説明

可変ステータベーン段から空気を抽気するための装置を備えた軸流圧縮機

【課題】高圧圧縮機から高圧加圧空気を抽出する抽気を、VSV段間から行う抽気装置を提供する。
【解決手段】圧縮機ブレード18のブレード列を担持する回転可能な圧縮機スプール12と、圧縮機ブレードを囲み圧縮機流路の境界部を形成するライナ組立体20を担持するケーシング22と、ブレード列と軸方向に交互する軸方向に離間したステータベーン24のステータ列の少なくとも幾つかは可変であり、そのステータベーンが、トラニオン26A上に取り付けられて枢動可能になっている。第1の抽気スロット46が、可変ステータ列の軸方向に隣接するステータ列の間でライナ組立体を貫通し、ケーシングによって形成された第1の流路が、第1の抽気スロット及びケーシングの外部と連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはガスタービンエンジンにおける熱力学に関し、より具体的には、このようなエンジンにおいてブリード(抽気)空気を抽出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、直列流れ関係で高圧圧縮機、燃焼器及び高圧タービンを有するターボ機械コアを含む。このコアは、推進ガスの一次流れを発生させるように公知の方法で作動可能である。典型的なターボファンエンジンは、コア排出ガスによって駆動される低圧タービンを付加し、この低圧タービンは、シャフトを介してファンロータを駆動して推進ガスのバイパス流れを発生させる。高バイパスエンジンの場合では、このバイパス流が総エンジンスラストの大部分を構成する。
【0003】
このようなエンジンにおける典型的な軸流高圧圧縮機は、複数の段を含む。各段は、回転翼形部すなわちブレードの列と、固定翼形部すなわちベーンの列とを有する。ベーンは、上流側のブレード列から流出した空気流を転回させた後に下流側のブレード列に流入させる働きをする。ベーンの1つ又はそれ以上の列をその入射角が作動中に変更できるように構成することは公知である。これらは、可変ステータベーン又は単に「VSV」と呼ばれている。このVSVにより、圧縮機を通る流れの流量調整が可能になり、その結果、圧縮機はブリード弁のような他の機構によって発生する損失がない状態で様々な流量で効率的に作動することができるようになる。多くの圧縮機において高い全圧力比及び段数に起因して、多くのVSV段が存在することが多い。
【0004】
高圧圧縮機から高圧加圧空気を抽出することは知られている。これはブリード(抽気)空気と呼ばれており、エンジン又は航空機の防氷、境界層制御装置、航空機環境制御システムなどの目的で使用することができる。最適なエンジン性能のために、抽気は、ユーザが必要とする最低の供給圧力を提供する段で行わなければならない。しかしながら、従来技術では、供給源は、VSV段から空気を抽出することが構造上の困難であることに起因して、最終VSV段の後方の段に限定されている。従って、唯一好都合に利用できるブリード供給源は、望ましくい高圧になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,624,581号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、VSV段から空気を抽気可能にする圧縮機に対する必要性がある。
【0007】
この必要性は、VSV段間で空気を抽気する圧縮機抽気装置を提供し且つ圧縮機ケーシングの外部の構造体から離れて空気を抽出するための通路を形成した本発明によって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様によると、圧縮機装置は、中心軸線の周りで回転するように取り付けられ且つ翼形部形圧縮機ブレードの環状アレイを各々が備えた複数の軸方向に離間したブレード列を担持する圧縮機スプールと、圧縮機ブレードを囲み、且つ圧縮機を貫通する一次ガス流路の境界部を形成したライナ組立体を担持するケーシングと、ライナ組立体によって担持され且つ各々が翼形部形ステータベーンの環状アレイを含む複数の軸方向に離間したステータ列と、を含み、ステータ列はブレード列と軸方向に交互配置され、ステータ列の少なくとも幾つかの軸方向に隣接する列が可変ステータ列であり、ステータベーンがケーシングを貫通するトラニオン上に取り付けられて、ケーシングに対して枢動可能になっており、本圧縮機装置が更に、ケーシングの外側でトラニオンの各々に結合されたアクチュエータアームと、可変ステータ列の軸方向に隣接する第1及び第2の列間でライナ組立体を貫通する少なくとも1つの第1の抽気スロットと、ケーシングによって形成され且つ少なくとも1つの第1の抽気スロット及びケーシングの外部と連通している第1の流路と、を含む。
【0009】
本発明は、添付図面の図と共に以下の説明を参照することによって最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1つの態様に従って構成されたガスタービンエンジンの高圧圧縮機の半断面図。
【図2】図1の一部分の拡大図。
【図3】本発明の1つの態様に従って構成されたガスタービンエンジンの別の高圧圧縮機の半断面図。
【図4】本発明の1つの態様に従って構成されたガスタービンエンジンの更に別の高圧圧縮機の半断面図。
【図5】任意選択のダクト及びスリーブを示す、図4の一部分の拡大図。
【図6】図4の圧縮機の一部分の斜視図。
【図7】図6の線7−7に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
種々の図を通して同じ参照符号が同じ要素を示す図面を参照すると、図1は、上述のガスタービンエンジンの一部である高圧圧縮機10の一部分を示している。圧縮機10は、中心軸線「A」の周りで回転するように取り付けられた軸方向に細長い環状スプール12を含む。環状スプール12は、複数のより小さい構成要素から構築することができる。これによれば、スプール12は、1つ又はそれ以上のドラム部分14と、複数の環状ディスク16を含み、これら全てが一体として共に回転する。スプール12は半断面で示しているが、このスプール12は回転体であることは理解されるであろう。スプール12の外周部で複数のブレード列が担持される。各ブレード列は、スプール12から半径方向外向きに延びた環状アレイの翼形部形圧縮機ブレード18を含む。環状ライナ組立体20が圧縮機ブレード18を密接に囲み、圧縮機10を通る一次ガス流路の半径方向外側境界部を形成する。ライナ組立体20は、複数のより小さい構成要素から構成され、その一部を以下でより詳細に説明する。環状ケーシング22は、ライナ組立体20を囲み、該ライナ組立体20に構造的支持を与える。ライナ組立体20によって幾つかのステータ列が担持される。各ステータ列は、ライナ組立体20から半径方向内向きに延びた環状アレイの翼形部形ステータベーン24を含む。ステータ列は、軸方向にブレード列と交互配置される。各ブレード列及び軸方向下流ステータ列は、圧縮機10の「段」を構成する。作動時には、圧縮機10は、(図の左側から)空気を吸込み、この空気を図の右側に向かって軸方向下流側に圧送する時に加圧する。各段は、空気の増分的圧力上昇をもたらし、最終段の出口にて最高圧力になる。
【0012】
図示の実施例では、圧縮機10の段の一部だけが示されている。図示の前方及び後方の段は、本発明にとって重要なものではない。図示の段は、「S1」から[S7]まで順次的に表記されている。これらの個数は、参照を容易にするために使用されているに過ぎず、圧縮機10全体における実際の段数に必ずしも対応していない。図の左側(圧縮機10の入口端部に向かって)に示されるS1からS4までの4つの段には、可変ステータベーンすなわち略して「VSV」が組み込まれており、これらの段のステータベーン24は、その入射角が作動中に変更できる(すなわち、これらのステータベーン24は、破線で示した半径方向軸線の周りで枢動することができる)ように構成されている。図の右側(圧縮機の出口端部に向かって)の残りの段には、VSVが組み込まれていない。本発明の原理は一般に、段の総数に関係なく、或いは幾つの段がVSVを含んでいるかに関係なく、VSVの2つ又はそれ以上の軸方向に隣接する段を有するあらゆる軸流圧縮機に適用可能である。VSVにより、公知の方法で圧縮機10を通る流れの流量調整が可能になり、その結果、圧縮機10は、高及び低質量流量の両方で効率的に作動することができる。S1からS4までの各段のステータベーン24は、対応するトラニオン(全体的に「26」と称され、それぞれ26Aから26Dで表記されている)を有しており、このトラニオンはライナ組立体20及びケーシング22を貫通して半径方向外向きに延びている。各トラニオン26A〜26Dの遠位端部には、アクチュエータアーム(全体的に「28」と称され、それぞれ28Aから28Dで表記されている)が取り付けられている。個々の段におけるアクチュエータアーム28A〜28Dの全ては、リング30(全体的に「30」と称され、それぞれ30Aから30Dで表記されている)によって一体的に結合されている。これにより、エンジンの長手方向軸線Aの周りのリング30A〜30Dの回転により、特定のリング30A〜30Dに結合されたアクチュエータアーム28の全てを一体となって移動させ、その結果としてトラニオン26A〜26Dの全てをその取り付けステータベーンと共に一体となって枢動させる。
【0013】
この特定の実施例では、個々のスロットの環状アレイを含むことができる後方抽気スロット32は、段S6の後方のライナ組立体20を貫通している。後方抽気スロット32は、ライナ組立体20とケーシング22との間に形成された後方プレナム36と連通している。ケーシング22における1つ又はそれ以上の抽出ポート38は、後方プレナム36から空気を抽出するための場所を提供する。使用時には、後方抽出ポート38は、ケーシング22(図示せず)の外部にある適切な配管又はダクトに結合されることになる。
【0014】
個々のスロットの環状アレイを含むことができる中央抽気スロット40は、段S3の後方のライナ組立体20を貫通している。中央抽気スロット40は、ライナ組立体20とケーシング22との間に形成され且つ後方プレナム36から隔離された中央プレナム42と連通している。ケーシング22における1つ又はそれ以上の中央抽出ポート44は、中央プレナム42から空気を抽出するための場所を提供する。使用時には、この抽出ポート44は、ケーシング22(図示せず)の外部にある適切な配管又はダクトに結合されることになる。
【0015】
個々のスロットの環状アレイを含むことができる前方抽気スロット46は、段S1の後方のライナ組立体20を貫通している。前方抽気スロット46は、ライナ組立体20とケーシング22との間に形成され且つ後方プレナム36及び中央プレナム42から隔離された前方プレナム48と連通している。ケーシング22内における1つ又はそれ以上の前方抽出ポート50は、前方プレナム48から空気を抽出する場所を提供する。使用時には、この抽出ポート50は、ケーシング22(図示せず)の外部にある適切な配管又はダクトに結合されることになる。
【0016】
図2は、段S1と段S2との間で空気を抽気するために使用される構造体をより詳細に示している。環状シュラウド52は、上述のように圧縮機ブレード18を囲む。シュラウド52は、リング内に配置された複数のセグメントで構成されて完全な360度の組立体を形成することができる。シュラウドセグメントは、前方レール54及び後方レール56を含み、これらをライナ組立体20の隣接する部分のスロット内に取り付けることができる。上述の前方抽気スロット46は、シュラウド52内に形成され且つ前方プレナム48と連通している。この特定の実施例では、前方抽気スロット46は、前方レール54とシュラウド52のほぼテーパ状の円筒形中央部分58との間に配置される。典型的な構造体は、セグメントのリングから構成されるライナ組立体20と、2つのセクションで形成され割線フランジ60にて一体的にボルト締めされたケーシング22とを有することになる。これらの構成要素間の接合部にて漏洩を防止するために、第3のプレナム48内にダクト62を位置付けることができる。1つの実施例として、ダクト62は、シュラウド52と抽出ポート50との間に流路を形成した前方壁64及び後方壁64を有することができる。ダクト62は、完全な環状形状に組み立てられた2つ又はそれ以上のアーチ形セグメントで作ることができる。
【0017】
前方プレナム48は、VSVを有する2つの段間で軸方向に位置している。段S1から空気を抽気し且つ該空気を前方プレナム48から抽出するのに十分な空間を提供するために、VSVの動作ハードウェアは、従来技術の実施におけるものとは異なって位置付けられる。具体的には、段S1のアクチュエータアーム28Bは軸方向前方に延びているが、段S2のアクチュエータアーム28Cは軸方向後方に延びている。本明細書で使用する場合に、「軸方向に」という用語は、図1に示した長手方向軸線Aと平行な方向を意味している。これにより、ケーシング22の外側寄りに図2において破線で示された開放空隙「V」が形成され、これは従来技術構成においては存在しない。開放空隙「V」により、外部配管又はダクト(図示せず)を抽出ポート50に接続することが可能になる。
【0018】
作動時には、段S1、S3、及びS6から空気を抽気して、空気流を3つの個別の圧力で供給することができる。可能な限り多量のブリード空気が最低可能圧力(すなわち、可能な最前方の段)で抽出されて、効率及び燃料消費率(「SFC」)に与える影響を最小限にするようになる。従来技術の抽気構成とは対照的に、このような圧力がVSV段の場所で見られるということにも拘わらず、所望の圧力で空気を抽出することができる。
【0019】
ケーシング及びライナが単一壁に組み込まれる圧縮機110において同様の空気抽気構成を実装することができる。例えば、図3は、スプール112、圧縮機ブレード118、及びステータベーン124を有する圧縮機の一部分を示している。環状ケーシング122は、圧縮機ブレード118を囲み、ステータベーン用のマウントとして、及び圧縮機ブレード118のシュラウドとしての両方の役割を果たす。事実上、環状ケーシング122は、1つの一体形ユニットとして上述のケーシング及びライナ組立体を含む。ステータベーン124の一部は可変角度(すなわち、VSV)であり、それぞれアクチュエータアーム128A〜128Dに結合されたトラニオン126A〜126D及びリング130を含む。説明の目的で、2つの軸方向に隣接する段のステータベーン124を説明する。S1´で表記された1つの段は、トラニオン126A、アクチュエータアーム128A、及びリング130Aを含む。段S1´のすぐ下流に位置する段S2´は、トラニオン126B、アクチュエータアーム128B、及びリング130Bを含む。アクチュエータアーム128Aは、軸方向前方に延び、アクチュエータアーム128Bは、軸方向後方に延びて、破線で示した「空隙」を形成する。抽気スロット146は、ケーシング122を貫通して形成され、プレナム148と連通している。空間V´が存在することに起因して、プレナム148は、適切な配管又はダクトワーク(図示せず)と結合することができる。
【0020】
図4は、圧縮機から空気を抽気するための代替の構成を示している。この図は、上述のガスタービンエンジンの一部であり且つその全体的な構成が圧縮機10に類似している高圧圧縮機210の一部分を示しており、圧縮機10と同の構成要素を省略して説明する。圧縮機210は、圧縮機ブレード218のブレード列を備えた環状スプール212を含む。環状ライナ組立体220は、圧縮機ブレード218を緊密に囲み、圧縮機210を貫通する一次ガス流路の半径方向外側境界部を形成する。ライナ組立体220は、複数のより小さい構成要素から構成され、その一部を以下でより詳細に説明する。環状ケーシング222は、ライナ組立体220を囲み、ステータベーン224の複数のステータ列を有する。
【0021】
この図示の実施例では、「S1´´」から「S6´´」で表記された圧縮機210の段の一部のみを示している。上述のように、これらの個数は、参照を容易にするために使用されているに過ぎず、圧縮機10全体における実際の段数に必ずしも対応していない。図示の第1の3つの段(すなわち、S1´´〜S3´´)は、上述のように可変ステータベーンを組み込んでいる。各段S1´´からS3´´までのベーン224は、対応するトラニオン(それぞれ226Aから226Cで表記されている)を有しており、このトラニオンはライナ組立体220及びケーシング222を貫通して半径方向外向きに延びている。トラニオン226A〜226Cの作動ハードウェアは図示していない。
【0022】
個々のスロットの環状アレイを含むことができる後方抽気スロット232は、段S5´´の後方のライナ組立体220を貫通している。後方抽気スロット232は、ライナ組立体220とケーシング222との間に形成された後方プレナム236と連通している。ケーシング222における1つ又はそれ以上の後方抽出ポート238は、後方プレナム236から空気を抽出するための場所を提供する。使用時には、後方抽出ポート238は、ケーシング222の外部にある適切な配管又はダクト(図示せず)に結合されることになる。
【0023】
個々のスロットの環状アレイを含むことができる中央抽気スロット240は、段S2´´の後方のライナ組立体220を貫通している。中央抽気スロット240は、ライナ組立体220とケーシング222との間に形成され且つ後方プレナム236から隔離された中央プレナム242と連通している。ケーシング222における1つ又はそれ以上の中央抽出ポート244は、中央プレナム242から空気を抽出するための場所を提供する。使用時には、中央抽出ポート244は、ケーシング222の外部にある適切な配管又はダクト(図示せず)に結合されることになる。
【0024】
個々のスロットの環状アレイを含むことができる前方抽気スロット246は、段S1´´の後方のライナ組立体220を貫通している。前方抽気スロット246は、ライナ組立体220とケーシング222との間に形成され且つ後方プレナム236及び中央プレナム242から隔離された前方プレナム248と連通している。ケーシング222における1つ又はそれ以上の前方抽出ポート250は、前方プレナム248から空気を抽気する場所を提供する。使用時には、この前方抽出ポート250は、ケーシング222の外部にある適切な配管又はダクトに結合されることになる。
【0025】
図5は、段S1から空気を抽気するために使用される構造体をより詳細に示している。上述のように、環状シュラウド252は、圧縮機ブレード218を囲む。シュラウド252は、リング内に配置された複数のセグメントから構成されて完全な360度組立体を形成することができる。シュラウドセグメントは、前方レール254及び後方レール256を含み、これらをライナ組立体220の周囲部分のスロット内に取り付けることができる。上述の前方抽気スロット246は、シュラウド252内に形成され且つ前方プレナム248と連通している。この特定の実施例では、前方抽気スロット246は、前方レール254とシュラウド252のほぼテーパ状の円筒形中央部分258との間に配置される。
【0026】
トラニオン226Cを受けるブッシュ260は、ケーシング222の一部である環状壁様ボス262を貫通している。段S5を越えてブリード空気を通過させるために、ボス262は、アパーチャ264の近くのその周辺部周りの複数の場所で貫通される。図6において、アパーチャ264と、該アパーチャを越えて延びているトラニオンとを見ることができる。任意選択的に、トラニオン226Cは、隣接するトラニオン226間の横方向の空間を増大させ、これによりアパーチャ264を通してより多くの流れを可能にするために、図7に見られるように、軸方向よりも円周方向においてより小さい軸方向に細長い非円形状を有することができる。任意選択的に、トラニオン226とケーシング222との間のブリード空気の漏洩を防止するために、アパーチャ264において半径方向に延びるトラニオン226を囲むように中空スリーブ265を位置付けることができる。
【0027】
前方プレナム248を通る漏洩を防止するために、様々な手段を用いることができる。上述のように、典型的な構成は、セグメントのリングから構成されるライナ組立体220と、2つのセクションで形成されて割線フランジ259にて一体的にボルト締めされたケーシング222とを有することになる。これらの構成要素間の接合部にて漏洩を防止するために、前方プレナム248内に環状前方ダクト266及び後方ダクト268を位置付けることができる。前方ダクト266は、L字形状断面を備えたアーチ形外側壁270及び内側壁272を含む。内側壁270及び外側壁272は全体として、シュラウド252とボス262の前面274との間に流路を形成する。後方ダクト268は、ほぼU字形状断面を備えた外側壁276と、ある角度をなして後方及び半径方向外向きに延びたほぼ線形断面を備えた内側壁278とを含む。内側壁278及び外側壁276は全体として、ボス262の後方面280とケーシング222の内側表面282との間に流路を形成する。前方ダクト266及び後方ダクト268の両方は、完全な環状形状として組み立てられた2つ又はそれ以上のアーチ形セグメントから作ることができる。
【0028】
上述の抽気構成は、あらゆる所望の抽気位置において必要に応じて組み合わせ及び/又は適合させることができる。特定の圧縮機は、VSV段又は非VSV段の何れかの内部に1つ又は複数の抽気位置を有することができる。可変段の後方に抽気ポートを配置することにより、圧縮機長さが維持され且つVSVの複雑さを最小限になると共に、キャビティから直接抽気することにより抽気システム/漏洩損失が減少する。従来技術の抽気構成とは対照的に、圧縮機内部の軸方向位置に関係なく、所望の圧力で空気を抽出することができる。本明細書で説明した抽気構成は、エンジンSFCの大幅な低減をもたらすことができると思われる。
【0029】
以上の説明は、ガスタービンエンジン圧縮機における抽気構成について述べてきた。本発明の特定の実施形態を説明してきたが、本発明の技術的思想及び範囲から逸脱することなく種々の修正形態を実施できることは、当業者であれば理解されるであろう。従って、本発明は、上述の説明によって限定されると見なすべきではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0030】
10 圧縮機
12 スプール
14 ドラム部分
16 ディスク
18 圧縮機ブレード
20 ライナ組立体
22 ケーシング
24 ステータベーン
26 トラニオン
28 アクチュエータアーム
30 リング
32 後方抽気スロット
36 後方プレナム
38 後方抽出ポート
40 中央抽気スロット
42 中央プレナム
44 中央抽出ポート
46 前方抽気スロット
48 前方プレナム
50 前方抽出ポート
52 シュラウド
54 前方レール
56 後方レール
58 中央部分
60 割線フランジ
62 ダクト
64 前方壁
66 後方壁
110 圧縮機
112 スプール
118 圧縮機ブレード
122 ケーシング
124 ステータベーン
126 トラニオン
128 アクチュエータアーム
130 リング
146 抽気スロット
210 圧縮機
212 スプール
218 ブレード
220 ライナ組立体
222 ケーシング
226 トラニオン
232 後方抽気スロット
236 後方プレナム
238 後方抽出ポート
240 中央抽気スロット
242 中央プレナム
244 中央抽出ポート
246 前方抽気スロット
248 前方プレナム
250 前方抽出ポート
252 シュラウド
254 前方レール
256 後方レール
258 中央部分
260 ブッシュ
262 ボス
264 アパーチャ
265 スリーブ
266 前方ダクト
268 後方ダクト
270 外側壁
272 内側壁
274 前面
276 内側壁
278 外側壁
280 後面
282 内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機装置であって、
中心軸線の周りで回転するように取り付けられ且つ翼形部形圧縮機ブレード(18、118、218)の環状アレイを各々が備えた複数の軸方向に離間したブレード列を担持する圧縮機スプール(12、112、212)と、
前記圧縮機ブレード(18、118、218)を囲み、且つ前記圧縮機を貫通する一次ガス流路の境界部を形成したライナ組立体(20、220)を担持するケーシング(22、122、222)と、
前記ライナ組立体(20、220)によって担持され且つ各々が翼形部形ステータベーン(24、124、224)の環状アレイを含む複数の軸方向に離間したステータ列と、
を備え、
前記ステータ列が前記ブレード列と軸方向に交互配置され、前記ステータ列の少なくとも幾つかの軸方向に隣接する列が可変ステータ列であり、該ステータ列のステータベーン(24、124、224)が前記ケーシング(22、122、222)を貫通するトラニオン(26、126、226)上に取り付けられて、前記ケーシング(22、122、222)に対して枢動可能になっており、
前記圧縮機装置が更に、
前記ケーシング(22、122、222)の外側で前記トラニオン(26、126、226)の各々に結合されたアクチュエータアーム(28、128)と、
前記可変ステータ列の軸方向に隣接する第1及び第2の列の間で前記ライナ組立体(20、220)を貫通する少なくとも1つの第1の抽気スロット(46、146、246)と、
前記ケーシング(22、122、222)によって形成され且つ前記少なくとも1つの第1の抽気スロット(46、146、246)及び前記ケーシング(22、122、222)の外部と連通している第1の流路と、
を備える装置。
【請求項2】
前記第1の可変ステータ列のアクチュエータアーム(28、128)が、軸方向前方に延び、前記第2の可変ステータ列のアクチュエータアーム(28、128)が軸方向後方に延びて、前記ケーシング(22、122、222)の外部において前記少なくとも1つの第1の抽気スロット(46、146、246)とほぼ軸方向に整列した開放空隙を形成するようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ケーシング(22、122、222)が、前記第1の流路と流れ連通した状態で前記ケーシング(22、122、222)の外部表面にて形成され且つ前記開放空隙の前方及び後方境界部内に軸方向に位置付けられた少なくとも1つの第1の抽出ポート(50、250)を含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記ライナ組立体(20、220)が、前記ケーシング(22、122、222)の他の部分から半径方向に離間されて、これらの間に前記第1の流路の境界部を形成する第1の開放プレナム(48、148、248)を形成するようになる、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記ライナが、前記ブレード列の1つを囲む環状シュラウド(52、252)を担持し、前記少なくとも1つの第1の抽気スロット(46、146、246)が、前記シュラウド(52、252)を貫通する、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記第1のプレナム(48、148、248)内に配置された離間した前方及び後方壁を有する環状ダクト(62)を更に備える、請求項4記載の装置。
【請求項7】
前記可変ステータ列全ての軸方向下流側で前記ライナ組立体(20、220)を貫通する少なくとも1つの付加的な抽気スロット(32、40、232、240)と、
前記少なくとも1つの付加的な抽気スロット(32、40、232、240)及び前記ケーシング(22、122、222)の外部表面に配置された少なくとも1つの付加的な抽出ポート(38、44、238、244)と連通するケーシング(22、122、222)によって形成され、且つ前記第1の流路から隔離されている第2の流路と、
を更に備える、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記トラニオン(26、126、226)が、前記ライナ組立体(20、220)と前記ケーシング(22、122、222)の他の部分との間でほぼ半径方向に延びた環状ボス(262)内に取り付けられ、
前記少なくとも1つの第1の抽気スロット(46、146、246)が、前記ボス(262)のうちの選択されたボスの軸方向前方に位置付けられ、
前記選択されたボス(262)には少なくとも1つのアパーチャ(264)が形成され、前記トラニオン(26、126、226)の幾つかが前記少なくとも1つのアパーチャ(264)を越えて半径方向に延びるようになり、
前記第1の流路が、前記選択されたボス(262)において前記少なくとも1つのアパーチャ(264)を貫通し且つ前記選択されたボス(262)の軸方向後方に延びている、請求項4記載の装置。
【請求項9】
前記第1の抽気スロット(46、146、246)と前記選択されたボス(262)の前方面との間に配置された離間した内側及び外側壁を有する前方ダクト(266)と、
前記選択されたボス(262)の後方面と前記ケーシング(22、122、222)の内部表面との間に配置された離間した内側及び外側壁を有する後方ダクト(268)と、を更に備える、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアパーチャ(264)を越えて延びた少なくとも前記トラニオン(26、126、226)が、軸方向よりも円周方向においてより狭い非円形断面形状を有する、請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアパーチャ(264)を越えて延びた前記トラニオン(26、126、226)の各々をスリーブ(265)が囲む、請求項8記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233476(P2012−233476A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−98293(P2012−98293)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】