説明

口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法

【課題】本発明の目的は、口部の内壁における着色をほぼ無色とする製品カテゴリーに対応し、かつ、炭素膜の物理化学的な安定性を有する口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器を提供することである。
【解決手段】本発明に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法は、プラスチック容器の内部空間に原料ガスを供給し、原料ガスをプラズマ化してプラスチック容器の内表面全体にプラズマCVD法によって炭素膜を成膜する炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法において、プラスチック容器の口部を通過する原料ガスのうち口部の中央側に主流を流し、口部の内表面側に分岐流を流し、かつ、数1によって求められるΔb値によって換算される分岐流による炭素膜の堆積量を、主流による炭素膜の堆積量の1/300〜1/2とし、口部の内表面部分のみを他の内表面部分と比べて極薄に炭素膜を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素膜をCVD(chemical vapor deposition)法によってプラスチック容器の内表面に成膜するための方法に関する。特に、口部の内壁に成膜された炭素膜が極薄である容器に関する。
【背景技術】
【0002】
密封容器、例えば飲料用容器には、壜、缶、プラスチック容器等の各種容器が知られている。近年、そのハンドリング性の良さ等の利便性の観点から缶、プラスチック容器が広く用いられるようになってきている。このうち、プラスチック容器は、臭いが収着しやすく、またガスバリア性が壜や缶と比較して劣るため、ビールや発泡酒等の炭酸飲料には用いることが難しかった。
【0003】
そこで、プラスチック容器における収着性やガスバリア性の問題点を解決すべく、硬質炭素膜(ダイヤモンドライクカーボン等)をコーティングする方法及び装置が開示されている。そのうち、例えば対象とする容器の外形とほぼ相似形の収容空間を有する外部電極と、容器の内側に容器の口部から挿入され、原料ガス導入管を兼ねた内部電極を有する装置を用いて、容器の内表面に硬質炭素膜をコーティングする方法が開示されている(例えば特許文献1又は2を参照。)。このような装置及び方法では、容器内に原料ガスとしてアセチレンガスを供給した状態で、外部電極に高周波電圧を印加する。このとき、原料ガスが両電極間に発生する高周波由来の電力によりプラズマ化し、発生したプラズマ中のイオンは外部電極の高周波由来の電位差(自己バイアス)に誘引され容器内壁に衝突し、膜が形成される。
【0004】
一般に飲料用のボトルは、胴部よりも口部が縮径されて細くなっているため、特許文献1又は2に開示された装置においては、プラズマ化された原料ガスがボトル肩部から口部にかけて収縮流れとなって排出される。この際、プラズマ中のイオンやラジカルなどの成膜活性がある原子・分子が集中する結果、ボトルの口部の内壁では、胴部寄りの肩部周辺と比較して着色が顕著に大きくなる。
【0005】
市場には硬質炭素膜を含むDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の炭素膜をはじめとするガスバリア膜を成膜したボトルの着色ができるだけ無色に近いほうが好まれる製品カテゴリーがある。そこで、着色を減らす目的で口部の内壁へのガスバリア膜のコーティングを行なわない方法の開示がある(例えば特許文献3を参照。)。特許文献3に記載された方法では、容器の口部の内径よりもわずかに小さな外径を有する筒状の物体を挿入し、成膜時のマスキング部材として利用する。これによって、容器の口部の内壁に全く成膜がなされないようにすることが可能となり、容器の美観の問題を解決するとしている。
【0006】
しかし、ガスバリア性を有するプラスチック容器を、ガスバリア膜を形成することで得ようとする場合、壁面の全面にくまなくガスバリア膜を形成する必要がある。なぜなら、ガスバリア膜に、面積率合計1%のピンホールやクラックなどの欠陥が存在すると、高いガスバリア特性が得られないことがわかっているからである(例えば特許文献4を参照。)。また、特許文献3に開示された方法では、容器の口部の内壁に全く成膜がなされないため、胴部付近と口部との着色度の差異が少なからず生じてしまう。
【0007】
そこで、本出願人によって、口部の内壁にガスバリア膜を成膜しつつ、胴部付近と口部との着色度の差異をなくし、着色を目立たせないようにさせる技術が開発されている(例えば、特許文献5を参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−226884号公報
【特許文献2】特開平8−53117号公報
【特許文献3】特開2002−53119号公報
【特許文献4】米国特許6720052号公報
【特許文献5】特開2006−321528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献5に開示された技術は、ガスバリア性、溶出防止性及び着色の目立ち防止を実現する技術であるが、その一方で、特許文献3で開示されたような、口部に成膜を全く行なわないことで、口部の内壁における着色を無色とする製品カテゴリーがあることも事実である。
【0010】
しかし、口部に成膜を全く行なわないこととすれば、炭素膜の密着性等の物理化学的な安定性が不十分となる場合があることがわかった。
【0011】
そこで本発明の目的は、口部の内壁における着色をほぼ無色とする製品カテゴリーに対応し、かつ、炭素膜の物理化学的な安定性を有する口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器を提供することである。ここで、口部の内壁に極薄炭素膜をコーティングすることで、特許文献3で開示された容器と比較して、炭素膜の物理化学的安定性に加えて、ガスバリア性、収着防止性及び溶出防止性で優れた容器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、口部に流れる原料ガスのうち内側を流速の大きい主流とし、外側を流速の小さい分岐流とする2層流とすることで、口部に極薄の炭素膜を成膜し、他の容器内表面には通常通りの膜厚の炭素膜を成膜できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法は、プラスチック容器の内部空間に原料ガスを供給し、該原料ガスをプラズマ化して前記プラスチック容器の内表面全体にプラズマCVD法によって炭素膜を成膜する炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法において、前記プラスチック容器の口部を容器外に向かって通過する前記原料ガスのうち口部の中央側に主流を流し、口部の内表両側に分岐流を流し、かつ、数1によって求められるΔb値によって換算される前記分岐流による前記炭素膜の堆積量を、前記主流による前記炭素膜の堆積量の1/300〜1/2とし、前記口部の内表面部分のみを他の内表面部分と比べて極薄に炭素膜を成膜したことを特徴する。
(数1)Δb値=JIS K 7105−1981に基づく着色度b*値(成膜後の口部で測定)−JIS K 7105−1981に基づく着色度b*値(成膜前の口部で測定)
なお、主流による前記炭素膜の堆積量は、主流のみを流した状態を経て測定すればよい。
【0013】
本発明に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法では、筒体を前記プラスチック容器の口部に挿入し、前記プラスチック容器の口部の内壁面に前記筒体を接近させた状態で配置し、前記口部と前記筒体とに挟まれた空間に流れる原料ガスを前記分岐流とし、前記筒体の中を流れる原料ガスを前記主流とすることが好ましい。筒体を配置することによって口部を通過する原料ガスについて主流と分岐流に分けることが容易となる。
【0014】
本発明に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法では、前記口部における炭素膜を、前記Δb値が0.1〜2.0となる膜厚に成膜することが好ましい。Δb値が0.1〜2.0となる膜厚とすると、口部内表面に形成された炭素膜の着色がほぼ無色であり、かつ、極薄の膜となっている。
【0015】
本発明に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法では、前記口部と前記筒体との隙間を2.5〜3.2mmとすることが好ましい。このような隙間としたとき、原料ガスがよどみとならずに分岐流となり、かつ、主流とは明らかにガス流速が異なるため、口部の内表面に極薄膜を形成することができる。
【0016】
本発明に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法では、前記原料ガスは、マイクロ波又は高周波によりプラズマ化される場合が含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、口部の内壁における着色をほぼ無色とする製品カテゴリーに対応でき、このとき口部の内表面に極薄の炭素膜を形成しているため、容器本体の内表面に形成した通常の膜厚を有する炭素膜について物理化学的な安定性を向上させることができる。口部の内壁に極薄炭素膜をコーティングするため、無コーティングと比較して極薄炭素膜によってガスバリア性、収着防止性及び溶出防止性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。図1〜図3を参照しながら本実施形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置を説明する。なお、共通の部位・部品には同一符号を付した。
【0019】
(第1形態)
まず、高周波プラズマCVD法により炭素膜を成膜することを特徴とする第1形態に係る成膜装置及び口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法について説明する。第1形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法は、プラスチック容器の内部空間に原料ガスを供給し、原料ガスを高周波によってプラズマ化してプラスチック容器の内表面全体にプラズマCVD法によって炭素膜を成膜する炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法において、前記プラスチック容器の口部を容器外に向かって通過する前記原料ガスのうち口部の中央側に主流を流し、口部の内表両側に分岐流を流し、かつ、数1によって求められるΔb値によって換算される分岐流による炭素膜の堆積量を、主流による炭素膜の堆積量の1/300〜1/2とし、口部の内表面部分のみを他の内表面部分と比べて極薄に炭素膜を成膜する。
【0020】
第1形態に係る製造方法は、例えば、図1に示す高周波プラズマCVD成膜装置によって行なうことができる。図1は第1形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置の一形態を示す概略構成図である。図1において真空チャンバ6については容器の鉛直方向の断面概略図である。図1に示すように口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置100は、プラスチック容器7を収容する真空チャンバ6と、プラスチック容器7の内部に挿脱可能に配置され、プラスチック容器7の内部へ原料ガスを供給する原料ガス供給管9と、プラスチック容器7の内部に供給された原料ガスをプラズマ化させるプラズマ発生手段40と、真空チャンバ6を真空引きする排気ポンプ22と、プラスチック容器7の口部7bの内壁面に接近させた状態で口部7bの開口部7aから挿脱可能に配置された筒体26と、を有する。ここで、プラズマ発生手段40は、少なくとも、プラスチック容器7の外側に配置された外部電極3と、外部電極3に高周波を供給する高周波供給電源12とを有している。このとき、原料ガス供給管9が外部電極3の対向電極である内部電極を兼ねている。この製造装置100は、プラスチック容器の内表面にガスバリア薄膜を成膜する成膜装置であり、炭素膜等のCVD膜をコーティングしたプラスチック容器が得られる。
【0021】
真空チャンバ6は、プラスチック容器7の口部7bを除いて、プラスチック容器7を収容する外部電極3と、口部7bの外周を取り囲んだ絶縁部材4と、絶縁部材4の上部に配置され、真空チャンバ6を密封する蓋体5とからなる。それぞれの部材はO−リング8などで気密にシールされている。第1形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置は減圧プラズマCVD法により成膜を行なう場合を含む。この場合、真空チャンバ6は減圧に耐える程度の剛性を必要とする。また、容器の変形を防止するために真空チャンバ6内であってプラスチック容器7の外部も真空引きすることが望ましい。
【0022】
外部電極3は、プラスチック容器7の外形にほぼ接触するような内形を有している。高周波を外部電極3に供給したときにプラスチック容器7の壁面に自己バイアス電圧を生じさせるためである。外部電極3は、上部外部電極1と下部外部電極2とからなり、分割することでプラスチック容器7を外部電極3の収容空間に収容可能としている。外部電極3を縦割構造としても良い。上部外部電極1と下部外部電極2とはO−リング8などで気密にシールされている。
【0023】
図1の製造装置100では、口部7bを除いてプラスチック容器7を外部電極3に収容する構造とし、口部7bの外周には口部7bを取り囲んだ状態で絶縁部材4を配置している。絶縁部材4は外部電極3の上部にO−リング8などを介して配置されている。絶縁部材4を配置することで、口部7bにかかる自己バイアス電圧を下げ、口部7b周辺でのプラズマの集中、特に着色の集中を低減させることができる。なお、口部7bの外周に絶縁部材4を配置せずに、外部電極3を、口部7bを含めて収容可能な構造としても良い。
【0024】
絶縁部材4は、フッ化エチレン樹脂等の絶縁体からなるブロックに、口部7bを収容できる大きさのほぼ円筒形の貫通孔17を設けたものとすることが好ましい。
【0025】
蓋体5は、絶縁体で形成することとしても良いが、通常、装置の作製上の観点から金属部材で形成される。図1の製造装置では、蓋体5の内部に、貫通孔17と連通する空間25が設けられている。この空間25は、装置の作製上の観点から設けられたものであり、空間25の大きさによって本発明は制限されない。製造装置100では、空間25は排気ガス経路を兼ねている。
【0026】
高周波供給電源12は、マッチングボックス13を介して外部電極3に接続されており、高周波を外部電極3に供給する。高周波供給電源12の出力側にマッチングボックス13が接続される。なお、高周波供給電源12は接地されている。高周波供給電源12は、グランド電位との間に高周波電圧を発生させ、これにより外部電極3と内部電極を兼ねる原料ガス供給管9との間に高周波電圧が印加される。原料ガス供給管9は導電性金属で形成され、接地されていることが好ましい。これにより、プラスチック容器7内で原料ガスをプラズマ化させる。高周波供給電源の周波数は、100kHz〜1000MHzであるが、例えば、工業用周波数である13.56MHzのものを使用する。
【0027】
空間25には排気系統23が接続されており、真空チャンバ6の内部の内部ガスを排気するために排気ポンプ22につながっている。真空チャンバ6と排気ポンプ22との間に真空バルブ21を設け、排気のオン‐オフを行なう。排気ポンプ22の排気口はダクト(不図示)に接続されている。このように真空バルブ21及び排気ポンプ22によって、排気系統23が構成されている。
【0028】
原料ガス供給手段30は、ガスボンベ等の原料ガス発生源16とガス流量を制御するマスフローコントローラー15を少なくとも有する。原料ガス発生源16とマスフローコントローラー15と真空チャンバ6をつなぐ配管が真空チャンバ系外の原料ガス供給経路となる。真空チャンバ6まで送られた原料ガスは、原料ガス供給管9を通ることで、蓋体5の内部に設けられた空間25、さらに空間25と連通した貫通孔17、さらにプラスチック容器7の開口部分7aからその内部へと送られる。原料ガス供給管9は、真空チャンバ系内の原料ガス供給経路となる。原料ガス供給管9の先端には吹き出し口9aが設けられている。そして吹き出し口9aから、原料ガスが吹き出す。
【0029】
図1では、プラスチック容器7の胴部に原料ガス供給管9の先端が位置する場合を示したが、プラスチック容器7の底部、或いは、プラスチック容器7の肩部に、原料ガス供給管9の先端が位置しても良い。なお、プラスチック容器7の形状によって、原料ガス供給管9の先端の吹き出し口9aの位置を調整する場合もある。なお、原料ガス供給管9は導電性金属で形成し、接地することが好ましい。
【0030】
第1形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法では、プラスチック容器7の口部7bを通過する原料ガス10のうち口部7bの中央側に主流10aを流し、口部7bの内表面側に分岐流10bを流す。ここで、口部7bを通過する原料ガス10の流れ方向は、容器の内部空間から容器外に向かっての方向である。主流10aと分岐流10bとに分けて原料ガスを流す手段としては、例えば、図1に示すように、筒体26をプラスチック容器7の口部7bに挿入し、プラスチック容器7の口部7bの内壁面に筒体26を接近させた状態(非接触とする)で配置し、口部7bと筒体26とに挟まれた空間に流れる原料ガスを分岐流10bとする。そして、筒体26の中を流れる原料ガスを主流10aとする。
【0031】
筒体26は、口部7bの内表面と等間隔の隙間を設けるため、円筒形状とすることが好ましい。筒体26は、孔を有さず、平坦な曲面の側面を有することが好ましい。分岐流及び主流の流れがそれぞれスムーズになると共に、孔が無いため、清掃等のメンテナンスが容易となる。なお、本発明では細孔を有する網目体(メッシュ)や細孔を施した板状で筒体26が形成されている場合、製造中のダストによって細孔が塞がる場合には実質的には孔を有さない筒体に含まれるとする。また、蓋体5における排気系統23の排気口の位置によって、原料ガスの流れが偏る場合がある。このような原料ガスの偏りを補正するために、筒体26を扁平円筒形としてもよい。この場合においても、口部7bの内壁面に筒体26を非接触で配置する。
【0032】
また、筒体26の側面と口部7bの内壁面との間隔Lを2.5〜3.2mmであることが好ましい。間隔Lを2.5〜3.2mmとすれば、原料ガス流量や高周波出力やマイクロ波出力の大小に影響を受けにくい。この間隔Lが2.5mm未満であると、筒体26の側面と口部7bの内壁面とで挟まれた隙間空間に流れる原料ガスの分岐流10bがよどみ、口部7bの内表面に炭素膜が実質的に成膜されなくなる。この間隔Lが3.2mmを超えると、口部7bの内表面において急激に厚い炭素膜が得られ、着色が肉眼で認識されやすくなる。なお、筒体26を扁平円筒形とする場合は、筒体26の側面と口部7bの内壁面との隙間の何れかの箇所においてその間隔Lが2.5〜3.2mmとなるようにする。すなわち、扁平度が大きい場合は、隙間の一部分の間隔Lを2.5〜3.2mmの範囲から外してもよい。
【0033】
筒体26は、耐久性の観点から、例えば金属製筒体でも良いが、プラスチック樹脂や紙等の絶縁体で形成されていることが好ましい。例えばフッ化エチレン樹脂等の耐熱プラスチックフィルムを筒体に形成しても良い。筒体26が絶縁体で形成されていることで、異常放電を抑制できる。筒体26の長さは、プラスチック容器7の口部7bの高さと同じかやや大きいことが必要である。例えば、筒体26の上端は、口部7bの開口部7aよりも0〜2cm上方の範囲に位置することが好ましく、筒体26の下端は、口部7bの下端(サポートリングの位置)と同じかそれよりも1〜2cm下方の範囲に位置することが好ましい。
【0034】
筒体26の固定位置は、筒体26の側面が口部7bの内壁に非接触で、且つ、原料ガス供給管9に、筒体26の主軸と原料ガス供給管9の主軸とがほぼ一致する位置で固定されることが好ましい。本発明は筒体26の固定方法に特に制限されないが、筒体26の固定方法としては、例えば、筒体26の主軸に向かって筒体の側面内壁から支持棒を伸ばし、その支持棒を原料ガス供給管9の側面に、例えば溶接等の接合方法により固定する。あるいは、筒体26の主軸に向かって筒体の側面内壁から支持棒を伸ばし、その支持棒に主軸と同一円心を有するリングを固定し、そのリングを原料ガス供給管9にはめ込んで固定しても良い。あるいは、原料ガス供給管9にテーパ状の留具を固定し、その留具の上に筒体26を載せることで固定しても良い。さらに、原料ガス供給管9と筒体26とをネジ止めにより固定しても良い。
【0035】
分岐流10aを作り出す方法としては、上記の筒体26のバリエーションとして、口部7bの内側、あるいは下方に、上方に向かって先細りする円錐状筒体を設置したり、原料ガス供給管9を二重構造とし、主流10aを当該二重構造の内側に作り出すこと等がある。口部7bが相対的に広口の場合には、口部7b下方に円環状のガス流れの妨害板を設置し、口部7bの中心側の排気を内壁側よりもスムーズにすることでも可能である。いずれの場合も、口部7bの内表面のガス流速が相対的に遅くなるような局所的な排気抵抗を設けることで、口部7bの内表面に所望の成膜が進行するようにする。
【0036】
本発明に係る容器とは、蓋若しくは栓若しくはシールして使用する容器、またはそれらを使用せず開口状態で使用する容器を含む。開口部の大きさは内容物に応じて決める。プラスチック容器は、剛性を適度に有する所定の肉厚を有するプラスチック容器と剛性を有さないシート材により形成されたプラスチック容器を含む。本発明に係るプラスチック容器の充填物は、炭酸飲料若しくは果汁飲料若しくは清涼飲料等の飲料を挙げることができる。また、リターナブル容器或いはワンウェイ容器のどちらであっても良い。
【0037】
本発明のプラスチック容器7を成形する際に使用する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。
【0038】
本発明における炭素膜とは、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜、Si含有DLC膜等のガスバリア薄膜を言う。原料ガス発生源16から発生させる原料ガスは、上記薄膜の構成元素を含む揮発性ガスが選択される。炭素膜を形成する際の原料ガスは公知公用の揮発性原料ガスが使用できる。
【0039】
例えばDLC膜を成膜する場合、原料ガスとしては常温で気体又は液体の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、含酸素炭化水素類、含窒素炭化水素類などが使用される。特に炭素数が6以上のベンゼン、トルエン、o‐キシレン、m‐キシレン、p‐キシレン、シクロヘキサン等が望ましい。脂肪族炭化水素類としては、エチレン系炭化水素又はアセチレン系炭化水素が例示される。これらの原料は、単独で用いても良いが、2種以上の混合ガスとして使用するようにしても良い。さらにこれらのガスをアルゴンやヘリウムの様な希ガスで希釈して用いる様にしても良い。また、ケイ素含有DLC膜を成膜する場合には、Si含有炭化水素系ガスを使用する。例えば、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これらの材料以外にも、アミノシラン、シラザンなども用いられる。
【0040】
本発明におけるDLC膜とは、i−カーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜(a−CH)ともよばれる炭素膜のことでsp結合を含んでいるアモルファスな炭素膜のことをいう。DLC膜は、硬質から軟質(ポリマーライク)までの膜質があり水素含有量は、0atom%から70atom%くらいまでの範囲がある。
【0041】
また、本実施の形態では、口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置で成膜する薄膜としてDLC膜を挙げているがSi含有DLC膜や他の薄膜を成膜する際に上記製造装置を用いることも可能である。
【0042】
次に、図1を参照しながら口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置100を用いてプラスチック容器7の内表面にDLC膜を形成する場合の手順について説明する。プラスチック容器7は丸型500mlのPETボトルとする。容器壁の肉厚は約0.3mmとする。
【0043】
(口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置への容器の装着)
まず、ベント(不図示)を開いて真空チャンバ6内を大気開放する。上部外部電極1から下部外部電極2を離した後、上部外部電極1の下方からプラスチック容器7を挿入し、再び、上部外部電極1に下部外部電極2を密接させる。このとき、筒体26をプラスチック容器7の口部7bに挿入して、プラスチック容器7の口部7bの内壁面に筒体26を接近させた状態(ただし非接触とする)で配置する。以上の操作により、真空チャンバ6にプラスチック容器7が収容された状態となる。このとき、プラスチック容器7の開口部7aに原料ガス供給管9が挿入された状態となっている。
【0044】
(減圧操作)
次いでベントを閉じたのち、排気ポンプ22を作動させ、真空バルブ21を開とすることにより、真空チャンバ6内の空気が排気される。そして真空チャンバ6内が必要な圧力、例えば5Paに到達するまで減圧される。これは、5Paを超える真空度で良いとすると容器内部ガスの不純物が多くなり過ぎるためである。
【0045】
(原料ガスの導入)
その後、原料ガス発生源16からマスフローコントローラー15によって流量制御されて送られた原料ガス(例えば、アセチレンガス)をプラスチック容器7の内部に向けて吹き出し口9aから吹き出させる。この原料ガスの供給量は、例えば500ml容量の容器を用いる場合、20〜200sccmが好ましい。原料ガスの濃度が一定となり、制御されたガス流量と排気能力のバランスによって所定の成膜圧力、例えば5〜25Paで安定させる。プラスチック容器7の内部では、吹き出し口9aを起点として原料ガスの流れ10が形成される。そして、口部7bを通過する際に、原料ガスの流れ10が主流7aと分岐流7bに別れ、その後、原料ガスは空間25に排出され、さらに排気ポンプ22で排気される。
【0046】
(プラズマCVD成膜)
高周波供給電源12を動作させることによりマッチングボックス13を介してステンレスで作製された原料ガス供給管9と外部電極3との間に高周波電圧が印加され、プラスチック容器7内に原料ガス系プラズマが発生する。このとき、マッチングボックス13は、原料ガス供給管9と外部電極3のインピーダンスに、インダクタンスL、キャパシタンスCによって合わせている。これによって、プラスチック容器7の内表面にDLC膜が形成される。なお、高周波供給電源12の出力(例えば13.56MHz)は、500ml容器の場合、おおよそ200〜1000Wである。
【0047】
このプラスチック容器7の内表面におけるDLC膜の形成は、高周波プラズマCVD法によって行われる。すなわち、高周波電力の印加により容器壁面に自己バイアスが印加され、プラズマ化された原料ガスイオンが自己バイアスによる電位差に応じて加速され容器内表面に堆積されて、DLC膜が成膜される。成膜時間は数秒と短いものとなる。筒体26をプラスチック容器7の口部7bの内壁面に隣接して配置することによって、口部7bを容器外に向かって通過する原料ガスの流れ10が主流10aと分岐流10bとに分かれる。このとき、分岐流10bのガス流速を主流10aのガス流速に比べて小さくすることによって、筒体26を配置せずに原料ガスを流した場合(この場合、主流のみを流したことに相当する)と比較して、口部7bの内表面に成膜される炭素膜の堆積量を1/300〜1/2とする。そして、口部の内表面部分以外の他の内表面部分(例えば図2に示すような底部、胴部、肩部及び首部。)には通常の膜厚の炭素膜を成膜し、口部の内表面部分のみは他の内表面部分と比べて極薄に炭素膜を成膜する。この工程を経てプラスチック容器7の内表面には緻密なDLC膜が形成され、口部7bの内表面には極薄膜の炭素膜が堆積する。なお、原料ガスの流速と堆積する炭素膜の膜厚は、増減は一致するものの、単純な正比例関係でない特異な関係にあることを、発明者らの鋭意努力よって見出した。このとき、口部7bにおける炭素膜を、Δb値が0.1〜2.0となる膜厚に成膜することが好ましい。口部7bにおいて極薄の炭素膜が堆積しており、肉眼でほぼ無色となっている。このため、口部の内壁における着色をほぼ無色とする製品カテゴリーに対応できる。そして、口部の内表面に極薄の炭素膜を形成しているため(すなわち、口部の上端7aまで炭素膜が成膜されているため)、容器本体の内表面に形成した通常の膜厚を有する炭素膜について物理化学的な安定性を向上させることができる。また、口部の内壁に極薄炭素膜をコーティングするため、プラスチック容器7の内表面の全面に炭素膜がコーティングされてなることとなり、口部内表面の無コーティングのプラスチック容器と比較して、口部の極薄炭素膜によってガスバリア性、収着防止性及び溶出防止性が優れる。なお、口部の内表面部分以外の他の内表面部分の炭素膜のΔb値は、例えば1.6〜10を示す。
【0048】
本発明者らの測定に拠れば、Δb値が0.1〜2.0のとき、炭素膜の膜厚は0.3〜6nmである。すなわち、Δb値が0.1増加すると、膜厚が0.3nm増加する。なお、口部の内表面部分以外の他の内表面部分の炭素膜の膜厚は、例えば5〜40nmとすることが好ましい。
【0049】
(成膜の終了)
高周波供給電源12からの高周波出力を停止し、さらに原料ガスの供給を停止する。この後、真空チャンバ6内の残留ガスを排気ポンプ22によって排気する。その後、真空バルブ21を閉じ、排気ポンプ22を停止する。この後、ベント(不図示)を開いて真空チャンバ6内を大気開放し、成膜済みのプラスチック容器7を取り出す。新たなプラスチック容器7に対して前述した成膜方法を繰り返すことにより、次のプラスチック容器内にDLC膜が成膜される。
【0050】
(第2形態)
次に、マイクロ波プラズマCVD法によりガスバリア成膜することを特徴とする第2形態に係る成膜装置及び口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法について説明する。第2形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法は、プラスチック容器の内部空間に原料ガスを供給し、原料ガスをマイクロ波によってプラズマ化してプラスチック容器の内表面全体にプラズマCVD法によって炭素膜を成膜する炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法において、数1によって求められるΔb値によって換算される分岐流による炭素膜の堆積量を、主流による炭素膜の堆積量の1/300〜1/2とし、口部の内表面部分のみを他の内表面部分と比べて極薄に炭素膜を成膜する。
【0051】
第2形態に係る製造方法は、例えば、図3に示すマイクロ波プラズマCVD成膜装置によって行なうことができる。図3は第2形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置の一形態を示す概略構成図である。図3において真空チャンバ60については容器の鉛直方向の断面概略図である。図3に示すように口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置200は、プラスチック容器7を収容する真空チャンバ60と、プラスチック容器7の内部に挿脱可能に配置され、プラスチック容器7の内部へ原料ガスを供給する原料ガス供給管9と、プラスチック容器7の内部に供給された原料ガスをプラズマ化させるプラズマ発生手段(55〜59)と、真空チャンバ60を真空引きする排気ポンプ22と、プラスチック容器7の口部7bの内壁面に接近させた状態で口部7bの開口部7aから挿脱可能に配置された筒体26と、を有する。製造装置200において、プラズマ発生手段(55〜59)は、少なくとも、真空チャンバ60の内部にマイクロ波を供給するマイクロ波供給電源56を有する。図3に示した製造装置200は、マイクロ波を印加することによって、プラスチック容器7の内部の原料ガスをプラズマ化する装置である。図1に示した製造装置100との差異を中心に説明する。
【0052】
プラスチック容器の製造装置200では、絶縁部材4の下に外部電極を設ける代わりに下部チャンバ51を設ける。下部チャンバ51内には、マイクロ波を透過させる壁材、例えば石英管52が配置されていて、さらにその内部にプラスチック容器7が配置されている。下部チャンバ51には、適宜分割箇所を設けても良く、分割させたときに、その内部空間にプラスチック容器7と石英管52を配置する。また、プラスチック容器7が減圧により潰されることを防止するために、石英管52の内部は減圧雰囲気とすることができるように真空バルブ53を介して排気ポンプ54が接続されている。排気ポンプ54の排気口はダクトに接続されている。下部チャンバ51の側壁には、管55が接続されており、管55の端にはチャンバの内部にマイクロ波を供給するマイクロ波発生器を含むマイクロ波供給電源56が配置されている。なお、マイクロ波発生器と電源は別体としても良い。管55の中には、プランジャスクルリュー57が設けられている。下部チャンバ51の側壁に、管55と対向する位置に管58が接続されており、管58の端には調整プランジャ59が設けられている。プランジャスクルリュー57と調整プランジャ59によって、マイクロ波が反射せずに原料ガスをプラズマ化するように調整する。
【0053】
筒体26、排気系統23、プラスチック容器7、原料ガス供給手段30、絶縁部材4及び蓋体5は、製造装置100の場合と同様である。なお、原料ガス供給管9は、内部電極である必要性はないため、絶縁体で形成しても良い。
【0054】
図3に示した製造装置200を用いた時の成膜手順は、第1形態の製造装置100を用いた場合の成膜手順と同様の手順をとる。すなわち、口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置への容器の装着工程、減圧操作工程、原料ガス導入工程、プラズマCVD成膜工程、成膜の終了工程を順次経る。ここで、減圧操作工程における真空チャンバ6内が必要な圧力は、例えば5Paまで到達させる。原料ガス導入工程における所定の成膜圧力は、例えば7〜25Paで安定させる。プラズマ成膜工程におけるマイクロ波の出力は400W、周波数2.45GHzで、プランジャスクルリュー57と調整プランジャ59によって、マイクロ波が反射せずに原料ガスをプラズマ化するように調整する。プラズマ成膜工程においては、マイクロ波によって原料ガスがプラズマ化されるが、自己バイアス電圧がわずかに発生する状態でDLC膜が成膜される。マイクロ波によりプラズマを発生させる第2形態の製造装置200においても、高周波によりプラズマを発生させる第1形態の製造装置100と同様に、筒体26を口部7bに内壁面にほぼ接するように配置(ただし接触はさせない)させることで同様に口部7bに極薄の炭素膜を成膜できる。DLC膜がガスバリア薄膜として成膜されているので、口部におけるガスバリア性の低下が生じにくい。成膜の終了工程においては、第1形態の製造装置100の場合と同様に、真空チャンバ60内を大気開放した後、プラスチック容器7を取り出す。DLC膜の膜厚は胴部平均で5〜40nmとなるように形成する。
【実施例】
【0055】
図1に示した口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置100を用いて第1形態に係る製造方法を行なった。例えば、プラスチック容器として、容量500ml、容器の高さ200mm、容器胴部径67mm、口部開口部内径21.74mm、口部開口部外径24.94mm、口部の高さ21.0mm、容器胴部肉厚0.3mm、樹脂量30g/本のPET(ポリエチレンテレフタレート)容器を使用した。
【0056】
(評価方法)
(1)膜厚
DLCの膜厚は、KLA−Tencor社製α‐Step IQを用いて測定した。
(2)着色度
プラスチック容器の色の評価は着色度b*値を指標とした。b*値は、JIS K 7105−1981の色差であり、三刺激値X,Y,Zから式(数2)で求まる。
【数2】

日立製U-3500形自記分光光度計に同社製60Φ積分球付属装置(赤外可視近赤外用)を取り付けたものを用いた。検知器としては、超高感度光電子増倍管(R928:紫外可視用)と冷却型PbS(近赤外域用)を用いている。測定波長は、240nmから840nmの範囲で透過率を測定した。まず、成膜前の口部を測定し、基準値とし、次に成膜後の口部を測定し、数1によって、炭素膜のみに相当するΔb値を求めた。
(数1)Δb値=JIS K 7105−1981に基づく着色度b*値(成膜後の口部で測定)−JIS K 7105−1981に基づく着色度b*値(成膜前の口部で測定)
なお、本発明におけるΔb値と目視による相関はおおよそ表1に示す通りである。
【表1】

未処理のPET容器のΔb値は0であり、Δb値が0.1〜2.0であれば、炭素膜は堆積しているものの無色透明であるといえる。Δb値が4以下のDLC膜は肉眼では色が判別できる程度の極めて薄い着色となる。
(3)酸素透過度
この容器の酸素透過度は、Modern Control社製 Oxtran 2/20を用いて、23℃、90%RHの条件にて測定し、窒素ガス置換開始から20時間後の測定値を記載した。
(4)収着防止性
d−リモネン100ppm、シュガーエステル0.3%からなるモデル溶液を実施例で使用する前記PET容器に500ml充填(ヘッドスペースあり)し、20℃で1週間、
蓋をして保管した。保管後は60℃の蒸留水で洗浄後、乾燥させ、PET容器の口部から底部までを含む短冊状のサンプル約3gを切り出し、ガスクロマトグラフィー専用のシリンジに収めた。当該シリンジをガスクロマトグラフィー装置(島津製作所社製GC−2010)に供し、シリンジ内のリモネン含有量を定量した。結果は、PET樹脂量でボトル1本あたり、またモデル溶液中の収着物質1ppmあたりの単位、ng/本/ppmで表示し、収着防止性の指標とした。
【0057】
(試験1)
真空チャンバ内の到達真空度を2.2Paとした後、原料ガスとしてアセチレンを80sccmで原料ガス供給管9の吹き出し口9aからPET容器の内部に吹き出させた。ガス吹き出し口のPET容器の底からの高さを30mmとした。このとき圧力は18.2Paで安定させた。13.56MHzの高周波を出力1000W、成膜時間を2秒間とした。成膜圧力を6.6Paとした。筒体26は配置しなかった。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は25nm、口部の内壁での膜厚は60nmであった。結果を表2にまとめた。
【0058】
(試験2)
PET容器の口部の内壁面にポリイミド製耐熱テープを貼り付けた。このPET容器に試験1と同条件でDLC膜の成膜を行なった。なお、筒体26は配置しなかった。成膜した後、耐熱テープを剥がした。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は25nm、口部の内壁での膜厚は0nmであった。結果を表2にまとめた。
【0059】
(試験3)
樹脂製筒体を準備した。筒体の長さは4cmとした。筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lを0.1mmとした。即ち、口部の内径は筒体の外径よりも0.2mm大きくなるように設定した。筒体の上端が口部の上端から10mm上方に突出し、また、筒体の下端が口部の下端から0mm下方に位置するように筒体を配置した。そして、真空チャンバ内の到達真空度を2.2Paとした後、原料ガスとしてアセチレンを80sccmで原料ガス供給管9の吹き出し口9aからPET容器の内部に吹き出させた。ガス吹き出し口のPET容器の底からの高さを30mmとした。このとき圧力は18.2Paで安定させた。13.56MHzの高周波を出力1000W、成膜時間を2秒間とした。成膜圧力を6.6Paとした。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は25nm、口部の内壁での膜厚は0nm(測定限界以下)であった。結果を表2にまとめた。
【0060】
(試験4〜17)
筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lを表2に示した距離となる樹脂製筒体を準備した以外は試験3と同様に成膜を行なった。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚と口部の内壁での膜厚を表2に示した。また、試験3〜17について筒体と口部内壁との距離LとΔb値との関係を図4に示した。
【0061】
【表2】

【0062】
(試験18)
真空チャンバ内の到達真空度を2.2Paとした後、原料ガスとしてアセチレンを120sccmで原料ガス供給管9の吹き出し口9aからPET容器の内部に吹き出させた。ガス吹き出し口のPET容器の底からの高さを30mmとした。このとき圧力は22.4Paで安定させた。13.56MHzの高周波を出力1000W、成膜時間を2秒間とした。成膜圧力を8.9Paとした。筒体26は配置しなかった。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は28nm、口部の内壁での膜厚は87nmであった。結果を表3にまとめた。
【0063】
(試験19)
PET容器の口部の内壁面にポリイミド製耐熱テープを貼り付けた。この操作により、筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lが0の場合を再現した。このPET容器に試験1と同条件でDLC膜の成膜を行なった。なお、筒体26は配置しなかった。成膜した後、耐熱テープを剥がした。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は28nm、口部の内壁での膜厚は0nmであった。結果を表3にまとめた。
【0064】
(試験20)
樹脂製筒体を準備した。筒体の長さは4cmとした。筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lを0.75mmとした。即ち、口部の内径は筒体の外径よりも1.5mm大きくなるように設定した。筒体の上端が口部の上端から10mm上方に突出し、また、筒体の下端が口部の下端から0mm下方に位置するように筒体を配置した。そして、真空チャンバ内の到達真空度を2.2Paとした後、原料ガスとしてアセチレンを120sccmで原料ガス供給管9の吹き出し口9aからPET容器の内部に吹き出させた。ガス吹き出し口のPET容器の底からの高さを30mmとした。このとき圧力は18.2Paで安定させた。13.56MHzの高周波を出力1000W、成膜時間を2秒間とした。成膜圧力を6.6Paとした。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は28nm、口部の内壁での膜厚は0nm(測定限界以下)であった。結果を表3にまとめた。
【0065】
(試験21〜31)
筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lを表3に示した距離となる樹脂製筒体を準備した以外は試験3と同様に成膜を行なった。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚と口部の内壁での膜厚を表3に示した。また、試験20〜31について筒体と口部内壁との距離LとΔb値との関係を図5に示した。
【0066】
【表3】

【0067】
(試験32)
真空チャンバ内の到達真空度を2.2Paとした後、原料ガスとしてアセチレンを40sccmで原料ガス供給管9の吹き出し口9aからPET容器の内部に吹き出させた。ガス吹き出し口のPET容器の底からの高さを30mmとした。このとき圧力は11.0Paで安定させた。13.56MHzの高周波を出力1000W、成膜時間を4秒間とした。成膜圧力を5.3Paとした。筒体26は配置しなかった。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は20nm、口部の内壁での膜厚は2nmであった。結果を表4にまとめた。
【0068】
(試験33)
PET容器の口部の内壁面にポリイミド製耐熱テープを貼り付けた。このPET容器に試験1と同条件でDLC膜の成膜を行なった。なお、筒体26は配置しなかった。成膜した後、耐熱テープを剥がした。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は20nm、口部の内壁での膜厚は0nmであった。結果を表4にまとめた。
【0069】
(試験34)
樹脂製筒体を準備した。筒体の長さは4cmとした。筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lを0.75mmとした。即ち、口部の内径は筒体の外径よりも1.5mm大きくなるように設定した。筒体の上端が口部の上端から10mm上方に突出し、また、筒体の下端が口部の下端から0mm下方に位置するように筒体を配置した。そして、真空チャンバ内の到達真空度を2.2Paとした後、原料ガスとしてアセチレンを40sccmで原料ガス供給管9の吹き出し口9aからPET容器の内部に吹き出させた。ガス吹き出し口のPET容器の底からの高さを30mmとした。このとき圧力は11.0Paで安定させた。13.56MHzの高周波を出力1000W、成膜時間を4秒間とした。成膜圧力を5.3Paとした。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は20nm、口部の内壁での膜厚は0nm(測定限界以下)であった。結果を表4にまとめた。
【0070】
(試験35〜45)
筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lを表4に示した距離となる樹脂製筒体を準備した以外は試験3と同様に成膜を行なった。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚と口部の内壁での膜厚を表4に示した。また、試験34〜45について筒体と口部内壁との距離LとΔb値との関係を図6に示した。
【0071】
【表4】

【0072】
(試験46)
真空チャンバ内の到達真空度を2.2Paとした後、原料ガスとしてアセチレンを80sccmで原料ガス供給管9の吹き出し口9aからPET容器の内部に吹き出させた。ガス吹き出し口のPET容器の底からの高さを30mmとした。このとき圧力は7.1Paで安定させた。13.56MHzの高周波を出力600W、成膜時間を4秒間とした。成膜圧力を6.6Paとした。筒体26は配置しなかった。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は20nm、口部の内壁での膜厚は16nmであった。結果を表5にまとめた。
【0073】
(試験47)
PET容器の口部の内壁面にポリイミド製耐熱テープを貼り付けた。このPET容器に試験1と同条件でDLC膜の成膜を行なった。なお、筒体26は配置しなかった。成膜した後、耐熱テープを剥がした。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は20nm、口部の内壁での膜厚は0nmであった。結果を表5にまとめた。
【0074】
(試験48)
樹脂製筒体を準備した。筒体の長さは4cmとした。筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lを0.75mmとした。即ち、口部の内径は筒体の外径よりも1.5mm大きくなるように設定した。筒体の上端が口部の上端から10mm上方に突出し、また、筒体の下端が口部の下端から0mm下方に位置するように筒体を配置した。そして、真空チャンバ内の到達真空度を2.2Paとした後、原料ガスとしてアセチレンを80sccmで原料ガス供給管9の吹き出し口9aからPET容器の内部に吹き出させた。ガス吹き出し口のPET容器の底からの高さを30mmとした。このとき圧力は18.2Paで安定させた。13.56MHzの高周波を出力600W、成膜時間を4秒間とした。成膜圧力を7.1Paとした。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚は20nm、口部の内壁での膜厚は0nm(測定限界以下)であった。結果を表5にまとめた。
【0075】
(試験49〜59)
筒体の外表面と口部の内壁面との間隔Lを表5に示した距離となる樹脂製筒体を準備した以外は試験3と同様に成膜を行なった。PET容器の底から50mm高さでの平均膜厚と口部の内壁での膜厚を表5に示した。また、試験48〜59について筒体と口部内壁との距離LとΔb値との関係を図7に示した。
【0076】
【表5】

【0077】
表2〜表5に示したように、(膜厚(nm)/Δb値)≒3という関係があった。
【0078】
表2及び図4を参照すると、筒体の口部内壁との距離Lが2mm以下であると、口部7bの内表面には炭素膜がほぼ成膜されなかったが、筒体の口部内壁との距離Lが2.50mm以上3.20mm以下とすると、Δb値が0.1〜1.5のほぼ無色に見える極薄の炭素膜が口部内表面に成膜された。さらに、筒体の口部内壁との距離Lが3.30mm〜4.00mmとすると、Δb値が10.1〜18.8の炭素膜が口部内表面に成膜された。筒体の口部内壁との距離L2.50mmが、分岐流10bが流れ出す境界下限であり、筒体の口部内壁との距離L3.20mmが分岐流から主流に変わる境界上限であることがわかった。特に図4を参照すればわかるように、筒体の口部内壁との距離Lには、分岐流から主流に急激に変化を及ぼす閾値が存在した。また、筒体の口部内壁との距離Lが4mmともなると筒体を配置しなかった試験におけるΔb値とほぼ同じとなるため、口部と筒体との隙間には、筒体に流れる主流と同様の主流が流れていることがわかった。Δb値によって換算される分岐流による炭素膜の堆積量/主流による炭素膜の堆積量を表2にまとめた。Δb値によって換算される主流による炭素膜の堆積量は試験1におけるΔb値を採用した。分岐流が形成されて成膜がなされた試験10〜13においては、分岐流による炭素膜の堆積量/主流による炭素膜の堆積量の値が、0.00532〜0.07979であり、0.0033〜0.5(すなわち1/300〜1/2)の範囲に入っていた。
【0079】
表3及び図5を参照すると、筒体の口部内壁との距離Lが1.50mm以下であると、口部7bの内表面には炭素膜がほぼ成膜されなかったが、筒体の口部内壁との距離Lが2.00mm以上3.20mm以下とすると、Δb値が0.1〜1.8のほぼ無色に見える極薄の炭素膜が口部内表面に成膜された。さらに、筒体の口部内壁との距離Lが3.30mm〜4.00mmとすると、Δb値が5.6〜28.9の炭素膜が口部内表面に成膜された。筒体の口部内壁との距離L2.00mmが、分岐流10bが流れ出す境界下限であり、筒体の口部内壁との距離L3.20mmが分岐流から主流に変わる境界上限であることがわかった。特に図5を参照すればわかるとおり、筒体の口部内壁との距離Lには、分岐流から主流に急激に変化を及ぼす閾値が存在した。また、表3においてもLが閾値を超えると口部と筒体との隙間には筒体に流れる主流と同様の主流が流れていることがわかった。Δb値によって換算される分岐流による炭素膜の堆積量/主流による炭素膜の堆積量を表3にまとめた。Δb値によって換算される主流による炭素膜の堆積量は試験18におけるΔb値を採用した。分岐流が形成されて成膜がなされた試験23〜27においては、分岐流による炭素膜の堆積量/主流による炭素膜の堆積量の値が、0.00346〜0.06228であり、0.0033〜0.5(すなわち1/300〜1/2)の範囲に入っていた。
【0080】
表4及び図6を参照すると、筒体の口部内壁との距離Lが2.00mm以下であると、口部7bの内表面には炭素膜がほぼ成膜されなかったが、筒体の口部内壁との距離Lが2.50mm以上3.20mm以下とすると、Δb値が0.1〜0.2のほぼ無色に見える極薄の炭素膜が口部内表面に成膜された。いずれの試験においても無色に見える炭素膜が口部内表面に形成されたが、表2及び図4または表3及び図5の場合と同様に、図6を参照すればわかるとおり、筒体の口部内壁との距離L3.20mmを超えると、Δb値が上昇するため、原料ガス供給量が40sccmと少ない場合においても、筒体の口部内壁との距離L3.20mmが分岐流から主流に変わる境界上限であることがわかった。表4においてもLが閾値を超えると口部と筒体との隙間には筒体に流れる主流と同様の主流が流れていることがわかった。Δb値によって換算される分岐流による炭素膜の堆積量/主流による炭素膜の堆積量を表4にまとめた。Δb値によって換算される主流による炭素膜の堆積量は試験32におけるΔb値を採用した。分岐流が形成されて成膜がなされた試験38〜41においては、分岐流による炭素膜の堆積量/主流による炭素膜の堆積量の値が、0.2〜0.4であり、0.0033〜0.5(すなわち1/300〜1/2)の範囲に入っていた。
【0081】
表5及び図7を参照すると、筒体の口部内壁との距離Lが2.00mm以下であると、口部7bの内表面には炭素膜がほぼ成膜されなかったが、筒体の口部内壁との距離Lが2.50mm以上3.30mm以下とすると、Δb値が0.1〜1.6のほぼ無色に見える極薄の炭素膜が口部内表面に成膜された。さらに、筒体の口部内壁との距離Lが3.40mm〜4.00mmとすると、Δb値が3.1〜5.2の炭素膜が口部内表面に成膜された。筒体の口部内壁との距離L2.50mmが、分岐流10bが流れ出す境界下限であり、筒体の口部内壁との距離L3.30mmが分岐流から主流に変わる境界上限であることがわかった。特に図7を参照すればわかるとおり、筒体の口部内壁との距離Lには、分岐流から主流に急激に変化を及ぼす閾値が存在した。また、表5においてもLが閾値を超えると口部と筒体との隙間には筒体に流れる主流と同様の主流が流れていることがわかった。Δb値によって換算される分岐流による炭素膜の堆積量/主流による炭素膜の堆積量を表5にまとめた。Δb値によって換算される主流による炭素膜の堆積量は試験46におけるΔb値を採用した。分岐流が形成されて成膜がなされた試験52〜56においては、分岐流による炭素膜の堆積量/主流による炭素膜の堆積量の値が、0.01923〜0.30769であり、0.0033〜0.5(すなわち1/300〜1/2)の範囲に入っていた。
【0082】
分岐流10bが流れ出す筒体の口部内壁との距離Lの境界下限は、表2〜表5、図4〜図7を比較すると、原料ガスの流量に多少依存し、ガス流速が速ければ、Lが小さい方にややシフトした(2.50mm(表2、図4)→2.00mm(表3、図5))。この理由は、Lが2.00mmのときは分岐流がほとんど流れないものの、原料ガスが多く供給されたため、Δb値の検出が可能な程度に炭素膜が堆積したと考えられる。
【0083】
一方、分岐流から主流に変わる筒体の口部内壁との距離Lの境界上限は、表2〜表5、図4〜図7を比較すると、高周波出力に多少依存し、高周波出力が小さければ、Lが大きい方にややシフトした(3.20mm(表2、図4)→3.30mm(表5、図7))。この理由は、原料ガスの主流と分岐流の関係は変化しないものの、高周波出力の低下によって、成膜速度が低下し、相対的にΔb値が小さくなったと考えられる。
【0084】
したがって、原料ガス流量や高周波出力の影響を排除する場合には、距離Lを2.50〜3.20mmとすることが好ましいことがわかった。
【0085】
Δb値が0.1〜2.0の範囲の極薄炭素膜を口部内表面に成膜したプラスチック容器は、水洗いしてもΔb値に変化はなく、確実に密着していることが確認された。
【0086】
炭素膜の形成は、数nmの極薄の炭素膜であっても、炭素膜が形成されていることは、例えばTOF‐SIMSで未成膜PET表面と成膜後表面の炭素原子数3〜10の陰イオン検出強度比を比較することで確認できる。
【0087】
試験1(通常条件)、2(口部成膜なし)、12(口部極薄成膜)で得られたPET容器の酸素透過度は、それぞれ、0.0020、0.0030、0.0027cc/本/日であった。口部を極薄に成膜した場合の酸素バリア性は、口部に成膜をしない場合と同等か、わずかに良いという結果となった。
【0088】
試験1(通常条件)、2(口部成膜なし)、12(口部極薄成膜)で得られたPET容器のd‐リモネンの収着防止性は、それぞれ検出限界以下、0.5ng/本/ppm、検出限界以下であった。口部を極薄に成膜した場合は、口部に成膜をしない場合より、収着防止性が高いという結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置の一形態を示す概略構成図である。
【図2】本実施例で用いた容器の縦断面形状を示す図である。
【図3】第2形態に係る口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置の一形態を示す概略構成図である。
【図4】試験3〜17について筒体と口部内壁との距離LとΔb値との関係を示した。
【図5】試験20〜31について筒体と口部内壁との距離LとΔb値との関係を示した。
【図6】試験34〜45について筒体と口部内壁との距離LとΔb値との関係を示した。
【図7】試験48〜59について筒体と口部内壁との距離LとΔb値との関係を示した。
【符号の説明】
【0090】
1,上部外部電極
2,下部外部電極
3,外部電極
4,絶縁部材
5,蓋体
6,60,真空チャンバ
7,プラスチック容器
7a,プラスチック容器の開口部
7b,プラスチック容器の口部
8,O−リング
9,原料ガス供給管
9a,原料ガス供給管の吹き出し口
12,高周波供給電源
13,マッチングボックス
15,マスフローコントローラー
16,原料ガス発生源
17,貫通孔
21,53,真空バルブ
22,54,排気ポンプ
23,排気系統
25,空間
26,筒体
30,原料ガス供給手段
40,プラズマ発生手段
51,下部チャンバ
52,石英管
55,58,管
56,マイクロ波供給電源
57,プランジャスクルリュー
59,調整プランジャ
100,200,口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック容器の内部空間に原料ガスを供給し、該原料ガスをプラズマ化して前記プラスチック容器の内表面全体にプラズマCVD法によって炭素膜を成膜する炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法において、
前記プラスチック容器の口部を容器外に向かって通過する前記原料ガスのうち口部の中央側に主流を流し、口部の内表面側に分岐流を流し、かつ、
数1によって求められるΔb値によって換算される前記分岐流による前記炭素膜の堆積量を、前記主流による前記炭素膜の堆積量の1/300〜1/2とし、前記口部の内表面部分のみを他の内表面部分と比べて極薄に炭素膜を成膜したことを特徴する口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法。
(数1)Δb値=JIS K 7105−1981に基づく着色度b*値(成膜後の口部で測定)−JIS K 7105−1981に基づく着色度b*値(成膜前の口部で測定)
【請求項2】
筒体を前記プラスチック容器の口部に挿入し、前記プラスチック容器の口部の内壁面に前記筒体を接近させた状態で配置し、前記口部と前記筒体とに挟まれた空間に流れる原料ガスを前記分岐流とし、前記筒体の中を流れる原料ガスを前記主流としたことを特徴とする請求項1に記載の口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法。
【請求項3】
前記口部における炭素膜を、前記Δb値が0.1〜2.0となる膜厚に成膜したことを特徴とする請求項1又は2に記載の口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法。
【請求項4】
前記口部と前記筒体との隙間を2.5〜3.2mmとすることを特徴とする請求項2又は3に記載の口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法。
【請求項5】
前記原料ガスは、マイクロ波又は高周波によりプラズマ化されることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の口部極薄炭素膜コーティングプラスチック容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−96475(P2009−96475A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267023(P2007−267023)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】