説明

受信音声識別方法

【課題】簡単なシステム構成でありながら、いずれの送信音声入力部からの送信であるかを識別することができる受信音声識別方法を提供する。
【解決手段】第2の無線機2の制御器22側のPTTスイッチ26が押されると、無線機本体20は送信電波にトーンスケルチ信号Aを付加して送信し、トーンスケルチ信号Aを受信した第1の無線機1の無線機本体10により、第1の着信音が制御器12へ伝送されてスピーカ14から出力されると共に、無線機本体20は、第1の着信音をリモコン装置23へ伝送し、第1の着信音がスピーカ28から出力される。オペレータがマイク24から通話すると、第2の無線機2の無線機本体20から第1の無線機1の無線機本体10へ音声信号F1が送信され、受信音声が第1の無線機1の制御器12のスピーカ14から出力されると共に、マイク24からの送信音声は無線機本体20を介してリモコン装置23へ送られ、スピーカ28から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信音声識別方法に係り、特に複数の送信音声入力部を有する無線機との間で行う無線通信における受信音声識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4を参照して従来の無線通信の方法を説明する。図4の上段に第1の無線機1が、下段に第2の無線機2がそれぞれ示されている。第1の無線機1は、無線機本体11と、無線機本体11に近接して配置された制御器12とを備え、制御器12に、送信音声を入力するためのマイク13と、受信音声を出力するためのスピーカ14と、送信を起動するためのPTTスイッチ15が具備されている。
【0003】
また、第2の無線機2は、無線機本体21と、それぞれ無線機本体21に近接して配置された制御器22とリモコン装置23とを備えている。無線機本体21は、第1の音声出力と第2の音声出力を有し、第1の音声出力に制御器22が、第2の音声出力にリモコン装置23がそれぞれ接続されている。第1の無線機1の制御器12と同様に、制御器22には、マイク24とスピーカ25とPTTスイッチ26が具備されており、リモコン装置23にも、マイク27とスピーカ28とPTTスイッチ29が具備されている。
すなわち、第2の無線機2は、制御器22のマイク24とリモコン装置23のマイク27からなる二つの送信音声入力部を有している。
【0004】
図4は、第1の無線機1から送信する音声を、第2の無線機2で受信する動作を示している。第1の無線機1のオペレータが制御器12のPTTスイッチ15を押して送信を起動し、マイク13から通話することにより、第1の無線機1の無線機本体11から第2の無線機2の無線機本体21へ音声信号F1が送信され、受信音声が第1の音声出力として制御器22のスピーカ25から出力されると共に、第2の音声出力としてリモコン装置23のスピーカ28から出力される。
【0005】
図5は、第2の無線機2の制御器22側からの送信音声を第1の無線機1で受信する動作を示している。第2の無線機2の制御器22側のオペレータがPTTスイッチ26を押して送信を起動し、マイク24から通話することにより、第2の無線機2の無線機本体21から第1の無線機1の無線機本体11へ音声信号F1が送信され、受信音声が第1の無線機1の制御器12のスピーカ14から出力される。このとき、同時に、マイク24からの送信音声は無線機本体21を介してリモコン装置23へ送られ、リモコン装置23のスピーカ28から出力される。
【0006】
図6は、第2の無線機2のリモコン装置23側からの送信音声を第1の無線機1で受信する動作を示している。第2の無線機2のリモコン装置23側のオペレータがPTTスイッチ29を押して送信を起動し、マイク27から通話することにより、第2の無線機2の無線機本体21から第1の無線機1の無線機本体11へ音声信号F1が送信され、受信音声が第1の無線機1の制御器12のスピーカ14から出力される。このとき、同時に、マイク27からの送信音声は無線機本体21を介して制御器22へ送られ、制御器22のスピーカ25から出力される。
【0007】
このようにして第1の無線機1と第2の無線機2との間で音声の送受信が行われるが、第1の無線機1で音声を受信する場合に、受信音声が第2の無線機2の制御器22側のオペレータからのものであるか、リモコン装置23側のオペレータからのものであるのかを判別することができない。
同様に、第2の無線機2のリモコン装置23側で音声を受信する場合に、受信音声が第1の無線機1からのものであるか、制御器22側のオペレータからのものであるのかを判別することができない。
さらに、第2の無線機2の制御器22側で音声を受信する場合に、受信音声が第1の無線機1からのものであるか、リモコン装置23側のオペレータからのものであるのかを判別することができない。
【0008】
そこで、例えば、特許文献1に示す無線通信システムにおいては、発信端末毎に異なるトーンスケルチ信号を付加して信号の送信を行い、受信側でトーンスケルチ信号を検出してどの端末からの発信かを識別し表示している。
【0009】
【特許文献1】特開平4−7926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、通話状態を監視する装置を前提としており、識別して表示された発信端末をスイッチで選択することによって初めてモニタすることが可能となる。このため、発信端末を識別することはできるものの、システムの構成が複雑になるという問題点があった。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、簡単なシステム構成でありながら、いずれの送信音声入力部からの送信であるかを識別することができる受信音声識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る受信音声識別方法は、複数の送信音声入力部を有する無線機との間で行う無線通信における受信音声識別方法であって、無線機からの送信時に複数の送信音声入力部毎に異なるトーンスケルチ信号を付加して送信し、受信側無線機では、受信したトーンスケルチ信号毎に異なる着信音を出力または異なる着信表示を行う方法である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、送信時に複数の送信音声入力部毎に異なるトーンスケルチ信号を付加して送信し、受信側無線機では、受信したトーンスケルチ信号毎に異なる着信音を出力または異なる着信表示を行うので、簡単なシステム構成でありながら、いずれの送信音声入力部からの送信であるかを容易に識別することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に実施の形態に係る受信音声識別方法を実施するための無線通信システムの構成を示す。この無線通信システムは、図4に示した従来の無線通信システムにおいて、無線機本体11及び21の代わりに無線機本体10及び20を備えたものである。
図1の上段に第1の無線機1が、下段に第2の無線機2がそれぞれ示されている。第1の無線機1は、無線機本体10と、無線機本体10に近接して配置された制御器12とを備え、制御器12に、送信音声を入力するためのマイク13と、受信音声を出力するためのスピーカ14と、送信を起動するためのPTTスイッチ15が具備されている。
【0014】
また、第2の無線機2は、無線機本体20と、それぞれ無線機本体20に近接して配置された制御器22とリモコン装置23とを備えている。無線機本体20は、第1の音声出力と第2の音声出力を有し、第1の音声出力に制御器22が、第2の音声出力にリモコン装置23がそれぞれ接続されている。第1の無線機1の制御器12と同様に、制御器22には、マイク24とスピーカ25とPTTスイッチ26が具備されており、リモコン装置23にも、マイク27とスピーカ28とPTTスイッチ29が具備されている。
すなわち、第2の無線機2は、制御器22のマイク24とリモコン装置23のマイク27からなる二つの送信音声入力部を有している。
【0015】
無線機本体10及び20は、それぞれ図4に示した従来の無線機本体11及び21に対して、トーンスケルチ信号の検出機能と、受信時に複数の音色の着信音を出力する機能を追加したものである。その他の構成は、図4に示した従来の無線通信システムと同様である。
【0016】
図1は、第1の無線機1から送信する音声を、第2の無線機2で受信する動作を示している。第1の無線機1のオペレータが制御器12のPTTスイッチ15を押すと、制御器12から無線機本体10へPTT信号が入力されて送信が起動し、マイク13から通話することにより、第1の無線機1の無線機本体10から第2の無線機2の無線機本体20へ音声信号F1が送信され、受信音声が第1の音声出力として制御器22のスピーカ25から出力されると共に、第2の音声出力としてリモコン装置23のスピーカ28から出力される。この場合、着信音は出力されない。
【0017】
図2は、第2の無線機2の制御器22側からの送信音声を第1の無線機1で受信する動作を示している。第2の無線機2の制御器22側のオペレータがPTTスイッチ26を押すと、制御器22から無線機本体20へPTT信号が入力され、無線機本体20は、送信電波にトーンスケルチ信号Aを付加して送信する。トーンスケルチ信号Aを受信した第1の無線機1の無線機本体10により、トーンスケルチ信号Aに対応する第1の着信音(例えば、プププッ)が制御器12へ伝送され、スピーカ14から出力される。
同時に、制御器22からPTT信号を入力した無線機本体20は、第1の着信音をリモコン装置23へ伝送し、第1の着信音がリモコン装置23のスピーカ28から出力される。
【0018】
次に、第2の無線機2の制御器22側のオペレータがマイク24から通話することにより、第2の無線機2の無線機本体20から第1の無線機1の無線機本体10へ音声信号F1が送信され、受信音声が第1の無線機1の制御器12のスピーカ14から出力される。このとき、同時に、マイク24からの送信音声は無線機本体20を介してリモコン装置23へ送られ、リモコン装置23のスピーカ28から出力される。
【0019】
このようにして第1の着信音を発することにより、第1の無線機1で音声を受信する際に、受信音声が第2の無線機2の制御器22側のオペレータからのものであることを識別することができる。
【0020】
図3は、第2の無線機2のリモコン装置23側からの送信音声を第1の無線機1で受信する動作を示している。第2の無線機2のリモコン装置23側のオペレータがPTTスイッチ29を押すと、リモコン装置23から無線機本体20へPTT信号が入力され、無線機本体20は、送信電波にトーンスケルチ信号Bを付加して送信する。トーンスケルチ信号Bを受信した第1の無線機1の無線機本体10により、トーンスケルチ信号Bに対応する第2の着信音(例えば、ピピピッ)が制御器12へ伝送され、スピーカ14から出力される。
同時に、リモコン装置23からPTT信号を入力した無線機本体20は、第2の着信音を制御器22へ伝送し、第2の着信音が制御器22のスピーカ25から出力される。
【0021】
次に、第2の無線機2のリモコン装置23側のオペレータがマイク27から通話することにより、第2の無線機2の無線機本体20から第1の無線機1の無線機本体10へ音声信号F1が送信され、受信音声が第1の無線機1の制御器12のスピーカ14から出力される。このとき、同時に、マイク27からの送信音声は無線機本体20を介して制御器22へ送られ、制御器22のスピーカ25から出力される。
【0022】
このようにして第2の着信音を発することにより、第1の無線機1で音声を受信する際に、受信音声が第2の無線機2のリモコン装置23側のオペレータからのものであることを識別することができる。
【0023】
上述したように、第1の無線機1で音声を受信する際には、受信音声が第2の無線機2の制御器22側からのものである場合には第1の着信音が出力され、リモコン装置23側からのものである場合には第2の着信音が出力されるので、制御器22とリモコン装置23のいずれから送信された音声であるかを判別することができる。
同様に、第2の無線機2のリモコン装置23側で音声を受信する際には、受信音声が第1の無線機1からのものである場合には着信音が出力されず、受信音声が制御器22側のオペレータからのものである場合には第1の着信音が出力されるので、第1の無線機1と制御器22のいずれから送信された音声であるかを判別することができる。
さらに、第2の無線機2の制御器22側で音声を受信する際には、受信音声が第1の無線機1からのものである場合には着信音が出力されず、受信音声がリモコン装置23側のオペレータからのものである場合には第2の着信音が出力されるので、第1の無線機1とリモコン装置23のいずれから送信された音声であるかを判別することができる。
【0024】
上記の実施の形態では、受信音声が第2の無線機2の制御器22側からのものである場合には第1の着信音を出力し、リモコン装置23側からのものである場合には第2の着信音を出力したが、これに限るものではなく、着信音の代わりに互いに異なる着信表示をさせることもできる。すなわち、受信音声が第2の無線機2の制御器22側からのものである場合には第1の着信表示を行い、リモコン装置23側からのものである場合には第1の着信表示とは異なる第2の着信表示を行う。このようにしても、受信音声がどこから送信された音声であるかを識別することが可能となる。
【0025】
また、上記の実施の形態では、第1の無線機1が制御器12のマイク13からなる一つの送信音声入力部を有し、第2の無線機2が制御器22のマイク24とリモコン装置23のマイク27からなる二つの送信音声入力部を有していたが、これに限るものではなく、この発明は、複数の送信音声入力部を有する無線機との間で行う無線通信に広く適用することができる。すなわち、第1の無線機1と第2の無線機2が共に二つの送信音声入力部を有していてもよく、また、少なくとも一方の無線機が三つ以上の送信音声入力部を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態に係る受信音声識別方法を実施するための無線通信システムにおいて第1の無線機から音声を送信する状態を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る受信音声識別方法を実施するための無線通信システムにおいて第2の無線機の制御器側から音声を送信する状態を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る受信音声識別方法を実施するための無線通信システムにおいて第2の無線機のリモコン装置側から音声を送信する状態を示すブロック図である。
【図4】従来の無線通信システムにおいて第1の無線機から音声を送信する状態を示すブロック図である。
【図5】従来の無線通信システムにおいて第2の無線機の制御器側から音声を送信する状態を示すブロック図である。
【図6】従来の無線通信システムにおいて第2の無線機のリモコン装置側から音声を送信する状態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
1 第1の無線機、2 第2の無線機、10,20 無線機本体、12,22 制御器、13,24,27 マイク、14,25,28 スピーカ、15,26,29 PTTスイッチ、23 リモコン装置、F1 音声信号、A,B トーンスケルチ信号。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信音声入力部を有する無線機との間で行う無線通信における受信音声識別方法であって、
前記無線機からの送信時に複数の送信音声入力部毎に異なるトーンスケルチ信号を付加して送信し、受信側無線機では、受信したトーンスケルチ信号毎に異なる着信音を出力または異なる着信表示を行うことを特徴とする受信音声識別方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−68395(P2010−68395A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234612(P2008−234612)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】