説明

可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク、可変焦点レンズおよび可変焦点メガネ

【課題】消費電力の低減を実現し、商品価値の低下を防止する可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク、可変焦点レンズおよび可変焦点メガネを提供することを目的とする。
【解決手段】第1基板19と、この第1基板19の表面に製膜された第1透明導電膜21と、第1基板19と対向する第2基板41と、この第2基板41の裏面に製膜された第2透明導電膜43と、第1基板19の表面と第2基板41の裏面との間に配置された可変焦点部5と、を備え、第1透明導電膜21が、レーザによって可変焦点部5と対向する領域を含む第1領域31と、この第1領域31以外の領域33とに分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変焦点部へ電圧を印加することで焦点を可変とする光学部材として用いられる可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク、可変焦点レンズおよび可変焦点メガネに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変焦点液晶レンズ用セミフィニッシュトブランクは、表面が凸湾曲である下基板と、この表面と対向して接合される凹湾曲の裏面を有する上基板と、下基板と上基板の間に配置される可変焦点部などから構成される。下基板の表面と上基板の裏面には、透明導電膜などの薄膜がそれぞれ製膜されている。そして、透明導電膜を介して液晶材料へ電圧を印加することで、可変焦点部の屈折率を変化させることができるため、例えば、遠近両用メガネのレンズとして用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/256977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された構成では、上記可変焦点部はレンズの一部領域にしか存在していないにもかかわらず、透明導電膜は下基板の表面と上基板の裏面の全面に製膜されている。このため、可変焦点部へ電圧を印加するとレンズ全体に電圧がかかってしまう。可変焦点メガネの消費電力が高いと、頻繁に充電が必要となったり、容量の大きい電池を用いなくてはならなかったりして、可変焦点メガネとしての商品価値が低下してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、消費電力の低減を実現し、商品価値の低下を防止することが可能な可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク、可変焦点レンズおよび可変焦点メガネを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1基板と、第1透明導電膜と、第2基板と、第2透明導電膜と、可変焦点部と、第1領域と、第2領域と、を備えている。第1透明導電膜は、第1基板の表面に製膜されている。第2基板は、第1基板と対向する。第2透明導電膜は、第2基板の裏面に製膜されている。可変焦点部は、第1基板の表面と第2基板の裏面との間に配置されている。第1領域は、第1透明導電膜における可変焦点部と対向する領域である。第2領域は、第1透明導電膜における第1領域以外の領域に分離されている。
【0007】
また、本発明は、第2透明導電膜が、可変焦点部と対向する領域を含む第3領域と、この第3領域以外の第4領域とに分離されていてもよい。
【0008】
また、本発明は、第1透明導電膜に接続された第1内部電極と、第2透明導電膜に接続された第2内部電極と、を備え、第1領域は、第1内部電極と対向する第1透明導電膜の領域を含んでおり、第2領域は、第2内部電極と対向する第2透明導電膜の領域を含んでいることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、第1基板と、第1透明導電膜と、第2基板と、第2透明導電膜と、可変焦点部と、第1領域と、第2領域と、第3領域と、第4領域と、第1印加領域と、第2印加領域と、を備えている。第1基板は、表面に液晶保持部を有する。第1透明導電膜は、第1基板の表面に製膜されている。第2基板は、第1基板と対向する。第2透明導電膜は、第2基板の裏面に形成されている。可変焦点部は、液晶保持部の表面と第2基板の裏面との間に配置されている。第1領域は、第1透明導電膜における可変焦点部と対向する領域である。第2領域は、第1透明導電膜における第1領域以外の領域に分離されている。第3領域は、第2透明導電膜における可変焦点部と対向する領域である。第4領域は、第2透明導電膜における第3領域以外の領域に分離されている。第1印加領域は、可変焦点部を覆う第1領域に形成されている。第2印加領域は、第1印加領域と対向する第2透明導電膜の領域を含むとともに、可変焦点部を覆う第2領域に形成されている。
【0010】
また、本発明は、第1透明導電膜に接続された第1内部電極と、第2透明導電膜に接続された第2内部電極と、をさらに備え、第1領域は、第1内部電極と対向する第1透明導電膜の領域を含むとともに、第3領域は、第2内部電極と対向する第2透明導電膜の領域を含んでおり、第2内部電極と対向する第2透明導電膜の領域と第2印加領域とを接続する第3領域の接続領域は、第1内部電極と対向する第1透明導電膜の領域と第1印加領域とを接続する第1領域の接続領域と対向する位置からずれた位置に設けられていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の可変焦点レンズは、第1基板と、第1透明導電膜と、第2基板と、第2透明導電膜と、可変焦点部と、第1内部電極と、第2内部電極と、第1端子および第2端子と、第1領域と、第2領域と、を備えている。第1透明導電膜は、第1基板の表面に製膜されている。第2基板は、第1基板と対向する。第2透明導電膜は、第2基板の裏面に製膜されている。可変焦点部は、第1基板の表面と第2基板の裏面との間に配置されている。第1内部電極は、第1透明導電膜に接続されている。第2内部電極は、第2透明導電膜に接続されている。第1端子および第2端子は、第1内部電極および第2内部電極にそれぞれ接続されており、可変焦点レンズの側面に設けられている。第1領域は、第1透明導電膜における可変焦点部と対向する領域である。第2領域は、第1透明導電膜における第1領域以外の領域に分離されている。
【0012】
さらに、本発明の可変焦点レンズは、所定の回路部とともに可変焦点メガネを構成することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク、可変焦点レンズおよび可変焦点メガネは、消費電力の低減を実現し、商品価値の低下を防止することができる。
【0014】
すなわち、必要な領域のみ電圧を印加できるように透明導電膜を分離しているので、透明導電膜の有無による屈折率および透過性の影響をほとんど受けることがない。その結果、透明導電膜の境界線を目立たせることなく消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る可変焦点メガネの全体構成図。
【図2】(a)は、本発明の実施の形態1に係る可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランクを構成する下基板の正面図。(b)は、そのA−A線断面図。(c)は、そのA−B線断面図。
【図3】(a)は、本発明の実施の形態1に係る可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランクを構成する上基板の正面図。(b)は、そのB−A線断面図。(c)は、そのB−B線断面図。
【図4】(a)は、本発明の実施の形態1に係る可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランクの正面図。(b)は、そのC−C線断面図。
【図5】本発明の実施の形態1に係る可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランクを製造するためのフローチャート。
【図6】(a)は、本発明の実施の形態2に係る可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランクの正面図。(b)は、そのC−C線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下に、本発明の一実施形態に係る可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランクについて、図面とともに詳細に説明する。図1は、本実施形態の可変焦点メガネレンズ用セミフィニッシュトブランクからサーフェーシング加工、エッジング加工などの所定の工程を経て得られる可変焦点レンズ1を可変焦点メガネ3として構成した概略構成図である。
【0017】
可変焦点レンズ1は、その中心からずれた下方領域の一部に、可変焦点部5を有している。
【0018】
メガネフレーム7には、図示しない電池およびセンサ回路などを有する回路部9が設けられている。例えば、加速度センサを用いたセンサ回路は、可変焦点メガネ3を装着した人の頭部の上下角度によってオンオフ信号を出力する機能を備えており、可変焦点部5へ印加される電圧を制御する。
【0019】
このような構成により、可変焦点メガネ3は、センサ回路からの信号に基づいて可変焦点部5への電圧の印加が切り換えられる。これにより、可変焦点部5の見かけ上の屈折率を変えることで遠近両用メガネとして機能させることができる。
【0020】
次に、可変焦点メガネ3の可変焦点レンズ1を加工する前の段階である可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11の構成について説明する。
【0021】
可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11は、第1基板19、第2基板41および図示しないコレステリック液晶材料17(可変焦点部5を構成する)などを備えている。そして、第1基板19の凸湾曲面とこれに対向する第2基板41の凹湾曲面との間には、可変焦点部5が配置されている。
【0022】
図2(a)は、可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11を構成する第1基板19を示している。第1基板19は、プラスチック(例えば、チオウレタン)によって構成されている。そして、第1基板19上には、図2(b)に示すように、第1基板19側から順に、第1透明導電膜21、第1内部電極23、第1絶縁層(図示せず)および第1配向膜25が製膜されている。
【0023】
また、第1基板19の凸湾曲面上の一部領域には、図2(c)に示すように、液晶保持部27が形成されている。そして、液晶保持部27の上面には、フレネルレンズ部29が形成されている。フレネルレンズ部29は、液晶保持部27の上表面全体に形成されるのではなく、上面の外周から一定の間隔を隔てて内側の位置に形成されている。これにより、製造工程において、コレステリック液晶材料17がフレネルレンズ部29からはみ出るような量で塗布された場合でも、液晶保持部27の上表面上にとどまるように余裕を持たせることができる。
【0024】
第1透明導電膜21は、第1基板19の表面である凸湾曲面上に製膜されている。そして、第1透明導電膜21の液晶保持部27に対応する領域上には、第1透明導電膜21を介して第1配向膜25が製膜されている。また、第1透明導電膜21上には、第1基板19の外周部から可変焦点部5(液晶保持部27)へ向かう途中まで第1内部電極23が形成されている。
【0025】
コレステリック液晶材料17は、第1配向膜25の表面に塗布される。
また、第1透明導電膜21は、可変焦点部5と対向する領域(第1印加領域)35と第1内部電極23と対向する領域37とを含む領域(第1領域)31と、それ以外の領域(第2領域)33と、にレーザ(図示せず)の加工跡によって分離されている。
【0026】
すなわち、領域31は、第1透明導電膜21における領域35と、領域(第1内部電極23の印加領域)37と、接続領域39とによって構成されている。領域35は、可変焦点部5を覆う第1透明導電膜21の領域、換言すれば、可変焦点部5と対向する領域を囲う第1透明導電膜21の領域である。領域37は、第1内部電極23と対向する第1透明導電膜21の領域である。接続領域39は、可変焦点部5の領域35と第1内部電極23の領域37とを接続する領域である。
【0027】
このように、第1透明導電膜21は、レーザの加工跡によって領域31と、領域31以外の領域33とに分離されている。これにより、領域31(領域35,37,39)は、領域33と電気的に非接続となっている。この結果、第1内部電極23から印加された電圧は、可変焦点部5だけに印加され、可変焦点メガネ3の消費電力を低減することができる。
【0028】
可変焦点部5の領域35は、図2(a)に示すように、液晶保持部27の外周を囲うように略楕円形状となっており、この外周の一部に、ほぼ同じ幅を有する接続領域39と第1内部電極23の領域37とが接続されている。
【0029】
次に、図3(a)〜図3(c)を用いて、第1基板19の凸湾曲面と対向する第2基板41について説明する。
【0030】
第2基板41の裏面側には、図3(b)に示すように、第2基板41側から順に、第2透明導電膜43、第2内部電極45、第2絶縁層(図示せず)および第2配向膜47が製膜されている。
【0031】
第2基板41は、第1基板19と同様に、プラスチックから構成されているが、フレネルレンズ部は形成されていない。
【0032】
第2透明導電膜43は、第2基板41の裏面側である凹湾曲面に製膜されている。可変焦点部5に対向する第2透明導電膜43の領域には、第2配向膜47が製膜されている。また、第2透明導電膜43上には、第2基板41の外周から可変焦点部5へ向かう途中まで第2内部電極45が形成されている。
【0033】
そして、第2透明導電膜43は、図3(a)に示すように、可変焦点部5と対向する領域、および第2内部電極45と対向する領域を含む領域(第3領域)49と、この領域49以外の領域(第4領域)51と、にレーザの加工跡によって分離されている。
【0034】
すなわち、領域49は、領域(第2印加領域)53と、領域55と、接続領域57とによって構成されている。領域53は、可変焦点部5を覆う第2透明導電膜43の領域であって、換言すれば、可変焦点部5と対向する第2透明導電膜43の領域を囲う領域である。領域55は、第2内部電極45の印加領域であって、第2内部電極45と対向する領域である。接続領域57は、可変焦点部5の領域53および第2内部電極45の領域55を接続する領域である。
【0035】
このように、第2透明導電膜43は、レーザの加工跡によって、領域49と、領域49以外の領域51とに分離されている。これにより、領域49(領域53,55,57)は、領域51と電気的に非接続となっている。
【0036】
可変焦点部5に電圧を印加させる領域53は、図3(a)に示すように、第1基板19側の液晶保持部27の外周を囲うように略楕円形状となっており、この外周の一部に、ほぼ同じ幅を有する接続領域57と第2内部電極45の領域37,55とが接続されている。
【0037】
第1基板19および第2基板41は、詳細は後述するが、第1基板19の凸湾曲面上にコレステリック液晶材料17および接着剤59が塗布され、第2基板41の凹湾曲面と接合される。図4(a)および図4(b)は、この接合した際の状態を示したものである。
【0038】
ここで、可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11を正面から見ると、図4(a)に示すように、可変焦点部5を覆う第1透明導電膜21の領域(第1印加領域)35は、可変焦点部5を覆う第2透明導電膜43の領域(第2印加領域)53に含まれるように配置されている。
【0039】
これは、領域35を形成する際、第1基板19は液晶保持部27を有しているので、液晶保持部27の外周を目印としてレーザの照射が正確にできるのに対し、領域53の形成時には第2基板41に目印がないため、可変焦点部5よりも小さくならないように、領域53を大きめに形成しているためである。したがって、領域53を形成するために、より精度の高い加工を必要としたり、別途の目印を基板に形成したりする必要がない。なお、図4(b)の矢印は、第1・第2透明導電膜21,43の一部をレーザによって除去した箇所を示している。
【0040】
また、領域35を除く領域31と、領域53を除く領域49とは、第1基板19と第2基板41とを接合した状態において互いに対向しないように構成されている。換言すれば、領域31の接続領域39および第1内部電極23と対向する第1透明導電膜21を含む領域37と、領域49の接続領域57および第2内部電極45と対向する第2透明導電膜43を含む領域55とは、互いに対向しないようにずれた位置に配置されている。
【0041】
これにより、可変焦点メガネ3の消費電力を低減することができる。すなわち、第1基板19と第2基板41とを接合した状態で、領域35を除く領域31と領域53を除く領域49とが、正面視において重ならないように配置することで、全体の静電容量を小さくすることができる。
【0042】
次に、図5を用いて、可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11の製造方法について説明する。
【0043】
ステップ1〜ステップ6は、第1基板19、ステップ7〜ステップ11は、第2基板41に、それぞれ薄膜などを製膜する工程を示している。そして、ステップ12は、第1基板19と第2基板41とを貼り合わせる工程を示している。
【0044】
ステップ1では、スパッタリングによって、第1基板19の凸湾曲面上に第1透明導電膜21を製膜する。第1透明導電膜21の厚みは、10〜30nmが好ましい。
【0045】
ステップ2では、第1内部電極23を形成する。より具体的には、第1内部電極23を象ったマスキングシートを第1基板19に被せ、スピンコートにより第1内部電極23を製膜した後、マスキングシートを除去する。ここで、第1内部電極23は、第1基板19の所定の内部から端部(外周)へ延びるように形成される。これにより、レンズの加工の際に、より多くの領域を無駄なく利用できる。ここで、本実施形態では、第1内部電極23の形成を第1透明導電膜21の製膜よりも後に行ったが、これらの順序を逆にしてもよい。
【0046】
ステップ3は、レーザのパターニングを実施する工程である。レーザによって液晶保持部27の外周および第1内部電極23を囲うように第1透明導電膜21に対してレーザを照射させる。これにより、領域31を領域31以外の領域33と電気的に分離させることができる。このとき、可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11の縁部によって位置決めし、液晶保持部27の外周を目印にしながらレーザ加工を行うが、第1基板19の適切な箇所に、例えば、目立たない凸部を形成し、これを目印としてもよい。
【0047】
レーザは、第1透明導電膜21のみを除去できるものが好ましい。すなわち、第1透明導電膜21の下に設けられた第1基板19まで除去してしまうものや、領域31と、領域31以外の領域33との電気的非接触が不十分なものは好ましくない。本実施形態では、波長が1064nmのYVO4レーザを用い、18w、60kHZとしてレーザによるレーザ加工跡を形成した。
【0048】
ステップ4は、第1絶縁層(図示せず)を製膜する工程である。第1絶縁層は、スパッタリングによって製膜される。ここで、第1絶縁層は、二酸化珪素膜によって構成されている。
【0049】
その後、ステップ5において、第1基板19の液晶保持部27の表面上に第1配向膜25を製膜して配向処理を行う。
【0050】
ステップ6では、第1配向膜25上にコレステリック液晶材料17を塗布し、コレステリック液晶材料17が塗布された領域を除いた第1絶縁層上に接着剤59を塗布する。
【0051】
ここで、第2基板41側の工程については、コレステリック液晶材料17および接着剤59の塗布工程(ステップ6)を除き、第1基板19側の工程とほぼ同様の工程である。このため、ここでは、ステップ7からステップ11の説明を省略する。すなわち、ステップ1〜5は、それぞれステップ7〜11に相当する。
【0052】
なお、第2基板41には液晶保持部27が存在していないが、液晶保持部27と対向配置される第2基板41側の領域には、第2配向膜47が製膜されて配向処理される(ステップ11)。
【0053】
最後に、ステップ12において、第1基板19および第2基板41に薄膜など製膜した後、第1・第2基板19,41を、図示しない密閉容器へ格納し、減圧環境下において接合させる。
【0054】
本実施形態の可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11では、以上のように、第1透明導電膜21が、レーザによって、可変焦点部5と対向する領域を含む領域31と、領域31以外の領域33とに分離され、第2透明導電膜43が、レーザによって可変焦点部5と対向する領域を含む領域49と、この領域49以外の領域51とに分離されている。
【0055】
これにより、マスキング面を目立たせることなく消費電力の低減を実現し、可変焦点レンズ1としての商品価値の低下を防止することができる。すなわち、第1・第2透明導電膜21,43の有無による屈折率および透過性への影響をほとんど受けることなく、電池を充電する期間を延ばすことが可能となる。
【0056】
また、可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11は、正面視において、領域31と領域49とが可変焦点部5を除き、ほとんど重なり合わないように配置されている。これにより、可変焦点メガネ3の消費電力を更に抑えることができる。しかも、第1内部電極23の領域37と第2内部電極45の印加領域55とが対向せず、接続領域39と接続領域57とが対向しないように配置されている。これにより、レーザによるレーザ加工跡の重なり合いは、接続領域39と領域53とが重なる箇所の2点しかない。また、この部分は、可変焦点部5の外側に位置するため、可変焦点メガネ3の使用時にはほとんど目立たない。
【0057】
本実施形態では、第1透明導電膜21および第2透明導電膜43の両方に対して、レーザによる照射を行ったが、いずれか一方のみ照射してもよい。これにより、上述の効果を維持しつつ、可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク11の製造工程を簡略化することができる。
【0058】
また、液晶保持部27を第1基板19の凸湾曲面に形成する代わり、第2基板41の凹湾曲面に形成してもよい。
【0059】
(実施の形態2)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランクの説明図である。ここでは、上述した実施の形態1と同一の部材、構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
なお、上述した実施の形態1では、レーザを使って領域31を形成する際には、液晶保持部27の外周にレーザ加工跡を形成した。これに対して、本実施形態では、液晶保持部27の上面であってフレネルレンズ部29の外周にレーザを照射させて領域31を形成している。第2基板41は、上述した実施の形態1と同様に構成することができるが、領域49の領域35の面積をさらに小さくすることができる。
【0061】
このような構成によって、可変焦点メガネの消費電力をさらに抑えることができる。
なお、上述した実施の形態1,2では、ともにレーザを用いて第1・第2透明導電膜21,43の一部領域を分離する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
例えば、フォトエッチング等の他の手段を用いて、第1透明導電膜の領域を、第1領域と第2領域とに分離し、同様に、第2透明導電膜の領域を、第3領域と第4領域とに分離してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランクは、消費電力を抑制することができるという効果を奏することから、メガネのレンズやカメラなどの光学部材に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 可変焦点レンズ
3 可変焦点メガネ
5 可変焦点部
7 メガネフレーム
9 回路部
11 可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク
17 コレステリック液晶材料
19 第1基板
21 第1透明導電膜
23 第1内部電極
25 第1配向膜
27 液晶保持部
29 フレネルレンズ部
31 領域(第1領域)
33 領域(第2領域)
35 領域(第1印加領域)
37 領域
39 接続領域
41 第2基板
43 第2透明導電膜
45 内部電極(第2内部電極)
47 第2配向膜
49 領域(第3領域)
51 領域(第4領域)
53 領域(第2印加領域)
55 領域
57 接続領域
59 接着剤





【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板の表面に製膜された第1透明導電膜と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第2基板の裏面に製膜された第2透明導電膜と、
前記第1基板の表面と前記第2基板の裏面との間に配置された可変焦点部と、
前記第1透明導電膜における前記可変焦点部と対向する領域である第1領域と、
前記第1透明導電膜における前記第1領域以外の領域に分離された第2領域と、
を備えている可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク。
【請求項2】
第1基板と、
前記第1基板の表面に製膜された第1透明導電膜と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第2基板の裏面に製膜された第2透明導電膜と、
前記第1基板の表面と前記第2基板の裏面との間に配置された可変焦点部と、
前記第2透明導電膜における前記可変焦点部と対向する領域である第3領域と、
前記第2透明導電膜における前記第3領域以外の領域に分離された第4領域と、
を備えている可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク。
【請求項3】
前記第1透明導電膜に接続された第1内部電極と、
前記第2透明導電膜に接続された第2内部電極と、
をさらに備え、
前記第1領域は、前記第1内部電極と対向する前記第1透明導電膜の領域を含んでいる、
請求項1に記載の可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク。
【請求項4】
前記第1透明導電膜に接続された第1内部電極と、
前記第2透明導電膜に接続された第2内部電極と、
をさらに備え、
前記第3領域は、前記第2内部電極と対向する前記第2透明導電膜の領域を含んでいる、
請求項2に記載の可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク。
【請求項5】
表面に液晶保持部を有する第1基板と、
前記第1基板の表面に製膜された第1透明導電膜と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第2基板の裏面に形成された第2透明導電膜と、
前記液晶保持部の表面と前記第2基板の裏面との間に配置された可変焦点部と、
前記第1透明導電膜における前記可変焦点部と対向する領域である第1領域と、
前記第1透明導電膜における前記第1領域以外の領域に分離された第2領域と、
前記第2透明導電膜における前記可変焦点部と対向する領域である第3領域と、
前記第2透明導電膜における前記第3領域以外の領域に分離された第4領域と、
前記可変焦点部を覆う前記第1領域に形成された第1印加領域と、
前記第1印加領域と対向する前記第2透明導電膜の領域を含むとともに、前記可変焦点部を覆う前記第2領域に形成された第2印加領域と、
を備えている可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク。
【請求項6】
前記第1透明導電膜に接続された第1内部電極と、
前記第2透明導電膜に接続された第2内部電極と、
をさらに備え、
前記第1領域は、前記第1内部電極と対向する前記第1透明導電膜の領域を含むとともに、前記第3領域は、前記第2内部電極と対向する前記第2透明導電膜の領域を含んでおり、
前記第2内部電極と対向する前記第2透明導電膜の領域と前記第2印加領域とを接続する前記第3領域の接続領域は、前記第1内部電極と対向する前記第1透明導電膜の領域と前記第1印加領域とを接続する前記第1領域の接続領域と対向する位置からずれた位置に設けられている、
請求項5に記載の可変焦点レンズ用セミフィニッシュトブランク。
【請求項7】
第1基板と、
前記第1基板の表面に製膜された第1透明導電膜と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第2基板の裏面に製膜された第2透明導電膜と、
前記第1基板の表面と前記第2基板の裏面との間に配置された可変焦点部と、
前記第1透明導電膜に接続された第1内部電極と、
前記第2透明導電膜に接続された第2内部電極と、
前記第1内部電極および前記第2内部電極にそれぞれ接続されており、レンズの側面に設けられた第1端子および第2端子と、
前記第1透明導電膜における前記可変焦点部と対向する領域である第1領域と、
前記第1透明導電膜における前記第1領域以外の領域に分離された第2領域と、
を備えている可変焦点レンズ。
【請求項8】
第1基板と、
前記第1基板の表面に製膜された第1透明導電膜と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第2基板の裏面に製膜された第2透明導電膜と、
前記第1基板の表面と前記第2基板の裏面との間に配置された可変焦点部と、
前記第1透明導電膜に接続された第1内部電極と、
前記第2透明導電膜に接続された第2内部電極と、
前記第1内部電極および前記第2内部電極にそれぞれ接続されており、レンズの側面に設けられた第1端子および第2端子と、
前記第1端子および前記第2端子を通じて前記可変焦点部へ電圧を印加させるとともに、この印加電圧を制御する回路部と、
前記第1透明導電膜における前記可変焦点部と対向する領域である第1領域と、
前記第1透明導電膜における前記第1領域以外の領域に分離された第2領域と、
前記第2透明導電膜における前記可変焦点部と対向する領域である第3領域と、
前記第2透明導電膜における前記第3領域以外の領域に分離された第4領域と、
を備えている可変焦点メガネ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−133106(P2012−133106A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284897(P2010−284897)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】