説明

受光デバイス

【課題】3次元光学系における入射光に対し、より広い角度範囲で軸ズレ入射光を受光できる受光デバイスを提供すること。
【解決手段】光源1から自由空間2で隔てられた受光素子4と、受光素子4の入力端の近傍に配置し、反射機能を有する側面の対向する間隔が受光素子4の方向に向かうに従って小さくなり、内部に入射側面5から出射側面6に亘る範囲において側面と実質上対面する光軸3を含む反射面7を具備するレンズ集光器10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光空間伝送に使用される受光デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光空間伝送において送信部と受信部の光軸が合っているのが理想的であるが、現実的には、固定送信部と固定受信部のアライメント不良による静的軸ズレや、送信部と受信部の少なくとも一方が移動(可動)体である場合の動的軸ズレが存在する。軸ズレが発生すると受光レベルの低下によりSN劣化、誤り率の増加による伝送レート低下、送信パワーの増加などの問題が生じる。さらに、高速応答する受光素子になるほど受光面積が小さくなるので、軸ズレの影響が顕著となる。なお、上記軸ズレは位置ズレと角度ズレの両者を含んでいる。光空間伝送の場合、自由空間伝搬中にビーム径はある程度広がっているので位置ズレよりも角度ズレが特に問題である。しかし、面積の小さな受光素子に集光するための従来のレンズなどは分散面が固定的な曲面であるために入射角の変動により集光位置が敏感に変化するので利得の劣化をもたらす。
【0003】
角度ズレした入射光を広角度で受光する方法としては、受光素子方向に断面が小さくなる円錐形状のレンズの側面に反射鏡を備えることにより、直接に受光素子に入射しない光も側面での反射を通して受光素子に入射させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献1の円錐形状をラッパ形状のレンズにして許容指向角を広げ、さらに、レンズ内の屈折率を伝搬方向に大きくしてより許容指向角を広げたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、結合素子に、入射側面に対して傾いた面であって、入射方向に対し所定の伝播角度範囲内で入射側面に入射した信号光を入射側面側に反射して、その入射側面と共同して信号光を入射側面との間隔が開いた方向に導く出射側面を備えたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−62039号公報(例えば、第1図)
【特許文献2】特開2005−218102号公報(例えば、第1図)
【特許文献3】特開2000−111754号公報(例えば、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の円錐形状および特許文献2のラッパ形状の一定屈折率の集光器の場合、入射角α(即ち、入射側面での屈折角α1)が小さい光は側面での反射により受光素子に結合できるが、図5に示すように、入射角が大きい光(屈折角がα1>3/2π-2θ1−θ2)は集光器側面での反射により入射側面側に反射され、受光素子に結合できない。尚、図5は、一般的な伝搬方向に接近する2個の反射面の多重反射による入射光の軌跡の説明図である。
【0006】
それを改善するために、特許文献2では伝搬方向に屈折率が大きくなるように屈折率分布をつけて、集光器の側面の反射面への入射角を大きくなる、すなわち、伝搬にしたがって進行方向と光軸のなす角度が小さくなる様にすることで許容受光角を広げている。
【0007】
しかし、集光器内に屈折率分布を形成することは技術的に困難であるだけでなく、コスト的にも非常に不利であるという課題がある。
【0008】
一方、特許文献3の従来の方法は、2次元的な光の伝搬には有効であるが、3次元的に入射する光に対しては効果が無いという問題がある。
【0009】
本発明は、従来の装置のこの様な課題を考慮して、3次元光学系における入射光に対し、より広い角度範囲で軸ズレ入射光を受光できる受光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため本発明は、第1の本発明は、光源からの出射光を集光して出射する集光器と、前記集光器からの出射光を受光する受光素子とを備えた受光デバイスであって、
前記集光器は、両端に入射側面と出射側面とを有し、前記入射側面から入射した光を反射させる反射機能を有する側面の内部が前記入射側面から前記出射側面に向かうに従って実質上せまくなっており、前記集光器の内部には、前記入射側面から前記出射側面に亘る全部又は一部の範囲において前記側面と実質上対面する反射面が設けられている受光デバイスである。
【0011】
又、第2の本発明は、上記反射面が前記集光器の光軸を含む上記第1の本発明の受光デバイスである。
【0012】
又、第3の本発明は、上記反射面が複数であって、前記反射面同士の交線が存在する上記第1の本発明の受光デバイスである。
【0013】
又、第4の本発明は、上記複数の反射面の前記交線が、前記集光器の光軸に平行である上記第3の本発明の受光デバイスである。
【0014】
又、第5の本発明は、上記反射面が複数であって、前記反射面同士の交線が存在しない上記第1の本発明の受光デバイスである。
【0015】
又、第6の本発明は、上記集光器の光軸に対する前記反射面の傾斜の程度が、前記入射側面から前記出射側面に向かうに従って小さくなる上記第5の本発明の受光デバイスである。
【0016】
又、第7の本発明は、上記反射面が金属面で形成されている上記第1の本発明の受光デバイスである。
【0017】
又、第8の本発明は、上記反射面がブラグ反射を起こす周期構造で形成されている上記第1の本発明の受光デバイスである。
【0018】
又、第9の本発明は、上記反射面が、前記集光器と異なる屈折率を有する材料との全反射を起こす界面で形成されている上記第1の本発明の受光デバイスである。
【0019】
又、第10の本発明は、上記集光器の前記入射側面と前記出射側面との少なくとも一方が曲面である上記第1〜9の何れかの本発明の受光デバイスである。
【0020】
又、第11の本発明は、上記集光器の前記入射側面に、又は前記出射側面と前記受光素子との間に、特定の波長のみを透過するフィルターを備えた上記第1〜10の何れかの本発明の受光デバイスである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、従来に比べて受信許容角度の大きな受光デバイスを提供できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明に係る一実施の形態の受光デバイスであって、光軸を含む反射面を介して2個の導光部9が接するレンズ集光器10を具備する受光デバイスの構成概要図である。尚、図1(a)は、受光デバイスの縦方向の断面を模式的に表した図であり、図1(b)は、受光デバイスの光軸に垂直な断面から見た光線軌跡を説明するための模式図である。同図を用いて、本実施の形態の構成について説明する。
【0023】
本願の実施の形態の受光デバイスは、図1(a)、(b)に示すように、光源1から自由空間2で隔てられ、光軸3上の受光素子4と、入射側面5が曲面を有し、出射側面6が受光素子4に接し、側面の反射面8の対面する間隔が受光素子4に向かうに従って小さくなり、入射側面と出射側面を分割し光軸を含む反射面7を内部に具備するレンズ集光器10とで構成されている。
【0024】
ただし、反射面7は平面であっても曲面であっても良い。また、少しの特性劣化が許容できるならば厳密に光軸を含む必要も無い。
【0025】
次に、本実施の形態の光軸を含む反射面7を有するレンズ集光器を使用して、軸ズレ平行入射光が受光面積の小さなPin−PD(Pin Photo Diode)やAPD(Avalanche Photodiode)などの受光素子に集光されるメカニズムを光線軌跡を使用して説明する。
【0026】
まず、図5に示す、対向する反射面での多重反射の従来タイプのレンズ集光器110の2次元モデルを使用して光線の軌跡について説明する。
【0027】
入射角12(α)の軸ズレ平行入射光11は、まずレンズ集光器110の入射側面5上でα1方向に屈折し、第1反射面15上の第1反射点17で反射する。第1反射点での反射角をβ(第1反射角β=π/2 −θ−α)とし、第1反射面15と光軸3とのなす角度をθ1とし、第1反射面15と対向する第2反射面16と光軸3とのなす角度をθ2とすると、第2反射側面16上の第2反射点18での第2反射角β(β=θ+θ−β−π)は、次式で表される。
【0028】
【数1】

【0029】
すなわち、β2=0となるα1(式2)から計算するαが最大受光角となる。
【0030】
【数2】

【0031】
ただし、αは次式のスネルの法則から導かれ、想定する入射角度範囲ではαとαは単調増加関係にあるので、最大受光角を最大屈折角α1maxで代用する。
【0032】
【数3】

【0033】
以上の結果は、光軸対称な3次元光学系についても成立する。
【0034】
次に、図1に示す本願の実施の形態1の場合について光線軌跡を使用して説明する。
【0035】
光軸を含む反射面が存在していない従来例(図5参照)で、許容受光角範囲を超える入射角を有する軸ズレ平行入射光11を考える。最初の反射点が、光軸を含む反射面が存在しない従来のレンズ集光器110の側面の場合は、光軸を含む反射面7が存在する本願の実施の形態1と比較して、第1反射点までの軌跡の相違は無い。
【0036】
しかし、次式2’を満たす屈折角αの光線の第1反射点での反射後の軌跡は、従来例の場合は、レンズ集光器110の第1反射点を含む側面に対向する側面上の第2反射点まで進み、その後レンズ集光器の入射側面から外へ反射される。
すなわち上記の屈折角αは、式2から導かれる式2’の関係を満たしている。
【0037】
【数4】

【0038】
ここで、α1max’は、従来のレンズ集光器110における最大屈折角を示す。
【0039】
一方、本願の実施の形態1の第1反射点での反射後の軌跡は、光軸を含む反射面上に第2反射点を有するので、第2反射点での反射後、第1反射点を有するレンズ集光器の側面上の第3反射点に向かって進み、最終的に受光素子に結合される。すなわち、本願の実施の形態1の場合は、式2においてθ=0となるので式4が成り立つ。
【0040】
【数5】

【0041】
この式4から、本願の実施の形態1のレンズ集光器10の最大屈折角α1maxの方が、従来の最大屈折角α1max’よりも大きいことが分かり、本実施の形態の方が、従来より広い受光角を有すると言える。
【0042】
光軸を含む反射面が存在しない従来のレンズ集光器110の場合、反射点は全てレンズ集光器の側面上となるので上記の場合だけを検討すれば十分であるが、本実施の形態の場合は、最初の反射点が光軸を含む反射面7上の場合がある。
【0043】
そこで、次にその場合の光線軌跡について説明する。即ち、その場合の光線軌跡は、最初の光軸を含む反射面7上の第1反射点での反射の後、レンズ集光器の側面上の第2反射点で反射し、光軸を含む反射面と第2の反射点を含むレンズ集光器の側面間で多重反射することで、最終的に受光素子に結合される。この場合は、式2においてθ=0となるので、次式4’の関係が成り立つ。
【0044】
【数6】

【0045】
よって式4’から、最初の反射点が光軸を含む反射面7上の場合であっても、光軸を含む反射面が無い従来の場合に比べて許容受光範囲広いことが分かる。
【0046】
尚、図1(a)、図1(b)には、軸ズレ平行入射光11の光線軌跡が反射面7で反射して出射側面6側に進む場合とともに、比較のために、入射側面5側から出ていく従来の光線軌跡14も同時に表されている。
【0047】
次に、本願の実施の形態1のレンズ集光器10の作製方法について説明する。
即ち、従来のレンズ集光器110を、光軸3を含む面に沿って2分割した形状と同形状のものを用意し、反射面8を挟んだ状態で、接着しても良いし、固定冶具で保持しても良い。また、反射面8は、金属面や、ブラグ反射を利用した屈折率の周期構造や、レンズ集光器10の導光部9の屈折率と異なる屈折率材料と導光部9の境界面での全反射構造などが挙げられる。
【0048】
なお、レンズ集光器の出力面が受光素子のセンシング部分、例えば、半導体の活性層まで達していると高効率化が図れる。
【0049】
また、レンズ集光器の入射側面に接して、あるいは、出射側面と受光素子間に特定の波長のみを透過するフィルターを具備していても良い。
【0050】
このように、受光素子方向に断面が小さくなるレンズ集光器の側面だけでなく、光軸を含む面上にも反射面7を形成することで、レンズ集光器の側面の反射面への入射角をより大きくできるので、より広角での受光が可能となる。
(実施の形態2)
図2は、本発明に係る別の実施の形態の受光デバイスであって、光軸を含む2個の反射面を介して4個の導光部59が接するレンズ集光器50を具備する受光デバイスの構成を示す概要図である。尚、図2(a)は、受光デバイスの縦方向の断面を模式的に表した図であり、図2(b)は、受光デバイスの光軸に垂直な断面から見た光線軌跡を説明するための模式図である。同図を用いて、本実施の形態の構成について上記実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0051】
本願の実施の形態の受光デバイスは、図2(b)に示すように、本願の実施の形態1の反射面7と、その反射面7との交線が光軸3と一致する第2の反射面19を具備し、4個の導光部59で構成されるレンズ集光器50を備えた点において図1の構成と異なる。
【0052】
上記実施の形態1において、入射側面における入射光と透過光を含む面(本明細書では、この面を入射面と定義し、以下、入射面と呼ぶ。)が、光軸3から遠くない入射光は第1反射点と第2反射点のいずれかが必ず光軸を含む反射面7,19上にあるので、光軸を含む反射面7が1個(図1(b)参照)でも従来よりも受光角が広がるといえる。
【0053】
しかし、図1の構成では、入射側面における入射面が光軸3から遠い入射光は、レンズ集光器10から入射側面側に出ていってしまう場合がある。そのことを、図2(b)を代用して説明する。
【0054】
即ち、図1のレンズ集光器10の構成は、例えば図2(b)の構成で第2反射面19が存在しないとした場合と等価であるから、光軸を含む第2反射面19が無い場合の光線軌跡20を図2(b)に示すとすれば、レンズ集光器50の側面上の第1反射点30で反射した光線は破線で示すように、同じ導光部59のレンズ集光器50の側面上に第2反射点31を有することになる。そしてこの光線は、第2反射点31から入射側面5側へ戻ってしまう。従ってこの場合、許容受光角度は従来のレンズ集光器110と同じとなる。
【0055】
そこで、入射側面における入射面が光軸から遠い入射光でも、第2反射点が、第1反射点と同じ導光部のレンズ集光器の側面上に来ないように、光軸を含む反射面7,19を複数個設けたのが実施の形態2である。
【0056】
光軸を含む反射面の数は多いほど良いが、図2のように2個にしてレンズ集光器50の導光部59を4個にすれば、光軸を含む反射面が1個の構成では受光できない入射光でも、図2(b)に示すように第2反射点32が光軸を含む反射面19上になるので、受光素子4に結合できる。なお、光軸を含む反射面7,19の配置は光軸3に対して対称であることが望ましい。
【0057】
このように、光軸を含む反射面を複数個にすることで入射側面における入射面が光軸から遠い入射光に対しても、上記実施の形態1の構成より広角での受光が可能となる。
【0058】
尚、本実施の形態のレンズ集光器50の作製方法は、従来のレンズ集光器110を光軸3を含む面に沿って4分割した形状と同形状のものを用意しさえすれば、その後の工程は、上記実施の形態1で説明した場合と基本的には同じである。
(実施の形態3)
図3は、本発明に係る別の実施の形態の受光デバイスであって、光軸を中心に対向する平行な反射面で構成される有限反射面21を介して4個の導光部69が接するレンズ集光器60を具備する受光デバイスの構成概要図である。尚、図3(a)は、受光デバイスの光軸3を含むA−A’断面(図3(b)参照)を模式的に表した図であり、図3(b)は、受光デバイスの光軸に垂直な断面において光線軌跡を模式的に示した図である。同図を用いて、本実施の形態の構成について上記実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0059】
本願の実施の形態の受光デバイスは、図3に示すように、上記実施の形態2で説明した反射面7,19の内部に導波路構造の導光部分を有する構成と等価であり、上記の反射面7,19を、対向する反射面で構成された有限反射面21と有限反射面内の導光部分22とに置き換えた構成である。
【0060】
本実施の形態のレンズ集光器60の作製方法は、有限反射面内の導光部分22の部分を除き上述した実施の形態2の場合と基本的には同じである。
【0061】
有限反射面内の導光部分22は、上述した作製方法で用いた接着層の厚みを厚めに制御して作製してもよいし、ガラス材料又は樹脂材料等を用いて金型で成形したものを4分割されたレンズ集光器の間に挟み込む様にして作製しても良い。成形材料は、導光部69と同一でも良いし異なっていても良い。あるいは、単に空気層を設けるだけでも良い。
【0062】
このように、上記実施の形態と同じ許容受光角を有するレンズ集光器60の導光部69の他に、式2においてθ=θ=0を代入した場合と等価な関係となる、光軸を含む有限反射面内の導光部分22が構成されている。この導光部分22は、上記実施の形態の構成には存在しないため、光軸近傍の有限反射面内の導光部分22に入射する光は、上記実施の形態よりもより広い受光角を有することになる。
【0063】
この有限反射面内の導光部分22の断面が大きくなるほど、上記実施の形態の許容受光角よりも受光角の大きな部分の割合が増えるので、レンズ集光器60全体の許容受光角が大きくなる。尚、図3(b)に光線軌跡を示す。ここで、図3(b)の破線部分は、光線が反射を繰り返すことを表現したものであり、反射を繰り返して最終的には受光素子4に到達する。
(実施の形態4)
図4は、本発明に係る別の実施の形態の受光デバイスであって、光軸を中心に対向する湾曲した反射面で構成される有限反射面121を介して4個の導光部79が接するレンズ集光器70を具備する受光デバイスの構成概要図である。同図を用いて、本実施の形態の構成について上記実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0064】
本願の実施の形態4は、上記実施の形態3の有限反射面内の導光部分22の光軸3に垂直な断面の面積を受光素子4に向かうに従って小さくした例である(図4(b)、(c)参照)。
【0065】
ここで、図4(a)は、受光デバイスの光軸3を含むA−A’断面(図3(b)参照)を模式的に表した図であり、図4(b)は、受光デバイスの光軸に垂直な断面において光線軌跡を模式的に示した図である。図4(c)は、有限反射面内の導光部分122の断面の変化を説明するために、図4(b)によりも受光素子4に近い位置における光軸3に垂直な断面を示した模式図である。
【0066】
本実施の形態の場合、有限反射面内の導光部分122の許容受光角は実施の形態3に比べて小さくなるが、レンズ集光器70を構成する導光部79は式2において、第2傾斜角θが負の値となるので、第2傾斜角θ=0となる実施の形態1〜実施の形態3よりも許容受光角が大きい。その理由を以下に説明する。
【0067】
ここで、図4において導光部79ではθ>0、θ<0となるが、有限反射面内の導光部分122は対向する面の曲率が異符号となるためθ>0、θ>0となる。なぜなら、図5でラッパ状に広がっている場合をθ>0、θ>0で同符号と定義しているからである。
【0068】
即ち、実施の形態4の有限反射面の導光部分122の場合は、θ>0、θ>0となるので、図3で述べた導光部分22の最大屈折角、図4で述べた導光部分122の最大屈折角をそれぞれα1max(22)、α1max(122)と表すとすると、式2より、次の式が導ける。
【0069】
【数7】

【0070】
よって、式5からα1max(122)<α1max(22)の関係が成り立つので、本実施の形態の導光部分122の許容受光角の方が、実施の形態3の導光部分22の許容受光角に比べて小さくなることが分かる。
【0071】
したがって、本実施の形態の有限反射面内の導光部分122の断面形状が小さい場合には導光部分122の影響は小さくなり、導光部79の全体に占める割合が、実施の形態3の場合より大きくなり得るため、実施の形態3よりも効果的に許容受光角を広げることができる。
【0072】
このように、受光素子方向に断面が小さくなるレンズ集光器の側面だけでなく、光軸を含む面上にも反射面を形成することで、レンズ集光器の側面の反射面への入射角をより大きくできるので、より広角での受光が可能となる。
【0073】
以上説明した様に本発明は、例えば、光源から自由空間で隔てられた受光素子と、受光素子の入力端の近傍に配置し、反射機能を有する側面の対向する間隔が受光素子方向に向かって小さくなり、内部に入射側面と出射側面を分割する少なくとも一つの反射面を具備するレンズ集光器で構成される。
【0074】
このように、レンズ集光器の側面だけでなく、レンズ集光器の内部にも入射側面と出射側面を分割する反射面を形成することにより、レンズ集光器への入射角をより大きくできるので、より広角での受光が可能となり、より広い受光角範囲で高速光空間伝送を可能とする光学系を提供できるという効果を有する。
【0075】
尚、上記実施の形態では、レンズ集光器の内部に、入射側面から出射側面に亘る全範囲において側面の反射面と実質上対面する反射面(例えば、図1の光軸を含む反射面7)が設けられている場合について説明したが、これに限らず例えば、入射側面の近傍及び/又は出射側面の近傍を除く範囲において本発明の反射面が設けられていてもかまわない。要するに、レンズ集光器への入射角をより大きくできる構成であれば、集光器の内部に、入射側面から出射側面に亘る一部の範囲において反射機能を有する側面と実質上対面する反射面が設けられている構成であってもよい。
【0076】
又、上記実施の形態では、出射側面と受光素子とが接触している場合について説明したが、これに限らず例えば、双方の間に空間が存在しても良い。
【0077】
又、上記実施の形態では、レンズ集光器の入射側面が曲面であって出射側面が平面である場合について説明したが、これに限らず例えば、出射側面が曲面であってもよい。
【0078】
又、上記実施の形態では、導光部あるいは有限反射面内の導光部分の材料としてガラスや樹脂などを用いる場合を中心に説明したが、これに限らず例えば、前記集光器内に、光ファイバーアンプ(増幅器)のようにエリビュウム(Er)やYb(イットリビウム)などを添加したり、ラマン増幅効果を利用して外部から励起光に伴う誘導放出を起こすことで受光素子への入射光を増幅してもよい。
【0079】
又、レンズ集光器の内部に、入射側面から出射側面に亘る全部又は一部の範囲において側面の反射面と実質上対面する反射面が設けられている構成例について、上記実施の形態で述べた例(例えば、図1の光軸を含む反射面7)の他に、例えば、断面がリング形状で対面するレンズ集光器の側面との間隔が、受光素子に向かって小さくなる構成も考えられる。即ち、具体的には、レンズ集光器の側面と同心円状の反射面(図示せず)等が挙げられるが、入射側面における入射光と、レンズ集光器内に入った透過光を含む面が光軸から離れている入射光は、第1反射点と第2反射点の両方がレンズ集光器の側面上となる割合が上記実施の形態のように断面がリング形状とならない場合よりも大きいので、受光角の拡大の効果はあまり大きくない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の受光デバイスは、より広い角度範囲で軸ズレ入射光を受光できるという効果を有し、光空間伝送等に使用される受光デバイス等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】(a)実施の形態1の受光デバイスの縦方向の断面を模式的に表した図,(b)同実施の形態の受光デバイスの光軸に垂直な断面から見た光線軌跡を説明するための模式図
【図2】(a)実施の形態2の受光デバイスの縦方向の断面を模式的に表した図,(b)同実施の形態の受光デバイスの光軸に垂直な断面から見た光線軌跡を説明するための模式図
【図3】(a)実施の形態3の受光デバイスの光軸を含むA−A’断面を模式的に表した図,(b)同実施の形態の受光デバイスの光軸に垂直な断面において光線軌跡を模式的に示した図
【図4】(a)実施の形態4の受光デバイスの光軸を含むA−A’断面を模式的に表した図,(b)同実施の形態の受光デバイスの光軸に垂直な断面において光線軌跡を模式的に示した図,(c)同実施の形態の有限反射面内の導光部分の断面の変化を説明するための図
【図5】従来の受光デバイスでの対向する反射面での多重反射による光線軌跡の説明図
【符号の説明】
【0082】
1 光源
2 自由空間
3 光軸
4 受光素子
5 入射側面
6 出射側面
7 光軸を含む反射面
8 側面の反射面
9、59,69,79 導光部
10 レンズ集光器
11 軸ズレ(平行)入射光
12 入射角
13 光線軌跡
14 従来の光線軌跡
15 第1反射面
16 第2反射面
17 第1反射点
18 第2反射点
19 光軸を含む第2反射面
20 光軸を含む第2反射面が無い場合の光線軌跡
21、121 有限反射面
22、122 有限反射面内の導光部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの出射光を集光して出射する集光器と、前記集光器からの出射光を受光する受光素子とを備えた受光デバイスであって、
前記集光器は、両端に入射側面と出射側面とを有し、前記入射側面から入射した光を反射させる反射機能を有する側面の内部が前記入射側面から前記出射側面に向かうに従って実質上せまくなっており、前記集光器の内部には、前記入射側面から前記出射側面に亘る全部又は一部の範囲において前記側面と実質上対面する反射面が設けられている受光デバイス。
【請求項2】
前記反射面が前記集光器の光軸を含む請求項1に記載の受光デバイス。
【請求項3】
前記反射面が複数であって、前記反射面同士の交線が存在する請求項1に記載の受光デバイス。
【請求項4】
前記複数の反射面の前記交線が、前記集光器の光軸に平行である請求項3に記載の受光デバイス。
【請求項5】
前記反射面が複数であって、前記反射面同士の交線が存在しない請求項1に記載の受光デバイス。
【請求項6】
前記集光器の光軸に対する前記反射面の傾斜の程度が、前記入射側面から前記出射側面に向かうに従って小さくなる請求項5に記載の受光デバイス。
【請求項7】
前記反射面が金属面で形成されている請求項1に記載の受光デバイス。
【請求項8】
前記反射面がブラグ反射を起こす周期構造で形成されている請求項1に記載の受光デバイス。
【請求項9】
前記反射面が、前記集光器と異なる屈折率を有する材料との全反射を起こす界面で形成
されている請求項1に記載の受光デバイス。
【請求項10】
前記集光器の前記入射側面と前記出射側面との少なくとも一方が曲面である請求項1〜9の何れかに記載の受光デバイス。
【請求項11】
前記集光器の前記入射側面に、又は前記出射側面と前記受光素子との間に、特定の波長のみを透過するフィルターを備えた請求項1〜10の何れかに記載の受光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−150902(P2007−150902A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344569(P2005−344569)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】