可変焦点レンズ、オートフォーカス装置、および撮像装置
【課題】機構部品を少なくしたシンプルで小サイズのものであり、広い温度範囲で使用可能であり、高い光学特性(焦点可変範囲)を有し、低い消費電力、電圧で駆動でき、高い耐衝撃性を有する可変焦点レンズを提供することにある。また、この可変焦点レンズを用いたオートフォーカス装置、撮像装置を提供することにある。
【解決手段】電気的駆動源によって駆動するアクチュエータと、アクチュエータの作用力が作用する弾性体と、を少なくとも備え、アクチュエータの作用力を前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする。
【解決手段】電気的駆動源によって駆動するアクチュエータと、アクチュエータの作用力が作用する弾性体と、を少なくとも備え、アクチュエータの作用力を前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子アクチュエータ素子を作用させることでレンズの焦点を可変できる可変焦点レンズに関する。また、この可変焦点レンズを用いたオートフォーカス装置、または撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置等のレンズ系において、任意位置にある被写体の焦点調整手法としては、古くはレンズと結像部(例えばフィルム、CCD等)間の距離をネジ等の直動機構を手動や電動(モータ等)で動かし調整していた。また、近年においては、レンズの曲率半径を変化させ、焦点距離を調整する試みがなされている。この場合、例えば、フランスVarioptic社の油と水の境界部を電圧印加で変形させ曲率を与える液体レンズ、或いはアメリカHolochip社の高分子膜を液圧により変形させ曲率を与える液体レンズ、また、ノルウエーPoLight社の高分子膜をピエゾ素子の湾曲で引き上げ変形させ曲率を与える液体レンズ等が知られている。しかし、これらの液体レンズ技術は低い光学特性(曲率変形が微小)、印加電圧が40〜50Vと高電圧であり、機構部品点数も多く、また、使用温度範囲が狭く、高価、サイズ大、耐衝撃特性が低い等の様々な問題を持っている。
【0003】
また、高分子から形成されたレンズと、前記レンズが設置され、光透過性を有する板部と、前記レンズと接するように設置された第1の電極と、前記板部上に、前記レンズと接するように設置された第2の電極と、を備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧が印加されると、前記レンズが前記第1の電極に沿って変形し、前記レンズの曲率が変化することを特徴とする可変焦点レンズが知られている(特許文献1参照)。この可変焦点レンズは、電圧印加によってレンズ自体が変形してその曲率を変え、焦点を可変できる構成である。しかしこの可変焦点レンズの場合、レンズの曲率を変形させるための電圧制御を高精度に行う必要があり、また、レンズを長時間使用した場合の耐久性に問題がある。
【0004】
また、袋状の透明な可撓性膜により形成されると共に内部に透明な液体が充填されたレンズ本体と、前記レンズ本体に一体的に形成され且つ外部より電気的に駆動可能な、前記レンズ本体用のアクチュエータとして機能するイオン導電性高分子・金属接合体とを備え、前記イオン導電性高分子・金属接合体を外部から駆動して前記レンズ本体を変形させることにより、焦点距離を変化させることを特徴とする可変焦点レンズが知られている(特許文献2参照)。しかしこの可変焦点レンズの場合、袋に液体を充填してなる液体レンズであり、上述したように曲率変形が微小であり、また、袋から液体が漏れ出し、このレンズが組み込まれている機器への影響を考慮すると液体レンズを用いないことが望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−114608号公報
【特許文献2】特開2008−58841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の実情、問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、機構部品を少なくしたシンプルで小サイズのものであり、広い温度範囲で使用可能であり、高い光学特性(焦点可変範囲)を有し、低い消費電力、電圧で駆動でき、高い耐衝撃性を有する可変焦点レンズを提供することにある。また、この可変焦点レンズを用いたオートフォーカス装置、撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る可変焦点レンズは、
電気的駆動源によって駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの作用力が作用する弾性体と、を少なくとも備え、
前記アクチュエータの作用力を前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、アクチュエータの作用力を弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を例えば平凹レンズ、平凸レンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、片面凸−片面凹レンズ等に適宜変位させて、レンズの焦点を可変することができる。
【0009】
また、上記の本発明の一実施形態として、前記アクチュエータが高分子アクチュエータ、ピエゾ素子アクチュエータ、または形状記憶合金アクチュエータのうちから選択されるアクチュエータであって、前記アクチュエータは電気的駆動源によって屈曲変形するように構成され、
前記アクチュエータの屈曲力を伝達する中間体と、
前記弾性体を収納する収納手段と、をさらに備え、
前記アクチュエータの屈曲力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、可変焦点レンズは、電気的駆動源によって屈曲変形するアクチュエータと、前記アクチュエータの屈曲力を伝達する中間体と、前記中間体を介して前記屈曲力が作用する弾性体と、前記弾性体を収納する収納手段とを備えている。アクチュエータとしては、高分子アクチュエータ、ピエゾ素子アクチュエータ、または形状記憶合金アクチュエータのうちから選択される。そして、電圧印加等の電気的駆動によって、アクチュエータを屈曲変形させ、この時の屈曲力を中間体を介して弾性体に作用させる。弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって部分的に体積変化が規制されているため、変位しやすい部分に弾性体が変位する。この変位によって、弾性体が、連続的に徐々に例えば凸形状、あるいは凹形状を形成していくことで、この弾性体に入射する光の焦点位置を可変することができる。よって、機構部品を少なくしたシンプルで小サイズのものであり、広い温度範囲で使用可能であり、高い光学特性(焦点可変範囲)を有し、低い消費電力、電圧で駆動でき、高い耐衝撃性を有する可変焦点レンズを提供することができる。
【0011】
また、上記の本発明の一実施形態として、前記アクチュエータが電磁気式駆動アクチュエータであって、前記アクチュエータは電気的駆動源によって直動駆動するように構成され、
前記アクチュエータの直動駆動を伝達する中間体と、
前記弾性体を収納する収納手段と、を備え、
前記アクチュエータの直動駆動を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、可変焦点レンズは、電気的駆動源によって電気的駆動源によって直動駆動する電磁気式駆動アクチュエータと、前記アクチュエータの直動駆動を伝達する中間体と、前記中間体を介して前記直動駆動が作用する弾性体と、前記弾性体を収納する収納手段とを備えている。そして、電流等の電気的駆動によって、電磁気式駆動アクチュエータを直動駆動させ、この時の直動駆動を中間体を介して弾性体に作用させる。弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって部分的に体積変化が規制されているため、変位しやすい部分に弾性体が変位する。この変位によって、弾性体が、連続的に徐々に例えば凸形状、あるいは凹形状を形成していくことで、この弾性体に入射する光の焦点位置を可変することができる。
【0013】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの一実施形態として、前記中間体に孔が形成され、前記高分子アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記中間体の孔から突出させることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって体積変化が規制されているため、中間体によって押された弾性体の変位は、中間体の孔から突出し(はみ出し)、所定の曲率を有する球体の一部を形成する。すなわち、中間体側に凸の平凸形状のレンズを形成する。この突出量(はみ出し量)は、アクチュエータの屈曲力および屈曲変位量あるいは直動駆動作用力および直動変位量によって制御可能であり、すなわち、アクチュエータによる弾性体への押し圧および押し量を制御することで球体曲率半径を自由に変化させることができる。
【0015】
弾性体は、透明であり、押し圧あるいは引っぱりによって変位する弾性を有するものであればよい。また、中間体は、孔が設けられ、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力を弾性体に作用させるに適した剛性を有している材料であることが好ましい。また、収納手段は、光の入射部分において少なくとも透明であり、弾性体を収納し、その体積変化を規制する機能を有していることが必要であり、弾性体を収納した際に隙間が生じないほど好ましい。
【0016】
また、中間体の表面形状としては、例えば、いずれか一方あるいは両面が平坦であること、またはいずれか一方あるいは両面が曲面を有していることが挙げられる。弾性体に当接する中間体の表面を凸曲面あるいは凹曲面に形成した場合、凸曲面あるいは凹曲面に応じて、弾性体の表面が変形する。なお、中間体と弾性体が密接できるように、それらを挟む空間の空気を逃がすための小孔あるいは溝を備えていることが好ましい。また、弾性体に当接する中間体の表面と異なる表面の形状を平坦あるいは曲面(凸曲面あるいは凹曲面)に構成できる。中間体の表面に形成された凸曲面あるいは凹曲面の曲率を適宜設定することができ、また、凸曲面あるいは凹曲面を一つでなく複数設けることができる。
【0017】
また、収納手段の表面形状としては、例えば、いずれか一方あるいは両面が平坦であること、またはいずれか一方あるいは両面が曲面を有していることが挙げられる。弾性体に当接する収納手段の表面を凸曲面あるいは凹曲面に形成した場合、凸曲面あるいは凹曲面に応じて、弾性体の表面が変形する。なお、収納手段と弾性体が密接できるように、それらを挟む空間の空気を逃がすための小孔あるいは溝を備えていることが好ましい。また、弾性体に当接する収納手段の表面を凸曲面あるいは凹曲面に形成した場合、当該当接する弾性体の表面もそれに対応して凹曲面あるいは凸曲面に形成することができる。また、弾性体に当接する収納手段の表面と異なる表面の形状を平坦あるいは曲面(凸曲面あるいは凹曲面)に構成できる。収納手段の表面に形成された凸曲面あるいは凹曲面の曲率を適宜
設定することができ、また、凸曲面あるいは凹曲面を一つでなく複数設けることができる。
【0018】
また、中間体と収納手段の表面形状は、レンズの仕様に応じて、適宜組み合わせることができ、例えば、弾性体に近接する中間体の表面形状を平坦とし、弾性体に近接する収納手段の表面形状を曲面とでき、また、その逆の態様でもよく、両方を曲面としてもよい。さらには、曲面形状も凸曲面あるいは凹曲面をレンズ仕様に応じて設定できる。
【0019】
また、後述のように中間体にあるいは収納手段に孔を設けた場合において、上述の通り、中間体と収納手段の表面形状を平坦あるいは曲面を有するように組み合わせることができる。
【0020】
また、中間体をレンズ形状(平凸、両凸、片面凹−片面凸)に構成することができる。また、弾性体に接する収納手段の形状をレンズ形状(平凸、両凸、片面凹−片面凸)に構成することができる。
【0021】
また、中間体と収納手段のいずれか一方、あるいは両方を、レンズフィルター部材で構成することができる。レンズフィルター部材としては、例えば、偏光フィルター、減光フィルター、色温度変換・色補正フィルター、変則反射除去フィルター、色彩強調・効果用フィルター、レンズ保護用フィルター、ホワイトバランス取得用フィルター等の機能を有するものが例示される。
【0022】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの他の一実施形態として、前記収納手段に孔が形成され、前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記収納手段の孔から突出させることを特徴とする。
【0023】
この構成による可変焦点レンズは、上記の可変焦点レンズと異なり中間体に孔を設けるかわりに、収納手段に孔を設けた構成である。弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって体積変化が規制されているため、中間体によって押された弾性体の変位は、収納手段の孔から突出し(はみ出し)、所定の曲率を有する球体の一部を形成する。すなわち、収納手段側に凸の平凸形状のレンズを形成する。
【0024】
中間体は、透明であり、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力を弾性体に作用させるに適した剛性を有している材料であることが好ましい。また、収納手段は、孔が設けられ、弾性体を収納し、その体積変化を規制する機能を有していることが必要であり、弾性体を収納した際に隙間が生じないほど好ましい。
【0025】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの他の一実施形態として、前記中間体および前記収納手段のそれぞれに孔が形成され、前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を記中間体の孔および前記収納手段の孔から突出させることを特徴とする。
【0026】
この構成による可変焦点レンズは、中間体および収納手段に孔を設けた構成である。それぞれの孔の直径は同じであることが好ましい。そして、弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって体積変化が規制されているため、中間体によって押された弾性体の変位は、中間体および収納手段のそれぞれの孔から均等に突出し(はみ出し)、所定の曲率を有する球体の一部を形成する。すなわち、中間体側および収納手段側に凸の両凸形状のレンズを形成する。
【0027】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの他の一実施形態として、前記弾性体の周部部分と前記中間体を結合し、
前記弾性体と前記中間体の結合面とは異なる面において、前記弾性体と前記収納手段を結合し、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体に作用させて、当該中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成することを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、前記弾性体の周部部分と前記中間体を結合し、前記弾性体と前記中間体の結合面とは異なる面において、前記弾性体と前記収納手段を結合している構成である。弾性体と収納手段との結合は、部分的であってもよく、全体的であってもよい。中間体と弾性体の結合手段としては、接着剤が好ましい。弾性体と収納手段の結合手段としては、透明の接着剤が好ましい。そして、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力を前記中間体に作用させて、当該中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成し、この窪みの曲率半径を変化させることができる。すなわち、弾性体の中央部分に凹形状の平凹形状のレンズを形成することができる。
【0029】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの他の一実施形態として、
第1のアクチュエータを第1の中間体に作用させ、第2のアクチュエータを第2の中間体に作用させるように構成し、
前記弾性体の周部分と前記第1の中間体を結合し、
前記弾性体と前記第1の中間体との第1の結合面とは異なる面において、当該弾性体の周部分と前記第2の中間体を結合し、
前記第1および第2のアクチュエータの作用力をそれぞれ前記第1および第2の中間体に作用させて、当該第1および第2の中間体を当該弾性体とのそれぞれの結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の両面の中央部分に窪みを形成することを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、第1のアクチュエータを第1の中間体に作用させ、第2のアクチュエータを第2の中間体に作用させるように構成し、前記弾性体の周部分と前記第1の中間体を結合し、前記弾性体と前記第1の中間体との第1の結合面とは異なる面において、当該弾性体の周部分と前記第2の中間体を結合している構成である。それぞれの中間体と弾性体の結合手段としては、接着剤が好ましい。そして、第1および第2のアクチュエータの屈曲力をそれぞれ第1および第2の中間体に作用させて、当該第1および第2の中間体を当該弾性体とのそれぞれの結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の両面の中央部分に窪みを形成し、それぞれの窪みの曲率半径を変化させるができる。すなわち、弾性体の両面の中央部分に凹形状の両凹形状のレンズを形成することができる。第1、第2のアクチュエータとしては、高分子アクチュエータ、ピエゾ素子アクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータまたは電磁気式駆動アクチュエータ等のうちから選択され、両方とも同じ種類のアクチュエータでもよく、それぞれ異なる種類のアクチュエータの組み合わせでもよい。
【0031】
また、本発明の実施形態として、高分子アクチュエータは、屈曲変形する(曲げ挙動)する高分子アクチュエータであって、例えば、イオン伝導アクチュエータまたは導電性高分子アクチュエータが挙げられる。イオン伝導アクチュエータとしては、イオン交換樹脂層と、このイオン交換樹脂層の表面に相互に絶縁状態で形成された金属電極層とを備えたものが例示される。また、導電性高分子アクチュエータとしては、バイモルフタイプのアクチュエータが例示される。このバイモルフタイプの構成は、例えば、駆動電解液を含む多孔質基材の両面に金属電極層を形成し、これを介してそれぞれに導電性高分子層が構成されているものである。
【0032】
また、本発明の実施形態として、電磁気式駆動アクチュエータをボイスコイルモータで構成し、当該ボイスコイルモータの直動駆動するプランジャー部を前記中間体と結合することを特徴とする。
【0033】
また、本発明の実施形態として、アクチュエータとしてピエゾ素子を用いる場合、屈曲変形するバイモルフタイプのピエゾ素子を用いて、電気的駆動原により屈曲変形させるように構成することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の実施形態として、アクチュエータとして形状記憶合金を用いる場合、薄板状に成形し、電気的駆動原により加熱変形させて屈曲変形させるように構成することを特徴とする。
【0035】
また、上記の可変焦点レンズは、可変焦点レンズ自体の小型化が可能であり、例えば全体の平面視サイズを5mm程度に可能であるため、内視鏡のオートフォーカスレンズに用いることができる。
【0036】
また、上記の平凹形状あるいは両凹形状、平凸形状あるいは両凸形状、凹凸形状可能構成の可変焦点レンズは、単独で用いることもでき、また、それらを組み合わせて配置することで、一群の可変焦点レンズを構成できる。
【0037】
また、上述の可変焦点レンズに、レンズあるいはレンズフィルターをさらに配置して、レンズ群を構成することができる。
【0038】
また、他の本発明に係るオートフォーカス装置は、上記の可変焦点レンズを用いた構成である。上記記載の可変焦点レンズにおいて、オートフォーカス機能を発揮させるために、高分子アクチュエータへの電圧印加を制御する制御部と、可変焦点レンズから入射される像を撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像された画像を画像解析しピント合わせを判定する判定部と、を備え、被写体の動きに合わせて、制御部は、判定手段でピント合わせが実行されるように高分子アクチュエータへの電圧印加を制御する構成である。
【0039】
また、他の本発明に係る撮像装置は、上記の可変焦点レンズ、あるいはオートフォーカス装置を用いて構成される。撮像装置として、カメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、カメラ付携帯電話、CCDカメラ、CMOSカメラ等が例示される。特にカメラ付携帯電話等のカメラ付小型情報端末に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(アクチュエータの構成)
高分子アクチュエータの形状は、特に制限されないが、弾性体形状が円柱状の場合、例えば、菊座形状、リング状、短冊状が例示できる。円柱状弾性体に対し、菊座形状の一枚一枚の花弁が片持ち梁の湾曲挙動として作用する(例えば、図2参照)。かかる形状の作製は、高分子アクチュエータをシート状に作製し、レーザー等のカッティング手段で成形することで実現でき、あるいは、高分子アクチュエータを所望の形状に作製するようにもできる。また、ピエゾ素子アクチュエータおよび形状記憶合金の形状も上述と同様に構成できる。以下においては高分子アクチュエータについて詳述する。
【0041】
(イオン伝導アクチュエータ)
イオン伝導アクチュエータは、イオン交換樹脂層の表面に金属電極層が形成された構造を有しており、更に詳しく言うと、対向する金属電極層の間に、イオン交換樹脂と、塩を含有する分極性有機溶媒またはイオン性液体である液状有機化合物とが含まれるものである。原理的には、イオン交換樹脂に金属電極を通じて、当該イオン交換樹脂に電位差が与えられると、イオン交換樹脂に含まれている液状有機化合物中のイオン性物質が、いずれかの電極方向に移動することにより、変形が生じる現象を利用するものである。
【0042】
(イオン交換樹脂)
本発明に用いる高分子アクチュエータ素子のイオン交換樹脂は、特に限定されるものではなく、公知のイオン交換樹脂を用いることができる。現に効果が確認されたのは、アクチュエータのイオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂のものである。ただし、イオン交換樹脂が陽イオン型でも陰イオン型でも電位差の与え方を変更することで同様の効果が期待できる。陽イオン交換樹脂を用いる場合には、ポリエチレン、ポリスチレン、フッ素樹脂などにスルホン酸基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入したものを用いることができる。このような樹脂としては、例えばパーフルオロスルホン酸樹脂(商品名「Nafion」、DuPont社製)、パーフルオロカルボン酸樹脂(商品名「フレミオン」、旭硝子社製)、ACIPLEX(旭化成工業社製)、NEOSEPTA(トクヤマ社製)を用いることができる。
【0043】
本発明に用いる高分子アクチュエータの屈曲・変位量を大きくするために、前記イオン交換樹脂は柔軟性を有していることが好ましい。イオン交換樹脂に柔軟性を付与するため、液状有機化合物によってイオン交換樹脂を膨潤させる。前記イオン交換樹脂は、膨潤した状態となることで、ゲル電解質となることができる。前記膨潤の度合いは、特に限定されるものではないが、前記高分子アクチュエータの膨潤度、つまり、前記高分子電解質が乾燥した状態での厚さに対して高分子アクチュエータの膨潤した状態での厚さの増加率が、3〜200%であることが好ましく、5〜60%であることがより好ましい。前記膨潤度が3%未満である場合には、変位屈曲性能が劣り、前記膨潤度が200%よりも大きい場合にも、変位屈曲性能が劣り、さらに大きく引張り強度が低下することとなってしまう。なお、前記有機化合物は、イオン交換樹脂中に含まれるが、金属電極が多孔性である場合には、前記溶媒の一部が、塩とともに前記金属電極に含まれても良い。
【0044】
(液状有機化合物)
本発明に用いられる液状有機化合物には、塩を含有する分極性有機溶媒か、イオン性液体を用いる。イオン性液体は単独で用いることができるが、分極性有機溶媒の場合には、電荷のキャリアとなるイオンを含む塩が必要とされる。ただし塩として前記イオン性液体を用いてもよい。これらの液状有機化合物であれば、イオン交換樹脂に電位差が与えられた場合、容易に当該イオン交換樹脂内での移動が生じるからである。液状有機化合物は、常温常圧において液状の有機化合物であり、特に、180℃以上の沸点または分解温度を有するものが好ましい。この場合、溶媒の気化が起こりにくくなる。
【0045】
(分極性有機溶媒)
前記分極性有機溶媒は、180℃以上の沸点または分解温度を有する有機化合物であることが好ましいが、特に245℃以上の沸点を有する分極性有機溶媒であることがより好ましい。好ましい分極性有機溶媒の具体例として、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン又はこれらの混合物を挙げることができる。中でもジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン又はこれらの混合物であることが特に好ましい。
【0046】
前記分極性有機溶媒に含まれる塩は、当該分極性有機溶媒に溶解しうる塩であれば特に制限されるものではないが、特に前記イオン交換樹脂がカチオンと対イオンを形成する場合には、1〜3価のカチオンの塩を用いることができ、Na+、K+、Li+等の1価のカチオンを用いることが大きな屈曲若しくは変位をすることができるために好ましく、イオン半径の大きなアルキルアンモニウムイオンを用いることがより大きな屈曲若しくは変位をすることができるために更に好ましい。前記アルキルアンモニウムイオンとしては、CH3N+H3、C2H5N+H3、(CH3)2N+H2、(C2H5)2N+H2、(CH3)3N+H、(C2H5)3N+H、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、(C4H9)4N+、H3N+(CH2)4N+H3、H2C=CHCH2N+HCH3、H3N+(CH2)4N+H2(CH2)4N+H3、HC≡CCH2N+H2、CH3CH(OH)CH2N+H3、H3N+(CH2)5OH、H3N+CH(CH2OH)2、(HOCH2)2C(CH2N+H3)2、C2H5OCH2CH2N+H3や脂肪族炭化水素を置換基として備えるアンモニウムイオン、または官能基として炭化水素の他に脂環式の環状炭化水素をも有するアンモニウムイオンを用いることができる。このとき、前記の塩の濃度としては、イオン交換樹脂の官能基と等量以上の濃度として含まれていればよく、十分な屈曲乃至変位を得るために0.01〜10mol/lであることが好ましく、0.1〜1.0mol/lであることがより好ましい。
【0047】
(イオン性液体)
前記イオン性液体の好ましい具体例としては、テトラアルキルアンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、及びピペリジニウムイオンからなる群より少なくとも一種選ばれたカチオンと、PF6−、BF4−、AlCl4−、ClO4−、及び下式(1)で表されるスルホニウムイミドアニオンからなる群より少なくとも一種選ばれたアニオンとの組み合わせからなる塩を挙げることができる。下式(1)中、n及びmは任意の整数である。
(CnF(2n+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)N− (1)
前記テトラアルキルアンモニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウムを用いることができる。
【0048】
前記イミダゾリウムカチオンは、ジアルキルイミダゾリウムイオン及び/またはトリアルキルイミダゾリウムイオンを用いることができる。例えば、前記イミダゾリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンを例示することができる。
【0049】
前記アルキルピリジニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、N−ブチルピリジニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムを例示することができる。
【0050】
前記ピラゾリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,2−ジメチルピラゾリウムイオン、1−エチル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムイオンを例示することができる。
【0051】
前記ピロリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピロリウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリウムイオンを例示することができる。
【0052】
前記ピロリニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,2−ジメチルピロリニウムイオン、1−エチル−2−メチルピロリニウムイオン、1−プロピル−2−メチルピロリニウムイオン、1−ブチル−2−メチルピロリニウムイオンを例示することができる。
【0053】
前記ピロリジニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピロリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムイオンを例示することができる。
【0054】
前記ピペリジニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピぺリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピぺリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピぺリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピぺリジニウムイオンを例示することができる。
【0055】
前記イオン性液体は、上記アニオンと上記カチオンとの組み合わせが特に限定されるものではないが、例えば、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホイミド(EMITFSI)、1−メチル−3−イミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIBF4)、1−メチル−3−イミダゾリウムヘキサフルオロリン酸(EMIPF6)、トリメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホイミド、1−
ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロリン酸、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホイミドを用いることができる。
【0056】
(金属電極)
本発明においてイオン交換樹脂の表面には、当該イオン交換樹脂に電位差を与えることができるように、対向する位置に一組以上の金属電極が設けられている。金属電極に用いられる金属は、水銀のような液体金属を除き、導電性のよい個体金属であれば制限なく用いることができ、また合金であってもよい。用いるイオン交換樹脂や液状有機化合物など種類によって、それぞれ適当な金属を選ぶことができる。
【0057】
金属電極が対向するとは、一組の金属電極が平行を保って存在する状態を理想とするものである。ただし、両電極は完全に平行である必要はなく、当該両金属電極に電圧を与えることでアクチュエータ素子が変位できる限りにおいて、平行から多少ずれていてもよい。ただし、平行からずれるに従って、クーロン量あたりの屈曲や変形の効率に変化が生じる。
【0058】
一組の金属電極が平行を保って存在する状態にするには、イオン交換樹脂の形状を平行な平面側壁を有する板形状またはシート形状として、この平行に対向する前記平面側壁表面に、対となる金属電極をメッキ法、中でも無電解メッキ法で設けることが好ましい。イオン交換樹脂の表面に無電解メッキ法で金属電極になりうる金属膜を形成した場合、イオン交換樹脂と金属電極の接触面積が大きくなり、このためアクチュエータとしての屈曲や変位の量も大きくできるからである。
【0059】
(被覆樹脂)
本発明に用いる高分子アクチュエータは、被覆をせずに長時間駆動することができるが、更に、可撓性を有する樹脂で被覆されてもよい。前記樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂及び/又はシリコン樹脂を用いることができる。前記ポリウレタン樹脂は、特に限定されるものではないが、柔軟な熱可塑性ポリウレタンを用いることが、柔軟度が大きく密着性が良好であるために特に好ましい。柔軟な熱可塑性ポリウレタンとしては、商品名「アサフレックス 825」(柔軟度200%、旭化成社製)、商品名「ペレセン 2363−80A」(柔軟度550%)、「ペレセン 2363−80AE」(柔軟度650%)、「ペレセン 2363−90A」(柔軟度500%)、「ペレセン 2363−90AE」(柔軟度550%)、(以上、ダウ・ケミカル社製)を用いることができる。また、前記シリコン樹脂は、特に限定されるものではないが、柔軟度が50%以上である樹脂が、柔軟度が大きいので密着性が良好であるために、特に好ましい。前記シリコン樹脂としては、例えば、「シラシール3FW」、「シラシールDC738RTV」、「DC3145」、及び「DC3140」(以上、ダウコーニング社製)を用いることができる。なお、本願において、柔軟度とは、ASTM D412に準拠する引張破断伸び(Ultimate Elongation%)をいうものである。
【0060】
(導電性高分子アクチュエータ)
導電性高分子アクチュエータとしては、屈曲挙動を示すバイモルフタイプの構造が例示できる。バイモルフタイプは、導電性高分子膜/基材/導電性高分子膜の3層構造、導電性高分子膜/金属電極/基材/金属電極/導電性高分子膜の3層の5層構造が例示される。以下に、各々の構成について詳述する。
【0061】
(導電性高分子材料)
本発明の導電性高分子は、その膜形成体が印加電圧によって伸縮可能であれば、特に制限されず、例えば、分子鎖にピロールおよび/またはピロール誘導体を含むものが好ましい。
【0062】
また、上記導電性高分子は、ドーパントとしてのアニオンを、該導電性高分子へのドーピングおよび脱ドーピングすることができるものであれば、特に限定されるものではない。上記ドーパントは、必要とされる電解伸縮量や用途等に応じて、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−、過塩素酸イオンやパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。
【0063】
特に、上記導電性高分子として、上記導電性高分子が、下記式(1)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンがドープされた膜状導電性高分子を用いること、
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (1)
〔上記式(1)において、mおよびnは任意の整数。〕、
または、上記導電性高分子として、下記式(2)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンがドープされた膜状導電性高分子を用いること、
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (2)
〔上記式(2)において、l、mおよびnは任意の整数。〕、が、より速い駆動速度を得ることができるために好ましい。
【0064】
(基材)
本発明の基材は、その面方向での伸縮が可能な素材であれば特に制限されず、例えば、不織布、紙、布、綿、メンブレン素材、織物素材、編み物素材等が例示される。また、基材は、絶縁性を有し、電解液を含浸、又は液移動可能に保持できることが好ましい。また、基材の厚み、硬度は、直動変位機能を発揮するように設計されていれば、特に制限されない。
【0065】
また、基材としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロースアセテートなどの多孔質基材(多孔質支持体)が好ましい。なかでも、上記多孔質基材(多孔質支持体)としては、化学的安定性や柔らかさやアクチュエータ素子の繰り返しの駆動における耐久性の観点から、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(多孔質PTFE)などをもちいることが特に好ましい。また空中で駆動させる場合は、電解液を保持している層(多孔質基材層(多孔質支持体層))のイオン導電率が高いことがより好ましく、また、空孔率は可能な限り高い方が好ましい。
【0066】
(駆動電解液)
本発明に用いられる駆動電解液は、上記高分子アクチュエータ素子が電圧印可により駆動するための電解質を含み、上記電解質を溶解するための溶媒として用いられる。本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として有機溶媒、水、有機溶媒と水の混合溶液を用いることができる。水本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として有機溶媒および酸の混合溶液、または有機溶媒、水、および酸の混合溶液を用いることができる。また、上記導電性高分子が酸に接触処理したものを用いる場合では、上記電解質を溶解する溶媒として、有機溶媒、または有機溶媒および水の混合溶液を用いることができる。駆動電解液としてこれらの混合溶液を含むことにより、上記高分子アクチュエータ素子は、一定の電圧を与えた状態における時間に対する伸縮量(駆動速度)を測定した場合に、上記駆動電解液中で大きな駆動速度を示すことができる。
【0067】
また、本発明においては、上記有機溶媒が、エステル結合、カーボネート結合、およびニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合または官能基を含む極性有機化合物であることが好ましい。
【0068】
上記有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、電気化学の反応場として用いることができる溶媒であることが好ましい。上記極性有機化合物としては、たとえば、γ−ブチロラクトン、α―メチル−γ−ブチロラクトン(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、およびアセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)をあげることができる。上記極性有機化合物は速い伸縮速度と大きな最大伸縮率を得ることができるために好ましい。なかでも、たとえば、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、又はエチレンカーボネイトなどが好ましく、バランスの良い駆動性能と共に、より長期の耐久性を得ることができる。
【0069】
また、上記混合溶媒に水を含む場合、水と有機溶媒との混合比は、特に限定されるものではない。上記駆動電解液の溶媒として水を含む混合溶媒を用いた場合には、有機溶媒のみを用いた場合に比べて通常2倍以上の駆動速度の向上をすることができる。また、上記有機溶媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
上記駆動電解液は、導電性高分子や有機溶媒の種類により、上記混合比を特定することが難しい。有機溶媒の導電性高分子を膨潤させる能力等により、駆動速度を向上させるための有機溶媒の最小値は、上記有機溶媒の種類に依存することになる。たとえば、プロピレンカーボネートについては、特級試薬では水の含有量が0.005%であることから、水と有機溶媒との混合比を0.1:99.9とすることもできる。上記混合溶媒における水と有機溶媒との好適な混合比の範囲は、容量比で、水含有比下限が0.5、1.0、5.0、10または20から選ばれる値から、水含有比下限上限が99.5、99.0、95.0、90.0、または80.0から選ばれる範囲を、有機溶媒の種に応じて、選ぶことができる。なお、上記混合比は、ガスクロマトグラフィー法を用いた測定方法、特に水分含有率が少ない場合にはカールフィッシャー法を用いた測定方法を用いることにより、駆動電解液を分析することにより求めることができる。
【0071】
たとえば、上記有機溶媒がプロピレンカーボネートである場合には、水とプロピレンカーボネートとの混合比が容量比で25:75〜75:25であることが、導電性高分子への電圧印可による駆動速度がより速くなるため好ましい。上記混合溶媒は、上記有機溶媒が複数種用いられていてもよく、この場合には、上記混合比は、水の重量と全有機溶媒の合計重量との比で計算される。
【0072】
上記水は、特に限定されるものではないが、純水、蒸留水もしくはイオン交換水であることが、金属イオンや塩化物イオン等による電解伸縮への阻害因子が含まれ難いために好ましい。
【0073】
また、上記の駆動電解液には、電解質としてアニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。また、上記アニオンは、たとえば、Na+、K+、Li+等とカチオンと対イオンを形成した電解質塩を用いてもよい。
【0074】
上記電解質塩としては、たとえば、上記アニオンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウムパーフルオロアルキルスルホニルイミド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのリチウム塩、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのテトラブチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0075】
上記電解質として電解質塩が加えられる場合、上記駆動電解液100重量部に対して、上記電解質塩が1〜90重量部含まれることが好ましく、5〜75重量部含まれることがより好ましく、10〜50重量部含まれることが特に好ましい。
【0076】
また、上記駆動電解液には酸を含む混合溶液を用いることもできる。この酸としては、特に限定されるものではないが、一価の強酸であることが好ましい。
【0077】
上記酸としては、たとえば、(CF3SO2)2NH、(C2F5SO2)2NH、(CF3SO2)(C2F5SO2)NHなどのパーフルオロアルキルスルホニルイミド、(CF3SO2)3CH、(C2F5SO2)3CH、(CF3SO2)(C2F5SO2)2CHなどのパーフルオロアルキルスルホニルメチド、硝酸などの無機酸などが好ましいものとしてあげられる。
【0078】
上記酸は単独で用いてもよいし、また2種以上を混合して使用してもよいが、上記駆動電解液のpHが0〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。上記pHが4以上であると十分な添加効果が得られにくく、一方、上記pHが0以下では溶媒が分解してしまうおそれがある。なお、上記導電性高分子が酸に接触処理したものを用いる場合では、特に酸を駆動電解液に含まなくてもよい。
【0079】
さらに、上記駆動電解液には、アニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。これらのアニオンを用いた場合であっても、上記混合溶媒を用いることにより、導電性高分子を含む高分子アクチュエータ素子の駆動速度を向上することができる。
【0080】
特に、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記高分子アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(3)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(3)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含むことがより好ましい。
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (3)
〔上記式(3)において、mおよびnは任意の整数。〕
【0081】
さらに、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記高分子アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(4)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(4)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含むことがより好ましい。
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (4)
〔上記式(4)において、l、mおよびnは任意の整数。〕
【0082】
これらのドーパントイオンを含むことにより、上記導電性高分子のバルク中に上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが取り込まれ、または放出されて、導電性高分子が大きな伸縮運動をすることができるので、上記高分子アクチュエータ素子は、従来の導電性高分子の電解伸縮方法に比べて、速い駆動速度を示すことができる。
【0083】
また、本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として常温常圧下で液状の非イオン性有機化合物を含む溶液を用いることができる。上記非イオン性有機化合物は、イオン性官能基やイオン性部位を分子構造中に有していないものであれば特に限定されず適宜用いることができる。上記有機化合物としては、電荷のキャリアとなるイオンを含む塩の溶媒となることができる有機化合物、または電荷のキャリアとなることができる有機化合物であればよい。上記非イオン性有機化合物は、180℃以上の沸点または分解温度を有し、常温常圧下で液状であることが好ましく、さらに溶媒としての機能も有することが好ましい。また、245℃以上の沸点を有する有機溶媒であることがより好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
上記非イオン性有機化合物としては、たとえば、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、エチレンカーボネイト、ポリエーテル化合物などをあげることができる。なかでも、たとえば、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、又はポリエーテル化合物などが好ましく、さらには、ポリエーテル化合物を用いることが、バランスの良い駆動性能と共に、より長期の耐久性を得ることができるため、特に好ましい。
【0085】
上記非イオン性有機化合物は単独で用いてもよいし、また2種以上を混合して使用してもよいが、配合量としては、電解液100重量部に対して、0.01〜100重量部であることが好ましく、0.05〜50重量部であることがより好ましく、0.1〜30重量部であることがさらに好ましい。0.01重量部未満であると十分な経時的耐久性が得られない場合があり、100重量部を超えると駆動周波数が低下する場合がある。
【0086】
また、駆動電解液には、電解質としてアニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。また、上記アニオンは、たとえば、Na+、K+、Li+等とカチオンと対イオンを形成した電解質塩を用いてもよい。
【0087】
上記電解質塩としては、たとえば、上記アニオンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウムパーフルオロアルキルスルホニルイミド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのリチウム塩、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのテトラブチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0088】
上記電解質として電解質塩が加えられる場合、上記駆動電解液100重量部に対して、上記電解質塩が1〜90重量部含まれることが好ましく、5〜75重量部含まれることがより好ましく、10〜50重量部含まれることが特に好ましい。
【0089】
また、本発明においては、上記駆動電解液中にさらにイオン性液体を含むことができる。イオン性液体は、特に限定されないで用いることができる。なかでも、上記イオン性液体が、テトラアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオンなどのイミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、およびピペリジニウムイオンからなる群より少なくとも一種選ばれたカチオンと、PF6−、BF4−、AlCl4−、ClO4−、および下記式(5)で示されるスルホニウムイミドアニオンからなる群より少なくとも一種選ばれたアニオンとの組合せからなる塩を含むことが好ましい。これらのイオン性液体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO3)N− (5)
[上記式(5)において、mおよびnは任意の整数である。]。
【0091】
さらには、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(6)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(6)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含むことがより好ましい。
【0092】
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (6)
〔上記式(6)において、mおよびnは任意の整数。〕。
【0093】
また、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(7)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(7)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含むことがより好ましい。
【0094】
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (7)
〔上記式(7)において、l、mおよびnは任意の整数。〕。
【0095】
これらのドーパントイオンを含むことにより、上記導電性高分子のバルク中に上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが取り込まれ、または放出されて、導電性高分子が大きな伸縮運動をすることができるので、上記アクチュエータ素子は、従来の導電性高分子の電解伸縮方法に比べて、速い駆動速度を示すことができる。
【0096】
なお、本発明のアクチュエータ素子においては、特定の形状を有し、かつ導電性高分子を含んでなる導電性高分子有形物に含まれるアニオンと同じアニオンが、上記駆動電解液中に含まれることが好ましい。上記アクチュエータ素子に用いられた導電性高分子のバルク中に含まれ、ドーパントとして機能し得るアニオンと同じアニオンが上記作動電解液中に含まれることにより、導電性高分子バルク中への出入りが容易となりやすく、所望の伸縮量の電解伸縮を容易に得ることができる。また、上記駆動電解液中に含まれるアニオンがパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンである場合には、上記駆動電解液中で電解伸縮をさせる導電性高分子有形物の製造用電解液中に含まれるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンとイオン半径が同程度であることが、電解伸縮を容易に行うことができるので好ましい。
【0097】
(導電性高分子アクチュエータの製造方法)
導電性高分子アクチュエータは、電解重合により作用電極上に得られた導電性高分子膜をそのまま用いることができる。また、基材に直接電解重合することで、導電性高分子層(膜)を形成することもできる。また、基材の両面に同時に、導電性高分子層(膜)を電解重合により形成できる。また、基材の片面では密度の高い導電性高分子層(膜)を、その他方の面では密度の低い導電性高分子層(膜)を同時に或いは別々に形成することもできる。かかる場合、導電性高分子層(膜)が導電性高分子アクチュエータに相当し、密度の低い導電性高分子層(膜)は、従動対極に相当する。
【0098】
また、電解重合により直接に基材に導電性高分子層(膜)を形成するのではなく、金属電極層を介して行なうことがより好ましい。金属電極層としては、金、白金、ニッケルなどを用いることができるが、なかでも金、白金などが好ましい。金属電極層は、公知の方法によって基材に形成することができ、例えば、スパッタリングによって基材に電極層を形成することができる。電極層の厚みは、特に制限されない。
【0099】
また、上記電解重合に用いる電解液(導電性高分子製造用電解液)が、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基およびニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合または官能基を含む有機化合物および/またはハロゲン化炭化水素を溶媒として含むことが好ましい。上記の電解液中に上記溶媒を含み、さらに、パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンなどを含むことにより、得られた導電性高分子は、1酸化還元サイクル当たりにおいてより大きな電解伸縮を示すものとなる。
【0100】
上記有機化合物としては、たとえば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン(以上、エーテル結合を含む有機化合物)、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸−t−ブチル、1,2−ジアセトキシエタン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネイト、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、エチレングリコール、ブタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール(以上、ヒドロキシル基を含む有機化合物)、ニトロメタン、ニトロベンゼン(以上、ニトロ基を含む有機化合物)、スルホラン、ジメチルスルホン(以上、スルホン基を含む有機化合物)、およびアセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)をあげることができる。なお、ヒドロキシル基を含む有機化合物は、特に限定されるものではないが、多価アルコールおよび炭素数4以上の1価アルコールであることが、伸縮率が良いためにより好ましい。なお、上記有機化合物は、上記の例示以外にも、分子中にエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基およびニトリル基のうち、2つ以上の結合または官能基を任意の組み合わせで含む有機化合物であってもよい。
【0101】
また、上記導電性高分子製造用電解液に溶媒として含まれるハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の水素が少なくとも1つ以上ハロゲン原子に置換されたもので、電解重合条件で液体として安定に存在することができるものであれば、特に限定されるものではない。上記ハロゲン化炭化水素としては、たとえば、ジクロロメタン、ジクロロエタンをあげることができる。上記ハロゲン化炭化水素は、1種類のみを上記導電性高分子製造用電解液中の溶媒として用いることもできるが、2種以上併用することもできる。また、上記ハロゲン化炭化水素は、上記の有機化合物との混合液として用いてもよく、上記有機溶媒との混合溶媒を上記導電性高分子製造用電解液中の溶媒として用いることもできる。
【0102】
上記電解重合法により得られた導電性高分子のバルク中には、上記電解重合法に用いられた上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが存在することとなる。上記導電性高分子が上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含む上記導電性高分子は、上述のように1酸化還元サイクル当りの伸縮量が大きく、駆動速度(%/s)の値も大きく、しかも、容易に得ることができるので好ましい。たとえば、上記の導電性高分子の有形物を膜状体は、従来の導電性高分子の電解伸縮がその最大の伸縮率が面方向で1酸化還元サイクル当たり10〜15%程度までしか得られていなかったのに対して、ドーパントとして上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを導電性高分子のバルク中に含むことにより、長さ方向において、1酸化還元サイクル当たり16%以上、特に20%以上の優れた最大の伸縮率を示すことが可能となる。上記膜状体は、人工筋肉に代表される大きな伸縮率が要求される用途に好適に用いることができる。なお、上記の導電性高分子の有形物は、ドーパントの他に、動作電極としての抵抗値を低下させるために、金属線や導電性酸化物などの導電性材料を適宜含むことができる。
【0103】
上記電解重合法における上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンの電解液中の含有量が特に限定されるものではないが、十分な電解液のイオン導電性を確保するために、パーフルオロアルキルスルホニルイミド塩として、電解液中に1〜40重量%含まれるのが好ましく、2.8〜20重量%含まれるのがより好ましい。また、電解重合法により得られる導電性高分子膜の膜質を向上させるために、トリフルオロメタンスルホン酸塩を電解液中に1〜80%加えた複合電解質を用いることもできる。また、これらのイオンは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0104】
また、上記電解重合法にて用いられる電解液(導電性高分子製造用電解液)には、さらに、パーフルオロアルキルスルホニルイミド塩を含む以外に、導電性高分子の単量体を含んでいてもよく、さらにポリエチレングリコールやポリアクリルアミドなどの公知のその他の添加剤を含むこともできる。
【0105】
上記電解重合法は、導電性高分子単量体の電解重合として、公知の電解重合方法を用いることが可能であり、定電位法、定電流法および電気掃引法のいずれをも適宜用いることができる。たとえば、上記電解重合法は、電流密度0.01〜20mA cm−2、反応温度−70〜80℃で行うことができ、良好な膜質の導電性高分子を得るために、電流密度0.1〜2mA cm−2、反応温度−40〜40℃の条件下で行うことが好ましく、反応温度が−30〜30℃の条件であることがより好ましい。
【0106】
なお、上記電解重合法に用いられる作用電極は、電解重合に用いることができれば特に限定されるものではなく、ITOガラス電極、炭素電極や金属電極などを適宜用いることができる。上記金属電極は、金属を主とする電極であれば特に限定されるものではないが、Pt、Ti、Ni、Au、Ta、Mo、CrおよびWからなる群より選ばれた金属元素についての金属単体の電極または合金の電極を好適に用いることができる。なかでも、得られた導電性高分子の伸縮率および発生力が大きく、かつ電極を容易に入手できることから、金属電極に含まれる金属種がPt、Tiであることが特に好ましい。なお、上記合金としては、たとえば、商品名「INCOLOY alloy 825」、「INCONEL alloy 600」、「INCONEL alloy X−750」(以上、大同スペシャルメタル社製)を用いることができる。また、対極については公知の電極、たとえばPt、Niを好適に用いることができる。
【0107】
上記電解重合法に用いられる電解液に含まれる導電性高分子の単量体としては、電解重合による酸化により高分子化して導電性を示す化合物であれば特に限定されるものではなく、たとえばピロール、チオフェン、イソチアナフテン等の複素五員環式化合物、ならびにそのアルキル基、オキシアルキル基等の誘導体があげられる。なかでも、ピロール、チオフェン等の複素五員環式化合物、ならびにその誘導体が好ましく、特にピロールおよび/またはピロール誘導体を含む導電性高分子であることが、製造が容易であり、導電性高分子として安定であるために好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0108】
上記アクチュエータ素子において、上記導電性高分層(膜)の厚みは、デバイスの仕様により適宜設計するものであり、例えば0.01〜数百μmの範囲が例示できる。
【0109】
(中間体)
中間体は、アクチュエータの屈曲変化による屈曲力あるいは直動駆動作用力を弾性体に伝達するものである。また他の実施形態として、中間体は弾性体と接着され、アクチュエータの屈曲作用によって、弾性体の表面積を増大させるように機能する。弾性体とアクチュエータの用途に応じて、そのサイズ、材質は決定される。伝達機能の観点からは、中間体は、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力によって変形しない剛性のある材質が好ましく、例えば、ステンレス等の金属、硬質の樹脂等が例示される。また、弾性体が円柱状の場合、中間体も円柱状に形成することが好ましい。また一実施形態として、中間体の外径は、弾性体の外径と同じまたはやや小さいのが好ましく、中間体の円柱の内部に孔(貫通孔あるいは開口部を形成する)が設けられる。また一実施形態として、その孔の径は、後述する弾性体の収納手段の孔(貫通孔あるいは開口部)の径と同じであることが好ましい。厚みは、材質にもよるが変形しない程度の厚みが必要である。また、アクチュエータや弾性体に対して品質劣化等の悪影響を及ぼさない材質が選定される。
【0110】
(弾性体)
弾性体は、レンズ機能を発揮できる程度の透明性を有し、復元性があり、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力で変形する程度の硬度が必要である。さらに、熱や薬品等に対して安定のものがより好ましい。弾性体の材料としては、例えば、シリコーン、フッ素系エラストマー、各種エラストマー、ゴム、ウレタン、高分子ゲル等が例示できる。また、弾性体の硬度は、その材料に応じて、ショア硬さ、針入度(JIS K2207)による測定が可能である。弾性体の形状を円柱状に形成し、中間体からの押し圧に応じて、弾性体の中間体あるいは収納手段の孔から突出させて、球体の一部を形成させ、凸形状のレンズを形成できる。また別実施形態として、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力を中間体に作用させて、中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成し、凹形状のレンズを形成できる。また、弾性体の厚みは、焦点レンズとしての仕様に応じて設定できる。
【0111】
(電気的駆動源)
高分子アクチュエータは、電気的駆動源からの電圧印加によって屈曲変化する。電圧印加方法は、特に制限されず、アクチュエータ体の用途に応じて設定される。また、印加電圧の制御方法は、例えば、正負極の切り替え、電圧値制御、パルス制御、連続印加、断続的印加制御、周波数制御、PID制御、PWM制御等が例示される。また、本発明において、印加する時間(期間)に比例して、弾性体の形状変位が生じている。よって、印加時間を制御することで、弾性体の形状変位量を簡単に制御できる。
【0112】
また、印加電圧は、高分子アクチュエータの素材により異なり、イオン伝導アクチュエータの場合、例えば、−5V〜+5Vの範囲で駆動できる。また、導電性高分子アクチュエータの場合、分解しない範囲での印加が可能である。デバイスのサイズ・性能、電導性高分子アクチュエータの材料、厚み、サイズ等の設計に依存するが、電導性高分子としてポリピロールを用いた場合、その印加電圧は、例えば、ポリピロールが分解しない電圧値以下が望ましく、0.75Vから2Vの範囲が例示される。また、ピエゾ素子アクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、ボイスコイルモータ等に対しても同様に電気的駆動源からの電圧、電流によって駆動できる。
【0113】
(電極部材)
電極部材は、高分子アクチュエータに電圧を印加するために用いられる。その形状及びサイズが特に制限されず、用途に応じて、例えば、円形、方形、多角形、異形、プレート状等を適宜設計できる。また、電極部材は、ソリッド素材、フレキシブル素材で構成でき、アクチュエータ体としての用途に応じた素材を選択できる。また、電極部材は、その機能を発揮するものであれば特に制限されないが、例えば、金属、貴金属が例示される。電極部材は、後述する一対の規制部材の表面に形成され、この一対の規制部材によって、上記の弾性体/中間体/高分子アクチュエータがサンドされていることが好ましい。
【0114】
(収納手段)
収納手段としての規制部材は、例えば、一対の部材を有し、弾性体/中間体/高分子アクチュエータ(あるいは他のアクチュエータ)の順にサンドして固定部材によってそれらを一体に形成するように構成されている。一対の規制部材の内、第1の規制部材は、弾性体及び中間体を収納する収納部が形成され、中間体に対し高分子アクチュエータの屈曲力が作用した場合に、中間体を介して力が弾性体に伝達され、これによって、弾性体が変形する。このとき、第1の規制部材の収納部内壁によって弾性体の半径方向への広がりが規制されるが、中間体の孔あるいは規制部材の収納部底に形成された孔に対しては規制が及ばず、それぞれの孔から弾性体がはみ出し凸形状のレンズを形成する。また、別実施形態として、中間体と弾性体の周部分を結合し、弾性体と規制部材の収納部底を結合し、そして、高分子アクチュエータの屈曲力を中間体に作用させて、当該中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成し、平凹形状のレンズを形成する。一対の規制部材の材料は、特に制限されないが、硬質の樹脂、金属等が好ましい。一対の規制部材のサイズ、形状は、特に制限されないが、光の入射部分は、透明あるいは開口していることが好ましく、可変焦点レンズの用途に応じて適宜設計できる。固定部材は、ボルト・ナット等の機械的固定部材が例示でき、固定部材の代わりに接着剤、溶着、溶接等の固定手段を用いることもできる。また、一対の規制部材を嵌め込み構造、ネジ止め構造に構成することもできる。
【0115】
(用途)
本発明の可変焦点レンズは、例えばオートフォーカス装置、撮像装置等に好適に用いることができる。特にカメラ付携帯電話等のカメラ付小型情報端末に好適である。
【0116】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されず、本発明の技術的思想を同じくする全ての形態、態様、製品、部品に及ぶことは言うまでもない。
【0117】
[実施例1]
イオン伝導アクチュエータをシート形状に作製し、レーザー加工によって、菊座形状にカットした。図1に示す、菊座形状のイオン伝導アクチュエータ11は、外径寸法が、縦、横各9.5mm、厚みが0.2mmである。4隅には、ガイドピンが挿入されるピン穴を形成し、中央部には、貫通の開口部を形成し、8枚の花弁がその開口中心に対向するように形成した。
【0118】
ワッシャー12(中間体に相当する)は、その外径が弾性体13の外径と同じであり、ワッシャー12の内径は、4mmとし、収納部底の孔の径と同じである。なお、ワッシャー12の内径又は収納部底の孔径は4mmに限定されず、レンズの仕様に応じて設定される。
【0119】
弾性体13は、透明なシリコーン(フッ素含有)(信越化学社製のSIFEL−8270)を材料として、円柱状に形成した。その厚みは0.8mmである。弾性体13は、基板14(収納手段の一部に相当する)に設けた円形の開口部(その中心部分に貫通部有している)にシリコーンを流しこみ、硬化させて形成した。この際、開口部の中心貫通部分は、プレートでシールしてから、シリコーンを流し込み、次いで、ワッシャー12を、流し込んだシリコーン上面に静置させた。このとき、基板14の開口部内にシリコーンおよびワッシャー12が収納され、ワッシャー12の一部は、開口部からはみだしている。そして、シリコーンが硬化するまで静置し、硬化後に上記プレートを基板14から取り除いた。
【0120】
基板14,15は、その片面で菊座形状のイオン伝導アクチュエータ11と接する部分には、電極膜(銅はく部に金メッキを施してある)が形成されている。基板14,15としては、ガラエポプリント基板を用いた。
【0121】
上記のように作製された弾性体13上にワッシャー12が載置されている。このワッシャー12上に、菊座形状のイオン伝導アクチュエータ11を載置し、次いで、基板15を載置し、それらを一体にするようにガイドピンで組み立て、可変焦点レンズ本体1を作製した。ワッシャー12に対し、菊座形状の一枚一枚の花弁が片持ち梁に当接するように構成される。この片持ち梁が湾曲挙動(イオン伝導アクチュエータ11の屈曲挙動)することによって、ワッシャー12が下方の弾性体13を押し付け、ワッシャー12の孔および基板14の開口部(円形孔)から弾性体13がはみ出し、球体の一部を形成し、両面に凸形状のレンズを実現する。図2に示すように、可変焦点レンズ本体1は、その外径寸法が縦横9.5mm、厚み2.4mmであった。重量は、約0.8g・fであった。
【0122】
基板14,15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図3に示すように、ワッシャー12の孔および基板14の開口部(円形孔)から弾性体13がはみ出し、球体の一部を形成し、両面に凸形状のレンズを形成できたことを確認した。この確認に際し、CCDカメラの撮像手段を用いて、実際に被写体(アルファベットの文字)を撮像し、被写体の焦点が可変したこと、および、それぞれの孔からはみ出した弾性体が球体を形成し、その球体の曲率半径が、電圧印加に従って変化することを確認した。
【0123】
また、この可変焦点レンズ本体1を用いてオートフォーカス装置を構成した。オートフォーカス装置は、オートフォーカス機能を発揮させるために、高分子アクチュエータへの電圧印加を制御する制御部と、可変焦点レンズから入射される像を撮像する撮像手段(例えばCCDカメラ、CMOSカメラ)と、撮像手段で撮像された画像を画像解析しピント合わせを判定する判定部(例えばソフトウエアプログラムとCPU、専用回路等)と、を備え、被写体の動きに合わせて、制御部は、判定手段でピント合わせが実行されるように高分子アクチュエータへの電圧印加を制御する構成である。上記の被写体を可変焦点レンズに対してその相対距離を変え、制御部によって自動的に電圧印加制御を実行し、被写体の移動に応じて、ピント合わせが実現できたこと(オートフォーカス機能)を確認した。
【0124】
[実施例2]
上記実施例1において、基板14に開口部を設けたが、実施例2では、基板14の代わりに開口部が形成されていない両表面が平坦の透明樹脂基板141を用いた。透明樹脂基板141のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。透明樹脂基板141、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図4に示すように、ワッシャー12の孔から弾性体13がはみ出し、球体の一部を形成し、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0125】
[実施例3]
上記実施例1において、ワッシャー12を用いたが、実施例3では、ワッシャー12の代わりに開口部が形成されていない両表面が平坦の透明樹脂板121を用いた。基板14、15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図5に示すように、基板14の開口部(円形孔)から弾性体13がはみ出し、球体の一部を形成し、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0126】
[実施例4]
実施例4では、上記のワッシャー12よりも大径のワッシャー122を用い、基板14の代わりに開口部が形成されていない両表面が平坦の透明樹脂基板141を用いた。透明樹脂基板141のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。ワッシャー122と弾性体13の周部分は、接着剤で固定されている。また、透明樹脂基板141と弾性体13は接着剤で固定されている。透明樹脂基板141、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図6に示すように、ワッシャー122が持ち上げられ、それに伴ってワッシャー122と固定されている弾性体13の周部分も持ち上げられる。弾性体13の一方面は透明樹脂板141と固定されているため、弾性体13は全体的に持ち上がることがなく、そのため、図6に示すように、弾性体13の中央部分が凹形状に窪み、平凹形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0127】
[実施例5]
実施例5では、上記の実施例4の大径のワッシャー122と同じ大径のワッシャー123を弾性体13の他方面に同様に接着剤で固定する。図7に示すように、ワッシャー122には、第1のイオン伝導アクチュエータ11aが作用し、ワッシャー123には、第2のイオン伝導アクチュエータ11bが作用する構成である。第1のイオン伝導アクチュエータ11aは、基板15aと基板142によって固定され、それぞれの基板には、第1のイオン伝導アクチュエータ11aに電圧を印加するための電極膜が形成されている。一方、第2のイオン伝導アクチュエータ11bは、基板15bと基板142によって固定され、それぞれの基板には第2のイオン伝承アクチュエータ11bに電圧を印加するための電極膜が形成されている。基板142、基板15a、15bの一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11a,11bの片持ち梁を屈曲挙動させた。図7に示すように、ワッシャー122、123が弾性体13から離れるように移動し、それに伴ってワッシャー122、123とそれぞれ固定されている弾性体13の周部分も追随する。そのため、図7に示すように、弾性体13の両面の中央部分が凹形状に窪み、両凹形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0128】
[実施例6]
上記実施例1ではワッシャー12を用いたが、実施例6では、ワッシャー12の代わりに開口部が形成されていない両表面が平坦の透明樹脂板124を用いた。また、基板14の代わりに中央部に凹部が形成された透明樹脂基板144を用いた。透明樹脂基板144のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。透明樹脂基板144、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図8に示すように、透明樹脂基板144の凹部に弾性体13の変位部分が充填され、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0129】
[実施例7]
実施例7では、実施例6の両表面が平坦の透明樹脂板124に代わり、中央部に凹部が形成された透明樹脂板125を用いた。透明樹脂基板144、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図9に示すように、透明樹脂板125の凹部と透明樹脂基板144の凹部のそれぞれに弾性体13の変位部分が充填され、両凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0130】
[実施例8]
実施例8では、実施例6の両表面が平坦の透明樹脂板124に代わり、中央部に凸部が形成された透明樹脂板126を用いた。また、中央部に凸部が形成された透明樹脂基板145を用いた。透明樹脂基板145、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図10に示すように、透明樹脂板126の凸部と透明樹脂基板145の凸部のそれぞれが弾性体13にめり込み、それぞれの凸部の周辺に弾性体13の変位部分が移動して、両凹形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0131】
[実施例9]
実施例9では、実施例1の基板14に代わり、弾性体13に接する表面の中央部分に凹部が形成された透明樹脂基板144を用いた。透明樹脂基板144のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。弾性体131は、透明なシリコーン(フッ素含有)(信越化学社製のSIFEL−8270)を材料として、円柱状に形成し、その中央部は、透明樹脂基板144の凹部に対応する形状の凸部形状を有している。透明樹脂基板144、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図11に示すように、ワッシャー12の孔から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、両面に凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0132】
[実施例10]
実施例10では、実施例1の基板14に代わり、弾性体13と接する表面とは異なる表面の中央部分に凸部が形成された透明樹脂基板146を用いた。透明樹脂基板146のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。透明樹脂基板146、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図12に示すように、ワッシャー12の孔から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。これによって、ワッシャー12側に凸レンズで、透明樹脂基板146側に凸形状の組合せレンズが構成できた。
【0133】
[別実施例]
また、別実施例として、実施例9において、弾性体13に接する表面の中央部分に凸部が形成された透明樹脂基板(不図示)を用いた場合、ワッシャー12側に凸レンズで、透明樹脂基板側に凸形状の組合せレンズが構成できる。
【0134】
また、別実施例として、実施例10において、弾性体13に接する表面とは異なる表面の中央部分に凹部が形成された透明樹脂基板(不図示)を用いた場合、ワッシャー12側に凸レンズで、透明樹脂基板側に凹形状の組合せレンズが構成できる。
【0135】
また、別実施例として、実施例3の両面が平坦の透明樹脂板121に代わり、弾性体13と接する表面の中央部分に凸部が形成された透明樹脂板(不図示)を用いた。基板14には円形の開口部が形成されている。基板14、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。これによって透明樹脂板が押され、透明樹脂板の凸形状が弾性体13に突入され弾性体13に凹形状が形成される。一方、基板14の円形開口部から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、透明樹脂板側に凹形状であって、基板14側に凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0136】
また、別実施例として、実施例3の両面が平坦の透明樹脂板121に代わり、弾性体13と接する表面の中央部分に凹部が形成された透明樹脂板(不図示)を用いた。基板14には円形の開口部が形成されている。基板14、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。これによって透明樹脂板が押され、透明樹脂板の凹部に弾性体13が充填され、さらに、基板14の円形開口部から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、透明樹脂板側に凸形状であって、基板14側に凸形状の両凸レンズを形成できたことを確認した。
【0137】
また、別実施例として、実施例3の両面が平坦の透明樹脂板121に代わり、弾性体13と接する表面とは異なる表面の中央部分に凸部が形成された透明樹脂板(不図示)を用いた。基板14には円形の開口部が形成されている。基板14、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。これによって透明樹脂板が押され、基板14の円形開口部から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。よって、透明樹脂板の凸形状レンズと基板14側の凸形状の組合せ両凸レンズが構成できる。
【0138】
また、上記実施例において、透明樹脂板あるいは透明樹脂基板をレンズフィルター部材で構成することができる。また、上記実施例において、透明樹脂板あるいは透明樹脂基板を平凸あるいは両凸レンズ形状または平凹あるいは両凹レンズ形状に構成し、複数のレンズ群の一部として構成できる。また、上記実施例の可変焦点レンズに1以上のレンズを配列し、一体のレンズを構成することができる。
【0139】
また、上記のワッシャー12の孔径と、透明樹脂基板の円形開口の径が同じに限定されない。また、上記ワッシャー12の孔からはみ出して形成される球形の曲率半径と、透明樹脂基板に形成される凸形状あるいは凹形状の曲率半径が同じでもよく、異なっていてもよい。また、透明樹脂基板の開口部からはみ出して形成される球形の曲率半径と、透明樹脂板に形成される凸形状あるいは凹形状の曲率半径が同じでもよく、異なっていてもよい。また、透明樹脂板および透明樹脂基板に形成される凸形状あるいは凹形状の曲率は、一定であってもよく、部分的位置関係において曲率が異なっていてもよい。
【0140】
(他のアクチュエータを用いた実施例)
上記実施例において、アクチュエータとしてバイモルフタイプのピエゾ素子アクチュエータを用い、同様の機構構成として実施したところ、上記実施例と同様に可変レンズを構成できた。
【0141】
アクチュエータとして形状記憶合金アクチュエータを用い、同様の機構構成として実施したところ、上記実施例と同様に可変レンズを構成できた。
【0142】
アクチュエータとしてボイスコイルモータを用い、そのプランジャー部と中間体であるワッシャーあるいは透明樹脂板と結合し、他は同様の機構構成として実施したところ、上記実施例と同様に可変レンズを構成できた。
【0143】
以上の結果から、可変焦点レンズを小型に形成でき、また、オートフォーカス装置、撮像装置としても有効に機能することが確認できた。また、この結果から、可変焦点レンズのサイズをより小さくするように構成できることが分かり、例えば、縦横6.5mm、厚み0.8mmにすることが可能である。また、可変焦点レンズは、他の可変焦点レンズに比較し、小型、軽量、部品点数も少なく、低電力駆動である点で好ましいものであることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図2】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図3】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図4】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図5】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図6】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図7】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図8】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図9】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図10】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図11】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図12】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【符号の説明】
【0145】
1 可変焦点レンズ本体
11 イオン伝導アクチュエータ
12 ワッシャー(中間体)
13 弾性体
14 基板
15 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子アクチュエータ素子を作用させることでレンズの焦点を可変できる可変焦点レンズに関する。また、この可変焦点レンズを用いたオートフォーカス装置、または撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置等のレンズ系において、任意位置にある被写体の焦点調整手法としては、古くはレンズと結像部(例えばフィルム、CCD等)間の距離をネジ等の直動機構を手動や電動(モータ等)で動かし調整していた。また、近年においては、レンズの曲率半径を変化させ、焦点距離を調整する試みがなされている。この場合、例えば、フランスVarioptic社の油と水の境界部を電圧印加で変形させ曲率を与える液体レンズ、或いはアメリカHolochip社の高分子膜を液圧により変形させ曲率を与える液体レンズ、また、ノルウエーPoLight社の高分子膜をピエゾ素子の湾曲で引き上げ変形させ曲率を与える液体レンズ等が知られている。しかし、これらの液体レンズ技術は低い光学特性(曲率変形が微小)、印加電圧が40〜50Vと高電圧であり、機構部品点数も多く、また、使用温度範囲が狭く、高価、サイズ大、耐衝撃特性が低い等の様々な問題を持っている。
【0003】
また、高分子から形成されたレンズと、前記レンズが設置され、光透過性を有する板部と、前記レンズと接するように設置された第1の電極と、前記板部上に、前記レンズと接するように設置された第2の電極と、を備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧が印加されると、前記レンズが前記第1の電極に沿って変形し、前記レンズの曲率が変化することを特徴とする可変焦点レンズが知られている(特許文献1参照)。この可変焦点レンズは、電圧印加によってレンズ自体が変形してその曲率を変え、焦点を可変できる構成である。しかしこの可変焦点レンズの場合、レンズの曲率を変形させるための電圧制御を高精度に行う必要があり、また、レンズを長時間使用した場合の耐久性に問題がある。
【0004】
また、袋状の透明な可撓性膜により形成されると共に内部に透明な液体が充填されたレンズ本体と、前記レンズ本体に一体的に形成され且つ外部より電気的に駆動可能な、前記レンズ本体用のアクチュエータとして機能するイオン導電性高分子・金属接合体とを備え、前記イオン導電性高分子・金属接合体を外部から駆動して前記レンズ本体を変形させることにより、焦点距離を変化させることを特徴とする可変焦点レンズが知られている(特許文献2参照)。しかしこの可変焦点レンズの場合、袋に液体を充填してなる液体レンズであり、上述したように曲率変形が微小であり、また、袋から液体が漏れ出し、このレンズが組み込まれている機器への影響を考慮すると液体レンズを用いないことが望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−114608号公報
【特許文献2】特開2008−58841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の実情、問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、機構部品を少なくしたシンプルで小サイズのものであり、広い温度範囲で使用可能であり、高い光学特性(焦点可変範囲)を有し、低い消費電力、電圧で駆動でき、高い耐衝撃性を有する可変焦点レンズを提供することにある。また、この可変焦点レンズを用いたオートフォーカス装置、撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る可変焦点レンズは、
電気的駆動源によって駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの作用力が作用する弾性体と、を少なくとも備え、
前記アクチュエータの作用力を前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、アクチュエータの作用力を弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を例えば平凹レンズ、平凸レンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、片面凸−片面凹レンズ等に適宜変位させて、レンズの焦点を可変することができる。
【0009】
また、上記の本発明の一実施形態として、前記アクチュエータが高分子アクチュエータ、ピエゾ素子アクチュエータ、または形状記憶合金アクチュエータのうちから選択されるアクチュエータであって、前記アクチュエータは電気的駆動源によって屈曲変形するように構成され、
前記アクチュエータの屈曲力を伝達する中間体と、
前記弾性体を収納する収納手段と、をさらに備え、
前記アクチュエータの屈曲力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、可変焦点レンズは、電気的駆動源によって屈曲変形するアクチュエータと、前記アクチュエータの屈曲力を伝達する中間体と、前記中間体を介して前記屈曲力が作用する弾性体と、前記弾性体を収納する収納手段とを備えている。アクチュエータとしては、高分子アクチュエータ、ピエゾ素子アクチュエータ、または形状記憶合金アクチュエータのうちから選択される。そして、電圧印加等の電気的駆動によって、アクチュエータを屈曲変形させ、この時の屈曲力を中間体を介して弾性体に作用させる。弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって部分的に体積変化が規制されているため、変位しやすい部分に弾性体が変位する。この変位によって、弾性体が、連続的に徐々に例えば凸形状、あるいは凹形状を形成していくことで、この弾性体に入射する光の焦点位置を可変することができる。よって、機構部品を少なくしたシンプルで小サイズのものであり、広い温度範囲で使用可能であり、高い光学特性(焦点可変範囲)を有し、低い消費電力、電圧で駆動でき、高い耐衝撃性を有する可変焦点レンズを提供することができる。
【0011】
また、上記の本発明の一実施形態として、前記アクチュエータが電磁気式駆動アクチュエータであって、前記アクチュエータは電気的駆動源によって直動駆動するように構成され、
前記アクチュエータの直動駆動を伝達する中間体と、
前記弾性体を収納する収納手段と、を備え、
前記アクチュエータの直動駆動を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、可変焦点レンズは、電気的駆動源によって電気的駆動源によって直動駆動する電磁気式駆動アクチュエータと、前記アクチュエータの直動駆動を伝達する中間体と、前記中間体を介して前記直動駆動が作用する弾性体と、前記弾性体を収納する収納手段とを備えている。そして、電流等の電気的駆動によって、電磁気式駆動アクチュエータを直動駆動させ、この時の直動駆動を中間体を介して弾性体に作用させる。弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって部分的に体積変化が規制されているため、変位しやすい部分に弾性体が変位する。この変位によって、弾性体が、連続的に徐々に例えば凸形状、あるいは凹形状を形成していくことで、この弾性体に入射する光の焦点位置を可変することができる。
【0013】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの一実施形態として、前記中間体に孔が形成され、前記高分子アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記中間体の孔から突出させることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって体積変化が規制されているため、中間体によって押された弾性体の変位は、中間体の孔から突出し(はみ出し)、所定の曲率を有する球体の一部を形成する。すなわち、中間体側に凸の平凸形状のレンズを形成する。この突出量(はみ出し量)は、アクチュエータの屈曲力および屈曲変位量あるいは直動駆動作用力および直動変位量によって制御可能であり、すなわち、アクチュエータによる弾性体への押し圧および押し量を制御することで球体曲率半径を自由に変化させることができる。
【0015】
弾性体は、透明であり、押し圧あるいは引っぱりによって変位する弾性を有するものであればよい。また、中間体は、孔が設けられ、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力を弾性体に作用させるに適した剛性を有している材料であることが好ましい。また、収納手段は、光の入射部分において少なくとも透明であり、弾性体を収納し、その体積変化を規制する機能を有していることが必要であり、弾性体を収納した際に隙間が生じないほど好ましい。
【0016】
また、中間体の表面形状としては、例えば、いずれか一方あるいは両面が平坦であること、またはいずれか一方あるいは両面が曲面を有していることが挙げられる。弾性体に当接する中間体の表面を凸曲面あるいは凹曲面に形成した場合、凸曲面あるいは凹曲面に応じて、弾性体の表面が変形する。なお、中間体と弾性体が密接できるように、それらを挟む空間の空気を逃がすための小孔あるいは溝を備えていることが好ましい。また、弾性体に当接する中間体の表面と異なる表面の形状を平坦あるいは曲面(凸曲面あるいは凹曲面)に構成できる。中間体の表面に形成された凸曲面あるいは凹曲面の曲率を適宜設定することができ、また、凸曲面あるいは凹曲面を一つでなく複数設けることができる。
【0017】
また、収納手段の表面形状としては、例えば、いずれか一方あるいは両面が平坦であること、またはいずれか一方あるいは両面が曲面を有していることが挙げられる。弾性体に当接する収納手段の表面を凸曲面あるいは凹曲面に形成した場合、凸曲面あるいは凹曲面に応じて、弾性体の表面が変形する。なお、収納手段と弾性体が密接できるように、それらを挟む空間の空気を逃がすための小孔あるいは溝を備えていることが好ましい。また、弾性体に当接する収納手段の表面を凸曲面あるいは凹曲面に形成した場合、当該当接する弾性体の表面もそれに対応して凹曲面あるいは凸曲面に形成することができる。また、弾性体に当接する収納手段の表面と異なる表面の形状を平坦あるいは曲面(凸曲面あるいは凹曲面)に構成できる。収納手段の表面に形成された凸曲面あるいは凹曲面の曲率を適宜
設定することができ、また、凸曲面あるいは凹曲面を一つでなく複数設けることができる。
【0018】
また、中間体と収納手段の表面形状は、レンズの仕様に応じて、適宜組み合わせることができ、例えば、弾性体に近接する中間体の表面形状を平坦とし、弾性体に近接する収納手段の表面形状を曲面とでき、また、その逆の態様でもよく、両方を曲面としてもよい。さらには、曲面形状も凸曲面あるいは凹曲面をレンズ仕様に応じて設定できる。
【0019】
また、後述のように中間体にあるいは収納手段に孔を設けた場合において、上述の通り、中間体と収納手段の表面形状を平坦あるいは曲面を有するように組み合わせることができる。
【0020】
また、中間体をレンズ形状(平凸、両凸、片面凹−片面凸)に構成することができる。また、弾性体に接する収納手段の形状をレンズ形状(平凸、両凸、片面凹−片面凸)に構成することができる。
【0021】
また、中間体と収納手段のいずれか一方、あるいは両方を、レンズフィルター部材で構成することができる。レンズフィルター部材としては、例えば、偏光フィルター、減光フィルター、色温度変換・色補正フィルター、変則反射除去フィルター、色彩強調・効果用フィルター、レンズ保護用フィルター、ホワイトバランス取得用フィルター等の機能を有するものが例示される。
【0022】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの他の一実施形態として、前記収納手段に孔が形成され、前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記収納手段の孔から突出させることを特徴とする。
【0023】
この構成による可変焦点レンズは、上記の可変焦点レンズと異なり中間体に孔を設けるかわりに、収納手段に孔を設けた構成である。弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって体積変化が規制されているため、中間体によって押された弾性体の変位は、収納手段の孔から突出し(はみ出し)、所定の曲率を有する球体の一部を形成する。すなわち、収納手段側に凸の平凸形状のレンズを形成する。
【0024】
中間体は、透明であり、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力を弾性体に作用させるに適した剛性を有している材料であることが好ましい。また、収納手段は、孔が設けられ、弾性体を収納し、その体積変化を規制する機能を有していることが必要であり、弾性体を収納した際に隙間が生じないほど好ましい。
【0025】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの他の一実施形態として、前記中間体および前記収納手段のそれぞれに孔が形成され、前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を記中間体の孔および前記収納手段の孔から突出させることを特徴とする。
【0026】
この構成による可変焦点レンズは、中間体および収納手段に孔を設けた構成である。それぞれの孔の直径は同じであることが好ましい。そして、弾性体は、その収納手段およびそれに接する中間体によって体積変化が規制されているため、中間体によって押された弾性体の変位は、中間体および収納手段のそれぞれの孔から均等に突出し(はみ出し)、所定の曲率を有する球体の一部を形成する。すなわち、中間体側および収納手段側に凸の両凸形状のレンズを形成する。
【0027】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの他の一実施形態として、前記弾性体の周部部分と前記中間体を結合し、
前記弾性体と前記中間体の結合面とは異なる面において、前記弾性体と前記収納手段を結合し、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体に作用させて、当該中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成することを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、前記弾性体の周部部分と前記中間体を結合し、前記弾性体と前記中間体の結合面とは異なる面において、前記弾性体と前記収納手段を結合している構成である。弾性体と収納手段との結合は、部分的であってもよく、全体的であってもよい。中間体と弾性体の結合手段としては、接着剤が好ましい。弾性体と収納手段の結合手段としては、透明の接着剤が好ましい。そして、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力を前記中間体に作用させて、当該中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成し、この窪みの曲率半径を変化させることができる。すなわち、弾性体の中央部分に凹形状の平凹形状のレンズを形成することができる。
【0029】
また、上記本発明に係る可変焦点レンズの他の一実施形態として、
第1のアクチュエータを第1の中間体に作用させ、第2のアクチュエータを第2の中間体に作用させるように構成し、
前記弾性体の周部分と前記第1の中間体を結合し、
前記弾性体と前記第1の中間体との第1の結合面とは異なる面において、当該弾性体の周部分と前記第2の中間体を結合し、
前記第1および第2のアクチュエータの作用力をそれぞれ前記第1および第2の中間体に作用させて、当該第1および第2の中間体を当該弾性体とのそれぞれの結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の両面の中央部分に窪みを形成することを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、第1のアクチュエータを第1の中間体に作用させ、第2のアクチュエータを第2の中間体に作用させるように構成し、前記弾性体の周部分と前記第1の中間体を結合し、前記弾性体と前記第1の中間体との第1の結合面とは異なる面において、当該弾性体の周部分と前記第2の中間体を結合している構成である。それぞれの中間体と弾性体の結合手段としては、接着剤が好ましい。そして、第1および第2のアクチュエータの屈曲力をそれぞれ第1および第2の中間体に作用させて、当該第1および第2の中間体を当該弾性体とのそれぞれの結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の両面の中央部分に窪みを形成し、それぞれの窪みの曲率半径を変化させるができる。すなわち、弾性体の両面の中央部分に凹形状の両凹形状のレンズを形成することができる。第1、第2のアクチュエータとしては、高分子アクチュエータ、ピエゾ素子アクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータまたは電磁気式駆動アクチュエータ等のうちから選択され、両方とも同じ種類のアクチュエータでもよく、それぞれ異なる種類のアクチュエータの組み合わせでもよい。
【0031】
また、本発明の実施形態として、高分子アクチュエータは、屈曲変形する(曲げ挙動)する高分子アクチュエータであって、例えば、イオン伝導アクチュエータまたは導電性高分子アクチュエータが挙げられる。イオン伝導アクチュエータとしては、イオン交換樹脂層と、このイオン交換樹脂層の表面に相互に絶縁状態で形成された金属電極層とを備えたものが例示される。また、導電性高分子アクチュエータとしては、バイモルフタイプのアクチュエータが例示される。このバイモルフタイプの構成は、例えば、駆動電解液を含む多孔質基材の両面に金属電極層を形成し、これを介してそれぞれに導電性高分子層が構成されているものである。
【0032】
また、本発明の実施形態として、電磁気式駆動アクチュエータをボイスコイルモータで構成し、当該ボイスコイルモータの直動駆動するプランジャー部を前記中間体と結合することを特徴とする。
【0033】
また、本発明の実施形態として、アクチュエータとしてピエゾ素子を用いる場合、屈曲変形するバイモルフタイプのピエゾ素子を用いて、電気的駆動原により屈曲変形させるように構成することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の実施形態として、アクチュエータとして形状記憶合金を用いる場合、薄板状に成形し、電気的駆動原により加熱変形させて屈曲変形させるように構成することを特徴とする。
【0035】
また、上記の可変焦点レンズは、可変焦点レンズ自体の小型化が可能であり、例えば全体の平面視サイズを5mm程度に可能であるため、内視鏡のオートフォーカスレンズに用いることができる。
【0036】
また、上記の平凹形状あるいは両凹形状、平凸形状あるいは両凸形状、凹凸形状可能構成の可変焦点レンズは、単独で用いることもでき、また、それらを組み合わせて配置することで、一群の可変焦点レンズを構成できる。
【0037】
また、上述の可変焦点レンズに、レンズあるいはレンズフィルターをさらに配置して、レンズ群を構成することができる。
【0038】
また、他の本発明に係るオートフォーカス装置は、上記の可変焦点レンズを用いた構成である。上記記載の可変焦点レンズにおいて、オートフォーカス機能を発揮させるために、高分子アクチュエータへの電圧印加を制御する制御部と、可変焦点レンズから入射される像を撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像された画像を画像解析しピント合わせを判定する判定部と、を備え、被写体の動きに合わせて、制御部は、判定手段でピント合わせが実行されるように高分子アクチュエータへの電圧印加を制御する構成である。
【0039】
また、他の本発明に係る撮像装置は、上記の可変焦点レンズ、あるいはオートフォーカス装置を用いて構成される。撮像装置として、カメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、カメラ付携帯電話、CCDカメラ、CMOSカメラ等が例示される。特にカメラ付携帯電話等のカメラ付小型情報端末に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(アクチュエータの構成)
高分子アクチュエータの形状は、特に制限されないが、弾性体形状が円柱状の場合、例えば、菊座形状、リング状、短冊状が例示できる。円柱状弾性体に対し、菊座形状の一枚一枚の花弁が片持ち梁の湾曲挙動として作用する(例えば、図2参照)。かかる形状の作製は、高分子アクチュエータをシート状に作製し、レーザー等のカッティング手段で成形することで実現でき、あるいは、高分子アクチュエータを所望の形状に作製するようにもできる。また、ピエゾ素子アクチュエータおよび形状記憶合金の形状も上述と同様に構成できる。以下においては高分子アクチュエータについて詳述する。
【0041】
(イオン伝導アクチュエータ)
イオン伝導アクチュエータは、イオン交換樹脂層の表面に金属電極層が形成された構造を有しており、更に詳しく言うと、対向する金属電極層の間に、イオン交換樹脂と、塩を含有する分極性有機溶媒またはイオン性液体である液状有機化合物とが含まれるものである。原理的には、イオン交換樹脂に金属電極を通じて、当該イオン交換樹脂に電位差が与えられると、イオン交換樹脂に含まれている液状有機化合物中のイオン性物質が、いずれかの電極方向に移動することにより、変形が生じる現象を利用するものである。
【0042】
(イオン交換樹脂)
本発明に用いる高分子アクチュエータ素子のイオン交換樹脂は、特に限定されるものではなく、公知のイオン交換樹脂を用いることができる。現に効果が確認されたのは、アクチュエータのイオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂のものである。ただし、イオン交換樹脂が陽イオン型でも陰イオン型でも電位差の与え方を変更することで同様の効果が期待できる。陽イオン交換樹脂を用いる場合には、ポリエチレン、ポリスチレン、フッ素樹脂などにスルホン酸基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入したものを用いることができる。このような樹脂としては、例えばパーフルオロスルホン酸樹脂(商品名「Nafion」、DuPont社製)、パーフルオロカルボン酸樹脂(商品名「フレミオン」、旭硝子社製)、ACIPLEX(旭化成工業社製)、NEOSEPTA(トクヤマ社製)を用いることができる。
【0043】
本発明に用いる高分子アクチュエータの屈曲・変位量を大きくするために、前記イオン交換樹脂は柔軟性を有していることが好ましい。イオン交換樹脂に柔軟性を付与するため、液状有機化合物によってイオン交換樹脂を膨潤させる。前記イオン交換樹脂は、膨潤した状態となることで、ゲル電解質となることができる。前記膨潤の度合いは、特に限定されるものではないが、前記高分子アクチュエータの膨潤度、つまり、前記高分子電解質が乾燥した状態での厚さに対して高分子アクチュエータの膨潤した状態での厚さの増加率が、3〜200%であることが好ましく、5〜60%であることがより好ましい。前記膨潤度が3%未満である場合には、変位屈曲性能が劣り、前記膨潤度が200%よりも大きい場合にも、変位屈曲性能が劣り、さらに大きく引張り強度が低下することとなってしまう。なお、前記有機化合物は、イオン交換樹脂中に含まれるが、金属電極が多孔性である場合には、前記溶媒の一部が、塩とともに前記金属電極に含まれても良い。
【0044】
(液状有機化合物)
本発明に用いられる液状有機化合物には、塩を含有する分極性有機溶媒か、イオン性液体を用いる。イオン性液体は単独で用いることができるが、分極性有機溶媒の場合には、電荷のキャリアとなるイオンを含む塩が必要とされる。ただし塩として前記イオン性液体を用いてもよい。これらの液状有機化合物であれば、イオン交換樹脂に電位差が与えられた場合、容易に当該イオン交換樹脂内での移動が生じるからである。液状有機化合物は、常温常圧において液状の有機化合物であり、特に、180℃以上の沸点または分解温度を有するものが好ましい。この場合、溶媒の気化が起こりにくくなる。
【0045】
(分極性有機溶媒)
前記分極性有機溶媒は、180℃以上の沸点または分解温度を有する有機化合物であることが好ましいが、特に245℃以上の沸点を有する分極性有機溶媒であることがより好ましい。好ましい分極性有機溶媒の具体例として、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン又はこれらの混合物を挙げることができる。中でもジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン又はこれらの混合物であることが特に好ましい。
【0046】
前記分極性有機溶媒に含まれる塩は、当該分極性有機溶媒に溶解しうる塩であれば特に制限されるものではないが、特に前記イオン交換樹脂がカチオンと対イオンを形成する場合には、1〜3価のカチオンの塩を用いることができ、Na+、K+、Li+等の1価のカチオンを用いることが大きな屈曲若しくは変位をすることができるために好ましく、イオン半径の大きなアルキルアンモニウムイオンを用いることがより大きな屈曲若しくは変位をすることができるために更に好ましい。前記アルキルアンモニウムイオンとしては、CH3N+H3、C2H5N+H3、(CH3)2N+H2、(C2H5)2N+H2、(CH3)3N+H、(C2H5)3N+H、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、(C4H9)4N+、H3N+(CH2)4N+H3、H2C=CHCH2N+HCH3、H3N+(CH2)4N+H2(CH2)4N+H3、HC≡CCH2N+H2、CH3CH(OH)CH2N+H3、H3N+(CH2)5OH、H3N+CH(CH2OH)2、(HOCH2)2C(CH2N+H3)2、C2H5OCH2CH2N+H3や脂肪族炭化水素を置換基として備えるアンモニウムイオン、または官能基として炭化水素の他に脂環式の環状炭化水素をも有するアンモニウムイオンを用いることができる。このとき、前記の塩の濃度としては、イオン交換樹脂の官能基と等量以上の濃度として含まれていればよく、十分な屈曲乃至変位を得るために0.01〜10mol/lであることが好ましく、0.1〜1.0mol/lであることがより好ましい。
【0047】
(イオン性液体)
前記イオン性液体の好ましい具体例としては、テトラアルキルアンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、及びピペリジニウムイオンからなる群より少なくとも一種選ばれたカチオンと、PF6−、BF4−、AlCl4−、ClO4−、及び下式(1)で表されるスルホニウムイミドアニオンからなる群より少なくとも一種選ばれたアニオンとの組み合わせからなる塩を挙げることができる。下式(1)中、n及びmは任意の整数である。
(CnF(2n+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)N− (1)
前記テトラアルキルアンモニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウムを用いることができる。
【0048】
前記イミダゾリウムカチオンは、ジアルキルイミダゾリウムイオン及び/またはトリアルキルイミダゾリウムイオンを用いることができる。例えば、前記イミダゾリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンを例示することができる。
【0049】
前記アルキルピリジニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、N−ブチルピリジニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムを例示することができる。
【0050】
前記ピラゾリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,2−ジメチルピラゾリウムイオン、1−エチル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムイオンを例示することができる。
【0051】
前記ピロリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピロリウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリウムイオンを例示することができる。
【0052】
前記ピロリニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,2−ジメチルピロリニウムイオン、1−エチル−2−メチルピロリニウムイオン、1−プロピル−2−メチルピロリニウムイオン、1−ブチル−2−メチルピロリニウムイオンを例示することができる。
【0053】
前記ピロリジニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピロリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムイオンを例示することができる。
【0054】
前記ピペリジニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピぺリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピぺリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピぺリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピぺリジニウムイオンを例示することができる。
【0055】
前記イオン性液体は、上記アニオンと上記カチオンとの組み合わせが特に限定されるものではないが、例えば、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホイミド(EMITFSI)、1−メチル−3−イミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIBF4)、1−メチル−3−イミダゾリウムヘキサフルオロリン酸(EMIPF6)、トリメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホイミド、1−
ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロリン酸、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホイミドを用いることができる。
【0056】
(金属電極)
本発明においてイオン交換樹脂の表面には、当該イオン交換樹脂に電位差を与えることができるように、対向する位置に一組以上の金属電極が設けられている。金属電極に用いられる金属は、水銀のような液体金属を除き、導電性のよい個体金属であれば制限なく用いることができ、また合金であってもよい。用いるイオン交換樹脂や液状有機化合物など種類によって、それぞれ適当な金属を選ぶことができる。
【0057】
金属電極が対向するとは、一組の金属電極が平行を保って存在する状態を理想とするものである。ただし、両電極は完全に平行である必要はなく、当該両金属電極に電圧を与えることでアクチュエータ素子が変位できる限りにおいて、平行から多少ずれていてもよい。ただし、平行からずれるに従って、クーロン量あたりの屈曲や変形の効率に変化が生じる。
【0058】
一組の金属電極が平行を保って存在する状態にするには、イオン交換樹脂の形状を平行な平面側壁を有する板形状またはシート形状として、この平行に対向する前記平面側壁表面に、対となる金属電極をメッキ法、中でも無電解メッキ法で設けることが好ましい。イオン交換樹脂の表面に無電解メッキ法で金属電極になりうる金属膜を形成した場合、イオン交換樹脂と金属電極の接触面積が大きくなり、このためアクチュエータとしての屈曲や変位の量も大きくできるからである。
【0059】
(被覆樹脂)
本発明に用いる高分子アクチュエータは、被覆をせずに長時間駆動することができるが、更に、可撓性を有する樹脂で被覆されてもよい。前記樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂及び/又はシリコン樹脂を用いることができる。前記ポリウレタン樹脂は、特に限定されるものではないが、柔軟な熱可塑性ポリウレタンを用いることが、柔軟度が大きく密着性が良好であるために特に好ましい。柔軟な熱可塑性ポリウレタンとしては、商品名「アサフレックス 825」(柔軟度200%、旭化成社製)、商品名「ペレセン 2363−80A」(柔軟度550%)、「ペレセン 2363−80AE」(柔軟度650%)、「ペレセン 2363−90A」(柔軟度500%)、「ペレセン 2363−90AE」(柔軟度550%)、(以上、ダウ・ケミカル社製)を用いることができる。また、前記シリコン樹脂は、特に限定されるものではないが、柔軟度が50%以上である樹脂が、柔軟度が大きいので密着性が良好であるために、特に好ましい。前記シリコン樹脂としては、例えば、「シラシール3FW」、「シラシールDC738RTV」、「DC3145」、及び「DC3140」(以上、ダウコーニング社製)を用いることができる。なお、本願において、柔軟度とは、ASTM D412に準拠する引張破断伸び(Ultimate Elongation%)をいうものである。
【0060】
(導電性高分子アクチュエータ)
導電性高分子アクチュエータとしては、屈曲挙動を示すバイモルフタイプの構造が例示できる。バイモルフタイプは、導電性高分子膜/基材/導電性高分子膜の3層構造、導電性高分子膜/金属電極/基材/金属電極/導電性高分子膜の3層の5層構造が例示される。以下に、各々の構成について詳述する。
【0061】
(導電性高分子材料)
本発明の導電性高分子は、その膜形成体が印加電圧によって伸縮可能であれば、特に制限されず、例えば、分子鎖にピロールおよび/またはピロール誘導体を含むものが好ましい。
【0062】
また、上記導電性高分子は、ドーパントとしてのアニオンを、該導電性高分子へのドーピングおよび脱ドーピングすることができるものであれば、特に限定されるものではない。上記ドーパントは、必要とされる電解伸縮量や用途等に応じて、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−、過塩素酸イオンやパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。
【0063】
特に、上記導電性高分子として、上記導電性高分子が、下記式(1)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンがドープされた膜状導電性高分子を用いること、
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (1)
〔上記式(1)において、mおよびnは任意の整数。〕、
または、上記導電性高分子として、下記式(2)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンがドープされた膜状導電性高分子を用いること、
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (2)
〔上記式(2)において、l、mおよびnは任意の整数。〕、が、より速い駆動速度を得ることができるために好ましい。
【0064】
(基材)
本発明の基材は、その面方向での伸縮が可能な素材であれば特に制限されず、例えば、不織布、紙、布、綿、メンブレン素材、織物素材、編み物素材等が例示される。また、基材は、絶縁性を有し、電解液を含浸、又は液移動可能に保持できることが好ましい。また、基材の厚み、硬度は、直動変位機能を発揮するように設計されていれば、特に制限されない。
【0065】
また、基材としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロースアセテートなどの多孔質基材(多孔質支持体)が好ましい。なかでも、上記多孔質基材(多孔質支持体)としては、化学的安定性や柔らかさやアクチュエータ素子の繰り返しの駆動における耐久性の観点から、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(多孔質PTFE)などをもちいることが特に好ましい。また空中で駆動させる場合は、電解液を保持している層(多孔質基材層(多孔質支持体層))のイオン導電率が高いことがより好ましく、また、空孔率は可能な限り高い方が好ましい。
【0066】
(駆動電解液)
本発明に用いられる駆動電解液は、上記高分子アクチュエータ素子が電圧印可により駆動するための電解質を含み、上記電解質を溶解するための溶媒として用いられる。本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として有機溶媒、水、有機溶媒と水の混合溶液を用いることができる。水本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として有機溶媒および酸の混合溶液、または有機溶媒、水、および酸の混合溶液を用いることができる。また、上記導電性高分子が酸に接触処理したものを用いる場合では、上記電解質を溶解する溶媒として、有機溶媒、または有機溶媒および水の混合溶液を用いることができる。駆動電解液としてこれらの混合溶液を含むことにより、上記高分子アクチュエータ素子は、一定の電圧を与えた状態における時間に対する伸縮量(駆動速度)を測定した場合に、上記駆動電解液中で大きな駆動速度を示すことができる。
【0067】
また、本発明においては、上記有機溶媒が、エステル結合、カーボネート結合、およびニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合または官能基を含む極性有機化合物であることが好ましい。
【0068】
上記有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、電気化学の反応場として用いることができる溶媒であることが好ましい。上記極性有機化合物としては、たとえば、γ−ブチロラクトン、α―メチル−γ−ブチロラクトン(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、およびアセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)をあげることができる。上記極性有機化合物は速い伸縮速度と大きな最大伸縮率を得ることができるために好ましい。なかでも、たとえば、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、又はエチレンカーボネイトなどが好ましく、バランスの良い駆動性能と共に、より長期の耐久性を得ることができる。
【0069】
また、上記混合溶媒に水を含む場合、水と有機溶媒との混合比は、特に限定されるものではない。上記駆動電解液の溶媒として水を含む混合溶媒を用いた場合には、有機溶媒のみを用いた場合に比べて通常2倍以上の駆動速度の向上をすることができる。また、上記有機溶媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
上記駆動電解液は、導電性高分子や有機溶媒の種類により、上記混合比を特定することが難しい。有機溶媒の導電性高分子を膨潤させる能力等により、駆動速度を向上させるための有機溶媒の最小値は、上記有機溶媒の種類に依存することになる。たとえば、プロピレンカーボネートについては、特級試薬では水の含有量が0.005%であることから、水と有機溶媒との混合比を0.1:99.9とすることもできる。上記混合溶媒における水と有機溶媒との好適な混合比の範囲は、容量比で、水含有比下限が0.5、1.0、5.0、10または20から選ばれる値から、水含有比下限上限が99.5、99.0、95.0、90.0、または80.0から選ばれる範囲を、有機溶媒の種に応じて、選ぶことができる。なお、上記混合比は、ガスクロマトグラフィー法を用いた測定方法、特に水分含有率が少ない場合にはカールフィッシャー法を用いた測定方法を用いることにより、駆動電解液を分析することにより求めることができる。
【0071】
たとえば、上記有機溶媒がプロピレンカーボネートである場合には、水とプロピレンカーボネートとの混合比が容量比で25:75〜75:25であることが、導電性高分子への電圧印可による駆動速度がより速くなるため好ましい。上記混合溶媒は、上記有機溶媒が複数種用いられていてもよく、この場合には、上記混合比は、水の重量と全有機溶媒の合計重量との比で計算される。
【0072】
上記水は、特に限定されるものではないが、純水、蒸留水もしくはイオン交換水であることが、金属イオンや塩化物イオン等による電解伸縮への阻害因子が含まれ難いために好ましい。
【0073】
また、上記の駆動電解液には、電解質としてアニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。また、上記アニオンは、たとえば、Na+、K+、Li+等とカチオンと対イオンを形成した電解質塩を用いてもよい。
【0074】
上記電解質塩としては、たとえば、上記アニオンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウムパーフルオロアルキルスルホニルイミド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのリチウム塩、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのテトラブチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0075】
上記電解質として電解質塩が加えられる場合、上記駆動電解液100重量部に対して、上記電解質塩が1〜90重量部含まれることが好ましく、5〜75重量部含まれることがより好ましく、10〜50重量部含まれることが特に好ましい。
【0076】
また、上記駆動電解液には酸を含む混合溶液を用いることもできる。この酸としては、特に限定されるものではないが、一価の強酸であることが好ましい。
【0077】
上記酸としては、たとえば、(CF3SO2)2NH、(C2F5SO2)2NH、(CF3SO2)(C2F5SO2)NHなどのパーフルオロアルキルスルホニルイミド、(CF3SO2)3CH、(C2F5SO2)3CH、(CF3SO2)(C2F5SO2)2CHなどのパーフルオロアルキルスルホニルメチド、硝酸などの無機酸などが好ましいものとしてあげられる。
【0078】
上記酸は単独で用いてもよいし、また2種以上を混合して使用してもよいが、上記駆動電解液のpHが0〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。上記pHが4以上であると十分な添加効果が得られにくく、一方、上記pHが0以下では溶媒が分解してしまうおそれがある。なお、上記導電性高分子が酸に接触処理したものを用いる場合では、特に酸を駆動電解液に含まなくてもよい。
【0079】
さらに、上記駆動電解液には、アニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。これらのアニオンを用いた場合であっても、上記混合溶媒を用いることにより、導電性高分子を含む高分子アクチュエータ素子の駆動速度を向上することができる。
【0080】
特に、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記高分子アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(3)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(3)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含むことがより好ましい。
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (3)
〔上記式(3)において、mおよびnは任意の整数。〕
【0081】
さらに、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記高分子アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(4)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(4)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含むことがより好ましい。
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (4)
〔上記式(4)において、l、mおよびnは任意の整数。〕
【0082】
これらのドーパントイオンを含むことにより、上記導電性高分子のバルク中に上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが取り込まれ、または放出されて、導電性高分子が大きな伸縮運動をすることができるので、上記高分子アクチュエータ素子は、従来の導電性高分子の電解伸縮方法に比べて、速い駆動速度を示すことができる。
【0083】
また、本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として常温常圧下で液状の非イオン性有機化合物を含む溶液を用いることができる。上記非イオン性有機化合物は、イオン性官能基やイオン性部位を分子構造中に有していないものであれば特に限定されず適宜用いることができる。上記有機化合物としては、電荷のキャリアとなるイオンを含む塩の溶媒となることができる有機化合物、または電荷のキャリアとなることができる有機化合物であればよい。上記非イオン性有機化合物は、180℃以上の沸点または分解温度を有し、常温常圧下で液状であることが好ましく、さらに溶媒としての機能も有することが好ましい。また、245℃以上の沸点を有する有機溶媒であることがより好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
上記非イオン性有機化合物としては、たとえば、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、エチレンカーボネイト、ポリエーテル化合物などをあげることができる。なかでも、たとえば、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、又はポリエーテル化合物などが好ましく、さらには、ポリエーテル化合物を用いることが、バランスの良い駆動性能と共に、より長期の耐久性を得ることができるため、特に好ましい。
【0085】
上記非イオン性有機化合物は単独で用いてもよいし、また2種以上を混合して使用してもよいが、配合量としては、電解液100重量部に対して、0.01〜100重量部であることが好ましく、0.05〜50重量部であることがより好ましく、0.1〜30重量部であることがさらに好ましい。0.01重量部未満であると十分な経時的耐久性が得られない場合があり、100重量部を超えると駆動周波数が低下する場合がある。
【0086】
また、駆動電解液には、電解質としてアニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。また、上記アニオンは、たとえば、Na+、K+、Li+等とカチオンと対イオンを形成した電解質塩を用いてもよい。
【0087】
上記電解質塩としては、たとえば、上記アニオンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウムパーフルオロアルキルスルホニルイミド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのリチウム塩、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのテトラブチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0088】
上記電解質として電解質塩が加えられる場合、上記駆動電解液100重量部に対して、上記電解質塩が1〜90重量部含まれることが好ましく、5〜75重量部含まれることがより好ましく、10〜50重量部含まれることが特に好ましい。
【0089】
また、本発明においては、上記駆動電解液中にさらにイオン性液体を含むことができる。イオン性液体は、特に限定されないで用いることができる。なかでも、上記イオン性液体が、テトラアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオンなどのイミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、およびピペリジニウムイオンからなる群より少なくとも一種選ばれたカチオンと、PF6−、BF4−、AlCl4−、ClO4−、および下記式(5)で示されるスルホニウムイミドアニオンからなる群より少なくとも一種選ばれたアニオンとの組合せからなる塩を含むことが好ましい。これらのイオン性液体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO3)N− (5)
[上記式(5)において、mおよびnは任意の整数である。]。
【0091】
さらには、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(6)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(6)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含むことがより好ましい。
【0092】
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (6)
〔上記式(6)において、mおよびnは任意の整数。〕。
【0093】
また、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(7)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(7)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含むことがより好ましい。
【0094】
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (7)
〔上記式(7)において、l、mおよびnは任意の整数。〕。
【0095】
これらのドーパントイオンを含むことにより、上記導電性高分子のバルク中に上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが取り込まれ、または放出されて、導電性高分子が大きな伸縮運動をすることができるので、上記アクチュエータ素子は、従来の導電性高分子の電解伸縮方法に比べて、速い駆動速度を示すことができる。
【0096】
なお、本発明のアクチュエータ素子においては、特定の形状を有し、かつ導電性高分子を含んでなる導電性高分子有形物に含まれるアニオンと同じアニオンが、上記駆動電解液中に含まれることが好ましい。上記アクチュエータ素子に用いられた導電性高分子のバルク中に含まれ、ドーパントとして機能し得るアニオンと同じアニオンが上記作動電解液中に含まれることにより、導電性高分子バルク中への出入りが容易となりやすく、所望の伸縮量の電解伸縮を容易に得ることができる。また、上記駆動電解液中に含まれるアニオンがパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンである場合には、上記駆動電解液中で電解伸縮をさせる導電性高分子有形物の製造用電解液中に含まれるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンとイオン半径が同程度であることが、電解伸縮を容易に行うことができるので好ましい。
【0097】
(導電性高分子アクチュエータの製造方法)
導電性高分子アクチュエータは、電解重合により作用電極上に得られた導電性高分子膜をそのまま用いることができる。また、基材に直接電解重合することで、導電性高分子層(膜)を形成することもできる。また、基材の両面に同時に、導電性高分子層(膜)を電解重合により形成できる。また、基材の片面では密度の高い導電性高分子層(膜)を、その他方の面では密度の低い導電性高分子層(膜)を同時に或いは別々に形成することもできる。かかる場合、導電性高分子層(膜)が導電性高分子アクチュエータに相当し、密度の低い導電性高分子層(膜)は、従動対極に相当する。
【0098】
また、電解重合により直接に基材に導電性高分子層(膜)を形成するのではなく、金属電極層を介して行なうことがより好ましい。金属電極層としては、金、白金、ニッケルなどを用いることができるが、なかでも金、白金などが好ましい。金属電極層は、公知の方法によって基材に形成することができ、例えば、スパッタリングによって基材に電極層を形成することができる。電極層の厚みは、特に制限されない。
【0099】
また、上記電解重合に用いる電解液(導電性高分子製造用電解液)が、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基およびニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合または官能基を含む有機化合物および/またはハロゲン化炭化水素を溶媒として含むことが好ましい。上記の電解液中に上記溶媒を含み、さらに、パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンなどを含むことにより、得られた導電性高分子は、1酸化還元サイクル当たりにおいてより大きな電解伸縮を示すものとなる。
【0100】
上記有機化合物としては、たとえば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン(以上、エーテル結合を含む有機化合物)、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸−t−ブチル、1,2−ジアセトキシエタン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネイト、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、エチレングリコール、ブタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール(以上、ヒドロキシル基を含む有機化合物)、ニトロメタン、ニトロベンゼン(以上、ニトロ基を含む有機化合物)、スルホラン、ジメチルスルホン(以上、スルホン基を含む有機化合物)、およびアセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)をあげることができる。なお、ヒドロキシル基を含む有機化合物は、特に限定されるものではないが、多価アルコールおよび炭素数4以上の1価アルコールであることが、伸縮率が良いためにより好ましい。なお、上記有機化合物は、上記の例示以外にも、分子中にエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基およびニトリル基のうち、2つ以上の結合または官能基を任意の組み合わせで含む有機化合物であってもよい。
【0101】
また、上記導電性高分子製造用電解液に溶媒として含まれるハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の水素が少なくとも1つ以上ハロゲン原子に置換されたもので、電解重合条件で液体として安定に存在することができるものであれば、特に限定されるものではない。上記ハロゲン化炭化水素としては、たとえば、ジクロロメタン、ジクロロエタンをあげることができる。上記ハロゲン化炭化水素は、1種類のみを上記導電性高分子製造用電解液中の溶媒として用いることもできるが、2種以上併用することもできる。また、上記ハロゲン化炭化水素は、上記の有機化合物との混合液として用いてもよく、上記有機溶媒との混合溶媒を上記導電性高分子製造用電解液中の溶媒として用いることもできる。
【0102】
上記電解重合法により得られた導電性高分子のバルク中には、上記電解重合法に用いられた上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが存在することとなる。上記導電性高分子が上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含む上記導電性高分子は、上述のように1酸化還元サイクル当りの伸縮量が大きく、駆動速度(%/s)の値も大きく、しかも、容易に得ることができるので好ましい。たとえば、上記の導電性高分子の有形物を膜状体は、従来の導電性高分子の電解伸縮がその最大の伸縮率が面方向で1酸化還元サイクル当たり10〜15%程度までしか得られていなかったのに対して、ドーパントとして上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを導電性高分子のバルク中に含むことにより、長さ方向において、1酸化還元サイクル当たり16%以上、特に20%以上の優れた最大の伸縮率を示すことが可能となる。上記膜状体は、人工筋肉に代表される大きな伸縮率が要求される用途に好適に用いることができる。なお、上記の導電性高分子の有形物は、ドーパントの他に、動作電極としての抵抗値を低下させるために、金属線や導電性酸化物などの導電性材料を適宜含むことができる。
【0103】
上記電解重合法における上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンの電解液中の含有量が特に限定されるものではないが、十分な電解液のイオン導電性を確保するために、パーフルオロアルキルスルホニルイミド塩として、電解液中に1〜40重量%含まれるのが好ましく、2.8〜20重量%含まれるのがより好ましい。また、電解重合法により得られる導電性高分子膜の膜質を向上させるために、トリフルオロメタンスルホン酸塩を電解液中に1〜80%加えた複合電解質を用いることもできる。また、これらのイオンは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0104】
また、上記電解重合法にて用いられる電解液(導電性高分子製造用電解液)には、さらに、パーフルオロアルキルスルホニルイミド塩を含む以外に、導電性高分子の単量体を含んでいてもよく、さらにポリエチレングリコールやポリアクリルアミドなどの公知のその他の添加剤を含むこともできる。
【0105】
上記電解重合法は、導電性高分子単量体の電解重合として、公知の電解重合方法を用いることが可能であり、定電位法、定電流法および電気掃引法のいずれをも適宜用いることができる。たとえば、上記電解重合法は、電流密度0.01〜20mA cm−2、反応温度−70〜80℃で行うことができ、良好な膜質の導電性高分子を得るために、電流密度0.1〜2mA cm−2、反応温度−40〜40℃の条件下で行うことが好ましく、反応温度が−30〜30℃の条件であることがより好ましい。
【0106】
なお、上記電解重合法に用いられる作用電極は、電解重合に用いることができれば特に限定されるものではなく、ITOガラス電極、炭素電極や金属電極などを適宜用いることができる。上記金属電極は、金属を主とする電極であれば特に限定されるものではないが、Pt、Ti、Ni、Au、Ta、Mo、CrおよびWからなる群より選ばれた金属元素についての金属単体の電極または合金の電極を好適に用いることができる。なかでも、得られた導電性高分子の伸縮率および発生力が大きく、かつ電極を容易に入手できることから、金属電極に含まれる金属種がPt、Tiであることが特に好ましい。なお、上記合金としては、たとえば、商品名「INCOLOY alloy 825」、「INCONEL alloy 600」、「INCONEL alloy X−750」(以上、大同スペシャルメタル社製)を用いることができる。また、対極については公知の電極、たとえばPt、Niを好適に用いることができる。
【0107】
上記電解重合法に用いられる電解液に含まれる導電性高分子の単量体としては、電解重合による酸化により高分子化して導電性を示す化合物であれば特に限定されるものではなく、たとえばピロール、チオフェン、イソチアナフテン等の複素五員環式化合物、ならびにそのアルキル基、オキシアルキル基等の誘導体があげられる。なかでも、ピロール、チオフェン等の複素五員環式化合物、ならびにその誘導体が好ましく、特にピロールおよび/またはピロール誘導体を含む導電性高分子であることが、製造が容易であり、導電性高分子として安定であるために好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0108】
上記アクチュエータ素子において、上記導電性高分層(膜)の厚みは、デバイスの仕様により適宜設計するものであり、例えば0.01〜数百μmの範囲が例示できる。
【0109】
(中間体)
中間体は、アクチュエータの屈曲変化による屈曲力あるいは直動駆動作用力を弾性体に伝達するものである。また他の実施形態として、中間体は弾性体と接着され、アクチュエータの屈曲作用によって、弾性体の表面積を増大させるように機能する。弾性体とアクチュエータの用途に応じて、そのサイズ、材質は決定される。伝達機能の観点からは、中間体は、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力によって変形しない剛性のある材質が好ましく、例えば、ステンレス等の金属、硬質の樹脂等が例示される。また、弾性体が円柱状の場合、中間体も円柱状に形成することが好ましい。また一実施形態として、中間体の外径は、弾性体の外径と同じまたはやや小さいのが好ましく、中間体の円柱の内部に孔(貫通孔あるいは開口部を形成する)が設けられる。また一実施形態として、その孔の径は、後述する弾性体の収納手段の孔(貫通孔あるいは開口部)の径と同じであることが好ましい。厚みは、材質にもよるが変形しない程度の厚みが必要である。また、アクチュエータや弾性体に対して品質劣化等の悪影響を及ぼさない材質が選定される。
【0110】
(弾性体)
弾性体は、レンズ機能を発揮できる程度の透明性を有し、復元性があり、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力で変形する程度の硬度が必要である。さらに、熱や薬品等に対して安定のものがより好ましい。弾性体の材料としては、例えば、シリコーン、フッ素系エラストマー、各種エラストマー、ゴム、ウレタン、高分子ゲル等が例示できる。また、弾性体の硬度は、その材料に応じて、ショア硬さ、針入度(JIS K2207)による測定が可能である。弾性体の形状を円柱状に形成し、中間体からの押し圧に応じて、弾性体の中間体あるいは収納手段の孔から突出させて、球体の一部を形成させ、凸形状のレンズを形成できる。また別実施形態として、アクチュエータの屈曲力あるいは直動駆動作用力を中間体に作用させて、中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成し、凹形状のレンズを形成できる。また、弾性体の厚みは、焦点レンズとしての仕様に応じて設定できる。
【0111】
(電気的駆動源)
高分子アクチュエータは、電気的駆動源からの電圧印加によって屈曲変化する。電圧印加方法は、特に制限されず、アクチュエータ体の用途に応じて設定される。また、印加電圧の制御方法は、例えば、正負極の切り替え、電圧値制御、パルス制御、連続印加、断続的印加制御、周波数制御、PID制御、PWM制御等が例示される。また、本発明において、印加する時間(期間)に比例して、弾性体の形状変位が生じている。よって、印加時間を制御することで、弾性体の形状変位量を簡単に制御できる。
【0112】
また、印加電圧は、高分子アクチュエータの素材により異なり、イオン伝導アクチュエータの場合、例えば、−5V〜+5Vの範囲で駆動できる。また、導電性高分子アクチュエータの場合、分解しない範囲での印加が可能である。デバイスのサイズ・性能、電導性高分子アクチュエータの材料、厚み、サイズ等の設計に依存するが、電導性高分子としてポリピロールを用いた場合、その印加電圧は、例えば、ポリピロールが分解しない電圧値以下が望ましく、0.75Vから2Vの範囲が例示される。また、ピエゾ素子アクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、ボイスコイルモータ等に対しても同様に電気的駆動源からの電圧、電流によって駆動できる。
【0113】
(電極部材)
電極部材は、高分子アクチュエータに電圧を印加するために用いられる。その形状及びサイズが特に制限されず、用途に応じて、例えば、円形、方形、多角形、異形、プレート状等を適宜設計できる。また、電極部材は、ソリッド素材、フレキシブル素材で構成でき、アクチュエータ体としての用途に応じた素材を選択できる。また、電極部材は、その機能を発揮するものであれば特に制限されないが、例えば、金属、貴金属が例示される。電極部材は、後述する一対の規制部材の表面に形成され、この一対の規制部材によって、上記の弾性体/中間体/高分子アクチュエータがサンドされていることが好ましい。
【0114】
(収納手段)
収納手段としての規制部材は、例えば、一対の部材を有し、弾性体/中間体/高分子アクチュエータ(あるいは他のアクチュエータ)の順にサンドして固定部材によってそれらを一体に形成するように構成されている。一対の規制部材の内、第1の規制部材は、弾性体及び中間体を収納する収納部が形成され、中間体に対し高分子アクチュエータの屈曲力が作用した場合に、中間体を介して力が弾性体に伝達され、これによって、弾性体が変形する。このとき、第1の規制部材の収納部内壁によって弾性体の半径方向への広がりが規制されるが、中間体の孔あるいは規制部材の収納部底に形成された孔に対しては規制が及ばず、それぞれの孔から弾性体がはみ出し凸形状のレンズを形成する。また、別実施形態として、中間体と弾性体の周部分を結合し、弾性体と規制部材の収納部底を結合し、そして、高分子アクチュエータの屈曲力を中間体に作用させて、当該中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成し、平凹形状のレンズを形成する。一対の規制部材の材料は、特に制限されないが、硬質の樹脂、金属等が好ましい。一対の規制部材のサイズ、形状は、特に制限されないが、光の入射部分は、透明あるいは開口していることが好ましく、可変焦点レンズの用途に応じて適宜設計できる。固定部材は、ボルト・ナット等の機械的固定部材が例示でき、固定部材の代わりに接着剤、溶着、溶接等の固定手段を用いることもできる。また、一対の規制部材を嵌め込み構造、ネジ止め構造に構成することもできる。
【0115】
(用途)
本発明の可変焦点レンズは、例えばオートフォーカス装置、撮像装置等に好適に用いることができる。特にカメラ付携帯電話等のカメラ付小型情報端末に好適である。
【0116】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されず、本発明の技術的思想を同じくする全ての形態、態様、製品、部品に及ぶことは言うまでもない。
【0117】
[実施例1]
イオン伝導アクチュエータをシート形状に作製し、レーザー加工によって、菊座形状にカットした。図1に示す、菊座形状のイオン伝導アクチュエータ11は、外径寸法が、縦、横各9.5mm、厚みが0.2mmである。4隅には、ガイドピンが挿入されるピン穴を形成し、中央部には、貫通の開口部を形成し、8枚の花弁がその開口中心に対向するように形成した。
【0118】
ワッシャー12(中間体に相当する)は、その外径が弾性体13の外径と同じであり、ワッシャー12の内径は、4mmとし、収納部底の孔の径と同じである。なお、ワッシャー12の内径又は収納部底の孔径は4mmに限定されず、レンズの仕様に応じて設定される。
【0119】
弾性体13は、透明なシリコーン(フッ素含有)(信越化学社製のSIFEL−8270)を材料として、円柱状に形成した。その厚みは0.8mmである。弾性体13は、基板14(収納手段の一部に相当する)に設けた円形の開口部(その中心部分に貫通部有している)にシリコーンを流しこみ、硬化させて形成した。この際、開口部の中心貫通部分は、プレートでシールしてから、シリコーンを流し込み、次いで、ワッシャー12を、流し込んだシリコーン上面に静置させた。このとき、基板14の開口部内にシリコーンおよびワッシャー12が収納され、ワッシャー12の一部は、開口部からはみだしている。そして、シリコーンが硬化するまで静置し、硬化後に上記プレートを基板14から取り除いた。
【0120】
基板14,15は、その片面で菊座形状のイオン伝導アクチュエータ11と接する部分には、電極膜(銅はく部に金メッキを施してある)が形成されている。基板14,15としては、ガラエポプリント基板を用いた。
【0121】
上記のように作製された弾性体13上にワッシャー12が載置されている。このワッシャー12上に、菊座形状のイオン伝導アクチュエータ11を載置し、次いで、基板15を載置し、それらを一体にするようにガイドピンで組み立て、可変焦点レンズ本体1を作製した。ワッシャー12に対し、菊座形状の一枚一枚の花弁が片持ち梁に当接するように構成される。この片持ち梁が湾曲挙動(イオン伝導アクチュエータ11の屈曲挙動)することによって、ワッシャー12が下方の弾性体13を押し付け、ワッシャー12の孔および基板14の開口部(円形孔)から弾性体13がはみ出し、球体の一部を形成し、両面に凸形状のレンズを実現する。図2に示すように、可変焦点レンズ本体1は、その外径寸法が縦横9.5mm、厚み2.4mmであった。重量は、約0.8g・fであった。
【0122】
基板14,15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図3に示すように、ワッシャー12の孔および基板14の開口部(円形孔)から弾性体13がはみ出し、球体の一部を形成し、両面に凸形状のレンズを形成できたことを確認した。この確認に際し、CCDカメラの撮像手段を用いて、実際に被写体(アルファベットの文字)を撮像し、被写体の焦点が可変したこと、および、それぞれの孔からはみ出した弾性体が球体を形成し、その球体の曲率半径が、電圧印加に従って変化することを確認した。
【0123】
また、この可変焦点レンズ本体1を用いてオートフォーカス装置を構成した。オートフォーカス装置は、オートフォーカス機能を発揮させるために、高分子アクチュエータへの電圧印加を制御する制御部と、可変焦点レンズから入射される像を撮像する撮像手段(例えばCCDカメラ、CMOSカメラ)と、撮像手段で撮像された画像を画像解析しピント合わせを判定する判定部(例えばソフトウエアプログラムとCPU、専用回路等)と、を備え、被写体の動きに合わせて、制御部は、判定手段でピント合わせが実行されるように高分子アクチュエータへの電圧印加を制御する構成である。上記の被写体を可変焦点レンズに対してその相対距離を変え、制御部によって自動的に電圧印加制御を実行し、被写体の移動に応じて、ピント合わせが実現できたこと(オートフォーカス機能)を確認した。
【0124】
[実施例2]
上記実施例1において、基板14に開口部を設けたが、実施例2では、基板14の代わりに開口部が形成されていない両表面が平坦の透明樹脂基板141を用いた。透明樹脂基板141のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。透明樹脂基板141、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図4に示すように、ワッシャー12の孔から弾性体13がはみ出し、球体の一部を形成し、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0125】
[実施例3]
上記実施例1において、ワッシャー12を用いたが、実施例3では、ワッシャー12の代わりに開口部が形成されていない両表面が平坦の透明樹脂板121を用いた。基板14、15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図5に示すように、基板14の開口部(円形孔)から弾性体13がはみ出し、球体の一部を形成し、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0126】
[実施例4]
実施例4では、上記のワッシャー12よりも大径のワッシャー122を用い、基板14の代わりに開口部が形成されていない両表面が平坦の透明樹脂基板141を用いた。透明樹脂基板141のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。ワッシャー122と弾性体13の周部分は、接着剤で固定されている。また、透明樹脂基板141と弾性体13は接着剤で固定されている。透明樹脂基板141、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図6に示すように、ワッシャー122が持ち上げられ、それに伴ってワッシャー122と固定されている弾性体13の周部分も持ち上げられる。弾性体13の一方面は透明樹脂板141と固定されているため、弾性体13は全体的に持ち上がることがなく、そのため、図6に示すように、弾性体13の中央部分が凹形状に窪み、平凹形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0127】
[実施例5]
実施例5では、上記の実施例4の大径のワッシャー122と同じ大径のワッシャー123を弾性体13の他方面に同様に接着剤で固定する。図7に示すように、ワッシャー122には、第1のイオン伝導アクチュエータ11aが作用し、ワッシャー123には、第2のイオン伝導アクチュエータ11bが作用する構成である。第1のイオン伝導アクチュエータ11aは、基板15aと基板142によって固定され、それぞれの基板には、第1のイオン伝導アクチュエータ11aに電圧を印加するための電極膜が形成されている。一方、第2のイオン伝導アクチュエータ11bは、基板15bと基板142によって固定され、それぞれの基板には第2のイオン伝承アクチュエータ11bに電圧を印加するための電極膜が形成されている。基板142、基板15a、15bの一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11a,11bの片持ち梁を屈曲挙動させた。図7に示すように、ワッシャー122、123が弾性体13から離れるように移動し、それに伴ってワッシャー122、123とそれぞれ固定されている弾性体13の周部分も追随する。そのため、図7に示すように、弾性体13の両面の中央部分が凹形状に窪み、両凹形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0128】
[実施例6]
上記実施例1ではワッシャー12を用いたが、実施例6では、ワッシャー12の代わりに開口部が形成されていない両表面が平坦の透明樹脂板124を用いた。また、基板14の代わりに中央部に凹部が形成された透明樹脂基板144を用いた。透明樹脂基板144のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。透明樹脂基板144、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図8に示すように、透明樹脂基板144の凹部に弾性体13の変位部分が充填され、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0129】
[実施例7]
実施例7では、実施例6の両表面が平坦の透明樹脂板124に代わり、中央部に凹部が形成された透明樹脂板125を用いた。透明樹脂基板144、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図9に示すように、透明樹脂板125の凹部と透明樹脂基板144の凹部のそれぞれに弾性体13の変位部分が充填され、両凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0130】
[実施例8]
実施例8では、実施例6の両表面が平坦の透明樹脂板124に代わり、中央部に凸部が形成された透明樹脂板126を用いた。また、中央部に凸部が形成された透明樹脂基板145を用いた。透明樹脂基板145、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図10に示すように、透明樹脂板126の凸部と透明樹脂基板145の凸部のそれぞれが弾性体13にめり込み、それぞれの凸部の周辺に弾性体13の変位部分が移動して、両凹形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0131】
[実施例9]
実施例9では、実施例1の基板14に代わり、弾性体13に接する表面の中央部分に凹部が形成された透明樹脂基板144を用いた。透明樹脂基板144のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。弾性体131は、透明なシリコーン(フッ素含有)(信越化学社製のSIFEL−8270)を材料として、円柱状に形成し、その中央部は、透明樹脂基板144の凹部に対応する形状の凸部形状を有している。透明樹脂基板144、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図11に示すように、ワッシャー12の孔から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、両面に凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0132】
[実施例10]
実施例10では、実施例1の基板14に代わり、弾性体13と接する表面とは異なる表面の中央部分に凸部が形成された透明樹脂基板146を用いた。透明樹脂基板146のイオン伝導アクチュエータ11と接する面には電極膜が形成されている。透明樹脂基板146、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。図12に示すように、ワッシャー12の孔から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。これによって、ワッシャー12側に凸レンズで、透明樹脂基板146側に凸形状の組合せレンズが構成できた。
【0133】
[別実施例]
また、別実施例として、実施例9において、弾性体13に接する表面の中央部分に凸部が形成された透明樹脂基板(不図示)を用いた場合、ワッシャー12側に凸レンズで、透明樹脂基板側に凸形状の組合せレンズが構成できる。
【0134】
また、別実施例として、実施例10において、弾性体13に接する表面とは異なる表面の中央部分に凹部が形成された透明樹脂基板(不図示)を用いた場合、ワッシャー12側に凸レンズで、透明樹脂基板側に凹形状の組合せレンズが構成できる。
【0135】
また、別実施例として、実施例3の両面が平坦の透明樹脂板121に代わり、弾性体13と接する表面の中央部分に凸部が形成された透明樹脂板(不図示)を用いた。基板14には円形の開口部が形成されている。基板14、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。これによって透明樹脂板が押され、透明樹脂板の凸形状が弾性体13に突入され弾性体13に凹形状が形成される。一方、基板14の円形開口部から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、透明樹脂板側に凹形状であって、基板14側に凸形状のレンズを形成できたことを確認した。
【0136】
また、別実施例として、実施例3の両面が平坦の透明樹脂板121に代わり、弾性体13と接する表面の中央部分に凹部が形成された透明樹脂板(不図示)を用いた。基板14には円形の開口部が形成されている。基板14、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。これによって透明樹脂板が押され、透明樹脂板の凹部に弾性体13が充填され、さらに、基板14の円形開口部から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、透明樹脂板側に凸形状であって、基板14側に凸形状の両凸レンズを形成できたことを確認した。
【0137】
また、別実施例として、実施例3の両面が平坦の透明樹脂板121に代わり、弾性体13と接する表面とは異なる表面の中央部分に凸部が形成された透明樹脂板(不図示)を用いた。基板14には円形の開口部が形成されている。基板14、基板15の一部に形成された耳部に直流電圧−3V〜+3Vを印加させ、イオン伝導アクチュエータ11の片持ち梁を屈曲挙動させた。これによって透明樹脂板が押され、基板14の円形開口部から弾性体13が電圧印加に従ってはみ出し、球体の一部を形成し、平凸形状のレンズを形成できたことを確認した。よって、透明樹脂板の凸形状レンズと基板14側の凸形状の組合せ両凸レンズが構成できる。
【0138】
また、上記実施例において、透明樹脂板あるいは透明樹脂基板をレンズフィルター部材で構成することができる。また、上記実施例において、透明樹脂板あるいは透明樹脂基板を平凸あるいは両凸レンズ形状または平凹あるいは両凹レンズ形状に構成し、複数のレンズ群の一部として構成できる。また、上記実施例の可変焦点レンズに1以上のレンズを配列し、一体のレンズを構成することができる。
【0139】
また、上記のワッシャー12の孔径と、透明樹脂基板の円形開口の径が同じに限定されない。また、上記ワッシャー12の孔からはみ出して形成される球形の曲率半径と、透明樹脂基板に形成される凸形状あるいは凹形状の曲率半径が同じでもよく、異なっていてもよい。また、透明樹脂基板の開口部からはみ出して形成される球形の曲率半径と、透明樹脂板に形成される凸形状あるいは凹形状の曲率半径が同じでもよく、異なっていてもよい。また、透明樹脂板および透明樹脂基板に形成される凸形状あるいは凹形状の曲率は、一定であってもよく、部分的位置関係において曲率が異なっていてもよい。
【0140】
(他のアクチュエータを用いた実施例)
上記実施例において、アクチュエータとしてバイモルフタイプのピエゾ素子アクチュエータを用い、同様の機構構成として実施したところ、上記実施例と同様に可変レンズを構成できた。
【0141】
アクチュエータとして形状記憶合金アクチュエータを用い、同様の機構構成として実施したところ、上記実施例と同様に可変レンズを構成できた。
【0142】
アクチュエータとしてボイスコイルモータを用い、そのプランジャー部と中間体であるワッシャーあるいは透明樹脂板と結合し、他は同様の機構構成として実施したところ、上記実施例と同様に可変レンズを構成できた。
【0143】
以上の結果から、可変焦点レンズを小型に形成でき、また、オートフォーカス装置、撮像装置としても有効に機能することが確認できた。また、この結果から、可変焦点レンズのサイズをより小さくするように構成できることが分かり、例えば、縦横6.5mm、厚み0.8mmにすることが可能である。また、可変焦点レンズは、他の可変焦点レンズに比較し、小型、軽量、部品点数も少なく、低電力駆動である点で好ましいものであることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図2】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図3】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図4】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図5】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図6】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図7】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図8】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図9】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図10】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図11】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【図12】本発明の可変焦点レンズを説明するための図
【符号の説明】
【0145】
1 可変焦点レンズ本体
11 イオン伝導アクチュエータ
12 ワッシャー(中間体)
13 弾性体
14 基板
15 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的駆動源によって駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの作用力が作用する弾性体と、を少なくとも備え、
前記アクチュエータの作用力を前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする可変焦点レンズ。
【請求項2】
前記アクチュエータが高分子アクチュエータ、ピエゾ素子アクチュエータ、または形状記憶合金アクチュエータのうちから選択されるアクチュエータであって、前記アクチュエータは電気的駆動源によって屈曲変形するように構成され、
前記アクチュエータの屈曲力を伝達する中間体と、
前記弾性体を収納する収納手段と、をさらに備え、
前記アクチュエータの屈曲力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする請求項1に記載の可変焦点レンズ。
【請求項3】
前記アクチュエータが電磁気式駆動アクチュエータであって、前記アクチュエータは電気的駆動源によって直動駆動するように構成され、
前記アクチュエータの直動駆動を伝達する中間体と、
前記弾性体を収納する収納手段と、を備え、
前記アクチュエータの直動駆動を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする請求項1に記載の可変焦点レンズ。
【請求項4】
前記中間体に孔が形成され、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記中間体の孔から突出させることを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項5】
前記収納手段に孔が形成され、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記収納手段の孔から突出させることを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項6】
前記中間体および前記収納手段のそれぞれに孔が形成され、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記中間体の孔および前記収納手段の孔から突出させることを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項7】
前記中間体の表面形状が、曲面を有していることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項8】
前記収納手段の表面形状が、曲面を有していることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項9】
前記中間体または収納手段をレンズフィルター部材で構成したことを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項10】
前記弾性体の周部部分と前記中間体を結合し、
前記弾性体と前記中間体の結合面とは異なる面において、前記弾性体と前記収納手段を結合し、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体に作用させて、当該中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成することを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項11】
第1のアクチュエータを第1の中間体に作用させ、第2のアクチュエータを第2の中間体に作用させるように構成し、
前記弾性体の周部分と前記第1の中間体を結合し、
前記弾性体と前記第1の中間体との第1の結合面とは異なる面において、当該弾性体の周部部分と前記第2の中間体を結合し、
前記第1および第2のアクチュエータの作用力をそれぞれ前記第1および第2の中間体に作用させて、当該第1および第2の中間体を当該弾性体とのそれぞれの結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の両面の中央部分に窪みを形成することを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項12】
前記高分子アクチュエータが、イオン伝導アクチュエータである請求項2から11のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項13】
前記電磁気式駆動アクチュエータをボイスコイルモータで構成し、当該ボイスコイルモータの直動駆動するプランジャー部を前記中間体と結合することを特徴とする請求項3から11のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項14】
レンズあるいはレンズフィルターをさらに配置したことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の可変焦点レンズを用いたオートフォーカス装置。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか1項に記載の可変焦点レンズを用いた撮像装置。
【請求項17】
請求項15に記載のオートフォーカス装置を用いた撮像装置。
【請求項1】
電気的駆動源によって駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの作用力が作用する弾性体と、を少なくとも備え、
前記アクチュエータの作用力を前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする可変焦点レンズ。
【請求項2】
前記アクチュエータが高分子アクチュエータ、ピエゾ素子アクチュエータ、または形状記憶合金アクチュエータのうちから選択されるアクチュエータであって、前記アクチュエータは電気的駆動源によって屈曲変形するように構成され、
前記アクチュエータの屈曲力を伝達する中間体と、
前記弾性体を収納する収納手段と、をさらに備え、
前記アクチュエータの屈曲力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする請求項1に記載の可変焦点レンズ。
【請求項3】
前記アクチュエータが電磁気式駆動アクチュエータであって、前記アクチュエータは電気的駆動源によって直動駆動するように構成され、
前記アクチュエータの直動駆動を伝達する中間体と、
前記弾性体を収納する収納手段と、を備え、
前記アクチュエータの直動駆動を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体の形状を変位させて焦点を可変することを特徴とする請求項1に記載の可変焦点レンズ。
【請求項4】
前記中間体に孔が形成され、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記中間体の孔から突出させることを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項5】
前記収納手段に孔が形成され、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記収納手段の孔から突出させることを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項6】
前記中間体および前記収納手段のそれぞれに孔が形成され、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体を介して前記弾性体に作用させて、当該弾性体を前記中間体の孔および前記収納手段の孔から突出させることを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項7】
前記中間体の表面形状が、曲面を有していることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項8】
前記収納手段の表面形状が、曲面を有していることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項9】
前記中間体または収納手段をレンズフィルター部材で構成したことを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項10】
前記弾性体の周部部分と前記中間体を結合し、
前記弾性体と前記中間体の結合面とは異なる面において、前記弾性体と前記収納手段を結合し、
前記アクチュエータの作用力を前記中間体に作用させて、当該中間体を当該弾性体との結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の中央部分に窪みを形成することを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項11】
第1のアクチュエータを第1の中間体に作用させ、第2のアクチュエータを第2の中間体に作用させるように構成し、
前記弾性体の周部分と前記第1の中間体を結合し、
前記弾性体と前記第1の中間体との第1の結合面とは異なる面において、当該弾性体の周部部分と前記第2の中間体を結合し、
前記第1および第2のアクチュエータの作用力をそれぞれ前記第1および第2の中間体に作用させて、当該第1および第2の中間体を当該弾性体とのそれぞれの結合面から遠位に移動させ、当該弾性体の両面の中央部分に窪みを形成することを特徴とする請求項2または3に記載の可変焦点レンズ。
【請求項12】
前記高分子アクチュエータが、イオン伝導アクチュエータである請求項2から11のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項13】
前記電磁気式駆動アクチュエータをボイスコイルモータで構成し、当該ボイスコイルモータの直動駆動するプランジャー部を前記中間体と結合することを特徴とする請求項3から11のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項14】
レンズあるいはレンズフィルターをさらに配置したことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の可変焦点レンズを用いたオートフォーカス装置。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか1項に記載の可変焦点レンズを用いた撮像装置。
【請求項17】
請求項15に記載のオートフォーカス装置を用いた撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−271095(P2009−271095A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102732(P2008−102732)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(302014860)イーメックス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(302014860)イーメックス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
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