説明

可視スペクトルの光子を吸収するよう改質された光触媒特性を伴うフィルムを有する、ガラス基材のような、基材

本発明は二酸化チタン(TiO)をベースとし、そしてUV範囲、特に長波長UVA範囲の光子を吸収可能である光触媒特性及び汚れ防止特性を有する層の改質に関係し、可視スペクトルの光子も吸収する特性を提供するために、前記TiO系の層は基材に直接的に適用されるかまたは少なくとも一の機能副層の挿入を伴って適用される。本発明は、望ましい可視光の光子吸収特性を得るために、TiO系の層は窒素又は少なくとも一の還元ガスと窒素を含む雰囲気中で十分な時間熱処理にさらされることを特徴としており、前記基材及び必要であれば前記副層はこの熱処理に耐える能力のために選択されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス、セラミック又はガラスセラミック基材又は建築材料若しくは繊維材料で作られた基材のような基材に関係し、「汚れ防止」または「自己洗浄」機能と呼ばれるものを与えるために光触媒特性を有するコーティングが提供される。
【背景技術】
【0002】
これらの基材のひとつの重要な用途は板ガラスに関係し、場合により非常に多様な用途があり、実用的な板ガラスから家庭用電気器具に使われる板ガラスまで、例えば自動車用板ガラスから建築用板ガラス、及び都会の家具用の板ガラス、及び照明用器具の構成要素まである。
【0003】
それはミラータイプの反射板ガラス(住居用の鏡、又は自動車の後方視認ミラー、又はサイドミラー)、及び安全壁または帳壁(カーテンウォール)タイプの不透明板ガラスにも適用する。また無機または有機の眼のレンズにも適用する。
【0004】
本発明はまた同様に、例えばセラミック基材又は特に建築用材料(金属、舗装、タイル、石、セメント配合物、外観の下塗り、コンクリートスラブ、建築コンクリート、テラコッタ、スレート等)として使用可能な任意の他の基材のような、非透明の基材にも適用する。それは、基材の性質に関係なく、実質的に平板な又は曲がった基材に好ましく適用する。
【0005】
言及されたものはガラスファイバー、クォーツファイバー、シリカファイバー等で形成された基材で作られてもよく、これは空気又は水の濾過に適用され、または殺菌性用途、ガラス断熱ウール、または繊維ガラス強化編み糸(ヤーン)で採用される。
【0006】
光触媒コーティング、特に少なくとも部分的にアナターゼ形態で結晶化した酸化チタン系のものはすでに研究されている。それらのUV放射、特に長波長UVA放射(波長:315〜400nm)の効果の下で有機源の汚染または細菌を分解する能力は非常に有利なものである。それらはまたしばしば親水性の性質も有し、水をスプレーすることによって、又は屋外の板ガラスの場合は雨によって、無機的な汚染が除去されることを可能とする。
【0007】
随意にドープしたTiOのUV放射の影響下での活性は、急激な反応を開始し有機化合物の酸化に帰結し、それゆえに有機汚染の分解には非常に満足のできるものであるが、この活性はUV放射に曝されることによるものである。これが建築物の内側(そこでは長波長UVA放射の貫通がほとんど無い)に対して、又は人工的な光に対して自己洗浄活性が事実上存在しない理由である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこの欠点に対する解決を提供し、そしてこの目的のために、可視光(400〜800nm範囲)の光子の吸収も可能となるようにTiO系フィルムを改質するための、簡潔で、効果的で、危険がなく、かつ無公害の手段を提案する。そのため活性を増すことが可能となるが、これは一方でこの活性はもはやUV下での汚染分解に限定されず可視光での汚染分解まで拡大されるからであり、他方ではこの活性がUV下及び可視光の両方で増加されることが可能だからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的はそれゆえ第一に、UV、特に長波長UVA、の領域の光子を吸収することが可能であり、光触媒性の汚れ防止特性を伴う二酸化チタン(TiO)系フィルムを可視光の光子を吸収することも可能ならしめるように、改質する方法であって、該TiO系フィルムは直接的に又は少なくとも一の機能性副フィルムの介在を伴って基材に適用されており、該TiO系フィルムが窒素雰囲気で又は窒素及び少なくとも一の還元ガスを含む雰囲気で、望ましい可視光での光子吸収特性を得るために十分な時間の間、熱処理にさらされ、該基材及び適切な場合には該副フィルムが該熱処理に耐えることが可能であるように選択されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の目的は、少なくとも片面の少なくとも一部に光触媒性の汚れ防止特性を有する二酸化チタン(TiO)系フィルムを坦持する基材、特にガラス基材、を製造する方法でもあって、該フィルムは直接的に又は少なくとも一の機能性副フィルムの介在を伴って該基材に適用されており、
該TiO系フィルムを坦持する基材に対し、窒素雰囲気で又は窒素及び少なくとも一の還元ガスを含む雰囲気で、十分な時間熱処理が施されることにより、元来UV領域での光子吸収が可能である該TiO系フィルムに可視光の光子吸収も可能とし、かつ/又は該TiO系フィルムの光触媒性特性を増進させることを特徴とする方法である。
【0011】
従って、ガラス基材、表面脱アルカリガラス基材、セラミック又はガラスセラミック基材及び建築材料の基材の中から選択された基材に適用されたTiO系フィルムが処理されてもよく、該基板が、平面的または曲面を有していようと、モノリシック構造またはラミネート構造であろうと、プレートの形態であることが可能であり、あるいは、繊維状の形態であることが可能であり、織った基材、不織の基材等を形成してもよい。
【0012】
特に、以下から選択された少なくとも一の機能的副フィルムの介在を伴う基材に適用されたTiO系フィルムが処理されてもよい、
− 例えばフランス特許出願FR 03/50729に記載されるような、該TiO系フィルムからヘテロエピタキシャルに成長した副フィルム;
− アルカリ金属の移動に対する障壁を形成し、そしてガラス又はセラミック又はガラスセラミック基材の場合に使用される副フィルム;
− 光学的機能性を有する副フィルム;
− 熱制御副フィルム;及び
− 伝導性副フィルム。
【0013】
前述したようなアルカリ金属の移動は、600℃を超える温度の適用の結果であってもよい。PCT国際出願WO02/24971で開示されるように、その後の熱処理の間にアルカリ金属に対する障壁を形成するこのようなフィルムが知られており、この言及されたものは、厚さは例えば少なくとも5または10nmで多くの場合少なくとも50nmである、SiO、SiOC、SiO及びSiフィルムから作られてもよい。
【0014】
この光学的機能性を有するフィルムは特に以下の機能、すなわち反射防止、光放射濾過、着色、散乱等を提供するためのフィルムである。言及してもよい例はSiO、Si、TiO、SnO及びZnOフィルムを含む。
【0015】
熱制御フィルムは特に日照制御フィルムまたはいわゆる「low−E(低放射率)」フィルムである。
【0016】
伝導性フィルムは特に加熱、光起電性、アンテナまたは帯電防止のフィルムである。これらのフィルムは伝導性ワイヤーからなるアレーを含んでも良い。
【0017】
本発明により、以下からなる二酸化チタン系フィルムを処理することが可能である、
TiOだけ;
又はバインダーと結合したTiOであって、例えばバインダーが少なくとも一の半導体金属酸化物(酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化コバルト、酸化ニッケル、コバルトニッケル混合酸化物、これらに随意にドープされたもの)、混合酸化物であって亜マンガン酸塩(manganites)及び輝コバルト鉱(cobaltites)、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウム、から選択されたもの、これらに随意にドープされたもの(WO 02/92879)を原則的に含む無機バインダーであるもの;
又はTiO合金であって、例えば上記と同じ酸化物を伴うもの;
又はドープされたTiOであって、例えば窒素(N)、ニオブ、タンタル、鉄、ビスマス、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、セリウム、モリブデン、バナジウム及びジルコニウムから特に選択されるドーパントの少なくとも一つでドープされたもの(EP 850 204)。
【0018】
このドーパント又は合金化元素は、格子間元素として又は置換元素として、TiOと同じ結晶構造で発見されてもよい。
【0019】
ゾルゲルプロセスによって、又は熱分解プロセス特にCVDタイプのガス熱分解によって、又は金属(Ti)若しくはTiO(ここではx<2)ターゲット及び酸化雰囲気を使用するか又はTiOターゲット及び不活性雰囲気を使用する、場合によりマグネトロンスパッタリング及び/又はイオンビームスパッタリングである、室温真空スパッタリングによって、このTiO系フィルムは付着されていてもよい。
【0020】
直流又は交流電源条件下で、1〜3mbarの圧力下でかつ酸素+不活性ガス(例えばアルゴン)を含む雰囲気で、Ti又はTiO(x=1.5〜2)ターゲットを使用する、場合によりマグネトロン及び/又はイオンビームスパッタリングである、真空スパッタリングによって、このTiOフィルムが特に付着されてもよい。
【0021】
このスパッタリングによって作製されたTiOは、本発明による熱処理にさらされるために、最初は光触媒性が活性な形態でなかった場合でさえ、光触媒性が活性な形態である結晶状態にある(少なくとも部分的にアナターゼである)。実際に、最初にこのTiOはアモルファス、又は部分的に若しくは完全にアナターゼ若しくはルチルの結晶、又はアナターゼ/ルチル形態であってもよい。
【0022】
本発明により、特に1μm以下、特に5nm〜1μm、そしてとりわけ5nm〜800nmの厚みを有するTiO系フィルムが処理されてもよい。ゾルゲル技術によって付着されたTiO系フィルムの場合、この厚みは5〜800nmであってもよい。熱分解によって付着されたTiOフィルムの場合、この厚みは5〜200nmであってもよい。スパッタリングによって付着されたフィルムの場合、この厚みは5〜200nmであってもよい。
【0023】
本発明による熱処理は少なくとも250℃そして場合により700℃までの温度で有利に実施されてもよい。この基材がガラス基材の場合、この熱処理は前記ガラス基材に対して実施された焼きなまし(annealing)処理又は強化(toughening)処理、又は二重板ガラスユニットでありその面が1−2−3−4と表示され、第4面が建築物の内側に向けられており、第4面に光触媒フィルム、及び第3面に日照防護又は低放射(熱制御)フィルムを含むガラス基材に対して実施された曲げ(bending)/強化(toughening)処理に相当する。
【0024】
本発明による熱処理は1気圧(1.013x10Pa)の圧力下で実施されてもよい。
【0025】
本発明により、熱処理はほんの一瞬(フラッシュアニーリング)から数時間の範囲の時間有利に実施されてもよい。TiO系フィルムの厚み、処理温度、ガラスの厚み等のようなパラメーターに応じてこの熱処理時間をどのように調節するかを当業者は知る。
【0026】
このように、言及されたものが作製されてもよく、例えば、マグネトロンスパッタリングによって付着されたTiO系フィルムの場合、500℃で4〜8分の処理時間、ホールド温度まで達するために4℃/分の昇温、そして室温に戻すためにホールド温度後の自然降温を伴って、作製される。ゾルゲルプロセスによって付着されたTiO系フィルムの場合、450℃で2時間の処理時間、ホールド温度まで達するために100℃/30分の昇温を伴って、言及されたものが作製されてもよい。
【0027】
既に示されたように、熱処理は約700℃の温度で実施されてもよく、これは強化処理に相当し、この場合基材はその後急速冷却を受ける。過剰な又は過度に長い加熱によってTiOが不適切な(ルチル)形態で結晶化すること、及び望ましい効果を生じない不十分又は過度に短い加熱を避けるために、プロセスパラメーターをどのように適応するかを当業者は知る。
【0028】
本発明により、メタンのような、炭化水素及び水素から採用された少なくとも一のガスが還元ガスとして好ましく使用され、その窒素/還元ガス体積比率は特に100/0〜50/50である。混合ガスの場合、窒素/還元ガス体積比率が99/1〜50/50、特に95/5〜90/10、とりわけN/Hの場合に、言及されたものが作製されてもよい。
【0029】
本発明はまた、少なくとも片面の少なくとも一部に光触媒性の汚れ防止特性を有する二酸化チタン(TiO)系フィルムを坦持する基材、特にガラス基材、に関係する。該フィルムは直接的に又は少なくとも一の機能性副フィルムの介在によって該基材に適用されており、上述した方法によって該TiO系フィルムは改質されているか、又は上述した方法(プロセス)によって該基材が作製されている。
【0030】
前記基材は少なくとも一の機能的又は防護的オーバーフィルム、例えばSiO、SiOC、SiO:Al又はPd、Pt又はAg金属島のフィルムを含んでもよい。
【0031】
本発明はまた以下の用途にも関係する、すなわち:
−本質的に透明な基材の用途であって、
自己洗浄、特に防曇、防汚れ及び防露の板ガラス、特に二重板ガラスタイプの建築物用板ガラス、自動車のフロントガラス、リアウィンドウ、又はサイドウィンドウタイプの乗り物用板ガラス、列車、飛行機及び船舶用の板ガラス、水槽用ガラス、店舗用ガラス又は温室用ガラスのような実用的板ガラス、内装家具用板ガラス、都会の家具用の板ガラス、鏡、コンピューター、テレビ又は電話タイプのディスプレーシステムのためのスクリーン、エレクトロクロミック、液晶又はエレクトロルミネセント板ガラスのような電気的に制御可能な板ガラス、光起電性板ガラス、およびカバーのような照明装置の構成要素の製造に向けた基材の用途;
−建築材料から作製された基材の用途であって、屋内用又は屋外用どちらでもよい、パーティション、カーテン状の壁、屋根又は床の製造に向けた基材の用途;
−無機断熱ウール及びガラス強化ファイバー系繊維基材をベースとする基材の用途であって、つり天井または濾過材料の製造に向けた基材の用途;及び
−焼結された溶融シリカファイバー、洗浄ガラスファイバー、アルミナファイバー又はムライトファイバーからなる、織った(weave)、不織の(non weave)、編んだ(knit)、束ねた(braid)又はブロックの(block)基材の用途であって、臭気吸収フィルター、工業廃水を浄化するためのフィルター、細菌フィルター、屋内浄化フィルター、家庭用空気清浄化フィルター、移送用乗り物、すなわち自動車、列車、飛行機及び船舶、の乗客室の清浄化フィルター、たばこの煙を清浄化するためのフィルター及び家庭用電気システムを清浄化するためのフィルターの製造に向けた基材の用途。
【実施例】
【0032】
以下の例は本発明を明らかにするが、本発明の範囲を限定することはない。
【0033】
例1:ガラス/SiO:Al/TiO積層
150nmの厚さのSiO:Alフィルム及び100nm厚さのTiOフィルムをガラスプレートに4mmの厚さで磁気強化(マグネトロン)スパッタリングによって以下の条件で付着した。
− SiO:AlフィルムはSi:Alターゲットから、パルスモード(40kHz 極性変化周波数)の電源で、2x10−3mbar(0.2Pa)の圧力下、電力2000W、及び14sccmのAr/16sccmのOで;そして
− TiOフィルムはTiOターゲットから、DCバイアスの電源で、24x10−3mbar(2.4Pa)の圧力下、電力2000W、及び200sccmのAr/2sccmのOで付着した。
【0034】
例2:多様な雰囲気での積層焼きなまし
空気又は窒素又は窒素/水素(N/H=95/5 体積/体積)のいずれかで制御された雰囲気のチャンバーに例1で準備したプレートを置き、そして多様な時間の期間で(16分まで)かつ大気圧かつ500℃で、4℃/分で昇温し、自然冷却を伴う熱処理を実施した。
【0035】
その後この多様なプレートを調査した。
【0036】
例3:結果
【0037】
光触媒性活性の評価
PCT国際出願WO00/75087に記載される、赤外線伝送に続くステアリン酸光分解試験(SAT)により、例2の多様なプレート上のTiOフィルムの光触媒性活性を評価した。
【0038】
図1に結果を示す。多様な焼きなまし時間、焼きなまし雰囲気、空気(制御されたもの)、窒素及び窒素+水素について、UVランプ(50W/m 長波長UVA)照射10分後の分解ステアリン酸のパーセンテージをプロットした。
【0039】
本質的に可視光を放出する菅(従来の照明ランプ(ネオン管) 1.4W/m 長波長UVA)に曝露させて1時間又は2時間後のSATにより、同活性を評価した。結果を図2(1時間)及び図3(2時間)に示す。
【0040】
吸収スペクトルの比較
空気、窒素及び窒素+水素中での多様なタイプの焼きなましについての吸収スペクトルの比較は、処理雰囲気による吸収の違いを示した。
【0041】
図4:100nmのTiOを含む積層について、空気中での8分間の焼きなましの前後の吸収の比較。
【0042】
図5:100nmのTiOを含む積層について、窒素中での8分間の焼きなましの前後の吸収の比較。
【0043】
図6:100nmのTiOを含む積層について、窒素/水素中での8分間の焼きなましの前後の吸収の比較。
【0044】
空気中での焼きなましに関して、熱処理の前後の吸収は同じであった。しかしながら、窒素又は窒素/水素中での焼きなまし後は、可視光スペクトルの始まりにおいて吸収が熱処理後に増加した。
【0045】
これらの結果は、窒素又は窒素/還元ガス雰囲気で熱処理を実施すれば、100nmのTiOを単純に含んだ積層の場合、可視光において、屋内での自己洗浄用途に関して有用なレベルの光活性を得ることが可能であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】多様な焼きなまし時間、焼きなまし雰囲気、空気(制御されたもの)、窒素及び窒素+水素について、UVランプ(50W/m 長波長UVA)照射10分後の分解ステアリン酸のパーセンテージをプロットした。
【図2】本質的に可視光を放出する菅(従来の照明ランプ(ネオン管) 1.4W/m 長波長UVA)に曝露させた1時間後のSATの結果を示す。
【図3】本質的に可視光を放出する菅(従来の照明ランプ(ネオン管) 1.4W/m 長波長UVA)に曝露させた2時間後のSATの結果を示す。
【図4】100nmのTiOを含む積層について、空気中での8分間の焼きなましの前後の吸収の比較。
【図5】100nmのTiOを含む積層について、窒素中での8分間の焼きなましの前後の吸収の比較。
【図6】100nmのTiOを含む積層について、窒素/水素中での8分間の焼きなましの前後の吸収の比較。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV、特に長波長UVA、の領域の光子を吸収することが可能であり、光触媒性の汚れ防止特性を伴う、二酸化チタン(TiO)系フィルムを可視光の光子を吸収することも可能ならしめるように、改質する方法であって、該TiO系フィルムは直接的に又は少なくとも一の機能性副フィルムの介在を伴って基材に適用されており、
該TiO系フィルムが窒素雰囲気で又は窒素及び少なくとも一の還元ガスを含む雰囲気で、望ましい可視光での光子吸収特性を得るために十分な時間の間、熱処理にさらされることを特徴とし、該基材及び適切な場合には該副フィルムが該熱処理に耐えることが可能であるように選択されている、フィルムの改質方法。
【請求項2】
ガラス基材、表面脱アルカリガラス基材、セラミック又はガラスセラミック基材及び建築材料の基材の中から選択された基材に適用されたTiO系フィルムが処理され、該基材が、平面的または曲面を有していようと、モノリシック構造またはラミネート構造であろうと、プレートの形態であることが可能であり、あるいは、繊維状の形態であることが可能であることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
以下から選択された少なくとも一の機能的副フィルムの介在を伴う基材に適用されたTiO系フィルムが処理されることを特徴とする、請求項1及び2のいずれかに記載された方法
該TiO系フィルムからヘテロエピタキシャルに成長した副フィルム;
アルカリ金属の移動に対する障壁を形成し、そしてガラス又はセラミック又はガラスセラミック基材の場合に使用される副フィルム;
光学的機能性を有する副フィルム;
熱制御副フィルム;及び
伝導性副フィルム。
【請求項4】
TiOのみ、又はバインダーと結合したTiO、又は合金化されたTiO、又はドープされたTiOからなる二酸化チタン系フィルムが処理されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載された方法。
【請求項5】
1μm以下、特に5nm〜1μm、そしてとりわけ5nm〜800nmの厚みを有するTiO系フィルムが処理されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載された方法。
【請求項6】
熱処理が少なくとも250℃そして場合により700℃までの温度で実施されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載された方法。
【請求項7】
基材がガラス基材であって、
熱処理が該ガラス基材に対して実施された焼きなまし(annealing)処理又は強化(toughening)処理、又は二重板ガラスユニットでありその面が1−2−3−4と表示され、第4面が建築物の内側に向けられており、第4面に光触媒フィルム、及び第3面に日照防護又は低放射(熱制御)フィルムを含むガラス基材に対して実施された曲げ(bending)/強化(toughening)処理に相当することを特徴とする請求項6に記載された方法。
【請求項8】
熱処理が1秒未満の時間から数時間の範囲の時間で実施されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載された方法。
【請求項9】
メタンのような、炭化水素及び水素から採用された少なくとも一のガスが還元ガスとして使用され、該窒素/還元ガス体積比率は特に100/0〜50/50であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載された方法。
【請求項10】
少なくとも片面の少なくとも一部に光触媒性の汚れ防止特性を有する二酸化チタン(TiO)系フィルムを坦持する基材、特にガラス基材、を製造する方法であって、該フィルムは直接的に又は少なくとも一の機能性副フィルムの介在を伴って該基材に適用されており、
該TiO系フィルムを坦持する基材に対し、窒素雰囲気で又は窒素及び少なくとも一の還元ガスを含む雰囲気で、十分な時間熱処理が施されることにより、元来UV領域での光子吸収が可能である該TiO系フィルムに可視光の光子吸収も可能とし、かつ/又は該TiO系フィルムの光触媒性特性を増進させることを特徴とする方法。
【請求項11】
ガラス基材、表面脱アルカリガラス基材、セラミック又はガラスセラミック基材及び建築材料の基材の中から選択された基材に適用されたTiO系フィルムが処理され、該基板が、平面的または曲面を有していようと、モノリシック構造またはラミネート構造であろうと、プレートの形態であることが可能であり、あるいは、繊維状の形態であることが可能であることを特徴とする、請求項10に記載された方法。
【請求項12】
以下から選択された少なくとも一の機能的副フィルムの介在を伴う基材に適用されたTiO系フィルムが処理されることを特徴とする、請求項10及び11のいずれかに記載された方法
該TiO系フィルムからヘテロエピタキシャルに成長した副フィルム;
アルカリ金属の移動に対する障壁を形成し、そしてガラス又はセラミック又はガラスセラミック基材の場合に使用される副フィルム;
光学的機能性を有する副フィルム;
熱制御副フィルム;及び
伝導性副フィルム。
【請求項13】
TiOのみ、又はバインダーと結合したTiO、又は合金化されたTiO、又はドープされたTiOからなる二酸化チタン系フィルムが処理されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載された方法。
【請求項14】
1μm以下、特に5nm〜1μm、そしてとりわけ5nm〜800nmの厚みを有するTiO系フィルムが処理されることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載された方法。
【請求項15】
熱処理が少なくとも250℃そして場合により700℃までの温度で実施されることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載された方法。
【請求項16】
基材がガラス基材であって、
熱処理が該ガラス基材に対して実施される焼きなまし(annealing)処理又は強化(toughening)処理に相当することを特徴とする請求項15に記載された方法。
【請求項17】
熱処理が1秒未満の時間から数時間の範囲の時間で実施されることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載された方法。
【請求項18】
メタンのような、炭化水素及び水素から採用された少なくとも一のガスが還元ガスとして使用され、該窒素/還元ガス体積比率は特に100/0〜50/50であることを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載された方法。
【請求項19】
金属(Ti)若しくはTiO(ここではx<2)ターゲット及び酸化雰囲気を使用するか又はTiOターゲット及び不活性雰囲気を使用する、場合によってはマグネトロンスパッタリング及び/又はイオンビームスパッタリングである、室温真空スパッタリングによって、TiOフィルムが付着されることを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載された方法。
【請求項20】
TiOフィルムがCVDタイプのガス熱分解プロセスによって付着されることを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載された方法。
【請求項21】
TiOフィルムがゾルゲルプロセスによって付着されることを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載された方法。
【請求項22】
少なくとも片面の少なくとも一部に光触媒性の汚れ防止特性を有する二酸化チタン(TiO)系フィルムを坦持する基材、特にガラス基材、であって、
該フィルムは直接的に又は少なくとも一の機能性副フィルムの介在によって基材に適用されており、請求項1〜9のいずれか1項に定義された方法によって該TiOフィルムは改質されているか、又は請求項10〜21のいずれか1項に定義された方法(プロセス)によって該基材が作製されている、基材。
【請求項23】
本質的に透明な基材の用途であって、
自己洗浄、特に防曇、防汚れ及び防露の板ガラス、特に二重板ガラスタイプの建築物用板ガラス、自動車のフロントガラス、リアウィンドウ、又はサイドウィンドウタイプの乗り物用板ガラス、列車、飛行機及び船舶用の板ガラス、水槽用ガラス、店舗用窓ガラス又は温室用ガラスのような実用的板ガラス、内装家具用板ガラス、都会の家具用の板ガラス、鏡、コンピューター、テレビ又は電話タイプのディスプレーシステムのためのスクリーン、エレクトロクロミック、液晶又はエレクトロルミネセント板ガラスのような電気的に制御可能な板ガラス、光起電性板ガラス、および照明装置の構成要素、の製造に向けた請求項22に記載された基材の用途。
【請求項24】
建築材料から作製された基材の用途であって、屋内用又は屋外用どちらでもよい、パーティション、カーテン状の壁、屋根又は床の製造に向けた請求項22に記載された基材の用途。
【請求項25】
無機断熱ウール及びガラス強化ファイバー系繊維基材をベースとする基材の用途であって、つり天井または濾過材料の製造に向けた請求項22に記載された基材の用途。
【請求項26】
焼結された溶融シリカファイバー、洗浄ガラスファイバー、アルミナファイバー又はムライトファイバーからなる、織った(weave)、不織の(non weave)、編んだ(knit)、束ねた(braid)又はブロックの(block)基材の用途であって、
臭気吸収フィルター、工業廃水を浄化するためのフィルター、細菌フィルター、屋内浄化フィルター、家庭用空気清浄化フィルター、移送用乗り物、すなわち自動車、列車、飛行機及び船舶、の乗客室の清浄化フィルター、たばこの煙を清浄化するためのフィルター及び家庭用電気システムを清浄化するためのフィルターの製造に向けた請求項22に記載された基材の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−532290(P2007−532290A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506818(P2007−506818)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050214
【国際公開番号】WO2005/102953
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】