説明

可視光通信受信装置

【課題】太陽光の影響を受けることなく可視光通信を行うことが可能な可視光通信受信装置を提供することにある。
【解決手段】可視光通信受信装置は、可視光を受光する可視光受光部と、可視光受光部によって受光された可視光から、フラウンホーファー線を抽出するフィルタと、当該フィルタによって抽出されたフラウンホーファー線に基づいて復調処理を行う受信回路とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、可視光通信を行うための可視光通信受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば照明等から発せられる可視光を利用した通信(以下、可視光通信と表記)が知られている。
【0003】
このような可視光通信においては、情報が重畳された可視光信号を発信する装置(可視光通信発信装置)及び当該可視光通信発信装置から発信された可視光信号を受信する装置(可視光通信受信装置)が用いられる。なお、可視光通信受信装置には、可視光を受光するためのセンサ(例えば、ピンフォトダイオードまたはイメージセンサ)が備えられている。
【0004】
一般に、このような可視光通信が屋外で行われる場合、可視光通信発信装置から発信された可視光信号に加えて、太陽光線が直接、可視光通信受信装置のセンサに入射する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したように太陽光線が可視光通信受信装置のセンサに入射することによって当該センサの限度以上の光量が当該センサに入射した場合、当該センサ(の受信感度)は飽和してしまう。このように可視光通信受信装置のセンサが飽和した場合、可視光通信発信装置から発信された可視光信号を可視光通信受信装置で入力(受信)することができないため、可視光通信を行うことはできない。
【0007】
ここで、可視光通信受信装置において、例えば可視光周波数帯域を遮断するフィルタを用いて太陽光を遮断することが考えられる。しかしながら、この場合には可視光通信発信装置から発信された可視光信号も遮断されるため、結果的に可視光通信を行うことができない。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、太陽光の影響を受けることなく可視光通信を行うことが可能な可視光通信受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る可視光通信受信装置は、可視光を受光する可視光受光部と、前記可視光受光部によって受光された可視光から、フラウンホーファー線を抽出するフィルタと、前記フィルタによって抽出されたフラウンホーファー線に基づいて復調処理を行う受信回路とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る可視光通信発信装置及び可視光通信受信装置の構成を示すブロック図。
【図2】フラウンホーファー線の主な記号及び波長を示す図。
【図3】本実施形態に係る可視光通信発信装置10及び可視光通信受信装置20の処理手順を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態に係る可視光通信発信装置及び可視光通信受信装置について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る可視光通信発信装置及び可視光通信受信装置の構成を示すブロック図である。図1に示す可視光通信発信装置10及び可視光通信受信装置20は、可視光通信を行うために用いられる。
【0013】
可視光通信発信装置10は、特定LED(Light Emitting Diode)光源11及び可視光通信発信制御回路12を含む。
【0014】
特定LED光源11は、太陽光に含まれない周波数を中心とする周波数帯の可視光を発光するように構成されている。この太陽光に含まれない周波数には、フラウンホーファー線の周波数のうちの1つの周波数が含まれる。なお、フラウンホーファー線は、太陽光スペクトル中に存在する暗線であり、当該太陽光スペクトルのうち特定の周波数(波長)のものが太陽及び地球の大気中の原子・分子に吸収されることによって生じるものである。
【0015】
可視光通信発信制御回路12は、可視光通信を行うために特定LED光源11を制御する。可視光通信発信制御回路12は、可視光通信において可視光通信受信装置20に対して送信される情報(以下、送信情報と表記)を特定LED光源11の発光で変調する。
【0016】
可視光通信受信装置20は、フィルタ21、集光レンズ22、センサデバイス23及び可視光通信受信回路24を含む。なお、可視光通信受信装置20には、図示しないが可視光を受光する可視光受光部が設けられている。
【0017】
フィルタ21は、受光された可視光から、太陽光に含まれない周波数、つまり、フラウンホーファー線の周波数のうちの1つの周波数(の可視光)のみを抽出する。なお、フィルタ21によって抽出される周波数と上記した可視光通信発信装置10に含まれる特定LED光源11によって発光される可視光において中心とされている周波数とは、同一であるものとする。
【0018】
集光レンズ22は、フィルタ21によって抽出された可視光(可視光通信発信装置11に含まれる特定LED光源11によって発光された可視光)を集光する。
【0019】
センサデバイス23は、集光レンズ22によって集光された可視光を電気信号に変換する。なお、センサデバイス23には、例えばピンフォトダイオード及びイメージセンサが含まれる。また、イメージセンサには、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが含まれる。
【0020】
可視光通信受信回路24は、フィルタ21によって抽出されたフラウンホーファー線に基づいて復調処理を行う。具体的には、可視光通信受信回路24は、センサデバイス23によって変換された電気信号に基づいて送信情報を復調する。
【0021】
ここで、図2は、上記したフラウンホーファー線の主な記号及び波長を示す。図2に示すように、フラウンホーファー線は複数存在する。
【0022】
上記したように可視光通信発信装置10に含まれる特定LED光源11は、このような複数のフラウンホーファー線のうちの1つの周波数を中心とする可視光を発光するように構成されている。また、可視光通信受信装置20に含まれるフィルタ21は、特定LED光源11によって発光される可視光において中心とされている周波数(つまり、複数のフラウンホーファー線のうちの1つ)のみを抽出するように構成されている。
【0023】
なお、図2に示す複数のフラウンホーファー線のうち、C−、F−、G’−、h−線は、水素のバルマー系列である。
【0024】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係る可視光通信発信装置10及び可視光通信受信装置20の処理手順について説明する。なお、本実施形態に係る可視光通信発信装置10及び可視光通信受信装置20は、例えば屋外で用いられる場合を想定している。
【0025】
まず、可視光通信発信装置10に含まれる可視光通信発信制御回路12は、送信情報(可視光通信において送信される情報)を、特定LED光源11の駆動用電気信号に変換する(ステップS1)。
【0026】
可視光通信発信装置10に含まれる特定LED光源11は、可視光通信発信制御回路12によって変換された駆動用電気信号に基づいて発光する(ステップS2)。換言すれば、可視光通信発信制御回路12は、送信信号を特定LED光源11の発光で変調する。
【0027】
なお、特定LED光源11は、上記したようにフラウンホーファー線の周波数のうちの1つの周波数(以下、特定周波数と表記)を中心とする周波数帯の可視光を発光するように構成されている。
【0028】
上記したように可視光通信発信装置10及び可視光通信受信装置20は屋外で用いられることを想定しているため、可視光通信受信装置20においては、特定LED光源11によって発光された可視光に加えて太陽光が入射(つまり、受光)されることが想定される。
【0029】
ここで、可視光通信受信装置20に含まれるフィルタ21は、受光された可視光から特定周波数(の可視光)のみを抽出する(つまり、通過させる)ように構成されている。これにより、フィルタ21は、特定LED光源11によって発光された可視光信号以外の可視光(つまり、太陽光に含まれる周波数の可視光)を遮断する(ステップS3)。
【0030】
次に、集光レンズ22は、フィルタ21を通過した可視光(特定LED光源11によって発光された可視光)を集光する(ステップS4)。
【0031】
センサデバイス23は、集光レンズ22によって集光された可視光を電気信号に変換する(ステップS5)。上述したようにセンサデバイス23には、例えばピンフォトダイオード、CCDイメージセンサ及びCMOSイメージセンサが含まれる。
【0032】
可視光通信受信回路24は、センサデバイス23によって変換された電気信号に基づいて送信情報を復調する(ステップS6)。
【0033】
本実施形態に係る可視光通信発信装置10及び可視光通信受信装置20間では、上記したように可視光通信が行われる。
【0034】
上述したように本実施形態に係る可視光通信発信装置10においては、フラウンホーファー線の周波数のうちの1つの周波数を中心とする周波数帯の可視光を発光する特定LED光源11の発光で、送信情報が変調される。また、本実施形態に係る可視光通信受信装置20においては、フィルタ21によりフラウンホーファー線のみが抽出され、当該抽出されたフラウンホーファー線に基づいて復調処理が行われる。
【0035】
つまり、本実施形態においては、太陽光等の強力な外乱を排除した上で送信情報を授受するために、当該太陽光に含まれていないスペクトルを用いて通信が行われる。このため、可視光通信発信装置10側に設けられる特定LED光源11は太陽光に含まれていないスペクトルが示す周波数を中心とする周波数帯の可視光を発光し、可視光通信受信装置20側に設けられるフィルタ21は太陽光に含まれていないスペクトルが示す周波数(つまり、フラウンホーファー線)のみを抽出するように構成されている。
【0036】
これにより、本実施形態においては、例えば可視光通信発信装置10及び可視光通信受信装置20が屋外で用いられ、太陽光と可視光通信発信装置10に含まれる特定LED光源11によって発光される可視光とが可視光通信受信装置20(に含まれるセンサデバイス23)に重なって入射するような状況であっても、太陽光に含まれる周波数の可視光は遮断されるため、当該センサデバイス23(の受信感度)が太陽光で飽和することがない。したがって、本実施形態においては、太陽光の影響を受けることなく安定して可視光通信を行うことが可能となる。
【0037】
なお、本実施形態においては、可視光通信受信装置20が集光レンズ22を含むものとして説明したが、当該集光レンズ22は省略されても構わない。このように集光レンズ22が省略される場合には、上述した図3に示すステップS4の処理は実行されない。また、本実施形態において説明した構成要素は、例えば通信距離または光量等の設計要素に応じて適宜省略または増設されてもよい。以下の実施形態についても同様である。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、図4を参照して、第2の実施形態に係る可視光通信発信装置及び可視光通信受信装置について説明する。
【0039】
本実施形態に係る可視光通信発信装置100においては、図4に示すように前述した第1の実施形態に係る可視光通信発信装置10が複数配列されている。
【0040】
また、本実施形態に係る可視光通信受信装置200においては、図4に示すように前述した第1の実施形態に係る可視光通信受信装置20が複数配列されている。
【0041】
本実施形態においては、可視光通信発信装置100に複数の可視光通信発信装置10が設けられ、可視光通信受信装置200に複数の可視光通信受信装置20が設けられることにより、フラウンホーファー線の各周波数で送信情報を多重化する(つまり、周波数分割多重化する)ことを想定している。
【0042】
なお、図4に示す可視光通信発信装置10の各々の構成は前述した第1の実施形態に係る可視光通信発信装置10と同様であり、可視光通信受信装置20の各々の構成は前述した第1の実施形態に係る可視光通信受信装置20と同様であるため、前述した第1の実施形態と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。また、可視光通信発信装置10及び可視光通信受信装置20の構成については、適宜、図1を用いて説明する。
【0043】
本実施形態に係る可視光通信発信装置100に設けられている複数の可視光通信発信装置10の各々に含まれる特定LED光源11は、太陽光に含まれない周波数(フラウンホーファー線の周波数のうちの1つの周波数)を中心とする周波数帯の可視光であって、他の可視光通信発信装置10に含まれる特定LED光源11によって発光される可視光とは異なる周波数を中心とする周波数帯の可視光を発光する。
【0044】
つまり、複数の可視光通信発信装置10の各々に含まれる特定LED光源11は、それぞれ異なる周波数を中心とする周波数帯の可視光を発光するように構成されている。
【0045】
また、複数の可視光通信発信装置10の各々は、それぞれ対応する1つの可視光通信受信装置20と可視光通信を行う。つまり、本実施形態において、可視光通信発信装置10の数及び可視光通信受信装置20の数は同一である。
【0046】
本実施形態に係る可視光通信受信装置200に設けられている複数の可視光通信受信装置20の各々に含まれるフィルタ21は、太陽光に含まれない周波数(フラウンホーファー線の周波数のうちの1つの周波数)の可視光であって、対応する可視光通信発信装置10(つまり、複数の可視光通信発信装置10のうちのいずれか1つの可視光通信発信装置10)に含まれる特定LED光源11によって発光された可視光において中心とされている周波数の可視光を抽出する。
【0047】
つまり、複数の可視光通信受信装置20の各々に含まれるフィルタ21は、周波数が異なるフラウンホーファー線をそれぞれ抽出する。換言すれば、本実施形態に係る可視光通信受信装置200には、受光された可視光から、周波数が異なるフラウンホーファー線をそれぞれ抽出する複数のフィルタが設けられている。
【0048】
また、図4に示すように、複数の可視光通信発信装置10の各々は、情報通信多重化装置30と通信チャネルで接続されている。情報通信多重化装置30は、通信チャネル毎に異なる情報(フラウンホーファー線の各周波数で多重化された各送信情報)を可視光通信発信装置10の各々に出力する(振り分ける)機能を有する。
【0049】
複数の可視光通信発信装置10の各々は、情報通信多重化装置30によって出力された送信情報を、可視光通信によって発信(送信)する。この場合の可視光通信発信装置10の動作は、前述した第1の実施形態と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
【0050】
複数の可視光通信受信装置20の各々は、対応する可視光通信発信装置10に含まれる特定LED光源11によって発光された可視光から送信情報を復調する。つまり、複数の可視光通信受信装置20の各々は、受光された可視光から、周波数が異なるフラウンホーファー線をそれぞれ抽出し、当該フラウンホーファー線に基づいて復調処理を行う。この場合の可視光通信受信装置20の動作は、前述した第1の実施形態と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
【0051】
ここで、図4に示すように、複数の可視光通信受信装置20の各々は、情報通信多重化装置40と通信チャネルで接続されている。可視光通信受信装置20の各々において復調された送信情報は、当該可視光通信受信装置20の通信チャネルを介して情報通信多重化装置40に出力される。
【0052】
以上説明したように、1組の対応する可視光通信送信装置10及び可視光通信受信装置20の間では、フラウンホーファー線の各周波数で多重化された複数の送信情報のうちの1つの送信情報が可視光通信により送受信される。
【0053】
上述したように本実施形態に係る可視光通信発信装置100おいては、可視光通信発信装置10の各々からフラウンホーファー腺の周波数のうちの1つの周波数を中心とする周波数帯の可視光が発光される。また、本実施形態に係る可視光通信受信装置200においては、可視光通信受信装置20の各々に含まれるフィルタ21によって可視光から周波数が異なるフラウンホーファー線がそれぞれ抽出される。これにより、本実施形態においては、多重化可視光通信を実現することが可能となる。
【0054】
つまり、本実施形態においては、フラウンホーファー線の複数の周波数を利用することによって、当該各周波数を通信チャネルとして周波数分割多重通信を行うことができる。
【0055】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、太陽光の影響を受けることなく可視光通信を行うことが可能な可視光通信発信装置及び可視光通信受信装置を提供することができる。
【0056】
なお、本願発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合せてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…可視光通信発信装置、11…特定LED光源、12…可視光通信発信制御回路、20…可視光通信受信装置、21…フィルタ、22…集光レンズ、23…センサデバイス、24…可視光通信受信回路、30…情報通信多重化装置、40…情報通信多重化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を受光する可視光受光部と、
前記可視光受光部によって受光された可視光から、フラウンホーファー線を抽出するフィルタと、
前記フィルタによって抽出されたフラウンホーファー線に基づいて復調処理を行う受信回路と
を具備することを特徴とする可視光通信受信装置。
【請求項2】
可視光を受光する可視光受光部と、
前記可視光受光部によって受光された可視光から、周波数が異なるフラウンホーファー線をそれぞれ抽出する複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの各々によって抽出されたフラウンホーファー線に基づいて復調処理を行う受信回路と
を具備することを特徴とする可視光通信受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−51585(P2013−51585A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189158(P2011−189158)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】