可変同調型アンテナ及び携帯無線機
【課題】広帯域で同調可能な小型の可変同調型アンテナを提供する。
【解決手段】共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、基本共振周波数が所定の周波数よりも高い放射素子1と、放射素子1と直列に接続され、放射素子1のリアクタンス成分を増加させることにより放射素子1の基本共振周波数を所定の周波数よりも低い周波数に変位させる第1誘導性素子11と、第1誘導性素子11と直列に接続され、印加される電圧に応じてキャパシタンスが変化して放射素子1と第1誘導性素子11との合成リアクタンスを低減して、放射素子1の基本共振周波数を所定の周波数を含む範囲で変動させる可変容量性素子14とで可変同調型アンテナを構成する。
【解決手段】共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、基本共振周波数が所定の周波数よりも高い放射素子1と、放射素子1と直列に接続され、放射素子1のリアクタンス成分を増加させることにより放射素子1の基本共振周波数を所定の周波数よりも低い周波数に変位させる第1誘導性素子11と、第1誘導性素子11と直列に接続され、印加される電圧に応じてキャパシタンスが変化して放射素子1と第1誘導性素子11との合成リアクタンスを低減して、放射素子1の基本共振周波数を所定の周波数を含む範囲で変動させる可変容量性素子14とで可変同調型アンテナを構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機などの携帯無線機並びにこのような携帯無線機用のアンテナに関し、特に、FM、VHF、UHF、地上波デジタル放送などの放送帯で使用される小型で広帯域のアンテナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
FM、VHF、UHF帯などの放送帯で使用される小型の携帯無線機用のアンテナには、無線機筐体に内蔵可能なサイズのもの、例えば20[mm]×10[mm]程度のスペースに内蔵できるものが求められている。また、近年放送が開始された地上波デジタル放送(テレビジョン放送)では、動作比帯域が50%(470[MHz]〜770[MHz])にも及び、さらなる広帯域特性が要求されている。このような小型で内蔵型のアンテナは、原理的に狭帯域特性となる傾向がある。そのため、所望の同調周波数をカバーする周波数帯域の全体で良好な特性を実現するためには、放射素子の動作周波数を切り替えたり、同調範囲を広い範囲で可変にする技術の出現が望まれている。
【0003】
同調周波数の波長をλとすると、一般に、線状放射素子の物理サイズがλ/4(=0.25λ)程度であれば、比帯域50%を実現することはさほど困難ではない。しかし、物理サイズが0.1λを下回ると、比帯域の減少が顕著になる。FM、VHF、UHF帯の波長は略0.4〜4[m]の範囲にあるので、内蔵型アンテナの目標サイズである20[mm]は0.05λ〜0.005λとなって、0.1λを大幅に下回る。そのために、放射素子自体の比帯域は5%以下にならざるを得ない。
【0004】
このような放射素子を用いて、例えばUHF帯全体で良好な動作を実現するために、特許文献1、2に開示するような技術がある。これらの先行技術では、可変リアクタンス回路を放射素子に接続して同調をとっている。
【特許文献1】特開2002−232313号公報
【特許文献2】特開平10−209897号公報
【0005】
特許文献1には、モノポール、ヘリカルなどの放射素子の基端部と給電点との間に可変容量性素子を接続したアンテナが開示されている。このアンテナでは、放射素子を予め所望の周波数帯域より低い周波数で共振させ、可変容量性素子の容量性リアクタンスで放射素子の誘導性リアクタンスを打ち消して同調をとるとともに、可変容量性素子のキャパシタンスを変化させることにより、同調周波数を可変にしている。
【0006】
特許文献2には、放射素子の基端部と給電点との間に固定誘導性素子と可変容量性素子とを直列に接続したアンテナが開示されている。このアンテナでは、放射素子を、予め所望の周波数帯域の中心周波数で共振させる。固定誘導性素子と可変容量性素子との直列共振回路は、可変範囲の略中心で、所望の周波数帯域の中心周波数に共振する。直列共振回路は、当該中心周波数より低い周波数では誘導性リアクタンスとして、当該中心周波数より高い周波数では容量性リアクタンスとして動作することで、放射素子のリアクタンスを打ち消して同調をとっている。また、可変容量性素子のキャパシタンスを変化させることにより直列共振回路の共振周波数を変えて、同調周波数を可変にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば線径0.3[mm]、巻き径5[mm]、長さ20[mm]のヘリカルアンテナや、長さ20[mm]、幅5[mm]、厚さ1.5[mm]のセラミックチップアンテナなどの0.05λ以下に小型化した放射素子に、印加電圧が0〜3[V]で容量変化比が「5」程度の可変容量ダイオードを組み合わせて同調しようとすると、例えば地上波デジタル放送(テレビジョン放送)における周波数帯域(620[MHz]±150[MHz])のうち、±50[MHz]程度の同調幅(同調可能な帯域幅)しか確保できない。
【0008】
この場合、可変容量ダイオードの容量変化比をさらに大きくすることが対応策として考えられる。しかし、そのような可変容量ダイオードは、コスト面及び技術面から、実現が困難である。また、放射素子の共振周波数を切り替える切替回路の使用、可変リアクタンス回路のリアクタンス幅を増大するための共振回路の多段化などの他の技術を用いることも考えられるが、回路の複雑化、コストの増加、回路損失の増加が避けられない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、携帯無線機に搭載可能な大きさで、広帯域で同調可能な、小型の可変同調型アンテナを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1構成に係る可変同調型アンテナは、共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、前記放射素子に直列に接続され、前記基本共振周波数を前記同調周波数よりも低い周波数に変位させる誘導性素子と、前記誘導性素子と直列に接続され、前記放射素子と前記誘導性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づける可変容量性素子と、を有する可変同調型アンテナである。
【0011】
誘導性素子は正のリアクタンス成分を、可変容量性素子は負のリアクタンス成分を、それぞれ放射素子のリアクタンスに与える。放射素子と誘導性素子の合成リアクタンスは増加するので基本共振周波数は同調周波数よりも低くなる。他方、放射素子、誘導性素子、及び可変容量性素子の合成リアクタンスは、可変容量性素子の負のリアクタンス成分によって低減する。可変同調型アンテナは、基本周波数が同調周波数と合致すると、同調してその周波数の信号を受信する。
このような構成の可変同調型アンテナは、放射素子が小型で、分布定数伝送線路として振る舞う場合、つまり共振特性が周期関数的に変化する場合であっても、反共振点が同調周波数から離れた位置に出現するために、同調がとりやすくなる。また、反共振点が同調周波数から離れるために、可変容量性素子によって調整可能な同調周波数の幅が広くなり、より広帯域での受信が可能となる。
【0012】
前記放射素子の基本共振周波数は、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数とすることができる。この場合、前記誘導性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域よりも低くするためのリアクタンス値を有し、前記可変容量性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有するものとする。
【0013】
本発明の第2構成に係る可変同調型アンテナは、共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、前記放射素子に直列に接続され、前記基本共振周波数を前記同調周波数よりも低い周波数に変位させる誘導性素子と、前記誘導性素子と直列に接続された並列共振回路とを有し、前記並列共振回路は、少なくともその一方のリアクタンスが可変となる第2の誘導性素子と容量性素子との並列接続回路であり、前記第2誘導性素子と前記容量性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づけることを特徴とする。
このような構成の可変同調型アンテナにおいて、前記放射素子の基本共振周波数を、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数とする場合、前記誘導性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域よりも低くするためのリアクタンス値を有し、前記並列共振回路は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有するものとする。
【0014】
本発明の第3構成に係る可変同調型アンテナは、共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、前記放射素子に直列に接続された並列共振回路とを有し、前記並列共振回路は、少なくともその一方のリアクタンスが可変となる誘導性素子と容量性素子との並列接続回路であり、前記誘導性素子と容量性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づけることを特徴とする。
このような構成の可変同調型アンテナにおいて、前記放射素子の基本共振周波数を、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数とする場合、前記並列共振回路は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有するものとする。
【0015】
上記の各構成に係る可変同調型アンテナにおいて、前記放射素子は、例えば、その物理長が、前記同調周波数の波長(λ)の略0.1以下のものである。このような小型の放射素子であっても、良好に所望の周波数に同調させることができる。
本発明の各可変同調型アンテナは、携帯電話機、携帯端末などの携帯無線機に搭載されて用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放射素子が小型のもので、分布定数伝送線路として振る舞う場合であっても、反共振点が所定の周波数から離れた位置に出現するため、広帯域にわたって同調がとりやすくなるという特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
まず、この実施形態で用いる放射素子について説明する。
本実施形態では、例えば主基板のサイズが略40[mm]×90[mm]の携帯電話などの携帯無線機で、470[MHz]〜770[MHz]の地上波デジタル放送(テレビジョン放送)を受信するためのアンテナを、主基板のグランドと、これに隣接して設けた放射素子とで構成する。
【0018】
放射素子を、その物理長が短縮されず、電気長と等しい「λ/4ホイップアンテナ」などで構成した場合、基本反共振点における波長が、基本共振点における波長の半分に相当する基本共振周波数の略2倍になることは、よく知られている。ここで基本反共振点における波長とは、放射素子のリアクタンスが最大となる一番長い波長であり、基本共振点における波長とは、リアクタンスがゼロとなる最初の波長、すなわち一番長い波長である。
【0019】
「λ/4ホイップアンテナ」を放射素子として用いた場合の共振周波数とリアクタンスの関係は、以下のようになる。
ホイップアンテナは、グランドとの間で先端開放の分布定数伝送線路として振る舞うので、給電点から放射素子側を見たインピーダンスのリアクタンス成分jXが、観測周波数に対して共振点と反共振点が交互に現れる周期関数として振舞う。この状態を、リアクタンス成分にのみ着目して、近似的に式(1)で表すことができる。
〔数1〕
jX=−jZccot(π/2×ω/ω0)
=−jZccot(π/2×f/f0) …(1)
但し、ωは観測角周波数、ω0はアンテナの第1共振角周波数(最初の共振角周波数)、fは観測周波数、f0はアンテナの基本共振周波数、Zcはアンテナ帯域幅を決める放射素子の特性インピーダンスである。
【0020】
基本共振周波数すなわち最初の共振点の周波数を1000[MHz]に設定した場合の放射素子のリアクタンス(Ω)−周波数の特性例を図1に示す。
図1からわかるように、リアクタンスが最大となる反共振点の周波数である反共振周波数は、基本共振周波数の略偶数倍の周波数となり、リアクタンスゼロとなる共振点の周波数である共振周波数は、基本共振周波数の略奇数倍の周波数となる。
【0021】
このように電気長と物理長が略等しい放射素子を用いた場合、基本共振周波数で、リアクタンス勾配が最小で、リアクタンスの変化が共振周波数に対して略対称となる。このような放射素子を用いたアンテナでは、共振周波数を所望の周波数帯域の中心周波数に一致させることにより当該周波数帯域内のリアクタンス変化幅を最小とすることができ、周波数同調を行う際に外部から加えなければならないリアクタンスの変化量を最小にすることができる。
【0022】
しかしながら、内蔵化等のために放射素子をより小型化し、その物理長を短くするに従って、反共振周波数や高次共振点周波数(基本共振周波数の奇数倍の周波数)が、線輪間結合による自己共振効果によって徐々に基本共振周波数に接近する。この様子を図2に示す。図2の例では、線径0.3[mm]、巻き径5[mm]、巻き数15ターン、基本共振周波数620[MHz]のヘリカルアンテナを用いた放射素子について、物理長(0.25λ〜0.05λ)に対する高次共振周波数の関係を、基本共振周波数で規格化して表している。図2の例では、放射素子の物理長の短縮に伴い、例えばN=2の反共振点が、周波数比「2」から周波数比「1」に向かって低下している。
なお、放射素子の基本共振周波数は、地上波デジタル放送(テレビジョン放送)の中心周波数に選んであり、参考として、地上波デジタル放送の周波数帯域の上限(770[MHz])及び下限(470[MHz])が規格化して図示されている。
【0023】
これらの高次共振周波数の低下率は、放射素子の物理的な短縮率だけで単純に決定されるものではなく、放射素子を構成するアンテナ線状の線間結合の状態に依存して複雑に変化する。例えば、誘電体を基体として内部に電極を形成することにより構成した放射素子では、空芯のヘリカルアンテナに比べて自己共振周波数(N=2の反共振点)の周波数比がずっと小さく、「1.2」程度まで低下することも珍しくない。
【0024】
図3は、放射素子のリアクタンス−周波数特性を例示した図である。ここでは、図2と同じ基本共振周波数が620[MHz]の放射素子の例が示されている。この放射素子は、物理長が0.05λであり、基本共振周波数の1.3倍にあたる806[MHz]が反共振周波数になる。このために、所望の周波数帯域内の中心周波数よりも高域側で誘導性リアクタンスが増大し、可変容量性素子で実現可能なリアクタンス変化幅で同調可能な周波数幅(同調幅)が減少する。
以上のことを考慮した本発明の可変同調型アンテナの具体的な実施の形態例を、以下に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図4は、第1実施形態における可変同調型アンテナの構成例を示した図である。この可変同調型アンテナ1は、主基板サイズが略40[mm]×90[mm]の携帯電話機に搭載可能なもので、周波数帯域は、470〜770[MHz]の地上波デジタル放送(テレビジョン放送)を受信することが可能なものである。
【0026】
図4を参照すると、第1実施形態の可変同調型アンテナは、放射素子1と同調回路10とを備えている。同調回路10は、放射素子1と給電点2との間に設けられており、第1誘導性素子11と可変リアクタンス回路12とが直列接続された構成である。可変リアクタンス回路12は、第2誘導性素子13と可変容量性素子14との並列回路である。放射素子1と同調回路10とは、一体に構成されてもよく、主基板上の伝送線路で接続するように、別体として構成されてもよい。
【0027】
放射素子1は、この実施形態では、線径0.3[mm]、巻き径5[mm]、巻き数10ターンで物理長が0.05λのヘリカル放射素子である。このような放射素子1は、図3で説明したヘリカル放射素子よりも巻き数が減少しており、これにより基本共振周波数が所望の周波数帯域の上限よりも高い周波数になるようになっている。
【0028】
なお、放射素子1の物理長は、略0.1λ以下の大きさであればよい。放射素子1は、ヘリカルの他にミアンダなどの電気長を保ちながら物理長を短縮した構成の先端開放型のモノポール素子、あるいはセラミックを基体としてその表面及び/又は内部に放射電極が形成されたものとすることができる。また、ループアンテナのような先端短絡型構造、逆F型構造の放射素子を用いてもよい。いずれにしても、放射素子1の基本共振周波数が、所望の周波数帯域の上限よりも高い周波数になるようにする。
【0029】
第1誘導性素子11及び第2誘導性素子13は、通常のコイルで構成されている。可変容量性素子14は、キャパシタンスを可変にするものであれば、どのような素子単体又は回路を用いて構成してもよいが、小型で、容易に同調周波数を変えることができるようにする観点からは、両端に印加される電圧に応じてそのキャパシタンスが変化する電子可変容量性素子を用いることが好ましい。例えば可変容量ダイオードや可変コンデンサなどを可変容量性素子とすることができる。
なお、第1実施形態では、可変リアクタンス回路12を、第2誘導性素子13及び可変容量性素子14の並列接続回路で構成しているが、これに限らず、可変容量性素子14のみの構成であってもよい。
いずれにしても、可変リアクタンス回路12は、リアクタンスを変化させることができれば、どのような構成であってもよい。
【0030】
第1誘導性素子11は、放射素子1との合成リアクタンスが、所望の周波数帯域の下限よりも低い周波数で共振するように設定される。また、可変リアクタンス回路12の合成リアクタンスは、放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスを打ち消すように設定される。可変リアクタンス回路12の合成リアクタンスは、可変容量性素子14のキャパシタンスの変化に応じて変化する。可変同調型アンテナ全体の合成リアクタンス、つまり放射素子1、第1誘導性素子11及び可変リア記タンス回路12の合成リアクタンスがゼロになる周波数が、同調周波数になる。
【0031】
なお、可変リアクタンス回路12と給電点2との間と直列に、低雑音増幅器を接続してもよい。低雑音増幅器としては、例えば三端子半導体素子の入力端子(バイポーラトランジスタのベースもしくはFETのゲート)を用いることができる。該低雑音増幅器の入力インピーダンスは、実部(抵抗成分)が可変同調型アンテナ1のインピーダンスの実部と直接一致するように構成され、かつ虚部絶対値は実部より充分小さくなるように構成されることが望ましい。これにより、受信した同調周波数の信号を、良好な状態で携帯無線機の主基板に提供することができる。
【0032】
このような可変同調型アンテナ1では、放射素子1及び第1誘導性素子11による合成リアクタンスと可変リアクタンス回路12のリアクタンスとが打ち消し合い、さらに可変リアクタンス回路12が所定の周波数帯域内で共振しないように、放射素子1のインダクタンスLa、第1誘導性素子11のインダクタンスL1、第2誘導性素子13のインダクタンスL2、及び可変容量性素子14のキャパシタンスCが決められている。
この関係は、以下の式(2)で表すことができる。これは、例えば特開2004−320611に開示される。
〔数2〕
{(La+L1+L2)/L2(La+L1)}1/2/(1/La)1/2>1 …(2)
【0033】
図5は、第1実施形態における放射素子1のリアクタンス−周波数特性を例示した図である。破線が図3に示した従来の特性曲線であり、実線が本実施形態による特性曲線である。図5に示されるように、基本共振周波数及び基本反共振周波数が従来よりも高い周波数に移動するため、所望の周波数帯域内におけるリアクタンス変化幅が減少して、リアクタンス勾配の最小の点(図中の「○」)が、所望の帯域内の略中央に変位する。
この場合の基本共振周波数は約800[MHz]であり、地上波デジタル放送(テレビジョン放送)の周波数帯域よりも高い。図3と図5とを比較すると、周波数帯域(fL〜fH)内におけるリアクタンスの変化幅が、従来は約600Ωであるの対し、本実施形態の放射素子1では約200Ωと、大幅に小さくなることがわかる。
【0034】
所望の周波数帯域内で同調させる場合は、まず、正のリアクタンスを持つ要素を放射素子1に接続することにより、可変同調型アンテナ全体の合成インピーダンスを増加させる。図4の例では、第1誘導性素子11が正のリアクタンスを持つ要素に相当する。この第1誘導性素子11により、放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスがゼロとなる周波数を、所望の周波数帯域の下限(fL)よりも低い周波数になるようにする。
このときの放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスの周波数特性を図6に示す。図6を参照すると、破線で表される放射素子1の特性曲線が、第1誘導性素子11によりリアクタンスが正の方向へ変位し、実線で表される放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスの特性曲線に変わる。これにより共振周波数が約800[MHz]から約400[MHz]に変位する。第1誘導性素子11は、波長に対して十分小型(0.005λ以下)である限り純リアクタンスとして作用し、リアクタンス方向に変化を与えるだけで、共振周期には影響を与えない。
【0035】
さらに、負のリアクタンスを持つ要素を放射素子1に接続することで、可変同調型アンテナ全体の合成インピーダンスを減少させる。図4では、可変リアクタンス回路12が負のリアクタンスを持つ要素に相当する。この可変リアクタンス回路12は、可変容量性素子14のキャパシタンスが変化することでリアクタンスが変化する。そのためにリアクタンスゼロとなる周波数、すなわち可変同調型アンテナ全体の共振周波数を可変リアクタンス回路12のリアクタンス変化により変動させて、所望の動作帯域全体にわたって良好な同調特性を実現することが可能となる。
【0036】
図7は、放射素子1、第1誘導性素子11、及び可変リアクタンス回路12内の可変容量性素子14の合成リアクタンス−周波数特性図である。
実線が可変容量性素子14に逆バイアス0Vが印加されたときの周波数特性、太い破線が可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの周波数特性である。細い破線は、図6に示す放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスの特性曲線である。可変容量性素子14に印可される電圧の変化に従って、合成リアクタンスが変化して同調周波数が所望の周波数帯域内で変化する。
図7は、可変容量性素子14として一般に入手可能な0〜3[V]における容量変化比が略5:1の可変容量ダイオードを用いた場合の例を示した図である。なお、ここでは第2誘導性素子13を考慮していない。
【0037】
可変リアクタンス回路12が図4に示すように第2誘導性素子13と可変容量性素子14との並列回路になると、この可変リアクタンス回路12の合成リアクタンスの周波数特性が図8に示すようになる。
可変容量性素子14のキャパシタンスの変化に応じて可変リアクタンス回路12の共振周波数が移動し、共振周波数よりも高い周波数では共振周波数に近づくほど大きな容量性を示す。図8中、実線は可変容量性素子14に逆バイアス0[V]が印加されたときの周波数特性、破線は可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの周波数特性である。
【0038】
図9は、可変リアクタンス回路12と第1誘導性素子11との合成リアクタンス−周波数特性を表す図である。可変リアクタンス回路12の共振周波数を所望の同調周波数よりも低域側に設定することで、直列に第1誘導性素子11が接続された放射素子1の誘導性リアクタンス変化に対して可変リアクタンス回路12のリアクタンス極性を容量性に作用させることが可能になり、所望の周波数帯域全体で同調を可能にする。
図9中、太い実線が可変リアクタンス回路12と第1誘導性素子11との合成リアクタンスの周波数特性を表す。細い実線及び破線は、可変リアクタンス回路12のみの特性曲線である。
【0039】
図10は、第1誘導性素子11及び放射素子1の合成リアクタンスと、可変リアクタンス回路12のリアクタンスとの、合成リアクタンスの同調範囲を表す図である。
図10中、太い実線は可変容量性素子14に逆バイアス0Vが印加されたときの周波数特性、破線は可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの周波数特性を表す。太い実線のリアクタンスゼロになる点から、破線のリアクタンスゼロになる間を、この合成リアクタンスの周波数特性は変位する。そのために、この間が同調可能範囲になる。
【0040】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態による可変同調型アンテナの構成例を示す図である。この可変同調型アンテナは、図4の可変同調型アンテナから第1誘導性素子11を除いた構成になっている。放射素子1は、所望の周波数帯域よりも共振周波数が高いために、当該周波数帯域内で容量性を示す。
【0041】
可変リアクタンス回路12は、共振周波数が所望の同調周波数よりも高域側に設定されている。図12は、このような可変リアクタンス回路12のリアクタンス−周波数特性図である。可変リアクタンス回路12は、放射素子1の容量性リアクタンスの変化に対してリアクタンス極性を誘導性に作用させることが可能である。そのために、所望の周波数帯域全体での同調を実現できる。
図12中、太い実線は可変容量性素子14に逆バイアス0Vが印加されたときの周波数特性、破線は可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの可変リアクタンス回路12の周波数特性を表す。細い実線は、放射素子1の周波数特性を表す。
【0042】
図13は、このような可変同調型アンテナの合成リアクタンスの周波数特性を表す図である。図13中、実線は可変容量性素子14に逆バイアス0Vが印加されたときの、破線は可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの、合成リアクタンスの周波数特性を表す。可変容量性素子14に印加される電圧により合成リアクタンスが変化して、基本共振周波数が所望の周波数帯域内で変動する。
【0043】
図14(a)、(b)は、それぞれ、第1実施形態又は第2実施形態による可変同調型アンテナ1を携帯電話機に搭載する場合の実装レイアウトの例示図である。主基板上に、放射素子1、同調回路10、及びグランド6が設けられている。主基板は、汎用の電子部品が実装可能な実装基板であり、携帯電話機に内蔵される。
【0044】
放射素子1は先端開放型のモノポールアンテナであり、セラミックなどの誘電体基板上に設けられる。放射素子1は、主基板の縁部に搭載される。放射素子1は、図14(a)では、主基板の長手方向に対して放射素子1の長手方向が直角になるように配置される。他方、図14(b)では、主基板の長手方向に対して放射素子1の長手方向が平行になるように配置される。なお、ここでは、放射素子1に先端開放型の素子を用いるために、放射素子1とグランド6とは接続されない。しかし、放射素子1に逆F型などのグランド6と接続する必要がある素子を用いる場合には、当然に放射素子1をグランドに接続する。
【0045】
同調回路10は、放射素子1と同様にセラミックなどからなる誘電体基板上に設けられる。同調回路10は、放射素子1に隣接して主基板上に配置される。同調回路10は、例えば50[Ω]線路4により受信器3に接続される。なお、同調回路10に低雑音増幅器を設けて、同調回路10を低雑音増幅器を介して受信器3に直接接続してもよい。低雑音増幅器を用いると、放射素子1と50[Ω]線路4間、低雑音増幅器と50[Ω]線路4間の、二重の整合と50[Ω]線路4が不要になる。そのために接続に伴う損失を最小化できる。また、整合のためのリアクタンス回路も不要になり、周波数特性の向上につながる。
【0046】
受信器3は、FM、VHF、UHF、地上波デジタル放送などの放送帯を少なくとも一つ受信するための汎用の受信器である。受信器3により、放射素子1及び同調回路10により受信された同調周波数の信号が電気信号に変換されて、内部の他の装置に送られる。
【0047】
以上のような実装形態では、放射素子1が主基板の一方の縁部に搭載されるために、グランド6を長くとることができる。放射素子1がホイップアンテナの場合は、放射素子1が主基板から突出して搭載されることが許容されるために、主基板のグランド6のすべてをアンテナのためのグランドとして使用できる。放射素子1が内蔵アンテナの場合は、主基板の放射素子1の搭載スペースの長手方向の分だけ、実質的なグランド長が減少する。放射素子1の最初の共振点は、所望の同調周波数よりも高いので、従来よりも放射素子1を小型に構成することができる。これにより、主基板上の放射素子1の搭載部分を除いたグランド6を従来よりも長くとることができ、アンテナの性能を向上させることができる。なお、図14(a)と図14(b)との比較では、図14(a)の方がグランド6を長くとることができる。そのために図14(a)の構成のアンテナの周波数特性が、図14(b)の構成のアンテナの周波数特性よりも優れている。
【0048】
さらに、上記の実装形態では、携帯電話用のアンテナを、主基板の放射素子1が設けられている縁部とは異なる他方の縁部に搭載することができる。このように搭載すると、携帯電話用のアンテナと放射素子1とを主基板上で最も隔離することができ、これらの間の相互干渉を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】基本共振周波数を1000[MHz]に設定した場合の放射素子のリアクタンス−周波数特性の例示図である。
【図2】高次共振周波数が基本共振周波数に接近する様子を示す図である。
【図3】基本共振周波数が620[MHz]の放射素子のリアクタンス−周波数特性図である。
【図4】第1実施形態による可変同調型アンテナの構成例を示す図である。
【図5】図4の放射素子のリアクタンス−周波数特性図である。
【図6】図4の放射素子及び第1誘導性素子の合成リアクタンス−周波数特性図である。
【図7】図4の放射素子、第1誘導性素子及び可変リアクタンス回路内の可変容量性素子の合成リアクタンス−周波数特性を表す図である。
【図8】図4の可変リアクタンス回路の合成リアクタンス−周波数特性を表す図である。
【図9】図4の可変リアクタンス回路と第1誘導性素子との合成リアクタンス−周波数特性を表す図である。
【図10】図4の第1誘導性素子及び放射素子の合成リアクタンスと可変リアクタンス回路のリアクタンスとの合成リアクタンスの同調範囲を表す図である。
【図11】第2実施形態による可変同調型アンテナの構成例を示す図である。
【図12】図11の可変リアクタンス回路のリアクタンス−周波数特性図である。
【図13】図11の可変同調型アンテナの合成リアクタンス−周波数特性図である。
【図14】図14(a)、(b)は、それぞれ可変同調型アンテナを携帯電話機に搭載する場合のレイアウトの例示図である。
【符号の説明】
【0050】
1 放射素子
2 給電点
10 同調回路
11 第1誘導性素子
12 可変リアクタンス回路
13 第2誘導性素子
14 可変容量性素子
3 受信器
4 50[Ω]線路
6 グランド
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機などの携帯無線機並びにこのような携帯無線機用のアンテナに関し、特に、FM、VHF、UHF、地上波デジタル放送などの放送帯で使用される小型で広帯域のアンテナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
FM、VHF、UHF帯などの放送帯で使用される小型の携帯無線機用のアンテナには、無線機筐体に内蔵可能なサイズのもの、例えば20[mm]×10[mm]程度のスペースに内蔵できるものが求められている。また、近年放送が開始された地上波デジタル放送(テレビジョン放送)では、動作比帯域が50%(470[MHz]〜770[MHz])にも及び、さらなる広帯域特性が要求されている。このような小型で内蔵型のアンテナは、原理的に狭帯域特性となる傾向がある。そのため、所望の同調周波数をカバーする周波数帯域の全体で良好な特性を実現するためには、放射素子の動作周波数を切り替えたり、同調範囲を広い範囲で可変にする技術の出現が望まれている。
【0003】
同調周波数の波長をλとすると、一般に、線状放射素子の物理サイズがλ/4(=0.25λ)程度であれば、比帯域50%を実現することはさほど困難ではない。しかし、物理サイズが0.1λを下回ると、比帯域の減少が顕著になる。FM、VHF、UHF帯の波長は略0.4〜4[m]の範囲にあるので、内蔵型アンテナの目標サイズである20[mm]は0.05λ〜0.005λとなって、0.1λを大幅に下回る。そのために、放射素子自体の比帯域は5%以下にならざるを得ない。
【0004】
このような放射素子を用いて、例えばUHF帯全体で良好な動作を実現するために、特許文献1、2に開示するような技術がある。これらの先行技術では、可変リアクタンス回路を放射素子に接続して同調をとっている。
【特許文献1】特開2002−232313号公報
【特許文献2】特開平10−209897号公報
【0005】
特許文献1には、モノポール、ヘリカルなどの放射素子の基端部と給電点との間に可変容量性素子を接続したアンテナが開示されている。このアンテナでは、放射素子を予め所望の周波数帯域より低い周波数で共振させ、可変容量性素子の容量性リアクタンスで放射素子の誘導性リアクタンスを打ち消して同調をとるとともに、可変容量性素子のキャパシタンスを変化させることにより、同調周波数を可変にしている。
【0006】
特許文献2には、放射素子の基端部と給電点との間に固定誘導性素子と可変容量性素子とを直列に接続したアンテナが開示されている。このアンテナでは、放射素子を、予め所望の周波数帯域の中心周波数で共振させる。固定誘導性素子と可変容量性素子との直列共振回路は、可変範囲の略中心で、所望の周波数帯域の中心周波数に共振する。直列共振回路は、当該中心周波数より低い周波数では誘導性リアクタンスとして、当該中心周波数より高い周波数では容量性リアクタンスとして動作することで、放射素子のリアクタンスを打ち消して同調をとっている。また、可変容量性素子のキャパシタンスを変化させることにより直列共振回路の共振周波数を変えて、同調周波数を可変にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば線径0.3[mm]、巻き径5[mm]、長さ20[mm]のヘリカルアンテナや、長さ20[mm]、幅5[mm]、厚さ1.5[mm]のセラミックチップアンテナなどの0.05λ以下に小型化した放射素子に、印加電圧が0〜3[V]で容量変化比が「5」程度の可変容量ダイオードを組み合わせて同調しようとすると、例えば地上波デジタル放送(テレビジョン放送)における周波数帯域(620[MHz]±150[MHz])のうち、±50[MHz]程度の同調幅(同調可能な帯域幅)しか確保できない。
【0008】
この場合、可変容量ダイオードの容量変化比をさらに大きくすることが対応策として考えられる。しかし、そのような可変容量ダイオードは、コスト面及び技術面から、実現が困難である。また、放射素子の共振周波数を切り替える切替回路の使用、可変リアクタンス回路のリアクタンス幅を増大するための共振回路の多段化などの他の技術を用いることも考えられるが、回路の複雑化、コストの増加、回路損失の増加が避けられない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、携帯無線機に搭載可能な大きさで、広帯域で同調可能な、小型の可変同調型アンテナを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1構成に係る可変同調型アンテナは、共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、前記放射素子に直列に接続され、前記基本共振周波数を前記同調周波数よりも低い周波数に変位させる誘導性素子と、前記誘導性素子と直列に接続され、前記放射素子と前記誘導性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づける可変容量性素子と、を有する可変同調型アンテナである。
【0011】
誘導性素子は正のリアクタンス成分を、可変容量性素子は負のリアクタンス成分を、それぞれ放射素子のリアクタンスに与える。放射素子と誘導性素子の合成リアクタンスは増加するので基本共振周波数は同調周波数よりも低くなる。他方、放射素子、誘導性素子、及び可変容量性素子の合成リアクタンスは、可変容量性素子の負のリアクタンス成分によって低減する。可変同調型アンテナは、基本周波数が同調周波数と合致すると、同調してその周波数の信号を受信する。
このような構成の可変同調型アンテナは、放射素子が小型で、分布定数伝送線路として振る舞う場合、つまり共振特性が周期関数的に変化する場合であっても、反共振点が同調周波数から離れた位置に出現するために、同調がとりやすくなる。また、反共振点が同調周波数から離れるために、可変容量性素子によって調整可能な同調周波数の幅が広くなり、より広帯域での受信が可能となる。
【0012】
前記放射素子の基本共振周波数は、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数とすることができる。この場合、前記誘導性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域よりも低くするためのリアクタンス値を有し、前記可変容量性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有するものとする。
【0013】
本発明の第2構成に係る可変同調型アンテナは、共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、前記放射素子に直列に接続され、前記基本共振周波数を前記同調周波数よりも低い周波数に変位させる誘導性素子と、前記誘導性素子と直列に接続された並列共振回路とを有し、前記並列共振回路は、少なくともその一方のリアクタンスが可変となる第2の誘導性素子と容量性素子との並列接続回路であり、前記第2誘導性素子と前記容量性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づけることを特徴とする。
このような構成の可変同調型アンテナにおいて、前記放射素子の基本共振周波数を、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数とする場合、前記誘導性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域よりも低くするためのリアクタンス値を有し、前記並列共振回路は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有するものとする。
【0014】
本発明の第3構成に係る可変同調型アンテナは、共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、前記放射素子に直列に接続された並列共振回路とを有し、前記並列共振回路は、少なくともその一方のリアクタンスが可変となる誘導性素子と容量性素子との並列接続回路であり、前記誘導性素子と容量性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づけることを特徴とする。
このような構成の可変同調型アンテナにおいて、前記放射素子の基本共振周波数を、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数とする場合、前記並列共振回路は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有するものとする。
【0015】
上記の各構成に係る可変同調型アンテナにおいて、前記放射素子は、例えば、その物理長が、前記同調周波数の波長(λ)の略0.1以下のものである。このような小型の放射素子であっても、良好に所望の周波数に同調させることができる。
本発明の各可変同調型アンテナは、携帯電話機、携帯端末などの携帯無線機に搭載されて用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放射素子が小型のもので、分布定数伝送線路として振る舞う場合であっても、反共振点が所定の周波数から離れた位置に出現するため、広帯域にわたって同調がとりやすくなるという特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
まず、この実施形態で用いる放射素子について説明する。
本実施形態では、例えば主基板のサイズが略40[mm]×90[mm]の携帯電話などの携帯無線機で、470[MHz]〜770[MHz]の地上波デジタル放送(テレビジョン放送)を受信するためのアンテナを、主基板のグランドと、これに隣接して設けた放射素子とで構成する。
【0018】
放射素子を、その物理長が短縮されず、電気長と等しい「λ/4ホイップアンテナ」などで構成した場合、基本反共振点における波長が、基本共振点における波長の半分に相当する基本共振周波数の略2倍になることは、よく知られている。ここで基本反共振点における波長とは、放射素子のリアクタンスが最大となる一番長い波長であり、基本共振点における波長とは、リアクタンスがゼロとなる最初の波長、すなわち一番長い波長である。
【0019】
「λ/4ホイップアンテナ」を放射素子として用いた場合の共振周波数とリアクタンスの関係は、以下のようになる。
ホイップアンテナは、グランドとの間で先端開放の分布定数伝送線路として振る舞うので、給電点から放射素子側を見たインピーダンスのリアクタンス成分jXが、観測周波数に対して共振点と反共振点が交互に現れる周期関数として振舞う。この状態を、リアクタンス成分にのみ着目して、近似的に式(1)で表すことができる。
〔数1〕
jX=−jZccot(π/2×ω/ω0)
=−jZccot(π/2×f/f0) …(1)
但し、ωは観測角周波数、ω0はアンテナの第1共振角周波数(最初の共振角周波数)、fは観測周波数、f0はアンテナの基本共振周波数、Zcはアンテナ帯域幅を決める放射素子の特性インピーダンスである。
【0020】
基本共振周波数すなわち最初の共振点の周波数を1000[MHz]に設定した場合の放射素子のリアクタンス(Ω)−周波数の特性例を図1に示す。
図1からわかるように、リアクタンスが最大となる反共振点の周波数である反共振周波数は、基本共振周波数の略偶数倍の周波数となり、リアクタンスゼロとなる共振点の周波数である共振周波数は、基本共振周波数の略奇数倍の周波数となる。
【0021】
このように電気長と物理長が略等しい放射素子を用いた場合、基本共振周波数で、リアクタンス勾配が最小で、リアクタンスの変化が共振周波数に対して略対称となる。このような放射素子を用いたアンテナでは、共振周波数を所望の周波数帯域の中心周波数に一致させることにより当該周波数帯域内のリアクタンス変化幅を最小とすることができ、周波数同調を行う際に外部から加えなければならないリアクタンスの変化量を最小にすることができる。
【0022】
しかしながら、内蔵化等のために放射素子をより小型化し、その物理長を短くするに従って、反共振周波数や高次共振点周波数(基本共振周波数の奇数倍の周波数)が、線輪間結合による自己共振効果によって徐々に基本共振周波数に接近する。この様子を図2に示す。図2の例では、線径0.3[mm]、巻き径5[mm]、巻き数15ターン、基本共振周波数620[MHz]のヘリカルアンテナを用いた放射素子について、物理長(0.25λ〜0.05λ)に対する高次共振周波数の関係を、基本共振周波数で規格化して表している。図2の例では、放射素子の物理長の短縮に伴い、例えばN=2の反共振点が、周波数比「2」から周波数比「1」に向かって低下している。
なお、放射素子の基本共振周波数は、地上波デジタル放送(テレビジョン放送)の中心周波数に選んであり、参考として、地上波デジタル放送の周波数帯域の上限(770[MHz])及び下限(470[MHz])が規格化して図示されている。
【0023】
これらの高次共振周波数の低下率は、放射素子の物理的な短縮率だけで単純に決定されるものではなく、放射素子を構成するアンテナ線状の線間結合の状態に依存して複雑に変化する。例えば、誘電体を基体として内部に電極を形成することにより構成した放射素子では、空芯のヘリカルアンテナに比べて自己共振周波数(N=2の反共振点)の周波数比がずっと小さく、「1.2」程度まで低下することも珍しくない。
【0024】
図3は、放射素子のリアクタンス−周波数特性を例示した図である。ここでは、図2と同じ基本共振周波数が620[MHz]の放射素子の例が示されている。この放射素子は、物理長が0.05λであり、基本共振周波数の1.3倍にあたる806[MHz]が反共振周波数になる。このために、所望の周波数帯域内の中心周波数よりも高域側で誘導性リアクタンスが増大し、可変容量性素子で実現可能なリアクタンス変化幅で同調可能な周波数幅(同調幅)が減少する。
以上のことを考慮した本発明の可変同調型アンテナの具体的な実施の形態例を、以下に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図4は、第1実施形態における可変同調型アンテナの構成例を示した図である。この可変同調型アンテナ1は、主基板サイズが略40[mm]×90[mm]の携帯電話機に搭載可能なもので、周波数帯域は、470〜770[MHz]の地上波デジタル放送(テレビジョン放送)を受信することが可能なものである。
【0026】
図4を参照すると、第1実施形態の可変同調型アンテナは、放射素子1と同調回路10とを備えている。同調回路10は、放射素子1と給電点2との間に設けられており、第1誘導性素子11と可変リアクタンス回路12とが直列接続された構成である。可変リアクタンス回路12は、第2誘導性素子13と可変容量性素子14との並列回路である。放射素子1と同調回路10とは、一体に構成されてもよく、主基板上の伝送線路で接続するように、別体として構成されてもよい。
【0027】
放射素子1は、この実施形態では、線径0.3[mm]、巻き径5[mm]、巻き数10ターンで物理長が0.05λのヘリカル放射素子である。このような放射素子1は、図3で説明したヘリカル放射素子よりも巻き数が減少しており、これにより基本共振周波数が所望の周波数帯域の上限よりも高い周波数になるようになっている。
【0028】
なお、放射素子1の物理長は、略0.1λ以下の大きさであればよい。放射素子1は、ヘリカルの他にミアンダなどの電気長を保ちながら物理長を短縮した構成の先端開放型のモノポール素子、あるいはセラミックを基体としてその表面及び/又は内部に放射電極が形成されたものとすることができる。また、ループアンテナのような先端短絡型構造、逆F型構造の放射素子を用いてもよい。いずれにしても、放射素子1の基本共振周波数が、所望の周波数帯域の上限よりも高い周波数になるようにする。
【0029】
第1誘導性素子11及び第2誘導性素子13は、通常のコイルで構成されている。可変容量性素子14は、キャパシタンスを可変にするものであれば、どのような素子単体又は回路を用いて構成してもよいが、小型で、容易に同調周波数を変えることができるようにする観点からは、両端に印加される電圧に応じてそのキャパシタンスが変化する電子可変容量性素子を用いることが好ましい。例えば可変容量ダイオードや可変コンデンサなどを可変容量性素子とすることができる。
なお、第1実施形態では、可変リアクタンス回路12を、第2誘導性素子13及び可変容量性素子14の並列接続回路で構成しているが、これに限らず、可変容量性素子14のみの構成であってもよい。
いずれにしても、可変リアクタンス回路12は、リアクタンスを変化させることができれば、どのような構成であってもよい。
【0030】
第1誘導性素子11は、放射素子1との合成リアクタンスが、所望の周波数帯域の下限よりも低い周波数で共振するように設定される。また、可変リアクタンス回路12の合成リアクタンスは、放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスを打ち消すように設定される。可変リアクタンス回路12の合成リアクタンスは、可変容量性素子14のキャパシタンスの変化に応じて変化する。可変同調型アンテナ全体の合成リアクタンス、つまり放射素子1、第1誘導性素子11及び可変リア記タンス回路12の合成リアクタンスがゼロになる周波数が、同調周波数になる。
【0031】
なお、可変リアクタンス回路12と給電点2との間と直列に、低雑音増幅器を接続してもよい。低雑音増幅器としては、例えば三端子半導体素子の入力端子(バイポーラトランジスタのベースもしくはFETのゲート)を用いることができる。該低雑音増幅器の入力インピーダンスは、実部(抵抗成分)が可変同調型アンテナ1のインピーダンスの実部と直接一致するように構成され、かつ虚部絶対値は実部より充分小さくなるように構成されることが望ましい。これにより、受信した同調周波数の信号を、良好な状態で携帯無線機の主基板に提供することができる。
【0032】
このような可変同調型アンテナ1では、放射素子1及び第1誘導性素子11による合成リアクタンスと可変リアクタンス回路12のリアクタンスとが打ち消し合い、さらに可変リアクタンス回路12が所定の周波数帯域内で共振しないように、放射素子1のインダクタンスLa、第1誘導性素子11のインダクタンスL1、第2誘導性素子13のインダクタンスL2、及び可変容量性素子14のキャパシタンスCが決められている。
この関係は、以下の式(2)で表すことができる。これは、例えば特開2004−320611に開示される。
〔数2〕
{(La+L1+L2)/L2(La+L1)}1/2/(1/La)1/2>1 …(2)
【0033】
図5は、第1実施形態における放射素子1のリアクタンス−周波数特性を例示した図である。破線が図3に示した従来の特性曲線であり、実線が本実施形態による特性曲線である。図5に示されるように、基本共振周波数及び基本反共振周波数が従来よりも高い周波数に移動するため、所望の周波数帯域内におけるリアクタンス変化幅が減少して、リアクタンス勾配の最小の点(図中の「○」)が、所望の帯域内の略中央に変位する。
この場合の基本共振周波数は約800[MHz]であり、地上波デジタル放送(テレビジョン放送)の周波数帯域よりも高い。図3と図5とを比較すると、周波数帯域(fL〜fH)内におけるリアクタンスの変化幅が、従来は約600Ωであるの対し、本実施形態の放射素子1では約200Ωと、大幅に小さくなることがわかる。
【0034】
所望の周波数帯域内で同調させる場合は、まず、正のリアクタンスを持つ要素を放射素子1に接続することにより、可変同調型アンテナ全体の合成インピーダンスを増加させる。図4の例では、第1誘導性素子11が正のリアクタンスを持つ要素に相当する。この第1誘導性素子11により、放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスがゼロとなる周波数を、所望の周波数帯域の下限(fL)よりも低い周波数になるようにする。
このときの放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスの周波数特性を図6に示す。図6を参照すると、破線で表される放射素子1の特性曲線が、第1誘導性素子11によりリアクタンスが正の方向へ変位し、実線で表される放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスの特性曲線に変わる。これにより共振周波数が約800[MHz]から約400[MHz]に変位する。第1誘導性素子11は、波長に対して十分小型(0.005λ以下)である限り純リアクタンスとして作用し、リアクタンス方向に変化を与えるだけで、共振周期には影響を与えない。
【0035】
さらに、負のリアクタンスを持つ要素を放射素子1に接続することで、可変同調型アンテナ全体の合成インピーダンスを減少させる。図4では、可変リアクタンス回路12が負のリアクタンスを持つ要素に相当する。この可変リアクタンス回路12は、可変容量性素子14のキャパシタンスが変化することでリアクタンスが変化する。そのためにリアクタンスゼロとなる周波数、すなわち可変同調型アンテナ全体の共振周波数を可変リアクタンス回路12のリアクタンス変化により変動させて、所望の動作帯域全体にわたって良好な同調特性を実現することが可能となる。
【0036】
図7は、放射素子1、第1誘導性素子11、及び可変リアクタンス回路12内の可変容量性素子14の合成リアクタンス−周波数特性図である。
実線が可変容量性素子14に逆バイアス0Vが印加されたときの周波数特性、太い破線が可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの周波数特性である。細い破線は、図6に示す放射素子1及び第1誘導性素子11の合成リアクタンスの特性曲線である。可変容量性素子14に印可される電圧の変化に従って、合成リアクタンスが変化して同調周波数が所望の周波数帯域内で変化する。
図7は、可変容量性素子14として一般に入手可能な0〜3[V]における容量変化比が略5:1の可変容量ダイオードを用いた場合の例を示した図である。なお、ここでは第2誘導性素子13を考慮していない。
【0037】
可変リアクタンス回路12が図4に示すように第2誘導性素子13と可変容量性素子14との並列回路になると、この可変リアクタンス回路12の合成リアクタンスの周波数特性が図8に示すようになる。
可変容量性素子14のキャパシタンスの変化に応じて可変リアクタンス回路12の共振周波数が移動し、共振周波数よりも高い周波数では共振周波数に近づくほど大きな容量性を示す。図8中、実線は可変容量性素子14に逆バイアス0[V]が印加されたときの周波数特性、破線は可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの周波数特性である。
【0038】
図9は、可変リアクタンス回路12と第1誘導性素子11との合成リアクタンス−周波数特性を表す図である。可変リアクタンス回路12の共振周波数を所望の同調周波数よりも低域側に設定することで、直列に第1誘導性素子11が接続された放射素子1の誘導性リアクタンス変化に対して可変リアクタンス回路12のリアクタンス極性を容量性に作用させることが可能になり、所望の周波数帯域全体で同調を可能にする。
図9中、太い実線が可変リアクタンス回路12と第1誘導性素子11との合成リアクタンスの周波数特性を表す。細い実線及び破線は、可変リアクタンス回路12のみの特性曲線である。
【0039】
図10は、第1誘導性素子11及び放射素子1の合成リアクタンスと、可変リアクタンス回路12のリアクタンスとの、合成リアクタンスの同調範囲を表す図である。
図10中、太い実線は可変容量性素子14に逆バイアス0Vが印加されたときの周波数特性、破線は可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの周波数特性を表す。太い実線のリアクタンスゼロになる点から、破線のリアクタンスゼロになる間を、この合成リアクタンスの周波数特性は変位する。そのために、この間が同調可能範囲になる。
【0040】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態による可変同調型アンテナの構成例を示す図である。この可変同調型アンテナは、図4の可変同調型アンテナから第1誘導性素子11を除いた構成になっている。放射素子1は、所望の周波数帯域よりも共振周波数が高いために、当該周波数帯域内で容量性を示す。
【0041】
可変リアクタンス回路12は、共振周波数が所望の同調周波数よりも高域側に設定されている。図12は、このような可変リアクタンス回路12のリアクタンス−周波数特性図である。可変リアクタンス回路12は、放射素子1の容量性リアクタンスの変化に対してリアクタンス極性を誘導性に作用させることが可能である。そのために、所望の周波数帯域全体での同調を実現できる。
図12中、太い実線は可変容量性素子14に逆バイアス0Vが印加されたときの周波数特性、破線は可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの可変リアクタンス回路12の周波数特性を表す。細い実線は、放射素子1の周波数特性を表す。
【0042】
図13は、このような可変同調型アンテナの合成リアクタンスの周波数特性を表す図である。図13中、実線は可変容量性素子14に逆バイアス0Vが印加されたときの、破線は可変容量性素子14に逆バイアス3Vが印加されたときの、合成リアクタンスの周波数特性を表す。可変容量性素子14に印加される電圧により合成リアクタンスが変化して、基本共振周波数が所望の周波数帯域内で変動する。
【0043】
図14(a)、(b)は、それぞれ、第1実施形態又は第2実施形態による可変同調型アンテナ1を携帯電話機に搭載する場合の実装レイアウトの例示図である。主基板上に、放射素子1、同調回路10、及びグランド6が設けられている。主基板は、汎用の電子部品が実装可能な実装基板であり、携帯電話機に内蔵される。
【0044】
放射素子1は先端開放型のモノポールアンテナであり、セラミックなどの誘電体基板上に設けられる。放射素子1は、主基板の縁部に搭載される。放射素子1は、図14(a)では、主基板の長手方向に対して放射素子1の長手方向が直角になるように配置される。他方、図14(b)では、主基板の長手方向に対して放射素子1の長手方向が平行になるように配置される。なお、ここでは、放射素子1に先端開放型の素子を用いるために、放射素子1とグランド6とは接続されない。しかし、放射素子1に逆F型などのグランド6と接続する必要がある素子を用いる場合には、当然に放射素子1をグランドに接続する。
【0045】
同調回路10は、放射素子1と同様にセラミックなどからなる誘電体基板上に設けられる。同調回路10は、放射素子1に隣接して主基板上に配置される。同調回路10は、例えば50[Ω]線路4により受信器3に接続される。なお、同調回路10に低雑音増幅器を設けて、同調回路10を低雑音増幅器を介して受信器3に直接接続してもよい。低雑音増幅器を用いると、放射素子1と50[Ω]線路4間、低雑音増幅器と50[Ω]線路4間の、二重の整合と50[Ω]線路4が不要になる。そのために接続に伴う損失を最小化できる。また、整合のためのリアクタンス回路も不要になり、周波数特性の向上につながる。
【0046】
受信器3は、FM、VHF、UHF、地上波デジタル放送などの放送帯を少なくとも一つ受信するための汎用の受信器である。受信器3により、放射素子1及び同調回路10により受信された同調周波数の信号が電気信号に変換されて、内部の他の装置に送られる。
【0047】
以上のような実装形態では、放射素子1が主基板の一方の縁部に搭載されるために、グランド6を長くとることができる。放射素子1がホイップアンテナの場合は、放射素子1が主基板から突出して搭載されることが許容されるために、主基板のグランド6のすべてをアンテナのためのグランドとして使用できる。放射素子1が内蔵アンテナの場合は、主基板の放射素子1の搭載スペースの長手方向の分だけ、実質的なグランド長が減少する。放射素子1の最初の共振点は、所望の同調周波数よりも高いので、従来よりも放射素子1を小型に構成することができる。これにより、主基板上の放射素子1の搭載部分を除いたグランド6を従来よりも長くとることができ、アンテナの性能を向上させることができる。なお、図14(a)と図14(b)との比較では、図14(a)の方がグランド6を長くとることができる。そのために図14(a)の構成のアンテナの周波数特性が、図14(b)の構成のアンテナの周波数特性よりも優れている。
【0048】
さらに、上記の実装形態では、携帯電話用のアンテナを、主基板の放射素子1が設けられている縁部とは異なる他方の縁部に搭載することができる。このように搭載すると、携帯電話用のアンテナと放射素子1とを主基板上で最も隔離することができ、これらの間の相互干渉を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】基本共振周波数を1000[MHz]に設定した場合の放射素子のリアクタンス−周波数特性の例示図である。
【図2】高次共振周波数が基本共振周波数に接近する様子を示す図である。
【図3】基本共振周波数が620[MHz]の放射素子のリアクタンス−周波数特性図である。
【図4】第1実施形態による可変同調型アンテナの構成例を示す図である。
【図5】図4の放射素子のリアクタンス−周波数特性図である。
【図6】図4の放射素子及び第1誘導性素子の合成リアクタンス−周波数特性図である。
【図7】図4の放射素子、第1誘導性素子及び可変リアクタンス回路内の可変容量性素子の合成リアクタンス−周波数特性を表す図である。
【図8】図4の可変リアクタンス回路の合成リアクタンス−周波数特性を表す図である。
【図9】図4の可変リアクタンス回路と第1誘導性素子との合成リアクタンス−周波数特性を表す図である。
【図10】図4の第1誘導性素子及び放射素子の合成リアクタンスと可変リアクタンス回路のリアクタンスとの合成リアクタンスの同調範囲を表す図である。
【図11】第2実施形態による可変同調型アンテナの構成例を示す図である。
【図12】図11の可変リアクタンス回路のリアクタンス−周波数特性図である。
【図13】図11の可変同調型アンテナの合成リアクタンス−周波数特性図である。
【図14】図14(a)、(b)は、それぞれ可変同調型アンテナを携帯電話機に搭載する場合のレイアウトの例示図である。
【符号の説明】
【0050】
1 放射素子
2 給電点
10 同調回路
11 第1誘導性素子
12 可変リアクタンス回路
13 第2誘導性素子
14 可変容量性素子
3 受信器
4 50[Ω]線路
6 グランド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、
前記放射素子に直列に接続され、前記基本共振周波数を前記同調周波数よりも低い周波数に変位させる誘導性素子と、
前記誘導性素子と直列に接続され、前記放射素子と前記誘導性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づける可変容量性素子と、
を有する可変同調型アンテナ。
【請求項2】
前記放射素子の基本共振周波数が、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数であり、
前記誘導性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域よりも低くするためのリアクタンス値を有し、
前記可変容量性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有する、
請求項1記載の可変同調型アンテナ。
【請求項3】
共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、
前記放射素子に直列に接続され、前記基本共振周波数を前記同調周波数よりも低い周波数に変位させる誘導性素子と、
前記誘導性素子と直列に接続された並列共振回路とを有し、
前記並列共振回路は、少なくともその一方のリアクタンスが可変となる第2の誘導性素子と容量性素子との並列接続回路であり、前記第2誘導性素子と前記容量性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づける、
可変同調型アンテナ。
【請求項4】
前記放射素子の基本共振周波数が、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数であり、
前記誘導性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域よりも低くするためのリアクタンス値を有し、
前記並列共振回路は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有する、
請求項3記載の可変同調型アンテナ。
【請求項5】
共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、
前記放射素子に直列に接続された並列共振回路とを有し、
前記並列共振回路は、少なくともその一方のリアクタンスが可変となる誘導性素子と容量性素子との並列接続回路であり、前記誘導性素子と容量性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づける、
可変同調型アンテナ。
【請求項6】
前記放射素子の基本共振周波数が、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数であり、
前記並列共振回路は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有する、
請求項5記載の可変同調型アンテナ。
【請求項7】
前記放射素子は、その物理長が、前記同調周波数の波長の略0.1以下である、
請求項1乃至6のいずれかの項に記載の可変同調型アンテナ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの項に記載の可変同調型アンテナを搭載して成る携帯無線機。
【請求項1】
共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、
前記放射素子に直列に接続され、前記基本共振周波数を前記同調周波数よりも低い周波数に変位させる誘導性素子と、
前記誘導性素子と直列に接続され、前記放射素子と前記誘導性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づける可変容量性素子と、
を有する可変同調型アンテナ。
【請求項2】
前記放射素子の基本共振周波数が、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数であり、
前記誘導性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域よりも低くするためのリアクタンス値を有し、
前記可変容量性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有する、
請求項1記載の可変同調型アンテナ。
【請求項3】
共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、
前記放射素子に直列に接続され、前記基本共振周波数を前記同調周波数よりも低い周波数に変位させる誘導性素子と、
前記誘導性素子と直列に接続された並列共振回路とを有し、
前記並列共振回路は、少なくともその一方のリアクタンスが可変となる第2の誘導性素子と容量性素子との並列接続回路であり、前記第2誘導性素子と前記容量性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づける、
可変同調型アンテナ。
【請求項4】
前記放射素子の基本共振周波数が、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数であり、
前記誘導性素子は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域よりも低くするためのリアクタンス値を有し、
前記並列共振回路は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有する、
請求項3記載の可変同調型アンテナ。
【請求項5】
共振点と反共振点とが交互に周期的に出現し、最初の共振点の周波数である基本共振周波数が所定の同調周波数よりも高い放射素子と、
前記放射素子に直列に接続された並列共振回路とを有し、
前記並列共振回路は、少なくともその一方のリアクタンスが可変となる誘導性素子と容量性素子との並列接続回路であり、前記誘導性素子と容量性素子との合成リアクタンスを変動させることにより前記基本共振周波数を前記同調周波数に近づける、
可変同調型アンテナ。
【請求項6】
前記放射素子の基本共振周波数が、同調可能な周波数帯域よりも更に高い周波数であり、
前記並列共振回路は、前記基本共振周波数を前記周波数帯域に近づけるとともに、当該周波数帯域内で変動させるためのリアクタンス値の変動幅を有する、
請求項5記載の可変同調型アンテナ。
【請求項7】
前記放射素子は、その物理長が、前記同調周波数の波長の略0.1以下である、
請求項1乃至6のいずれかの項に記載の可変同調型アンテナ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの項に記載の可変同調型アンテナを搭載して成る携帯無線機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−113233(P2008−113233A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294914(P2006−294914)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】
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