説明

口腔内撮像装置

【課題】撮影中における被験者の負担を低減するとともに、外光による画像データの色彩ばらつきを抑えることが可能な口腔内撮像装置を提供する
【解決手段】口腔内撮像装置1は、口腔内に装着されるマウスピース型のハウジング10と、歯列または歯茎に沿って生体組織をスキャンするラインセンサ20と、口腔内撮像装置1の各部を統括的に制御する制御部30と、ラインセンサ20で得られた画像データを外部に送信する無線通信部40と、口腔内撮像装置1の各部に電力を供給するバッテリ50と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の生体組織(歯列、歯茎、粘膜など)を撮影するための口腔内撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、少なくとも対物レンズおよび撮像素子を有する撮像手段と、前記撮像手段を口腔内に保持するための保持手段とを備え、前記撮像手段は、口腔内に露出した歯列の全部または一部および生体組織の一部を一度に撮像できることを特徴とする口腔内撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−204750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来構成の口腔内撮像装置は、口を少し開いた状態で口腔内の撮影を行い、得られた画像データを有線でモニタに転送する構成とされていたので、撮影中における被験者の負担(顎の疲労など)が大きい上、外光による画像データの色彩ばらつきを生じる、という問題があった。
【0005】
本発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、撮影中における被験者の負担を低減するとともに、外光による画像データの色彩ばらつきを抑えることが可能な口腔内撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る口腔内撮像装置は、口腔内に装着されるマウスピース型のハウジングと、歯列または歯茎に沿って生体組織をスキャンするラインセンサと、装置各部を統括的に制御する制御部と、前記ラインセンサで得られた画像データを外部に送信する無線通信部と、装置各部に電力を供給するバッテリと、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0007】
なお、上記第1の構成から成る口腔内撮像装置において、前記ラインセンサは、発光部と受光部を有する構成(第2の構成)にするとよい。
【0008】
また、上記第2の構成から成る口腔内撮像装置において、前記発光部は、可視光、紫外光、及び、近赤外光の少なくとも一つを出力する構成(第3の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第2または第3の構成から成る口腔内撮像装置において、前記発光部は、前記ラインセンサの走査方向を基準として前記受光部の前後に設けられている構成(第4の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成る口腔内撮像装置において、前記ハウジングは、前記ラインセンサを収納するための凹部を有しており、前記凹部は、透光部材によって封止された防水構造とされている構成(第5の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る口腔内撮像装置において、前記制御部は所定のスタートトリガを検出したときに前記ラインセンサのスキャンを開始する構成(第6の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第6の構成から成る口腔内撮像装置は、咬合圧力を検出する圧力センサを有し、前記制御部は、前記咬合圧力が所定値以上であることを前記スタートトリガとして検出する構成(第7の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第6の構成から成る口腔内撮像装置において、前記制御部は、前記ラインセンサの受光量が所定値以下であることを前記スタートトリガとして検出する構成(第8の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第6の構成から成る口腔内撮像装置において、前記制御部は、前記無線通信部を介して外部から入力されるスキャン開始信号を前記スタートトリガとして検出する構成(第9の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1〜第9いずれかの構成から成る口腔内撮像装置において、前記制御部は所定のストップトリガを検出したときに前記ラインセンサのスキャンを停止する構成(第10の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第10の構成から成る口腔内撮像装置は、咬合圧力を検出する圧力センサを有し、前記制御部は、前記咬合圧力が所定値以下であることを前記ストップトリガとして検出する構成(第11の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第10の構成から成る口腔内撮像装置において、前記制御部は、前記ラインセンサの受光量が所定値以上であることを前記ストップトリガとして検出する構成(第12の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記第10の構成から成る口腔内撮像装置において、前記制御部は、前記無線通信部を介して外部から入力されるスキャン停止信号を前記ストップトリガとして検出する構成(第13の構成)にするとよい。
【0019】
また、上記第1〜第13いずれかの構成から成る口腔内撮像装置において、前記ラインセンサは、前記歯列または歯茎に沿って前記ハウジングに敷設されたレール溝と、前記レール溝内に導通されたワイヤと、前記ワイヤを駆動するモータと、前記ワイヤに接続された可動部材と、前記可動部材に配置されたセンサ部と、を有する構成(第14の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、撮影中における被験者の負担を低減するとともに、外光による画像データの色彩ばらつきを抑えることが可能な口腔内撮像装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る口腔内撮像装置の概略構成を示す上面図
【図2】本発明に係る口腔内撮像装置の第1実施形態を示す縦断面図
【図3】第1実施形態の口腔内撮像装置1が口腔内に装着された様子を示す縦断面図
【図4】ラインセンサ20の一構成例を示す部分上面図
【図5】センサ部22の一構成例を示す模式図
【図6】口腔内撮像動作の一例を示すフローチャート
【図7】本発明に係る口腔内撮像装置の第2実施形態を示す縦断面図
【図8】第2実施形態の口腔内撮像装置1が口腔内に装着された様子を示す縦断面図
【図9】口腔内撮像システムの一構成例を示すツリー図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<口腔内撮像装置>
図1は、本発明に係る口腔内撮像装置の概略構成を示す上面図である。本発明に係る口腔内撮像装置1は、ハウジング10と、ラインセンサ20と、制御部30と、無線通信部40と、バッテリ50と、圧力センサ60と、を有する。
【0023】
ハウジング10は、口腔内への装着に適したマウスピース型とされている。ハウジング10は、上下歯列で噛み挟むタイプであってもよいし、上歯列または下歯列と填め合わせるタイプであってもよい。ハウジング10の素材としては、ポリカーボネート樹脂などを用いることができる。
【0024】
ラインセンサ20は、ハウジング10の奥側(口腔内側)に設けられており、歯列または歯茎に沿って生体組織(歯列、歯茎、粘膜など)をスキャンする。ラインセンサ20の構造や動作については、後ほど詳細に説明する。
【0025】
制御部30は、ハウジング10内部に設けられており、口腔内撮像装置1の各部を統括的に制御する。具体的に述べると、制御部30は、ラインセンサ20の駆動制御や画像データ処理、無線通信部40による外部との無線通信処理、及び、圧力センサ60の出力監視処理などを行う。制御部30としてはマイコンなどを用いることができる。
【0026】
無線通信部40は、ハウジング10内部に設けられており、ラインセンサ20で得られた画像データを外部のホスト機器(パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)に無線送信する。無線通信部40としては、例えばBluetooth(登録商標)モジュールICを用いることができる。このような無線通信部40を有する構成であれば、外部のホスト機器に画像データを送信する際に有線での接続を必要としないので、口を完全に閉じた状態で口腔内の撮影を行うことが可能となり、延いては、撮影中における被験者の負担を低減するとともに、外光による画像データの色彩ばらつきを抑えることが可能となる。
【0027】
バッテリ50は、ハウジング10内部に設けられており、口腔内撮像装置1の各部に電力を供給する。バッテリ50としては、リチウム一次電池(ボタン型電池)のほか、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどを好適に用いることができる。このように、バッテリ駆動方式の口腔内撮像装置1であれば、口腔内の撮影時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、口を完全に閉じた状態で口腔内の撮影を行うことが可能となり、延いては、撮影中における被験者の負担を低減するとともに、外光による画像データの色彩ばらつきを抑えることが可能となる。
【0028】
なお、バッテリ50として二次電池を用いれば、電池交換作業が不要となるので、口腔内撮像装置1の利便性を高めることができる。ただし、その場合には、外部からの電力供給を受けてバッテリ24の充電制御を行う充電部が必要となる点に留意すべきである。充電部への電力供給方式としては、USB[Universal Serial Bus]ケーブルなどを用いる接触方式であってもよいし、或いは、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触方式であってもよい。なお、口腔内撮像装置1を防水構造とするためには、外部端子を完全に排除するという観点から、充電部への電力供給方式として非接触方式を採用することが望ましい。
【0029】
圧力センサ60は、ハウジング10内部(例えば上下大臼歯によって咬合される位置)に設けられており、咬合圧力の検出結果を制御部30に伝達する。圧力センサ60としては、圧電型、静電容量型、半導体ダイヤフラム型、及び、弾性体ダイヤフラム型などを用いることができる。
【0030】
<第1実施形態(上顎撮影型)>
図2は、本発明に係る口腔内撮像装置1の第1実施形態を示す縦断面図であり、図3は第1実施形態の口腔内撮像装置1が口腔内に装着された様子を示す縦断面図である。
【0031】
第1実施形態の口腔内撮像装置1において、ハウジング10は、上顎に対向して開口する第1凹部11と、ラインセンサ20を収納するための第2凹部12と、を有する。第2凹部12は、上顎に対向する開口部13以外をレール溝支持部14によって被覆されており、さらにその上部には、透明アクリル板などの透光部材70がシリコーン樹脂系の弾性接着剤などによって貼付されている。すなわち、第2凹部12は、透光部材70によって封止された防水構造とされている。なお、開口部13は、ラインセンサ20の撮影窓に相当するため、ハウジング10の手前側(歯列や歯茎に近い側)に設けられている。ハウジング10全体の奥行きは15〜20mm程度であり、第2凹部12の奥行きは7mm程度である。このように、第1実施形態の口腔内撮像装置1は、非常に小型であるため、被験者に与える口腔内の違和感(異物の挿入感)を極力抑えることが可能となる。
【0032】
また、ハウジング10の内部には、先にも述べたように、制御部30や無線通信部40が埋設されている。制御部30には、主電源のオン/オフ制御を行うための電源スイッチ80が接続されている。電源スイッチ80は、ハウジング10の内部に埋設された防水構造とされている。
【0033】
<ラインセンサ>
先出の図1〜図3と共に、図4を参照しながらラインセンサ20の構造及び動作を説明する。図4は、ラインセンサ20の一構成例を示す部分上面図である。
【0034】
ラインセンサ20は、可動部材21と、センサ部22と、ワイヤ接続部23と、レール溝24と、ワイヤ25と、モータ26と、を有する。
【0035】
可動部材21は、ワイヤ接続部23を介してワイヤ25に吊り下げられており、モータ26によるワイヤ25の送り/戻しに伴い、歯列または歯茎に沿って一方の奥歯側から他方の奥歯側まで曲線軌道上を移動する。
【0036】
センサ部22は、可動部材21の上面上に配置されており、開口部13と透光部材70を介して、生体組織(歯列、歯茎、粘膜など)への光照射と反射光の検出を行う。センサ部22の具体的な構成については、後ほど詳細に説明する。
【0037】
ワイヤ接続部23は、可動部材21とワイヤ25を接続するための支軸である。なお、図4では描写されていないが、可動部材21をより安定して吊り下げるために、ワイヤ接続部23を介して可動部材21とワイヤ25を接続するだけでなく、レール溝24に対してワイヤ接続部23をスライド可能に懸架してもよい。
【0038】
レール溝24は、ワイヤ25のガイド部材であり、歯列または歯茎に沿って一方の奥歯側から他方の奥歯側まで曲線軌道を描くように、ハウジング10(レール支持部材14の下面)に敷設されている。なお、レール溝24は、曲線軌道の曲率変化を少なくするために、第2凹部12の奥行き幅の中心点付近を通るように敷設することが望ましい。
【0039】
ワイヤ25は、モータ26とプーリ(不図示)との間を環状に掛け渡されており、レール溝24に刻まれた2本の溝内に導通されている。ワイヤ25の一点には、可動部材21が吊り下げられている。なお、レール溝24の溝幅や第2凹部24の奥行き幅を適宜設計することにより、ワイヤ25が多少蛇行しても可動部材21の曲線軌道上で問題なく移動させることが可能である。
【0040】
モータ26は、曲線軌道の始点または終点(一方の奥歯側)に設けられており、その回転動作によってワイヤ25の送り/戻しを行う。図4の例では、モータ26が時計回りに回転されると、可動部材21がモータ26に近付く方向に移動される。一方、モータ25が反時計回りに回転されると、可動部材21がモータ26から離れる方向に移動される。
【0041】
<センサ部>
図5は、センサ部22の一構成例を示す模式図である。センサ部22は、白色光発光部Wと、紫外光発光部UVと、近赤外光発光部NIRと、受光部PDと、を有する。
【0042】
白色光発光部Wは、白色光(波長:400〜700nm程度)を出力して生体組織を照明する。白色光発光部Wとしては、例えば、赤色LED[Light Emitting Diode]、緑色LED、及び、青色LEDを組み合わせて白色光を生成するRGB方式の白色LEDを用いることができる。
【0043】
紫外光発光部UVは、紫外光(波長:360〜400nm程度)を出力して生体組織を照明する。
【0044】
近赤外光発光部NIRは、近赤外光(波長:700〜1200nm程度)を出力して生体組織を照明する。
【0045】
受光部PDは、生体組織から戻ってくる反射光を検出し、これを電気信号に変換して出力する。受光部PDの光電変換素子としては、広い波長帯域で高い感度を有するCIGS[Copper Indium Gallium DiSelenide]系半導体を用いることが望ましい。
【0046】
受光部PDは、センサ部22の長手方向に沿って複数縦列に並べられている。白色光発光部W、紫外光発光部UV、及び、近赤外光発光部NIRは、センサ部22の長手方向に沿って巡回的に配置されている。また、白色光発光部W、紫外光発光部UV、及び、近赤外光発光部NIRは、ラインセンサ20の走査方向を基準として、受光部PDの前後に設けられている。このような構成とすることにより、生体組織を広範囲に偏りなく照明し、受光部PD毎の受光ばらつきを低減することが可能となる。
【0047】
<口腔内撮像動作>
図6は、口腔内撮像動作の一例を示すフローチャートであり、その動作主体は基本的に制御部30である。ただし、電源スイッチ80の押下、口腔内撮像装置1の着脱、及び、口の開閉は人間(歯科医や被験者など)によって行われる。
【0048】
ステップS101において、電源スイッチ80の押下が検出されると、ステップS102において、口腔内撮像装置1の初期設定(ラインセンサ20の初期化など)が行われ、その後、ステップS103において、所定のスタートトリガが検出されたか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS104に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS103に戻されてスタートトリガの検出判定が繰り返される。
【0049】
なお、上記のスタートトリガとしては、例えば、圧力センサ60で検出された咬合圧力が所定値以上であること、或いは、ラインセンサ20の受光量が所定値以下であることを検出すればよい。このような構成とすることにより、歯科医や被験者によって電源スイッチ80が押下された後、被験者が口腔内撮像装置1を装着して口を閉じた時点でラインセンサ20のスキャンを開始することが可能となる。
【0050】
また、上記のスタートトリガとしては、例えば、無線通信部40を介して外部からスキャン開始信号が入力されたことを検出してもよい。このような構成とすることにより、ラインセンサ20のスキャン開始タイミングを任意に決定することが可能となる。
【0051】
ステップS104では白色光の照射が行われ、ステップS105では白色光照射時の画像データが取得される。すなわち、ステップS104とステップS105では、可視領域での撮影が行われる。なお、ここで取得された画像データは、可視領域での画像データとして、スキャンが完了または停止されるまで一時格納される。
【0052】
ステップS106では紫外光の照射が行われ、ステップS107では紫外光照射時の画像データが取得される。すなわち、ステップS106とステップS107では、紫外領域での撮影が行われる。なお、ここで取得された画像データは、紫外領域での画像データとして、スキャンが完了または停止されるまで一時格納される。
【0053】
ステップS108では近赤外光の照射が行われ、ステップS109では近赤外光照射時の画像データが取得される。すなわち、ステップS108とステップS109では、近赤外領域での撮影が行われる。なお、ここで取得された画像データは、近赤外領域での画像データとして、スキャンが完了または停止されるまで一時格納される。
【0054】
ステップS110では、ラインセンサ20が最終ラインまで走査されたか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS111に進められて、一時格納されていた画像データが外部のホスト機器に無線送信された後、上記一連のフローが完了される。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS112に進められて、ラインセンサ20が1ライン分だけ移動された後、フローがステップS104に戻される。
【0055】
また、ステップS104〜ステップS110、及び、ステップS112による撮影動作が繰り返されている間には、スキャン停止の割込処理が行われる(図中の白抜き矢印)。この割込処理では、ステップSS113において、所定のストップトリガが検出されたか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS114に進められてスキャンが停止された後、フローがステップS102に戻される。その際、一時格納されていた画像データは破棄される。一方、ノー判定が下された場合には、割込処理が終了されて、フローが割込処理前のステップに復帰される。
【0056】
なお、上記のストップトリガとしては、例えば、圧力センサ60で検出された咬合圧力が所定値以下であること、或いは、ラインセンサ20の受光量が所定値以上であることを検出すればよい。このような構成とすることにより、被験者が口腔内撮像装置1を装着したまま口を開けた時点でラインセンサ20のスキャンを停止することが可能となる。
【0057】
また、上記のストップトリガとしては、例えば、無線通信部40を介して外部からスキャン停止信号が入力されたことを検出してもよい。このような構成とすることにより、ラインセンサ20のスキャン停止タイミングを任意に決定することが可能となる。
【0058】
このように、本発明に係る口腔内撮像装置1によれば、口腔内の状態を画像データとして容易に閲覧し、記録し、さらには、データベース化することが可能となる。従って、歯科医は、従来よりも客観的ないしは統計学的な見地に立って、被験者の健康状態を評価することが可能となり、延いては、歯周病、口臭、虫歯、炎症やそれにまつわる心臓疾患や糖尿病などの早期発見や早期治療を行うことが可能となる。
【0059】
特に、本発明に係る口腔内撮像装置1であれば、外光の影響を受けることなく、可視領域での画像データを取得することができるので、歯科医は被験者の口腔年齢を正しく判断することが可能となる。なお、口腔年齢とは、歯と歯茎の健康状態を年齢に置き換えることで、口腔内の状態を分かりやすく示したものである。口腔年齢は、虫歯の治療をしたことがない歯の本数、歯石や歯茎の炎症の有無、歯周ポケットの深さなどをチェックして、その結果を日本人の平均値と取らし合わせることにより判定される。口腔年齢を判定することにより、歯の痛みなどの異常や病気がないときでも、被験者が口腔内の健康に関心を持つようになるので、定期的な口腔ケアや食生活の改善を心がけるようになり、延いては歯の健康を守ることが可能となる。
【0060】
また、本発明に係る口腔内撮像装置1であれば、外光の影響を受けることなく、紫外領域での画像データを取得することができるので、歯科医は非染色によるプラーク観察を行うことが可能となる。
【0061】
また、本発明に係る口腔内撮像装置1であれば、外光の影響を受けることなく、近赤外領域での画像データを取得することができるので、歯科医は口腔組織や歯茎の血管を観察することも可能となり、延いては、従来にはない歯茎や口腔組織の治療に役立てることが可能となる。
【0062】
<第2実施形態(下顎撮影型)>
図7は、本発明に係る口腔内撮像装置1の第2実施形態を示す縦断面図であり、図8は第2実施形態の口腔内撮像装置1が口腔内に装着された様子を示す縦断面図である。
【0063】
第2実施形態の口腔内撮像装置1において、ハウジング10は、下顎に対向して開口する第1凹部11と、ラインセンサ20を収納するための第2凹部12と、を有する。第2凹部12は、第1実施形態と異なり、下顎に対向する面が全て開口部13とされており、その全面が透光部材70によって封止されている。すなわち、第2実施形態の口腔内撮像装置1では、レール溝支持部14が不要となるので、開口部13を広げることが可能となり、延いては、可動部材21上に占めるセンサ部22の領域を広げることが可能となる。
【0064】
<口腔内撮像システム>
図9は、本発明に係る口腔内撮像装置1を用いた口腔内撮像システムの一構成例を示すツリー図である。口腔内撮像装置1は、ホスト機器2との間で近距離無線通信(アドホック通信)を行うことにより、口腔内の画像データを転送する。ホスト機器2は、ネットワーク3(LAN[Local Area Network]やインターネット)に有線ないしは無線で接続されており、ネットワーク3に接続された他の遠隔端末4と画像データを共有することができる。このような口腔内撮像システムを構築することにより、例えば、将来的には、被験者が自宅で撮影した口腔内の画像データを遠隔地の歯科医に転送して診断を仰ぐ、といった遠隔診断システムを実現することが可能となる。
【0065】
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0066】
例えば、上記実施形態では、口腔内の撮影が終了した時点で、画像データをホスト機器に無線送信する構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、画像データを格納するためのメモリと、メモリに格納された画像データをホスト機器に送信するための有線インタフェイス部と、を有する構成としてもよい。このような構成とすることにより、消費電力の大きい無線通信部40が不要となるので、バッテリ50の駆動時間を延ばすことが可能となる。ただし、口腔内撮像装置1を防水構造とするためには、外部端子を完全に排除するという観点から、画像データを無線通信する構成を採用することが望ましい。
【0067】
また、上記実施形態では、片面タイプ(上顎撮影型、下顎測定型)を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせることにより、両面タイプ(上下顎同時撮影型)とすることも可能である。このような構成とすることにより、上顎と下顎を一括して撮影することができるので、トータル撮影時間を短縮することが可能となり、延いては、被験者の負担を軽減することが可能となる。
【0068】
また、上記実施形態では、ハウジング10の第1凹部11と第2凹部12が同一の方向に開口している構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、ハウジング10の第1凹部11と第2凹部12が互いに逆方向に開口している構成としても構わない。
【0069】
また、上記実施形態では、1回のスキャンで可視領域での画像データ、紫外領域での画像データ、及び、近赤外領域での画像データを全て取得する構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、必要な波長領域での画像データのみを取得する構成としても構わない。また、1回目のスキャンで可視領域での画像データを取得し、2回目のスキャンで紫外領域での画像データを取得し、3回目のスキャンで近赤外領域での画像データを取得するといったシーケンスも考えられる。その際、先のスキャンが終了する毎にセンサ部を所定のスキャン開始位置まで戻してから次のスキャンを開始する構成としてもよいし、或いは、先のスキャン終了位置を次のスキャン開始位置とする構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る口腔内撮像装置は、歯科検診や口腔年齢測定用のツールとして利用することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 口腔内撮像装置
2 端末
3 ネットワーク
4 端末
10 ハウジング
11 第1凹部
12 第2凹部
13 開口部
14 レール溝支持部
20 ラインセンサ
21 可動部材
22 センサ部
23 ワイヤ接続部
24 レール溝
25 ワイヤ
26 モータ
30 制御部
40 無線通信部
50 バッテリ
60 圧力センサ
70 透光部材
80 電源スイッチ
W 白色光発光部(可視光発光部)
UV 紫外光発光部
NIR 近赤外光発光部
PD 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に装着されるマウスピース型のハウジングと、
歯列または歯茎に沿って生体組織をスキャンするラインセンサと、
装置各部を統括的に制御する制御部と、
前記ラインセンサで得られた画像データを外部に送信する無線通信部と、
装置各部に電力を供給するバッテリと、
を有することを特徴とする口腔内撮像装置。
【請求項2】
前記ラインセンサは、発光部と受光部を有することを特徴とする請求項1に記載の口腔内撮像装置。
【請求項3】
前記発光部は、可視光、紫外光、及び、近赤外光の少なくとも一つを出力することを特徴とする請求項2に記載の口腔内撮像装置。
【請求項4】
前記発光部は、前記ラインセンサの走査方向を基準として前記受光部の前後に設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の口腔内撮像装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記ラインセンサを収納するための凹部を有しており、
前記凹部は、透光部材によって封止された防水構造とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の口腔内撮像装置。
【請求項6】
前記制御部は、所定のスタートトリガを検出したときに前記ラインセンサのスキャンを開始することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の口腔内撮像装置。
【請求項7】
咬合圧力を検出する圧力センサを有し、
前記制御部は、前記咬合圧力が所定値以上であることを前記スタートトリガとして検出することを特徴とする請求項6に記載の口腔内撮像装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ラインセンサの受光量が所定値以下であることを前記スタートトリガとして検出することを特徴とする請求項6に記載の口腔内撮像装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記無線通信部を介して外部から入力されるスキャン開始信号を前記スタートトリガとして検出することを特徴とする請求項6に記載の口腔内撮像装置。
【請求項10】
前記制御部は、所定のストップトリガを検出したときに前記ラインセンサのスキャンを停止することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の口腔内撮像装置。
【請求項11】
咬合圧力を検出する圧力センサを有し、
前記制御部は、前記咬合圧力が所定値以下であることを前記ストップトリガとして検出することを特徴とする請求項10に記載の口腔内撮像装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記ラインセンサの受光量が所定値以上であることを前記ストップトリガとして検出することを特徴とする請求項10に記載の口腔内撮像装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記無線通信部を介して外部から入力されるスキャン停止信号を前記ストップトリガとして検出することを特徴とする請求項10に記載の口腔内撮像装置。
【請求項14】
前記ラインセンサは、
前記歯列または歯茎に沿って前記ハウジングに敷設されたレール溝と、
前記レール溝内に導通されたワイヤと、
前記ワイヤを駆動するモータと、
前記ワイヤに接続された可動部材と、
前記可動部材に配置されたセンサ部と、
を有することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の口腔内撮像装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−125455(P2012−125455A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280526(P2010−280526)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(510331870)プライムメディ有限会社 (1)
【Fターム(参考)】