説明

可変容量タービン及び可変容量ターボチャージャ

【課題】タービン室に流入される流体の流量が変化した場合でも、タービン効率を維持する。
【解決手段】タービン部12は、タービンホイール14と、タービン室24を有して構成されたタービンハウジング16と、可変ノズルベーン機構18とを備える。タービンハウジング16には、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cに対する上流側領域24Dと下流側領域24Eとをバイパスするバイパス通路30が形成されており、このバイパス通路30を流れる流体の流量は流量調節機構20によって調節されるように構成されている。タービン室24に流入される排気ガスの流量が変化した場合でも、排気ガスをバイパス通路30に分流させることでタービンホイール14の出口部24Cを通過する排気ガスの流量を一定に保たれ、タービン効率が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量タービン及び可変容量ターボチャージャに係り、特に、タービン室に流入される流体の流量を調節可能な可変容量タービン及びこれを備えた可変容量ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可変容量タービンとしては、次のものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。例えば、非特許文献1には、可変容量ターボチャージャにおける可変容量タービンの例が開示されている。この非特許文献1に記載の例では、タービン室に流入される排気ガスの流量を調節するために可変ノズルベーン機構が備えられている。
【非特許文献1】三菱重工技報 VOL.43,NO.3,2006(p31〜p35)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の自動車用の可変容量ターボチャージャにおける可変容量タービンでは、一般的に、タービン室の出口は、エンジンの最大出力時にタービン室に流入される排気ガスを外部に円滑に流出させることができる大きさに設定される。
【0004】
一方、タービン室におけるタービンホイールの出口部は、可変ノズルベーン機構によってタービン室に流入される排気ガスの流量が最大とされた大流量時に適合する径に設定される場合と、可変ノズルベーン機構によってタービン室に流入される排気ガスの流量が最小とされた小流量時に適合する径に設定される場合とがある。
【0005】
ここで、タービン室におけるタービンホイールの出口部が大流量時に適合する径に設定された場合、大流量時には排気ガスが出口部を円滑に通過することができるものの、小流量時には出口部の面積が排気ガスの流量に対して大きすぎることに起因して出口部を通過する排気ガスの流れが拡大しタービン効率が低下する。
【0006】
一方、タービン室におけるタービンホイールの出口部が小流量時に適合する径に設定された場合、小流量時には排気ガスが出口部を円滑に通過することができるものの、大流量時には出口部の面積が排気ガスの流量に対して小さすぎることに起因して出口部で排気ガスの流れが制限されタービン効率が低下する。
【0007】
従って、タービン室に流入される流体の流量が変化した場合でも、タービン効率を維持できるようにするためには改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであって、タービン室に流入される流体の流量が変化した場合でも、タービン効率を維持することができる可変容量タービン及び可変容量ターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の可変容量タービンは、タービンホイールと、前記タービンホイールを回転可能に収容すると共に前記タービンホイールの回転を伴って流体が流入出されるタービン室入口及びタービン室出口を有するタービン室と、前記タービン室における前記タービンホイールの出口部に対する上流側領域と下流側領域とをバイパスするバイパス通路と、を有して構成されたタービンハウジングと、前記タービン室入口を介して前記タービン室に流入する流体の流量を調節するための可変ノズルベーン機構と、前記バイパス通路を流れる流体の流量を調節するための流量調節機構と、備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の可変容量タービンでは、流体が外部からタービン室入口を介してタービン室に流入されると、タービンホイールが回転される。そして、タービンホイールを通過した流体はタービン室出口を介してタービン室から外部に流出される。また、外部からタービン室入口を介してタービン室に流入される流体の流量は可変ノズルベーンにより調節される。
【0011】
ここで、タービンハウジングには、タービン室におけるタービンホイールの出口部に対する上流側領域と下流側領域とをバイパスするバイパス通路が設けられている。また、このバイパス通路を流れる流体の流量は流量調節機構により調節される。
【0012】
従って、例えば、タービン室におけるタービンホイールの出口部が小流量時に適合する径に設定された場合、小流量時にはバイパス通路を流れる流体の流量を流量調節機構で調節することによって少なくすることにより流体が出口部を円滑に通過することができ、タービン効率を維持できる。一方、大流量時にはバイパス通路を流れる流体の流量を流量調節機構で調節することによって多くすることにより出口部で流体の流れが制限されることを抑制してタービン効率を維持できる。
【0013】
このように、請求項1に記載の可変容量タービンによれば、タービン室に流入する流体の流量が変化した場合でも、バイパス通路を流れる流体の流量を流量調節機構で調節することによってタービンホイールの出口部を通過する流体の流量を一定に保つことができる。これにより、タービン室に流入される流体の流量が変化した場合でも、タービン効率を維持することができる。
【0014】
請求項2に記載の可変容量タービンは、請求項1に記載の可変容量タービンにおいて、前記バイパス通路は、前記タービン室の径方向に開口するバイパス通路入口を有し、前記タービンホイールは、回転中心を中心として放射状に延びる複数の羽根を有し、前記羽根は、前記タービンホイールの回転方向を向く面が前記タービンホイールの径方向内側から外側に向かうに従って前記タービンホイールの回転方向と反対側に向かうように湾曲された構成とされている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の可変容量タービンによれば、タービンホイールに備えられた羽根のタービンホイールの回転方向を向く面は、タービンホイールの径方向内側から外側に向かうに従ってタービンホイールの回転方向と反対側に向かうように湾曲されている。従って、羽根から流れ出る流体の相対流速方向は、タービンホイールの接線方向である周速度方向とタービンホイールの径方向である絶対流速方向とを合わせた方向、すなわち、周速度方向と反対側とされる。これにより、タービン室の流体は旋回成分を有さずにバイパス通路に流入するので、タービンホイールの駆動トルクが減少することを抑制することができ、流体が旋回成分を有してバイパス通路に流入される場合に比して、タービン効率を向上させることができる。
【0016】
請求項3に記載の可変容量タービンは、請求項1又は請求項2に記載の可変容量タービンにおいて、前記タービン室に流入される流体の流量の増減に応じて前記バイパス通路を流れる流体の流量が増減されるように、前記可変ノズルベーン機構の動作と連動して前記流量調節機構を動作させるための連動手段を備える、ことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の可変容量タービンでは、例えば、タービン室に流入される流体の流量が減少するように可変ノズルベーン機構が動作されたときには、バイパス通路を流れる流体の流量が減少するように流量調節機構の動作が連動手段によって連動される。一方、例えば、タービン室に流入される流体の流量が増加するように可変ノズルベーン機構が動作されたときには、バイパス通路を流れる流体の流量が増加するように流量調節機構の動作が連動手段によって連動される。
【0018】
このように、請求項3に記載の可変容量タービンによれば、タービン室に流入される流体の流量の増減に応じてバイパス通路を流れる流体の流量が増減されるように、可変ノズルベーン機構の動作と連動して流量調節機構を動作させることができる。これにより、タービン室に流入される流体の流量が変化した場合でも、タービンホイールの出口部を通過する流体の流量を一定に保つことができる。
【0019】
また、前記課題を解決するために、請求項4に記載の可変容量ターボチャージャは、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の可変容量タービンを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の可変容量ターボチャージャによれば、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の可変容量タービンを備えているので、タービン室に流入される流体の流量が変化した場合でも、タービン効率を維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように、本発明によれば、タービン室に流入される流体の流量が変化した場合でも、タービン効率を維持することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
図1,図2には、本発明の一実施形態に係る可変容量ターボチャージャ10の一部を構成するタービン部12が断面側面図にて示されており、図3には、このタービン部12に備えられたタービンホイール14が正面図にて示されている。また、図5には、このタービン部12の動作説明図が示されている。
【0024】
これらの図に示される可変容量ターボチャージャ10は、例えば、自動車用のディーゼルエンジンに好適に搭載されるものである。タービン部12(本発明における可変容量タービンに相当)は、図示しないコンプレッサ部と一体的に構成されて、このコンプレッサ部を動作させるためのものであり、タービンホイール14と、タービンハウジング16と、可変ノズルベーン機構18と、流量調節機構20と、を備えている。
【0025】
タービンホイール14は、図示しないコンプレッサ部のコンプレッサホイールと一体回転可能に連結されるものであり、図3に示されるように、回転中心Oを中心として放射状に延びる羽根22を複数有している。
【0026】
羽根22は、タービンホイール14の回転方向を向く面22Aを含むその全体がタービンホイール14の径方向内側から外側に向かうに従ってタービンホイール14の回転方向(R1)と反対側に向かうように湾曲された構成とされている。
【0027】
タービンハウジング16は、図1,図2に示されるように、その内部にタービン室24と、タービン室24の径方向外側に形成された渦巻状のスクロール通路26と、タービン室24及びスクロール通路26を連通するノズル通路28と、バイパス通路30とを有する構成とされている。
【0028】
タービン室24は、タービン室入口24A及びタービン室出口24Bを有して構成されており、その内部には、上述のタービンホイール14が回転可能に収容されている。
【0029】
なお、本実施形態において、タービン室出口24Bは、エンジンの最大出力時にタービン室24に流入される排気ガスを外部に円滑に流出させることができる大きさに設定されている。また、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24C(タービン室24のうちタービンホイール14の羽根22の下流側の端部22Bが位置する空間部)は、可変ノズルベーン機構18によってタービン室24に流入される排気ガスの流量が最小とされた小流量時に適合する径に設定されている。
【0030】
バイパス通路30は、タービン室24の径方向外側に周方向に沿って環状に形成されており、後述する流量調節機構20のスライド式ダクト40によってタービン室24と区画されている。このバイパス通路30は、図2に示されるように、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cに対する上流側領域24Dと下流側領域24Eとをバイパスする構成とされている。バイパス通路入口30Aは、上述のタービンホイール14の羽根22に対する径方向外側に位置され、且つ、タービン室24の径方向に開口されている。
【0031】
可変ノズルベーン機構18は、タービン室入口24Aを介してタービン室24に流入する排気ガスの流量を調節するためのものであり、複数のノズルベーン32と、支持部材34とを有して構成されている。ノズルベーン32は、ベーン本体36と回動軸部38とを有して構成されており、ベーン本体36は、ノズル通路28に配置され、回動軸部38は、支持部材34に回動可能に支持されている。
【0032】
そして、この可変ノズルベーン機構18では、後述するアクチュエータ60によってノズルベーン32の回動軸部38が支持部材34に対して回動されることでベーン本体36のノズル通路28に対する取付角度が変更される。また、このノズルベーン32によってスクロール通路26を開閉し、これにより、タービン室入口24Aを介してタービン室24に流入する排気ガスの流量を調節する構成とされている。
【0033】
流量調節機構20は、バイパス通路30を流れる排気ガスの流量を調節するためのものであり、スライド式ダクト40と、リンク42とを有して構成されている。
【0034】
スライド式ダクト40は、孔部44を有する円筒状の本体部46を備えて構成されており、本体部46の外周面には、径方向外側に向けて延びる脚部48が形成されている。脚部48は、バイパス通路30の内周面にタービン部12の軸方向に沿って摺動可能に当接されており、これにより、スライド式ダクト40全体は、タービン室24とバイパス通路30との間をタービン部12の軸方向に移動可能とされている。
【0035】
リンク42は、長手板状に構成されており、一端側に長手方向に延びる長孔50が形成されると共に他端側に回動軸部52が突設された構成とされている。そして、リンク42は、スライド式ダクト40の本体部46の外周面上に配置され、長孔50には、上述の本体部46の外周面に突設されたピン54が移動可能に係止され、回動軸部52は、タービンハウジング16に形成された孔部56に回動可能に挿入されている。
【0036】
そして、この流量調節機構20では、後述するアクチュエータ62によってリンク42の回動軸部52が回動されると、ピン54が長孔50内を相対移動し、これに伴ってスライド式ダクト40が図1,図2に示される如くタービン部12の軸方向にスライドされる。また、スライド式ダクト40がスライドすることで上述のバイパス通路入口30Aを開閉し、これにより、バイパス通路30を流れる排気ガスの流量を調節する構成とされている。
【0037】
また、図4には、本発明の一実施形態に係るタービン部12に備えられた連動装置58がブロック図にて示されている。連動装置58(本発明における連動手段に相当)は、上述の可変ノズルベーン機構18の動作と連動して流量調節機構20を動作させるためのものであり、一対のアクチュエータ60,62とECU64とを有する構成とされている。
【0038】
一方のアクチュエータ60は、上述のノズルベーン32の回動軸部38を回動させて可変ノズルベーン機構18を作動させる構成とされており、他方のアクチュエータ62は、上述のリンク42の回動軸部52を回動させて流量調節機構20を作動させる構成とされている。
【0039】
ECU64は、車両状態検出センサ66からエンジン回転数に応じて出力された車両状態信号に基づいて、上述の一対のアクチュエータ60,62の駆動を制御する構成とされている。
【0040】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
本発明の一実施形態に係るタービン部12では、スクロール通路26、ノズル通路28、タービン室入口24Aを介して排気ガスがタービン室24に流入されると、タービンホイール14が回転される。そして、タービンホイール14を通過した排気ガスはタービン室出口24Bを介してタービン室24から外部に流出される。
【0042】
このとき、ECU64は、車両状態検出センサ66から出力された車両状態信号に基づいてアクチュエータ60を制御し、タービン室24に流入される排気ガスの流量がエンジン回転数に応じて調節されるように可変ノズルベーン機構18の動作を制御する。
【0043】
すなわち、ECU64は、エンジンの低回転域では、図5(A)に示されるようにタービン室24に流入される排気ガスの流量が減少するように可変ノズルベーン機構18の各ノズルベーン32を閉じる方向に動作させる。一方、ECU64は、エンジンの高回転域では、図5(B)に示されるようにタービン室24に流入される排気ガスの流量が増加するように可変ノズルベーン機構18の各ノズルベーン32を開く方向に動作させる。このように、タービン室24に流入される排気ガスの流量はエンジン回転数に応じて調節される。
【0044】
ここで、タービンハウジング16には、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cに対する上流側領域24Dと下流側領域24Eとをバイパスするバイパス通路30が設けられている。そして、ECU64は、タービン室24に流入される排気ガスの流量に応じてバイパス通路30を流れる排気ガスの流量が調節されるように、可変ノズルベーン機構18の動作に連動して流量調節機構20を動作させる。
【0045】
すなわち、ECU64は、タービン室24に流入される排気ガスの流量が減少するように可変ノズルベーン機構18を動作させたときには、バイパス通路30を流れる排気ガスの流量が減少するように流量調節機構20を動作させる。そして、図5(A)に示されるように、タービン室24に流入される排気ガスの流量が最小となるように可変ノズルベーン機構18を動作させたときには、スライド式ダクト40が後退してバイパス通路入口30Aが閉止されるように流量調節機構20を動作させる。
【0046】
これにより、図5(A)に示される如く小流量時にはバイパス通路入口30Aがスライド式ダクト40によって閉止されるので、全排気ガスが出口部24Cを通過する。このとき、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cは小流量時に適合する径に設定されているので、全排気ガスは出口部24Cを円滑に通過し、これにより、タービン効率が維持される。
【0047】
一方、ECU64は、タービン室24に流入される排気ガスの流量が増加するように可変ノズルベーン機構18を動作させたときには、バイパス通路30を流れる排気ガスの流量が増加するように流量調節機構20を動作させる。そして、図5(B)に示されるように、タービン室24に流入される排気ガスの流量が最大となるように可変ノズルベーン機構18を動作させたときには、スライド式ダクト40が前進してバイパス通路入口30Aが全開されるように流量調節機構20を動作させる。
【0048】
これにより、図5(B)に示される如く大流量時には排気ガスがタービンホイール14の出口部24Cを通過すると共にバイパス通路30にも分流される。
【0049】
しかも、タービンホイール14に備えられた羽根22は、図3に示される如くタービンホイール14の回転方向を向く面22Aを含むその全体がタービンホイール14の径方向内側から外側に向かうに従ってタービンホイール14の回転方向(R1)と反対側に向かうように湾曲された構成とされている。
【0050】
このため、羽根22から流れ出る排気ガスの相対流速方向は、タービンホイール14の接線方向である周速度方向とタービンホイール14の径方向である絶対流速方向とを合わせた方向、すなわち、周速度方向と反対側とされるので、タービン室24の流体は旋回成分を有さずにバイパス通路30に流入する
【0051】
そして、図5(B)に示される如く大流量時には、上述のように排気ガスがタービンホイール14の出口部24Cを通過すると共にバイパス通路30にも分流されることで、出口部24Cで排気ガスの流れが制限されることが抑制されるので、これにより、タービン効率が維持される。
【0052】
このように、本発明の一実施形態に係るタービン部12では、バイパス通路30を流れる排気ガスの流量が流量調節機構20で調節されることによってタービンホイール14の出口部24Cを通過する排気ガスの流量が一定に保たれるので、タービン室24に流入される排気ガスの流量が変化した場合でも、タービン効率が維持される。
【0053】
ここで、本発明の一実施形態に係るタービン部12と比較例に係るタービン部112,212とを比較し、本発明の一実施形態に係るタービン部12の作用及び効果をより明確にする。
【0054】
図9,図10には、比較例に係るタービン部112,212がそれぞれ示されている。なお、この比較例に係るタービン部112,212において、上述の本発明の一実施形態に係るタービン部12と同一の機能(同一名称)を有する構成については、便宜上、同一符合を用いることとする。
【0055】
図9,図10に示されるタービン部112,212は、上述の本発明の一実施形態に係るタービン部12からバイパス通路30及び流量調節機構20を省いた構成とされている。また、図9に示されるタービン部112は、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cが大流量時(図9(B)の場合)に適合する径に設定された構成とされており、図10に示されるタービン部212は、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cが小流量時(図10(A)の場合)に適合する径に設定された構成とされている。
【0056】
ここで、図9に示される比較例のように、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cが大流量時に適合する径に設定された場合、図9(B)に示され如くる大流量時には排気ガスが出口部24Cを円滑に通過することができるものの、図9(A)に示される如く小流量時には出口部24Cの面積が排気ガスの流量に対して大きすぎることに起因して出口部24Cを通過する排気ガスの流れが拡大しタービン効率が低下する。
【0057】
一方、図10に示される比較例のように、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cが小流量時に適合する径に設定された場合、図10(A)に示される如く小流量時には排気ガスが出口部24Cを円滑に通過することができるものの、図10(B)に示される如く大流量時には出口部24Cの面積が排気ガスの流量に対して小さすぎることに起因して出口部24Cで排気ガスの流れが制限されタービン効率が低下する。
【0058】
ここで、図11には、上述の比較例に係るタービン部112,212のタービン特性を表すグラフが示されている。この図において、データD9A,D9B,D10A,D10Bは、上述の比較例に係るタービン部112,212の図9(A),図9(B),図10(A),図10(B)のときのタービン効率とタービン流量との関係を示しており、グラフG9,G10は、上述の比較例に係るタービン部112,212のタービン効率とタービン流量との関係を示している。
【0059】
この図から明らかなように、図9に示されるタービン部112では、大流量時におけるタービン効率が高く、タービン流量の範囲も広いが、小流量時すなわちエンジンの低回転域のタービン効率が悪いという欠点がある。一方、図10に示されるタービン部212では、小流量時すなわちエンジンの低回転域のタービン効率は高いが、大流量時すなわちエンジンの高回転域のタービン効率が悪いという欠点がある。
【0060】
これに対し、本発明の一実施形態に係るタービン部12によれば、上述のように、タービン室24に流入される排気ガスの流量の増減に応じてバイパス通路30を流れる排気ガスの流量が増減されるように、可変ノズルベーン機構18の動作と連動して流量調節機構20を動作させることができる。これにより、タービン室24に流入される排気ガスの流量が変化した場合でも、タービンホイール14の出口部24Cを通過する排気ガスの流量を一定に保つことができる。
【0061】
これにより、タービン室24に流入される排気ガスの流量が変化した場合でも、タービン効率を維持することができる。つまり、図11に示されるグラフG1で示されるように、大流量時及び小流量時のいずれかにおいてもタービン効率を高く維持できる。
【0062】
しかも、本発明の一実施形態に係るタービン部12によれば、上述のように、タービン室24の排気ガスは旋回成分を有さずにバイパス通路30に流入する。従って、タービンホイール14の駆動トルクが減少することを抑制することができるので、これにより、排気ガスが旋回成分を有してバイパス通路30に流入される場合に比して、タービン効率を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0064】
例えば、バイパス通路30及び流量調節機構20は、次の如く構成されていても良い。つまり、図6,図7に示される変形例では、バイパス通路30がバイパススクロール通路68とバイパス集合通路70とにより構成されている。バイパススクロール通路68は、タービン室24の径方向外側でスクロール状に構成されており、バイパス集合通路70は、バイパススクロール通路68に連通されている。
【0065】
バイパス通路入口30Aは、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cに対する上流側領域24Dにおいて常時開放されており、バイパス通路出口30Bは、タービン室24におけるタービンホイール14の出口部24Cに対する下流側領域24Eにおいて開口されている。
【0066】
また、流量調節機構20は、回動軸部72を備えたバルブ74により構成されており、上述のアクチュエータ62により回動軸部72が回動されることで、バルブ74がバイパス集合通路70を開閉し、これにより、バイパス通路30を流れる排気ガスの流量を調節する構成とされている。
【0067】
このように構成されていると、バイパス通路入口30Aから流入した排気ガスをバイパススクロール通路68で集めることができ、これにより、バイパス通路入口30Aにおいて周方向の圧力分布を小さくすることができる。この結果、タービン効率を向上させることができる。
【0068】
なお、この場合に、図8に示されるように、バイパス通路出口30Bは、タービン部12の軸方向一方側に開口されても良い。また、流量調節機構20は、スイング式のバルブ76を備え、バイパス通路出口30Bをバルブ76で開閉し、これにより、バイパス通路30を流れる排気ガスの流量を調節する構成とされていても良い。
【0069】
また、上記実施形態において、連動装置58は、一対のアクチュエータ60,62及びECU64を有する電気的な構成とされていたが、例えば、カム機構やリンク機構等を有する機械的な構成とされていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る可変容量ターボチャージャの要部拡大側面断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る可変容量ターボチャージャの要部拡大側面断面図である。
【図3】図1のタービン部に備えられたタービンホイールの正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るタービン部に備えられた連動装置のブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るタービン部の動作を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るタービン部の変形例を示す図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るタービン部の変形例を示す図である。
【図9】比較例に係るタービン部を示す図である。
【図10】比較例に係るタービン部を示す図である。
【図11】比較例に係るタービン部のタービン特性を表すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
10 可変容量ターボチャージャ
12 タービン部
14 タービンホイール
16 タービンハウジング
18 可変ノズルベーン機構
20 流量調節機構
22 羽根
24 タービン室
24A タービン室入口
24B タービン室出口
24C 出口部
24D 上流側領域
24E 下流側領域
30 バイパス通路
30A バイパス通路入口
30B バイパス通路出口
58 連動装置(連動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンホイールと、
前記タービンホイールを回転可能に収容すると共に前記タービンホイールの回転を伴って流体が流入出されるタービン室入口及びタービン室出口を有するタービン室と、前記タービン室における前記タービンホイールの出口部に対する上流側領域と下流側領域とをバイパスするバイパス通路と、を有して構成されたタービンハウジングと、
前記タービン室入口を介して前記タービン室に流入する流体の流量を調節するための可変ノズルベーン機構と、
前記バイパス通路を流れる流体の流量を調節するための流量調節機構と、
を備えたことを特徴とする可変容量タービン。
【請求項2】
前記バイパス通路は、前記タービン室の径方向に開口するバイパス通路入口を有し、
前記タービンホイールは、回転中心を中心として放射状に延びる複数の羽根を有し、
前記羽根は、前記タービンホイールの回転方向を向く面が前記タービンホイールの径方向内側から外側に向かうに従って前記タービンホイールの回転方向と反対側に向かうように湾曲された構成とされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量タービン。
【請求項3】
前記タービン室に流入される流体の流量の増減に応じて前記バイパス通路を流れる流体の流量が増減されるように、前記可変ノズルベーン機構の動作と連動して前記流量調節機構を動作させるための連動手段を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変容量タービン。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の可変容量タービンを備えたことを特徴とする可変容量ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−191639(P2009−191639A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30573(P2008−30573)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】