説明

可動型表示装置およびバックライト制御方法

【課題】表示器電源の制御系を簡素化することが可能な可動型表示装置およびバックライト制御方法を得る。
【解決手段】表示器10の傾きを検出し表示器10のバックライトのON/OFFを制御する可動型表示装置100であって、表示器10の傾きを検出する加速度センサ21と、加速度センサ21から出力された加速度センサ出力25に基づいて、消灯状態のバックライトを点灯状態にする入り制御用信号27と、点灯状態のバックライトを消灯状態にする切り制御用信号28と、を生成して表示器10に出力するバックライト制御部29と、を備え、入り制御用信号27を生成する演算周期より長い周期で切り制御用信号28を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、船舶、航空機等の移動体に搭載される可動型表示装置に関し、特に、画像表示器の傾斜角度に応じて表示器のバックライトのON/OFFを制御する可動型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の可動型表示装置は、画像表示器(以下単に「表示器」と称する)の傾斜角を検出する手段を用いて、検出された傾斜角の大きさによって表示器の電源(バックライト)のON/OFFを制御している。
【0003】
下記特許文献1に代表される従来技術では、例えば、表示器の傾きを検出する傾き検出スイッチを備え、当該傾き検出スイッチの出力によって、表示器電源のON/OFFを制御している。このことを具体的に説明すると、例えば、水平状態の表示器を下側に折り曲げると、傾き検出スイッチがONからOFFとなり、表示器が折り曲げられたことが検知され、下側に折り曲げられた状態の表示器を水平に戻すと、傾き検出スイッチがOFFからONとなり、表示器が水平状態にあることが検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−247218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に代表される従来技術は、加速度センサによって表示器電源(バックライト)のON/OFFを制御する場合、例えば、表示器を本体に出し入れする際には、加速度センサの出力の変化に応じてバックライトの入り切り制御を行う一の機能だけでなく、さらに、表示器が使用されている際に発生した振動などによって点灯中のバックライトが意図せずに消灯してしまうことを防ぐための機能、すなわち前述した一の機能を停止させる機能も必要なため、表示器電源の制御系が複雑になるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、表示器電源の制御系を簡素化することが可能な可動型表示装置およびバックライト制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、表示器の傾きを検出し前記表示器のバックライトのON/OFFを制御する可動型表示装置であって、前記表示器の傾きを検出する加速度センサと、前記加速度センサから出力されたセンサ出力に基づいて、消灯状態の前記バックライトを点灯状態にするON制御用信号と、点灯状態の前記バックライトを消灯状態にするOFF制御用信号と、を生成して前記表示器に出力するバックライト制御部と、を備え、前記ON制御用信号を生成する演算周期より長い周期で前記OFF制御用信号を生成すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、表示器電源の入り制御用センサ出力と切り制御用センサ出力とを異なる演算処理によって求めるようにしたので、表示器電源の制御系を簡素化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる可動型表示装置の正面外観を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる可動型表示装置の側面外観を示す図である。
【図3】図3は、バックライトの入り切り制御にかかる構成を示す図である。
【図4】図4は、可動型表示装置の使用状態を示す図である。
【図5】図5は、可動型表示装置を水平方向に回転させた状態を示す図である。
【図6】図6は、可動型表示装置を収納穴に収納した状態を示す図である。
【図7】図7は、バックライトの入り制御用信号および切り制御用信号を生成する際の演算処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる可動型表示装置およびバックライト制御方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態.
図1は、可動型表示装置(以下単に「表示装置」と称する)100の正面外観であり、図2は、表示装置100の側面外観であり、図3は、バックライトの入り切り制御にかかる構成を示す図である。図1において、表示器10の可動方向を定義すると以下の通りである。すなわち、表示器10を正面から観た場合、左方向を+X、右方向を−X、上方向を+Y、下方向を−Y、手前方向を+Z、奥行方向を−Zとする。
【0012】
可動型表示装置(以下単に「表示装置」と称する)100は、主たる構成として、表示器10および可動アーム30を有して構成されている。制御基板20は、加速度センサ21およびバックライト制御部29を有して構成され、バックライト制御部29は、ローパスフィルタ22、A/Dコンバータ23、マイコン24を有して構成されている。制御基板20は、表示装置100の筐体に内蔵され、制御基板20の出力は、表示器10のバックライトの入り切り制御ピンに接続されている。
【0013】
以下、表示装置100の収納時あるいは使用時の動作を説明する。図4は、表示装置100の使用状態を示す図であり、図5は、表示装置100を水平方向に回転させた状態を示す図であり、図6は、表示装置100を収納穴に収納した状態を示す図である。
【0014】
図4において、可動アーム30は、例えば、鉄道車両、船舶、航空機等に設置されている座席の側面部分(肘掛部分)に、水平(θ)方向および垂直(φ)方向に回転可能で設置されている。また、座席の側面部分には、図4〜図5に示される収納穴32が形成され、当該収納穴32に表示器10が収納されている。表示器10のバックライトは、図4の状態のときに点灯し、図6の状態のときに消灯するように構成されている。
【0015】
以下、表示器10を収納する際の動作を説明する。まず、可動アーム30をθ方向に回転させて、表示器10を図5に示す位置に配置する。次に、図6に示すように、表示器10をφ方向に回転させ、収納箱31に形成された収納穴32に収納する。表示器10を使用する際の動作は、上述した動作を逆手順で行えばよい。
【0016】
加速度センサ21は、X軸方向の重力加速度(つまり鉛直方向の値)を測定しているため、表示器10の傾斜角に応じた重力加速度をマイコン24に出力する。マイコン24には、表示器10の傾斜角に対する所定の閾値が設定され、例えば、φ方向の角度が所定の閾値内の場合にはバックライトを消灯し、φ方向の角度が所定の閾値を超えた場合にはバックライトを点灯するように構成されている。なお、この傾斜角に対する所定の閾値には、車体の傾斜による角度や、加速度センサ21の取り付け誤差による角度などを加味した値に設定することが望ましい。
【0017】
以下、バックライトの入り切り制御に用いる加速度センサ出力(センサ出力)25に関して説明する。図7は、バックライトの入り制御用信号および切り制御用信号を生成する際の演算処理を説明するための図である。ローパスフィルタ22のカットオフ周波数は、例えば、2KHzに設定する。これは、後段に設置されるマイコン24のカットオフ周波数によって決まる値である。
【0018】
(第1の加算平均)
マイコン24は、図7において、白丸で示されるA/Dコンバータ23の出力(以下「A/D変換値26」と称する)を、例えば10msec毎に読み取り、さらに、A/D変換値26の各値の10個毎の平均を計算する。この加算平均を第1の加算平均と呼ぶ。例えば、図7の左から1つ目の第1の加算平均値は、左から1〜10個目までの加速度センサ出力25を時間平均化して得られた値である。以下同様に、左から2つ目の第1の加算平均値は、11〜20個目までの加速度センサ出力25を時間平均化して得られた値である。
【0019】
(第2の加算平均)
さらに、マイコン24は、黒丸で示される第1の加算平均値の過去20回の加算平均を計算する。この加算平均を第2の加算平均と呼ぶ。白い四角で示される第2の加算平均値は、A/D変換値26の高周波成分が除去されたフィルタ出力である。マイコン24は、この第2の加算平均値を使用して、バックライトの入り制御用信号(ON制御用信号)27を生成し、表示器10に出力する。例えば、図7の左から1つ目の第2の加算平均値は、左から1〜20個目までの第1の加算平均値を時間平均化して得られた値である。以下同様に、左から2つ目の第2の加算平均値は、2〜21個目までの第1の加算平均値を時間平均化して得られた値である。
【0020】
(第3の加算平均)
次に、バックライトの切り制御用信号(OFF制御用信号)28に関して説明する。まず、マイコン24は、第1の加算平均値の10個毎の平均を計算する。この加算平均を第3の加算平均と呼ぶ。例えば、図7の左から1つ目の第3の加算平均値は、左から1〜10個目までの第1の加算平均値を時間平均化して得られた値である。以下同様に、左から2つ目の第3の加算平均値は、11〜20個目までの第1の加算平均値を時間平均化して得られた値である。
【0021】
(第4の加算平均)
さらに、マイコン24は、白三角で示される第3の加算平均値の過去20回の加算平均を計算する。この加算平均を第4の加算平均と呼ぶ。マイコン24は、白いひし形で示される第4の加算平均値を使用して、バックライトの切り制御用信号28を生成し、表示器10に出力する。例えば、図7の左から1つ目の第4の加算平均値は、左から1〜20個目までの第3の加算平均値を時間平均化して得られた値である。以下同様に、左から2つ目の第4の加算平均値は、2〜21個目までの第3の加算平均値を時間平均化して得られた値である。
【0022】
入り制御用信号27を生成する演算周期は、例えば100msecであるのに対して、切り制御用信号28を生成する演算周期は、例えば1secである。このように、本実施の形態にかかるマイコン24は、入り制御用信号27を生成する演算周期より長い周期で切り制御用信号28を生成する。
【0023】
ここで、入り制御用信号27と切り制御用信号28とを異なる演算周期で生成する理由を説明すると以下の通りである。例えば、一般的な表示装置では、バックライトを点灯中に瞬間的な振動などが発生し加速度センサ出力25が変動したとき、A/D変換値26の値が上述した所定の閾値(傾斜角)を瞬間的に(入り制御用信号27の演算周期よりも短い時間)下回る場合がある。この場合、例えば、入り制御用信号27が出力させるタイミングよりも早く切り制御用信号28が出力されると、表示器10のバックライトが意図せずにOFFになることがある。本実施の形態にかかるマイコン24では、バックライトの切り制御用信号28として、第4の加算平均値を用いるようにしたので、A/D変換値26が瞬間的に変化した場合であっても、入り制御用信号27を生成する演算周期よりも長い周期で切り制御用信号28を生成することにより、意図せずにバックライトがOFFになることを防止することができる。
【0024】
ただし、第4の加算平均値は、図7に示すように、過去20回の第3の加算平均値を用いているため、例えば、最初に得られたA/D変換値26、例えば、図7の一番左側に示される第4の加算平均値が無くなるまでに20秒程度の時間を要する。この第4の加算平均値を入り制御用信号27の生成に使用した場合、バックライトを即座に点灯させることができない場合がある。そこで、本実施の形態にかかるマイコン24は、入り制御において第2の加算平均値を用いるようにしたので、バックライトを即座に点灯させることができる。
【0025】
なお、上記説明では、第1の加算平均値を100msec間隔で算出しているが、100msecに限定されるものではなく、マイコン24の処理能力や振動の高周波成分の大きさを考慮して、100msec以外の値を用いてもよい。第2の加算平均値、第3の加算平均値、および第4の加算平均値についても同様である。
【0026】
また、本実施の形態にかかる表示装置100は、時間平均化によって各加算平均の値を求めているが、これに限定されるものではなく、例えば、相乗平均などによる平均化処理を用いてもよい。
【0027】
また、本実施の形態にかかる表示装置100は、第1の加算平均値を用いて第3の加算平均値を求めているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2の加算平均値を用いて第3の加算平均値を求める態様であってもよい。すなわち、バックライト制御部29は、バックライトを点灯した後でも、入り制御用信号27を生成する際の演算処理を継続すると共に、入り制御用信号27を生成する際の演算処理結果である第1の加算平均値あるいは第2の加算平均値を用いて、切り制御用信号28の生成に必要な演算処理を実行する。
【0028】
また、本実施の形態にかかる表示装置100では、例えば、入り制御用信号27の生成において、第1の加算平均値と第2の加算平均値とを求めているが、加算平均を求めるステップ数が2つに限定するものではなく、例えば、加算平均を求めるステップ数を3回以上にしてもよい。切り制御用信号28の生成に関しても同様である。
【0029】
以上に説明したように、本実施の形態にかかる表示装置100は、入り制御用信号27と切り制御用信号28とを異なる演算処理で求めるようにしたので、収納穴32から表示装置100を取り出した際には、バックライトを即座に点灯させることができ、かつ、表示器10を使用中に振動などが発生した場合であってもバックライトが意図せずに消灯することを防止することが可能である。従来技術では、加速度センサ出力25の変化に応じてバックライトの入り切り制御を行う機能だけでなく、表示器10が使用されている際に発生した振動などでバックライトが消灯してしまうことを防止するための機能も必要となるため、表示器電源の制御系が複雑になるという問題があった。本実施の形態にかかる表示装置100は、従来技術のような複数の制御系を必要とすることなく、表示器10のバックライトの入り切り制御を行うことができるため、制御系が簡素化され、装置の信頼性を向上させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、車両、船舶、航空機等の移動体に搭載される可動型表示装置に適用可能であり、特に、表示器電源のON/OFFを行う制御系を簡素化することが可能な発明として有用である。
【符号の説明】
【0031】
10 表示器
20 制御基板
21 加速度センサ
22 ローパスフィルタ
23 A/Dコンバータ
24 マイコン
25 加速度センサ出力(センサ出力)
26 A/D変換値
27 入り制御用信号(ON制御用信号)
28 切り制御用信号(OFF制御用信号)
29 バックライト制御部
30 可動アーム
31 収納箱
32 収納穴
100 可動型表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示器の傾きを検出し前記表示器のバックライトのON/OFFを制御する可動型表示装置であって、
前記表示器の傾きを検出する加速度センサと、
前記加速度センサから出力されたセンサ出力に基づき設定した所定の閾値に基づいて、消灯状態の前記バックライトを点灯状態にするON制御用信号と、点灯状態の前記バックライトを消灯状態にするOFF制御用信号と、を演算して周期的に生成して前記表示器に出力するバックライト制御部と、
を備え、
前記ON制御用信号を生成する演算周期より長い周期で前記OFF制御用信号を生成すること、
を特徴とする可動型表示装置。
【請求項2】
前記バックライト制御部は、
前記バックライトを点灯した後でも、前記ON制御用信号を生成する際の演算処理を継続すると共に、前記ON制御用信号を生成する際の演算処理結果を用いて、前記OFF制御用信号の生成に必要な演算処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の可動型表示装置。
【請求項3】
前記バックライト制御部は、
前記センサ出力を時間平均化した第1の平均値と、前記第1の平均値を時間平均化した第2の平均値と、前記第2の平均値を求めたときの演算処理と異なる処理で前記第1の平均値を時間平均化した第3の平均値と、前記第3の平均値を時間平均化した第4の平均値と、を求め、
前記第2の平均値を、前記ON制御用信号を生成する際の演算処理に使用し、
前記第4の平均値を、前記OFF制御用信号を生成する際の演算処理に使用すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の可動型表示装置。
【請求項4】
前記バックライト制御部は、
前記センサ出力を時間平均化した第1の平均値と、前記第1の平均値を時間平均化した第2の平均値と、前記第2の平均値を時間平均化した第3の平均値と、前記第3の平均値を時間平均化した第4の平均値と、を求め、
前記第2の平均値を、前記ON制御用信号を生成する際の演算処理に使用し、
前記第4の平均値を、前記OFF制御用信号を生成する際の演算処理に使用すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の可動型表示装置。
【請求項5】
表示器の傾斜角を検出し前記表示器のバックライトのON制御をするON制御ステップと、前記バックライトをOFF制御するOFF制御ステップと、を含むバックライト制御方法であって、
前記ON制御ステップは、
加速度センサで検出された前記傾斜角を量子化する量子化ステップと、
前記量子化ステップにて量子化された前記傾斜角の値を時間平均化する第1の平均化ステップと、
前記第1の平均化ステップにて平均化された第1の平均値を時間平均化する第2の平均化ステップと、
前記第2の平均化ステップにて平均化された第2の平均値が、所定の閾値を超えたか否かを判定する第1の判定ステップと、
前記第1の判定ステップにて、前記第2の平均値が所定の閾値を超えたと判定された場合、前記バックライトを点灯状態にするON制御用信号を演算して周期的に生成するON制御用信号生成ステップと、を含み、
前記OFF制御ステップは、
前記第2の平均値を求めたときの演算処理と異なる処理で、前記第1の平均値を時間平均化する第3の平均化ステップと、
前記第3の平均化ステップにて平均化された第3の平均値を時間平均化する第4の平均化ステップと、
前記第4の平均化ステップにて平均化された第4の平均値が、所定の閾値未満になったか否かを判定する第2の判定ステップと、
前記第2の判定ステップにて、前記第4の平均値が所定の閾値未満と判定された場合、前記バックライトを消灯状態にするOFF制御用信号を演算して周期的に生成するOFF制御用信号生成ステップと、を含むこと、
を特徴とするバックライト制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−59572(P2011−59572A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211760(P2009−211760)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】