説明

可動接点体及びこれを用いたスイッチ

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される可動接点体及びこれを用いたスイッチに関し、安価で多様な照光が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】可動接点5上方のベースシート4上面に凹凸状の発光部15を形成すると共に、このベースシート4上面に複数の発光部15を連結する略帯状の導光部16を設けることによって、発光素子11の光を面積の小さな帯状の導光部16で反射させて内方へ導き、これによって複数の発光部15を発光させることができるため、少ない数の発光素子11で複数の発光部15の発光が可能になると共に、別部品の導光シート用の基材も不要となるため、使用部品数が少なく組立ても容易となり、安価で多様な照光が可能な可動接点体18、及びこれを用いたスイッチを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に使用される可動接点体及びこれを用いたスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器、特に携帯電話等の携帯端末機器においては、周囲が暗い場合でも、押釦や表示シート等の識別や操作が容易に行えるように、発光ダイオードやEL素子等を発光させて操作部の照光を行うものが増えており、これらの機器に用いられる可動接点体やスイッチにも、安価で多様な照光を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の可動接点体やスイッチについて、図4及び図5を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図4は従来のスイッチの断面図、図5は同平面図であり、同図において、1は光透過性でフィルム状の基材で、この基材1下面の所定箇所には、凹凸状の複数の発光部2が設けられて、導光シート3が形成されている。
【0006】
また、4はフィルム状のベースシート、5は略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点で、複数の可動接点5が発光部2下方のベースシート4下面に、接着層(図示せず)によって貼付されると共に、可動接点5近傍を除くベースシート4下面には、下面に接着層(図示せず)が形成されたスペーサシート6が貼付されている。
【0007】
そして、このベースシート4外周の所定箇所が、接着剤7によって導光シート3下面に貼付されて、可動接点体8が構成されている。
【0008】
さらに、9は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、上面には略円形状の中央固定接点10Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点10Bから形成された、複数の固定接点10が設けられている。
【0009】
そして、この配線基板9上面に可動接点体8が、各々の可動接点5の外周が外側固定接点10B上に載置され、可動接点5の下面中央が中央固定接点10Aと所定の間隙を空けて対向するように、スペーサシート6下面の接着層によって貼付されている。
【0010】
また、11は発光ダイオード等の発光素子で、複数の発光素子11が導光シート3右側方や左側方の配線基板9上面に実装され、基材1の右端面や左端面に発光面を向けて配置されている。
【0011】
さらに、12は光透過性でフィルム状の表示シートで、下面に印刷等によって形成された遮光部12Aの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部12Bが形成され、この表示部12Bが導光シート3の発光部2上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【0012】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の中央固定接点10Aや外側固定接点10B、複数の発光素子11が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0013】
以上の構成において、表示シート12の所定の表示部12Bを下方へ押圧操作すると、この下方の導光シート3やベースシート4が撓んで可動接点5の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点5がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点5の下面中央が中央固定接点10Aに接触することによって、中央固定接点10Aと外側固定接点10Bが、可動接点5を介して電気的に接続された状態となる。
【0014】
また、表示シート12への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点5が上方へ弾性反転し、可動接点5の下面中央が中央固定接点10Aから離れて、中央固定接点10Aと外側固定接点10Bが電気的に切断された状態となる。
【0015】
そして、このような固定接点10の電気的接離に応じて、機器の各機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子11に電源が供給されると、複数の発光素子11が発光し、この光が右端面や左端面から導光シート3内に入射して、基材1内全体を反射しながら内方へ進む。
【0016】
さらに、この光が基材1下面の複数の発光部2で拡散され反射して、これらの上方の表示シート12の表示部12Bを下方から照光し、複数の表示部12Bが照光されることによって、周囲が暗い場合でも、表示部12Bの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【0017】
つまり、表示シート12を押圧操作することによって導光シート3上面を押圧し、可動接点5を弾性反転させて固定接点10の電気的接離を行うと共に、複数の発光素子11の光を右端面や左端面から導光シート3内に導入し、基材1内全体に反射した光で複数の発光部2を発光させることによって、表示シート12の複数の表示部12Bを照光するように構成されているものであった。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−94036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記従来の可動接点体8やスイッチにおいては、ベースシート4上面に導光シート3を貼付して可動接点体8が構成されると共に、右端面や左端面から導光シート3内に入射した複数の発光素子11の光を、面積の大きな基材1内全体に反射させて、複数の発光部2の発光を行っているため、多くの発光部2を明るく発光させるには、多数の発光素子11を導光シート3の右側方や左側方に配置する必要があり、使用部品数が増え高価なものになると共に、組立てにも時間がかかってしまうという課題があった。
【0021】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、使用する発光素子を少なくし、安価で多様な照光が可能な可動接点体及びこれを用いたスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0023】
本発明の請求項1に記載の発明は、可動接点上方のベースシート上面に凹凸状の発光部を形成すると共に、このベースシート上面に複数の発光部を連結する略帯状の導光部を設けて可動接点体を構成したものであり、発光素子の光を面積の小さな帯状の導光部で反射させて内方へ導き、これによって複数の発光部を発光させることができるため、少ない数の発光素子で複数の発光部の発光が可能になると共に、別部品の導光シート用の基材も不要となるため、使用部品数が少なく組立ても容易となり、安価で多様な照光が可能な可動接点体を得ることができるという作用を有する。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の可動接点体を、上面に可動接点と対向する固定接点が形成された配線基板の上面に貼付してスイッチを構成したものであり、安価で多様な照光が可能なスイッチを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、安価で多様な照光が可能な可動接点体、及びこれを用いたスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図
【図2】同平面図
【図3】同スイッチの断面図
【図4】従来のスイッチの断面図
【図5】同平面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0028】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0029】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0030】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図、図2は同平面図であり、同図において、4はポリエチレンテレフタレート等の可撓性を有するフィルム状のベースシート、5は略ドーム状で銅合金や鋼等の導電金属薄板製の可動接点で、複数の可動接点5がベースシート4下面に、アクリルやシリコーン等の接着層(図示せず)によって貼付されている。
【0031】
そして、この可動接点5上方のベースシート4上面には、凹凸状でポリエステルやエポキシ等の白色や乳白色等の複数の発光部15が、印刷等によってドット状に形成されている。
【0032】
また、ベースシート4上面には、略帯状でウレタンやアクリル等の光透過性の導光部16が、印刷等によって0.05〜0.2mm前後の厚さで設けられ、この導光部16が複数の発光部15を覆うと共に、複数の発光部15とベースシート4右端部や左端部を連結するように、略枝状に分岐して形成されている。
【0033】
さらに、6はポリエチレンテレフタレート等のフィルム状のスペーサシート、17は同じくフィルム状のセパレータで、下面にアクリルやシリコーン等の接着層(図示せず)が形成されたスペーサシート6が、可動接点5近傍を除くベースシート4下面に貼付されると共に、この下面にセパレータ17がベースシート4下面全面を覆うように貼付され、保管・搬送時に可動接点5下面に塵埃等が付着しないようにして、可動接点体18が構成されている。
【0034】
なお、このような可動接点体18は、ベースシート4上面にスクリーン印刷等によって複数の発光部15を形成した後、同じくスクリーン印刷等によって導光部16を設け、ベースシート4下面に複数の可動接点5やスペーサシート6、セパレータ17を順次貼付することで、比較的簡易に製作することができる。
【0035】
つまり、本発明の可動接点体18は、下面に可動接点5が貼付されたベースシート4上面に凹凸状の複数の発光部15を形成すると共に、このベースシート4上面に複数の発光部15を連結する略帯状の導光部16を設けた構成となっているため、別部品の導光シート用の基材が不要となり、使用部品数が少なくなると共に、組立ても容易に行うことが可能なようになっている。
【0036】
また、図3は上記のような可動接点体18を用いたスイッチの断面図であり、同図において、9はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状、または紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の配線基板で、上下面に銅等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、上面には銅やカーボン等によって、略円形状の中央固定接点10Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点10Bから形成された、複数の固定接点10が設けられている。
【0037】
そして、この配線基板9上面にセパレータ17を剥離した可動接点体18が、各々の可動接点5の外周が外側固定接点10B上に載置され、可動接点5の下面中央が中央固定接点10Aと所定の間隙を空けて、対向するように貼付されている。
【0038】
また、11は発光ダイオード等の発光素子で、複数の発光素子11が可動接点体18右側方や左側方の配線基板9上面に実装され、導光部16の右端面や左端面に発光面を向けて配置されている。
【0039】
さらに、12は光透過性でフィルム状の表示シートで、下面に印刷等によって形成された遮光部12Aの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部12Bが形成され、この表示部12Bが可動接点体18の発光部15上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【0040】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の中央固定接点10Aや外側固定接点10B、複数の発光素子11が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0041】
以上の構成において、表示シート12の所定の表示部12Bを下方へ押圧操作すると、この下方の導光部16やベースシート4が撓んで可動接点5の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点5がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点5の下面中央が中央固定接点10Aに接触することによって、中央固定接点10Aと外側固定接点10Bが、可動接点5を介して電気的に接続された状態となる。
【0042】
また、表示シート12への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点5が上方へ弾性反転し、可動接点5の下面中央が中央固定接点10Aから離れて、中央固定接点10Aと外側固定接点10Bが電気的に切断された状態となる。
【0043】
そして、このような固定接点10の電気的接離に応じて、機器の各機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子11に電源が供給されると、複数の発光素子11が発光し、この光が右端面や左端面から略帯状の導光部16内に入射して、導光部16内を反射しながら分岐して内方へ進む。
【0044】
さらに、この光が導光部16内の複数の発光部15で拡散され反射して、これらの上方の表示シート12の表示部12Bを下方から照光し、複数の表示部12Bが照光されることによって、周囲が暗い場合でも、表示部12Bの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【0045】
つまり、表示シート12を押圧操作することによってベースシート4上面を押圧し、可動接点5を弾性反転させて固定接点10の電気的接離を行うと共に、複数の発光素子11の光を右端面や左端面から導光部16内に導入し、導光部16内で反射した光で複数の発光部15を発光させることによって、表示シート12の複数の表示部12Bを照光するように構成されている。
【0046】
そして、この時、右側方や左側方の発光素子11からの光は、右端面や左端面から略帯状の導光部16内に入射し、このベースシート4全体に比べ面積の小さな帯状の導光部16内で反射しながら内方へ進み、これによって複数の発光部15が発光するため、導光部16内を反射しながら分岐して進む間の、光の輝度の劣化が少なくなるようになっている。
【0047】
すなわち、可動接点5上方のベースシート4上面に凹凸状の発光部15を形成すると共に、このベースシート4上面に複数の発光部15を連結する略帯状の導光部16を設けることで、少ない数の発光素子11でも、複数の発光部15を明るく発光させることが可能なように構成されている。
【0048】
さらに、発光素子11の光がベースシート4上面に一体に形成された、導光部16内で反射しながら内方へ進むように構成されているため、上述したように、別部品の導光シート用の基材も不要となり、使用部品数が少なくなると共に、組立ても容易に行えるようになっている。
【0049】
また、図2に示したように、略帯状の導光部16の、発光素子11の光が入射する右端面や左端面の近傍は幅をやや大きく形成し、ベースシート4内方は幅をやや小さくする等、発光部15の数や寸法に合わせて導光部16の幅を調整することで、離れた箇所の複数の発光部15をムラなく、均等な明るさで発光させることができる。
【0050】
さらに、ベースシート4を白色や乳白色に形成するか、あるいはベースシート4が透明等の光透過性である場合には、導光部16の屈折率をベースシート4よりも少し高く、例えば導光部16の屈折率を1.55前後、ベースシート4の屈折率を1.50前後に形成することで、導光部16内を反射しながら進む光をより明るく維持することができる。
【0051】
このように本実施の形態によれば、可動接点5上方のベースシート4上面に凹凸状の発光部15を形成すると共に、このベースシート4上面に複数の発光部15を連結する略帯状の導光部16を設けることによって、発光素子11の光を面積の小さな帯状の導光部16で反射させて内方へ導き、これによって複数の発光部15を発光させることができるため、少ない数の発光素子11で複数の発光部15の発光が可能になると共に、別部品の導光シート用の基材も不要となるため、使用部品数が少なく組立ても容易となり、安価で多様な照光が可能な可動接点体18、及びこれを用いたスイッチを得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明による可動接点体及びこれを用いたスイッチは、安価で多様な照光が可能なものが得られ、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0053】
4 ベースシート
5 可動接点
6 スペーサシート
9 配線基板
10 固定接点
10A 中央固定接点
10B 外側固定接点
11 発光素子
12 表示シート
12A 遮光部
12B 表示部
15 発光部
16 導光部
17 セパレータ
18 可動接点体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状のベースシートと、この下面に貼付された略ドーム状の複数の可動接点と、この可動接点上方の上記ベースシート上面に形成された凹凸状の発光部からなり、上記ベースシート上面に複数の発光部を連結する略帯状の導光部を設けた可動接点体。
【請求項2】
請求項1記載の可動接点体を、上面に可動接点と対向する固定接点が形成された配線基板の上面に貼付したスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−113699(P2011−113699A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267116(P2009−267116)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】