体79は反射素子又は導波素子として機能する。反射素子は、アンテナ78における同反射素子と反対側の指向性を強くする。導波素子は、アンテナ78における同導波素子側の指向性を強くする。
【0085】
一方、開放状態においては、金属体79の全長は「λ/2」でなくなるため共振せずに電磁波(空気圧信号)を受けてもほとんど電流を誘起しない。よって、開放状態においては、金属体79はアンテナ78に影響を及ぼすほどの電磁波を再放射しない。本例では、金属体79の全長を「λ/2」としたが、共振して電流が誘起する条件が変化すれば、その長さは「λ/2」でなくてもよい。
【0086】
アンテナ78の指向性は金属体79からの電磁波の影響の有無により変化する。例えば、金属体79が反射素子として機能する場合にはアンテナ78は金属体79と反対側の指向性が強くなる。
【0087】
以上、説明した実施形態によれば、第3の実施形態における(5)及び(6)の効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(9)アンテナ78の周辺に金属体79を設置するだけの簡易な構成にて、アンテナ78の指向性の切り替えが可能となる。
(第6の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第6の実施形態について図10を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0088】
図10に示すように、線状のアンテナ82はその一端が受信装置12に接続されるとともに、その他端がグランドに接続されている。このアンテナ82には、グランド側から順にコンデンサ83及びスイッチ84が設けられている。アンテナ82は、スイッチ84がオン状態となっているとき、その一端がグランドに接続された接地アンテナとなる。この状態において、コンデンサ83を通じてアンテナ82の電気的な長さが調整されている。
【0089】
また、スイッチ84がオフ状態となっているとき、アンテナ82の一端が開放された非接地アンテナとなる。
以上、説明した実施形態によれば、第3の実施形態における(6)の効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
【0090】
(10)スイッチ84のオン、オフ状態が切り替えられることで、アンテナ82の状態や物理的及び電気的長さが変わる。これにより、アンテナ82の指向性を変化させることができる。
(第7の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第7の実施形態について図11を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0091】
図11に示すように、フェイズドアレイアンテナ85は、図7の構成と同様に第1のアンテナ71と、第2のアンテナ72と、合成器70とを備える。また、第1のアンテナ71及び合成器70間には位相器86が設けられている。位相器86は第1のアンテナ71からの受信信号の位相を変化させる。これにより、合成器70に入力される第1のアンテナ71及び第2のアンテナ72からの受信信号の位相差は変化する。この位相差の変化により、第1のアンテナ71及び第2のアンテナ72からなる合成アンテナの指向性が変化する。この合成アンテナの指向性は、2つのアンテナ71,72の位置と、各アンテナ71,72の指向性とに基づき決まる。なお、位相器86は切替装置に相当する。
【0092】
以上、説明した実施形態によれば、第3の実施形態における(5)及び(6)の効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(11)フェイズドアレイアンテナ85を通じて多数の指向性を実現することができる。
(第8の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第8の実施形態について図12を参照して説明する。この実施形態においては受信装置の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0093】
図12に示すように、アンテナ88は一部が離間したループ状に形成されている。その離間した2つの部分間にはスイッチ89が設けられている。すなわち、スイッチ89がオフ状態のとき、アンテナ88はその一端が開放された非接地アンテナとなる。また、スイッチ89がオン状態のとき、アンテナ88はループアンテナとなる。
【0094】
なお、アンテナ88は、アンテナ概形の一部にループ部を含めばよく、完全な円形でなくてもよい。図12の例ではスイッチ89がオン状態で展開図がO型となるが、例えば、P型やR型であってもよい。
【0095】
以上、説明した実施形態によれば、特に、以下の作用効果を奏することができる。
(11)スイッチ89のオンオフ状態が切り替えられることによりアンテナ88の性質、具体的には空気圧信号(電磁波)によりアンテナ88に誘起される電流の分布が変化する。これにより、アンテナ88の指向性が変化する。
(第9の実施形態)
以下、本発明にかかる受信装置を、TPMSを搭載した車両に適用した第9の実施形態について図13を参照して説明する。この実施形態においてはインピーダンスの整合を行う整合回路が設けられている点が第5の実施形態と異なっている。なお、本実施形態においては、不定値領域の除去方法は第1及び第2の実施形態の何れを適用してもよい。
【0096】
図13に示すように、第5の実施形態における図9と同様に金属体79が設けられる。また、アンテナ78は伝送経路90を通じて受信装置12に接続されている。この伝送経路90には、アンテナ78及び伝送経路90間でのインピーダンスの整合を行う整合回路91が設けられている。整合回路91はコイル92と、第1及び第2のコンデンサ93,94とを備える。
【0097】
詳しくは、コイル92は伝送経路90に設けられる。また、伝送経路90におけるコイル92のアンテナ78側にはスイッチ95が接続されている。また、コンデンサ93,94の一端はそれぞれグランドに接続されている。そして、スイッチ95は、両コンデンサ93,94の他端間で接続状態が切り替わる。
【0098】
金属体79のスイッチ80がオンオフ状態間で切り替えられることで、アンテナ78のインピーダンスは変化する。このアンテナ78のインピーダンスの変化に応じて整合回路91のインピーダンスも変化する。具体的には、金属体79のスイッチ80がオン状態に切り替えられたとき、アンテナ78側のスイッチ95は第1のコンデンサ93に接続される。また、金属体79のスイッチ80がオフ状態に切り替えられたとき、アンテナ78側のスイッチ95は第2のコンデンサ94に接続される。ここで、両コンデンサ93,94の容量はそれぞれ異なる値に設定されている。
【0099】
以上、説明した実施形態によれば、特に、以下の作用効果を奏することができる。
(12)スイッチ95が切り替えられることで整合回路91のインピーダンスはアンテナ78のインピーダンスの変化に応じて変化する。これにより、金属体79側のスイッチ95が切り替えられた場合であってもインピーダンスの整合状態が保たれて、反射による電力損失が抑制される。
【0100】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第2の実施形態においては、両アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受信した場合、両アンテナ21,22について、サンプリングが継続されていた。しかし、どちらか一方のサンプリングを終了してもよい。この場合には、サンプリングに係る電力消費をより低減することができる。
【0101】
・第2実施形態においては、受信装置12は、一対のアンテナ21,22を備えていた。しかし、複数であれば、アンテナは3つ以上であってもよい。アンテナを3つ以上設けることで、電波状況によっては、不定値領域T2に対し一定値領域T1が短くなる場合がある。例えば、3つのアンテナにおいて、1つのアンテナのみが受信限界値Lim以上の信号レベルの信号を受信していた場合、不定値領域T2及び一定値領域T1の比率は、2:1となる。このように不定値領域T2が長い場合、第1の実施形態においては、図5(c)を参照して説明したように、検波信号がローパスフィルタ45を通過することで、不定値領域T2に凹凸状の波形が形成され、当該凹凸状の波形がしきい値Vrを跨ぐという問題が生じるおそれがあった。しかし、第2の実施形態においては、そもそもローパスフィルタ45を使用しないため、このような問題は生じない。よって、各アンテナが受信した信号において、その検波信号の信号レベルをサンプリングすることで、図6(b)及び図6(c)のように、各アンテナに対応する信号レベルの波形の認識が可能となる。このように、アンテナの数を増やすことで、空気圧信号を受信できる可能性が高まる。
【0102】
・第2の実施形態においては、空気圧信号の先頭の部分はHiレベルであるため、最初の3回の信号レベルの測定がHiレベルである場合、アンテナが受信限界値Lim以上の信号レベルの信号を受信している旨判断されていた。しかし、空気圧信号の先頭部分をLowレベルとしてもよい。この場合には、最初の3回の信号レベルの測定がLowレベルである場合、アンテナが受信限界値Lim以上の信号レベルの信号を受信している旨判断される。
【0103】
・第2の実施形態においては、3回目までの信号レベルの測定にて、Lowレベルが測定されたとき、以降のサンプリングは行わないものの、両アンテナ21,22間で受信可能状態とされるアンテナの切り替えは継続されていた。しかし、例えば、上記Lowレベルが測定された時点で、両アンテナ21,22の切り替えを終了して、受信限界値Lim以上の受信レベルで信号を受信できるアンテナのみを受信可能状態としてもよい。この場合、それ以降のアンテナ21,22の切り替えに係る制御及びそれに関する電力が不要となる。
【0104】
・第2の実施形態においては、3回目までの信号レベルの測定にて、以降のサンプリングを継続するか否かの判断が行われていた。しかし、この信号レベルの測定回数は3回でなくてもよい。測定回数を増やすことで、アンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受けたか否かの判断がより確実に行える。また、測定回数を減らすことで、より迅速にアンテナ21,22が受信限界値Lim以上の受信レベルの信号を受けたか否かの判断が可能となる。
【0105】
・第2の実施形態においては、各一定値領域T1及び各不定値領域T2につき、1回だけ信号レベルの測定が行われていたが、各一定値領域T1及び各不定値領域T2につき複数回に亘って信号レベルの測定が行われてもよい。
【0106】
・上記第1〜第9の実施形態においては、変調方式としてFSKが採用されていた。しかし、変調方式として位相偏移検波方式(PSK; Phase shift keying)を採用してもよい。PSKは、無線信号の位相の変化に「1」(Hiレベル)又は「0」(Lowレベル)の情報が割り当てられる。PSKにおいても、FSKと同様に、信号を受信するアンテナ21,22が切り替えられることで、信号レベルが変動したとしても位相に変化はないため検波可能な受信限界値Lim以上の信号の検波に影響をもたらさない。
【0107】
・上記第1〜第9の実施形態においては、受信装置12は車載されるTPMSに適用されていたが、TPMSに限らず、その他移動体通信に適用してもよい。
・第3の実施形態においては、第1のアンテナ71及び合成器70間にのみスイッチ73が設けられていた。しかし、第2のアンテナ72及び合成器70間に新たなスイッチを設けてもよい。新たなスイッチも、スイッチ73と同様に、擬似負荷及び第2のアンテナ72間で接続状態が切り替わる。
【0108】
・第3の実施形態におけるアンテナの数は2つに限らず3つ以上であってもよい。
・第4の実施形態において、図8の鎖線で示すように、第2のアンテナ72及び合成器70間にLNA76を設けてもよい。この場合、NFの増大をいっそう抑制することができる。
【0109】
・第5の実施形態においては、スイッチ77の切り替えを通じて金属体79を共振させるか否かを切り替えていた。しかし、スイッチ77の切り替えを通じてアンテナ78の指向性を変化させることができれば共振させるか否かを切り替えなくてもよい。具体的には、スイッチ77の切り替えを通じて金属体79の全長が変化すれば、金属体79に誘起される電流分布が変化する。従って、金属体79からの電磁波、ひいてはアンテナ78の指向性が変化する。
【0110】
・また、スイッチ77の切り替えを通じて金属体79を反射素子及び導波素子間で切り替えて指向性を変化させてもよい。
・第5の実施形態においては、金属体79はスイッチ77を介して直接グランドに接続されていた。しかし、スイッチ77及びグランド間にコイル若しくはコンデンサ又はその両方を設けてもよい。本構成によれば、金属体79の実際の長さを変えることなく、その電気的な長さを調整することができる。金属体79の電気的な長さを調整することで、金属体79から放射される電磁波を変化させることができる。また、コンデンサ及びコイルは可変コンデンサ及び可変コイルであってもよい。
【0111】
・第5の実施形態における金属体79は複数設けられていてもよい。例えば、図15においては、アンテナ78を中心としてその周囲に金属体79が計4つ設けられる。各金属体79におけるスイッチ77は、同時にオンオフ状態の切り替えが行われてもよい。さらに、別個にオンオフ状態の切り替えが行われてもよいし、金属体79において複数の組み合わせを構成してその組み合わせ毎にスイッチ77を切り替えてもよい。これにより、アンテナ78の指向性の種類を増やすことができる。
【0112】
・第6の実施形態においては、アンテナ82はコンデンサ83を備えるとともに、グランドに接続されていた。しかし、スイッチ84の切り替えを通じて、アンテナ82の物理的又は電気的な長さ等を変化させることができれば上記構成に限定されない。例えば、コンデンサ83に代えて金属体やコイルを設けてもよいし、コンデンサ83を省略してもよい。さらに、コンデンサ83に加えてコイルを直列に接続してもよい。また、コンデンサ及びコイルは可変コンデンサ及び可変コイルであってもよい。また、アンテナ82の一端はグランドに接続されなくてもよい。
【0113】
・第6の実施形態における図10に示したアンテナ82の形状はこれに限定されない。例えば、図16(a)及び(b)に示すように、アンテナ82の受信装置12と反対側の端部が2つに分岐していて、その一方がグランドに接続されて、その他方が開放されていてもよい。本構成においてもアンテナ82の一方及びグランド間にスイッチ84及びコンデンサ83が設けられる。そして、スイッチ84のオン、オフ状態の切り替えを通じて、アンテナ82の指向性が変化する。
【0114】
・第8の実施形態においてスイッチ89及びアンテナ88の一端間にコイルやコンデンサを設けて、アンテナ88の電気的な長さを調整してもよい。
・第9の実施形態における整合回路91は図7〜図16に示した構成においても適用可能である。
【0115】
・上記第1〜第9の実施形態においては、受信装置12は、一対のアンテナ21,22からなるアンテナ装置23を備えていた。しかし、アンテナ装置23の構成は複数のアンテナに限定されず、指向性の切り替えを可能とした単一のアンテナであってもよい。図14に、具体的に指向性の切り替えが可能なアンテナを備える可変指向性アンテナ装置65を示す。同図14に示すように、可変指向性アンテナ装置65は、装荷量の異なる2つのコンデンサ60,61を、スイッチ素子63を介してアンテナ62に接続されてなる。同スイッチ素子63を両コンデンサ60,61間で切り替えることで、アンテナ62の指向性が変わる。すなわち、アンテナ62は単一でありながらスイッチ素子63を両コンデンサ60,61間で切り替えることで、指向性の異なる一対のアンテナ間で切り替えられることになる。このように、アンテナ62の指向性を高速で切り替えることで、上記実施形態のように、受信可能状態とされるアンテナを高速で切り替えた場合と同様に作用する。
【0116】
・上記第1〜第9の実施形態においては、受信装置12は、アンテナ又は指向性毎の送信信号の電波の強さを判断していなかったが、その電波の強さを判断して、その判断結果に基づき、より強い電波を受けたアンテナ又は指向性のみを通じて受信を行ってもよい。具体的には、送信信号における最初の数〜数十ビット分に相当する一定時間は、上記各実施形態と同様にアンテナ又は指向性を高速で切り替える。このとき、車両制御装置13は、各アンテナ又は各指向性を通じて受信した電波の強さを判断する。そして、車両制御装置13は、上記一定時間経過時に、より強い電波を受けたアンテナ又は指向性を選択し、そのアンテナ又は指向性のみを通じて、上記一定時間経過後の送信信号を受信する。本構成は、例えばワイヤレスキーシステムのように、電子キーから複数フレームが一度に送信される構成において好適である。このように、複数フレームが送られる場合には、所定のフレームにて上記のようにアンテナ又は指向性を高速で切り替えつつ、より強い電波を受けたアンテナ又は指向性を選択し、その選択された受信環境が最適なアンテナ又は指向性にて、次のフレームを受信することができる。
【0117】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項4、5、11又は12に記載の受信装置において、受信可能状態とされるアンテナが切り替えられる毎に、又は前記可変指向性アンテナの指向性が切り替えられる毎に、複数回に亘って信号レベルを測定する受信装置。
【0118】
同構成によれば、受信可能状態とされるアンテナ又は可変指向性アンテナの指向性が切り替えられる毎に複数回に亘って検波信号の信号レベルが測定される。このように、信号レベルの測定回数を増やすことで、より確実に信号レベルが一定であるか否かの判断がされる。
【0119】
(ロ)請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、前記可変指向性アンテナ装置は、前記送信信号の受信時において自身に誘起される電流の分布を変化させる切替装置を備えた受信装置。
【0120】
同構成によれば、切替装置の切り替えを通じて送信信号の受信時において誘起される電流の分布が変化する。これは、アンテナとしての性質、具体的には指向性が変化したことを意味する。これにより、アンテナを複数設けることなく、指向性の切り替えが可能となる。よって、受信装置がより簡易に構成される。
【0121】
また、複数のアンテナ間で切替装置を切り替えた場合と異なって、切替装置の切り替えに伴う送信信号を受信不能な期間が存在しない。よって、受信装置の受信性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0122】
10…車載装置、12…受信装置、13…車両制御装置、14…制御対象、21…第1アンテナ、22…第2アンテナ、30…センサユニット、33…比較部、40…検波部、42…混合器、43…局部発振器、44…検波器、45…ローパスフィルタ、51…バンドパスフィルタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象から送信される単一の送信信号を、複数の異なる受信レベルにて交互に受信可能としたアンテナ装置を備え、同アンテナ装置を介して受信した前記送信信号を検波して検波信号を生成する受信装置において、
前記検波信号の信号レベルは、正常に受信できる前記送信信号の受信レベルの値である受信限界値以上の受信レベルの信号を受信したときに前記送信信号に応じた一定値になるとともに、前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したときに不定値になり、
前記検波信号において、前記不定値となる領域が存在する場合には、これを除去して、同不定値の領域をその前後部分の前記一定値と同等の信号レベルとする受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受信装置において、
前記アンテナ装置は複数の指向性間で指向性が切り替え可能に構成される可変指向性アンテナ装置である受信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、単位ビットを受信するのに要する時間より高速で指向性を切り替え、
前記検波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタを備え、
前記可変指向性アンテナ装置における何れかの指向性にて受信限界値以上の受信レベルの信号を受信し、同指向性の他の指向性にて前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したとき、前記ローパスフィルタは前記検波信号における前記他の指向性にて受信された受信限界未満の受信レベルの信号が検波された領域である前記不定値の領域の高周波成分を除去する受信装置。
【請求項4】
請求項2に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、単位ビットを受信するのに要する時間より高速で指向性を切り替えるとともに、その切り替え毎に前記検波信号の信号レベルを測定し、
前記指向性毎に測定された前記検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、その指向性にて受信される前記検波信号を採用し、
一定でない旨判断される場合、その指向性にて受信される検波信号を無効とすることで、前記不定値の領域を除去する受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の受信装置において、
前記指向性の切り替え毎に測定された前記検波信号の前記信号レベルが一定でない旨判断された場合、その指向性における信号レベルの測定を終了する受信装置。
【請求項6】
請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、
前記送信信号を受信する給電素子と、
前記給電素子に設けられるとともに、前記給電素子の電気的な長さを変化させる切替装置と、を備えた受信装置。
【請求項7】
請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、複数のアンテナと、それらアンテナの指向性を合成する合成器と、
前記複数のアンテナのうち少なくとも何れか一つと、前記合成器との間に設けられるスイッチと、を備え、
前記スイッチは、前記少なくとも何れか一つのアンテナを前記送信信号が受信可能な状態及び受信不能な状態間で切り替える受信装置。
【請求項8】
請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、
前記送信信号を受信する給電素子と、
前記給電素子の指向性を自身と反対側に強くする反射素子又は前記給電素子の指向性を自身側に導く導波素子としての機能を有する無給電素子と、
前記無給電素子の電気的な長さを変化させる切替装置と、を備えた受信装置。
【請求項9】
請求項1に記載の受信装置において、
前記アンテナ装置は、位置的に離間した複数のアンテナを備えるとともに前記各アンテナの何れかの一が選択的に受信可能状態に切り替え可能に構成される受信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の受信装置において、
前記複数のアンテナは一対のアンテナにて構成されるとともに、
前記検波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタを備え、
前記一対の前記アンテナのうち何れか一方が受信限界値以上の受信レベルの信号を受信し、他方が前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したとき、前記ローパスフィルタは前記検波信号における前記他方のアンテナが受信した信号が検波された受信限界未満の受信レベルの領域である前記不定値の領域の高周波成分を除去する受信装置。
【請求項11】
請求項9に記載の受信装置において、
受信可能状態とされる前記アンテナが単位ビットを受信するのに要する時間より高速に切り替えられる毎に前記検波信号の信号レベルを測定し、
前記アンテナ毎に測定された前記検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、そのアンテナにて受信される前記検波信号を採用し、一定でない旨判断される場合、そのアンテナにて受信される検波信号を無効とすることで、前記不定値の領域を除去する受信装置。
【請求項12】
請求項11に記載の受信装置において、
前記アンテナ毎に測定された前記検波信号の前記信号レベルが一定でない旨判断された場合、そのアンテナにおける信号レベルの測定を終了する受信装置。
【請求項13】
請求項3又は10に記載の受信装置において、
前記ローパスフィルタは、前記アンテナ装置を介して受信した前記送信信号を検波して検波信号を生成し、その生成した信号を同ローパスフィルタに出力する検波部と、同ローパスフィルタを通過した信号の信号レベルとしきい値との比較を通じて同信号を2値化する比較部との間に設けられる受信装置。
【請求項1】
通信対象から送信される単一の送信信号を、複数の異なる受信レベルにて交互に受信可能としたアンテナ装置を備え、同アンテナ装置を介して受信した前記送信信号を検波して検波信号を生成する受信装置において、
前記検波信号の信号レベルは、正常に受信できる前記送信信号の受信レベルの値である受信限界値以上の受信レベルの信号を受信したときに前記送信信号に応じた一定値になるとともに、前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したときに不定値になり、
前記検波信号において、前記不定値となる領域が存在する場合には、これを除去して、同不定値の領域をその前後部分の前記一定値と同等の信号レベルとする受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受信装置において、
前記アンテナ装置は複数の指向性間で指向性が切り替え可能に構成される可変指向性アンテナ装置である受信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、単位ビットを受信するのに要する時間より高速で指向性を切り替え、
前記検波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタを備え、
前記可変指向性アンテナ装置における何れかの指向性にて受信限界値以上の受信レベルの信号を受信し、同指向性の他の指向性にて前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したとき、前記ローパスフィルタは前記検波信号における前記他の指向性にて受信された受信限界未満の受信レベルの信号が検波された領域である前記不定値の領域の高周波成分を除去する受信装置。
【請求項4】
請求項2に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、単位ビットを受信するのに要する時間より高速で指向性を切り替えるとともに、その切り替え毎に前記検波信号の信号レベルを測定し、
前記指向性毎に測定された前記検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、その指向性にて受信される前記検波信号を採用し、
一定でない旨判断される場合、その指向性にて受信される検波信号を無効とすることで、前記不定値の領域を除去する受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の受信装置において、
前記指向性の切り替え毎に測定された前記検波信号の前記信号レベルが一定でない旨判断された場合、その指向性における信号レベルの測定を終了する受信装置。
【請求項6】
請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、
前記送信信号を受信する給電素子と、
前記給電素子に設けられるとともに、前記給電素子の電気的な長さを変化させる切替装置と、を備えた受信装置。
【請求項7】
請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、複数のアンテナと、それらアンテナの指向性を合成する合成器と、
前記複数のアンテナのうち少なくとも何れか一つと、前記合成器との間に設けられるスイッチと、を備え、
前記スイッチは、前記少なくとも何れか一つのアンテナを前記送信信号が受信可能な状態及び受信不能な状態間で切り替える受信装置。
【請求項8】
請求項2〜4の何れか一項に記載の受信装置において、
前記可変指向性アンテナ装置は、
前記送信信号を受信する給電素子と、
前記給電素子の指向性を自身と反対側に強くする反射素子又は前記給電素子の指向性を自身側に導く導波素子としての機能を有する無給電素子と、
前記無給電素子の電気的な長さを変化させる切替装置と、を備えた受信装置。
【請求項9】
請求項1に記載の受信装置において、
前記アンテナ装置は、位置的に離間した複数のアンテナを備えるとともに前記各アンテナの何れかの一が選択的に受信可能状態に切り替え可能に構成される受信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の受信装置において、
前記複数のアンテナは一対のアンテナにて構成されるとともに、
前記検波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタを備え、
前記一対の前記アンテナのうち何れか一方が受信限界値以上の受信レベルの信号を受信し、他方が前記受信限界値未満の受信レベルの信号を受信したとき、前記ローパスフィルタは前記検波信号における前記他方のアンテナが受信した信号が検波された受信限界未満の受信レベルの領域である前記不定値の領域の高周波成分を除去する受信装置。
【請求項11】
請求項9に記載の受信装置において、
受信可能状態とされる前記アンテナが単位ビットを受信するのに要する時間より高速に切り替えられる毎に前記検波信号の信号レベルを測定し、
前記アンテナ毎に測定された前記検波信号の信号レベルが一定である旨判断された場合、そのアンテナにて受信される前記検波信号を採用し、一定でない旨判断される場合、そのアンテナにて受信される検波信号を無効とすることで、前記不定値の領域を除去する受信装置。
【請求項12】
請求項11に記載の受信装置において、
前記アンテナ毎に測定された前記検波信号の前記信号レベルが一定でない旨判断された場合、そのアンテナにおける信号レベルの測定を終了する受信装置。
【請求項13】
請求項3又は10に記載の受信装置において、
前記ローパスフィルタは、前記アンテナ装置を介して受信した前記送信信号を検波して検波信号を生成し、その生成した信号を同ローパスフィルタに出力する検波部と、同ローパスフィルタを通過した信号の信号レベルとしきい値との比較を通じて同信号を2値化する比較部との間に設けられる受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−151789(P2011−151789A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272605(P2010−272605)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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