説明

可撓性の薄い印刷電池およびデバイス並びにその製造方法

【課題】平型の、可撓性電気化学電池を提供する。
【解決手段】可撓性の非-導電性基板材料の第一部分上に直接印刷された亜鉛アノード、封止されたハウジング、および塩化亜鉛と水とゲル化剤とを含むゲル化された電解液を含む炭素-亜鉛電池であって、前記亜鉛アノードおよび前記ゲル化された電解液が前記ハウジング内に収容され、前記亜鉛アノードが、亜鉛、酢酸亜鉛及び2.0〜4.0×106なる範囲の分子量を持つポリビニルピロリドンを含む水性アノード処方物を前記可撓性の非-導電性基板材料の第一部分上に直接印刷することによって得ることができることを特徴とする炭素-亜鉛電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の薄い印刷電池およびデバイス並びにこのような電池およびデバイスの製造方法に関する。より詳しく言えば、本発明は、一個以上の電極が、印刷できるインキを用いて可撓性基板上に印刷されている、可撓性の薄い印刷電池およびこのような電池により動力供給されるデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムに基く化学的作用を利用した、可撓性の平型薄層電池は公知であり、そこでその電極は、様々な堆積技術、例えばパルスレーザー堆積法、スピン塗布およびスパッタリング技術を利用して、基板上にかつ物質のフィルムを堆積することにより、処方される。これら技術は、比較的コスト高な、また複雑な装置の使用を必要とする傾向があり、更にそれ自体が、高い処理能力を持つ、経済性のよい製造法とはいえない。更に、電源を必要とする多くのデバイス、例えば音響的および/または視覚的情報を出力するように強化された、新作物の包装並びに挨拶状は、高速のウエブを基本とする印刷ラインで製造される。リチウムを基本とする技術は、単位用途当たりのこのような低コストを達成するための、魅力ある電源ではない。該デバイスおよび該電源両者を、単一工程で製造できることが、経費節減の機会をもたらす。従って、ウエブを基本とする工程において、ステンシル処理、スクリーン印刷または他の厚膜塗布工程によって製造できる、経済的な電気化学的電源の開発に対する要求がある。ここで使用する用語「プリント」、「印刷」および「印刷可能な(印刷性の)」とは、あらゆるこのような厚膜塗布工程を言うものとし、結果的に生成された層は、10〜250μmなる範囲の厚みを持ち、またステンシル処理およびスクリーン印刷処理両者を包含する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的の一つは、別個のアノード集電装置を必要とすることなしに、非-導電性基板上に直接印刷することのできる、印刷性の亜鉛インキを提供することにある。
本発明の更なる目的は、別個のアノード集電装置を必要とすることなしに、可撓性の非-導電性ポリマー基板上に、直接印刷することのできる、印刷性の亜鉛インキを提供する
ことにある。
更なる本発明の目的は、印刷アノード、印刷カソード集電装置、印刷カソードおよび印刷セパレータ/電解液を備えた、電気化学電池を提供することにある。
本発明の目的は、更に印刷亜鉛アノード、印刷二酸化マンガンカソードおよび印刷金属カソード集電装置を、塩化亜鉛を含む電解液中に含有する、電気化学電池を提供することにある。
更に、本発明の目的は、酢酸亜鉛含有電解液中に、印刷亜鉛アノード、印刷二酸化マンガンカソードおよび印刷金属カソード集電装置を含有する、電気化学電池を提供することにある。
本発明の更なる目的は、第一の可撓性ポリマー基板上に印刷されたアノード、第二の可撓性ポリマー基板上に印刷されたカソード集電装置、該印刷されたカソード集電装置上に直接印刷されたカソードを含み、該第一および第二可撓性ポリマー基板は、実質的に一緒に結合されて、電池ハウジングまたはパッケージを形成している、電気化学電池を提供することにある。
【0004】
本発明の更なる目的は、両者共に平板状の配列で、第一の非-導電性基板材料片上に直接印刷された、アノードおよびカソード集電装置、該カソード集電装置上に直接印刷された、印刷カソードを含み、また第二の基板材料片が、実質的に第一の基板材料片と一緒に結合されて、電池ハウジングまたはパッケージを形成している、電気化学電池を提供することにある。
本発明の更なる目的は、非-導電性基板上に印刷された、少なくとも1つの電極およびセパレータとしても機能する、印刷性のゲル化されたポリマー電解液を含む、炭素-亜鉛電気化学電池を提供することにある。
本発明の更なる目的は、非-導電性基板上に印刷された、少なくとも1つの電極および印刷性のゲル化されたポリマーセパレータを含む、アルカリ電気化学電池を提供することにある。
【0005】
本発明の更なる目的は、非-導電性基板上に印刷された、少なくとも1つの電極を含む電気化学電池を提供することにあり、ここで該基板は、可撓性の電池ハウジングまたはパッケージを形成し、また電流は、不連続のタブを利用して、該パッケージの内部と、該パッケージの外部との間を流れ、該外部タブと該内部電池の化学的作用との間の電気化学的な相溶性を保証し、結果的により耐久性の高い外部タブの開発を可能とし、かつ該パッケージまたはハウジングの封止部を介する電解液の漏れを生じる可能性を下げる。
本発明の更なる目的は、共に平板状の印刷電極を持つ電池内で使用するのに、特に適した、印刷可能な、ゲル化された塩化亜鉛電解液を提供することにある。
本発明の更なる目的は、このような印刷された可撓性電池によって動力が供給され、かつ、1またはそれ以上の印刷された部品を持つデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
薄い、可撓性の印刷電池が提供され、この電池は、印刷アノードまたは印刷カソードアセンブリーであり得る、少なくとも1つの印刷電極と、封止されたハウジングまたはパッケージ内に収容された電解液とを含み、更にこの電池から、該電池により動力供給されるデバイスに電流を供給するための、外部接点またはタブを含む。該電極アセンブリーは、共に平板状のまたは共に面状の電極配列で組み込むことができる。
該電池用の外部接点は、好ましくは該電池パッケージに対して外部の、第一の端子端部および該電池パッケージの封止領域内に位置する第二端子端部を持つ。このような外部接点は、該ハウジングまたはパッケージの封止領域において不連続であると言われるであろう。電流は、同様に該電池パックの封止領域内に位置する、端子端部を持つ別の内部集電装置によって、該電極と該外部接点との間を流れる。該内部集電装置は、該電極とは異なる物質であり得、あるいはまた該電極が十分に導電性である場合には、該電極自体の一部を構成することができる。
【0007】
該アノードは、非-導電性基板上に直接印刷された亜鉛インキを含み、また十分に導電性であって、別個のアノード集電装置の必要性を排除する。該カソードアセンブリーは、印刷カソード集電装置および該印刷カソード集電装置上に直接印刷されたカソードを含む。炭素-亜鉛電池における該カソード集電装置は、該非-導電性基板上に直接印刷された導電性カーボンインキ、あるいはまた該基板上に印刷された銀インキ粒子を含み、また次に導電性炭素フィルムで覆われる。アルカリ電解液またはアセテート電解液を含む電池において、該集電装置は、銀インキまたは他の導電性金属インキであり得る。この電解液は、使用する電極材料に基いて選択され、また水性塩化亜鉛溶液、ルクランシェ電解液、アルカリ溶液、または酢酸亜鉛の水性溶液であり得る。
該アノードインキおよび該カソード集電装置用の該非-導電性基板は、好ましくは一緒に結合して電池パッケージまたはハウジングを形成し得る、可撓性の非-導電性ポリマー材料である。本発明の印刷電池の様々な局面が、本発明の範囲を逸脱することなしに、別の電池化学作用において利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】本発明の電気化学電池を示す。
【図1B】図1AのラインB-Bに沿って取った断面図である。
【図2】本発明の一態様に従う電池接点を持つ電気化学電池を示す図である。
【図3】本発明の別の態様に従う電池接点を持つ電気化学電池を示す図である。
【図4】本発明の更に別の態様に従う電池接点を持つ電気化学電池を示す図である。
【図5】本発明の更に別の態様に従う電池接点を持つ電気化学電池を示す図である。
【図6A】本発明の更に別の態様に従う電池接点を持つ電気化学電池を示す図である。
【図6B】本発明の更に別の態様に従う電池接点を持つ電気化学電池を示す図である。
【図6C】本発明の更に別の態様に従う電池接点を持つ電気化学電池を示す図である。
【図7】本発明による印刷アノードと亜鉛メッシュタブを示す図である。
【図8】本発明による印刷カソード集電装置およびタブを示す図である。
【図9】本発明による共-平板状印刷アノードおよびカソードを示す図である。
【図10】本発明による円形の共-平板状アノードおよびカソードを示す図である。
【図11】ゲル化電解液対液状電解液を使用した電池の内部抵抗を示すグラフである。
【図12】本発明による印刷電池により動力供給された音響カードデバイス用の印刷回路を示す。
【図13】本発明による印刷電池により動力供給された音響カードデバイス用の最終的な回路を示す。
【図14】増粘剤としての、ポリエチレンオキシドを用いたポリマー電解液のチキソトロピー性と、ヒュームドシリカとを比較したグラフである。
【図15】必要とされるカソード面積および放電効率を、所定の厚みを持つカソードを得るための、水性カソードインキに関する、グラファイトの量(質量%)の関数としてプロットしたグラフである。
【図16】必要とされるカソード面積および放電効率を、同一の厚みを持つカソードを得るための、非水系カソードインキに関する、グラファイトの量(質量%)の関数としてプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の薄い、可撓性印刷電池1の部品は、印刷アノード3、印刷カソード5、カソード集電装置7、セパレータ9、および可撓性の薄い電池パッケージ、ハウジングまたは閉鎖容器11内に収容された水性電解液を含む。添付した図1Aおよび1Bを参照のこと。
【0010】
アノード
我々は、効果的で導電性の水性亜鉛インキが、処方可能であり、また先ずアノード集電装置を印刷し、あるいは別個のアノード集電装置として機能するように、導電性基板を与える必要なしに、該非-導電性物質の表面に直接印刷できることを見出した。ここで使用する用語「水性」とは、該アノードインキ処方物において、水が少なくとも1種の溶剤として使用されていることを意味する。我々は、過剰Zn+2カチオンの存在が、低抵抗、高-導電性の印刷性亜鉛インキの生成を可能とすることを見出した。本発明の炭素-亜鉛電池、即ち塩化亜鉛含有電解液を用いた電池において、過剰Zn+2カチオン源は、酢酸亜鉛(Zn(OOCCH3)2・2H2O)の水性溶液、例えば製品名Z20の下で、フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific)社から入手できるもの等である。理論に拘泥するつもりはないが、該過剰Zn+2カチオン源が、該インキ処方物において使用される、該ポリマーバインダの配座および凝集状態を変更し、結果として該ポリマーの該亜鉛粒子上に絶縁層を形成する傾向を低下させ、それによって該亜鉛の粒子-粒子間接触を改善するものと考えられる。本発明の、このような炭素-亜鉛電池の態様においては、ポリビニルピロリドン(PVP)バインダが好ましく、また好ましくは2.2〜2.8×106なる範囲の分子量を持つ。硝酸亜鉛および硫酸亜鉛は、過剰亜鉛カチオンの適当な源ではない。というのは、これらは強力な酸化剤であり、亜鉛を酸化するであろう。塩化亜鉛および他の亜鉛ハライドは、塩化亜鉛電解質中で使用する、このような亜鉛インキ処方物における、過剰亜鉛カチオンの適当な源ではない。なんとなれば、該PVPバインダは、塩化亜鉛溶液中で均一な分散物を生成するように溶解することがないからである。従って、酢酸亜鉛は、塩化亜鉛電解質中で使用する、該亜鉛インキ処方物における、過剰亜鉛カチオン源として好ましい。というのは、該PVPバインダは、まさに酢酸亜鉛溶液中で均一な分散物を生成するからである。
【0011】
アルカリ電池、即ちアルカリ電解液、例えば水酸化カリウム溶液を使用する電池において、該アノードインキ用の該過剰Zn+2カチオン源は、好ましくは塩化亜鉛である。このインキ処方物は、好ましくはポリエチレンオキシド(PEO)バインダを使用し、その分子量は、好ましくは約600,000であり、これは塩化亜鉛溶液には可溶であるが、典型的なアルカリ電解液には不溶である。
該亜鉛インキの亜鉛末は、ビッグリバージンク(Big River Zinc)、ユニオンミニエール(Union Miniere)またはノランダ(Noranda)等の製造元から市販品として入手でき、また好ましくは500〜1600ppmの鉛と合金化されている。あるいはまた、この亜鉛は、ノランダ等の亜鉛供給元から市販品として入手できる、BIA亜鉛(ビスマス、インジウムおよびアルミニウム合金)である。本発明の亜鉛アノードインキは、極めて微細な亜鉛末またはダストを使用する。亜鉛ダストは、好ましくは10〜60μmなる範囲の、マイクロトラック(Microtrac)粒子径d(50)を有し、また該粉末が、270メッシュ(USA標準)の篩を通過するような寸法を持つ。経験法によれば、このd(50)の値は、所定のインキ層の厚みの1/2を越えるべきではない。従って、所定のインキ層の厚みが、50μmである場合には、この粉末成分のd(50)値は、一般に25μmを越えるべきではない。
【0012】
本発明の炭素-亜鉛電気化学電池態様における、好ましい亜鉛インキの他の成分は、電池電解液を含む、この電池の化学的作用と相溶性の、適当なバインダを含む。本発明の炭素-亜鉛電池態様において、2.0〜4.0×106なる範囲の分子量を持つポリビニルピロリドン(PVP)の水性溶液は、上記の如き過剰Zn+2カチオン源、例えば酢酸亜鉛との組み合わせで使用される。PVPは酢酸亜鉛溶液には可溶性であるが、伝統的な炭素-亜鉛電池用の電解液、例えば塩化亜鉛および塩化アンモニウムには不溶である。PVPは、ニュージャージー、ウエインのISPテクノロジーズ社(ISP Technologies Inc.)から、PVP-K120なる製品名の下で市販品として入手できる。アルカリ電解液においては、該亜鉛インキに対する好ましいバインダは、好ましくは500,000〜700,000なる範囲、および最も好ましくは600,000なる分子量を持つ、ポリエチレンオキシド(PEO)である。
水性溶液中のPVPバインダの関心事の一つは、得られるインキが、高い表面張力、高い極性および特に低湿度環境における迅速乾燥性並びに水による亜鉛の腐食反応に起因する、水素ガスの発生を生じる場合があることである。我々は、水と混和性の非-プロトン系溶剤を使用し、また水よりも高い沸点を持つ、補助溶剤系が、このインキの表面張力を低下し、該インキの極性を減じ、このインキの乾燥速度を遅らせ、またガスの発生を抑制することを見出した。ここに記載する酢酸亜鉛を主成分とする亜鉛インキにおける好ましい補助溶剤系は、ミシガン、マスクゴンのハニーウエルバーディック&ジャクソン(Honeywell Burdick & Jackson)から、カタログ番号304-1として入手できるN-メチルピロリドン(NMP)である。NMPは、酢酸亜鉛の水性溶液に可溶である。
【0013】
バインダおよび溶剤系に加えて、本発明の亜鉛インキは、更に他の電池用添加剤を含み、有利な性能属性を生み出すことができる。例えば、本発明の亜鉛インキにおいて使用する亜鉛の、比較的微細な粒子径は、高いガス発生率をもたらす。アルカリ電池におけるガスの発生を抑えることが知られている界面活性剤は、燐酸根およびポリエチレンオキサイドおよび/またはポリプロピレンオキサイド鎖両者を含む。このような界面活性剤は、ユニオンカーバイド(Union Carbide)社の商品名トライトン(Triton) QS-44の下で市販品として入手できる。我々は、この種の界面活性剤が、酸性電解液、例えばルクランシェまたは塩化亜鉛電解液におけるガス発生を抑制する上で、より一層有利であることを見出した。ここで使用する、「ルクランシェ電解液」とは、塩化亜鉛および塩化アンモニウム両者を含む電解液である。
一旦亜鉛インキが処方されると、これは、可撓性のポリマー基板上に直接スクリーン印刷またはステンシル処理することができる。本発明の亜鉛インキは、十分な導電性を有しており、別個のアノード集電装置を印刷し、または本発明の該亜鉛インキから形成したアノードと接触状態に置く必要性を排除する。本発明の亜鉛インキから形成したこのアノードは、該亜鉛が消耗されるにも拘らず、放電中にその導電性を維持する。この電池ハウジング外部の負の端子を形成するアノードタブは、別のアノード集電装置との電気的な接触状態にあるというよりも、寧ろ本発明の亜鉛インキとの直接的な接触状態にある。
【0014】
好ましい基板材料は、該電池を可撓性パッケージ内に収納するのに利用される、可撓性の非-導電性ポリマー材料である。このような材料は、製品名95014として、ファーマセンターシェルビービル(Pharma Center Shelbyville)からラミネートとして入手でき、これは該パッケージの内面を形成する、エチレン-アクリル酸熱封止層とのラミネートである。当業者は、このアノードインキおよび該カソード集電装置用インキが、可撓性であっても、可撓性でなくてもよく、また該電池パッケージまたはハウジングを形成しても形成しなくてもよい、他の非-導電性材料上に直接印刷することもできることを理解するであろう。該アノードインキおよび該カソード集電装置用インキが適用される該表面は、最終的に該電池パッケージまたはハウジング内に配置される表面であろう。熱封止性の表面を与えることに加えて、このような表面は、一緒に圧力封止表面、エポキシ封止表面または他の材料接合手段をも与えることができる。外側または外側表面が保護ポリマーによって、および対向する内側が熱または圧力封止性のポリエチレンまたはポリプロピレンによって包囲された金属箔で構成される、積層体が通常利用可能である。このような積層体は、例えばケンタッキー、シェルビービルのファーマセンターシェルビービル社から、製品名95014として、日本国東京の、大日本印刷社(Dai Nippon Printing Co., Ltd.)から、製品名D-EL40Eとして、また日本国東京の、住友電気工業社から、製品名L-NY-Al-TRPP-Lとして入手できる。あるいはまた、エチレンメタクリル酸またはポリエチレンメタクリル酸熱封止性層との積層体が、ルイジアナホマーのルドローコーテッドプローダクツ(Ludlow Coated Products)社により製造されている。適当な積層体および結合した封止層は、当分野において公知であるように、数ある因子の中でも、特に使用する電解液の種類に基いて選択される。不透過性の金属箔層は、あらゆる種類の金属、例えばアルミニウム、ニッケル、銅およびステンレススチールであり得る。該保護ポリマー層は、好ましくはポリエステルまたはナイロンであるが、他のポリマー材料、例えばポリプロピレンまたはポリエチレンもこの層において利用できる。
スクリーン印刷の場合には、当分野において公知であるように、該インキの良好な印刷性を得るために、最適のメッシュ開口を決定することが重要である。考慮すべき因子は、亜鉛の粒径、インキの粘度、および他の剪断条件下での流動特性並びに十分な容量を確保するのに必要な、要求されるインキの厚みを含む。
【0015】
カソードアセンブリー
本発明の炭素-亜鉛電池のカソードアセンブリー(集電装置および電解二酸化マンガン、またはEMD活物質)は、可撓性基板上に印刷され、ここで該基板には、カソード集電装置用インキが、最小量の亀裂を持つまたは亀裂を殆ど持たずに、好ましくは該電池を収容するのに使用する、可撓性パッケージ材料の封止性の表面上に接着される。このような可撓性の電池収容積層体材料は、上記のように、ファーマセンターシェルビービル社から、製品名95014の下で入手できる。
【0016】
先ず、集電装置をステンシル、スクリーンまたの適当な印刷装置を用いて、該可撓性ポリマー上に堆積させる。この積層材料の封止表面は、印刷表面、即ち最終的に該電池のハウジングまたはパッケージ内に配置されることになる、該材料の該当表面として、使用される。該カソード集電装置用のインキは、好ましくは放電中に該カソードの還元の結果発生する電子を伝達するのに十分な材料から処方されるインキである。適当なカソード集電装置材料は、当分野において公知であるように、該電池において使用されている材料に基いて、電流の伝達を最大とし、かつ他の電池部品材料との望ましからぬ反応を最小化するように選択される。EMDカソードを用いた本発明の炭素-亜鉛電池において、該カソード集電装置は、好ましくはアチソンコロイズ(Acheson Colloids)社から製品名PF407Cの下で入手できるような、カーボンインキである。更に一層好ましくは、該カーボンインキは、該二酸化マンガンカソード物質の意図しない還元を回避し、かつ長い硬化時間の必要性を排除すべく、官能性アルコール単位を含まない溶剤系を使用する。このようなインキは、アチソンコロイズ社から製品名PM 024の下で、市販品として入手でき、また真空環境下での該インキの長い硬化期間の必要性を排除する。ついで、この印刷された集電装置を、適当な硬化処理に掛けて、十分な乾燥と溶剤の蒸発を保証する。
【0017】
PF407Cインキを用いて、様々な厚みでスクリーン印刷したカソード集電装置を持つ電池を、与えられた用途に対する最小の集電装置の厚みを決定するために、評価した。これら電池は、ステンシル印刷されたEMDカソードおよびスクリーン印刷され、スクリーンを多数回に渡り通過させることによって達成した、112〜125μm(乾燥時)なる範囲の厚みを持つ、亜鉛アノードを有していた。これらのカソード集電装置は、0.2Torrなる真空の下で、50℃にて16時間乾燥した。次いで、この電池を、以下に記載する100サイクルに及ぶ、テストプロトコールに従って放電させたが、これら電池は、依然として0.9Vを越える閉回路電圧を有していた。共-平板状(co-planar)電極アセンブリーに関する結果を、以下の表1に示し、また共-面状(co-facial)電極アセンブリーに関する結果を、以下の表2に示す:
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
これら集電装置の抵抗および得られるその性能は、使用する乾燥条件の関数である。
上に述べたように、高沸点アルコール溶剤を含むカーボンインキは、この溶剤を除去するために、望ましくない乾燥プロトコールを必要とする。塩化亜鉛またはルクランシェ電解液における、カソード集電装置として使用するためのカーボンインキが開発されたが、これは複雑な乾燥養生を必要とすることなく、許容される導電率を持つ。この集電装置用インキの湿潤処方物は、8〜10質量%のスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、例えばシェル(Shell)社からクラトンG1650として市販されているコポリマー、34〜38質量%のグラファイト、例えばKS6(ティムカルアメリカ(Timcal America)社からティムレックス(Timrex) LB 1099なる製品名の下で入手できる)、および残部のトルエンまたはトリクロロエチレン溶剤を含む。導電率は、少量(<5質量%)のカーボンブラックの添加により高めることができる。該クラトン系列の他のブロックコポリマーも、このインキ用のバインダとして適しており、スチレン/ブタジエン/スチレン材料を包含する。
【0021】
このカソード集電装置用インキを用いた電池を評価した。0.076mm(0.003 in)の、鉛含有亜鉛箔を、アノードとして使用した。そのカソード集電装置およびカソードは、両者共にステンシル印刷した。このカソード乾燥処方は、90質量%の二酸化マンガン、2質量%のカルボポール(Carbopol)940、および8質量%のKS6グラファイトであった。この集電装置の湿潤インキ処方は、10質量%のクラトンG1650、34質量%のグラファイトおよび56質量%のトルエンであった。この集電装置の乾燥時の厚みは、100〜125μmなる範囲内にある。これら電池を、100サイクルに渡り放電した。ここで、1サイクルとは、8 mAの電流を16秒間流し、かつ60秒間の放電中止を意味する。この電池の電圧は、0.9V以上に維持された。
【0022】
金属製集電装置は、炭素製の集電装置よりも、一層導電性に富むが、塩化亜鉛電解液中の二酸化マンガンと反応するであろう。我々は、導電性金属または金属インキ、例えば銀、銀インキまたはアルミニウムを、保護導電性カーボンフィルムで被覆することによって、塩化亜鉛またはルクランシェ電解液における反応性という欠点をもたらすことなしに、金属製集電装置の利点を達成できることを見出した。この保護カーボン被覆は、好ましくはKS6等のグラファイト(20-25質量%)、クラトンG1650等のSEBSブロックコポリマー(15-18質量%)およびトルエン(56-62質量%)を含む混合物からなる。あるいはまた、この保護導電性カーボン被覆処方として、カーボンブラック(5-10質量%)、クラトンG1650(15-18質量%)およびトルエン(72-75質量%)を用いることができる。該クラトン系列の他のブロックコポリマーも、この保護被覆インキ用のバインダとして適しており、スチレン/ブタジエン/スチレン材料を包含する。
【0023】
印刷された保護導電性カーボンインキを含む、銀インキ製のカソード集電装置およびアノード集電装置を使用して、電池を評価した。銀インキは、可撓性積層パッケージ材料、例えば上記のような材料の封止表面に適用され、約30〜40μmなる厚みまで、70℃にて1〜2時間硬化した。この保護被覆インキの処方は、18質量%のクラトンG1650、22質量%のKS6および60質量%のトルエンであり、これを該銀の上にステンシル印刷し、かつ約100〜120μmなる厚みとなるまで、硬化させた。この銀インキの完全に露出した表面を被覆した。次いで、以下の表3に記載の亜鉛アノードインキおよび以下の表4に示す電解二酸化マンガンカソードインキを、これらの保護された銀集電装置上に、ステンシル印刷した。これら電池を、適当なセパレータおよび28質量%の塩化アンモニウム+12質量%の塩化亜鉛電解液を用いて、39mm×37mmなる界面面積を与えるように組み立て、そのハウジングを熱封止した。
【0024】
【表3】

1: 270メッシュのスクリーンを通して篩別した、500ppmの鉛を含む亜鉛。
【0025】
【表4】

1: KS6
【0026】
これら電池は、カソードが制限されており、また以下の表5において明らかにされるように、安定な開回路電圧を有し、また約35〜40%なる範囲のカソード効率で、カットオフ電圧0.9Vまで、10mAにて連続的に放電した。
【0027】
【表5】

【0028】
一旦適当な集電装置を、該基板上に印刷したら、該カソードインキを、該印刷された集電装置上に印刷する。該カソードインキ処方物は、EMD、バインダおよび導体を含む、水性または非水性溶剤中の混合物である。この使用したEMD粉末は、目標とする電極の厚み、所定の放電効率およびこの電池の意図した用途に依存するであろう。約40μmなるd(50)値を持つ微粉砕されていないEMDは、50μm以下の目標とする厚みを持つ印刷カソードにとっては、不適当である。約1μmなるd(50)の測定値を持つEMDは、該EMDをジェットミル処理することにより得ることができる。このような方法は、例えばマサチューセッツ、ハノーバのスターテバント社(Sturtevant, Inc.)から入手できる。
【0029】
しかし、ジェットミル処理したEMDの比較的低いレート能力(rate capability)は、与えられた用途に対して、著しく大きな電極面積若しくは厚み、またはこれら両者を必要とすることになる可能性がある。我々は、与えられたカソードインキ処方、厚みおよび所定の放電電流に関連して、該インキ処方物中で使用したグラファイトの量、該電極の放電効率および要求される電極面積の間に、ある関係が存在することを見出した。従って、例えば我々が、目標とする放電電流8mAを持つ電池において、ジェットミル処理したEMDおよびPVPバインダを含む水性カソードインキを用いて、厚み50μmの電極を製造しようとする場合、12〜49質量%(乾燥質量基準)のグラファイト含有率が、最適の面積と放電効率とを有する印刷カソードを与える。電極面積に係る問題が、放電効率に関する問題を凌駕する場合、約19〜35質量%(乾燥質量基準)なる範囲のグラファイト含有率を、使用すべきである。図15を参照のこと(実際の電池から発展させたモデルにより予測されたデータ)。好ましい導電性グラファイトはKS6合成グラファイトであり、これはティムレックス(Timrex) LB 1099なる製品名の下で、ティムカルアメリカ(Timcal America)社から入手できる。PVDFバインダを含む非水性カソードインキ処方物を用いて得た、同一の電池厚みおよび同一の目標放電電流に対して、約12〜70質量%(乾燥質量基準)なる範囲のグラファイト含有率が好ましい。電極面積に係る問題が、放電効率に関する問題を凌駕する場合、約28〜約49質量%(乾燥質量基準)なる範囲のグラファイト含有率を、使用すべきである。図16を参照のこと(実際の電池から発展させたモデルにより予測されたデータ)。
【0030】
好ましい非水性の湿潤カソードインキ処方物は、1.0〜2.0質量%のPVDF、4.0〜45.0質量%のグラファイトおよび17.0〜66.0質量%のEMDおよび28.0〜37.0質量%のNMP溶剤を含むものである。より一層好ましい処方物は、1.0〜2.0質量%のPVDF、12.0〜31.0質量%のグラファイトおよび31.0〜51.0質量%のEMDおよび34.0〜35.0質量%のNMP溶剤を含むものである。好ましい水性の湿潤カソードインキ処方物は、1.0〜4.0質量%のPVP、6.0〜25.0質量%のグラファイトおよび25.0〜43.0質量%のEMDおよび残部の水を含むものである。より一層好ましくは、1.5〜2.0質量%のPVP、11.0〜16.0質量%のグラファイトおよび33.0〜38.0質量%のEMDおよび残部の水を含むものである。
このカソードインキは、該バインダを水に予め溶解し、該固体成分(EMD、および導電性添加物)を一緒に粉砕し、この固体を、該バインダ溶液に添加することにより製造する。この混合物を撹拌し、次いで既存の集電装置上に印刷する。次に、このカソードを、僅かに高い温度にて、該インキを乾燥させ、かつ該溶剤を蒸発させるのに十分な時間硬化させる。
【0031】
セパレータおよび電解液
共-面状電極アセンブリーに関連して、セパレータは、当分野において公知であるように、該電極を電気的に孤立させ、一方依然としてイオンの流動を可能とするために必要である。このセパレータは、紙製セパレータ、ゲル化セパレータまたは印刷セパレータであり得る。共-面状配列の電極アセンブリーを用いた、本発明の炭素-亜鉛電池態様では、被覆クラフト紙製のセパレータを、セパレータとして使用できる。一例として、適当なセパレータ基材としての紙は、マンクショウ(Munksjo)から市販品(#300542(57g/m2))として入手でき、また好ましくは20g/m2(gsm)(乾燥重量基準)まで、澱粉(好ましくは83.6質量%;例えばロケット(Roquette)から市販品(LAB2469)として入手できる)、ゲル(好ましくは7.9質量%;例えば、クアトールズ(Courtaulds) から市販品(B1209)として入手できる)、PVP(好ましくは2.1質量%)、および界面活性剤添加物(好ましくは1.4質量%;クロダメット(Crodamet)として公知の市販品である、エチルタローアミン)および水(5.0質量%)の乾燥被覆組成物を含む混合物で被覆されている。適当な被覆クラフト紙セパレータは、例えばEP 0832502 B1、WO 96/38869、WO 98/07204、米国特許第6,221,532号およびWO 99/35700に記載されている。米国特許第6,221,532号の開示事項を、ここに完全に記載されている参考文献と見做す。他の適当なセパレータ材料も、本発明の範囲を逸脱せずに、本発明の電池において使用できる。
【0032】
本発明による炭素-亜鉛電池の態様に関して、電解液は、当分野において公知であるように、好ましくは塩化亜鉛の水性溶液である。ガスの発生を防止または低下させるためのおよび他の性能特性を高めるための添加物を、使用することができ、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(セトリミド(Cetrimide)として市場から入手できる)および塩化鉛を含む。セチルトリメチルアンモニウムブロマイドは、アルドリッチ社から、製品番号855820の下で、入手できる。セトリミドは、また様々な方法で、例えば該電極インキ処方物中に、または印刷される別の被覆の成分として、あるいは電極またはセパレータ紙表面に適用することにより、該電池に組み込むことができる。
我々は、更に共-平板状電極を持つ電池の内部抵抗を減じる上で特に有利である、本発明の印刷炭素-亜鉛電池で使用するための、別のゲル化電解液を見出した。我々は、また天然グアーガムを含む、ノニオン性またはアニオン性誘導体の、水性塩化亜鉛溶液への添加が、このようなゲル化電解質を生成することを見出した。好ましい添加剤は、ウイルミントンデラウエアの、アクアロン社(Aqualon Company)から入手できる、ガラクタゾル(Galactasol) A4である。
【0033】
電池は、厚み0.076mm(0.003 in)×幅6mmの亜鉛箔(500ppmの鉛)アノードおよび共-平板状構造の印刷カソードを用いて製造し、標準的な塩化亜鉛電解液対このゲル化されたガラクタゾル電解液の性能における比較を行った。全部で4個の電池におけるカソード集電装置は、アチソン(Acheson) PF407Cカーボンインキ製であった。このカソードの乾燥状態における質量基準での処方は、2%のPVP、28%のKS6および70%のジェットミル処理したシェメタルズ(Chemetals) EMDを含むものであった。このゲル化電解液を用いた電池では、28質量%の塩化亜鉛溶液と、6質量%のガラクタゾルとの混合物を使用した。このゲル化電解液は、6質量%のガラクタゾル溶液を、ビーカーに収容された28質量%の塩化亜鉛溶液に、徐々に添加することにより製造した。この溶液を磁性バーで撹拌し、次いで該ゲル化電解液を、室温にて一夜放置して、取込まれた空気を逃散させた。コントロール電池では、28質量%の塩化亜鉛溶液に浸した、被覆クラフトセパレータ紙を使用した。これら電池を、放電サイクル養生に掛けたが、ここで1サイクルは、2mAにて6秒間の放電および0mAでの60秒間の放電として定義され、またカットオフ電圧が0.9Vに達するまで放電させた。以下の表6には、電池の入力と性能データを記載する。
【0034】
【表6】

【0035】
該ゲル化電解液の電池は、このテスト中、著しく良好な性能を示した。
我々は、更に塩化亜鉛溶液に溶解し、かつUV暴露により架橋した、低分子量ポリエチレングリコール(PEG)を主成分とするポリマーが、本発明による炭素-亜鉛電池における、印刷電極上に直接印刷することのできる、ゲル化物質を与えることを見出した。好ましいポリマーは、例えばPA、エクストンのサルトマー社(Sartomer Company)から入手できるような、ポリエチレングリコールジアクリレートである。本発明のこのPEGジアクリレート物質は、以下の構造を持つ:
【0036】
【化1】

【0037】
ここで、nは3よりも大きく、かつ100未満である。このPEGジアクリレート物質の好ましい分子量範囲は、300よりも大きく、かつ4500未満であり、また更に一層好ましくは、該物質は700〜800なる範囲の分子量を持つ。本発明によるゲル処方物の一つにおいては、サルトマー社から入手でき、分子量742を持つSR610を使用する。このゲル処方物は、好ましくは更に光開始剤、増粘剤および界面活性剤を、以下に示す質量%範囲で含む:PEGジアクリレート:5.0〜25.0%;ポリマーバインダ増粘剤:1.0〜10.0%;光開始剤:0.10〜2.0%;界面活性剤:0.01〜2.0%。これらを、28質量%の塩化亜鉛溶液中で併合した。
高分子量(600,000ダルトン)のPEOを、以下の処方に従って、PEGジアクリレート/ZnCl2水性溶液に添加した。ここで、使用した溶剤は、28質量%のZnCl2溶液であった(これらの量(質量%)は以下に掲載する)。
・10%SR610 PEGジアクリレート
・6%の600,000MW PEO
・0.5%イルガキュア(Irgacure) 184
・0.1%トライトン(Triton) QS44
・83%電解液(28質量%ZnCl2溶液)
この処方物を、ゆっくり回転することによって混合して、高剪断混合により、該高分子量のPEOの分解を防止した。5rpmにおけるこの処方物の溶液粘度は、10,800cPであった。UV照射装置で15秒間空気中で硬化した後、28質量%ZnCl2溶液におけるこのフィルムのイオン伝導率は、ZnCl2中に浸した伝統的な炭素亜鉛(マンガン乾電池用)セパレータ紙に対する35-40mS/cmに対して、30mS/cmであった。平衡時点におけるこの伝統的なセパレータ紙の電解液含有率は、75%であった。
未硬化の溶液を、ステンシル印刷によって設けた、薄い印刷されたカソード上に、配置した。この溶液を上記のように硬化し、このセパレータを持つ共-面状電池のインピーダンスは、48mΩであった。この値は、伝統的な炭素亜鉛被覆セパレータ紙を用いて製造した電池と一致する。
【0038】
もう一つの処方物は、低伸張粘度を持つ増粘剤を用いて、この得られる溶液のスクリーン印刷特性を改善し、結果としてこの溶液は、該スクリーンからきれいに離脱していく。このポリマーバインダの、ポリマー以外のチキソトロピー性のゲル化剤、例えばヒュームドシリカによる置換は、このような溶液を生成し、かつ界面活性剤の必要性を排除する。この低伸張粘度処方物の質量%で表した好ましい処方は、PEGジアクリレート:3.0〜25.0%;ヒュームドシリカ増粘剤:1.0〜10.0%;光開始剤:0.10〜2.0%であり、これらを、28質量%ZnCl2溶液中で併合した。ヒュームドシリカを、5質量%なる量で、28質量%ZnCl2溶液に添加する場合、濃厚なゲルが生成し、これは極めて良好なスクリーン印刷における、「離脱」特性を持つ。以下の処方(28質量%ZnCl2溶液中)は、空気中で、紫外線照射装置で、15秒間のUV硬化後に、フィルムを生成した。
・5%エアローシル(Aerosil) 200VSヒュームドシリカ
・10%SR610 PEGジアクリレート
・0.5%イルガキュア(Irgacure) 184
・84%電解液(28質量%ZnCl2溶液)
これらフィルムのイオン伝導率は105mS/cmであった。該ヒュームドシリカは、該VSエアローシルの圧縮特性のために、ゲル化するのに高エネルギー混合を必要とした。
図14は、該PEOおよびヒュームドシリカによる、ゲル化ポリマー電解液のチキソトロピー性の比較を示す。該ヒュームドシリカは、該PEOよりも一層良好なチキソトロピー性を示す。該ヒュームドシリカの粘度は、PEOよりも一層高い、剪断速度依存性を示す。この挙動は、該ヒュームドシリカ処方物の、スクリーン印刷にとって有利な、きれいな離脱特性をもたらす。更に、界面活性剤は、該ヒュームドシリカ処方物については必要とされない。
【0039】
我々は、別の電解質溶液も、より頑丈なかつ導電性の高いカソード集電装置の使用を可能とする、印刷されたEMDカソードおよび印刷された亜鉛アノードと共に使用できることを見出した。例えば、pH約6.5〜7の、1.4〜3.0モルの酢酸亜鉛の濃厚溶液を、本発明による電解液として使用できる。このpH範囲において、銀は該二酸化マンガンカソードと反応せず、結果的に、カソード集電装置およびアノード集電装置製造材料として、銀含有インキの使用が可能となる。銀は極めて導電性の高い金属であるので、集電装置用材料として極めて望ましいものである。このような銀インキは、例えばマサチューセッツ、ウォルサムのエルコン社(Ercon, Inc.)から、製品名E1660-136として入手できる。酢酸亜鉛は、好ましい酢酸塩であるが、酢酸アンモニウムも、この系における電解液として使用できる。酢酸亜鉛または酢酸アンモニウム電解液を使用する場合、好ましいEMDカソードインキバインダは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、例えばクレハ(Kureha)社から製品番号1100として入手できるものであり、これは該電解液中の該カソードの保全性を高める。
標準的な水酸化カリウム溶液等のアルカリ電解液を用いる、アルカリ系において、ゲル化セパレータが見出された。かくして、本発明は、少なくとも1つの印刷電極を含む、一次電気化学電池を提供し、ここで該電極は、セパレータにより分離されており、該セパレータは電気的には絶縁するが、イオン伝導性は維持し、該セパレータが、(1) 以下の式(I)のエチレン性不飽和カルボン酸またはその塩またはエステル:
【0040】
【化2】

【0041】
(ここで、R1、R2およびR3は、相互に同一または異なっており、各々水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、またはアリール基を表し、またAは直接結合または炭素原子数8までのアルキレン基を表す)と、(2) 以下の式(II)で示される芳香族化合物:
【0042】
【化3】

【0043】
(ここで、R4、R5およびR6は、相互に同一または異なっており、各々水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、またはアリール基を表し、またR7は、スルホネートまたはカルボキシレート基および釣り合う対カチオンを表す)とのコポリマーを含むか、または該セパレータが、上記式(II)の芳香族化合物のホモポリマーを含むことを特徴とする。
上記のホモポリマーまたはコポリマーは、それ自体セパレータとして使用でき、その場合、該ポリマーは、好ましくは電池内でその場にて該セパレータを生成するために使用され、あるいは多孔質基板(例えば、伝統的なセパレータ紙)上の被覆として使用でき、もしくは本発明による印刷または被覆技術によって、印刷された電極に直接適用することができる。
従って、本発明は、また一次電気化学電池の組立て法を提供するものであり、該方法では、アノードまたはカソードを電池ハウジング内に挿入し;例えば上記式(II)で表される芳香族化合物のホモポリマーまたは上記式(I)で表される酸またはその塩もしくはエステルと、該式(II)で表される芳香族化合物との上記コポリマーを含む溶液または分散液を、該アノードまたはカソード上に噴霧または印刷し、該溶液または分散液から該ホモポリマーまたはコポリマーを堆積させることによって適用して、セパレータを形成し;該電気化学電池を完成させる。
【0044】
本発明は、更に一次電気化学電池を提供するものであり、該電池は、セパレータによって分離されたアノードおよびカソードを含み、該セパレータは、該式(II)で表される芳香族化合物のホモポリマー、または上記式(I)で表される酸またはその塩もしくはエステルと、該式(II)で表される芳香族化合物との上記コポリマー製の多孔質フィルムを含む。
本発明は、更に一次電気化学電池の組立て法を提供するものであり、該方法では、アノード、カソードおよびセパレータを電池ハウジング内に挿入して、該電池を完成する工程を含み、該セパレータは、該アノードとカソードとの間に配置された、該式(II)で表される芳香族化合物のホモポリマー、または上記式(I)で表される酸またはその塩もしくはエステルと、該式(II)で表される芳香族化合物との上記コポリマー製の多孔質フィルムを含む。
【0045】
R1、R2、R3、R4、R5またはR6がアルキル基を表す場合、このアルキル基は1〜10個の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖アルキル基であり、その例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニルおよびデシル基を含み、これ等の中でも、炭素原子数1〜6のものが好ましく、メチルおよびエチル基がより好ましく、またメチル基が最も好ましい。しかし、我々は、特にR1、R2、R3、R4、R5およびR6が全て水素原子であることが好ましい。
Aがアルキレン基を表す場合、これは1〜8個の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖アルキレン基であり、その例はメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレンおよびオクタメチレン基を含み、これらの基は1以上のアルキル基で置換されていてもよい。しかし、我々は、Aが直接結合を表すことを好み、即ち以下の式(Ia)で表される化合物が好ましく:
【0046】
【化4】

【0047】
および特にR1、R2およびR3全てが、水素原子である化合物が好ましい。
上記式(I)または式(Ia)で表すことのできる上記不飽和酸の具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、2-、3-および4-ペンテン酸、2-、3-、4-および5-ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸(特にオレイン酸)、ノナデセン酸およびアイコセン酸を包含する。これらの中で、炭素原子数3〜6の低級酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸が最も好ましい。
一般に、我々はこれら酸のエステルの使用を好まない。というのは、アルカリ電気化学電池におけるアルカリ環境において加水分解され、またそのために該電池内に存在することが要求される、該アルカリの幾分かを消費する恐れがあるからである。しかし、該ホモポリマーまたはコポリマーの量が比較的少量である(通常はそうである)場合には、これはさほど重大ではなく、あるいは該電池がアルカリ型ではない場合には、これは何等問題にならない。このような場合、該エステルの特性は重要ではない。何れにしろ、一価カチオンとの塩は好ましいが、その塩の特性は決定的ではなく、これら塩の例はアルカリ金属塩、例えばナトリウムおよびカリウム塩;およびアンモニウム塩を包含する。該エステルの例は、好ましくは炭素原子数1〜6の低級アルキルエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチルおよびヘキシルエステル;およびアリールエステル、例えばフェニルおよびナフチルエステルを含む。
【0048】
上記式(II)で表される芳香族化合物において、我々は、R4が水素原子またはメチル基であり、R5およびR6の一方が水素原子であり、かつ他方が水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、好ましくはメチル基であることを好む。最も好ましくは、R4、R5およびR6の全てが水素原子である。
R7はスルホネートまたはカルボキシレート基および平衡維持のための(平衡化)カチオンであり得、好ましくはスルホネート基である。該平衡化カチオンの性質に特別な制限はなく、その例は、水素原子;およびアルカリ金属原子、例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムを含む。
該スルホネートまたはカルボキシレート基R7に対する、該不飽和基:-CR4=CR5R6の位置は、重要ではない。しかし、このような化合物の入手の便宜のために、これらが相互にp-位置にあることが好ましい。
本発明において使用するのに、特に好ましい一群のコポリマーは、式(I)の酸、式(II)のスルホネート(即ち、R7がスルホネート基である化合物)、および場合により1以上の他のモノマーから得られるコポリマーである。より好ましいコポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸、およびスチレンスルホネート、並びに場合により1以上の他のモノマーから得られるコポリマーであり、より好ましくはアクリル酸と、スチレンスルホネートと、場合により1以上の他のモノマーとから得られるコポリマーであるが、好ましくは他のモノマーを含まないコポリマーである。最も好ましくは、アクリル酸と、ナトリウムスチレンスルホネートとのコポリマーである。
【0049】
本発明において使用するコポリマー中の上記コモノマーの相対的な割合は、広い範囲で変えることができ、例えば式(II)の化合物(1または複数)に対する式(I)の化合物(1または複数)のモル割合は、0:100(即ち、ホモポリマー)から90:10なる範囲内で変えることができる。しかし、これらの割合は、該コポリマーの特性および本発明のセパレータにおけるその挙動に影響を及ぼすので、20:80〜80:20なる範囲のモル比が、より好ましい。
我々は、一般に該コポリマー中の該式(I)で表される化合物の割合を大きくすると、イオン伝導率が増大することを見出した。しかし、該式(I)で表される化合物の割合の増加は、また該電解液中の該コポリマーの溶解度における増大を導き、これは望ましからぬことであり、従ってこれら2つの因子間の釣り合いを折衷する必要がある。我々は、従って式(II)の化合物(1または複数)に対する式(I)の化合物(1または複数)のモル比を、20:80〜60:40なる範囲とすることを、特に好む。
式(I)および(II)の化合物以外のモノマーが、該コポリマー中に存在する場合、これらは、一般に所定の特性に依存して、20モル%未満の、比較的少ない量で存在することが好ましい。
【0050】
本発明において使用する上記ホモポリマーおよびコポリマーは、本発明の一部を構成しない周知技術によって調製でき、また当業者には明らかである。
単独の該ホモポリマーまたはコポリマーを、該電池内のその場で、あるいは該電極アセンブリーの製造工程中に、その溶液または分散液として、噴霧または印刷することが好ましい。使用する溶剤または分散媒は、重要ではなく、該コポリマーを溶解または分散できるものである必要があるが、該アノードまたはカソードもしくは接触することになるはずの、該電池の他の部品に対して有害であってはならない。更に、該溶剤または分散媒は、例えば蒸発等により比較的容易に除去されることが好ましく、また環境的に有害ではなく、あるいはこれと接触することになる作業員の健康にとって有害なものでないことも好ましい。適当な溶剤または分散媒の例は、水および水とアルコール、例えばメタノールまたはエタノールとの混合物を含む。
【0051】
あるいはまた、該ポリマーの溶液または分散液は、適当な非-吸収性の基板、例えばガラス上で、自立性のフィルムに成型でき、また次いでこの溶液を、該コポリマーに対する非-溶剤、例えば以下に議論するようなアルカリ溶液の添加により、凝固させて、該コポリマーの多孔性自立式フィルムを生成することができる。次に、このフィルムを、例えば該電池パッケージまたはハウジングの封止前に、2つの平坦な平板状電極間に堆積させることが可能である。このセパレータフィルムは、好ましくは少なくとも約0.2mm(0.008 in)なる厚みを持ち、またより一層好ましくは、該セパレータ層と各電極との間の接着剤として作用する、該コポリマー溶液の約0.02mm(0.001 in)なる厚みの層によって、各側部上に結合される。次いで、これら接着剤層を、好ましくは以下に記載するように、アルカリ溶液で凝固させる。
更に別の態様として、該コポリマーは、このコポリマーに対する非-溶剤を添加することにより凝固させて、該溶液または分散液から堆積させることも可能である。不要な物質の存在を最小化することが重要な、電池環境においては、該電池環境内に当然存在するであろう物質を、非-溶剤として使用することが好ましい。この場合、該好ましい非-溶剤は、アルカリ金属、好ましくは水酸化カリウムまたはナトリウム、最も好ましくは水酸化カリウムの溶液である。該アルカリ金属水酸化物の濃度は、好ましくは34〜42%(w/w溶液)およびより一層好ましくは40%(w/w溶液)である。
【0052】
適用されるコポリマーの量は、酸化亜鉛結晶の成長による侵入に対して抵抗性の、非破壊性のまたは主として非破壊性のフィルムを与えるのに、少なくとも十分な量であるべきである。この自立性のフィルムは、好ましくは少なくとも約0.2mm(0.008 in)なる厚みを持ち、またより一層好ましくは、これら2つの接着層は、各々約0.02mm(0.001 in)なる厚みを持つ。
あるいはまた、該コポリマーを、電気化学電池技術においてセパレータとして普通に使用される型の、多孔質基板上に支持させることができる。この場合、該コポリマーは、被覆として一方の側または両側に適用でき、あるいは該基板内に浸み込ませることも可能である。何れの場合においても、これは溶液または分散液として適用され、次いで乾燥(例えば、蒸発により溶剤を除去することにより)され、あるいは上記のように凝固される。
【0053】
電池接点
電池接点は、様々な理由から設計上の問題を提示する。外部接点と該電池内で使用される物質(例えば、電解液)との間の好ましからぬ反応の可能性とは無関係に、該外部接点材料を選択できることが望ましい。内部電池環境により課せられる制約は、所定の強度および電流搬送特性を持つ外部タブの開発を妨害する恐れがある。更に、電解液の漏れは、水性電解液および該電極から該外部電池端子に電流を搬送するための金属構造を用いた、電池に関する問題となり得る。この漏れは、少なくとも部分的には電解液の、該電池パッケージまたはハウジング内部から伸びている、電流搬送構造の金属表面に沿った、および該封止された電池周囲を介する、該外部電池環境への移動または「クリープ」傾向の結果である。我々は、有利な電池の設計が、「不連続」な電流搬送システムを利用していることを見出した。ここで使用する「不連続」な電流搬送システムとは、2つの異なる構造が、一方の電極と外部の電池端子との間で電流を搬送するために利用される部分に存在する。ここでは集電装置と呼ぶ、一方の構造は、該電池の内部から、該封止領域に伸び、また該封止領域内にまたは該封止の外周部に、端子端部を持つ。ここでは外部端子と呼ぶ、第二の外部構造は、外部環境から該封止領域に伸びており、また該封止領域に位置する導電性接着剤またはエポキシと接触している。これら2つの構造間を直接接触している導電性ブリッジ、またはこれら2つの構造間に伸びている、導電性接着剤またはエポキシは、該封止周辺領域内の電流の通路を与える。このように、本発明の電池は、電解液の漏れを生じる、単なる金属通路を持たない。ここで使用する用語「封止領域」とは、圧力封止または熱封止あるいはエポキシまたは2つの部分を一緒に接合する他の手段を利用して、一緒に接合される該電池パッケージまたはハウジング材料の領域を含む。
【0054】
図2に示した一態様において、電極に対する集電装置13は、該封止領域に伸びており、一方第二の金属製外部端子17は、該封止領域に伸び、かつ該封止領域内の集電装置13と接触している。この態様において、電流に対する導電率は、該内部集電装置と該外部端子との間の物理的な接触によって与えられる。図3に示した第二の態様では、該集電装置13および該外部端子17は、物理的接触状態にはない。導電率は、少なくとも部分的に該封止領域15内に位置し、かつこれら2つの構造を橋架けしている、電気伝導性の接着剤またはエポキシによって与えられる。図4に示した第三の態様では、該導電性の接着剤またはエポキシ19は、該電池の外部領域にまで伸びており、また外部電池接点を形成している。図5において、該接着剤またはエポキシ19は、該電池の外部領域にまで伸びており、かつ外部金属タブまたは端子21と接触している。図6A-6Cは、該外部電池接点または端子17の、更に別の態様を示す。これら態様において、少なくとも1つの該外部接点は、該電池パッケージまたはハウジングに対して、大きな外部表面積を持つ。我々は、この外部接触表面積を大きくすることにより、該電池の放電効率が改善されることを見出した。
【0055】
該アノードおよびカソード外部端子または接点は、好ましくは銀を主成分とする導電性ポリマーインキ、例えばミシガン、ポートヒューロンのアチソンコロイズ社から入手できるエレクトロダグ(Electrodag) 479SSで、可撓性で非-導電性のポリマー基板上に印刷される。次いで、カソード集電装置を、該集電装置および該外部接点が、該電池パッケージまたは容器の少なくとも封止領域で重なり合うように、該外部カソード接点上に印刷する。同様に、該アノードインキを、該アノードと該外部接点とが、該電池パッケージまたは容器の少なくとも封止領域で重なり合うように、該外部アノード接点上に印刷する。
該封止領域の少なくとも一部は、パッケージ材料の2つの表面を相互に接着して、該電池のパッケージまたはハウジングを形成するために、接着剤またはエポキシを含む。該接着剤は、熱または圧力もしくは当分野において公知の他の手段により活性化することができる。あるいは、該封止領域は、化学的、熱的または光開始剤を用いた、重合反応によって、あるいは当分野において公知の封入によって、封止を形成するエポキシを弱めることができる。二液性の導電性エポキシの使用は、製造における遅れを、その遅れの際のエポキシの硬化を回避することにより、調節することを可能とする。
【0056】
電池アセンブリーおよび包装
先ず、該電極用の外部タブを、好ましくは電池パッケージを形成する、可撓性で非-導電性のポリマー基板上に印刷する。該亜鉛インキを処方し、直接該基板表面に適用する。該電極の形状は、当分野において公知の如く、所定の用途に対する電池設計に従って選択される。本発明の炭素-亜鉛電池態様においては、該亜鉛インキを、シルクスクリーン、ステンシルまたは他の適当な印刷装置を用いて、該基板上に印刷されるが、そのパターンは、該インキが、カソードを妨害しない領域、および封止されて該パッケージを形成する領域内の、該タブの一部と重なり合うであろう領域の形成を可能とする。該インキの処方に依存して、適当な乾燥および/または硬化プロトコールを組み合わせる。
【0057】
該カソード集電装置用のインキを処方し、ステンシル、スクリーンまたは他の適当な印刷装置により、可撓性ポリマー基板材料の第二部分に適用し、次いで適当な乾燥プロトコールを実施する。該カソード集電装置が上部に印刷されている、該可撓性ポリマー基板材料の第二部分は、アノードおよびカソード間の、共-平板状配列を可能とする部分、あるいはアノードとカソードとの共-面状配列を可能とする部分の何れかであり得る。ここで使用する「共-面状」電極は、主アノード表面と主カソード表面との間の界面領域を分け合っている。共-面状電極は、主アノードアセンブリー(アノード+集電装置(あるとすれば)) 表面と、主カソードアセンブリー(カソード+集電装置(あるとすれば)) 表面とが、ほぼ同一の平面内にあり、また基板材料の単一片上に直接または間接的に印刷される、「共-平板状」電極とは区別される。該カソード集電装置の形状は、該カソードインキとの十分な接触を可能とするように選択され、また好ましくは該封止領域におけるカソードタブの一部と重なり合う領域を形成する。該集電装置用のインキは乾燥され、次いで該カソードインキが該カソード集電装置上に印刷され、乾燥される。
共-面状配列にある電極の場合に、該アノードとカソードとの間に、セパレータが設けられる。電解液は、当業者には公知の如く、遊離電解質を吸収するセパレータ紙、あるいは電解液を配合したゲル処方物、もしくは遊離電解質を吸収する電極あるいはこれらの組み合わせによって該電池内に導入される。次いで、該電池パッケージまたはハウジングを、一緒に封止する。好ましい態様では、該電池の外部接点は、ここで定義したように、不連続である。
【0058】
実施例1: (全ての%は、特に述べない限り、質量%である)
本実施例に従って、電池を製造する。アノードインキの湿潤処方は、9.6%の酢酸亜鉛二水和物、31.7%の水、1.3%のPVP(2.2〜2.8×106なる範囲の分子量)および57.4%の亜鉛末であった。この亜鉛インキは、先ずアルドリッチケミカル社から得た該酢酸亜鉛二水和物と水とを併合して、水性溶液を生成した。PVPを、この水性溶液に添加して、粘稠な塩-ポリマー溶液を作成した。亜鉛末を添加し、得られる混合物を、均一となるまで撹拌した。この亜鉛末は、0.16%の鉛を含んでいた。この亜鉛末は、約10μmなるマイクロトラック平均体積粒子径、すなわちd(50)値を有していた。この混合物を、適当な厚みとなるまで、約90〜120分間放置した。次いで、アノードを手作業でスクリーン印刷した。このアノード基板は、製品番号95014として、ファーマセンターシェルビービル社から入手できる、可撓性のポリマー-金属ラミネートパッケージ材料の、内側熱封止性表面であった。このラミネートは、内側熱封止性エチレン/アクリル酸層、アルミニウム層、および外側保護ポリマー層を含む。このスクリーン上での4〜5回のパスは、厚み約0.87mmを持つ、39mm×37mmのアノードを与えた。このアノードを、70℃にて5分間乾燥した。該アノードインキ27を該基板上に印刷するまで、位置を維持するために、厚み約0.051mm(0.002 in)の亜鉛メッシュで作られたアノードタブ23を、接着剤で該基板25に接着した。該位置の維持は、該タブの一端を重ね、これにより該タブを該基板に固定することにより行った。図7を参照すると、該亜鉛メッシュの外部タブ23および該アノードインキ27が示されており、これは、該部品を電池に組み立てるためにトリミングする前のものである。あるいは、該アノードタブ23は、銀インキで印刷することもできる。
【0059】
カソード集電装置用インキは、製品番号PF407Cとしてアチソンコロイズ社により提供されたカーボンインキであった。該カソード集電装置29を、該アノード基板として用いられたものと同一の積層材料31の異なる片の、熱封止性表面上にステンシル印刷した。該印刷カソードと接触することになる、この得られる集電装置は、厚み約0.052mmを持つ、40mm×38mmなる寸法を持つものであった。タブ延長部33を、同一のカソード集電装置用インキを用いて、ステンシル印刷し、該集電装置から引出した。図8参照。該カソード集電装置およびタブ延長部を、真空下で50℃にて16時間硬化して、このインキ中に使用されている溶剤を蒸発させた。
このカソードインキの湿潤処方は、1.1%のポリビニルピロリドン(PVP)、44.4%の水、15.5%のグラファイトおよび38.8%の二酸化マンガンであった。PVPと水とを結合することにより、バインダ溶液を混合した。無水固体グラファイトKS6(ティムカルアメリカ社製の製品名ティムレックス(Timrex) LB 1099)およびEMD(シェメタルズから入手でき、またマイクロトラックd(50)値が1μm未満となるように、スターテバントによりジェットミル処理されたもの)を、一緒に粉砕して、良好な混合性を保証し、これを次に該バインダ溶液に添加した。この混合物を、滑らかかつ均一となるまで、手作業で撹拌した。次いで、カソードを、40×38×0.139mmなるサイズで、該カソード集電装置上にステンシル印刷し、70℃にて5〜10分間硬化した。
【0060】
約95μmなる厚みを持つ被覆クラフトセパレータ紙を使用した。このセパレータ原紙は、マンクショウ(Munksjo)から市販品(#300542)として入手でき、また20g/m2(gsm)まで、澱粉(83.6質量%;ロケット(Roquette)から市販品(LAB2469)として入手できる)、ゲル(7.9質量%;クアトールズ(Courtaulds) から市販品(B1209)として入手できる)、PVP(2.1質量%)、界面活性剤添加物(1.4質量%;クロダメット(Crodamet)として公知の市販品である、エチルタローアミン)および水(5.0質量%)を含む混合物で被覆されている。この紙を、電池電解液、即ち1000ppmのセトリミドBP(セチルトリメチルアンモニウムブロミド;イングランド、シェシールの、ABAケミカル社(ABA Chemical Ltd.)から入手できる)を含み、600ppmの塩化鉛を添加した、28質量%の塩化亜鉛溶液で湿らせた。この電解質溶液を濾過して、使用前に固形分を除去した。該電極表面も、全体で0.7〜0.8gなる範囲の電解質がこの電池に組み込まれるように、該電解液で湿潤させた。このセパレータを、何れかの電極に配置し、かつ該セパレータの被覆側が、該亜鉛アノードと面するように配向させた。これら電極基板を適当なサイズにトリミングし、この電池をその周辺部で熱封止し、該電極タブが、該熱封止部分を越えて、該電池パッケージの外部にまで伸びるようにした。トリミングの際に、このパッケージ用ラミネートは、該内側アルミニウム箔層の端部を露出するので、ポリエチレンストリップを該アノードタブの周りに巻きつけて、該アルミニウムと該亜鉛インキとの短絡を防止する。
これら電池の2つを、印刷回路に直列につなぎ、LEDおよび音響カードに、ドレーン電流8mAにて、動力供給した。更に、これら電池の幾つかを、少なくとも100サイクルに渡り放電させた。ここで、1サイクルは、8mAにて16秒間通電し、0mAにて(ドレーンなし)60秒間通電するものと定義する。
【0061】
実施例2:
共-平板状電極アセンブリーを備えた電池を、本例に従って製造した。実施例1と同様なアノードインキ処方および基板を用いて、アノードを印刷し、実施例1と同様な厚み約0.051mm(0.002 in)の亜鉛メッシュアノード集電装置を、実施例1と同様にして該基板上に貼付した。アノード34は、0.109mmなる平均の厚み、50.4mm×6.8mmなる寸法でスクリーン印刷した。該カソード集電装置およびカソードは、実施例1と同一の処方物を用いて、該アノードと同一の基板上にステンシル印刷し、共-平板状電極配列を実現した。該カソード集電装置35は、40mm×27mm×0.036mmなる寸法で、ステンシル印刷し、一方でカソードインキ37を、該集電装置上に、厚み0.166mmでステンシル印刷した。図9を参照のこと。該カソードとアノードとの間のギャップは、2.0mmであった。これら電極表面を、実施例1と同一の電解液で湿潤させ、実施例1と同様のセパレータ紙を組み入れて、全体で0.6〜0.7gなる範囲の電解液がこの電池内に導入されるように、電解液を吸収させた。この共-平板状配列における該セパレータ紙は、該アノードおよびカソード両者を覆うようなサイズのものとした。
【0062】
該基板を適当なサイズにトリミングし、該パッケージ材料の第二の片を、実施例1におけるように、熱封止性表面同士が相互に向き合うように、該第1片上に置き、またこれら両者を電池周辺部近傍で一緒に封止し、該アノードおよびカソードのタブを、この電池の外部環境に露出させた。
これら2つの電池を、印刷回路に直列につなぎ、音響カードに、ドレーン電流2mAにて動力供給した。更に、これら電池の幾つかを、少なくとも100サイクルに渡り放電させた。ここで、1サイクルは、2mAにて6秒間通電し、0mAにて(ドレーンなし)60秒間通電するものと定義する。
実施例3:
共-面状電極アセンブリーを備えた電池を、以下のようにして製造した。本例の電池では、デルカー社(Delkar Corporation)から入手できる、厚み約0.13mm(0.005 in)の亜鉛メッシュからなる、亜鉛メッシュアノードを使用した。このメッシュを、39mm×37mmなるサイズに裁断し、実施例1および2と同一の基板材料に接着した。アノード集電装置は、同様にこの亜鉛メッシュから製造し、同様にして該基板に接着させた。
【0063】
本例の電池に対するカソード集電装置は、実施例1と同様のカーボンインキを用い、実施例1と同様に、平均厚み0.052mm、サイズ40mm×38mmで、実施例1と同様の基板材料上にステンシル印刷した。カソードインキとして、実施例1と同一のインキ処方物を使用し、実施例1と同様にして、平均の厚み0.149mmで、該集電装置上にステンシル印刷した。実施例1と同様なセパレータ材料を使用し、実施例1と同様な電解液を用い、平均して0.743gの該電解液が該電池内に導入されるように、該カソード表面および該セパレータを、該電解液で湿潤させることにより、該液を該電池内に導入した。次いで、これら2つの基板を、熱封止により一緒に接合した。
3個の電池を、印刷回路と直列に接続し、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイを、約15mAのドレーン電流で動力供給した。
【0064】
実施例4:水性亜鉛インキ補助溶剤処方を含む、塩化亜鉛電解液電池
本発明に従って、補助溶剤系を含む水性亜鉛インキ処方物を使用して、電池を作成した。これら電池は、印刷亜鉛アノード、印刷二酸化マンガンカソード、塩化亜鉛電解液および上記のような被覆クラフト紙セパレータを有していた。この電解液は、28質量%の塩化亜鉛溶液であり、これに、600ppmの塩化鉛および1000ppmの臭化セチルトリメチルアンモニウム(アルドリッチ社から入手)を添加した。この溶液を、該電池内に導入する前に濾過して、固形分を除去した。水およびNMPを含む補助溶剤系を、該亜鉛インキ処方物中のPVPバインダと共に使用した。アノード亜鉛インキの一般的処方は、レーザー中心値径10.2μmを持つ、8.6gのユニオンミニエールの亜鉛末(1600ppmの鉛を含む)、0.2gのPVP K-120、4.5mLの1.4M酢酸亜鉛水性溶液および0.5mLのNMPであった。カソードインキの一般的処方は、7gのジェットミル処理したシェメタルズ製のEMD(d(50)<1μm、d(90)<3μm)、2.8gの合成グラファイトKS6、0.2gのPVP K-120および10mLの水であった。実際の亜鉛およびEMDの電池への投入量は、表6に記載されている。アノードタブ用の銀インキ(特に述べない限り、アチソンコロイズ社のエレクトロダグ(Electrodag) 479SS)およびカソードタブおよび集電装置用インキ(アチソンコロイズ社のエレクトロダグPF407C)を、ファーマセンターシェルビービル社から製品番号95014として入手できる、金属製の積層されたパッケージ材料の封止表面上に印刷し、乾燥した。上記のカソードインキおよびアノードインキは、各集電装置上に印刷され、また該電池は、共-面状配列で組み立てられ、またセパレータは、該電極間に配置した。これら電池をトリミングし、3方向の側部に沿って熱封止し、約0.7〜0.8gの電解液を該電池に分配し、この電池を封止した。これら電池を100サイクルに渡り放電させて、得られた結果を以下の表7に示した。
【0065】
【表7】

*: 外部接触タブ用の亜鉛を含む;アノードに対して使用したものと同一の印刷亜鉛インキ。
**: セトリミドとして市販品として入手できる、臭化セチルトリメチルアンモニウムを含有する、セパレータ紙被覆液。
【0066】
実施例5:酢酸亜鉛電解液を用いた電池
印刷アノードおよびカソードと共に酢酸亜鉛電解液を使用して、電池を製造した。該印刷亜鉛インキアノードの一般的な処方は、レーザー中心値径10.2μmを持つ、8.6gのユニオンミニエールの亜鉛末(1600ppmの鉛を含む)、0.2gのPVP K-120および5.0mLの1.4M酢酸亜鉛水性溶液であった。電池当たりの実際の亜鉛の投入量を表8に示した。非水性カソードインキ処方物は、表に記載した通りであり、0.3〜1.0μmなる範囲の平均粒径を持つ、ジェットミル処理したEMD(シェメタルズから購入した製品K60であって、マサチューセッツ、ハノーバのスターテバント社(Sturtevant, Inc.)によりジェットミル処理されたもの)および約40μmなる平均粒径を持つ、ジェットミル処理されていないEMD(ケールマックギー(Kerr McGee)から購入したもの)両者が、これら電池において使用されている。アノードは、実施例1と同様に、パッケージ用ラミネート上に直接印刷した。カソード集電装置およびアノード、並びにカソードタブは、印刷された銀インキ(アチソンコロイズ社のエレクトロダッグ479SS)からなっていた。これら電池は、実施例8に記載したように、被覆クラフト紙セパレータを用いて、共-面状電極アセンブリーに組み立てた。これら電池を部分的に封止し、電解液を導入し、次いで該電池を完全に封止した。信号放電(signature discharge)テストの結果を、以下の表8に示すが、この信号放電テストは、一般に各放電同士の間に30分間の休止期間をおいて、高率から低率に順次放電するものと定義される。
【0067】
【表8】

A: 一般的カソードインキ処方:9.2gのケールマックギー製のジェットミル処理されていない、EMD、0.6gの合成グラファイトKS6、0.2gのクレハ1100PVDFバインダ、3.3mLのNMP溶剤。
B: 一般的カソード処方:7.0gのジェットミル処理したEMD、2.8gの合成グラファイトKS6、0.2gのフレハ1100PVDF、8mLのNMP。
**: セパレータ紙は、セトリミドとして市場から入手できるセチルトリメチルアンモニウムブロミドを含んでいた。
【0068】
実施例6:ゲル化された塩化亜鉛電解液を含む共-平板状電池
ゲル化された電解液を、以下のように調製した:6.0質量%のガラクタゾル溶液を、ビーカー中に収容された、28%ZnCl2溶液に、徐々に添加した。この電解液を混合するために、該溶液を磁気撹拌棒で撹拌した。次いで、このゲル化電解液を、室温にて一夜放置して、取り込まれた空気を逃散させた。この脱ガス(脱気)工程は、このゲル化電解液を真空炉に入れることによって促進することができる。円形の電極を備えた、共-平板状電池は、以下のようにして製造できる。9.525mm(3/8 in)の径を持つ円形カソード39を、UCAR社により製造されているグラホイル(Grafoil)のストリップ41(約25mm×100mm、0.142mm)上に、ステンシル印刷によって印刷した。該印刷カソードの厚みは、約0.051mm〜0.2mm(0.002〜0.008 in)なる範囲内で変動する。次いで、乾燥させたカソードを持つ該グラホイルストリップを、トリミングして、図10に示されているような集電装置と同様の狭いタブを持つカソードサイズに合わせた。厚み約0.08mm(0.003 in)の亜鉛箔の一片を、アノード43の形状に切り出した。次いで、これらカソード39およびアノード43を、一片のブックテープ上に配置させた。該カソードおよびアノード間のギャップは、約1mmであった。このガラクタゾル製のゲル化電解液を、該電極の上部に配置した。最後に、他のブックテープ片を、該アセンブリーの上部に配置して、この電池を封止した。
この電池の内部抵抗は、数時間に渡りこれら電池を平衡化させた後、ACインピーダンスにより測定した。図11は、該ゲル化電解液を含むこれら電池が、セパレータを備えた液状電解液を含む電池よりも、かなり低い抵抗をもつことを示している。これら電池の幾つかは、カットオフ電圧0.9Vとなるまで、2mAにて6秒間放電させ、60秒間休止させるサイクル処理に掛けた。これら電池全てが、少なくとも180サイクルに耐えた。
【0069】
実施例7:ポリマーセパレータおよび過剰のZn2+イオンを含む亜鉛インキを用いたアルカリ電池
共-面状電池を、性能の比較の目的で、アノードインキ処方物に過剰のZn2+イオンを添加し、または添加せずに製造した。これら電池全ては、モル比20:80のアクリル酸/ナトリウムスチレンスルホネートを含有する、コポリマーセパレータを含んでいた。該ゲルは、得られる溶液が20質量%のコポリマーおよび80質量%の水を含むように、上記モル比のコポリマーと水とを併合することにより生成する。該アノードおよびカソード各々を、始めに該コポリマーゲルで被覆して、厚み約0.025mm(0.001 in)の接着剤層を形成する。これらの層は、依然として湿潤状態にあるが、以下の表9に示したような厚みを持つ自立性のコポリマーフィルムを、これら湿潤層の一つの上に置き、次いで該電池を、共-面状配列で組み立てるが、ここで該湿潤コポリマー層は、付随的に接着特性を与える。この自立性のフィルムは、ガラス上の上記ゲルに、ドクターブレードで適用して形成し、該ガラスを37-40質量%の水酸化カリウム浴に浸漬することによって、該フィルムを凝固させる。
【0070】
過剰のZn2+イオンを含まない、一般的に乾燥状態にあるアノードインキ処方は、2質量%のPEO(MW=600,000)および56μmの篩開口を通過するが、32μmの篩開口を通過しないように篩別された、98質量%の鉛含有(500ppm)亜鉛末であった。該過剰のZn2+イオンを含む一般的に乾燥状態にあるアノードインキ処方は、1.6質量%のPEO、19.8質量%の塩化亜鉛および78.6質量%の上記のような鉛含有亜鉛末であった。該一般に乾燥状態にあるカソードインキ処方は、10質量%のPEO、6質量%のグラファイトおよび1μm未満のマイクロトラックd(50)値を持つ、84質量%のジェットミル処理したEMDであった。実際の亜鉛およびEMDの投入量を、以下の表9に示した。
【0071】
各場合におけるアノードインキは、上記のようなファーマ基板上に直接印刷され、実施例8に記載したように、銀インキを用いて同一の基板上に印刷された、銀製外部タブと僅かに重複させた。各場合におけるカソードインキは、印刷された銀カソード集電装置上に、直接印刷した。該カソード集電装置用の銀インキは、上記のようなファーマ基板の、第二の片上に直接印刷され、また実施例8に記載したものと同一の銀インキであり、該電池パッケージの封止領域に対して外部の、該基板上のある点まで伸びており、該外部カソードタブを形成している。これら電池を組み立て、3つの側部で封止し、また40質量%の水酸化カリウム溶液を、この電池に添加し、該ポリマーセパレータ層を凝固させ、かつ該電極を湿潤させた。次いでこれら電池を、該銀電極外部タブを環境に暴露している、第四の端部に沿って封止し、これら電池を0.9Vなるカットオフ電圧まで、10mAで60秒間通電し、5秒間休止させるというパルス化放電に付した。
【0072】
【表9】

【0073】
該亜鉛インキへの塩化亜鉛の添加は、該印刷アノードの導電率を増大し、かつそのオーム抵抗を低下する。
【0074】
実施例8:音響カード(Sound Card)回路
印刷電池を以下のように組み立てた:先ず、カソード集電装置をファーマセンターシェルビービル社から製品番号95014として入手できる、単一シート状の金属製ラミネートパッケージ材料の封止表面上に、印刷し、次いで乾燥する。このカソード集電装置は、アチソン社から入手できる炭素ポリマーインキである、エレクトロダグPF-407C製である。このカソード集電装置は、36μm(乾燥膜厚)×27mm×40mmなるサイズで印刷する。次に、該アノードおよびカソード用の銀製外部タブを、同一の金属ラミネートシートの、封止表面上に印刷し、乾燥する。このカソードタブは、該金属ラミネート表面に既に堆積されている、該カソード集電装置用インキと重なり合う。この銀インキは、アチソン479SSであり、また各タブは、32.3mm×11.0mm×10.0μm(厚み)なる乾燥後の寸法を有し、また他のタブから11mmだけ離されている。アノードを同一のラミネートシート上に印刷する。このアノードは亜鉛インキであり、その湿潤組成は、製造業者により報告された、レーザー中央値径10μmを持つ、57.35質量%のユニオンミニエールの亜鉛末、1.33質量%のPVP、31.74質量%の水および9.58質量%の、アルドリッチからZn(OOOCH3)2・2H2Oとして入手できる酢酸亜鉛を含む。このインキは、先ず該水性酢酸亜鉛溶液を混合し、次いでこの溶液に該PVPを溶解し、最終的に該亜鉛末を添加し、均一に混合されるまで撹拌することによって作られる。このアノードは、該基板材料上に印刷され、該金属ラミネートの封止表面上に既に堆積されている該銀製アノードタブと重なり合う。このアノードは、100μm(乾燥膜厚)×6mm×38.6mmなるサイズとなるように印刷される。当業者は、この印刷の順序が変更できるものであり、また本発明の範囲を逸脱せずに、該銀製外部タブを、該封止表面上に最初に直接印刷できることを認識するであろう。
【0075】
次いで、カソードの二酸化マンガンインキを処方する。その湿潤処方は、1μm未満の処理したマイクロトラックサンプルについて測定した、d(50)粒径を持つ、36.84質量%のジェットミル処理されたシェメタルズの電解二酸化マンガン(EMD)、1.05質量%のPVP、14.74質量%のKS6および47.37質量%の水である。このインキは、該EMDと該KS6とを予備混合し、該PVPを該水に予備的に溶解し、次いで該粉末混合物を、該ポリマー溶液に添加し、均一な混合物が得られるまで撹拌することにより作られる。該カソードは、該集電装置上に、190μm(乾燥膜厚)×28mm×40.6mmなるサイズとなるように印刷され、乾燥される。
【0076】
0.089〜0.114mm(乾燥膜厚)×40mm×43.6mmなる寸法を持つ、被覆クラフトセパレータ紙を、該電極上に置く。該セパレータ用の原紙は、マンクショウから入手(#300542)でき、また20g/m2(gsm)までの量の、澱粉(83.6質量%;ロケットから市販品(LAB2469)として入手できる)、ゲル(7.9質量%;クアトールズから市販品(B1209)として入手できる)、PVP(2.1質量%)、界面活性剤(1.4質量%;クロダメット(Crodamet)として公知の市販品である、エチルタローアミン)および水(5.0質量%)を含む混合物で被覆されている。ラミネートパッケージ材料の第二シートを、該電極アセンブリー上に配置し、該パッケージをトリミングし、3つの端部に沿って熱封止する。0.6gなる量の電解液をこのパッケージに添加する。この電解液は、28質量%の塩化亜鉛溶液であり、これに600ppmの塩化鉛および1000ppmの臭化セチルトリメチルアンモニウムが添加されている。次に、この最終溶液を濾過して、使用前に固形分を除去する。該電解液を添加した後、この電池を、残りの端部に沿って封止し、トリミングして、所定の外部寸法とする。
【0077】
回路45を、メリネックス(Melinex)から入手(#454)できる、厚み約0.254mm(0.010 in)のポリエステルフィルム47上に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを含む溶剤中の、アチソン社製の銀インキ(エレクトロダグ479SS)を用いて、厚み8-12μmとなるまでスクリーン印刷し(図12を参照のこと)、乾燥する。200,000Ωのレジスタ49を、該回路上に、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとイソホロンとの二成分系における、アチソン社のカーボンインキ(ミニコ(Minico) M301401 RS)を用いて、厚み10〜15μmにて印刷する(図12を参照のこと)。ホルテック(Holtek)から入手できる音響チップ51(HT81R03)およびスターマイクロニックス(Star Micronics)から入手できるピエゾ電気スピーカー53(QMB 105PX)を、サーキットワークス(Circuit Works)から入手できる銀エポキシ(CW 2400)を用いて、該回路に貼付する。亜鉛箔を用いて、両面テープ上にスイッチを取り付け、該回路に接続する。2つの電池55、57を該銀エポキシを用いて、該回路に接続して、このデバイスを完成させ、動作可能な状態にする。図13を参照のこと。
【0078】
本発明のほんの幾つかの態様を、上で説明してきたが、本発明の精神並びに範囲を逸脱することなしに、多くの改善を施すことができることを理解すべきである。例えば、上記の薄い、好ましくは可撓性の電池に関連して、単一のカソードと組み合わせた、単一のアノードに議論を集中させたが、当業者は、並列、直列または両者の関係にある、任意数のアノードとカソードとの組み合わせを、本発明の範囲から逸脱せずに、該電池に組み込むことができることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0079】
1・・印刷電池;3・・印刷アノード;5・・印刷カソード;7、29、35・・カソード集電装置;9・・セパレータ;11・・ハウジング;13・・集電装置;15・・封止領域;17・・外部端子;19・・接着剤またはエポキシ;21・・外部タブ;23・・アノードタブ;25・・基板;27・・アノードインキ;31・・ラミネート材料;33・・タブ延長部;34、43・・アノード;37・・カソードインキ;41・・ストリップ;45・・回路;47・・ポリエステルフィルム;49・・レジスタ;51・・音響チップ;53・・スピーカー;55、57・・電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の非-導電性基板材料の第一部分上に直接印刷された亜鉛アノード、封止されたハウジング、および塩化亜鉛と水とゲル化剤とを含むゲル化された電解液を含む炭素-亜鉛電池であって、前記亜鉛アノードおよび前記ゲル化された電解液が前記ハウジング内に収容され、前記亜鉛アノードが、亜鉛、酢酸亜鉛及び2.0〜4.0×106なる範囲の分子量を持つポリビニルピロリドンを含む水性アノード処方物を前記可撓性の非-導電性基板材料の第一部分上に直接印刷することによって得ることができることを特徴とする炭素-亜鉛電池。
【請求項2】
該ゲル化剤がノニオン性またはアニオン性誘導体および天然グアーガムを含む、請求項1記載の電池。
【請求項3】
該非-導電性基板材料がポリマー材料である、請求項1記載の電池。
【請求項4】
該封止されたハウジングが封止されたパッケージである、請求項1記載の電池。
【請求項5】
該封止されたハウジングが可撓性パッケージ材料を含む、請求項1記載の電池。
【請求項6】
さらに、集電装置および封止領域を含む請求項1記載の電池であって、該封止されたハウジングが可撓性の非-導電性基板材料を含み、該集電装置が該封止されたハウジングの該封止領域に及ぶ、電池。
【請求項7】
該封止されたハウジングが可撓性であり、該可撓性の非-導電性基板材料によって形成される、請求項1記載の電池。
【請求項8】
該ポリビニルピロリドンが2.2〜2.8×106なる範囲の分子量を持つ、請求項1記載の電池。
【請求項9】
該水性アノード処方物が、燐酸根およびポリエチレンオキサイドおよび/またはポリプロピレンオキサイド鎖を有する界面活性剤を含む、請求項1記載の電池。
【請求項10】
該電解液がセチルトリメチルアンモニウムブロマイド及び塩化鉛を含む、請求項1記載の電池。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−45047(P2010−45047A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265074(P2009−265074)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【分割の表示】特願2003−568714(P2003−568714)の分割
【原出願日】平成14年12月17日(2002.12.17)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【Fターム(参考)】