説明

可動濾過媒体として巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を用いる濾過システム及びそれに関する方法

濾過媒体を含む濾過システム及びそれに関連する方法を説明する。濾過システムは複数の巻き取り可能な長さの繊維を含み、繊維はカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である。濾過システムは、液体媒体から疎水性材料を収着するために、オープンリール式の処理で、又は連続的に動作することができる。また、濾過システムは、加圧ローラ及び化学的抽出浴など、濾過媒体から疎水性材料を除去する様々な手段を含む。濾過システムで処理することができる例示的な液体媒体は、例えば水相中で混合された疎水性材料、二層(例えば油と水の二層)、地下層中の油、微量の有機汚染物質又は微量の有機化合物を含む水源、及び発酵培養液を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して濾過に関し、より詳しくは、カーボン・ナノチューブを使用する濾過に関する。
【0002】
(関連出願の参照)
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2010年1月22日出願の米国仮特許出願第61/297,704号の優先権の特典を主張するものであり、その内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。本出願は、また、全て2009年11月2日出願の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、及び第12/611,103号にも関連する。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究開発の記載)
適用なし
【背景技術】
【0004】
様々な液体媒体から疎水性材料(例えば油及び同様の石油化学製品、環境汚染物質、微量物質、溶媒、及び同様の疎水性有機化合物)を除去する能力は、例えば油の抽出及び分離、環境修復、浄水、有害物質の浄化、及び微量有機化合物の単離/精製などの様々な用途の特徴である。液体媒体から疎水性材料を除去するのに使用される典型的な収着材料は、それ自体が他の疎水性化合物に対する親和性を有する疎水性化合物である。
【0005】
疎水性材料を収着する材料の有効性は、通常、既知の質量の収着材料に対する収着された疎水性材料の質量の比率として表される。この比率を本明細書では収着容量と呼ぶ。液体媒体から疎水性材料を除去するのに使用される従来の収着材料は、約20以下の収着能力を示すことが多い。すなわち、収着材料は、収着材料の約20倍までの質量の疎水性材料の量を収着することができる。従来の収着材料の大部分は、連続的又はほぼ連続的なプロセスではなく、バッチ式に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーボン・ナノチューブは疎水性であるので、単位質量当たり大量の疎水性材料を収着することができる。カーボン・ナノチューブは、その重量の約180倍まで特定の疎水性材料を収着できると報告されている。カーボン・ナノチューブの高い収着容量にもかかわらず、高い生産コストが、液体媒体から疎水性材料を除去することを伴う用途を含め、大部分の用途での商業的開発を妨げてきた。大抵の従来の収着材料と同様に、カーボン・ナノチューブは、これまで疎水性材料を収着するためにバッチ式にしか使用されていない。
【0007】
以上を鑑みて、疎水性材料に対する高い収着容量を有する新しい収着材料は、当技術分野では非常に有利になる。このような収着材料は、液体媒体から疎水性材料を除去及び単離する様々な濾過プロセスで使用することができる。これらの収着材料を作成するプロセスは、液体媒体から疎水性材料を除去する必要がある様々な用途で安価に広く使用できるように十分な規模で実行できることが理想的である。更に、これらの収着材料を連続的又はほぼ連続的なプロセスで利用できると、使い易さが大いに促進され、様々な液体媒体から疎水性材料を除去できるスピードが改善される。本発明は、これらの要求を直接満たすだけでなく、それに関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施形態では、本明細書で説明する濾過システムは、巻き取り可能な長さの複数の繊維を含む可動濾過媒体を含み、前記繊維は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である。
【0009】
ある実施形態では、本明細書で説明する濾過システムは、第1のリール及び第2のリールを含むオープンリール式処理システムと、オープンリール式処理システムに接続した可動濾過媒体と、可動濾過媒体に張力を加える少なくとも1つの整合ローラ及び少なくとも1つの浸漬ローラと、搬送される可動濾過媒体が通る少なくとも1つの加圧ローラとを含む。可動濾過媒体は連続長の複数の繊維を含み、前記繊維はカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である。
【0010】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む可動濾過媒体を提供し、疎水性材料を含む液体媒体を通して可動濾過媒体を搬送し、液体媒体から疎水性材料の少なくとも一部を可動濾過媒体上に収着し、疎水性材料を収着した後、少なくとも1つの加圧ローラを通して可動濾過媒体を搬送することを含む。
【0011】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、第1のリール及び第2のリールを含むオープンリール式処理システムに接続され、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む可動濾過媒体を提供し、疎水性材料を含む液体媒体を通して可動濾過媒体を搬送し、液体媒体から疎水性材料の少なくとも一部を可動濾過媒体上に収着し、疎水性材料を収着した後、少なくとも1つの加圧ローラを通して可動濾過媒体を搬送し、少なくとも1つの加圧ローラにて除去された任意の疎水性材料を収集装置内に隔離することを含む。
【0012】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む可動濾過媒体を提供し、微量の疎水性化合物を含む液体媒体を通して可動濾過媒体を搬送し、液体媒体から微量の疎水性化合物の少なくとも一部を可動濾過媒体上に収着し、可動濾過媒体から微量の疎水性化合物を単離することを含む。
【0013】
以上は、以下の詳細な説明をよりよく理解できるように、本開示の特徴をかなり広義に概略説明している。本開示の追加の特徴及び利点を以降で説明するが、これは特許請求の範囲の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】炭素繊維に浸出したカーボン・ナノチューブの例示的なTEM画像例である。
【図2】目標長さ40μmの±20%以内であるカーボン・ナノチューブで浸出された炭素繊維の例示的なSEM画像例である。
【図3】カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の可動濾過媒体用オープンリール式処理システムを含む濾過システムの実施形態の概略図を示す。
【図4】カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の可動濾過媒体用オープンリール式処理システムを含む濾過システムの別の実施形態の概略図を示す。
【図5】カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の可動濾過媒体の連続ループを含む例示的な濾過システムの概略図を示す。
【図6】カーボン・ナノチューブ浸出繊維の織物(fabric weave)の例示的なSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示及びその利点をよりよく理解するために、本開示の特定の実施形態について説明する添付図面と組み合わせて以下の説明を参照されたい。
【0016】
本開示は、一部は可動濾過媒体を含む濾過システムを指向し、前記可動濾過媒体は複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む。本開示は、一部は可動濾過媒体を使用する濾過方法及び微量化合物単離方法も指向し、可動濾過媒体は複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む。本明細書の実施形態によれば、巻き取り可能な長さの繊維は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である。
【0017】
炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ガラス繊維、及び有機繊維(例えばアラミド繊維)などのカーボン・ナノチューブを浸出した繊維材料は、全て2009年11月2日出願の本出願人の同時係属中の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、及び第12/611,103号、及び2010年11月2日出願の第12/938,328号に記載されており、上記出願の各々は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。図1は、炭素繊維に浸出されているカーボン・ナノチューブの例示的なTEM画像を示す。図2は、カーボン・ナノチューブが浸出されている炭素繊維の例示的なSEM画像を示し、カーボン・ナノチューブは目標長さ40μmの±20%以内である。図1及び図2の画像では、カーボン・ナノチューブは多層カーボン・ナノチューブであるが、本明細書の様々な実施形態では、単層カーボン・ナノチューブ、二層カーボン・ナノチューブ、及び3つ以上の層を有する多層カーボン・ナノチューブなどの任意のタイプのカーボン・ナノチューブを使用することができる。
【0018】
本明細書では、用語「浸出する」とは結合されることをいい、用語「浸出」とは結合処理をいう。従って、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、結合されたカーボン・ナノチューブを有する繊維材料をいう。このような繊維材料へのカーボン・ナノチューブの結合は、機械的連結、共有結合、イオン結合、π−π相互作用、及び/又はファン・デル・ワールス力が仲介する物理吸着等を含むことができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは繊維材料に直接結合される。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、バリア・コーティング及び/又はカーボン・ナノチューブの成長を仲介するために使用される触媒ナノ粒子を介して、繊維材料に間接的に結合される。カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出させる具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0019】
本明細書では、用語「巻き取り可能な長さ」又は「巻き取り可能な寸法」とは、等価的に、カーボン・ナノチューブ浸出後に繊維材料をスプール(spool)又はマンドレル(mandrel)に巻き取っておくことが可能な、長さの制限されない、繊維材料の有する少なくとも1つの寸法をいう。「巻き取り可能な長さ」又は「巻き取り可能な寸法」の繊維材料は、繊維材料へのカーボン・ナノチューブ浸出のためのバッチ処理又は連続処理のいずれかの使用を示す少なくとも1つの寸法を有する。
【0020】
更に、「巻き取り可能な長さ」又は「巻き取り可能な寸法」のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、本明細書で説明する様々な連続的又はほぼ連続的濾過システム及び方法に使用することができる。一般的に、本開示のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、繊維材料の長さが約1.5フィート(45.72cm)より長い場合、巻き取り可能な長さである。本明細書のある実施形態では、巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、長さが約100フィート(30.48m)より長い。他の実施形態では、巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、長さが約1,000フィート(304.8m)より長い。さらに他の実施形態では、巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、長さが約10,000フィート(3,048m)より長いか、又は長さが約25,000フィート(7,620m)より長い。
【0021】
本明細書では、用語「連続的」とは、途切れずに動作するプロセスをいう。
【0022】
本明細書では、用語「ほぼ連続的」とは、実質的に途切れずに動作するプロセスをいう。すなわち、このプロセスは、プロセスの保守に必要な最小限の中断のみで、プロセス時間の少なくとも大部分は連続的に動作する。
【0023】
本明細書では、用語「収着」、「収着する」、「収着している」及びその派生語は、吸収及び吸着の物理的プロセスをいう。
【0024】
本明細書では、用語「搬送する」、「搬送している」及びその派生語は、第1の位置から第2の位置へと場所を移すプロセスをいう。
【0025】
本明細書では、用語「疎水性」とは、実質的に水中で不溶性である材料をいう。しかし、少量では、疎水性材料は、溶解しているという外観を示すように、水又は他の水性媒体と混合するか、又はその中にわずかに溶解することができる。
【0026】
本明細書では、用語「油」とは、一般的に、原油、精製油、ガソリン、ディーゼルなどの石油派生物を含む石油製品をいう。
【0027】
本明細書では、用語「ナノ粒子」とは、球の等価直径が約0.1nmから約100nmの間の直径を有する粒子をいうが、ナノ粒子は球形である必要はない。
【0028】
本明細書では、用語「サイジング剤(sizing agent)」、「サイジング物質(sizing material)」又は「サイジング(sizing)」とは、一括して、繊維材料の製造において繊維材料の一体性を保護するコーティングとして使用し、繊維材料との界面相互作用を向上させる、及び/又は繊維材料の特定の物理的特性を変更及び/又は向上させる材料をいう。
【0029】
本明細書では、用語「遷移金属」とは、周期表のd‐ブロックにおける任意の元素又はその合金(3族から12族)をいう。また、用語「遷移金属塩」とは、任意の遷移金属化合物(例えば、遷移金属元素の酸化物、炭化物、窒化物等)をいう。カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するのに適した触媒ナノ粒子を形成する例示的な遷移金属としては、例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、Ag、並びにこれらの合金、塩、及び混合物が挙げられる。
【0030】
本明細書では、用語「長さが均一」とは、約1μmから約500μmの範囲にあるカーボン・ナノチューブ長に関して、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブが、カーボン・ナノチューブの全長の±約20%又はそれ未満の許容誤差を伴う長さを有する状態をいう。極めて短いカーボン・ナノチューブ長(例えば、1μm〜4μm)では、この誤差は、±約1μm、すなわち、カーボン・ナノチューブの全長の約20%よりも若干大きくなるであろう。
【0031】
本明細書では、用語「密度分布が均一」とは、繊維材料上のカーボン・ナノチューブの被覆密度が、カーボン・ナノチューブで覆われる繊維材料表面積に関して被覆率±約10%の許容誤差を有する状態をいう。
【0032】
カーボン・ナノチューブの疎水性及び広い有効表面積によって、これらの材料は水濾過用途に、及び他の抽出プロセス、例えば水又は同様の水性相からの疎水性材料(例えば油)の除去などに適したものになる。カーボン・ナノチューブは疎水性材料に対して優れた収着特性を有するが、生産コストにより、この分野及び他の分野における実施が制限されてきた。濾過媒体としてのカーボン・ナノチューブにマイナスに作用する別の重大な要素は、これまで連続的にその収着特性を利用する方法が見出されていないことである。特に、ある量のカーボン・ナノチューブが、その収着容量に到達するのに十分な量の疎水性材料を収着すると、これまでは濾過プロセスを継続するために使用済みカーボン・ナノチューブを新しいカーボン・ナノチューブと交換する必要があった。
【0033】
本明細書で説明する濾過システム及び方法は、巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を使用して疎水性材料を連続的又はほぼ連続的に除去することによって、濾過媒体としてのカーボン・ナノチューブに固有のこれらの問題を克服する。巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、比較的安価に生産することができ、繊維材料は自身上にカーボン・ナノチューブが成長するための頑強な基材として働く。さらに重要なことは、繊維材料によってカーボン・ナノチューブを現在の濾過システム及び方法で容易に操作できることである。特に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料上に収着した疎水性材料は容易に除去することができ、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、追加の疎水性材料除去プロセスのためにその後も再使用することができる。
【0034】
また、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料上に浸出されたカーボン・ナノチューブは、液体媒体から疎水性化合物を収着するために広い表面積を提供する。さらに、液体媒体を通してカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を搬送することにより、収着の有効表面積を、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の巻き取り可能な長さだけさらに増すことができる。
【0035】
ある実施形態では、本明細書で説明する濾過システムは、複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む可動濾過媒体を含み、繊維はカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である。
【0036】
ある実施形態では、本明細書で説明する濾過システムは、可動濾過媒体を搬送する複数のローラを含む。複数のローラは、濾過システムを通る可動濾過媒体を案内し、さらに、それに張力を加えることができる。また、複数のローラを使用して、濾過システムによって処理されている液体媒体中の可動濾過媒体を位置決めすることができる。ある実施形態では、濾過システムは少なくとも1つの浸漬ローラ及び少なくとも1つの整合ローラを含む。本明細書で説明するように、処理中の液体媒体との接触は、少なくとも1つの浸漬ローラにて生じる。ある実施形態では、少なくとも1つの浸漬ローラの深さの位置決めは、変更可能である。このような実施形態では、可動濾過媒体が液体媒体と接触する時間は、少なくとも1つの浸漬ローラの深さの位置決めを調整することによって変更することができる。
【0037】
様々な実施形態では、本明細書で説明する濾過システムは、可動濾過媒体に収着した疎水性材料を除去する物理的及び/又は化学的手段を含む。収着した疎水性材料を除去する物理的手段は、例えば収着した疎水性材料を、可動濾過媒体から蒸発させる、昇華させる、圧搾する、又は絞り出すことができる任意の装置又はプロセスを含む。収着した疎水性材料を除去する化学的手段は、例えば収着した疎水性材料と化学反応して、それをさらに容易に除去可能な形態に変換する溶媒抽出浴及び処理溶液を含む。一般的に、化学的処理溶液は、カーボン・ナノチューブ及び/又はそれが浸出される繊維材料と反応しないように選択される。ある実施形態では、濾過システムは、搬送される可動濾過媒体が通る少なくとも1つの加圧ローラを含む。ある実施形態では、濾過システムは、搬送される可動濾過媒体が通る少なくとも1つの化学的抽出浴を含む。ある実施形態では、濾過システムは、搬送される可動濾過媒体が通る少なくとも1つの加圧ローラ及び少なくとも1つの化学的抽出浴を含む。
【0038】
様々な実施形態では、濾過システムは、少なくとも1つの加圧ローラにて可動濾過媒体から除去された任意の液体を隔離するように動作可能である少なくとも1つの収集装置をさらに含むことができる。少なくとも1つの収集装置によって隔離される液体は、例えば液体媒体から除去された疎水性材料、可動濾過媒体に収着されたままである残留液体媒体、及び/又は化学的抽出浴から可動濾過媒体に収着したままである残留溶媒又は試薬を含むことができる。例示的な収集装置は、例えば受け皿、貯蔵タンク、分離容器などを含むことができる。
【0039】
ある実施形態では、濾過システムは、第1のリール及び第2のリールを含むオープンリール式処理システムをさらに含む。一般的に、第1のリールは繰り出しリールで、第2のリールは巻き取りリールであって、従って、可動濾過媒体は第1のリールから第2のリールへと搬送される。第1のリール及び第2のリールのサイズ、及びカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の選択された連続長さに応じて、本発明の濾過システムは、液体媒体を処理して疎水性材料を除去するためにほぼ連続的に動作することができる。当業者であれば認識するように、比較的長い巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を利用する場合は、可動濾過媒体を交換するために中断する前に、本発明の濾過システムをより長い期間に亘って動作させることができる。可動濾過媒体を交換する際に、可動濾過媒体を再循環させるように繰り出しリールと巻き取りリールを単に逆転させるか、又は可動濾過媒体をカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の新しい部分と交換して濾過プロセスを継続することができる。可動濾過媒体を濾過システムに即座に再導入しない場合、巻き取りリール上の濾過媒体は、後で使用するために保存してもよく、追加の疎水性材料を除去するためにさらに処理してもよく、又は廃棄してもよい。本開示の多くの利点の1つは、可動濾過媒体を使用できることであるが、とりわけ、収着特性が所望のレベルより低下しているか、又は繊維材料が損傷しているか、又は破損する危険性がある場合は、可動濾過媒体を廃棄してもよい。
【0040】
ある実施形態では、可動濾過媒体は、複数のローラ上で連続的に搬送される連続ループ構造の形態である。ローラは、本発明の濾過システムを通して可動濾過媒体を連続的に循環させるために使用される。連続ループの形態の濾過媒体を含む実施形態では、幾つかの利点が実現される。第一に、連続ループ可動濾過媒体によって濾過システムを完全に連続的に動作させることができ、日常的な保守でしか動作が停止しない。第二に、連続ループ可動濾過媒体によって、極めて短い巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を採用することができ、それによってカーボン・ナノチューブの生産コストが削減され、濾過システム内の省スペース化を実現することができる。
【0041】
ある実施形態では、本明細書で説明する濾過システムは、第1のリール及び第2のリールを含むオープンリール式処理システムと、オープンリール式処理システムに接続された可動濾過媒体と、可動濾過媒体に張力を加える少なくとも1つの整合ローラ及び少なくとも1つの浸漬ローラと、搬送される可動濾過媒体が通る少なくとも1つの加圧ローラとを含む。可動濾過媒体は連続長の複数の繊維を含み、前記繊維はカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である。
【0042】
図3は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の可動濾過媒体のオープンリール式処理システムを含む濾過システムの例示的実施形態の概略図を示す。濾過システム1は、繰り出しリール3と巻き取りリール4の間に接続された巻き取り可能な長さのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2を含む。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2は、整合ローラ8及び8’及び浸漬ローラ9及び9’を通って搬送される間に、疎水性材料の上層6及び水性の下層7を含む2層液体媒体5に接触する。特に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2は、浸漬ローラ9及び9’によって張力が加えられている間に疎水性材料の上層6に接触する。
【0043】
図3は、4つの整合ローラ8及び8’及び3つの浸漬ローラ9及び9’を有する濾過システム1を図示しているが、本発明の濾過システムを構築する際には任意の数の整合ローラ及び浸漬ローラを使用することができる。濾過システム1のサイズ及びカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2と2層液体媒体5との所望の接触時間に応じて、当業者に認識されるように、浸漬ローラの数を調整して、接触時間を変更する、及び/又は所望の張力付与度合を提供することができる。さらに、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2と2層液体媒体5との接触時間は、浸漬ローラ9及び9’が2層液体媒体5と接触する深さを変更することによっても調整できることが当業者には認識される。例えば、疎水性材料の濃度がより高い2層液体媒体5は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2への疎水性材料の十分な収着を達成するために必要な接触時間が短くなる。しかし、かなり薄い濃度の疎水性材料を含む2層液体媒体5の場合は、接触時間を長くした方が好ましい場合がある。上述したように、接触時間は、例えばカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2が濾過システム1を通って搬送されるライン速度を調整し、及び/又は整合ローラ8及び浸漬ローラ9及び9’の数及び位置決めを調整することによって変更することができる。ある実施形態では、濾過システム1の浸漬ローラ9及び9’の深さの位置合わせは、2層液体媒体5との所望の接触時間に対応して自動的に又は手動で調整することができる。
【0044】
図4は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の可動濾過媒体のオープンリール式処理システムを含む濾過システムの例示的な別の実施形態の概略図を示す。図4に示すように、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2と混合した液体媒体17との接触時間を短縮するために、整合ローラ8及び8’及び浸漬ローラ9及び9’の数を減少している。図4は、また、接触時間を延長するために、浸漬ローラ9及び9’の深さの位置決めを調整できることを示す。また、図4は、図3に示した2層液体媒体5とは対照的に、混合した疎水性材料を含む混合液体媒体17から疎水性材料を除去するために濾過システム1を利用できることを示す。図4の濾過システム1の他の新しい要素について以下でさらに説明する。
【0045】
再び図3を参照すると、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2は、浸漬ローラ9’の下を通過した後、2層液体媒体5を出る。次に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2は整合ローラ8’に接触し、ここで加圧ローラ10は、機械的力を加えてカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2から疎水性材料11を除去する。このように除去された疎水性材料11は、受け皿12内に隔離される。受け皿12内に隔離された疎水性材料13は、後で取り扱うことができる。疎水性材料11がカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2から除去されると、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2は巻き取りリール4に巻き付けられる。以上でさらに詳細に説明したように、巻き取りリール4上のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2は、これで別の濾過経路のために再循環するか、廃棄するか、又は別の濾過経路で使用する前にさらに洗浄にかけることができる。
【0046】
次に図4を参照すると、濾過システム1の別の実施形態は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2からの疎水性材料の除去を補助するために、化学的抽出浴14を有することができることが分かる。化学的抽出浴14は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2の位置決めを補助する浸漬ローラ15を含む。図4には化学的抽出浴14内に浸漬ローラ15が1つしか示されていないが、複数の浸漬ローラがあってもよい。さらに、浸漬ローラ15に付随する追加の整合ローラ(図示せず)があってもよい。また、図4には化学的抽出浴14が1つしか示されていないが、他の実施形態では複数の化学的抽出浴を利用することができる。化学的抽出浴14の位置決めは、加圧ローラ10の前又は後とすることができる。化学的抽出浴14を出ると、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料2は整合ローラ8’に接触し、疎水性材料の分離が図3で上述したように完了する。
【0047】
これも上述したように、本発明の濾過システムは、連続的に動作するように変更することができる。図5は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の可動濾過媒体の連続ループを含む例示的濾過システムの概略図を示す。連続濾過システム20は、ローラ22、23及び33上で張力をかけられたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21の連続ループを含む。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21の連続ループは、疎水性材料と水の混合物を含む混合液体媒体24と接触する。上述したオープンリール式濾過システムの実施形態のように、混合液体媒体24も、疎水性材料層と水性層を含む2層液体媒体とすることができる。浸漬ローラ25及び25’及び整合ローラ26は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21の連続ループを案内して、混合液体媒体24に通す。オープンリール式濾過システムの上述した実施形態のように、浸漬ローラ25の位置決め及び数を調整して、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21と混合液体媒体24との接触時間を変化させることができる。
【0048】
図4に示したオープンリール式濾過システムの実施形態のように、図5に示す連続濾過システム20も、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21から疎水性材料を除去する化学的抽出浴27を含む。化学的抽出浴27は、任意の数の浸漬ローラ28を含むことができ、任意選択で整合ローラ(図示せず)と組み合わせることができる。さらに、連続濾過システム20では任意の数の化学的抽出浴27を使用することができる。任意選択で、連続濾過システム20から化学的抽出浴27及び整合ローラ28を省略することができる。
【0049】
化学的抽出浴27を出ると、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21の連続ループは整合ローラ26’と接触し、そこで加圧ローラ29が機械的力を加えて、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21から疎水性材料30を除去する。除去された疎水性材料30は、受け皿31内に隔離される。受け皿31内に隔離された疎水性材料32は、後で取り扱うことができる。疎水性材料30が除去された後、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21の連続ループは、ローラ23及び33上を循環して、ローラ22に戻り、新しく濾過プロセスを開始する。連続濾過システム20は2つのローラ33の例で説明されているが、任意の数のこのようなローラを使用して、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料21の連続ループの満足できる循環を提供することができる。ローラ33の適切な数を選択する問題は、工学的設計の問題である。
【0050】
一般的に、可動濾過媒体のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、複数の繊維を含む様々な形態のいずれであってもよい。様々な実施形態では、連続長の複数の繊維は、例えば、ヤーン(yarns)、繊維トウ(fiber tows)、テープ、組紐(braids)、織物(woven fabric)、不織布(non-woven fabric)、繊維プライ及び繊維マットなどの形態とすることができる。様々な実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、浸出されたカーボン・ナノチューブを有する繊維材料を含む。本明細書で説明する様々な実施形態のいずれでも、カーボン・ナノチューブを浸出した繊維材料は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、及び有機繊維(例えばアラミド繊維)を含むことができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを浸出した繊維材料は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、有機繊維、炭化珪素(SiC)繊維、炭化ホウ素(BC)繊維、窒化珪素(Si)繊維、酸化アルミニウム(Al)繊維及びこれらの様々な組合せを含むことができる。さらに、上述した様々な繊維材料の形態は、上記及びその他の繊維タイプの任意の混合を含むことができる。図6は、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維の織物(fabric weave)の例示的なSEM画像を示す。様々な実施形態では、繊維材料の個々のフィラメントは、約1μmと約100μmの間の範囲の直径を有する。
【0051】
繊維トウは、撚っていない繊維が緩く結合した束を含む。一般的に、繊維トウの繊維直径は、通常、均一である。繊維トウは、「テックス(tex)」範囲で記述される様々な重量を有し、通常は、約200と2,000の間であるテックス範囲(1000リニアメーター当たりのグラム重量で表される)である。さらに、繊維トウは、例えば、12Kトウ、24Kトウ、48Kトウ等の繊維トウ内にある数千の繊維の数により、しばしば特徴付けられる。
【0052】
ある実施形態では、繊維トウはこれを撚り合わせてヤーンとなる。ヤーンは、撚った繊維の密に結合した束を含む。元の繊維トウと同様に、ヤーンの各繊維の直径は比較的均一である。ヤーンもテックス値で記述される様々な重量を有する。ヤーンの場合、典型的なテックス範囲は、通常、約200と2,000の間である。
【0053】
繊維ブレードは、繊維が高密度に詰め込まれたロープ状構造である。このようなロープ状構造は、例えばヤーン又は繊維トウから組み立てることができる。ブレード構造は中空部分を含むことができる。あるいは、ブレード構造は、別のコア材料の周囲に組み立てることができる。
【0054】
テープは、例えば、織物又は不織布の平坦な繊維トウとして組み立てることができる繊維材料である。テープは幅を変更することができ、一般的にリボンに類似した両面構造である。本明細書で説明する様々な実施形態では、カーボン・ナノチューブを、テープの片側又は両側でテープの繊維材料に浸出することができる。また、様々なタイプ、直径又は長さのカーボン・ナノチューブをテープの各側に成長させることができる。
【0055】
繊維材料を、織物又はシート状構造になるように構成することができる。これらは、上述したテープ以外に、例えば、織物、不織布繊維マット及び繊維プライを含む。このようなより高次の構造は、カーボン・ナノチューブを既に浸出した状態で、元の繊維トウ、ヤーン、フィラメントなどから組み立てることができる。あるいは、このようなより高次の構造は、カーボン・ナノチューブを連続的に浸出するための基材として働くこともできる。
【0056】
同時係属出願に記載されているように、繊維材料は、カーボン・ナノチューブを成長させるために、繊維材料上に触媒ナノ粒子の層(通常は単分子層以内)を提供するように改質される。様々な実施形態では、カーボン・ナノチューブの成長を仲介するために使用される触媒ナノ粒子は、遷移金属及びその様々な塩である。
【0057】
ある実施形態では、繊維材料はバリア・コーティングをさらに含む。例示的なバリア・コーティングは、例えばアルコキシシラン、メチルシロキサン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス及びガラスナノ粒子が挙げられる。例えばある実施形態では、バリア・コーティングは、Accuglass(登録商標)T−11のスピンオンガラス(Honeywell International Inc., Morristown, NJ)である。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ合成のための触媒ナノ粒子は、未硬化のバリア・コーティング材料と組み合わせて、一緒に繊維材料に塗布することができる。他の実施形態では、バリア・コーティング材料は、触媒ナノ粒子が付着する前に繊維材料に添加することができる。一般的に、バリア・コーティングは、カーボン・ナノチューブが成長するために触媒ナノ粒子を炭素原料ガスに曝露できるほど十分に薄い。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、ほぼ触媒ナノ粒子の有効直径以下である。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nmから約100nmの範囲である。他の実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、40nmなど、約10nmから約50nmの範囲である。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nm未満であり、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、及び約10nmを含み、その間の全ての値とその端数を含む。
【0058】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、繊維材料とカーボン・ナノチューブの間の中間層として機能し、カーボン・ナノチューブを繊維材料に機械的に浸出させる。このような機械的浸出は、繊維材料がカーボン・ナノチューブを組織するプラットホームとして機能する頑強なシステムを提供しながら、カーボン・ナノチューブを繊維材料へと搬送する有利な特性を与えることができる。さらに、バリア・コーティングを含むことの利点は、水分に曝露されることによる化学的損傷及び/又はカーボン・ナノチューブの成長を促進するために使用される高温での熱損傷から繊維材料を保護することを含む。ある実施形態では、バリア・コーティングはカーボン・ナノチューブの浸出後に除去される。しかし、他の実施形態では、バリア・コーティングはそのままにしておくこともできる。本発明の濾過システムのある実施形態では、液体媒体から疎水性材料を除去するプロセス中にバリア・コーティングを除去することができる。
【0059】
触媒ナノ粒子の付着後、ある実施形態では化学蒸着(CVD)系のプロセスを使用して、繊維材料上でカーボン・ナノチューブを連続的に成長させる。その結果のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、それ自体が複合構造である。さらに一般的には、カーボン・ナノチューブは、当業者に知られている任意の技術を使用して繊維材料に浸出させることができる。カーボン・ナノチューブ合成の例示的な技術としては、例えばマイクロキャビティ、熱又はプラズマCVD技術、レーザ・アブレーション、アーク放電、火炎合成及び高圧一酸化炭素(HiPCO)合成が挙げられる。ある実施形態では、CVDベースの成長は、カーボン・ナノチューブが電界の方向を辿るように、成長プロセス中に電界を提供することによってプラズマ促進することができる。
【0060】
ある実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に対して実質的に垂直である。言い換えると、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、繊維表面に対してその周囲で垂直である。カーボン・ナノチューブのこの配向は、繊維材料の単位重量当たり高いカーボン・ナノチューブ表面積を提供する。しかし別の実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に実質的に平行にすることができる。
【0061】
ある実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、束になっておらず、それにより繊維材料とカーボン・ナノチューブの間の強力な結合を促進する。束になっていないカーボン・ナノチューブによって、カーボン・ナノチューブの表面積露出の最大化も実現することができる。しかし、他の実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの合成中に成長密度を低下させることによって、非常に均一で絡み合ったカーボン・ナノチューブマットの形態に作成することができる。このような実施形態では、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブが繊維材料の長手軸に対して実質的に垂直に配列されるほど十分密に成長しない。
【0062】
繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブの平均長さは、例えばカーボン・ナノチューブの成長状態への曝露時間、成長温度、及びカーボン・ナノチューブの合成中に使用される炭素含有原料ガス(例えばアセチレン、エチレン及び/又はエタノール)及びキャリアガス(例えばヘリウム、アルゴン、及び/又は窒素)の流量及び圧力の影響を受けることがある。曝露時間は、例えば繊維材料が、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するために使用される反応器を通って搬送されるライン速度を調整することによって、調整することができる。一般的に、カーボン・ナノチューブの合成中に、炭素含有原料ガスは、全反応体積の約0.1%から約15%の範囲で提供される。
【0063】
様々な実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、通常、長さが均一である。ある実施形態では、浸出されたカーボン・ナノチューブの平均長さは約1μmから約500μmの間であり、それは約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、及びその間のすべての値とその端数を含む。ある実施形態では、浸出されたカーボン・ナノチューブの平均長さは約1μm未満であり、それは例えば約0.5μm及びその間のすべての値とその端数を含む。ある実施形態では、浸出されたカーボン・ナノチューブの平均長さは約1μmと約10μmの間であり、それは例えば約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、及びその間のすべての値とその端数を含む。ある実施形態では、浸出されたカーボン・ナノチューブの平均長さは、約25μmと約500μmの間、又は約50μmと約500μmの間、又は約100μmと約500μmの間の範囲である。さらに他の実施形態では、浸出されたカーボン・ナノチューブの平均長さは約500μmより大きく、それは例えば約510μm、約520μm、約550μm、約600μm、約700μm、及びその間のすべての値とその端数を含む。
【0064】
通常、カーボン・ナノチューブの直径は、その形成に触媒作用を及ぼす触媒ナノ粒子の直径とほぼ同じである。従って、カーボン・ナノチューブの特性は、例えばカーボン・ナノチューブの合成に使用される触媒ナノ粒子のサイズを調整することによって追加的に制御することができる。非限定的な例として、約1nmの直径を有する触媒ナノ粒子を使用して、繊維材料に単層カーボン・ナノチューブを浸出することができる。複数のナノチューブ層があるため直径が大きくなる大部分が多層カーボン・ナノチューブの作成、又は単層カーボン・ナノチューブと多層カーボン・ナノチューブとの混合物を作成するために、より大きい触媒ナノ粒子を使用することができる。本開示のある実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、単層カーボン・ナノチューブとすることができる。しかし、他の実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、二層又は多層カーボン・ナノチューブ、又は単層カーボン・ナノチューブと二層又は多層カーボン・ナノチューブとの混合物とすることができる。
【0065】
ある実施形態では、繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、通常、密度分布が均一であり、繊維材料上のカーボン・ナノチューブ密度の均一性と呼ばれる。以上で定義されたように、均一な密度分布の許容範囲はカーボン・ナノチューブを浸出された繊維材料表面積の約±10%である。非限定的な例として、この許容範囲は、8nmの直径及び5つの層を有するカーボン・ナノチューブの場合には、約±1500カーボン・ナノチューブ/μmと同等である。このような数字は、カーボン・ナノチューブ内部の空間が充填可能であると仮定している。ある実施形態では、繊維材料の被覆率(すなわち、カーボン・ナノチューブによって被覆された繊維材料表面積のパーセンテージ)として表される最大カーボン・ナノチューブ密度が約55%という高い値になることがあるが、これもカーボン・ナノチューブが8nmの直径、5つの層及び充填可能な内部空間を有すると仮定している。55%の表面積被覆率は、上述した寸法を有するカーボン・ナノチューブの場合に、約15,000カーボン・ナノチューブ/μmと同等である。ある実施形態では、被覆密度は、最大で約15,000カーボン・ナノチューブ/μmである。繊維材料の表面上への触媒ナノ粒子の付着、カーボン・ナノチューブの成長状態への曝露時間、及びカーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するのに使用される実際の成長状態自体を変更することによって、広範囲のカーボン・ナノチューブの密度を得ることができることが当業者には認識される。
【0066】
ある実施形態では、繊維材料のカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージは、カーボン・ナノチューブの平均長さによって決定される。ある実施形態又は他の実施形態では、繊維材料のカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージは、さらに繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブの被覆密度によって決定される。ある実施形態では、繊維材料は最大40重量で%のカーボン・ナノチューブを含む。ある実施形態では、繊維材料は約0.5重量で%から約40重量で%のカーボン・ナノチューブを含む。他の実施形態では、繊維材料は最大約30重量で%のカーボン・ナノチューブを含む。本発明の実施形態によると、繊維材料上のカーボン・ナノチューブの被覆密度が高いほど濾過が良好になる。何故なら、疎水性材料を収着するためのカーボン・ナノチューブの表面積が大きくなるからである。
【0067】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出すると、例えば繊維材料を水分、酸化、摩滅及び/又は圧縮から保護するサイジング剤としてなど、さらなる目的に役立つことができる。このようなカーボン・ナノチューブベースのサイジング剤は、従来のサイジング剤の代わりに、又はそれに加えて繊維材料に塗布することができる。従来のサイジング剤はタイプ及び機能が多種多様であり、例えば界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、シロキサン、アルコキシシラン、アミノシラン、シラン、シラノール、ポリビニルアルコール、デンプン、及びそれらの混合物を含む。
【0068】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを浸出する前に、繊維材料から従来のサイジング剤を除去することができる。任意選択で、従来のサイジング剤を別の従来のサイジング剤と交換することができる。ある実施形態では、液体媒体から疎水性材料を除去するプロセス中に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料から従来のサイジング剤を除去することができる。液体媒体から疎水性材料を除去するプロセス中に従来のサイジング剤を除去可能である場合、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料中に従来のサイジング剤を維持することが望ましいならば、元の従来のサイジング剤を、液体媒体及び/又は除去プロセスに使用される化学的抽出浴との親和性がこれより高い別の従来のサイジング剤と交換することができる。
【0069】
他の様々な実施形態では、可動カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料濾過媒体を使用する方法について、本明細書で説明する。ある実施形態では、これらの方法を使用して、液体媒体から疎水性材料を除去することができる。ある実施形態又は他の実施形態では、これらの方法を変更して、液体媒体から所望の微量疎水性材料を単離し、精製することができる。
【0070】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む可動濾過媒体を提供し、疎水性材料を含む液体媒体を通して可動濾過媒体を搬送し、液体媒体から疎水性材料の少なくとも一部を可動濾過媒体上に収着し、疎水性材料を収着した後、少なくとも1つの加圧ローラを通して可動濾過媒体を搬送することを含む。ある実施形態では、本発明の方法は、上述したように、少なくとも1つの加圧ローラで除去した任意の疎水性材料を収集装置内で隔離することをさらに含む。
【0071】
ある実施形態では、液体媒体を通して可動濾過媒体を搬送するプロセスは、可動濾過媒体に少なくとも1つの整合ローラ及び少なくとも1つの浸漬ローラ上を通過させることを含む。ある実施形態では、可動濾過媒体は、オープンリール式処理システム内で第1のリールと第2のリールの間を搬送される。他の実施形態では、可動濾過媒体は、複数のローラ上を連続的に搬送される閉ループ構造とすることができる。
【0072】
ある実施形態では、本発明の方法は、疎水性材料を収着した後、少なくとも1つの化学的抽出浴を通して可動濾過媒体を搬送することをさらに含むことができる。化学的抽出浴に関する追加の詳細については上述されている。
【0073】
本発明の方法のある実施形態では、複数の繊維は、例えばヤーン、繊維トウ、テープ、組紐、織物、不織布、繊維プライ及び繊維マットなどの形態とすることができる。
【0074】
一般的に、疎水性材料を含むいかなる液体媒体も本発明の方法により処理することができる。ある実施形態では、液体媒体は、疎水性材料を含む上層、及び水性の下層を有する2層である。別の実施形態では、疎水性材料は、密度が十分高い場合は下層を形成することができる。ある実施形態では、2層は油と水の2層である。他の実施形態では、液体媒体は、混合した疎水性材料を含む水相であってもよい。ある実施形態では、混合した疎水性材料は油である。従って、本発明の方法のある実施形態では、液体媒体は油と水の2層とすることができ、他の実施形態では、液体媒体は水又は同様の水相と混合した油とすることができる。
【0075】
ある実施形態では、液体媒体は、微量の有機汚染物質(例えば殺虫剤、工業用化学物質、及び溶媒残滓)を含む水源とすることができる。様々な実施形態では、水源は、天然であっても又は人工であってもよい。例えばある実施形態では、本発明の処理方法を使用して、微量有機汚染物質を除去する必要がある河川、池、又は同様の水源を処理することができる。他の実施形態では、本発明の方法を使用して、微量有機汚染物質を含む地下水源を処理することができる。さらに他の実施形態では、本発明の方法を使用して、有機汚染物質を除去する必要がある工業用流出水路又は滞留池を処理することができる。
【0076】
ある実施形態では、本発明の方法を使用して、他の方法では比較的アクセス不能である液体媒体から疎水性材料を単離することができる。例えばある実施形態では、液体媒体は地下層中の油であることがあり、任意選択で水及び/又は粒子状物質(例えば砂及び沈泥)を含む。このような実施形態では、本発明の方法を使用して、地下層から油を除去しながら、他の地層成分、特に水を残すことができる。
【0077】
ある実施形態では、本発明の方法を変更して、液体媒体から所望の疎水性材料を単離して、精製することができる。例えば、本発明の方法を採用することにより、収量が低い有機化合物を水相から単離することができる。ある実施形態では、液体媒体は発酵培養液とすることができ、単離して精製した疎水性材料は発酵生成物である。
【0078】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む可動濾過媒体を提供することと、微量の疎水性化合物を含む液体媒体を通して可動濾過媒体を搬送することと、液体媒体から微量の疎水性化合物の少なくとも一部を可動濾過媒体上に収着することと、可動濾過媒体から微量の疎水性化合物を単離することとを含む。
【0079】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、第1のリール及び第2のリールを含むオープンリール式処理システムに接続され、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料である複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む可動濾過媒体を提供することと、疎水性材料を含む液体媒体を通して可動濾過媒体を搬送することと、液体媒体から疎水性材料の少なくとも一部を可動濾過媒体上に収着することと、疎水性材料を収着した後に、少なくとも1つの加圧ローラを通して可動濾過媒体を搬送することと、少なくとも1つの加圧ローラにて除去した任意の疎水性材料を収集装置内で隔離することとを含む。
【0080】
本明細書で開示する実施形態は、各々、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする、米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、第12/611,103号及び第12/938,328号に記載された方法によって容易に作成することができるカーボン・ナノチューブ浸出繊維を利用する。そこで説明されているプロセスについて、以下で簡単に説明する。
【0081】
カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するために、カーボン・ナノチューブを繊維材料上で直接合成する。ある実施形態では、これは、最初にカーボン・ナノチューブ形成触媒(例えば触媒ナノ粒子)を繊維材料上に付着させることによって遂行される。この触媒付着の前に、幾つかの準備プロセスを実行することができる。
【0082】
ある実施形態では、任意選択で繊維材料をプラズマで処理し、触媒を受け入れるように繊維表面を準備することができる。例えば、プラズマ処理したガラス繊維材料は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を付着させることができる粗面化したガラス繊維表面を提供することができる。ある実施形態では、プラズマは繊維表面を「洗浄」する働きもする。従って、繊維表面を「粗面化」するプラズマプロセスは、触媒の付着を促進する。粗さは通常、ナノメートルのスケールである。プラズマ処理プロセスで、深さが数ナノメートルで直径が数ナノメートルであるクレータ又は窪みが形成される。このような表面改質は、これらに限定されないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、窒素、及び水素など、様々な異なる気体のうち任意の1つ又は複数のプラズマを使用して達成することができる。
【0083】
ある実施形態では、採用されている繊維材料が、それに伴うサイジング剤を有する場合、このようなサイジングは触媒付着前に任意選択で除去することができる。任意選択で、サイジング剤は触媒付着後に除去することができる。ある実施形態では、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブの合成中に、又はカーボン・ナノチューブ合成の直前に予熱工程で遂行することができる。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブ合成プロセスの全体を通して、多少のサイジング物質が残ることがある。
【0084】
カーボン・ナノチューブ形成触媒の付着前、又は付着に付随したさらに別の任意選択の工程は、バリア・コーティングを繊維材料上に塗布することである。バリア・コーティングは、炭素繊維、有機繊維、ガラス繊維、金属繊維などの敏感な繊維材料の一体性を保護するように設計された材料である。このようなバリア・コーティングは、例えばアルコキシシラン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス及びガラスナノ粒子を含むことができる。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、1つの実施形態では、未硬化のバリア・コーティング材料に添加し、次に繊維材料に一緒に塗布することができる。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒の付着前にバリア・コーティング材料を繊維材料に添加することができる。このような実施形態では、バリア・コーティングは触媒付着前に部分的に硬化することができる。バリア・コーティング材料は、その後のCVDなどのカーボン・ナノチューブ成長プロセスのためにカーボン・ナノチューブ形成触媒を炭素原料ガスに曝露できるほど十分に薄い厚さとすることができる。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さはカーボン・ナノチューブ形成触媒の有効直径未満、又はそれとほぼ等しい。カーボン・ナノチューブ形成触媒及びバリア・コーティングが適切な位置であれば、バリア・コーティングを十分硬化することができる。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、炭素原料ガスがそれでも触媒の部位にアクセスできる限り、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効直径より大きくてもよい。このようなバリア・コーティングは、炭素原料ガスがカーボン・ナノチューブ形成触媒にアクセスできるほど十分に多孔性とすることができる。
【0085】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは繊維材料とカーボン・ナノチューブの間の中間層として働くことができ、繊維材料へのカーボン・ナノチューブの機械的浸出を補助することもできる。このような機械的浸出は、繊維材料がカーボン・ナノチューブを組織するプラットホームとして機能するカーボン・ナノチューブ成長のための頑強なシステムを提供しながら、カーボン・ナノチューブを繊維材料へと搬送する有利な特性を与えることができる。バリア・コーティングを有する機械的浸出の利点は、上述した間接的なタイプの浸出と同様である。さらに、バリア・コーティングを含めることの利点は、例えば、水分に曝露することによる化学的損傷及び/又はカーボン・ナノチューブの成長を促進するために使用される高温での熱損傷から、繊維材料を即座に保護することを含む。
【0086】
以下でさらに説明するように、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、遷移金属触媒ナノ粒子の形でカーボン・ナノチューブ形成触媒を含む液体溶液として準備することができる。合成したカーボン・ナノチューブの直径は、上述したような遷移金属触媒ナノ粒子のサイズに関連する。
【0087】
カーボン・ナノチューブの合成は、化学蒸着(CVD)プロセス、又は高温で生じる関連のカーボン・ナノチューブ成長プロセスに基づいて実行することができる。特定の温度は触媒選択の関数であり、通常は約500℃から約1000℃の範囲でよい。従って、カーボン・ナノチューブの合成は、カーボン・ナノチューブの成長を支援するために、繊維材料を上述した範囲の温度に加熱することを含む。
【0088】
ある実施形態では、触媒を含む繊維材料上にてCVDで促進したカーボン・ナノチューブの成長を実行する。CVDプロセスは、例えばアセチレン、エチレン及び/又はエタノールなどの炭素含有原料ガスによって促進することができる。カーボン・ナノチューブ成長プロセスは一般的に、1次キャリアガスとして不活性ガス(例えば窒素、アルゴン及び/又はヘリウム)を使用する。炭素含有原料ガスは通常、混合物合計の約0.1%から約15%の間の範囲で提供される。CVD成長のための実質的に不活性な環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去することによって準備することができる。
【0089】
カーボン・ナノチューブ成長プロセスでは、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ成長のために動作可能である遷移金属触媒ナノ粒子の部位にて成長する。カーボン・ナノチューブの成長に影響するように、任意選択で強力なプラズマ生成電界の存在を採用することができる。すなわち、成長は電界の方向を辿る傾向がある。プラズマ溶射及び電界の幾何学形状を適切に調整することにより、垂直に配列されたカーボン・ナノチューブ(すなわち、繊維材料の長手軸に対して垂直)を合成することができる。特定の条件では、プラズマが存在しなくても、間隔が狭いカーボン・ナノチューブが実質的に垂直の成長方向を維持することができ、その結果、カーペット又はフォレストに類似したカーボン・ナノチューブの密な配列になる。
【0090】
繊維材料上に触媒ナノ粒子を付着させる動作は、例えば触媒ナノ粒子の溶液の溶射又は浸漬コーティングなどの幾つかの技術によって、又は例えばプラズマプロセスによって実行できる気相蒸着によって遂行することができる。従って、ある実施形態では、溶媒中で触媒溶液を形成した後、繊維材料に溶液を溶射又は浸漬コーティングすることによって、又は溶射と浸漬コーティングの組合せによって、触媒を塗布することができる。いずれの技術も、単独で、又は組み合わせて使用し、1回、2回、3回、4回と、カーボン・ナノチューブを形成するために使用可能な触媒ナノ粒子で十分均一にコーティングされた繊維材料を提供する任意の回数まで、採用することができる。例えば浸漬コーティングを採用する場合、繊維材料は、第1の浸漬浴の第1の滞留時間だけ第1の浸漬浴内に配置することができる。第2の浸漬浴を採用する場合は、繊維材料は第2の滞留時間だけ第2の浸漬浴内に配置することができる。例えば繊維材料は、浸漬構成及びライン速度に応じて、約3秒から約90秒の間、カーボン・ナノチューブ形成触媒の溶液に曝すことができる。溶射又は浸漬コーティングのプロセスを採用して、触媒表面密度が表面被覆率約5%未満から表面被覆率約80%にもなる繊維材料を得ることができる。表面密度が高くなると(例えば約80%)、カーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子はほぼ単層になる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料上にコーティングするプロセスでは、せいぜい単層しか生成されない。例えばカーボン・ナノチューブ形成触媒の積み重ねの上にカーボン・ナノチューブが成長すると、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出する程度を損なうことがある。他の実施形態では、蒸発技術、電着技術、及び当業者に知られている他のプロセス、例えば金属有機物、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成としてプラズマ原料ガスに遷移金属触媒を添加するプロセスを使用して、遷移金属触媒ナノ粒子を繊維材料上に付着させることができる。
【0091】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維の製造プロセスは連続的になるように設計されているので、巻き取り可能な繊維材料は一連の浴で浸漬コーティングすることができ、浸漬コーティング浴は空間的に離間している。炉から新しく形成されるガラス繊維のように、新生繊維が新しく生成される連続的プロセスでは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬浴又は溶射は、新しく形成された繊維材料を十分冷却した後の第1の工程とすることができる。ある実施形態では、新しく形成されたガラス繊維の冷却は、分散したカーボン・ナノチューブ形成触媒粒子を有する冷却水噴射で遂行することができる。
【0092】
ある実施形態では、連続的プロセスで繊維を生成し、それにカーボン・ナノチューブを浸出する場合は、サイジング剤を塗布する代わりに、カーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布することができる。他の実施形態では、他のサイジング剤が存在する状態で、カーボン・ナノチューブ形成触媒を、新しく形成された繊維材料に塗布することができる。このようにカーボン・ナノチューブ形成触媒と他のサイジング剤を同時に塗布すると、繊維材料と表面接触したカーボン・ナノチューブ形成触媒を提供して、カーボン・ナノチューブの浸出を確実に行うことができる。別の実施形態では、繊維材料が十分に軟質の状態である、例えば焼き鈍し温度付近、又はそれより低い間に、カーボン・ナノチューブ形成触媒を溶射又は浸漬コーティングによって新生繊維に塗布することができ、従って、カーボン・ナノチューブ形成触媒が繊維材料の表面にわずかに埋め込まれる。カーボン・ナノチューブ形成触媒を例えば高温のガラス繊維材料上に付着させる場合は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の融点を超え、それによってナノ粒子が融解し、及びその結果としてカーボン・ナノチューブの特徴(例えば直径)の制御を失うことがないように、注意しなければならない。
【0093】
カーボン・ナノチューブ形成触媒溶液は、任意のd‐ブロック遷移金属の遷移金属ナノ粒子溶液でよい。また、ナノ粒子は元素の形態、塩の形態、及びそれらの混合物のd‐ブロック金属の合金と非合金の混合物を含むことができる。このような塩の形態としては、酸化物、炭化物、及び窒化物、酢酸塩、硝酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例示的遷移金属ナノ粒子としては、例えばNi、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au及びAg、その塩、及びそれらの混合物が挙げられる。ある実施形態では、このようなカーボン・ナノチューブ形成触媒は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に直接塗布又は浸出することによって、繊維材料上に付着する。多くのナノ粒子遷移金属触媒が、例えばFerrotec Corporation(ニューハンプシャー州ベッドフォード)などの様々な供給業者から商業的に容易に入手可能である。
【0094】
カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に塗布するために使用される触媒溶液は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を均一に分散できるようにする任意の一般的な溶媒であってもよい。このような溶媒としては、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又はカーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子の適切な分散を生成するために極性が制御された任意の他の溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。触媒溶液中のカーボン・ナノチューブ形成触媒の濃度は、触媒対溶媒が約1:1から約1:10,000の範囲とすることができる。
【0095】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に塗布した後、繊維材料を任意選択で軟化温度まで加熱することができる。この工程は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料の表面に埋め込むことを補助して、種からの成長を助長して、先端の成長を防止することができ、触媒は、成長するカーボン・ナノチューブの前縁の先端に浮遊している。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料上に付着させた後の繊維材料の加熱は、約500℃から約1000℃の間の温度とすることができる。カーボン・ナノチューブの成長にも使用することができるこのような温度への加熱は、繊維材料上に既存のサイジング剤があればすべて除去する働きをして、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料上に直接付着させることを可能にすることができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、加熱前にサイジングコーティングの表面に配置することもできる。加熱工程を使用して、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料の表面上に付着させたまま、サイジング材料を除去することができる。これらの温度での加熱は、カーボン・ナノチューブを成長させるために炭素含有原料ガスを導入する前に、又はそれと実質的に同時に実行することができる。
【0096】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するプロセスは、サイジング剤を繊維材料から除去し、サイジング除去後にカーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に塗布し、繊維材料を少なくとも約500℃に加熱し、繊維材料上でカーボン・ナノチューブを合成することを含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの動作は、サイジング剤を繊維材料から除去し、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に塗布し、カーボン・ナノチューブの合成に使用できる温度まで繊維材料を加熱し、炭素プラズマを、触媒を含む繊維材料に溶射することを含む。従って、市販の繊維材料を採用する場合、カーボン・ナノチューブ浸出繊維を構築するプロセスは、触媒ナノ粒子を繊維材料上に付着させる前に、繊維材料からサイジング剤を除去する別個の工程を含むことができる。何らかの市販のサイジング物質が存在する場合、それは、カーボン・ナノチューブ形成触媒と繊維材料との表面接触を防止し、繊維材料へのカーボン・ナノチューブの浸出を阻止することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ成長状態でのサイジング剤除去が確保されている場合、サイジング剤除去は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を付着させた後であるが、炭素含有原料ガスを提供する直前、又は提供中に実行することができる。
【0097】
カーボン・ナノチューブを合成する工程は、カーボン・ナノチューブを形成する多数の技術を含むことができ、それはマイクロキャビティ、熱又はプラズマCVD技術、レーザ・アブレーション、アーク放電、火炎合成、及び高圧一酸化炭素法(HiPCO)を含むが、これらに限定されない。特に、CVD中には、カーボン・ナノチューブ形成触媒が付着したサイジング済み繊維材料を直接使用することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの合成中に、従来のサイジング剤があればすべて除去することができる。ある実施形態では、他のサイジング剤が除去されないが、サイジングを通して炭素含有原料ガスが拡散するので、カーボン・ナノチューブの合成及び繊維材料への浸出を妨げない。ある実施形態では、アセチレンガスをイオン化して、カーボン・ナノチューブ合成用の低温炭素プラズマのジェットを生成することができる。プラズマは、触媒を含む繊維材料へと配向される。従って、ある実施形態では、繊維材料上でのカーボン・ナノチューブの合成は、(a)炭素プラズマを形成し、(b)繊維材料上に付着した触媒へと炭素プラズマを配向することを含む。成長するカーボン・ナノチューブの直径は、カーボン・ナノチューブ形成触媒のサイズによって規定される。ある実施形態では、サイジング済み繊維材料を約550℃から約800℃の間まで加熱して、カーボン・ナノチューブの成長を促進することができる。カーボン・ナノチューブの成長を開始するために、2つ以上のガスが反応器に供給される。すなわち、不活性キャリアガス(例えばアルゴン、ヘリウム又は窒素)及び炭素含有原料ガス(例えばアセチレン、エチレン、エタノール又はメタン)である。カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の部位にて成長する。
【0098】
ある実施形態では、CVD成長プロセスはプラズマ促進することができる。プラズマは、成長プロセス中に電界を提供することによって生成することができる。これらの状態で成長したカーボン・ナノチューブは、電界の方向を辿ることができる。従って、反応器の幾何学形状を調整することによって、垂直に配列されたカーボン・ナノチューブを成長させることができ、ここで、カーボン・ナノチューブは繊維材料の長手軸に対して実質的に垂直である(例えば半径方向の成長)。ある実施形態では、繊維材料の周囲で半径方向の成長が生じるために、プラズマは必要ではない。例えば、テープ、マット、織物、プライなどのような明瞭な側部を有する繊維材料の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料の片側又は両側に付着させることができる。同様に、このような状態では、カーボン・ナノチューブも繊維材料の片側又は両側に成長させることができる。
【0099】
上述したように、カーボン・ナノチューブの合成は、巻き取り可能な長さの繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出する連続的プロセスを提供するのに十分な速度で実行される。以下で例示するように、無数の装置の構成がこのような連続的合成を容易にする。
【0100】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を「全プラズマ」プロセスで準備することができる。このような実施形態では、繊維材料が、多数のプラズマ仲介工程を通して、最終的なカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成する。第1のプラズマプロセスは、繊維表面改質工程を含むことができる。これは、上述したように、繊維材料の表面を「粗面化」して、触媒付着を促進するプラズマプロセスである。これも上述したように、表面改質は、これらに限定されないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素、及び窒素を含む様々な異なるガスのうち任意の1つ又は複数のプラズマを使用して達成することができる。
【0101】
表面改質後に、繊維材料は触媒塗布へと進む。本発明の全プラズマプロセスでは、この工程は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料上に付着させるプラズマプロセスである。カーボン・ナノチューブ形成触媒は通常、上述したような遷移金属である。遷移金属触媒は、例えば磁性流体、金属有機物、金属塩、それらの混合物、又は気相輸送を促進するために適切な任意の他の組成を含む非限定的な形態の前駆物質としてプラズマ原料ガスに添加することができる。カーボン・ナノチューブ形成触媒は周囲環境内で室温にて塗布することができ、真空雰囲気も不活性雰囲気も必要ではない。ある実施形態では、触媒を塗布する前に繊維材料を冷却することができる。
【0102】
全プラズマプロセスを継続すると、カーボン・ナノチューブの合成は、カーボン・ナノチューブ成長反応器内で実行される。カーボン・ナノチューブの成長は、プラズマ化学蒸着を使用して達成することができ、ここで触媒を含む繊維に炭素プラズマが溶射される。カーボン・ナノチューブの成長は高温(触媒に応じて通常は約500℃から約1000℃の範囲)で実行されるので、炭素プラズマに曝露する前に、触媒を含む繊維を加熱することができる。カーボン・ナノチューブ浸出プロセスでは、繊維材料は軟化が生じるまで任意選択で加熱することができる。加熱後、繊維材料は炭素プラズマを受ける準備が整う。炭素プラズマは、例えば炭素含有原料ガス、例えばアセチレン、エチレン、エタノールなどを、ガスをイオン化することができる電界に通すことによって生成することができる。この低温炭素プラズマは、溶射ノズルを介して繊維材料へと配向される。繊維材料は、プラズマを受けるために、溶射ノズルの約1センチメートル以内など、溶射ノズルに近接していてもよい。ある実施形態では、プラズマ溶射装置にて繊維材料の上に加熱装置を配置して、繊維材料の高温を維持することができる。
【0103】
連続的カーボン・ナノチューブ合成の別の構成は、繊維材料上で直接カーボン・ナノチューブを合成して成長させる特別な矩形の反応器を含む。反応器は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を生産する連続的なインラインプロセスで使用するように設計することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、マルチゾーン反応器内で大気圧及び約500℃から約800℃の範囲の高温のCVDプロセスによって成長する。カーボン・ナノチューブの合成が大気圧で実行されることは、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出する連続的処理ラインに反応器を組み込むことを容易にする1つの要因である。このようなゾーン反応器を使用するインライン連続処理と矛盾しない別の利点は、カーボン・ナノチューブの成長が、当技術分野で一般的な他の手順及び装置の構成のような分単位(又はそれ以上)ではなく、秒単位で実行されることである。
【0104】
様々な実施形態によるカーボン・ナノチューブ合成反応器は、以下の特徴を含む。
【0105】
矩形構成の合成反応器:当技術分野で知られている典型的なカーボン・ナノチューブ合成反応器の断面は、円形である。それには幾つかの理由があり、例えば歴史的な理由(例えば研究所では円筒形の反応器が使用されることが多い)及び利便性(例えば流体力学は円筒形の反応器で容易にモデル化され、加熱器システムは円管チューブ(例えば石英など)に容易に対応する)、並びに製造の容易さである。円筒形の慣例から逸脱して、本開示は、矩形の断面を有するカーボン・ナノチューブ合成反応器を提供する。逸脱する理由は、少なくとも以下に挙げる。
【0106】
1)反応器容積の非効率的な使用。反応器で処理できる多くの繊維材料は比較的平面(例えば平坦なテープ、シート状形態、又は開繊したトウ又はロービング)であるので、円形の断面では反応器容積の使用が非効率的である。このように非効率的な結果、円筒形のカーボン・ナノチューブ合成反応器には幾つかの欠点がある。例えば、a)十分なシステムパージの維持;反応器の容積を増加させるには、同じレベルのガスパージを維持するためにガス流量を増加させる必要があり、その結果、オープンな環境でカーボン・ナノチューブを大量生産するには非効率的である。b)炭素含有原料ガス流量の増加;前記a)に従ってシステムパージ用の不活性ガス流を相対的に増加させるには、炭素含有原料ガスの流量を増加させる必要がある。例示的な12Kのガラス繊維ロービングの体積が、矩形の断面を有する合成反応器の総容量の約2000分の1であるとする。同等の円筒形の反応器(すなわち、矩形断面の反応器と同じ平坦化したガラス繊維材料を収容する幅がある円筒形反応器)では、ガラス繊維材料の体積は反応器の容積の約17,500分の1になる。CVDなどのガス付着プロセスは通常、圧力及び温度によってのみ支配されるが、容積は付着の効率に重大な影響を及ぼすことがある。矩形の反応器の場合は、まだ余分な容積があり、この余分な容積が望まない反応を促進する。しかし、円筒形の反応器は、望まない反応を促進するのに使用可能な容積の約8倍の容積を有する。このように競合する反応が生じる可能性が高くなるので、円筒形の反応器内では所望の反応の効果的な発生がさらに低速になる。このようにカーボン・ナノチューブの成長が低速になることは、連続的な成長プロセスの開発にとって問題となる。矩形の反応器構造の別の利点は、反応器のチャンバーの高さを低くすることによって、反応器の容積をさらに減少させて、容積の比率を改良し、反応をさらに効率的にできることである。本明細書で開示するある実施形態では、矩形の合成反応器の総容積は、合成反応器を通過している繊維材料の総体積の約3000倍以内である。ある別の実施形態では、矩形の合成反応器の総容積は、合成反応器を通過している繊維材料の総体積の約4000倍以内である。あるさらに別の実施形態では、矩形の合成反応器の総容積は、合成反応器を通過している繊維材料の総体積の約10,000倍未満である。また、円筒形の反応器を使用する場合は、矩形の断面を有する反応器と比較して同じ流量比を提供するために、より多くの炭素含有原料ガスが必要であることは注目に値する。ある他の実施形態では、合成反応器は矩形ではないが、比較的それに類似し、円形の断面を有する反応器に対して反応器の容積が同様に減少する多角形で表される断面を有することを認識されたい。c)問題のある温度分布;比較的小さい直径の反応器を使用する場合は、チャンバーの中心からその壁への温度勾配が最小になるが、商業規模の生産で使用されるように反応器のサイズが増大するにつれ、このような温度勾配が大きくなる。温度勾配の結果、繊維材料全体で製品の品質が変動する(すなわち、製品の品質が半径方向の位置の関数として変動する)。この問題は、矩形の断面を有する反応器を使用した場合、実質的に回避される。特に平面の基材を使用する場合は、基材のサイズが拡大するにつれても反応器の高さを一定に維持することができる。反応器の頂部と底部の間の温度勾配は基本的に無視することができ、その結果、熱の問題及びその結果としての製品品質の変動が回避される。
【0107】
2)ガスの導入。当技術分野では通常、管状の炉が採用されるので、典型的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は、一端でガスを導入し、他端で反応器を通してそれを引き出す。本明細書で開示するある実施形態では、ガスは、反応器の側部を通して、又は頂部及び底部を通して、反応器の中心にて、又は目標成長ゾーン内に対称的に導入することができる。これは、全体的なカーボン・ナノチューブの成長速度を改良する。何故なら、入ってくる原料ガスがシステムの最高温度部分にて連続的に補給されるからである。この部分は、カーボン・ナノチューブの成長が最も活発である場所である。
【0108】
ゾーニング。比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーが、矩形の合成反応器の両端から延在している。高温のガスを外部環境(すなわち、矩形の反応器の外側)と混合する場合は、繊維材料の劣化が増大することになると出願人は判断した。低温のパージゾーンは、内部システムと外部環境との間に緩衝部を提供する。当技術分野で知られているカーボン・ナノチューブ合成反応器の構成は通常、基材を慎重に(及びゆっくり)冷却する必要がある。本発明の矩形のカーボン・ナノチューブ合成反応器の出口にある低温パージゾーンは、連続的なインライン処理で必要とされるような短期間での冷却を達成する。
【0109】
非接触式ホットウォール型金属製反応器。ある実施形態では、高温壁の金属製反応器(例えばステンレス鋼)を採用する。このタイプの反応器を使用することは、直観に反するように見えることがある。何故なら、金属、特にステンレス鋼の方が炭素付着(例えば煤及び副産物の形成)の影響を受け易いからである。従って、大部分のカーボン・ナノチューブ合成反応器は石英で作成される。この方が付着する炭素が少なく、石英の方が洗浄し易く、石英はサンプルの観察を容易にするからである。しかし、ステンレス鋼の方が煤及び炭素付着が多い結果、より一定で効率的、高速、及び安定したカーボン・ナノチューブの成長となることを出願人は観察した。理論に拘束されるものではないが、大気圧での動作と組み合わせて、反応器内で生じるCVDプロセスは拡散が限定されることが示されている。それは、カーボン・ナノチューブ形成触媒が「過剰供給」されることであり、すなわち(反応器が不完全真空下で動作している場合より)比較的高い分圧により、反応器システム内で使用可能な炭素が多すぎることである。その結果、開放型システム、特に清浄なシステムでは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の粒子に付着できる炭素が多すぎ、カーボン・ナノチューブを合成する能力を損なってしまう。ある実施形態では、反応器が「汚れて」いる、すなわち、金属質の反応器壁に煤が付着している場合に、矩形の反応器を意図的に運転する。炭素が反応器の壁に付着して単分子層になると、炭素が容易にその上に付着する。使用可能なカーボンが多少、このメカニズムによって「後退」するので、ラジカルとして残っている炭素原料は、触媒の作用を損なわない速度でカーボン・ナノチューブ形成触媒と反応する。既存のシステムは「清浄な状態」で運転され、連続処理に対して開放されるような場合は、成長速度が低下した状態でカーボン・ナノチューブの歩留まりが非常に低下する。
【0110】
通常は上述したようにカーボン・ナノチューブ合成は「汚れた」状態で実行することが有利であるが、それにもかかわらず、装置の特定の部分(例えばガスマニフォールド及び入口)は、煤が閉塞部を生成した場合にカーボン・ナノチューブの成長に悪影響を及ぼすことがある。この問題を解決するために、カーボン・ナノチューブ成長反応チャンバーのこのような区間は、例えばシリカ、アルミナ、又はMgOなどの煤を阻止するコーティングで保護することができる。実際には、装置のこれらの部分は、これらの煤を阻止するコーティングを浸漬コーティングすることができる。これらのコーティングとともにINVAR(登録商標)などの金属を使用することができる。何故なら、INVARは同様のCTE(熱膨張係数)を有して、高温でのコーティングの適切な付着を確実に行い、重大なゾーンに煤が大量に蓄積するのを防止するからである。
【0111】
触媒還元とカーボン・ナノチューブ合成の組合せ。本明細書で開示する特定のカーボン・ナノチューブ合成反応器では、触媒還元とカーボン・ナノチューブ成長との両方が反応器内で生じる。このことが重大であるのは、還元工程が、別個の動作として実行する場合に連続プロセスで使用するのに十分なほどタイムリーに遂行できないからである。当技術分野で知られている典型的なプロセスでは、還元工程は通常、実行に1〜12時間かかる。本開示によると、この両方の動作が反応器内で生じるが、それは少なくとも1つには、炭素含有原料ガスが、円筒形の反応器を使用する当技術分野で典型的な場合のように端部ではなく、反応器の中心にて導入されるからである。還元プロセスは、繊維材料が加熱されたゾーンに入るにつれて実行される。この時点で、ガスには、(水素とラジカルの相互作用を介して)触媒を還元する前に、壁と反応して冷めるだけの時間がある。還元が生じるのはこの遷移領域である。システムの最高温度の等温ゾーンにて、カーボン・ナノチューブの成長があり、最大の成長速度は反応器の中心付近にあるガス入口の近傍で生じる。
【0112】
ある実施形態では、例えばトウ又はロービングなどの緩く結びつけられた繊維材料を採用する場合(例えばガラスロービング)、連続プロセスは、トウ又はロービングのストランド及び/又はフィラメントを開繊する工程を含むことができる。従って、トウ又はロービングがスプールから繰り出されると、例えば真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を使用して、これを開繊することができる。比較的剛性が高いことがある例えばサイジング済みガラス繊維ロービングを採用する場合は、ロービングを「軟化」して繊維の開繊を促進するために、追加の加熱を採用することができる。個々のフィラメントを含む開繊した繊維は、フィラメントの全表面積を曝露するほど十分に開繊し、従って、ロービングがその後のプロセス工程にさらに効率的に反応できるようにすることができる。例えば、開繊したトウ又はロービングは、上述したようなプラズマシステムで構成された表面処理ステップを通過することができる。粗面化した開繊した繊維は、次にカーボン・ナノチューブ形成触媒浸漬浴を通過することができる。その結果、その表面上に半径方向に分散した触媒粒子を有するガラスロービングの繊維になる。次に、ロービングの触媒を含む繊維は、上述した矩形のチャンバーなどの適切なカーボン・ナノチューブ成長チャンバーに入り、ここで大気圧のCVD又はプラズマCVDプロセスを通る流れを使用して、毎秒数ミクロンという高い速度でカーボン・ナノチューブを合成する。ロービングの繊維は、ここでは半径方向に配列されたカーボン・ナノチューブを有し、カーボン・ナノチューブ成長反応器を出る。
【0113】
本発明の様々な実施形態の活動に重大な影響を及ぼさない変更も、本明細書で提供する本発明の定義内に含まれることを理解されたい。開示された実施形態に関して本発明を説明してきたが、これらは本発明の例示にすぎないことが当業者には容易に認識される。様々な変更は、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神から逸脱することなく実行できることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ浸出繊維材料を含む巻き取り可能な長さの複数の繊維を含む濾過媒体を備える濾過システム。
【請求項2】
前記複数の繊維は、ヤーン、繊維トウ、テープ、組紐(braids)、織物、不織布、繊維プライ、及び繊維マットからなる群から選択される形態を含む請求項1に記載の濾過システム。
【請求項3】
少なくとも1つの浸漬ローラと少なくとも1つの整合ローラを、さらに備える請求項1に載の濾過システム。
【請求項4】
第1のリールと第2のリールを備えるオープンリール式処理システムを、さらに備え、前記濾過媒体は、前記第1のリールから前記第2のリールへと搬送される請求項1に記載の濾過システム。
【請求項5】
前記濾過媒体は、複数のローラ上で連続的に搬送される閉ループ構造を備える請求項1に記載の濾過システム。
【請求項6】
搬送される前記濾過媒体が通る少なくとも1つの加圧ローラを、さらに備える請求項1に記載の濾過システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの加圧ローラで前記濾過媒体から除去された任意の液体を隔離するように動作可能である少なくとも1つの収集装置を、さらに備える請求項6に記載の濾過システム。
【請求項8】
搬送される前記濾過媒体が通る少なくとも1つの化学的抽出浴を、さらに備える請求項6に記載の濾過システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの加圧ローラで前記濾過媒体から除去した任意の液体を隔離するように動作可能である少なくとも1つの収集装置を、さらに備える請求項8に記載の濾過システム。
【請求項10】
搬送される前記濾過媒体が通る少なくとも1つの化学的抽出浴を、さらに備える請求項1に記載の濾過システム。
【請求項11】
第1のリールと第2のリールを備えるオープンリール式処理システムと、
カーボンナノチューブ浸出繊維材料を含む複数の連続長の繊維を備え、前記オープンリール式処理システムに接続された濾過媒体と、
前記濾過媒体に対して張力を与える少なくとも1つの整合ローラと少なくとも1つの浸漬ローラと、
搬送される前記濾過媒体が通る少なくとも1つの加圧ローラと、
を備える濾過システム。
【請求項12】
前記複数の繊維は、ヤーン、繊維トウ、テープ、組紐(braids)、織物、不織布、繊維プライ、及び繊維マットからなる群から選択される形態を含む請求項11に記載の濾過システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの加圧ローラで前記濾過媒体から除去した任意の液体を隔離するように動作可能である少なくとも1つの収集装置を、さらに備える請求項11に記載の濾過システム。
【請求項14】
搬送される前記濾過媒体が通る少なくとも1つの化学的抽出浴を、さらに備える請求項11に記載の濾過システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの加圧ローラで前記濾過媒体から除去した任意の液体を隔離するように動作可能である少なくとも1つの収集装置を、さらに備える請求項14に記載の濾過システム。
【請求項16】
カーボンナノチューブ浸出繊維材料を含む複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む濾過媒体を提供することと、
疎水性材料を含む液体媒体を通して前記濾過媒体を搬送することと、
前記液体媒体から前記疎水性材料の少なくとも一部を前記濾過媒体上に収着することと、
前記疎水性材料の収着後、少なくとも1つの加圧ローラを通して前記濾過媒体を搬送することと、
を含む方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの加圧ローラで除去された任意の疎水性材料を収集装置内に隔離することを、さらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の繊維は、ヤーン、繊維トウ、テープ、組紐(braids)、織物、不織布、繊維プライ、及び繊維マットからなる群から選択される形態を含む請求項16に記載の濾過システム。
【請求項19】
液体媒体を通して前記濾過媒体を搬送することは、前記濾過媒体を少なくとも1つの整合ローラと少なくとも1つの浸漬ローラ上に通すことを含む請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記濾過媒体は、第1のリールと第2のリールの間のオープンリール式処理システム内で搬送される請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記濾過媒体は、複数のローラ上を連続的に搬送される閉ループ構造を備える請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記疎水性材料の収着後、少なくとも1つの化学的抽出浴を通して前記濾過媒体を搬送することを、さらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの加圧ローラで除去された任意の疎水性材料を収集装置内に隔離することを、さらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記液体媒体は、混合した疎水性材料を含む水相を備える請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記混合した疎水性材料は、油を含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記液体媒体は、2層からなる請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記2層は、油と水の2層からなる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記液体媒体は、地下層中の油を含む請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記液体媒体は、微量の有機汚染物質を含む水源を含む請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記液体媒体は、発酵培養液を含む請求項16に記載の方法。
【請求項31】
第1のリールと第2のリールを備えるオープンリール式処理システムに接続されたカーボンナノチューブ浸出繊維材料を含む複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む濾過媒体を提供することと、
疎水性材料を含む液体媒体を通して前記濾過媒体を搬送することと、
前記液体媒体から前記疎水性材料の少なくとも一部を前記濾過媒体上に収着することと、
前記疎水性材料の収着後、少なくとも1つの加圧ローラを通して前記濾過媒体を搬送することと、
前記少なくとも1つの加圧ローラで除去された任意の疎水性材料を収集装置内に隔離することと、
を含む方法。
【請求項32】
前記疎水性材料の収着後、少なくとも1つの化学的抽出浴を通して前記濾過媒体を搬送することを、さらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数の繊維は、ヤーン、繊維トウ、テープ、組紐(braids)、織物、不織布、繊維プライ、及び繊維マットからなる群から選択される形態を含む請求項31に記載の方法。
【請求項34】
液体媒体を通して前記濾過媒体を搬送することは、前記濾過媒体を少なくとも1つの整合ローラと少なくとも1つの浸漬ローラ上に通すことを含む請求項31に記載の方法。
【請求項35】
カーボンナノチューブ浸出繊維材料を含む複数の巻き取り可能な長さの繊維を含む濾過媒体を提供することと、
微量の疎水性化合物を含む液体媒体を通して前記濾過媒体を搬送することと、
前記液体媒体から前記微量の疎水性化合物の少なくとも一部を前記濾過媒体上に収着することと、
前記微量の疎水性化合物を前記濾過媒体から単離することと、
を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−517929(P2013−517929A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550181(P2012−550181)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022163
【国際公開番号】WO2011/091329
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】