説明

可変圧縮比内燃機関

【課題】クランクケースとシリンダブロックとが離れてもオイル通路やブローバイ通路が寸断されることを防止可能な可変圧縮比内燃機関を提供する。
【解決手段】気筒5が形成されたシリンダブロック3がクランクケース2とは別体に設けられ、シリンダブロック3をクランクケース2に対して相対変位させることにより圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関1において、シリンダブロック3にはシリンダブロック3の下面3bに一端20a、23aが開口するブロック側通路20、23が形成され、クランクケース2の対向面2bにブロック側通路20、23の一端20a、23aと対向するように一端21a、24aが開口するケース側通路21、24が形成され、シリンダブロック3とクランクケース2との間にはブロック側通路20、23とケース側通路21、24とを連通する2段バネ26が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックをクランクケースに対して相対変位させることにより圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダブロックをクランクケースに対して相対変位させることにより圧縮比を変更可能な内燃機関、いわゆる可変圧縮比内燃機関が知られている。このような内燃機関では、クランクケースに対してシリンダブロックを離したり近付けたりするため、クランクケースの底部のオイルパンからシリンダブロックの上部に取り付けられたシリンダヘッドに潤滑油を送るための通路が寸断される場合がある。そこで、クランクケースとシリンダブロックとの間に設けられたカム機構を介してオイルパンの潤滑油をシリンダヘッドに送る内燃機関が知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2、3が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−140090号公報
【特許文献2】特開2010−174750号公報
【特許文献3】特開2009−114989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に内燃機関では、シリンダヘッドに送られた潤滑油は、シリンダブロック及びクランクケースに形成されたオイル通路を介してオイルパンに戻される。また、シリンダブロック及びクランクケースには、吸気通路からクランクケース内に新気を導入したりクランクケース内のブローバイガスを吸気通路に排出したりするためのブローバイ通路が設けられている。特許文献1に示されているような可変圧縮比内燃機関では、シリンダヘッドにオイルを送るための通路と同様にこれらの通路も寸断される場合がある。特許文献1にはこのような通路の寸断に対してどのように対応するか開示されていない。
【0005】
そこで、本発明は、クランクケースとシリンダブロックとが離れてもオイル通路やブローバイ通路が寸断されることを防止可能な可変圧縮比内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の可変圧縮比内燃機関は、気筒が形成されたシリンダブロックがクランクケースとは別体に設けられ、前記シリンダブロックを前記クランクケースに対して相対変位させることにより圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関において、前記シリンダブロックには、前記シリンダブロックの下面に一端が開口するブロック側通路が形成され、前記クランクケースには、前記シリンダブロックの前記下面と対向する対向面に前記ブロック側通路の一端と対向するように一端が開口するケース側通路が形成され、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間に設けられて前記ブロック側通路と前記ケース側通路とを連通する連通部材を備えている(請求項1)。
【0007】
本発明の可変圧縮比内燃機関によれば、クランクケースとシリンダブロックとが離れても連通部材によってブロック側通路とケース側通路とが寸断されることを防止できる。そのため、例えばこれらの通路がクランクケースに潤滑油を戻すためのオイル通路であった場合には、潤滑油がクランクケースとシリンダブロックとの間の隙間に入り込んでこの隙間に溜まることを抑制できる。これによりクランクケースに戻る潤滑油の量を増加させることができるので、オイル戻り性を向上できる。また、例えばこれらの通路がブローバイ通路であった場合には、新気やブローバイガスがクランクケースとシリンダブロックとの間の隙間に漏れることを抑制できる。そのため、新気をクランクケース内に速やかに導入したりクランクケース内からブローバイガスを速やかに排出したりできる。これによりクランクケース内を適切に換気できるので、潤滑油の劣化を抑制できる。
【0008】
本発明の可変圧縮比内燃機関の一形態において、前記連通部材は、線材をコイル状に巻いて形成され、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間に形成される間隙に配置される中央部分には前記線材を互いに密着させて形成された円筒部が設けられたバネ部材であってもよい(請求項2)。この形態によれば、シリンダブロックとクランクケースとの間の間隙に配置した円筒部によってブロック側通路とケース側通路とを連通できる。そして、バネ部材を圧縮した状態で取り付けることによりシリンダブロックとクランクケースとの間の隙間の大きさに応じてバネ部材を伸縮させることができる。これによりバネ部材の一端をブロック側通路に、他端をケース側通路にそれぞれ接続させた状態に維持できる。従って、クランクケースとシリンダブロックとが離れてもブロック側通路とケース側通路とが寸断されることを防止できる。
【0009】
本発明の可変圧縮比内燃機関の一形態において、前記連通部材は、一端が前記ブロック側通路に挿入されるとともに他端が前記ケース側通路に挿入されたパイプ部材であってもよい(請求項3)。また、この形態において、前記パイプ部材の長さは、前記シリンダブロックが前記クランクケースに対して最も離されたときに前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間に形成される間隙の大きさよりも大きくてもよい(請求項4)。このようなパイプ部材をブロック側通路とケース側通路との間に設けることにより、これらの通路を連通できる。また、パイプ部材の長さをこのように設定することにより、クランクケースとシリンダブロックとが離れてもブロック側通路とケース側通路とが寸断されることを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
以上に説明したように、本発明の可変圧縮比内燃機関によれば、連通部材を設けたので、クランクケースとシリンダブロックとが離れてもブロック側通路とケース側通路とが寸断されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の形態に係る内燃機関を概略的に示す図。
【図2】クランクケースの上部及びシリンダブロックを拡大して示す図。
【図3】ブロック側オイル通路とケース側オイル通路との間に設けられた2段バネを拡大して示す図。
【図4】本発明の第2の形態に係る内燃機関のクランクケースの上部及びシリンダブロックを拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の形態)
図1は、本発明の第1の形態に係る内燃機関を概略的に示している。この内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に走行用動力源として搭載されるものである。エンジン1は、クランクケース2と、シリンダブロック3と、シリンダヘッド4とを備えている。そして、エンジン1は、クランクケース2に対してシリンダブロック3を相対変位させることにより圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関として構成されている。
【0013】
シリンダブロック3は、クランクケース2とは別体に設けられている。シリンダブロック3には、複数(図1では1つのみを示す。)の気筒5が形成されている。各気筒5には、ピストン6が気筒5の中心線CL(図2参照)に沿って往復動可能なようにそれぞれ挿入されている。各ピストン6は、コネクティングロッド7を介してクランク軸8と連結されている。クランク軸8は、クランクケース2に回転自在に支持されている。また、シリンダブロック3には、冷却水を流すための冷却水通路9が設けられている。
【0014】
シリンダヘッド4は、各気筒5の開口部を塞ぐようにシリンダブロック3の上部に取り付けられている。シリンダヘッド4には、気筒5と通じる吸気ポート10及び排気ポート11が気筒5毎に設けられている。また、図示は省略したがシリンダヘッド4には、吸気ポート10を開閉する吸気バルブと、排気ポート11を開閉する排気バルブと、吸気バルブ及び排気バルブを開閉駆動する動弁機構とが設けられている。シリンダヘッド4の内部は、不図示のPCV通路を介してエンジン1の吸気通路と接続されている。
【0015】
クランクケース2の底部にはオイルパン12が取り付けられている。これによりクランクケース2の内部にクランク室13が形成される。オイルパン12には、潤滑油が貯溜されている。オイルパン12の潤滑油は不図示のオイルポンプにて汲み上げられ、動弁機構やクランク軸8の軸受等の潤滑対象等に送られる。
【0016】
図2は、クランクケース2の上部及びシリンダブロック3を拡大して示している。なお、この図では便宜上ピストン6等の一部の部品の図示を省略している。この図に示すようにクランクケース2の上部はシリンダブロック3よりも大きく開口しており、シリンダブロック3の下部はクランクケース2の内部に収容されている。シリンダブロック3の側面3aとクランクケース2の内面2aとの間には、それらの間の隙間をシールするためのシール部材14が設けられている。シール部材14は、シリンダブロック3の外側に全周に亘って設けられている。クランクケース2には、シール部材14がクランクケース2及びシリンダブロック3とそれぞれ密着するようにシール部材14をシリンダブロック3に押し付けるシール機構15が設けられている。
【0017】
図1に示すようにエンジン1には、クランクケース2に対してシリンダブロック3を相対変位させるための駆動装置16が設けられている。駆動装置16は、一対のカム軸17と、それらカム軸17を駆動するための電動モータ18とを備えている。一対のカム軸17は、一方がシリンダブロック3の一方の側に、他方が気筒5を挟んだシリンダブロック3の他方の側にそれぞれ配置されている。図2に示すように各カム軸17は、軸部17aと、複数の円形カム部17bと、複数のジャーナル部(不図示)と、ウォームホイール(不図示)とを備えている。各円形カム部17b及び各ジャーナル部は、いずれも直径が同じ大きさの円柱状に形成されている。各円形カム部17bは、その中心線が軸部17aの中心線に対して偏心するようにして軸部17aに回転可能に支持されている。なお、各円形カム部17bは、それらの中心線と軸部17aの中心線との距離がいずれも同じになるように軸部17aに取り付けられている。一方、各ジャーナル部は、その中心線が軸部17aの中心線に対して偏心するようにして軸部17aに固定されている。この際、各ジャーナル部は、軸部17aから同じ方向に突出するように固定されている。また、各ジャーナル部は、円形カム部17bと偏心率が同じになるように軸部17bに固定されている。ウォームホイールは、その中心線が軸部17aの中心線に対して偏心するように軸部17aに固定されている。この際、ウォームホイールは、ジャーナル部と偏心率が同じになるように固定されている。そして、各ジャーナル部は、クランクケース2に設けられた不図示の軸受部に回転可能に支持されている。各円形カム部17bは、シリンダブロック3に設けられた不図示の支持部に回転可能に支持されている。電動モータ18の動力は、不図示の動力伝達機構を介して各カム軸17のウォームホイールに伝達される。この動力伝達機構は、各カム軸17に動力が伝達された場合に一対のカム軸17が互いに逆方向に回転するように構成されている。この駆動装置16によれば、電動モータ18で各カム軸17を回転させることにより各円形カム部17bを気筒5の中心線CLの方向、すなわちこの図の上下方向に駆動することができる。そのため、シリンダブロック3をクランクケース2に対して気筒5の中心線CLの方向に駆動できる。
【0018】
図2に示すようにエンジン1には、シリンダヘッド4に設けられた潤滑対象に供給された潤滑油をオイルパン12に戻すためのオイル通路19が設けられている。オイル通路19は、シリンダブロック3に形成されたブロック側オイル通路20と、クランクケース2に形成されたケース側オイル通路21とを備えている。この図に示すようにブロック側オイル通路20は、気筒5の中心線CLの方向にシリンダブロック3を貫通するように設けられている。そのため、ブロック側オイル通路20は、一端20aがシリンダブロック3の下面3bに開口し、他端20bがシリンダブロック3の上面3cに開口している。ケース側オイル通路21は、一端21aがシリンダブロック3の下面3bと対向するクランクケース2の対向面2bに開口し、他端21bがクランク室13と通じている。この図に示すようにケース側オイル通路21の一端21aは、ブロック側オイル通路20の一端20aと対向するように対向面2bに形成されている。
【0019】
また、エンジン1には、クランク室13の内部を換気するためのブローバイ通路22が設けられている。ブローバイ通路22は、一端がシリンダヘッド4の内部と通じ、他端がクランク室13と通じている。ブローバイ通路22は、シリンダブロック3に形成されたブロック側ブローバイ通路23と、クランクケース2に形成されたケース側ブローバイ通路24とを備えている。ブロック側ブローバイ通路23は、気筒5の中心線CLの方向にシリンダブロック3を貫通するように設けられている。ブロック側ブローバイ通路23の一端23aはシリンダブロック3の下面3bに開口し、他端23bがシリンダブロック3の上面3cに開口している。ケース側ブローバイ通路24は、一端24aが対向面2bに開口し、他端24bがクランク室13と通じている。この図に示すようにケース側ブローバイ通路24の一端24aは、ブロック側ブローバイ通路23の一端23aと対向するように対向面2bに形成されている。ケース側ブローバイ通路24の他端24bの周囲には、クランク軸8の回転によって飛散した潤滑油がブローバイ通路22に入り込むことを防止するための隔壁25が設けられている。
【0020】
クランクケース2とシリンダブロック3との間には、バネ部材としての2段バネ26が設けられている。この図に示すように2段バネ26は、ブロック側オイル通路20とケース側オイル通路21との間及びブロック側ブローバイ通路23とケース側ブローバイ通路24との間にそれぞれ設けられている。図3は、ブロック側オイル通路20とケース側オイル通路21との間に設けられた2段バネ26を拡大して示している。2段バネ26は、線材をコイル状に巻いて形成されている。2段バネ26の中央部分には、隣り合う線材を互いに密着させて線材間の隙間を無くした円筒部26aが設けられている。円筒部26aの長さには、駆動装置16によってシリンダブロック3がクランクケース2から最も離されたときにクランクケース2とシリンダブロック3との間に形成される間隙の大きさよりも大きい値が設定される。2段バネ26の両端は、それぞれバネとして機能するように線材が巻かれている。2段バネ26は、その内径がオイル通路19の内径と同じになるように形成されている。ブロック側オイル通路20の一端20aには、2段バネ26の外径とほぼ同じ径の凹部20cが同軸に設けられている。ケース側オイル通路21の一端21aにも同様に2段バネ26の外径とほぼ同じ径の凹部21cが同軸に設けられている。この図に示すように2段バネ26は、一方の端がブロック側オイル通路20の凹部20cに、他方の端がケース側オイル通路21の凹部21cにそれぞれ嵌め込まれている。そのため、円筒部26aがクランクケース2とシリンダブロック3との間に形成される間隙に配置されている。そして、2段バネ26は、各端部が圧縮された状態でクランクケース2とシリンダブロック3との間に取り付けられている。
【0021】
なお、詳細な説明は省略するが、ブロック側ブローバイ通路23の一端23aとケース側ブローバイ通路24の一端24aとの間に設けられた2段バネ26も同様に取り付けられている。すなわち、2段バネ26は、両端が各ブローバイ通路23、24の一端23a、24aに設けられた凹部に嵌め込まれ、円筒部26aがクランクケース2とシリンダブロック3との間に形成される間隙に配置される。そして、2段バネ26は、各端部が圧縮された状態でクランクケース2とシリンダブロック3との間に取り付けられている。
【0022】
このエンジン1では、シリンダブロック3をクランクケース2に最も近付けた場合には2段バネ26の各端部が縮み、クランクケース2とシリンダブロック3との間には円筒部26aが配置される。そのため、この円筒部26aによってオイル通路19及びブローバイ通路22のブロック側の通路20、23とケース側の通路21、24とが連通される。この状態から駆動装置16によってシリンダブロック3を図2の上方に動かすとその移動に伴って圧縮されていた2段バネ26の各端部が伸びる。すなわち、クランクケース2とシリンダブロック3との間の間隙の大きさに応じて長さが変化する。そのため、シリンダブロック3が動いても円筒部26aはクランクケース2とシリンダブロック3との間に配置される。従って、この場合においても円筒部26aによってオイル通路19及びブローバイ通路22のブロック側の通路20、23とケース側の通路21、24とが連通状態に維持される。上述したように円筒部26aの長さは、シリンダブロック3が最も離されたときのクランクケース2とシリンダブロック3との間の間隙の大きさより大きい。そのため、シリンダブロック3が最も離されてもオイル通路19及びブローバイ通路22のブロック側の通路20、23とケース側の通路21、24とが連通状態に維持される。
【0023】
以上に説明したように、第1の形態のエンジン1では、ブロック側オイル通路20とケース側オイル通路21との間に2段バネ26を設けたので、クランクケース2に対してシリンダブロック3を相対変位させてもこれらのオイル通路20、21を連通状態に維持できる。そのため、シリンダヘッド4から戻ってきた潤滑油がクランクケース2とシリンダブロック3との間の隙間に入り込んでこの隙間に溜まることを抑制できる。これにより、オイルパン12に戻る潤滑油の量を増加させることができるので、潤滑油の戻り性能を向上させることができる。また、その潤滑油が気筒5の下方から落下してクランク軸8に当たることを抑制できるので、潤滑油への気泡の混入を抑制できる。このエンジン1では、ブロック側ブローバイ通路23とケース側ブローバイ通路24との間にも同様に2段バネ26を設けたので、クランクケース2に対してシリンダブロック3を相対変位させてもこれらのブローバイ通路23、24を連通状態に維持できる。そのため、新気やブローバイガスがクランクケース2とシリンダブロック3との間の隙間に漏れることを抑制できる。これによりシリンダヘッド4から送られてきた新気を速やかにクランク室13に導入できる。また、クランク室13のブローバイガスを速やかにシリンダヘッド4を介して吸気通路に排出できる。そのため、クランク室13内を適切に換気できる。従って、潤滑油の劣化を抑制できる。
【0024】
なお、この形態では、ブロック側オイル通路20及びブロック側ブローバイ通路23が本発明のブロック側通路に相当し、ケース側オイル通路21及びケース側ブローバイ通路24が本発明のケース側通路に相当する。そして、2段バネ26が本発明の連通部材に相当する。
【0025】
(第2の形態)
次に図4を参照して本発明の第2の形態に係る内燃機関を説明する。図4は、第1の形態の図2に対応する図である。この図に示したように第2の形態では、2段バネ26の代わりにパイプ部材としての突出しパイプ30がオイル通路19及びブローバイ通路22にそれぞれ設けられている点が異なる。それ以外は、第1の形態と同じである。そのため、この形態において第1の形態と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
オイル通路19に設けたれた突出しパイプ30について説明する。この突出しパイプ30は、中空円筒状をしており、金属材料で構成されている。突出しパイプ30の内径には、オイル通路19の内径と同じ値が設定されている。突出しパイプ30の外径には、ブロック側オイル通路20の凹部20cの内径及びケース側オイル通路21との凹部21cの内径と同じ値が設定されている。そして、突出しパイプ30の一端はブロック側オイル通路20の凹部20cに、他端はケース側オイル通路21との凹部21cにそれぞれ挿入されている。突出しパイプ30の長さには、駆動装置16によってシリンダブロック3がクランクケース2から最も離されたときにクランクケース2とシリンダブロック3との間に形成される間隙の大きさよりも大きい値が設定されている。そして、ブロック側オイル通路20の凹部20cは、駆動装置16によってシリンダブロック3がクランクケース2に最も近付けられたときに突出しパイプ30のうち対向面2bから突出した部分を収容可能な大きさに形成されている。
【0027】
詳細な説明は省略するが、ブローバイ通路22に設けられた突出しパイプ30も上述したオイル通路19の突出しパイプ30と同様に構成されている。ただし、内径及び外径は、ブローバイ通路22の内径等に応じて適宜に変更されている。そして、ブロック側ブローバイ通路23の凹部は、ブロック側オイル通路20の凹部20cと同様にシリンダブロック3がクランクケース2に最も近付けられたときに突出しパイプ30のうち対向面2bから突出した部分を収容可能な大きさに形成されている。
【0028】
この形態のエンジン1では、駆動装置16でシリンダブロック3をクランクケース2に対して最も近付けたときにはオイル通路19及びブローバイ通路22のブロック側の通路20、23とケース側の通路21、24とが突出しパイプ30で連通される。そして、突出しパイプ30の長さは、シリンダブロック3が最も離されたときのクランクケース2とシリンダブロック3との間の間隙の大きさよりも大きい。そのため、駆動装置16でシリンダブロック3をクランクケース2に対して最も離したときにも突出しパイプ30によってオイル通路19及びブローバイ通路22のブロック側の通路20、23とケース側の通路21、24とが連通状態に維持される。そのため、突出しパイプ30が本発明の連通部材に相当する。
【0029】
このように第2の形態のエンジン1では、駆動装置16でシリンダブロック3をクランクケース2に対して相対変位させても突出しパイプ30によってブロック側オイル通路20とケース側オイル通路21とを連通状態に維持できる。そのため、潤滑油への気泡の混入を抑制できる。また、オイルパン12に戻る潤滑油の量を増加させることができるので、潤滑油の戻り性能を向上させることができる。ブロック側ブローバイ通路23とケース側ブローバイ通路24との間にも同様に突出しパイプ30を設けたので、シリンダブロック3を動かしてもこれらのブローバイ通路23、24を連通状態に維持できる。これによりクランク室13内を適切に換気できるので、潤滑油の劣化を抑制できる。
【0030】
なお、この形態において突出しパイプ30はクランクケース2に固定されていてもよい。また、突出しパイプ30は金属製でなくてもよく、例えばゴム等の弾性材料で構成してもよい。この場合、シリンダブロック3が気筒5の中心線CLの方向に対して斜めに移動してもそれに応答して変形するので、シリンダブロック3側の通路とクランクケース2側の通路とを連通状態に維持できる。
【0031】
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、シリンダブロック側の通路とクランクケース側の通路とを連通する連通部材は2段バネや突出しパイプに限定されない。バネとパイプとを組み合わせたものでもよい。例えば、パイプの両端にそのパイプと同じ内径及び外径のバネを取り付けた部材を連通部材として用いてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 内燃機関
2 クランクケース
2b クランクケースの対向面
3 シリンダブロック
3b シリンダブロックの下面
5 気筒
20 ブロック側オイル通路(ブロック側通路)
20a ブロック側オイル通路の一端
21 ケース側オイル通路(ケース側通路)
21a ケース側オイル通路の一端
23 ブロック側ブローバイ通路(ブロック側通路)
23a ブロック側ブローバイ通路の一端
24 ケース側ブローバイ通路(ケース側通路)
24a ケース側ブローバイ通路の一端
26 2段バネ(バネ部材、連通部材)
26a 円筒部
30 突出しパイプ(パイプ部材、連通部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒が形成されたシリンダブロックがクランクケースとは別体に設けられ、前記シリンダブロックを前記クランクケースに対して相対変位させることにより圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関において、
前記シリンダブロックには、前記シリンダブロックの下面に一端が開口するブロック側通路が形成され、
前記クランクケースには、前記シリンダブロックの前記下面と対向する対向面に前記ブロック側通路の一端と対向するように一端が開口するケース側通路が形成され、
前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間に設けられて前記ブロック側通路と前記ケース側通路とを連通する連通部材を備えている可変圧縮比内燃機関。
【請求項2】
前記連通部材は、線材をコイル状に巻いて形成され、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間に形成される間隙に配置される中央部分には前記線材を互いに密着させて形成された円筒部が設けられたバネ部材である請求項1に記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項3】
前記連通部材は、一端が前記ブロック側通路に挿入されるとともに他端が前記ケース側通路に挿入されたパイプ部材である請求項1に記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項4】
前記パイプ部材の長さは、前記シリンダブロックが前記クランクケースに対して最も離されたときに前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間に形成される間隙の大きさよりも大きい請求項3に記載の可変圧縮比内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2358(P2013−2358A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134228(P2011−134228)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】