説明

可変分光素子、分光装置および内視鏡システム

【課題】小型化の実現およびノイズの低減を図り、光学基板間の間隔寸法を精度よく検出して所望の分光特性を達成する。
【解決手段】間隔を空けて対向する第1および第2の光学基板4a,4bの互いに対向する対向面に設けられた光学コート層3と、第1および第2の光学基板4a,4bの間隔を変化させるアクチュエータ4cと、第1および第2の光学基板4a,4bの間隔を検出するためのものであって、第1の光学基板4aに設けられた第1のセンサ部6aと、第1および第2の光学基板4a,4bの間隔を検出するためのものであって、第2の光学基板4bに、第1のセンサ部6aに対向するように設けられた第2のセンサ部6bとを有し、第1および第2のセンサ電極6a,6bの個数が異なる可変分光素子1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変分光素子、分光装置および内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
対向面に光学コート層が設けられた2枚の光学基板を対向させ、その間隔をピエゾ素子からなるアクチュエータにより可変としたエタロン型の可変分光素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この可変分光素子は、2枚の光学基板の対向面に静電容量センサのセンサ電極を備え、静電容量センサによって光学基板間の間隔寸法を検出し、間隔を制御することができるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平1−94312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなエタロン型の可変分光素子の性能を発揮するためには高精度に光学基板間の平行度を制御する必要があり、そのためにはアクチュエータが複数の自由度を有するとともに、それと同数の検出信号を得ることが望ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1の可変分光素子を内視鏡装置の挿入部先端のような極めて狭小なスペースに設置する場合には、可変分光素子のサイズ自体が極めて小さいものとなる。このような場合にアクチュエータおよびセンサ電極を複数配置すると、それらの配線数の合計が増加してしまい、実装が困難であり、また、クロストークノイズが増大するという不都合がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、小型化の実現およびノイズの低減を図り、光学基板間の間隔寸法を精度よく検出して、所望の分光特性を達成できる可変分光素子、分光装置および内視鏡システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、間隔を空けて対向する第1および第2の光学基板の互いに対向する対向面に設けられた光学コート層と、前記第1および第2の光学基板の間隔を変化させるアクチュエータと、前記第1および第2の光学基板の間隔を検出するためのものであって、前記第1の光学基板に設けられた第1のセンサ部と、前記第1および第2の光学基板の間隔を検出するためのものであって、前記第2の光学基板に、前記第1のセンサ部に対向するように設けられた第2のセンサ部とを有し、前記第1および第2のセンサ部の個数が異なる可変分光素子を提供する。
【0008】
上記発明においては、前記第1のセンサ部の個数が、前記アクチュエータの自由度と同数以上であり、第2のセンサ部の個数が第1のセンサ部の個数より少ないこととしてもよい。
また、上記発明においては、前記第1のセンサ部の個数が、前記アクチュエータの自由度と同数であることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記第1のセンサ部の個数が3個以上であることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記第1の基板が固定され、前記第2の基板が前記アクチュエータにより変位させられることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記第2のセンサ部が1個であることとしてもよい。
【0009】
また、上記発明においては、前記第1および第2のセンサ部が、静電容量方式のセンサ部であることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記第1および第2のセンサ部が、渦電流方式のセンサ部であることとしてもよい。
【0010】
また、本発明は、上記いずれかの可変分光素子と、該可変分光素子により分光された光を撮影する撮像素子とを備える分光装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記可変分光装置を備える内視鏡システムを提供する。
また、上記発明においては、体腔内に挿入される挿入部に前記可変分光素子を備え、前記第2のセンサ部が前記挿入部の先端側に配置されていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化の実現およびノイズの低減を図り、光学基板間の間隔寸法を精度よく検出して所望の分光特性を達成できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態に係る可変分光素子1について、図1および図2を参照して説明する。
本実施形態に係る可変分光素子1は、図1に示されるように、例えば、撮像ユニット2に備えられる素子であって、平行間隔をあけて配置され対向面に反射膜(光学コート層)3が設けられた2枚の円板状の光学基板4a,4bと、該光学基板4a,4bの間隔を変化させるアクチュエータ4cとを備えるエタロン型の光学フィルタである。光学基板4aは、撮像ユニット2を構成する枠部材5に直接固定され、光学基板4bは、アクチュエータ4cを介して枠部材5に取り付けられている。
【0014】
アクチュエータ4cは積層型の圧電素子であり、光学基板4bの周縁に沿って周方向に等間隔をあけて4カ所に設けられている。
この可変分光素子1は、アクチュエータ4cの作動により、光学基板4a,4bの間隔寸法を変化させ、それによって、軸方向に通過する光の波長帯域を変化させることができるようになっている。
【0015】
可変分光素子1を構成する2つの光学基板4a,4bには、該光学基板4a,4bの間隔を検出するためのセンサ6が備えられている。センサ6は、静電容量方式のものであって、光学基板4a,4bの光学有効径B(図2参照。)外の外周部に備えられ、4つのセンサ電極(第1のセンサ部)6aと1つのセンサ電極(第2のセンサ部)6bを有している。センサ電極6aは、光学基板4aの外周部に周方向に沿って等間隔に4箇所配置されている。センサ電極6bは、光学基板4bの外周部に4つのセンサ電極6aの全てに対向するように配置されている。センサ電極6a,6bとしては金属膜を用いることができる。
静電容量方式は、センサ電極6a,6b間の静電容量が面間隔に反比例して変化する特性を用いるものである。
【0016】
本実施形態に係る可変分光素子1においては、図1および図2に示されるように、光学基板4aに設けられたセンサ電極6aは円形状をなし、光学基板4bに設けられたセンサ電極6bは 光学基板4aに周方向に間隔をあけて設けられた4つのセンサ電極6aの全てに対向するような単一のリング状をなしている。そして、図2に示されるように、光学基板4bに設けられたセンサ電極6bが他方の光学基板4aへ投影される範囲(図中、鎖線で示す範囲)内に当該他方の光学基板4aに設けられたセンサ電極6aが配置されている。
【0017】
蛍光観察においては、一般に、得られる蛍光強度が微弱なため、光学系の透過効率は非常に重要になる。エタロン型の可変分光素子1は、反射膜が平行なときに高い透過率が得られるが、その平行度調整に誤差があると透過率が急激に低下する。したがって、蛍光観察用の撮像ユニット2に用いられる可変分光素子1としては、間隔を変化させたときの2つの光学基板4a,4bの傾き誤差を調整するために、複数のセンサ6を備え、複数のアクチュエータ4cを有していることが望ましい。
センサ電極6a,6bからの信号をもとに、アクチュエータ4cへの駆動信号のフィードバック制御を実施することにより、透過率特性の制御において精度を向上させることができるようになっている。
【0018】
このように構成された本実施形態に係る可変分光素子1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る可変分光素子1によれば、平行間隔をあけた2枚の光学基板4a,4bの光学有効径Bの領域に光を入射させることにより、光学基板4a,4bの間隔寸法に応じて定まる波長の光のみが2枚の光学基板4a,4bを透過し、残りの光は反射される。そして、アクチュエータ4cの作動により2枚の光学基板4a,4bの間隔寸法を変化させることにより、該2枚の光学基板4a,4bを透過する光の波長を変更し、これにより観察したい所望の波長帯域の光を他の波長帯域の光から分光することができる。
【0019】
光学基板4a,4bの対向面にはセンサ電極6a,6bが対向して配置されているので、センサ電極6a,6b間に形成された静電容量を示す電圧信号が検出され、該電圧信号に応じてセンサ電極6a,6b間の間隔寸法を検出することができる。光学基板4aの周方向にセンサ電極6aが4個設けられ、光学基板4bにこれらセンサ電極6bの全てに対向する1個のセンサ電極6bが設けられているので、各対のセンサ電極6a,6b毎に、対応する位置の光学基板4a,4bの間隔寸法を検出でき、検出された間隔寸法に基づいてアクチュエータ4cを制御することにより、2枚の光学基板4a,4bを平行状態に維持しながら、精度よく間隔寸法を調節することができる。
【0020】
この場合において、本実施形態に係る可変分光素子1は、一方の光学基板4bに配置されたセンサ電極6bの個数が、他方の光学基板4aに配置されたセンサ電極6aの個数よりも少ないので、センサ電極6a,6bに接続する配線数を減少させることができる。これにより、センサ電極6a,6bの実装を容易にして可変分光素子1の小型化および簡略化を図り、また、各配線どうしを遠ざけた位置に配置してクロストークノイズの混入を低減することができる。
【0021】
また、アクチュエータ4cの駆動により変位させられる光学基板4bに設けられたセンサ電極6bの個数が、撮像ユニット2を構成する枠部材5に直接固定される光学基板4aに設けられたセンサ電極6aの個数よりも少ないため、アクチュエータ4cの駆動時に動く配線数を少なくして、配線間の容量変化に伴うノイズの発生を低減することができる。
【0022】
また、対向するセンサ電極6a,6bの個数が異なっても、光学基板4bに設けられたセンサ電極6bに、光学基板4a設けられた4個のセンサ電極6aが対向しているので、4対のセンサ6が構成されている。これにより、駆動自由度、すなわち、アクチュエータ4cの個数と同じ4つの電圧信号を検出することができる。
【0023】
したがって、2枚の光学基板4a,4bの間隔寸法に一意的に対応した静電容量を示す、アクチュエータ4cの個数と同数の電圧信号に基づいて2つの光学基板4a,4b間の間隔を精度よく制御し、所望の波長帯域の光を精度よく分光することができるという効果がある。
【0024】
さらに、本実施形態に係る可変分光素子1は、センサ電極6bがセンサ電極6aよりも周方向および半径方向に大きく形成されているので、組み付けの際に厳密な位置合わせ作業を行わなくても、小さい側のセンサ電極6aの面積分の対向面積を確保することができる。すなわち、一方の光学基板4bに設けられたセンサ電極6bが他方の光学基板4aに投影される範囲内に、当該他方の光学基板4aに設けられたセンサ電極6aが配置されているので、2枚の光学基板4a,4bどうしが板厚方向に交差する方向、つまり、光学基板4a,4bの半径方向あるいは周方向に微妙にずれて組み付けられても、両センサ電極6a,6b間に形成される静電容量に変化はない。
【0025】
また、複数のアクチュエータ4cの駆動により、2枚の光学基板4a,4bの間隔寸法を精度よく調節することができるが、各アクチュエータ4cの個体差により、2枚の光学基板4a,4bの相対位置が、板厚方向に交差する方向にずれることが考えられる。この場合においても、両センサ電極6a,6b間に形成される静電容量に変化はない。
したがって、2枚の光学基板4a,4bの間隔寸法に一意的に対応した静電容量を示す電圧信号を検出することができ、該電圧信号に基づいて2つの光学基板4a,4b間の間隔を精度よく制御し、所望の波長帯域の光を精度よく分光することができるという利点がある。
【0026】
この場合において、センサ電極6a,6bの形状は、大きい側のセンサ電極6bが、小さい側のセンサ電極6aに対して、半径方向の寸法差よりも周方向の寸法差が大きいことが好ましい。円形の光学基板4a,4bどうしは、その外周面を一致させることで、半径方向にはほぼ精度よく位置決めすることができるが、周方向への位置決めは困難である。上記のようにセンサ電極6a,6bを構成することで、光学基板4a,4bどうしの周方向の位置決めを大まかに行っても、センサ電極6a,6bにより検出される静電容量に変化はなく、組み付け作業をより容易にすることができるという利点がある。
【0027】
なお、本実施形態に係る可変分光素子1においては、一方の光学基板4aの周方向に沿って等間隔に4つのセンサ電極6aを設け、これら全てのセンサ電極6bに対向する1つのセンサ電極6bを、他方の光学基板4bに設けることとしたが、センサ電極6a,6bは任意の個数を設けることができる。
すなわち、図3に示されるように、一方の光学基板4aに周方向に間隔をあけて設けられた2つのセンサ電極6a毎に、これら2つのセンサ電極6aのいずれにも対向する大きさの1つのセンサ電極6bを他方の光学基板4bに設けることにしてもよい。
【0028】
また、図4に示されるように、一方の光学基板4aに設けられた一部の電極6aに対して、1対1で対向するセンサ電極6bを、他方の光学基板4bに設けることにしてもよい。
また、図5に示されるように、一方の光学基板4aに周方向に間隔をあけて設けられた3つセンサ電極6aに対して、これら3つのセンサ電極6aのいずれにも対向する大きさの1つのセンサ電極6bを他方の光学基板4bに設けることにしてもよい。
【0029】
この場合、一方の光学基板4aにセンサ電極6aを3個設ければ、3つの検出信号を得ることができ、アクチュエータ駆動時の光学基板4a、4bの傾き誤差を検出するための必要最小限の情報を得ることができる。これにより、光学基板4a,4b間の平行度を調整することができ、2つの光学基板4a,4b間の間隔を精度よく制御し、所望の波長帯域の光を精度よく分光することができる。
【0030】
また、センサ電極6a,6bの形状としては特に限定されるものではなく、図5に示されるセンサ電極6aのような楕円形状や、図3または図4に示されるセンサ電極6bのような扇形状、あるいは長方形のような任意の形状を採用することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る可変分光素子1においては、光学基板4a,4bの間隔を検出するためセンサ6として、静電容量方式のセンサを採用し、光学基板4a,4bの外周部にセンサ電極6a,6bを備えることとしたが、これに代えて、渦電流方式のセンサを採用し、光学基板4a,4bの外周部にセンサコイル6a,6bを備えることができる。
【0032】
また、光学基板4a,4bの対向面に設けられた反射膜3を導電性の材料により構成し、該反射膜3自体を、静電容量を形成するためのセンサ電極6a,6bとして兼用してもよい。
【0033】
次に、本発明の一実施形態に係る内視鏡システム10について、図6〜図9を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム10は、図6に示されるように、生体の体腔内に挿入される挿入部11と、該挿入部11内に配置される撮像ユニット2と、複数種の光を発する光源ユニット12と、前記撮像ユニット2および光源ユニット12を制御する制御ユニット13と、撮像ユニット2により取得された画像を表示する表示ユニット14とを備えている。
【0034】
前記挿入部11は、生体の体腔に挿入できる極めて細い外形寸法を有し、その内部に、前記撮像ユニット2と、前記光源ユニット12からの光を先端11aまで伝播するライトガイド15とを備えている。
前記光源ユニット12は、体腔内の観察対象Aを照明し、観察対象Aにおいて反射して戻る反射光を取得するための照明光を発する照明光用光源16と、体腔内の観察対象Aに照射され、観察対象A内に存在する蛍光物質を励起して蛍光を発生させるための励起光を発する励起光用光源17と、これらの光源16,17を制御する光源制御回路18とを備えている。
【0035】
前記照明光用光源16は、例えば、図示しないキセノンランプおよびバンドパスフィルタを組み合わせたもので、バンドパスフィルタの50%透過域は、430〜460nmである。すなわち、光源16は、波長帯域430〜460nmの照明光を発生するようになっている。
【0036】
前記励起光用光源17は、例えば、ピーク波長660±5nmの励起光を出射する半導体レーザである。この波長の励起光は、Cy5.5(Amersham社製)やAlexa
fluor700(Molecular Probes社製)等の蛍光薬剤を励起することができる。
前記光源制御回路18は、後述するタイミングチャートに従う所定のタイミングで、照明光用光源16と励起光用光源17とを交互に点灯および消灯させるようになっている。
【0037】
前記撮像ユニット2は、挿入部11の先端部に配置されている。
前記撮像ユニット2は、図1に示されるように、観察対象Aから入射される光を集光するレンズ19a,19bを含む撮像光学系19と、観察対象Aから入射されてくる励起光を遮断する励起光カットフィルタ20と、制御ユニット13の作動により分光特性を変化させられる上記可変分光素子1と、撮像光学系19により集光された光を撮影して電気信号に変換する撮像素子21と、これらを支持する枠部材5とを備えている。
【0038】
可変分光素子1は、さらに具体的には、図7に示されるように、1つの固定透過帯域および1つの可変透過帯域の2つの透過帯域を有する透過率波長特性を有している。固定透過帯域は、可変分光素子1の状態によらず、常に入射光を透過するようになっている。また、可変透過帯域は可変分光素子1の状態に応じて透過率特性が変化するようになっている。
【0039】
また、センサ電極6a,6bには、例えば、図9に示されるような電気回路7が接続されている。電気回路7は、センサ電極6a,6bに交流電流を供給し、光学部材4a,4bの間隔寸法に応じて決定されるセンサ電極6a,6b間の静電容量を電圧信号に変換し、増幅して(電圧Vを)出力するようになっている。図9中、符号8は能動素子であるオペアンプ、符号9は交流電源である。電気回路7は、枠部材5に固定された光学部材4aに固定されている。
【0040】
前記制御ユニット13は、図6に示されるように、撮像素子21を駆動制御する撮像素子駆動回路22と、可変分光素子1を駆動制御する可変分光素子制御回路23と、撮像素子21により取得された画像情報を記憶するフレームメモリ24と、該フレームメモリ24に記憶された画像情報を処理して表示ユニット14に出力する画像処理回路25とを備えている。
撮像素子駆動回路22および可変分光素子制御回路23は、前記光源制御回路18に接続され、光源制御回路18による照明光用光源16および励起光用光源17の切り替えに同期して可変分光素子1および撮像素子21を駆動制御するようになっている。
【0041】
具体的には、図8のタイミングチャートに示されるように、光源制御回路18の作動により、励起光用光源17から励起光が発せられるときには、可変分光素子制御回路23が、可変分光素子1を第1の状態として、撮像素子駆動回路22が撮像素子21から出力される画像情報を第1のフレームメモリ24aに出力させるようになっている。また、照明光用光源16から照明光が発せられるときには、可変分光素子制御回路23が、可変分光素子1を第2の状態として、撮像素子駆動回路22が撮像素子21から出力される画像情報を第2のフレームメモリ24bに出力するようになっている。
【0042】
また、前記画像処理回路25は、例えば、励起光の照射により得られる蛍光画像情報を第1のフレームメモリ24aから受け取って表示ユニット14の第1のチャネルに出力し、照明光の照射により得られる反射光画像情報を第2のフレームメモリ24bから受け取って表示ユニット14の第2のチャネルに出力するようになっている。
【0043】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システム10の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム10を用いて、生体の体腔内の撮影対象Aを撮像するには、蛍光薬剤を体内に注入するとともに、挿入部11を体腔内に挿入し、その先端11aを体腔内の撮影対象Aに対向させる。この状態で、光源ユニット12および制御ユニット13を作動させ、光源制御回路18の作動により、照明光用光源16および励起光用光源17を交互に作動させて照明光および励起光をそれぞれ発生させる。
【0044】
光源ユニット12において発生した励起光および照明光は、それぞれライトガイド15を介して挿入部11の先端11aまで伝播され、挿入部11の先端11aから撮影対象Aに向けて照射される。
励起光が撮影対象Aに照射された場合には、撮影対象Aに浸透している蛍光薬剤が励起されて蛍光が発せられる。撮影対象Aから発せられた蛍光は、撮像ユニット2の撮像光学系19により集光され、励起光カットフィルタ20を透過し、可変分光素子1に入射される。
【0045】
可変分光素子1は、可変分光素子制御回路23の作動により励起光用光源17の作動に同期して第1の状態に切り替えられているので、蛍光に対する透過率が増大させられており、入射された蛍光を透過させることができる。この場合に、撮影対象Aに照射された励起光の一部が、撮影対象Aにおいて反射され、蛍光とともに撮像ユニット2に入射されるが、撮像ユニット2には励起光カットフィルタ20が設けられているので、励起光は遮断され、撮像素子21に入射されることが阻止される。
【0046】
そして、可変分光素子1を透過した蛍光は撮像素子21に入射され、蛍光画像情報が取得される。取得された蛍光画像情報は、第1のフレームメモリ24aに記憶され、画像処理回路25によって、表示ユニット14の第1のチャネルに出力されて表示ユニット14により表示される。
【0047】
一方、照明光が撮影対象Aに照射された場合には、撮影対象Aの表面において照明光が反射され、撮像光学系19により集光されて励起光カットフィルタ20を透過し、可変分光素子1に入射される。照明光の反射光の波長帯域は、可変分光素子1の固定透過帯域に位置しているので、可変分光素子1に入射された反射光は全て可変分光素子1を透過させられる。
【0048】
そして、可変分光素子1を透過した反射光は撮像素子21に入射され、反射光画像情報が取得される。取得された反射光画像情報は、第2のフレームメモリ24bに記憶され、画像処理回路25によって、表示ユニット14の第2のチャネルに出力されて表示ユニット14により表示される。
【0049】
このときに、励起光用光源17がオフにされているので、波長660nmの励起光による蛍光は発生していない。照明光用光源16の波長域は、上記蛍光薬剤に対しては励起効率が極めて低いので、実質的に発生しないと考えてよい。さらに、可変分光素子1は、可変分光素子制御回路23の作動により照明光用光源16の作動に同期して第2の状態に切り替えられているので、蛍光に対する透過率が低下させられており、蛍光が入射されても、これを遮断する。これにより、反射光のみが撮像素子21により撮影される。
このように、本実施形態に係る内視鏡システム10によれば、蛍光画像と反射光画像を使用者に提供することができる。
【0050】
この場合において、本実施形態に係る内視鏡システム10によれば、可変分光素子1にセンサ6が設けられているので、第1の状態および第2の状態に切り替えられた際に、センサ6により2枚の光学基板4a,4bの間隔寸法が検出され、アクチュエータ4cに加える電圧信号がフィードバック制御される。これにより、光学基板4a,4bの間隔寸法を精度よく制御して、高精度に所望の波長帯域の光を分光し、鮮明な蛍光画像および反射光画像を得ることができる。
【0051】
さらに、本実施形態においては、挿入部11の先端11a側に位置する光学基板4bに設けられるセンサ6bの個数が、基端側に位置する光学基板4aに設けられるセンサの個数より少ないので、より空間の少ない先端11a側における配線数を減少させることができる。これにより、挿入部11の先端11aの小径化を図ることができ、また、配線の近接に伴うクロストークノイズの発生を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、センサ電極6a,6bから出力されたセンサ電極6a,6b間の静電容量を示す電気信号が、可変分光素子1の光学基板4aに固定された電気回路7により増幅されるとともに出力インピーダンスが低減された後に、挿入部11内を伝送され、挿入部11の基端側から体外の可変分光素子制御回路23に送られる。したがって、センサ6により検出された電気信号に対するノイズの混入を低減することができ、光学基板4a,4bの間隔を高精度に検出でき、ひいては可変分光素子1の分光特性を高精度に制御することができるという効果がある。
【0053】
また、本実施形態においては、各光学基板4a,4bの対向面に設けられたセンサ電極6a,6bとして異なる外形寸法のものが採用されているので、アクチュエータ4cの駆動に際して、アクチュエータ4cの個体差等により、光学基板4a,4b間に光軸に交差する方向へのずれが発生した場合であっても、対向するセンサ電極6a,6b間に形成される静電容量は変化せず、光学基板4a,4bの間隔寸法を精度よく検出することができる。
【0054】
なお、本実施形態に係る内視鏡システム10においては、可変分光素子1として、図1〜図5のいずれかに示されたものを採用することとしてもよい。
また、電気回路7として静電容量を電圧信号として検出して増幅する回路を用いたが、これに限定されるものではなく、増幅機能を有しないバッファ回路を採用してもよい。バッファ回路としては、例えば、ボルテージフォロワ回路が挙げられる。バッファ回路によってもセンサ出力の出力インピーダンスを低下させることができ、耐ノイズ性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る内視鏡システム10においては、薬剤蛍光画像および反射光画像を取得するシステムについて説明したが、これに代えて、自家蛍光画像と薬剤蛍光画像、自家蛍光画像と反射光画像、反射光画像単独など他の観察手法に用いることもできる。
また、センサ6用の電気回路7として、静電容量値を電圧値に変換する回路を用いたが、電流値に変換する回路を用いてもよい。
【0056】
また、本実施形態においては屈曲部11bを有する内視鏡システム10を例示して説明したが、これに代えて、屈曲部11bを有しない硬性鏡に適用してもよい。また、観察対象Aとしては生体に限らない。配管や機械、構造物などの内部を対象とする工業用内視鏡にも適用できる。
【0057】
また、本実施形態においては、撮像ユニット2に可変分光素子1を備える内視鏡システム10について説明したが、これに代えて、図10および図11に示されるように挿入部11の先端に配置された、光源ユニット34の一部に可変分光素子1を備える内視鏡システム33としてもよい。
光源ユニット34は、図11に示されるように、挿入部11の先端部に配置された先端光源部30と、体外に配置され該先端光源部30を制御する光源制御部35とを備えている。
【0058】
先端光源部30は、図10に示されるように、白色光を発生する白色LED(光電変換素子)31と、2つの光学基板4a,4bおよびアクチュエータ4cからなる可変分光素子1と、白色LED31から発せられた白色光を拡散させるレンズ32と、これらを固定する枠部材5とを備えている。
【0059】
これにより、挿入部11の先端の小径化を図るとともに、配線数を少なくしてノイズの混入を低減することができ、光学基板4a,4bどうしの間隔寸法を正確に検出して、白色光から精度よく分光した波長帯域の照明光を観察対象Aに照射することができる。
【0060】
なお、先端光源部30においては、単一の白色LED31を備える場合の他、照明光量の増加および配光特性の向上を図るために、白色LED31を複数配置することとしてもよい。また、単一の白色LED31と拡散板とを組み合わせて、光源面積を拡大したものや、ランプなどを用いることとしてもよい。
また、多波長励起の半導体レーザやスーパールミネッセントダイオードなどを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る可変分光素子を備える撮像ユニットを示す縦断面図である。
【図2】図1の可変分光素子の光学基板を光軸方向からみた反射膜およびセンサ電極の配置例を示す図である。
【図3】図2の可変分光素子におけるセンサ電極の第1の変形例を示す図である。
【図4】図2の可変分光素子におけるセンサ電極の第2の変形例を示す図である。
【図5】図2の可変分光素子におけるセンサ電極の第3の変形例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る内視鏡システムを示す全体構成図である。
【図7】図6の内視鏡システムに備えられる撮像ユニットを構成する可変分光素子の透過率特性を示す図である。
【図8】図6の内視鏡システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】図6の内視鏡システムに備えられる撮像ユニットを構成する可変分光素子のセンサの信号を増幅する電気回路を示す図である。
【図10】図6の内視鏡システムの変形例を示す全体構成図である。
【図11】図10の内視鏡システムの挿入部の先端に配置される光源ユニットの先端光源部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 可変分光素子
3 反射膜(光学コート層)
4a,4b 光学基板
4c アクチュエータ
6 センサ
6a センサ電極(第1のセンサ部)
6b センサ電極(第2のセンサ部)
10 内視鏡システム(分光装置)
21 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて対向する第1および第2の光学基板の互いに対向する対向面に設けられた光学コート層と、
前記第1および第2の光学基板の間隔を変化させるアクチュエータと、
前記第1および第2の光学基板の間隔を検出するためのものであって、前記第1の光学基板に設けられた第1のセンサと、
前記第1および第2の光学基板の間隔を検出するためのものであって、前記第2の光学基板に、前記第1のセンサ部に対向するように設けられた第2のセンサ部とを有し、
前記第1および第2のセンサ部の個数が異なる可変分光素子。
【請求項2】
前記第1のセンサ部の個数が、前記アクチュエータの自由度と同数以上であり、第2のセンサ部の個数が第1のセンサ部の個数より少ない請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項3】
前記第1のセンサ部の個数が、前記アクチュエータの自由度と同数である請求項2に記載の可変分光素子。
【請求項4】
前記第2のセンサ部が1個である請求項2に記載の可変分光素子。
【請求項5】
前記第1のセンサ部の個数が3個以上である請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項6】
前記第2のセンサ部が1個である請求項5に記載の可変分光素子。
【請求項7】
前記第1の基板が固定され、前記第2の基板が前記アクチュエータにより変位させられる請求項2に記載の可変分光素子。
【請求項8】
前記第2のセンサ部が1個である請求項7に記載の可変分光素子。
【請求項9】
前記第1および第2のセンサ部が、静電容量方式のセンサ部である請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項10】
前記第1および第2のセンサ部が、渦電流方式のセンサ部である請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の可変分光素子と、
該可変分光素子により分光された光を撮影する撮像素子とを備える分光装置。
【請求項12】
請求項11に記載の分光装置を備える内視鏡システム。
【請求項13】
体腔内に挿入される挿入部に、前記可変分光素子が備えられ、前記第2の基板が前記第1の基板よりも前記挿入部の先端側に配置されている請求項12に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−183350(P2008−183350A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21560(P2007−21560)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】