説明

可変ノズル機構

【課題】プレートの変形を抑制することのできる可変ノズル機構を提供する。
【解決手段】可変ノズル機構30は、タービンシャフト11の軸線に沿う方向(図3の左右方向)に互いに離間した状態で、スクロール通路16及びタービン室15間に配置され、ピン46により結合された一対の環状のプレート31,41と、両プレート31,41間に開閉可能に設けられた複数の可変ノズル33とを備える。可変ノズル機構30は、可変ノズル33の開度の変更により、タービンホイール26に吹付けられる排気の流速を可変とするとともに、皿ばね50により軸線に沿う方向(図3の左方)に付勢されてベアリングハウジング12に押し当てられる。可変ノズル機構30において、皿ばね50の付勢力F1が作用する作用線L2上には、ベアリングハウジング12との接触面(先端面55A)を有する突部55が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャにおける可変ノズル機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンに搭載されるターボチャージャにおける可変ノズル機構としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
このターボチャージャでは、タービンシャフトが図4に示すベアリングハウジング71に回転可能に支持されている。タービンシャフトの軸線に沿う方向についてベアリングハウジング71の一側(図4の右側)には、タービンハウジング72が配置されている。タービンハウジング72はタービン室73を中心部に有するとともに、同タービン室73の周りに渦巻き状のスクロール通路75を有している。タービンシャフト上には、上記タービン室73内で回転するタービンホイール(図示略)が設けられている。そして、このターボチャージャ70では、エンジンから排出され、かつスクロール通路75に沿って流れた排気がタービンホイールに吹付けられて、同タービンホイールが回転駆動される。これに伴い、タービンホイールと同軸上のコンプレッサホイール(図示略)がタービンホイールと一体となって回転し、過給が行なわれる(吸入された空気が圧縮されてエンジンに送り込まれる)。
【0003】
可変ノズル機構80は、上記軸線に沿う方向(図4の左右方向)に互いに離間した状態で、スクロール通路75及びタービン室73間に配置され、ピン等により結合された一対の環状のプレート81,82と、両プレート81,82間に開閉可能に設けられた複数の可変ノズル83とを備えている。そして、可変ノズル機構80は、可変ノズル83の開度の変更により、タービンホイールに吹付けられる排気の流速を可変とする。さらに、可変ノズル機構80は、ばね84により、ベアリングハウジング71側からタービンハウジング72側へ付勢されている。ベアリングハウジング71側のプレート81の外周にはフランジ部81Aが設けられる一方、タービンハウジング72内にはフランジ部72Aが設けられている。そして、ばね84により付勢された可変ノズル機構80は、プレート81のフランジ部81Aにおいて、タービンハウジング72のフランジ部72Aに押し当てられる。この押し当てにより、可変ノズル機構80が、両ハウジング71,72に固定されることなく、フローティング状態で位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−62840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載された可変ノズル機構80では、ばね84の付勢力F1が作用する箇所P1と、タービンハウジング72と接触する箇所P2(フランジ部81A)とが、タービンシャフトの径方向(図4の上下方向)に大きく離れている。そのため、可変ノズル機構80には、タービンハウジング72との接触箇所であるフランジ部81Aを支点として同可変ノズル機構80を回転させようとする、ばね84による力(モーメント)が作用し、プレート81を変形させる荷重が常に加わる。その結果、可変ノズル機構80の構成部品の材料強度が低下する熱間時等には、プレート81が塑性変形するおそれがある。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、プレートの変形を抑制することのできる可変ノズル機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、タービンシャフトが回転可能に支持されるベアリングハウジングと、前記タービンシャフトの軸線に沿う方向について前記ベアリングハウジングの一側に配置され、タービン室を有するとともに、同タービン室の周りにスクロール通路を有するタービンハウジングと、前記タービンシャフト上に設けられ、前記タービンハウジングの前記タービン室内で回転するタービンホイールとを備え、エンジンから排出され、前記スクロール通路に沿って流れた排気を前記タービンホイールに吹付けて、同タービンホイールを回転駆動するターボチャージャに適用されるものであり、前記軸線に沿う方向に互いに離間した状態で、前記スクロール通路及び前記タービン室間に配置され、結合部により結合された一対の環状のプレートと、前記両プレート間に開閉可能に設けられた複数の可変ノズルとを備え、前記可変ノズルの開度の変更により、前記タービンホイールに吹付けられる前記排気の流速を可変とするとともに、付勢手段により前記軸線に沿う方向に付勢されて押し当て対象に押し当てられる可変ノズル機構であって、前記付勢手段の付勢力が作用する作用線上に前記押し当て対象との接触面が設けられていることを要旨とする。
【0008】
上記の構成によれば、可変ノズル機構は、付勢手段により、タービンシャフトの軸線に沿う方向へ付勢されて押し当て対象に押し当てられる。この押し当てにより、可変ノズル機構が、ベアリングハウジング及びタービンハウジングに固定されることなく、フローティング状態で位置決めされる。
【0009】
ここで、請求項1に記載の発明では、付勢手段の付勢力が作用する作用線上に押し当て対象との接触面が設けられていることから、タービンシャフトの径方向について、付勢力が作用する箇所と、押し当て対象に接触する箇所(接触面)との距離が「0」又はそれに近い値となる。押し当て対象と接触する箇所を支点として可変ノズル機構を回転させようとする、付勢手段による力(モーメント)が作用せず、又は小さく、プレートを変形させる荷重が加わりにくくなる。その結果、付勢手段によるプレートの変形を抑制することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記付勢手段はばねであることを要旨とする。
上記の構成によれば、金属等の弾性体によって形成されたばねが付勢手段として用いられる。このばねは、弾性変形させられて、弾性エネルギを蓄積した状態でターボチャージャに組込まれる。可変ノズル機構は、このばねの弾性エネルギを放出しようとする力(弾性復元力、付勢力)によりタービンシャフトの軸線に沿う方向に付勢される。このように、簡単な構成でありながら、可変ノズル機構を軸線に沿う方向へ付勢する付勢手段が成立される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ばねは、前記タービンホイールを取り囲むように配置される皿ばねであることを要旨とする。
上記の構成によれば、付勢手段として皿ばねが用いられることで、可変ノズル機構は、周方向のどの箇所においても軸線に沿う方向へ略均等の付勢力で付勢される。そのため、可変ノズル機構は押し当て対象に対し、周方向に略均等の押圧力で押し当てられる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記押し当て対象は、前記ベアリングハウジング又は前記タービンハウジングであることを要旨とする。
【0013】
上記の構成によれば、付勢手段によりタービンシャフトの軸線に沿う方向へ付勢された可変ノズル機構は、ベアリングハウジング又はタービンハウジングに押し当てられる。この際、可変ノズル機構において付勢手段の付勢力が作用する箇所と、ベアリングハウジング又はタービンハウジングとの接触面とは、付勢手段の付勢力が作用する作用線上に位置する。タービンシャフトの径方向について、付勢力が作用する箇所と、ベアリングハウジング又はタービンハウジングに接触する箇所との距離が「0」となり、付勢手段によるプレートの変形が抑制される。このように、ターボチャージャを構成する既存のベアリングハウジング又はタービンハウジングが可変ノズル機構の押し当て対象とされるため、押し当て対象を別途設けなくてもすむ。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明において、前記両プレートのうち、前記付勢手段による付勢方向前側に位置するものには、同付勢方向前側へ突出する突部が設けられており、前記突部の先端面により前記接触面が構成されていることを要旨とする。
【0015】
上記の構成によれば、可変ノズル機構が付勢手段によりタービンシャフトの軸線に沿う方向へ付勢されると、その付勢方向前側へ向けて両プレートが変位する。両プレートのうち、付勢手段による付勢方向前側に位置するものに設けられて、同付勢方向前側へ突出する突部も同方向へ変位する。そして、この突部の先端面が接触面として押し当て対象に押し当てられる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明において、前記両プレート間であって、前記接触面を通る前記作用線上には、同両プレートの間隔を保持するスペーサが配置されていることを要旨とする。
【0017】
上記の構成によれば、可変ノズル機構において、付勢手段の付勢力が直接加わる箇所と、両プレート間のスペーサと、押し当て対象との接触面とが、いずれも付勢手段の作用線上に位置する。そのため、付勢手段の付勢力は、作用線に沿って、上記箇所、スペーサ及び接触面を通じて押し当て対象に効率よく伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における可変ノズル機構が組込まれたターボチャージャの概略構成を示す部分断面図。
【図2】一実施形態における可変ノズル機構の一部を示す図であり、(A)は図1の左方から見た側面図、(B)は図1の右方から見た側面図。
【図3】一実施形態における可変ノズル機構及びその周辺部分について、図1とは異なる断面での断面構造を拡大して示す部分断面図。
【図4】従来の可変ノズル機構の要部を拡大して示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
車両には、吸気通路を通じて燃焼室に吸入される空気と、同燃焼室に供給される燃料との混合気を燃焼するエンジンが搭載されている。このエンジンには、図1に示すターボチャージャ10が設けられている。このターボチャージャ10では、タービンシャフト11がベアリング13によってベアリングハウジング12に回転可能に支持されている。タービンシャフト11の軸線L1に沿う方向(以下「軸線方向」という)についてベアリングハウジング12の一側(図1の右側)には、タービンハウジング14が隣接して配置され、他側(図1の左側)には、複数の部材からなるコンプレッサハウジング(図示略)が隣接して配置されている。タービンハウジング14及びコンプレッサハウジングは、ベアリングハウジング12に対しそれぞれ締結されている。そして、これらのベアリングハウジング12、タービンハウジング14及びコンプレッサハウジングによって、ターボチャージャ10のハウジングが構成されている。
【0020】
タービンハウジング14の中心部には、上記軸線方向に延びる円筒状のタービン室15が形成されている。タービンハウジング14内において、タービン室15の周りには、渦巻き状のスクロール通路16が形成されている。タービン室15及びスクロール通路16は連通路17を介して相互に連通されている(図3参照)。
【0021】
なお、ベアリングハウジング12において連通路17に面する内壁面12Aと、タービンハウジング14において連通路17に面する内壁面14Aとは、それぞれ上記軸線L1に対し直交した状態又はそれに近い状態となっている。
【0022】
タービンシャフト11の一方(図1の右方)の端部上には、タービン室15内で回転するタービンホイール26が固定されている。タービンシャフト11の他方(図1の左方)の端部上には、コンプレッサハウジング内で回転するコンプレッサホイール(図示略)が固定されている。
【0023】
そして、上記の基本構成を有するターボチャージャ10では、エンジンから排出され、かつスクロール通路16に沿って流れた排気が連通路17を通じてタービンホイール26に吹付けられて、同タービンホイール26が回転駆動される。この回転は、タービンシャフト11を介してコンプレッサホイールに伝達される。その結果、エンジンでは、ピストンの移動に伴って燃焼室内に発生する負圧によって吸入される空気が、ターボチャージャ10のコンプレッサホイールの回転によって強制的に燃焼室に送り込まれる(過給される)。このようにして、燃焼室への空気の充填効率が高められる。
【0024】
上記ターボチャージャ10には、可変ノズル機構(バリアブルノズル機構)30が組込まれている。可変ノズル機構30は、連通路17の排気流通面積を変更し、タービンホイール26に吹付けられる排気の流速を可変とし、もって、ターボチャージャ10の回転速度を調整し、燃焼室に強制的に送り込まれる空気の量を調整するための機構である。
【0025】
次に、この可変ノズル機構30の概略構成について説明する。図2(A)は、可変ノズル機構30の一部(ノズルプレート31等)を図1の左方から見た状態を示し、図2(B)は可変ノズル機構30の一部(ノズルプレート31等)を図1の右方から見た状態を示している。図1及び図2(A),(B)に示すように、可変ノズル機構30は、連通路17にそれぞれ配置されたノズルプレート31及びユニゾンリング35を備えている。これらのノズルプレート31及びユニゾンリング35は、上記軸線L1を中心とする円環状をなしている。
【0026】
ノズルプレート31において、上記軸線L1を中心とする円上には、複数の軸32が略等角度毎に配置されている。各軸32は、軸線L1に平行に延びており、ノズルプレート31に対し回動可能に挿通されている。各軸32について、ノズルプレート31から露出する一方(図1の右方)の部分には、可変ノズル(ノズルベーン)33が固定されている。図1では、可変ノズル33は二点鎖線で図示されている。また、各軸32について、ノズルプレート31から露出する他方(図1の左方)の端部には、アーム34の基端部が固定されている。
【0027】
ユニゾンリング35は、内周面の複数箇所に凹部36を有している。これらの凹部36には、上記アーム34の先端部が係合されている。ユニゾンリング35は、リンク37(図1参照)等を介してターボチャージャ10の外部から回転される。すなわち、リンク37の回動軸37Aにはアーム39が固定されており、そのアーム39の先端部は、ユニゾンリング35の内周面に設けられた凹部40に係合されている。そして、ユニゾンリング35が、リンク37、回動軸37A、アーム39等を介してターボチャージャ10の外部から、上記軸線L1の周りで回動させられると、そのユニゾンリング35の複数の凹部36に係合している各アーム34が軸32を中心として各々同期した状態で回動(開閉)される。各軸32の回動によって可変ノズル33の開度が変化し、連通路17の上記排気流通面積が変更される。そして、隣り合う可変ノズル33間を通じてタービンホイール26に吹付けられる排気の流速が調整される。
【0028】
例えば、図2(A)において、リンク37等により回動軸37Aを支点としてアーム39を反時計回り方向へ回動させると、これに伴ってユニゾンリング35は同図2(A)及び図2(B)においてそれぞれ矢印に示す方向へ回動する。ユニゾンリング35の上記回動によって、各軸32が、図2(A)では反時計回り方向へ回動し、図2(B)では時計回り方向へ回動する。各軸32の上記回動に伴い、可変ノズル33が閉じ側に回動し、タービンホイール26に吹付けられる排気の流速が高くなる。上記とは逆に、可変ノズル33が開き側に回動すると、タービンホイール26に吹付けられる排気の流速が低くなる。
【0029】
図3は、可変ノズル機構30の要部について、上記図1とは異なる断面(後述するスペーサ47を通る断面)での断面構造を拡大して示している。図1及び図3に示すように、可変ノズル機構30は、上述した構成に加え、上記連通路17に配置されたシュラウドプレート41を備えている。シュラウドプレート41は、上記軸線L1を中心とする円環状をなしている。シュラウドプレート41は、ノズルプレート31に対し、ベアリングハウジング12から遠ざかる側(図1及び図3の各右側)に位置している。
【0030】
シュラウドプレート41には、上述した軸32の端部が回動可能に挿通されている。従って、各可変ノズル33は、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41において、軸32と一体で回動し得るように支持されていることとなる。
【0031】
ノズルプレート31及びシュラウドプレート41は、結合部としての複数本のピン46によって連結されることで「組立体48」となっている。各ピン46は、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41にそれぞれ圧入されている。なお、上記シュラウドプレート41は、ノズルプレート31とともに、特許請求の範囲における一対のプレートを構成している。
【0032】
複数本のピン46は、上記軸線L1を中心とする円上において略等角度毎に配置されている。この円の径は、複数本の上記軸32の配置された円の径よりも大きい。従って、各ピン46は軸32よりも軸線L1から大きく離れた箇所に位置することとなる。
【0033】
ノズルプレート31及びシュラウドプレート41間において、各ピン46上には円管状のスペーサ47が被せられており、これらのスペーサ47によって、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41間に可変ノズル33の厚み程度の間隔が確保されている。
【0034】
さらに、ターボチャージャ10では、タービンホイール26の周りであって、組立体48のシュラウドプレート41とタービンハウジング14の内壁面14Aとの間隙Gに付勢手段が設けられている。付勢手段は、金属板等の弾性体によって円環状に形成された皿ばね50によって構成されている。この間隙Gは、タービンハウジング14等が冷間時と熱間時とで熱変形(収縮・膨張)を起したり、ターボチャージャ10の構成部品に精度上のばらつきがあったりしても、ベアリングハウジング12及びタービンハウジング14間に組立体48の設置スペースを確保できること等を考慮して設けられている。
【0035】
皿ばね50は組立体48を軸線方向に付勢し、押し当て対象としてのベアリングハウジング12の内壁面12Aに押し当てるためのものである。皿ばね50は、中心部に近付くほどタービンハウジング14の内壁面14Aに近付く円錐状(テーパ状)に形成されている。
【0036】
皿ばね50の内周縁部51は、軸線L1を中心とした円環状をなし、タービンハウジング14の内壁面14Aに接触している。皿ばね50の外周縁部52は、軸線L1を中心とした円環状をなし、シュラウドプレート41に接触している。この外周縁部52の径は、上述した複数のスペーサ47が配置された円の径と略同一に設定されている。従って、外周縁部52は、複数のスペーサ47に対応した箇所(同一直線上となる箇所)で、シュラウドプレート41と接触していることとなる。
【0037】
皿ばね50は、上記内周縁部51及び外周縁部52において荷重が加えられることにより、軸線方向の寸法が小さくなる方向に撓ませられ(弾性変形させられ)ている。皿ばね50は、外周縁部52において、上記軸線L1に対し平行な作用線L2に沿って組立体48(シュラウドプレート41)を付勢する。この皿ばね50により、組立体48が軸線方向についてのベアリングハウジング12側へ付勢され、ノズルプレート31がベアリングハウジング12の内壁面12Aに押し当てられている。このノズルプレート31のベアリングハウジング12との接触により、組立体48がフローティング状態で軸線方向に位置決めされている。
【0038】
さらに、可変ノズル機構30の組立体48には、皿ばね50の上記作用線L2上となる箇所に、ベアリングハウジング12との接触面が設けられている。より詳しくは、両プレート31,41のうち、皿ばね50による付勢方向前側(ベアリングハウジング12側)に位置するノズルプレート31には、同付勢方向前側へ突出する突部55が複数箇所に設けられている(図2(A)参照)。複数の突部55は、軸線L1を中心とする円上であって周方向に互いに離間した箇所に位置している。ここでは、各突部55の周方向の位置は、上述したピン46及びスペーサ47と略同じ箇所に設定されている。従って、ピン46、スペーサ47及び突部55は、軸線L1に平行な同一直線上(作用線L2上)に位置していることとなる。また、複数の突部55は、軸線方向については、ノズルプレート31の他の箇所よりもベアリングハウジング12側へ多く突出している。これらの突部55の先端面55Aは、軸線方向について同一の箇所において、軸線L1に対し直交しており、ベアリングハウジング12の内壁面12Aとの接触面を構成している。
【0039】
上記のようにして、本実施形態の可変ノズル機構30が構成されている。次に、この可変ノズル機構30の作用について説明する。
エンジンの運転に伴い生じた排気は、排気通路を流れる過程でターボチャージャ10に流入し、タービンハウジング14のスクロール通路16に沿って流れる。この排気は、隣り合う可変ノズル33間を通り、タービン室15内のタービンホイール26に吹付けられる。この排気の吹付けにより、タービンホイール26が回転駆動される。これに伴い、タービンホイール26と同軸上のコンプレッサホイールがタービンホイール26と一体となって回転して過給が行なわれる。
【0040】
ターボチャージャ10の外部からリンク37等の操作を通じて可変ノズル33が回動されることにより、同可変ノズル33の開度が変更される。これに伴い、タービンホイール26に吹付けられる排気の流速が変更されて、ターボチャージャ10の回転速度が変更され、エンジンの過給圧が調整される。
【0041】
ところで、上記ターボチャージャ10では、組立体48(シュラウドプレート41)とタービンハウジング14の内壁面14Aとの間で、皿ばね50が軸線方向に弾性変形させられて、弾性エネルギを蓄積した状態で組込まれている。
【0042】
皿ばね50の外周縁部52が接触しているシュラウドプレート41は、皿ばね50の弾性エネルギを放出しようとする力(弾性復元力、付勢力)により軸線方向に常に付勢される。この皿ばね50の付勢力F1は、スペーサ47及びピン46を介してノズルプレート31に伝達される。
【0043】
ここで、本実施形態では、可変ノズル機構30(組立体48)において皿ばね50の付勢力F1が直接加わる箇所P1と、スペーサ47及びピン46と、ノズルプレート31における突部55(先端面55A)とが、いずれも皿ばね50の付勢力F1が作用する作用線L2上に位置する。そのため、皿ばね50の付勢力F1は、作用線L2に沿って、上記箇所P1、スペーサ47及びピン46を通じて、突部55に対し直接伝達される。
【0044】
付勢力F1の上記伝達により、組立体48が突部55を伴ってベアリングハウジング12側へ変位する。そして、この突部55の先端面55Aが接触面としてベアリングハウジング12の内壁面12Aに押し当てられる。この際、皿ばね50が円環状をなしていて、タービンホイール26を取り囲むように配置されていることから、組立体48は、周方向のどの箇所においても軸線方向へ略均等の付勢力F1で付勢される。そのため、組立体48はベアリングハウジング12の内壁面12Aに対し、周方向に略均等の押圧力F2で押し当てられる。
【0045】
本実施形態では、可変ノズル機構30において、皿ばね50の付勢力F1が作用する作用線L2上に、押し当て対象であるベアリングハウジング12との接触面が設けられている。このことから、タービンシャフト11の径方向について、付勢力F1が作用する箇所P1と、ベアリングハウジング12(押し当て対象)に接触する箇所P2(先端面55A)との距離が「0」となる。ベアリングハウジング12(押し当て対象)と接触する箇所P2(先端面55A)を支点として可変ノズル機構30を回転させようとする、皿ばね50による力(モーメント)が作用せず、又は小さく、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41を変形させる荷重が加わりにくい。
【0046】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)ノズルプレート31及びシュラウドプレート41を結合部(ピン46)により結合して組立体48を構成する。可変ノズル機構30において、皿ばね50の付勢力F1が作用する作用線L2上に、組立体48の押し当て対象(ベアリングハウジング12)との接触面(先端面55A)を設けている。
【0047】
そのため、皿ばね50によるノズルプレート31やシュラウドプレート41の変形を抑制し、その変形に起因する可変ノズル33のスティック(固着)を抑制することができる。
【0048】
(2)皿ばね50の付勢力F1のみによって、組立体48を押し当て対象(ベアリングハウジング12)に対して接触させて位置決めさせている。表現を変えると、組立体48をターボチャージャ10のハウジング(ベアリングハウジング12、タービンハウジング14)に固定することなく、フローティング状態で位置決めしている。
【0049】
そのため、組立体48を比較的小さく構成することができ、組立体48の構成部品内の温度差を小さくでき、高温時における熱変形を低減することができる。
また、ノズルプレート31等の外径側で組立体48を強制的に固定していないため、変形に対する拘束を少なくし、熱変形を小さくすることができる。
【0050】
これらのことから、ノズルプレート31及び可変ノズル33間の隙間や、シュラウドプレート41及び可変ノズル33間の隙間を縮小しても、高温時における可変ノズル33の渋り等から開放される。可変ノズル33の渋りとは、可変ノズル33が回動(開閉)時に、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41との接触により動きにくくなったり動かなくなったりする現象である。その結果、ターボ性能の改善、すなわち、タービン効率の向上を図ることが可能となる。
【0051】
(3)ばね(皿ばね50)によって組立体48を軸線方向に付勢するようにしている。
そのため、簡単な構成でありながら、可変ノズル機構30(組立体48)を軸線方向へ付勢する付勢手段を成立させることができる。
【0052】
(4)上記(3)のばねとして皿ばね50を用い、この皿ばね50によってタービンホイール26を取り囲んでいる。
そのため、可変ノズル機構30の組立体48を押し当て対象(ベアリングハウジング12)に対し、周方向に略均等の押圧力F2で押し当てることができる。
【0053】
(5)ベアリングハウジング12を、可変ノズル機構30(組立体48)との押し当て対象としている。
このように、ターボチャージャ10の既存の構成部品であるベアリングハウジング12を押し当て対象として利用しているため、押し当て対象を別途設けなくてもすむ。
【0054】
(6)ノズルプレート31及びシュラウドプレート41のうち、皿ばね50による付勢方向前側に位置するもの(ノズルプレート31)に、同付勢方向前側へ突出する突部55を設け、この突部55の先端面55Aを押し当て対象との接触面としている。
【0055】
このように、突部55を設けることにより、皿ばね50の付勢力F1が作用する作用線L2上に、押し当て対象との接触面(先端面55A)を確実に位置させることができる。
(7)複数の突部55を、軸線L1を中心とする円上であって周方向に互いに離間した箇所に設けている。さらに、上記複数の突部55の先端面55Aを、軸線方向について同一の箇所に位置させている。
【0056】
そのため、組立体48(ノズルプレート31)をベアリングハウジング12の内壁面12Aに対し、周方向に略均等の押圧力F2で押し当てることができる。
(8)各スペーサ47を皿ばね50の作用線L2上に配置している。
【0057】
そのため、皿ばね50の付勢力F1を、作用線L2に沿って、可変ノズル機構30において皿ばね50の付勢力F1が直接加わる箇所P1、スペーサ47、及び突部55の先端面55A(接触面)を通じてベアリングハウジング12に効率よく伝達することができる。
【0058】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・突部55は、ノズルプレート31に代えてベアリングハウジング12に設けられてもよい。
【0059】
・付勢手段による可変ノズル機構30(組立体48)の付勢方向は、タービンハウジング14からベアリングハウジング12に向かう方向(上記実施形態がこれに該当する)に限らず、ベアリングハウジング12からタービンハウジング14に向かう方向であってもよい。この場合、可変ノズル機構30(組立体48)は、ベアリングハウジング12に代えてタービンハウジング14に押し当てられる。
【0060】
・ベアリングハウジング12及びタービンハウジング14とは異なる部材が可変ノズル機構30(組立体48)の押し当て対象とされてもよい。この場合、押し当て対象は、ターボチャージャ10の既存の構成部材であってもよいし、新規に設けられたものであってもよい。
【0061】
・付勢手段として、皿ばね50とは異なるばねが用いられてもよい。また、付勢手段として、ばねとは異なるものが用いられてもよい。
・前記実施形態では、軸32がノズルプレート31及びシュラウドプレート41の両方に挿通される構成が採られたが、ノズルプレート31のみに挿通される構成に変更されてもよい。
【0062】
・複数の突部55は、タービンシャフト11の軸線L1を中心とする円上であって、周方向についてスペーサ47とは異なる箇所に設けられてもよい。
・ノズルプレート31及びシュラウドプレート41を結合する結合部として、ピン46以外の構成が採用されてもよい。例えば、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41の一方が結合部を備える構成が採用されてもよい。この場合、結合部は、ノズルプレート31又はシュラウドプレート41に一体形成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…ターボチャージャ、11…タービンシャフト、12…ベアリングハウジング(押し当て対象)、14…タービンハウジング(押し当て対象)、15…タービン室、16…スクロール通路、26…タービンホイール、30…可変ノズル機構、31…ノズルプレート(プレート)、33…可変ノズル、41…シュラウドプレート(プレート)、46…ピン(結合部)、47…スペーサ、50…皿ばね(付勢手段、ばね)、55…突部、55A…先端面(接触面)、F1…付勢力、L1…軸線、L2…作用線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンシャフトが回転可能に支持されるベアリングハウジングと、
前記タービンシャフトの軸線に沿う方向について前記ベアリングハウジングの一側に配置され、タービン室を有するとともに、同タービン室の周りにスクロール通路を有するタービンハウジングと、
前記タービンシャフト上に設けられ、前記タービンハウジングの前記タービン室内で回転するタービンホイールと
を備え、
エンジンから排出され、前記スクロール通路に沿って流れた排気を前記タービンホイールに吹付けて、同タービンホイールを回転駆動するターボチャージャに適用されるものであり、
前記軸線に沿う方向に互いに離間した状態で、前記スクロール通路及び前記タービン室間に配置され、結合部により結合された一対の環状のプレートと、
前記両プレート間に開閉可能に設けられた複数の可変ノズルと
を備え、前記可変ノズルの開度の変更により、前記タービンホイールに吹付けられる前記排気の流速を可変とするとともに、付勢手段により前記軸線に沿う方向に付勢されて押し当て対象に押し当てられる可変ノズル機構であって、
前記付勢手段の付勢力が作用する作用線上に前記押し当て対象との接触面が設けられていることを特徴とする可変ノズル機構。
【請求項2】
前記付勢手段はばねである請求項1に記載の可変ノズル機構。
【請求項3】
前記ばねは、前記タービンホイールを取り囲むように配置される皿ばねである請求項2に記載の可変ノズル機構。
【請求項4】
前記押し当て対象は、前記ベアリングハウジング又は前記タービンハウジングである請求項1〜3のいずれか1つに記載の可変ノズル機構。
【請求項5】
前記両プレートのうち、前記付勢手段による付勢方向前側に位置するものには、同付勢方向前側へ突出する突部が設けられており、前記突部の先端面により前記接触面が構成されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の可変ノズル機構。
【請求項6】
前記両プレート間であって、前記接触面を通る前記作用線上には、同両プレートの間隔を保持するスペーサが配置されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の可変ノズル機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104412(P2013−104412A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250912(P2011−250912)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】