説明

可動部材の検出装置

【課題】コンパクトで、しかも回転角度および直線的な移動量、もしくはそれらの動作速度を共に検出することのできる検出装置を提供する。
【解決手段】回転および直線的に移動する可動部材の回転角度と直線移動量もしくは回転角速度と直線移動速度とを検出する検出装置において、前記可動部材30が前記直線移動することに伴って前記可動部材30と共に直線移動する第1可動部45と、前記第1可動部45を回転自在に保持し、かつ前記可動部材30が回転することに伴って前記可動部材30と共に回転する第2可動部34と、前記第1可動部45が直線移動することによってその直線移動に応じた信号を出力する第1センサ47と、前記第2可動部34が回転することによってその回転に応じた信号を出力する第2センサ39とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転と直線移動とのいわゆる並進運動を行う可動部材の回転角度や直線移動量、あるいはそれらの速度を検出する装置に関し、一例としてトロイダル型変速機におけるトラニオンの回転角度および前後進移動量あるいはこれらの速度を検出する場合に使用できる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポジションセンサとして永久磁石と磁気に感応して信号を出力するホール素子などの素子とを備えたものが広く知られている。しかしながら、この種のポジションセンサは、変位に対する出力のリニアリティが必ずしも十分でなく、また高価であり、そのために用途が制約される場合がある。これに対し、特許文献1には、所定周波数および振幅の定電流を流す検出コイルの中空部分に金属体を貫入させ、その貫入量に応じたインピーダンスの変化を検出コイルの両端電圧として検出し、その検出された電圧を位置情報を示すポジション信号に変換するように構成したポジションセンサが記載されている。そして、特許文献1には、直線状の検出コイルおよび金属体と、所定曲率の円弧状の検出コイルおよび金属体とが記載されており、後者の円弧状に構成した例では、例えばアクセルペダルの踏み込みによって円弧状金属体をその曲率中心を中心として回転させ、それに伴って円弧状検出コイルに対する貫入量を変化させるように構成されている。
【0003】
なお、前述した並進動作をおこなう部材としてトロイダル型無段変速機におけるトラニオンが知られており、特許文献2には、そのトラニオンの傾転角と変位量とを、プリセスカムの動作として一つのセンサで検出するように構成した装置が記載されている。すなわち、プリセスカムの螺旋状のカム面に当接させたセンサの検出値は、トラニオンの傾転角と変位とを合成したものとなるので、そのセンサによって傾転角と変位量とを検出し、変速比を制御するようになっている。
【0004】
これに対して特許文献3に記載された装置では、トラニオンの傾転角を検出するセンサと変位量を検出するセンサとの二種類のセンサを個別に備えている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−83764号公報
【特許文献2】特開平7−317867号公報
【特許文献3】特開2002−195393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載されたポジションセンサによれば、直線的に移動する部材の位置や、車両のアクセルペダルのような所定の支点を中心に回転する部材の動作量を、金属体の検出コイルに対する移動量すなわちインピーダンスの変化として検出することができる。しかしながら、回転と直線移動との並進動作する部材の回転および直線移動を検出するとすれば、その並進動作部材に二つのポジションセンサを設けることになり、大きい設置スペースが必要となって、その使用が制限される場合がある。例えば、前述したトロイダル型無段変速機におけるトラニオンの傾転角および変位量を検出する場合、その周辺における余裕空間が狭く、また一つのバリエータ(あるいはキャビティ)に複数のパワーローラおよびそれを支持するトラニオンが設けられているので、用いるポジションセンサの数が多くなり、上記の特許文献1に記載されたポジションセンサを用いることは実際には困難である。
【0007】
また、特許文献2に記載された装置では、プリセスカムを必要とするので、これが設けられていない装置には採用することができない。また、一つのセンサに回転と軸線方向との荷重を作用させることになるので、その接触部分の摩擦抵抗の影響が生じると、検出精度が低下する可能性がある。
【0008】
さらに、特許文献3に記載された装置では、回転と直線的な変位とを検出するためにそれぞれセンサを設けることになるので、上述した特許文献1に記載されたポジションセンサについての課題と同様の課題が生じる可能性がある。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、コンパクトで、しかも回転角度および直線的な移動量、もしくはそれらの動作速度を共に検出することのできる検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、回転および直線的に移動する可動部材の回転角度と直線移動量もしくは回転角速度と直線移動速度とを検出する検出装置において、前記可動部材が前記直線移動することに伴って前記可動部材と共に直線移動する第1可動部と、前記第1可動部に回転自在に保持され、もしくは前記第1可動部を回転自在に保持し、かつ前記可動部材が回転することに伴って前記可動部材と共に回転する第2可動部と、前記第1可動部が直線移動することによってその直線移動に応じた信号を出力する第1センサと、前記第2可動部が回転することによってその回転に応じた信号を出力する第2センサとを備えていることを特徴するものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1可動部は、前記直線移動の方向に対してのみ前記可動部材と一体化するように前記可動部材に係合され、かつ前記第2可動部は、前記回転の方向に対してのみ前記可動部材と一体化するように前記可動部材に係合されていることを特徴とする可動部材の検出装置である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記第2可動部は円筒状に形成されるとともに、ケーシングの内部に回転自在に保持され、かつ前記円筒状の第2可動部の内部に前記第1可動部が前記直線移動可能に保持されていることを特徴とする可動部材の検出装置である。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記ケーシングの内部に前記第2センサが配置され、かつ前記円筒状の第2可動部の内部に前記第1センサが配置されていることを特徴とする可動部材の検出装置である。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記第1センサと第2センサとの少なくとも一方は、検出コイルと、該検出コイルに接近して配置されて前記検出コイルとの相対移動に伴って前記検出コイルのインピーダンスを変化させる金属部材とを備え、そのインピーダンスの変化に伴う電気信号によって前記直線移動もしくは回転の量もしくは速度を検出する検出器を含むことを特徴とする可動部材の検出装置である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、前記可動部材は、トロイダル型無段変速機におけるパワーローラを保持しているトラニオンもしくは該トラニオンと一体の部材であることを特徴とする可動部材の検出装置である。
【0016】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記第1可動部は、前記トラニオンもしくは該トラニオンと一体の部材に、前記直線移動の方向に弾性力によって押し付けられていることを特徴とする可動部材の検出装置である。
【0017】
請求項8の発明は、請求項6または7の発明において、前記第2可動部は、前記トラニオンもしくは該トラニオンと一体の部材に、前記回転の方向に弾性力によって押し付けられていることを特徴とする可動部材の検出装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1あるいは2の発明によれば、可動部材が直線的に移動すると、それに合わせて第1可動部が直線的に移動する。その場合、第1可動部が第2可動部を回転自在に保持していれば、第2可動部も直線的に移動する。その移動量もしくは移動速度が第1センサによって検出される。また、可動部材が回転すると、それに合わせて第2可動部が回転する。その場合、第2可動部が第1可動部を保持していれば、第1可動部も回転する。その回転角度もしくは角速度は、第2センサによって検出される。したがって、共に組み合わされている第1可動部および第2可動部ならびにそれぞれに対応して設けられている第1センサおよび第2センサによって、可動部材の回転角および直線移動量もしくはそれぞれの速度を検出することができる。すなわち、一つの装置で回転と直線移動とを検出できるので、必要とする設置スペースを小さくすることができる。また、直接的に検出する可動部材の対象部位が一箇所もしくは実質的に一箇所であるから、並進動作する場合に回転と直線移動との両方の動作量もしくは速度を正確に検出することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、第2可動部がケーシングに保持され、その第2可動部に第1可動部が保持されているので、これらの可動部をユニット化し、全体としてコンパクトなものとすることができ、また回転と直線移動との並進動作する可動部材に対して設置する場合の所要スペースを小さくすることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明の構成に加えて、各センサがケーシングの内部に収容されているので、さらにコンパクトで設置スペースの小さい装置とすることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、少なくとも一方のセンサがコイルのインピーダンスの変化によって回転角や直線移動量などを検出するように構成されているので、ホール素子などの半導体を用いる構成に比較して、装置の全体としての構成を小型化することが容易であり、また低コスト化を図ることができる。また、センサのうち、回転もしくは移動する部材は金属部材になるので、その重量を軽くして、可動部材に対する追従性を向上させることができ、したがって動作速度の速い可動部材についての回転角および直線移動量あるいはそれらの速度を正確に検出することが可能になる。
【0022】
請求項6の発明によれば、トロイダル型無段変速機のトラニオンの回転角および軸線方向の移動量もしくはそれらの速度を一つの検出装置によって検出することができる。また、複数あるトラニオン毎に検出装置を設けるとしても、その数はトラニオンの数を超えることがないので、所要スペースが小さくてよい。
【0023】
請求項7あるいは8の発明によれば、可動部をトラニオンもしくはこれと一体の部材に弾性力で押し付ければよいので、トロイダル型無段変速機に対する組み付け性が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明に係る検出装置の原理的な構成を説明する。この発明の検出装置は、回転と直線移動(もしくは変位)する可動部材の回転角度および直線移動量もしくはそれらの速度を検出するためのものであり、そのために可動部材の回転に合わせて回転する可動部と、可動部材の直線移動に合わせて直線移動する他の可動部とを備えている。これらの可動部は、それぞれ別個に可動部材に係合した状態に設けられて、回転のみ、あるいは直線移動のみ行うようになっていてもよく、あるいは可動部材に係合して回転および直線移動の両方を行うが、いずれか一方を可能にするための他の部材を設けた構成であってもよい。前者の例を図1の(a)に模式的に示し、後者の例を図1の(b)に模式的に示してある。
【0025】
図1において、符号1は可動部材であって、これはトロイダル型無段変速機におけるトラニオンあるいはそのトラニオンと一体の部材がその例である。この可動部材1は、回転および直線移動を行うように構成されており、その直線移動は、回転中心軸線に沿う方向もしくはこれにほぼ平行な方向の前後動である。その回転中心軸線の延長線上にこの発明に係る検出装置2が配置されている。
【0026】
図1の(a)に示す構成の検出装置2は、前記可動部材1の直線移動(変位)に伴って直線的に移動する第1可動部3と、前記可動部材1の回転に伴って回転する第2可動部4とを備えている。第2可動部4は、例えば円筒状の部材であって、その先端部にはトルクを伝達するための係合爪5が設けられている。これに対して可動部材1には、その回転中心軸線に沿う方向に突出した係合部6が形成されている。この係合部6は、矩形断面を成す突出部、もしくは前記係合爪5が挿入されて回転方向で接触する溝を有する突出部である。そして、その係合爪5が係合部6に回転方向で常時接触しているように、第2可動部4には弾性力が付与されている。具体的には、第2可動部4の外周の一部と所定の固定部7との間に、第2可動部4に対してトルクを付与するバネ8が配置されている。なお、第2可動部4は固定部7に回転自在に保持されている。
【0027】
第1可動部3は、軸状もしくはピン状の部材であって、第2可動部4を貫通した状態で第2可動部4によって前後動自在に保持されている。この第1可動部3を前記可動部材1における係合部6に向けて弾性力で押圧するバネ9が設けられており、したがって第1可動部3の先端部が係合部6に押し付けられている。したがって、可動部材1が回転した場合には、第2可動部4が第1可動部3と共に回転し、また可動部材1が直線的に移動した場合には、第2可動部4は移動せずに第1可動部3が直線的に移動するようになっている。
【0028】
第2可動部4の後端部(前記係合爪5とは反対側の端部)の外周側に、第2可動部4の回転に応じて信号を出力するセンサ10が設けられている。また、第1可動部3の後端側には、第1可動部3の直線移動に応じて信号を出力するセンサ11が設けられている。これらのセンサ10,11は、従来知られているセンサによって構成されており、例えば検出コイルとこれに接近して配置された金属体との相対移動によるインピーダンスの変化を利用したセンサ、感磁性素子と永久磁石との相対移動に伴って変化する信号を利用するセンサ、相対移動によって静電容量が変化することを利用したセンサなどのいずれかによって構成されている。そして、センサ10は、第2可動部4と固定部7との間に設けられ、またセンサ11は第1可動部3と第2可動部4との間に配置されている。
【0029】
したがって、図1の(a)に示す構成の検出装置2では、可動部材1が回転しつつ直線的に移動すると、第2可動部4が可動部材1と共に回転し、その回転角度もしくは回転角速度に応じた信号がセンサ10から出力され、その信号に基づいて、可動部材1の回転角度もしくはその角速度が検出される。また同時に、可動部材1の直線的な移動に応じて前記第1可動部3が第2可動部4側に押し込まれ、あるいは第2可動部4から延び出るので、その移動量もしくは速度に応じた信号がセンサ11から出力され、その信号に基づいて、可動部材1の直線的な変位量もしくはその速度が検出される。すなわち、一つの検出装置2で回転と直線移動との量や速度を検出できるので、トロイダル型無段変速機などの許容設置スペースが小さい場合であっても使用することができ、特に単一箇所もしくは極めて接近した箇所の回転と直線移動とに感応してその検出を行うので、可動部材1の変形などの影響を受けずに、正確な検出を行うことができる。
【0030】
つぎに図1の(b)に示す構成について説明すると、ここに示す例は、上記の図1の(a)に示す構成では二つの可動部3,4が可動部材1に係合しているのに対して、一つの可動部を可動部材1に係合させるように構成した例である。すなわち、可動部材1と共に回転しかつ直線的に移動する可動部として検出ロッド12が設けられている。この検出ロッド12は、軸状の部材であって、その先端部が可動部材1における突出部6に回転方向で噛み合い、かつその回転軸線の方向では突出部6に図示しない弾性部材の弾性力によって押し付けられている。
【0031】
また、検出ロッド12は、円筒状の保持部材13をその軸線方向に貫通しており、その保持部材13の内周側に配置されたリニアスライドなどの直線的なガイドを行う軸受14によって前後動自在に保持されている。さらに、この保持部材13は固定部7により回転軸受15を介して回転自在に保持されている。したがって、検出ロッド12は回転および直線移動が可能であって、この発明における第1可動部および第2可動部の両方に相当している。
【0032】
そして、上記の検出ロッド12の後端側に、その回転角もしくは角速度に応じた信号を出力するセンサ10と、その直線移動に応じた信号を出力するセンサ11とが配置されている。
【0033】
したがって、図1の(b)に示すように構成された検出装置では、可動部材1が回転しかつ直線的に移動すると、検出ロッド12がこれと同様に回転しかつ直線的に移動する。その検出ロッド12の回転および直線移動に応じて各センサ10,11が信号を出力するので、その信号に基づいて、可動部材1の直線的な変位量もしくはその速度が検出される。すなわち、一つの検出装置2で回転と直線移動との量や速度を検出できるので、トロイダル型無段変速機などの許容設置スペースが小さい場合であっても使用することができ、特に単一箇所もしくは極めて接近した箇所の回転と直線移動に感応してその検出を行うので、可動部材1の変形などの影響を受けずに、正確な検出を行うことができる。
【0034】
より具体化した例を更に説明する。図2はこの発明を具体化した例の横断平面図であり、第3図はその縦断側面図であって、ここに示す例は、トロイダル型無段変速機におけるトラニオン30の回転角および直線的な変位もしくはそれらの速度を検出するように構成した例である。そのトラニオン30はその一端側に設けられた油圧シリンダなどのアクチュエータ(図示せず)によって前後動させられ、それに伴って回転するように構成されており、そのアクチュエータとは反対の端部側にこの発明に係る検出装置31が配置されている。
【0035】
この検出装置31は、変速機ケース32に挿入されて固定される中空状のケーシング33を備えており、その内部に回転ボディ34が挿入されている。この回転ボディ34はこの発明における第2可動部に相当する部材であって、全体として円筒状に形成され、その外周面とケーシング33の内周面との間に介在させたブッシュ35などの軸受部材によって回転自在に保持されている。
【0036】
また回転ボディ34の先端部(図3での下端部)には、トラニオン30に設けられた接続部36に回転方向で係合する係合部37が設けられている。この係合部37は、回転ボディ34をトラニオン30と一体となって回転させ、かつ軸線方向に相対移動させるように構成された部分であって、回転方向で前記接続部36に噛み合う係合爪もしくは係合歯として形成されている。さらに、回転ボディ34の後端部には、半径方向で外側に突出した回転検出用ブラケット38が一体化されて設けられている。そして、この回転検出用ブラケット38とケーシング33との間に、この発明における第2センサに相当する回転センサ39が設けられている。
【0037】
この回転センサ39は、要は、回転検出用ブラケット38の旋回に応じて信号を出力するセンサであって、前述したように各種のセンサを用いることができる。図2および図3に示す例では、検出コイル40のインピーダンスの変化を利用して検出を行うセンサが用いられている。具体的には、円弧状に形成された金属体もしくは金属線である検出コア41が、前記回転検出用ブラケット38に回転方向に延びて取り付けられている。また、その検出コア41が抜き差しされる検出コイル40が、検出コア41の移動線上に配置されてケーシング33に固定されている。
【0038】
この検出コイル40には、所定の周波数でかつ振幅の定電流が流されており、検出コア41の挿入長さに応じてそのインピーダンスが変化し、それに伴って検出コイル40の両端電圧が変化するので、その電圧の変化に基づいて検出コア41の挿入量すなわち回転ボディ34の回転角度や回転角速度を検出するように構成されている。そのための信号処理回路43がケーシング33の天板部の内面に取り付けられている。なお、この信号処理回路43は、例えば特開2003−83764号公報に開示されている回路を採用することができる。また、前記係合部37を前記接続部36に常時接触させておくために、回転ボディ34に対して回転方向の弾性力を付与するバネ(図示せず)が前記回転検出用ブラケット38とケーシング33との間に設けられている。
【0039】
上記の回転ボディ34の内部には、円筒状のホルダー44が嵌合させられており、そのホルダー44の図3での下部には、小径の貫通孔が形成され、その貫通孔に、この発明における第1可動部に相当する変位検出用ブラケット45が挿入されている。この変位検出用ブラケット45は、比較的細い軸状もしくはピン状の部材であって、前記回転ボディ34と同様に、図3での下側に突出し、トラニオン30の接続部36に当接するようになっている。なお、トラニオン30もしくは接続部36の回転や横方向への移動が生じても変位検出用ブラケット45に対して曲げなどのラジアル方向の荷重が掛からないようにするために、変位検出用ブラケット45の先端部は球面などの曲面になっている。また、変位検出用ブラケット45は、その外周面とホルダー44の内周面との間に介在させたブッシュ46などの軸受部材によって軸線方向に移動できるように保持されている。さらに、変位検出用ブラケット45の上端部(もしくは後端部)は、ブッシュ46の内径より大きい外径に形成され、これによって抜け止めされている。
【0040】
上記のブッシュ46を嵌合させてある部分より上側の部分でホルダー44の内径が大きくなっており、その内径の大きい部分に前記変位検出用ブラケット45の後端部が突出しており、その後端部とホルダー44との間に、この発明における第1センサに相当する変位センサ47が設けられている。この変位センサ47は、前述した回転センサ39同様に、従来知られている各種の形式のものを使用でき、図2および図3に示す例では、検出コイル48のインピーダンスの変化を利用して検出を行うセンサが用いられている。
【0041】
すなわち、変位検出用ブラケット45の後端部を収容している中空部の内周面に磁気シールド49が施され、さらにその内周側に検出コイル48が配置されている。この検出コイル48の内周側にその軸線方向に沿って抜き差しされる金属体である変位検出コア50が、変位検出用ブラケット45の後端部に一体的に取り付けられている。すなわち、変位検出用ブラケット45がトラニオン30に追従してその軸線方向に移動することに伴って変位検出コア50が検出コイル48に対して抜き差しされ、その挿入量の変化に応じて検出コイル48のインピーダンスが変化するようになっている。
【0042】
この検出コイル48には、前述した回転を検出する検出コイル40と同様に、所定の周波数でかつ振幅の定電流が流されており、変位検出コア50の挿入長さに応じてそのインピーダンスが変化し、それに伴って検出コイル48の両端電圧が変化するので、その電圧の変化に基づいて変位検出コア50の挿入量すなわち変位検出用ブラケット45の変位量やその速度を検出するように構成されている。そのための信号処理回路51がホルダー44の後端側の開口部を閉じているエンドプレート52の内面に取り付けられている。なお、この信号処理回路51は、例えば特開2003−83764号公報に開示されている回路を採用することができる。また、前記検出コイル48を配置してある中空部の上部開口端にはバネ受け53が嵌め込まれており、このバネ受け53と前記変位検出用ブラケット45の後端部との間には、変位検出用ブラケット45をトラニオン30側に弾性力で押圧するリターンスプリング54が配置されている。したがって、変位検出用ブラケット45はトラニオン30における接続部36に押し付けられ、トラニオン30の直線的な移動に追従して変位するようになっている。
【0043】
つぎに上述した検出装置31の作用について説明する。変速機ケース32に挿入してトロイダル型無段変速機に取り付けた状態では、図3に示すように、回転ボディ34の先端部に形成されている係合部37がトラニオン30の接続部36に回転方向で係合し、密着している。また変位検出用ブラケット45がその接続部36に弾性力で突き当てられた密着している。この状態で変速を行うべくトラニオン30を図3の上下方向に移動させると、トロイダル型無段変速機の作用によってトラニオン30が傾転(回転)する。
【0044】
トラニオン30に設けられている接続部36に回転ボディ34の係合部37が回転方向に一体に係合しているので、トラニオン30の回転に伴って回転ボディ34が回転する。そして、その回転ボディ34に取り付けられている湾曲した検出コア41が検出コイル40に対して相対移動し、その挿入長さが変化するので、検出コイル40のインピーダンスおよびその両端電圧が変化し、それに応じた信号が出力される。その信号を信号処理回路43で処理することにより、トラニオン30の回転角度あるいはその角速度が検出される。
【0045】
一方、トラニオン30がその回転軸線の方向に直線的に移動すると、それに追従して変位検出用ブラケット45がその軸線方向に変位するので、これと一体の変位検出コア50が検出コイル48に対して相対的に移動し、その挿入長さが変化する。したがって、回転を検出する回転センサ39におけるのと同様に、検出コイル48のインピーダンスおよびその両端電圧が変化し、それに応じた信号が出力される。その信号を信号処理回路51で処理することにより、トラニオン30の変位量もしくはその速度が検出される。
【0046】
したがって、一つの検出装置31によって可動部材であるトラニオン30の回転角度および変位量もしくはそれらの速度を検出することができるので、検出装置31自体の構成をコンパクト化することができる。また、必要とする検出装置の数を少なくし、またそれに伴う配線を少なくして、トロイダル型無段変速機の全体としての構成を小型化することができる。さらに、トラニオン30の回転および変位を実質的に単一の箇所の回転および変位によって検出することになるので、トラニオン30の傾転および変位をフィードバック制御する場合、傾転と変位とが完全に同期するので、安定した制御を行うことができ、いわゆる制御性が向上する。またさらに、センサとして検出コイル40,48のインピーダンスの変化に伴う両端電圧の変化によって回転や直線移動を検出するセンサを用いた場合には、得られる検出信号がアナログ信号であることにより、これをほぼそのまま使用して角速度や移動速度を検出できるので、ノイズなどの影響を低減して正確かつ容易に角速度や移動速度を検出することができる。
【0047】
なお、この発明の検出装置を使用できる可動部材は、トロイダル型無段変速機におけるトラニオンに限られないのであって、更に高速で回転および往復動する部材であってもよい。その場合、検出コイルに対して相対移動させられるコアを可動側に設けることが好ましく、そのような構成であれば、慣性力を低減して応答性および検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明に係る検出装置の原理的な構成を示す模式図である。
【図2】この発明を更に具体化した例の横断平面図である。
【図3】その縦断側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…可動部材、 2…検出装置、 3…第1可動部、 4…第2可動部、 8,9…バネ、 10,11…センサ、 12…検出ロッド、 30…トラニオン、 31…検出装置、 34…回転ボディ、 36…接続部、 37…係合部、 38…回転検出用ブラケット、 39…回転センサ、 40…検出コイル、 41…検出コア、 43…信号処理回路、 45…変位検出用ブラケット、 47…変位センサ、 48…検出コイル、 49…磁気シールド、 50…変位検出コア、 51…信号処理回路、 53…バネ受け、 54…リターンスプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転および直線的に移動する可動部材の回転角度と直線移動量もしくは回転角速度と直線移動速度とを検出する検出装置において、
前記可動部材が前記直線移動することに伴って前記可動部材と共に直線移動する第1可動部と、
前記第1可動部に回転自在に保持され、もしくは前記第1可動部を回転自在に保持し、かつ前記可動部材が回転することに伴って前記可動部材と共に回転する第2可動部と、
前記第1可動部が直線移動することによってその直線移動に応じた信号を出力する第1センサと、
前記第2可動部が回転することによってその回転に応じた信号を出力する第2センサと
を備えていることを特徴する可動部材の検出装置。
【請求項2】
前記第1可動部は、前記直線移動の方向に対してのみ前記可動部材と一体化するように前記可動部材に係合され、かつ
前記第2可動部は、前記回転の方向に対してのみ前記可動部材と一体化するように前記可動部材に係合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の可動部材の検出装置。
【請求項3】
前記第2可動部は円筒状に形成されるとともに、ケーシングの内部に回転自在に保持され、かつ前記円筒状の第2可動部の内部に前記第1可動部が前記直線移動可能に保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の可動部材の検出装置。
【請求項4】
前記ケーシングの内部に前記第2センサが配置され、かつ前記円筒状の第2可動部の内部に前記第1センサが配置されていることを特徴とする請求項3に記載の可動部材の検出装置。
【請求項5】
前記第1センサと第2センサとの少なくとも一方は、検出コイルと、該検出コイルに接近して配置されて前記検出コイルとの相対移動に伴って前記検出コイルのインピーダンスを変化させる金属部材とを備え、そのインピーダンスの変化に伴う電気信号によって前記直線移動もしくは回転の量もしくは速度を検出する検出器を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の可動部材の検出装置。
【請求項6】
前記可動部材は、トロイダル型無段変速機におけるパワーローラを保持しているトラニオンもしくは該トラニオンと一体の部材であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の可動部材の検出装置。
【請求項7】
前記第1可動部は、前記トラニオンもしくは該トラニオンと一体の部材に、前記直線移動の方向に弾性力によって押し付けられていることを特徴とする請求項6に記載の可動部材の検出装置。
【請求項8】
前記第2可動部は、前記トラニオンもしくは該トラニオンと一体の部材に、前記回転の方向に弾性力によって押し付けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の可動部材の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−170392(P2008−170392A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6119(P2007−6119)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】