説明

口腔用貼付剤製品

【解決手段】(A)アスコルビン酸エステル及びその塩から選ばれる1種又は2種以上、(B)ゲル化剤、(C)蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaの水及び/又は有機溶剤を組成物全体の30.0〜99.0質量%、(D)アルカリ剤を含有し、pHが8.0〜9.5である膏体組成物と、この膏体組成物を歯牙、口腔粘膜、歯茎から選ばれる少なくとも一つの部位に貼り付けるための支持体とを含むことを特徴とする口腔用貼付剤製品。
【効果】本発明の口腔用貼付剤製品は、アスコルビン酸誘導体(アスコルビン酸エステル又はその塩)の失活や変色が抑制され、歯牙等への密着性も良好であり、優れた歯牙美白効果を実現させることができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスコルビン酸誘導体(アスコルビン酸エステル又はその塩)の失活や変色が抑制され、歯牙等への密着性にも優れ、高い歯牙美白効果を有する口腔用貼付剤製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸(別名・ビタミンC)は、ステイン等で着色した歯牙に対し、美白効果を有することが知られている。また、生体内で種々の酵素活性発現に重要な役割を果たし、多様な生理活性を持つことが知られている。特に、プロリル及びリジルヒドロキシラーゼの補酵素として作用し、コラーゲン合成に必須であるとされている。また、近年、生体内に産生された過剰の活性酸素を消去し、生体組織を酸素傷害から守る抗酸化ビタミンとしても注目されている。このため、歯牙の美白や歯肉炎、歯周炎の予防・治療に有用で、従来からアスコルビン酸又はその塩を口腔用貼付剤製品に配合することが知られている(特許文献1〜8参照)。
【0003】
しかしながら、アスコルビン酸は強い還元性物質であり、特に水の存在下では容易に酸化されて失活し、著しい着色を生じるため、貼付して用いる製剤である口腔用貼付剤製品への応用は、きわめて困難であるのが現状であった。
【0004】
一方、歯磨剤組成物、液体口腔用組成物等の貼付せずに用いる剤型においては、アスコルビン酸をエステル化することにより、酸化による失活や着色を防止する技術が知られている。例えば、アスコルビン酸リン酸エステル又はその塩(特許文献9〜17参照)やアスコルビン酸硫酸エステル又はその塩(特許文献13、15、18参照)を配合する技術が知られている。また、貼付せずに用いる歯牙美白剤にアスコルビン酸リン酸エステル又はその塩を配合する技術も知られている(特許文献17参照)。
【0005】
しかし、これらの文献においては、貼付して用いる製剤においてのアスコルビン酸誘導体の安定性向上については記載がない。また、歯磨剤組成物、液体口腔用組成物等が口腔内に有効成分を満遍なく到達させ、口腔内全体の疾患の予防・治療に効果を有する技術であるのに対し、口腔用貼付剤製品は標的部位に製剤を貼付して有効成分を局所投与する技術であり、両者は異なる技術であり、適用方法も異なる。
このように、アスコルビン酸をエステル化することにより、歯磨剤組成物、液体口腔用組成物等の口腔用組成物において失活や着色を防止する技術は公知であるが、口腔用貼付剤製品に応用した時にアスコルビン酸誘導体の失活や着色を防止でき、しかも、歯牙への密着性に優れ、歯牙美白効果を向上させる効果に優れたものは、いままで知られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平03−77829号公報
【特許文献2】特開平04−173730号公報
【特許文献3】特開平05−306227号公報
【特許文献4】特開平10−17448号公報
【特許文献5】特開平10−330282号公報
【特許文献6】特開2001−163745号公報
【特許文献7】特表2003−526648号公報
【特許文献8】特開2005−187331号公報
【特許文献9】特開2000−198723号公報
【特許文献10】特開昭62−96408号公報
【特許文献11】特開平02−292210号公報
【特許文献12】特許第2814549号
【特許文献13】特許第2973511号
【特許文献14】特開2004−26658号公報
【特許文献15】特表2004−528357号公報
【特許文献16】特許第3582537号
【特許文献17】特開2005−75825号公報
【特許文献18】特開平03−294227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、口腔用貼付剤製品において、アスコルビン酸誘導体(アスコルビン酸エステル又はその塩)の酸化による失活や着色が防止され、歯牙等への密着性に優れ、かつ、歯牙美白効果に優れた口腔用貼付剤製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(A)アスコルビン酸エステル又はその塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上、(B)ゲル化剤、(C)蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaの水及び/又は有機溶剤を組成物全体の30.0〜99.0質量%、(D)アルカリ剤を含有し、pHが8.0〜9.5である膏体組成物と、この膏体組成物を歯牙、口腔粘膜、歯茎から選ばれる少なくとも一つの部位に貼り付けるための支持体とを用いて口腔用貼付剤製品とすることにより、意外にもアスコルビン酸エステル又はその塩の失活やこれによる製剤の着色を防止することができ、しかも、歯牙等への密着性も良好で、優れた歯牙美白効果が向上することを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、(A)アスコルビン酸エステル及びその塩から選ばれる1種又は2種以上、(B)ゲル化剤、(C)蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaの水及び/又は有機溶剤を組成物全体の30.0〜99.0質量%、(D)アルカリ剤を含有し、pHが8.0〜9.5である膏体組成物と、この膏体組成物を歯牙、口腔粘膜、歯茎から選ばれる少なくとも一つの部位に貼り付けるための支持体とを含むことを特徴とする口腔用貼付剤製品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の口腔用貼付剤製品は、アスコルビン酸誘導体(アスコルビン酸エステル又はその塩)の失活や変色が抑制され、歯牙等への密着性も良好であり、優れた歯牙美白効果を実現させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の口腔用貼付剤製品は、膏体組成物と、この膏体組成物を歯牙、口腔粘膜、歯茎から選ばれる少なくとも一つの部位に貼り付けるための支持体とを備える。この場合、膏体組成物は、(A)アスコルビン酸エステル及びその塩から選ばれる1種又は2種以上、(B)ゲル化剤、(C)蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaの水及び/又は有機溶剤、(D)アルカリ剤を含有し、pHが8.0〜9.5のものである。
【0012】
本発明の口腔用貼付剤製品に配合するアスコルビン酸エステル又はその塩(以下、アスコルビン酸誘導体と略記する。)としては、具体的に、アスコルビン酸の2,3,5,6位の水酸基の1つ又は2つ以上がリン酸、ポリリン酸、硫酸、脂肪酸、その他製薬学上許容される化合物のエステルとなったものが好適に使用できる。例えば、アスコルビン酸−2−リン酸エステル、アスコルビン酸−3−リン酸エステル、アスコルビン酸−6−リン酸エステル、アスコルビン酸−2−ポリリン酸エステル等のアスコルビン酸リン酸エステル又はその塩、アスコルビン酸−2−硫酸エステル等のアスコルビン酸硫酸エステル又はその塩、アスコルビン酸−2−パルミチン酸エステル、アスコルビン酸−6−パルミチン酸エステル、アスコルビン酸−2−ステアリン酸エステル、アスコルビン酸−6−ステアリン酸エステル、アスコルビン酸−2,6−ジブチルエステル、アスコルビン酸−2,6−ジパルミチン酸エステル等のアスコルビン酸脂肪酸エステルなどが挙げられる。また、アスコルビン酸エステルの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0013】
本発明の口腔用貼付剤製品には、(A)成分として上記アスコルビン酸誘導体の1種又は2種以上が含まれるが、味の面で特にアスコルビン酸リン酸エステル又はその塩、とりわけアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウムが好適に用いられる。
【0014】
上記アスコルビン酸誘導体の配合量は、特に限定されないが、膏体組成物全体の0.01〜5%(質量%、以下同様。)、特に0.05〜3%が望ましい。アスコルビン酸誘導体の配合量が0.01%未満では、配合効果が満足に発揮されない場合があり、また、5%を超えても含有量の増加に見合った効果の増大が期待できない場合があり、好ましくない。
【0015】
本発明に用いる(B)ゲル化剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム、ネイティブジェランガムなどのガム類、ポリアクリル酸又はその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ゼラチン、ペクチン、カンテンなどが挙げられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を配合し得る。特に、口中での粘りや溶け出しが少なく使用感に優れているため、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラゲナン、キサンタンガムが好ましい。
【0016】
ここで、カルボキシメチルセルロース又はその塩としては、特に制限されないが、1%水溶液の粘度(25℃)が、BL型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.1〜4、回転速度60rpm、測定時間2分)で測定した時、10〜4000mPa・sであり、かつ化粧品原料基準注解第2版に記載の非水滴定法により測定した時のエーテル化度が0.6〜1.5であるものが好ましく、例えば、ダイセル化学工業(株)製の品番1120、1150、1190、1220、1270、1310、1390などが挙げられる。更に好ましくは、粘度が10〜300mPa・s、かつエーテル化度0.6〜1.0のものであり、例えば、ダイセル化学工業(株)製の品番1120、1150、1220、1270が挙げられる。
【0017】
また、ポリアクリル酸又はその塩は特に制限されないが、以下の条件A〜Cのうち少なくとも一つに該当する粘度(25℃)を有するものが好ましく、更に好ましくは条件A又はBに該当するものである。
【0018】
条件A:
10%水溶液をBH型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.7使用、回転数20rpm、測定時間90秒)を用いて測定した時に50000〜110000mPa・sであるもの。この条件に該当する市販品としては、粘度が70000〜110000mPa・sであるジュリマーAC−10SH(日本純薬(株)製)等が挙げられる。
条件B:
20%水溶液をBM型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.4使用、回転数12rpm、測定時間90秒)を用いて測定した時に10000〜50000mPa・sであるもの。この条件に該当する市販品としては、粘度が20000〜40000mPa・sであるジュリマーAC−10H(日本純薬(株)製)、20000〜50000mPa・sであるアロンA−20L(東亜合成(株)製)等が挙げられる。
条件C:
40%水溶液をBM型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.3使用、回転数30rpm、測定時間90秒)を用いて測定した時に1000〜4000mPa・sであるもの。この条件に該当する市販品としては、粘度が1000〜2000mPa・sであるジュリマーAC−10L(日本純薬(株)製)等が挙げられる。
【0019】
ヒドロキシプロピルセルロースとしては、特に制限されないが、2%水溶液の粘度(20℃)が単一円筒形回転粘度計((株)トキメック製TVB−20L型、ローターNo.L、M2又はM4を使用、回転数60rpm、測定時間4分)で測定した時に6〜4000mPa・sであるものが好ましく、例えば、HPC−L、HPC−M、HPC−H(いずれも日本曹達(株)製)が挙げられ、更に好ましくは上記粘度が150〜4000mPa・sのものであり、具体的にはHPC−M、HPC−Hが挙げられる。
【0020】
本発明に用いられるヒドロキシエチルセルロースは特に制限されないが、重量平均分子量10万〜300万、更に好ましくは50万〜200万のものが好ましい。なお、重量平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって下記方法で測定したものである。即ち、0.20mol/L酢酸リチウム緩衝液(pH4.8)及び0.25%ランダムメチルβ−シクロデキストリン(RAMEB−CD)移動相中で、カラム及び屈折率検出器の両方をサーモスタットで40℃に調温してSEC測定を行った。1組のTSK−Gelカラム(3 GMPWXL Linears + G3000P WXL in series)によって、流量1.0mL/分において、ポリマーをクロマトグラフィーにかけた。0.20%のサンプル濃度を、200μLの注入容量において使用した。分子量分布データは、ポリエチレンオキサイド/ポリエチレングリコール検量線に対して相対的なものである。
これらに該当する市販品としては、例えば、ユニオンカーバイド社製HEC−QM100M(重量平均分子量150万)、HEC−QP4400(重量平均分子量80万)等が挙げられる。
【0021】
カラゲナンには、カッパ型、ラムダ型、イオタ型の3種があり、本発明では特に制限されないが、好ましくはカッパ型及び/又はラムダ型である。更に好ましくはカッパ型/ラムダ型の質量比が5/5〜9/1のものであり、これらに該当する市販品としては、カラギーナンK(CP−Kelco社製)、Auby−Gum X−2(CECA S.A.社製)が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられるキサンタンガムは特に制限されないが、重量平均分子量100万〜1000万のものが好ましく、更に好ましくは100万〜500万のものである。重量平均分子量はSEC/MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー/多角レーザー光散乱)ユニットを用いて下記方法により測定した。即ち、SEC/MALLSユニットには、水410示差屈折計、ワイアット・テクノロジー−Dawn DSPレーザー光度測定器、及び二つのウォーターズ・ヒドロゲルカラム(2000及び線状のものを直列に)を装着した。アストラ21プログラムを用いてデータを分析した。
これらに該当する市販品としてエコーガム、エコーガムT(いずれも大日本製薬(株)製)等が挙げられる。
【0023】
上記ゲル化剤の配合量は、特に併用する支持体がテープ、シート又はフィルムの場合には、膏体組成物の固定力だけで歯牙、口腔粘膜、歯茎からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上の部位に付着、固定できる必要があるため、膏体組成物全体の0.1〜16%が好適であり、特に0.5〜14%が望ましい。0.1%未満であると、粘着力が発揮されなかったり、膏体組成物の溶け出しによる口中の粘つき等の違和感につながったりする場合がある。16%を超えると、ゲル化剤が充分に溶けきらず、膏体組成物が不均一になるだけでなく、有効成分の効果発現を阻害する場合がある。
【0024】
本発明に用いられる(C)成分は、蒸気圧(25℃)が0〜7000kPa、好ましくは0〜5500kPaの水及び/又は有機溶剤である。
具体的には、水の他に、イソプロパノール、ブタノール、ラウリルアルコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチル、セバスチン酸ジエチル等が挙げられ、好ましくは水、ラウリルアルコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、クエン酸トリエチル、セバスチン酸ジエチルが挙げられる。
【0025】
なお、ポリエチレングリコールの平均分子量は化粧品原料基準(第2版注解)記載の平均分子量を示し、ポリエチレングリコール200(平均分子量190〜210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量280〜320)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)及びポリエチレングリコール600(平均分子量570〜630)が該当する。商品によっては、例えばポリエチレングリコール#200等のように、ポリエチレングリコールと数値との間に#がつく場合がある。
【0026】
(C)成分の水及び/又は有機溶剤の配合量は、組成物全体の30.0〜99.0%、更に好ましくは55.0〜98.0%である。(C)成分の配合量が30.0%未満の場合には、膏体組成物の可塑性が失われ、十分な量のアスコルビン酸誘導体が歯牙、口腔粘膜、歯茎に吸着できない場合がある。可塑性付与のためにエタノール等の蒸気圧が7000kPaを超える有機溶剤を加えたとしても、特に長時間適用する場合には、膏体組成物から液体成分が揮発してしまい、膏体組成物の可塑性が失われ、十分な量のアスコルビン酸誘導体が歯牙、口腔粘膜、歯茎に吸着できない場合がある。(C)成分の配合量が99.0%を超える場合には、十分な粘度が得られず、アスコルビン酸誘導体が口中全体へ溶け出してしまい、十分な作用を発揮できないだけでなく、粘つき等の違和感につながる場合がある。
【0027】
本発明にかかわる膏体組成物は、(D)アルカリ剤を含有する。アルカリ剤の種類は、口腔内及び人体に安全性上問題ないものであれば特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸水素ナトリウム、クエン酸水素カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等を例示できる。
アルカリ剤の配合量は、組成物のpHを8.0〜9.5に調整できる範囲とすることができ、具体的には、組成物全体の0.001〜10%、特に0.01〜5%の範囲が望ましい。配合量が0.001%未満ではpH調整効果が充分に発揮されない場合があり、10%を超えると苦味を生じる場合がある。
【0028】
膏体組成物のpHは8.0〜9.5であり、より好ましくは8.5〜9.0である。pHが8.0未満の場合にはアスコルビン酸エステル等の安定性や色調に悪影響を及ぼしてしまい、pHが9.5を超える場合には口腔粘膜に刺激を生じたり、アスコルビン酸エステル等のエステル結合が切断されたりする。なお、本発明にかかわる膏体組成物のpHを測定する時は、膏体組成物を10倍希釈したものを検体として用いる。
【0029】
上記膏体組成物は、(B)、(C)、(D)成分を常法により混合して均一なゲルとした後、(A)成分のアスコルビン酸誘導体を配合し、均一な膏体組成物とするのが一般的であるが、(A)のアスコルビン酸誘導体を予め(B)又は(C)成分に配合しておいても構わない。
【0030】
本発明にかかわる膏体組成物は、上記(A)〜(D)を必須成分として含有し、支持体に固定できる組成物であれば特に制限されないが、更に、茶渋やタバコヤニ等によって着色した歯牙の美白、歯肉炎や歯槽膿漏等の歯周組織疾患、口内炎等の口腔粘膜疾患の予防・治療の他、根面う蝕や知覚過敏の予防・治療、歯茎に付着する食物残渣、歯垢、歯石、細菌、特定の薬剤物質などに代表される汚れや臭い物質の分解、殺菌、除菌、除去などの効果を付与してもよく、これに応じて各種有効成分等の任意成分を配合してもよい。
【0031】
この場合、好適に用いられる有効成分としては、上記アスコルビン酸誘導体の1種又は2種以上の他、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、トリアムシノロンアセトニド、インドメタシン、サリチル酸グリコール、アドレノクロム・モノアミノグアニジンメタンスルホン酸、エタンシラート、ルチン、メチルヘスペリジン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、スプロフェン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、ピロキシカム、フェルビナク、ジクロフェナク、ジフェンヒドラミン、アズレン、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸、α−ビサボロール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、オウバクエキス、ビタミンA,B1,B2,B6,B12,D,E又はその誘導体、フッ化ナトリウム、アルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化錫などのフッ素化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、スーパーオキシドジスムターゼなどの酵素、キシリトール、リン酸、カルシウムイオン溶出物などの再石灰化促進成分、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過硫酸カリウム、過ホウ酸ナトリウムなどの過酸化物、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、フィチン酸などのキレート剤、クエン酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、コウジ酸などの有機酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、エタノール、シトラールやベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、オクタノール、サリチル酸メチル、カルボンなど特定のタバコヤニ溶解香料などの溶剤、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、カテキン、クロトリマゾール、硝酸ミコナゾール、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、ビホナゾール、チオコナゾール、トルナフテート、シクロピロクスオラミン、ピロールニトリン、ウンデシレン酸、シッカニン、グアヤコールスルホン酸、クロラミンなどの殺菌剤・抗菌剤、ローズマリー、チョウジ、セージ、タイム、オウゴン、トウキ、ハマメリス、ビワ、緑茶、イチョウ、セイヨウサンザシ、ホップ、ワレモコウ、オトギリソウ、ウーロン茶、シナノキ、アセンヤク、ノバラ、ドクダミ、スギナ、紅茶、シャクヤク、シラカバ、サンザシ、マロニエ、ゼニアオイなどの生薬抽出物、グルコン酸銅、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等が挙げられる。これら他の有効成分の配合量は、成分の種類や目的により異なるが、通常、組成物全体の0.001〜30%が好適であり、0.001%未満では当該成分の効果が充分に得られない場合があり、30%を超えると苦味や刺激を生じる場合がある。
【0032】
また、乳化、分散などの目的で、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤の1種又は2種以上を併用することができる。その配合量は通常、組成物全体の0.1〜5質量%である。
【0033】
この場合、アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩等が挙げられ、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム、トリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルポリオキシエチレン硫酸ナトリウム、ラウリルポリオキシエチレン酢酸ナトリウム、ラウリルポリオキシエチレンリン酸ナトリウム、ステアリルポリオキシエチレンリン酸ナトリウム等が好適に使用できる。
【0034】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられ、具体的には、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等が好適に使用できる。
【0035】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が挙げられ、具体的には、ソルビタンモノオレエート、モノグリセリルステアレート、グリセリルモノオレエート、デカグリセリルラウレート、デカグリセリルモノオレエート、ジグリセリルジオレエート、ヘキサグリセリルモノラウレート、プロピレングリコールモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(エチレンオキサイド平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート(エチレンオキサイド平均付加モル数60)、ポリオキシエチレンモノステアレート(エチレンオキサイド平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキサイド平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイド平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド(エチレンオキサイド平均付加モル数5)等が好適に使用できる。
【0036】
両性界面活性剤としては、N−アシルメチルタウリン塩、N−アルキルジアミノエチルグリシン、酢酸ベタイン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタイン塩等が挙げられ、具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が好適に使用できる。
【0037】
本発明にかかわる膏体組成物には、ゲル化剤を架橋するための架橋剤を配合することができ、上記ゲル化剤を架橋し得る限り、その種類は特に制限されないが、特に、多価金属化合物が好適に使用される。
この場合、多価金属化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、錫化合物、鉄化合物、クロム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物等が使用し得るが、味の面で、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を用いることが好ましい。
【0038】
更に、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物はいずれのものも好適に使用し得、例えばカリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、鉄ミョウバン等のミョウバン類、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、塩化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、酢酸アルミニウム、酸化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナ・マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、アルミニウムグリシネート、これらの金属を含む複塩等の水溶性化合物、水難溶性化合物のうちの1種又は2種以上を使用し得る。
【0039】
上記架橋剤の配合量は、その種類により種々異なるが、例えば上記多価金属化合物を使用する場合、その配合量は膏体組成物全体の0.001〜5%、特に0.1〜2.5%とすることが好ましい。配合量が0.001%未満では膏体組成物の凝集力が低下する場合があり、5%を超えると苦味や金属味を生じ、使用感が不快になる場合がある。
【0040】
更に、本発明にかかわる膏体組成物には、ゲル物性を調整するための架橋調整剤を配合してもよい。具体的には、エデト酸、酒石酸、クエン酸、及びそれらの塩などが挙げられ、その配合量は通常、組成物全体の0.05〜2%である。
【0041】
また、膏体組成物には、香料成分を配合してもよい。具体的には、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、ケイヒ油、桂葉油、チアミン油、テレビン油、ヘノポジ油、ヤマジン油、ラベンダー油、トウカ油、ベルガモット油、ローズ油、シトロネラ油、樟脳油、ゼラニウム油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ウイキョウ油、ピメント油、シソ油、ヒマシ油等の天然香料及びメントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、チモール、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、リナロール、エチルリナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトロネリルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド等の単品香料、更に、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール等の単品香料及び/又は天然香料も含む調合香料のストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー等の周知の香料を使用することができ、通常その配合量は0.00001〜10%の範囲である。
【0042】
本発明にかかわる膏体組成物には、更に、安息香酸又はそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、ベンガラなどの色素又は着色剤、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、グリチルリチン、ペリラルチン、ソーマチン、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、パラメトキシシンナミックアルデヒド、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、アセスルファムカリウム、スクラロースなどの甘味剤等を配合し得る。また、外観を向上させるため、ラメフィルムを配合してもよく、ラメフィルムとしては、有機樹脂の積層フィルム末、及び、有機樹脂積層フィルム中にアルミニウム等の蒸着層を導入した積層フィルム末等、具体的には、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末等を用いることができる。
【0043】
上記膏体組成物には、充填剤を配合してもよく、具体的には、カオリン、スメクタイト等の粘土鉱物、酸化チタン等が挙げられ、その配合量は通常、組成物全体の0.1〜5%である。
【0044】
膏体組成物には、油性成分を配合してもよく、具体的には、オレイルアルコール、セタノール、ラウリルアルコール等の高級アルコール、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸プロピル、セバシン酸ジエチル等の高級脂肪酸エステル、カルナバワックス、ロジン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ等のワックス類、スクワラン、パラフィン等の炭化水素油、ヒマシ油等の油脂等が挙げられ、その配合量は通常、組成物全体の0.1〜5%である。
【0045】
本発明において、膏体組成物の固さは特に制限されないが、併用する支持体に応じて0.001〜10kgに調整することが好ましく、更に好ましくは0.005〜1kgである。固さが0.001kg未満の膏体組成物は、支持体と併用しても口腔粘膜に膏体組成物を付着・固定させることができない場合がある。一方、10kgを超える固さの場合には、アスコルビン酸誘導体が充分に口腔粘膜に吸着せず、抗炎症効果が発揮されない場合がある。この場合、上記固さの調整は、上述したゲル化剤等の種類、配合量等を選定することによって行うことができる。
【0046】
なお、膏体組成物の固さは以下の方法で測定した値である。即ち、円筒状の容器(直径36mm、深さ18mm)の最上部までゲルを充填し、進入速度20mm/分でプランジャー(直径20mm)を深さ10mmまでゲルに進入させた時の最大応力をレオメーター(サン科学製、SUN RHEO METER CR−200D)によって測定した。測定温度は25℃である。
【0047】
本発明にかかわる膏体組成物は、上述したように、歯牙、口腔粘膜、歯茎から選ばれる少なくとも一つの口腔内部位に貼り付けるための保持・固定専用の支持体と併せて適用される。この支持体は、膏体組成物の歯牙、口腔粘膜又は歯茎への確実な適用、固定を補助すると共に、使用中の膏体組成物の舌等への漏出を抑え、不快な使用感や唾液の誘発を防ぎ、更に唾液の浸入や咬合、咀嚼、その他物理的な刺激による膏体組成物の希釈や歯牙、口腔粘膜又は歯茎からの離脱を防ぐ目的で使用される。
【0048】
支持体としては、水不溶性の素材で作られたテープ、シート、フィルム、パックや、歯牙、口腔粘膜又は歯茎にフィットするように成型したカバー等が好適に用いられる。
【0049】
支持体の材質は、口腔内に適用可能な安全性に優れた素材であれば特に制限されるものではないが、口腔適用時のフィット感に優れ、唾液の発生を抑えることで製剤の長時間適用を可能にする材質が好ましく、例えばヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース又はその誘導体、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、アセテート、ナイロン、レーヨン等の合成樹脂や合成繊維、紙、パルプ、絹、コットン等の天然繊維からなるフィルム、織布及び不織布、あるいは金、白金、銀、パラジウム、チタン、ニッケル、クロム、コバルト、銅、アルミニウム、鉄などの1種又は2種以上の金属からなる金属箔などが挙げられる。これらの素材は、1種を単独でも又は2種以上を組み合わせて使うこともできる。
中でも装着感に優れ、唾液の分泌を抑える素材として、合成繊維及び/又は天然繊維で構成される織布又は不織布、あるいは樹脂製フィルムが支持体として好適である。
【0050】
この場合、織布又は不織布を使用する場合には、口腔内装着時の風合いの良さから、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、コットン、パルプ、紙、絹といった合成繊維及び天然繊維から選ばれる1種又は2種以上からなる材質のものが特に好ましく、目付け10〜300g/m2のものが好適に使用される。樹脂製フィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリウレタンが好適に使用できる。また、上記織布又は不織布と樹脂製フィルムとの積層体を用いてもよい。
【0051】
更に、粘着面の反対側の材質を親水性・吸水性の高い素材、例えばレーヨン、パルプ、コットン、絹、紙等を使った織布又は不織布で構成することにより、口中で発生した唾液を吸収し保持することができるため、使用感に優れ、特に好ましい。この場合、膏体組成物を保持する側には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の水不透過性フィルムを組み合わせることで、膏体組成物の適用用具への吸着、浸透を防ぐこともできる。
【0052】
支持体の表面構造は、特に制限されない。例えば、平面構造、エンボス加工、凹凸形状、パイル形状等が挙げられ、エンボス加工、凹凸形状、パイル形状などの突起物がシート表面に存在してもよい。この突起物の高さは、突起物の材質やシートの厚みにより最適化されるが、好ましくは0.05〜1mmであり、特に好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0053】
支持体の厚みは特に制限されないが、歯茎へのフィット性に優れ、口腔内で違和感がない厚みが好ましく、支持体と膏体を含む口腔用貼付剤製品全体の厚みが0.1〜5mmとなる範囲が望ましく、具体的には厚さ0.2〜3mmの支持体が好適に使用できる。
【0054】
本発明においては、支持体への膏体組成物の塗膏方法等に特に制限はなく、上記した支持体へ塗膏後に膏体組成物の歯牙等への確実な適用、固定を補助でき、膏体組成物の希釈や漏出防止、歯牙等からの離脱を防ぐことができれば通常の方法を採用でき、例えば軟膏ヘラや延展機を用いて塗膏する方法などを用いて、所望の厚さになるように塗膏することができる。なお、本発明の固定口腔用貼付剤製品は、予め支持体へ膏体組成物を塗膏した一体型の製剤としても、あるいは膏体組成物と支持体とを同包装又は別包装し、適用時に支持体へ膏体組成物を塗膏して使用するような製剤としてもよい。
【0055】
本発明の口腔用貼付剤製品は、製品の品質保持などの点から、容器内に保管して保存し、使用時に容器から取り出して適用することがより望ましい。保管する容器は、特に制限されないが、アスコルビン酸誘導体やその他の有効成分の活性を安定に保ち、また、変色や香料成分等の変敗を防ぎ、口腔用貼付剤製品の品質を保持するためには、水や異物等の混入を防ぐことのできる密閉容器を用いることが好ましい。密閉容器として、例えば、ラミネートフィルム容器、袋、ビン、缶、シール容器等が使用できる。容器には、1回分ずつを封入してもよいし、複数回分を入れ、使用の都度、密閉し直してもよい。
【0056】
ラミネートフィルム容器を構成するフィルムは、2層以上の多層のものを使用でき、一般的には、強度、柔軟性、耐候性等を考慮し、2〜5層程度のものを用いることが望ましい。
ラミネートフィルムを構成するフィルムの材質としては、例えば、アルミニウム箔、金箔、銀箔等の金属の薄膜、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の樹脂、紙類、布等が使用できる。アルミニウム箔を用いると、水等の揮散を防ぐことができるだけでなく、直射日光に起因する変敗をも効果的に防止できる利点がある。
また、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、紙類、布は、容器に適度な強度やバリア性を付与することができ、内容物の品質を維持し、また突起物等に接触した際の容器や内容物の破損を防ぐことができる利点がある。
ラミネートフィルム容器に複数回使用分を入れる場合は、開口部を再開閉できる機構を具備していることが好ましい。
【0057】
袋の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の樹脂、紙類、布等が使用できる。
ビンの材質としては、ガラス、合成樹脂、陶器、磁器等が使用でき、開口部は密閉できることが好ましく、ネジ蓋、嵌合式蓋、アンプル、コルク栓、ゴム栓等が例示できる。
【0058】
ガラスを用いる場合は、茶色、緑色等の着色ガラスを用いると、遮光性が得られるため好ましい。合成樹脂を用いる場合は、チヌビン(登録商標)等の紫外線吸収剤を練合すると、紫外線に起因する内容物の変敗を防止することができるため好ましい。缶の材質としては、例えば、アルミニウム、スチール、ブリキ、紙等が使用でき、複数回使用分を入れる場合は、開口部をネジ蓋、嵌合式蓋等とすることが好ましい。シール容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート等が例示できる。
【0059】
なお、本発明の貼付剤製品の歯牙等の口腔内部位への適用回数、時間等は適宜選定されるが、通常、1日1〜6回、特に1〜3回で、1回1〜120分、特に1〜60分が好適であるが、就寝中に適用することも可能である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0061】
また、各例における蒸気圧測定、pH測定、各評価は下記方法で行った。
<蒸気圧測定法>
気液平衡自動測定装置((株)東洋高圧製、VLEオートラボ)を用いて測定した。測定サンプルをセルに80mL入れ、一定温度(25℃)下で蒸気圧を測定した。
【0062】
<膏体組成物のpHの測定法>
膏体組成物10gを取り、精製水90mLを加えて分散し、マグネチックスターラーで攪拌しながら、pH電極(メトラー・トレド社製、InLab410)を挿入し、pHメーター(メトラー・トレド社製、MP220)を用いて測定した。
【0063】
<色調の変化の試験>
検体1枚をラミネートフィルム製ピローパック(材質:外層から順にポリエチレンテレフタレート25μm/アルミニウム箔20μm/ポリエチレンテレフタレート25μm/ポリエチレン50μm)に封入し、−5℃及び50℃の恒温槽中で3ヶ月間保存した。これを常温になるまで放置した後、鋏を用いて開封して検体を取り出し、−5℃保存品を基準として50℃保存品の色調を評価した。なお、比較例6,7については、バイアル壜に入れたまま、外観の色調を評価した。その評価基準は下記のとおりである。
◎:−5℃保存品と比較してほとんど変化がなかった
○:−5℃保存品と比較してあまり変化がなかった
△:−5℃保存品と比較してやや変色していた
×:−5℃保存品と比較して著しく変色していた
【0064】
<アスコルビン酸誘導体の残存率の試験>
検体10枚をラミネートフィルム製ピローパック(材質:外層から順にポリエチレンテレフタレート25μm/アルミニウム箔20μm/ポリエチレンテレフタレート25μm/ポリエチレン50μm)に封入し、−5℃及び50℃の恒温槽中で3ヶ月間保存した。これを常温になるまで放置した後、鋏を用いて開封して検体を取り出し、膏体組成物0.1gをかき取り、10mMのリン酸緩衝液(pH7)を加え、超音波を30分間照射した後、10mLにメスアップした。なお、比較例6,7については、検体0.1mLを取り、10mMのリン酸緩衝液(pH7)でメスアップし、10mLとした。この液の一部を取り、前処理用フィルター(例:クロマトディスク13A(クラボウ(株)製))で濾過した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、絶対検量線法にて定量を行った。
【0065】
移動相:25mMリン酸2水素カリウム/アセトニトリル=91/9混液
固定相:直径約4.6mm、長さ約150mmのステンレス管に5μmの液体クロマトグ
ラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したカラム
カラム温度:40℃
検出波長:240nm
流速:1mL/分
−5℃保存品中のアスコルビン酸誘導体の含有量を100%とした場合の50℃保存品中のアスコルビン酸誘導体の含有割合を算出し、残存率とした。その評価基準は下記のとおりである。
◎:残存率90%以上〜100%以下
○:残存率80%以上〜90%未満
△:残存率70%以上〜80%未満
×:残存率0%以上〜70%未満
【0066】
<ヒト抜去歯による歯牙美白化効果の実験方法>
予め色差b*0値を測定したヒト抜去歯の表面に人工唾液(商品名サリベート、帝人ファーマ社製)を噴霧した後、口腔用貼付剤製品を貼付し、37℃で4時間静置した。なお、比較例6,7は、検体を含浸させたレーヨン不織布シート(レーヨン100%、スパンレース、目付40g/m2、オーミケンシ(株)製、商品名ピロス)10mm×40mmを、予め色差b*0値を測定したヒト抜去歯の表面にのせ、37℃で4時間静置した。所定時間経過後、検体もしくは不織布を取り除いてヒト抜去歯を軽く水洗し、再度色差b*1を測定して処理前後の色差から歯牙白色化効果Δb(=b*0−b*1)を算出した。色差は分光測色計(ミノルタ(株)製、CM−2022)を用いて測定した。評価基準は以下のとおりである。
◎:Δb≧3.0
○:2.0≦Δb<3.0
△:1.0≦Δb<2.0
×:Δb<1.0
【0067】
<口腔用貼付剤製品の歯面への密着性評価方法>
10名の被験者を用いて以下の方法で官能評価を実施した。口腔用貼付剤製品を上顎の左右1〜3番の歯の唇面に当てながら、余った支持体を舌面に折り返して10分間装着した。なお、比較例6,7は、被験対象歯に検体を刷毛で塗布した。各被験者は口腔用貼付剤製品の歯面への密着性について下記の基準で評点をつけ、各被験者の評点の平均値を算出し「密着性」について評価した。
【0068】
評点
5点:ピッタリと固定している
4点:固定しているが、折り返した舌面側の支持体がやや浮いた感じがする
3点:少しズレるが気になるほどではない
2点:ズレて動いて気になる
1点:固定できない
「密着性」
各被験者の評点の平均値により評価した。
◎:4.5点以上5.0点以下
○:4点以上4.5点未満
△:3点以上4点未満
×:3点未満
【0069】
〔実施例1〜6、比較例1〜7〕
表1及び2に示す膏体組成物を下記方法により調製した。
まず、グリセリンにカルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムを投入して懸濁してから水を加え、1時間膨潤させた後、軟膏ヘラで攪拌しながら合成ヒドロタルサイトを加えて架橋させ、その後、その他の原料を順次添加混合した。更に、この混合物をニーダーに入れ、4kPaまで減圧して10分間混合し、膏体組成物を調製した。
この膏体組成物を、ポリウレタンフィルム(シーダム(株)製、DUS2124−CDB、厚さ50μm)60cm2と、フェイシングフィルム(ポリエチレンテレフタレート、片面シリコンコート、厚さ50μm、東レフィルム加工(株)製、商品グレード;セラピールBK(S)#50)のシリコンコート面の間に、全体の厚さが2mmになるように展延機(ロールサンドコーター、花栄機械工業製)を用いて塗膏し、15mm×60mmに裁断して口腔用貼付剤製品を作成し、検体(実施例1,2、比較例2〜5)とした。
【0070】
実施例3は、グリセリンの代わりに1,3−ブチレングリコールを用いて同様の操作を行った。実施例4は、グリセリンの代わりにポリエチレングリコール#400を用いて同様の操作を行った。実施例5は、グリセリンの代わりにグリセリンと1,3−ブチレングリコールの混合物を用いて同様の操作を行った。実施例6は、グリセリンの代わりにグリセリンとポリエチレングリコール#400の混合物を用いて同様の操作を行った。
比較例1は、グリセリンの代わりにエタノールを用いて同様の操作を行った。比較例6,7は、アスコルビン酸リン酸エステル塩を水に溶解し、バイアル壜(本体:無色透明ガラス製;蓋:ポリプロピレン製;容量:10mL)に10mLを入れて密閉し、検体とした。
【0071】
これらの検体を用い、上記の実験を行った。その結果を表1及び2に示す。なお、表中の「B成分の合計配合量」は(B)成分のゲル化剤の合計配合量、「C成分の合計配合量」は(C)成分の蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaの水及び/又は有機溶剤の合計配合量を示すが、「C成分の合計配合量」には、水酸化ナトリウム水溶液もしくは10%塩酸の溶媒としての水を含む。また、香料Aの組成は表3に示すとおりである。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
表1,2の結果からわかるように、変色及びアスコルビン酸誘導体の残存率を評価したところ、(A)成分のアスコルビン酸リン酸エステル塩を配合し、(B),(C)及び(D)成分を配合し、pHを8.0〜9.5とした場合、変色が抑制され、残存率も良好であった(実施例1〜6)。アスコルビン酸リン酸エステルを配合しても、pHが中性領域の場合には、変色が発生し、また残存率も充分ではなかった(比較例2,3)。一方、アスコルビン酸ナトリウムを配合した場合は、変色が著しく、また残存率も低かった(比較例4)。アスコルビン酸リン酸エステルの水溶液の場合は、変色が著しく、また残存率も低かった(比較例6,7)。このように、アスコルビン酸リン酸エステル塩を配合し、pHを8.0〜9.5とすることにより、製剤の安定化をはかることができた。
ヒト抜去歯を用いた着色歯牙美白試験では、本発明の製品(実施例1〜6)の効果はアスコルビン酸ナトリウム配合品(比較例4)及びアスコルビン酸誘導体無配合品(比較例5)よりも大幅に優れていた。また、有機溶剤としてグリセリンの代わりにエタノールを配合し、(C)成分の配合量が本発明範囲外の場合(比較例1)は着色歯牙美白効果が低かった。これはエタノールが揮発したことにより検体が乾燥し、歯牙表面への密着性が低下し、アスコルビン酸リン酸エステルが歯牙に充分に作用しなかったことが原因と推定される。
歯面への密着性を評価したところ、蒸気圧が0〜7000kPaの水及び/又は有機溶剤を用い、特定配合量で配合した場合は良好な密着性を示した(実施例1〜6)のに対し、蒸気圧が7000kPaを超える有機溶剤であるエタノールを用いた場合は密着性が悪かった(比較例1)。これはエタノールが揮発したために検体が乾燥し、歯面から剥離しやすくなったことが原因と推定される。更に、アスコルビン酸リン酸エステルの水溶液を塗布した場合は、口腔粘膜との接触や唾液による希釈・洗浄により歯面に滞留しなかった(比較例6,7)。
なお、香料Aの変わりに表3に示す組成の香料B〜Iを用いても、同様の結果が得られた。
【0076】
このように、本発明の口腔用貼付剤製品は、アスコルビン酸誘導体に由来する変色が抑制され、アスコルビン酸誘導体の残存率が高く、また、着色歯牙美白効果及び密着性に優れている。更に、本発明の製品は、歯牙等の部位に貼付して使用されるので、歯磨剤や液体口腔用組成物と異なり、適用時間中に唾液等で希釈されることがないため、より効果に優れる。
【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
【表7】

【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
次に、本発明に該当する口腔用貼付剤製品(下記実施例7〜10)を調製し、上記と同様の評価を行った。これらの実施例では、いずれもアスコルビン酸誘導体が配合されており、上記実施例と同様に、保存安定性、歯牙美白効果、密着性に優れることを確認した。なお、「C成分の合計配合量」には、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液の溶媒としての水及び60%ソルビット水溶液の溶媒としての水を含む。香料組成は上記と同様である。
【0084】
〔実施例7〕
<膏体組成物の調製方法>
香料及びアスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウムを除く全原料を真空乳化攪拌装置(みづほ工業(株)製、PVQ−1D)に投入し、8kPaまで減圧して80℃で10分間混合した。1時間放冷し、内容物の温度が25℃以下に下がったことを確認した後、香料及びアスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウムを加え、再び8kPaまで減圧・混合して膏体組成物をなした。
【0085】
<シートの作製>
加熱したポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、厚さ10μm、東ソー(株)製、商品グレード212)を、ポリプロピレン不織布(ポリプロピレン、スパンボンド、目付40g/m2、表面エンボス加工、出光石油化学(株)製、商品グレード;出光RN2040)とレーヨン/ポリプロピレン不織布(レーヨン/ポリプロピレン=70/30、スパンレース、目付40g/m2、シンワ(株)製、商品グレード;7140−6)で挟んで熱融着させて厚さ0.5mmの3層不織布シートを作製した。この3層不織布シートのレーヨン/ポリプロピレン不織布面側と、フェイシングフィルム(ポリエチレンテレフタレート、片面シリコンコート、厚さ50μm、東レフィルム加工(株)製、商品グレード;セラピールBK(S)#50)のシリコンコート面の間に、トータルの厚みが1mmになるように延展機(花栄機械工業製、ロールサンドコーター)を用いて膏体組成物を塗膏し、15mm×60mmに裁断して口腔用貼付シートとした。
【0086】
<膏体組成物の組成>
アスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウム 0.5質量%
(試薬特級、和光純薬工業(株)製)
カラゲナン 2.0
(カッパ型/ラムダ型=6/4、カラギーナンK、CP−Kelco社製)
ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
(粘度2500mPa・s、HPC−H、日本曹達(株)製)
プロピレングリコール(蒸気圧1kPa) 20.0
水(蒸気圧3165kPa) 67.45
20%水酸化ナトリウム水溶液 2.0
塩化セチルピリジニウム 0.01
トラネキサム酸 0.03
トウキ軟エキス 0.01
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数20)
香料B 0.5
アルミニウムグリシネート 0.5
計 100.0質量%
【0087】
<試験の結果>
pH 8.7
B成分の合計配合量 7.0質量%
C成分の合計配合量 89.05質量%
変色 ◎
アスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウムの残存率 ◎
着色歯牙美白効果 ◎
密着性 ◎
香料Bの代りに香料A、C〜Iを用いても同様の結果が得られた。
【0088】
〔実施例8〕
<膏体組成物の調製方法>
下記に示す膏体組成物を、下記方法により調製した。
まず、1,3−ブチレングリコールとジプロピレングリコールの混合物にポリアクリル酸を投入して懸濁してから水を加えて1時間膨潤させた後、軟膏ヘラで攪拌しながら合成ヒドロタルサイトを加えて架橋させ、その後、その他の原料を順次混合した。次に、この混合物をニーダーに入れ、4kPaまで減圧し10分間混合して膏体組成物となした。
<テープの作製>
膏体組成物をポリエステル製テープ(厚さ0.05mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品グレードS)に、トータルの厚みが1mmになるように軟膏ヘラを用いて塗膏し、15mm×60mmに裁断して口腔用貼付テープとした。
【0089】
<膏体組成物の組成>
パルミチン酸アスコルビル(試薬、和光純薬工業(株)製)0.5質量%
ポリアクリル酸 7.0
(粘度30000mPa・s、ジュリマーAC−10H、日本純薬(株)製)
1,3−ブチレングリコール(蒸気圧108kPa) 23.0
ジプロピレングリコール(蒸気圧0kPa) 10.0
60%ソルビット水溶液(水の蒸気圧3165kPa) 20.0
キシリトール 3.0
水(蒸気圧3165kPa) 29.78
20%水酸化カリウム水溶液 2.0
酢酸−dl−α−トコフェロール 0.1
ε−アミノカプロン酸 0.02
酸化チタン 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数50)
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 0.2
l−メントール 0.1
香料C 0.1
合成ヒドロタルサイト(日本薬局方適合品) 0.2
計 100.0質量%
【0090】
<試験の結果>
pH 8.7
B成分の合計配合量 7.0質量%
C成分の合計配合量 72.38質量%
変色 ○
パルミチン酸アスコルビルの残存率 ○
着色歯牙美白効果 ○
密着性 ◎
香料Cの代りに香料A、B、D〜Iを用いても同様の結果が得られた。
【0091】
〔実施例9〕
<膏体組成物の調製>
下記に示す膏体組成物を下記方法により調製した。
まず、1,3−ブチレングリコールにカルボキシメチルセルロースナトリウムを投入して懸濁してから水を加えて1時間膨潤させた後、軟膏ヘラで攪拌しながらその他の原料を順次混合した。次に、この混合物をニーダーに入れ、4kPaまで減圧し10分間混合して膏体組成物となした。その10gを取り、フォームチューブ(包材構成:最外層よりポリエチレンテレフタレート25μm/アルミニウム箔20μm/ポリエチレンテレフタレート25μm/キャスティングポリプロピレン50μm、容量10mL、(株)カナエ製、商品名コスモパック)に充填した。
<貼付剤の作製>
ポリウレタンフィルム(シーダム(株)製、DUS2124−CDB、厚さ50μm)を8mm×60mmに裁断した。使用時に、このフィルムに上記膏体組成物を塗布して塗布面を歯グキに貼付した。
【0092】
<膏体組成物の組成>
ステアリン酸アスコルビル(試薬、東京化成(株)製) 0.5質量%
キサンタンガム 10.0
(平均分子量100万、エコーガム、大日本製薬(株)製)
1,3−ブチレングリコール 23.0
60%ソルビット液(水の蒸気圧3165kPa) 20.0
マルチトール 3.0
水(蒸気圧3165kPa) 38.68
20%水酸化ナトリウム水溶液 2.5
イソプロピルメチルフェノール 0.02
ミリスチン酸イソプロピル 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数50)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体 0.2
(プルロニックF−127、旭電化(株)製)
香料D 0.1
計 100.0質量%
【0093】
<試験の結果>
pH 9.0
B成分の合計配合量 10.0質量%
C成分の合計配合量 71.68質量%
変色 ○
ステアリン酸アスコルビルの残存率 ○
着色歯牙美白効果 ○
密着性 ◎
香料Dの代りに香料A〜C、E〜Iを用いても同様の結果が得られた。
【0094】
〔実施例10〕
<膏体組成物の調製方法>
下記に示す膏体組成物を下記方法により調製した。
まず、プロピレングリコールにカルボキシメチルセルロースナトリウムを投入して懸濁してから水を加えて1時間膨潤させた後、軟膏ヘラで攪拌しながらアルミニウムグリシネートを加えて架橋させ、その後、その他の原料を順次混合した。次に、この混合物をニーダーに入れ、4kPaまで減圧し10分間混合して膏体組成物となした。
<シートの作製>
加熱したポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、厚さ10μm、東ソー(株)製、商品グレード212)を、ポリプロピレン不織布(ポリプロピレン、スパンボンド、目付40g/m2、表面エンボス加工、出光石油化学(株)製、商品グレード;出光RN2040)とレーヨン/ポリプロピレン不織布(レーヨン/ポリプロピレン=70/30、スパンレース、目付40g/m2、シンワ(株)製、商品グレード;7140−6)で挟んで熱融着させて厚さ0.5mmの3層不織布シートを作製した。この3層不織布シートのレーヨン/ポリプロピレン不織布面側と、フェイシングフィルム(ポリエチレンテレフタレート、片面シリコンコート、厚さ50μm、東レフィルム加工(株)製、商品グレード;セラピールBK(S)#50)のシリコンコート面の間に、トータルの厚みが1mmになるように延展機(花栄機械工業製、ロールサンドコーター)を用いて膏体組成物を塗膏し、15mm×60mmに裁断して口腔用貼付シートとした。
【0095】
<膏体組成物の組成>
アスコルビン酸―2−リン酸エステルマグネシウム 0.5質量%
(生化学用、和光純薬工業(株)製)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 10.0
(粘度12mPa・s、エーテル化度0.91、CMC1220、ダイセル(株)製)
プロピレングリコール(蒸気圧1kPa) 20.0
水(蒸気圧3165kPa) 62.96
20%水酸化ナトリウム水溶液 2.3
フッ化ナトリウム 0.2
塩化セチルピリジニウム 0.01
トラネキサム酸 0.03
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
(エチレンオキサイド平均付加モル数20)
香料E 0.5
アルミニウムグリシネート 0.5
カオリン 1.0
計 100.0質量%
【0096】
<試験の結果>
pH 8.9
B成分の合計配合量 10.0質量%
C成分の合計配合量 84.80質量%
変色 ◎
アスコルビン酸リン酸エステル塩の残存率 ◎
着色歯牙美白効果 ◎
密着性 ◎
香料Eの代りに香料A〜D、F〜Iを用いても同様の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アスコルビン酸エステル及びその塩から選ばれる1種又は2種以上、(B)ゲル化剤、(C)蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaの水及び/又は有機溶剤を組成物全体の30.0〜99.0質量%、(D)アルカリ剤を含有し、pHが8.0〜9.5である膏体組成物と、この膏体組成物を歯牙、口腔粘膜、歯茎から選ばれる少なくとも一つの部位に貼り付けるための支持体とを含むことを特徴とする口腔用貼付剤製品。
【請求項2】
アスコルビン酸エステルが、アスコルビン酸リン酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の口腔用貼付剤製品。
【請求項3】
アスコルビン酸エステル塩が、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウムから選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の口腔用貼付剤製品。
【請求項4】
支持体が、合成繊維及び/又は天然繊維で構成される織布又は不織布、もしくは樹脂製フィルムであることを特徴とする請求項1,2又は3記載の口腔用貼付剤製品。

【公開番号】特開2007−308443(P2007−308443A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141277(P2006−141277)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】