説明

受光素子

【課題】本発明は、2波長の光に対し同等の感度を有し、かつ2波長の光の両方に対し高感度となる受光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明に係る受光素子は、第1波長の光と第2波長の光を受光する受光素子であって、第1主面、該第1主面に対向する第2主面、及び貫通孔を有する基板と、該第2主面の上に該貫通孔の直上部分を有するように形成された、該第1波長の光と該第2波長の光を同等の反射率で反射する多重反射層と、該多重反射層の上に形成された、該第1波長の光と該第2波長の光を吸収しキャリアを生成する吸収層と、該第1波長と該第2波長の中間の波長の光に対し最も反射率が低くなるように該吸収層の上に形成された無反射層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデータ通信システムなどに用いられる受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光信号を電気信号に変換する受光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−124145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、データ通信システムなどにおいては、2波長の光に対し同等の感度を有し、かつ2波長の光の両方に対し高感度となる受光素子が要求されることがある。ところが、特許文献1に開示の受光素子は2波長の光のうち一方の光に対してのみ高感度となっており、この要求を満たせなかった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、2波長の光に対し同等の感度を有し、かつ2波長の光の両方に対し高感度となる受光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る受光素子は、第1波長の光と第2波長の光を受光する受光素子であって、第1主面、該第1主面に対向する第2主面、及び貫通孔を有する基板と、該第1主面に形成された第1電極と、該第2主面の上に該貫通孔の直上部分を有するように形成された、該第1波長の光と該第2波長の光を同等の反射率で反射する多重反射層と、該貫通孔に面した該直上部分に形成されたメタル反射層と、該多重反射層の上に形成された、キャリアをアバランシェ増倍させる増倍層と、該増倍層の上に形成された、該第1波長の光と該第2波長の光を吸収しキャリアを生成する吸収層と、該吸収層の上に形成された拡散領域と、該第1波長と該第2波長の中間の波長の光に対し最も反射率が低くなるように該拡散領域の上に形成された無反射層と、該無反射層を避けて該拡散領域の上に形成された、該拡散領域に給電する第2電極と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2波長の光に対し同等の感度を有し、かつ2波長の光の両方に対し高感度な受光素子を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る受光素子の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る無反射層の反射率の波長依存性を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態1に係る多層反射層の反射率の波長依存性を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態2に係る受光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る受光素子の断面図である。受光素子10は、1.3μmの波長を有する光(第1波長の光という)と1.5μmの波長を有する光(第2波長の光という)を受光するものである。受光素子10は、基板12を備えている。基板12はn型InPで形成されている。基板12は、第1主面12a、及び第1主面12aに対向する第2主面12bを有している。また、基板12には貫通孔16が形成されている。第1主面12aには第1電極14が形成されている。第1電極14は受光素子10のn型電極として機能する。
【0010】
第2主面12bの上にはInP層とInGaAs層のペアが例えば10ペア形成された多重反射層18が形成されている。多重反射層18は第1波長(1.3μm)と第2波長(1.5μm)の中間の波長(1.4μm)の光に対し最も反射率が高くなるように形成されている。この多重反射層18は、貫通孔16の直上に位置する直上部分18aを有している。つまり、貫通孔16の直上には多重反射層18の直上部分18aが形成されている。
【0011】
貫通孔16に面した直上部分18aにはメタル反射層20が形成されている。メタル反射層20は、SiN/Auで形成されている。メタル反射層20は、第1波長の光も第2波長の光も100%反射するものである。多重反射層18の上には、InPで形成された障壁層22を介して、キャリアをアバランシェ増倍させる増倍層24が形成されている。増倍層24はAlInAsで形成されている。
【0012】
増倍層24の上には、p型InPで形成された電界緩和層26を介して、吸収層28が形成されている。吸収層28は、第1波長の光と第2波長の光を吸収しキャリアを生成する層である。吸収層28は、InGaAsで形成されている。吸収層28の上には、InGaAsPで形成されたグレーディッド層30を介して拡散領域32が形成されている。拡散領域32は導電型がp型となるように形成されている。また、グレーディッド層30の上には拡散領域32と並んで窓層34が形成されている。窓層34はInPで形成されている。ところで、前述したメタル反射層20の面積は拡散領域32の面積より大きい。また、拡散領域32は、メタル反射層20の直上に位置している。
【0013】
拡散領域32の上にはSiNで無反射層36が形成されている。無反射層36は、所定波長以外の波長の光を反射して受光素子10の中に入れないように作用する。無反射層36は、第1波長(1.3μm)と第2波長(1.5μm)の中間の波長(1.4μm)の光に対し最も反射率が低くなるように、約180nmの層厚で形成されている。拡散領域32の上には、無反射層36を避けて第2電極38が形成されている。第2電極38は、拡散領域32に給電することにより受光素子10のp型電極として機能するものである。図1に示されるように、受光素子10の表面には溝が形成され、この溝の内壁も含めて受光素子10の表面は殆ど無反射層36で覆われている。
【0014】
本発明の実施の形態1に係る受光素子10の動作について説明する。まず受光素子10の上方向から無反射層36に光が入射する。入射した光は、窓層34を透過し吸収層28に達する。吸収層28で光が吸収されて、正孔と電子が生じる。ここで、受光素子10には25V〜50V程度の逆バイアスを印加して、吸収層28、電界緩和層26、及び増倍層24を空乏化している。そのため、吸収層28で発生した電子は空乏層の中を基板12に向かって流れる。この電子は、高電界がかかる増倍層24でアバランシェ増倍を起こし、増倍された電流信号を発生させる。
【0015】
キャリアの走行時間を短くして受光素子10の応答速度を上げるために、吸収層28は薄く形成されている。そのため、一部の光は、吸収層28を透過し、多重反射層18に達する。多重反射層18で反射された光は再び吸収層28に達し、吸収層28に吸収される。多重反射層18を透過した光は、100%の反射率を有するメタル反射層20により反射される。
【0016】
ところで、例えば、無反射層が第1波長の光は反射しないが第2波長の光は反射する場合、これらの2波長の光に対する受光素子の感度に差がつくことになる。この場合、第1波長から離れた波長を有する光ほど、高い反射率で反射される。ところが、本発明の実施の形態1に係る受光素子10によれば、第1波長と第2波長の光に対して同等の反射率を有する無反射層36を提供できる。図2は、本発明の実施の形態1に係る無反射層の反射率の波長依存性を示すグラフである。無反射層36は、第1波長(1.3μm)と第2波長(1.5μm)の中間の波長(1.4μm)の光に対し最も反射率が低くなるように形成されている。第1波長と第2波長は1.4μmから1μmずつ離れているので、第1波長と第2波長の光に対する反射率を同等とすることができる。
【0017】
多重反射層18は特定の波長の光に対して高い反射率を有し、これを反射するものである。例えば第1波長の光は反射するが第2波長の光は反射しない場合、これらの2波長の光に対する受光素子の感度に差がつくことになる。この場合、第1波長から離れた波長を有する光ほど反射されづらくなる。ところが、本発明の実施の形態1に係る受光素子10によれば、第1波長と第2波長の光に対して同等の反射率を有する多層反射層18を提供できる。図3は、本発明の実施の形態1に係る多層反射層の反射率の波長依存性を示すグラフである。多重反射層18は第1波長(1.3μm)と第2波長(1.5μm)の中間の波長(1.4μm)の光に対し最も反射率が高くなるように形成されている。第1波長と第2波長は1.4μmから1μmずつ離れているので、第1波長と第2波長の光に対する反射率を同等とすることができる。
【0018】
多層反射層18は第1波長の光と第2波長の光に対して100%未満の反射率となるので、多層反射層18を透過する光がある。しかしながら、この光は、Auを含むメタル反射層20によって上方に反射される。そのため、吸収層28を透過して多層反射層18に入射した光は100%反射される。よって、受光素子10の感度を高めることができる。
【0019】
このように、本発明の実施の形態1に係る受光素子10によれば、第1波長の光と第2波長の光は、無反射層36と多重反射層18において同等の反射率で反射されるので、2波長に対する受光素子10の感度を同等とすることができる。また、無反射層36と多重反射層18は、第1波長と第2波長の「中間の波長」の光に対し最適化したので、2波長のどちらの光に対しても当該中間の波長の光とほぼ同等の反射率となる。よって、2波長の光の両方に対し高感度とすることができる。さらに、多重反射層18を透過した光をメタル反射層20で反射することも、感度を高めることに寄与する。
【0020】
ところで、メタル反射層と多重反射層の間に基板などがあると、多重反射層で反射した光とメタル反射層で反射した光が干渉し、感度特性にリップルが生じる。本発明の実施の形態1に係る受光素子10では、基板12に貫通孔16を設け、貫通孔16により露出した直上部分18aにメタル反射層20を形成する。よって、メタル反射層20を多重反射層18に接して形成できるので、感度特性にリップルが生じることを防止できる。
【0021】
なお、基板12をn型InPで形成し多重反射層18をInPとInGaAsの複数ペアで形成したことにより、塩酸による選択エッチングで多重反射層18にダメージなく貫通孔16を形成できる。
【0022】
メタル反射層20の面積は拡散領域32の面積より大きいので、発光素子10に入射し、吸収層28及び多重反射層18を透過した光の殆どをメタル反射層20で反射させることができる。よって受光素子10を高感度にできる。
【0023】
本発明の実施の形態1に係る受光素子10は上述の特徴を失わない範囲で様々な変形が可能である。例えば多重反射層18はInP層とInGaAs層の約10ペアからなるとしたが、本発明はこれに限定されない。ペア数は、ペア数が多いほど反射率は飽和傾向となりながら上がりつつ帯域が狭くなる点を考慮して適宜定めればよい。また、貫通孔16を形成したあとに、第1電極14とメタル反射層20を同時形成してもよい。しかしながら、メタル反射層20の多重反射層18への沈み込みが懸念される場合は、直上部分18aに例えば200nmのSiN層を形成した後に500nmのAu層を形成してもよい。
【0024】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る受光素子は、実施の形態1と共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係る受光素子の断面図である。受光素子50における多重反射層は第1多重反射層52と第2多重反射層54を有している。第1多重反射層52は、第1波長の光に対して最も反射率が高くなるように形成されている。第2多重反射層54は、第2波長の光に対して最も反射率が高くなるように形成されている。第1多重反射層52と第2多重反射層54の間にはInPスペーサ層56が形成されている。
【0025】
本発明の実施の形態2に係る受光素子50によれば、第1波長の光は第1多重反射層52で反射し第2波長の光は第2多重反射層54で反射するため、高い反射率でこれらの光を反射できる。また、InPスペーサ層56により第1多重反射層52と第2多重反射層54が干渉して1つの多重反射膜となることを防止できる。
【0026】
本発明の実施の形態1と2に係る多重反射層は、第1波長の光と第2波長の光を同等の反射率で反射する限りにおいて上述の構成に限定されない。本発明の実施の形態2に係る受光素子50は本発明の実施の形態1に係る受光素子10と同程度の変形が可能である。また、第1多重反射層52の位置と第2多重反射層54の位置は逆転させてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 受光素子、 12 基板、 12a 第1主面、 12b 第2主面、 14 第1電極、 16 貫通孔、 18 多重反射層、 18a 直上部分、 20 メタル反射層、 22 障壁層、 24 増倍層、 26 電界緩和層、 28 吸収層、 30 グレーディッド層、 32 拡散領域、 34 窓層、 36 無反射層、 38 第2電極、 52 第1多重反射層、 54 第2多重反射層、 56 InPスペーサ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長の光と第2波長の光を受光する受光素子であって、
第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、及び貫通孔を有する基板と、
前記第1主面に形成された第1電極と、
前記第2主面の上に前記貫通孔の直上部分を有するように形成された、前記第1波長の光と前記第2波長の光を同等の反射率で反射する多重反射層と、
前記貫通孔に面した前記直上部分に形成されたメタル反射層と、
前記多重反射層の上に形成された、キャリアをアバランシェ増倍させる増倍層と、
前記増倍層の上に形成された、前記第1波長の光と前記第2波長の光を吸収しキャリアを生成する吸収層と、
前記吸収層の上に形成された拡散領域と、
前記第1波長と前記第2波長の中間の波長の光に対し最も反射率が低くなるように前記拡散領域の上に形成された無反射層と、
前記無反射層を避けて前記拡散領域の上に形成された、前記拡散領域に給電する第2電極と、
を備えたことを特徴とする受光素子。
【請求項2】
前記多重反射層は前記第1波長と前記第2波長の中間の波長の光に対し最も反射率が高くなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の受光素子。
【請求項3】
前記多重反射層は、
前記第1波長の光に対して最も反射率が高くなるように形成された第1多重反射層と、
前記第2波長の光に対して最も反射率が高くなるように形成された第2多重反射層と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の受光素子。
【請求項4】
前記第1多重反射層と前記第2多重反射層の間に形成されたInPスペーサ層を備えたことを特徴とする請求項3に記載の受光素子。
【請求項5】
前記メタル反射層の面積は前記拡散領域の面積より大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の受光素子。
【請求項6】
前記メタル反射層と前記多重反射層の間に形成されたSiN層を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の受光素子。
【請求項7】
前記基板はn型InPで形成され、
前記多重反射層はInP層とInGaAs層のペアが複数積層して形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の受光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−62426(P2013−62426A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200691(P2011−200691)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】