説明

可食性容器及びその製造方法

【課題】機械により大量生産可能な可食性容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】生地シートを用意する工程と、前記生地シート表面の中間部分に油脂面を形成し、且つ表面の縁部に水分浸潤部を形成する工程と、油脂面が内側に向くように前記生地シートを半分に折り畳み、前記生地シートに水分浸潤部が形成されている縁部を機械により圧着する工程と、前記生地シートを水蒸気により熟成させ、更に折れ目に沿って切断することによってポケット状の容器を形成する工程と、を含む可食性容器の製造方法を提供し、この製造方法において、生地表面の特定部位に油脂面及び水分浸潤部を形成し、従来の手作業に代えて、機械を用いて生地を圧着し成型することにより、ポケット状可食性容器の大量生産を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性容器及びその製造方法に関し、特に小麦粉を発酵膨張させた生地から成る可食性容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康的な食生活に対する関心が次第に高まってきており、高温あるいは多量の油によって焼く、揚げる、炒めるといった調理方法が食物の変質をもたらしやすく、こうした調理方法によって加工された食品を長期にわたり摂取し続けると、過度の肥満により、心臓血管病を引き起こしやすくなり、人体の新陳代謝にも悪い影響を与えることが実証されている。従って、比較的食材を破壊することの少ない蒸す、煮るといった調理方法にしだいに取って代わられている。特に、小麦粉を発酵膨張させた生地を水蒸気で熟成させて成る食品は、消化吸収しやすいのみならず、更に満腹感が得られるため、すでにもう一つの主流食品となっている。
【0003】
小麦粉を発酵膨張させた生地から成る食品は、具材が包まれる包子(バオズ、中華まんじゅう)、今川焼き、おやき等と、具材が包まれない饅頭(マントウ、蒸しパン)、花巻き、揚げパン、焼きクレープ等とに分けられる。具材が包まれない小麦粉を発酵膨張させた生地から成る食品は味の変化が比較的少なく、具材が包まれる小麦粉を発酵膨張させた生地から成る食品は通常先に具材を詰め、その後に熟成されるため、消費者は自分で自由に具材を変更することができない。そのため、例えば中華式ハンバーガー「刈包(クワバオ)」のように、自由に具材を変更あるいは調整することができ、しかもその後に熟成させる必要がなく、すぐにそのまま食すことができる小麦粉を発酵膨張させた生地から成る食品は、多くの消費者に支持されている。
【0004】
図1Aから図1Cは一般的な刈包の皮の製法を説明する。図1Aに示すように、通常、刈包の皮を作る際に、先に楕円形の生地シート100を形成し、図1Bに示すように、更にその表面に食用油脂を塗布し、食用油塗布面110を形成する。続いて図1Cに示すように、油脂面110が内側に向くように前記楕円形の生地シート100を半分に折り畳んで、熟成させれば、一つの側辺130のみが相連なり、残りの三つの側辺が共に開口150である刈包の皮110’が形成される。
【0005】
しかし、従来の刈包の皮は一つの側辺が相連なるにすぎず、図2に示すように具材が外に溢れ出る問題が起こりやすく、且つ携帯しにくいことがあった。そのため、具材を詰めやすい可食性容器の開発が依然として求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は可食性容器及び機械によりその可食性容器を大量生産することができる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る可食性容器の製造方法は、(a)生地シートを用意する工程と、(b)前記生地シート表面の中間部分に油脂面を形成し、且つ前記表面の縁部に水分浸潤部を形成する工程と、(c)油脂面が内側に向くように前記生地シートを半分に折り畳み、前記生地シートに水分浸潤部が形成されている縁部を機械により圧着する工程と、(d)前記生地シートを水蒸気により熟成させ、折れ目に沿って切断することによって、ポケット状の容器を形成する工程と、を含む。このように、前記ポケット状の容器の製作においては、前記生地シート表面の特定部位に油脂面と水分浸潤部を形成し、従来の手作業に代えて、機械を用いて生地を圧着し成型することにより、ポケット状可食性容器を大量生産する目的を果たすことが可能となる。
【0008】
本発明に係る他の可食性容器を製造する方法は、(a)同様の形状、輪郭の生地シートを二枚用意する工程と、(b)前記生地シート表面の中間部分及び縁部の一側に油脂面が形成され、縁部の残りの側辺に水分浸潤部を形成する工程と、(c)油脂面が対向するように二枚の前記生地シートを重ね合わせ、その重ね合わせられた二枚の前記生地シートの水分浸潤部が形成されている縁部を機械により圧着する工程と、(d)前記生地シートを水蒸気により熟成させ、ポケット状の容器を形成する工程と、を含む。
【0009】
本発明に係る可食性容器は、前記の製造方法により製造されてポケット状になり、刈包の製作に用いられてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下は、特定の実施例により本発明の実施形態を説明するものであり、この技術分野に精通した当業者は本発明のその他の利点や効果を本明細書に記載の内容から容易に理解することができる。本発明は、その他の異なる実施例によって実施や応用を行うことができ、本明細書に記載の内容は、異なる観点や応用に基づき、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な修飾や変更を行うことも可能である。
【0011】
図3Aから図3Dは、本発明に係る第1の実施例を説明する。図3Aに示すように、先ず、小麦粉、砂糖、ベーキングバウダー、イーストパウダー、サラダ油及び水を混合攪拌し、それを滑らかで弾力性のある均一な生地に捏ね上げ、約10分から20分間寝かせた後、複数の小さい生地に分割し、そしてその小さい生地を麺棒で伸ばし、楕円形の生地シート300にする。続いて、図3Bに示すように、楕円形の生地シート300表面の中間部分に食用油脂を塗布し油脂面310を形成し、さらにその楕円形の生地シート300表面の縁部に噴霧器により濾過水を噴霧し、対称を成す水分浸潤部330を形成する。図3Cに示すように、油脂面が内側に向くように楕円形の生地シートを半分に折り畳んで、半円状に折り畳まれた生地シート300’を形成し、折り畳まれた生地シート300’において水分浸潤部330が形成されている縁部のみを、機械により矢印Aが示す方向に圧着し、ここで、折り畳まれた生地シート300’において油脂面310が形成されている中間部分は圧着せず、それによって、小麦粉を発酵膨張させた生地から成る容器の半製品を形成する。この半製品を発酵オーブンに入れて20分から40分発酵させ、さらに蒸し器に入れ、約90℃の水蒸気で約15分間熟成させる。その後、図3Dに示すように、折れ目350に沿って切断することによって、開口370を形成する。
【0012】
図4Aに示すように、生地シートの中間部分には油脂面が形成され、且つ生地シートが半分に折り畳まれた後は生地シートの中間部分を圧着しないため、折り畳まれた構造を有する容器の半製品が水蒸気により熟成された後、折り畳まれた生地シートの上層と下層との間において、油脂面が形成されている中間部分は、粘着一体化することなく隙間が形成され、その一方で、折り畳まれた生地シートの上層と下層との間における縁部においては、噴霧器により濾過水が噴霧されて対称を成す水分浸潤部が機械により圧着され、折り畳まれた構造を有する容器の半製品が水蒸気により熟成された後、密封側390が粘着一体化して形成されている。
【0013】
図4Bに示すように、半分に折り畳まれた生地シートの折れ目に沿って切断することによって、一側にのみ開口370を形成し、残りの側辺は全て密封し、具材を入れるための空洞構造を有するポケット状容器とする。この実施例においては、ポケット状容器は刈包の皮の部分として用いられ、刈包の具材、例えばスライスした肉、白菜のピクルス、落花生の粉などを、開口370からポケット状容器に詰めることができる。一側辺のみがつながっており、残りの三つの側辺が全て開口である従来の刈包に比較すると、本発明の方法により作られた空洞構造を持つポケット状容器を用いることによって、その具材が外に溢れ出にくくなるとともに、更には携帯しやすくなる。一方、本発明の方法では、生地表面の特定部位に油脂面と水分浸潤部を形成することにより、手作業でしか圧着できず大量に生産することができないという従来の欠点を克服している。本発明の方法では、従来の手作業に代えて、機械を用いて生地を圧着し成型することにより、可食性ポケット状容器の大量生産を可能とする利点をもたらすことができる。
【0014】
図5Aから図5Dは、本発明に係る第2の実施例を説明する。図5Aに示すように、先ず、小麦粉、砂糖、ベーキングバウダー、イーストパウダー、サラダ油及び水を混合攪拌し、それを滑らかで弾力性のある均一な生地に捏ね上げ、約10分から20分間を寝かせた後、複数の小さい生地に分割し、そしてその小さい生地を麺棒で伸ばし、半円状の生地シート400にする。続いて、図5Bに示すように、共に半円状輪郭である生地シート400を二枚用意し、半円状の生地シート400表面の中間部分及び非アーチ状の一側の縁部450に食用油脂を塗布し油脂面410を形成し、さらにその半円状の生地シート400表面のアーチ状の一側の縁部に噴霧器により濾過水を噴霧し、水分浸潤部430を形成する。図5Cに示すように、油脂面410同士を対向させて半円状の生地シート400二枚を重ね合わせ、重ね合わせられた半円状の生地シート400’を形成し、生地シート400’に水分浸潤部430が形成されている縁部のみを、機械により矢印Aが示す方向に圧着し、ここで、重ね合わせられた生地シート400’において油脂面410が形成されている中間部分は圧着せず、それによって、小麦粉を発酵膨張させた生地から成る容器の半製品を形成する。この半製品を発酵オーブンに入れて20分から40分発酵させ、さらに蒸し器に入れ、約90℃の水蒸気で約15分間熟成させる。
【0015】
図5Dに示すように、重ね合わせられた生地シート内の中間部分及び非アーチ状の一側の縁部に油脂面が形成され、アーチ状の一側の縁部には水分浸潤部が形成され、更に重ね合わせられた生地シートにおいて油脂面が形成されている中間部分は圧着されていないため、重ね合わせられた構造を有する可食性容器の半製品が水蒸気により熟成された後、重ね合わせられた生地シートの上層と下層との間において油脂面が形成されている中間部分及び非アーチ状の一側の縁部は、粘着一体化することなく隙間が形成され、その一方で、重ね合わせられた生地シートの上層と下層との間において水分浸潤部が形成されているアーチ状の一側の縁部は、機械により圧着された後、密封側490が粘着一体化して形成されている。この実施例では、重ね合わせられた半円状生地シートの上層と下層との間において、アーチ状の一側の縁部にのみ濾過水を噴霧して水分浸潤部を形成し、中間部分に食用油脂を塗布して油脂面を形成し、更に重ね合わせられた半円状生地シートの非アーチ状の一側の縁部にも油脂面を形成している。従って、重ね合わせられた半円状生地シートは、機械により圧着、発酵そして熟成された後は、切断する必要がなく、そのままで一側の縁部にのみ開口470を有し残りの側辺が全て密封され且つ空洞構造を持つ半円状のポケット状容器を形成している。
【0016】
半円状であるポケット状容器以外に、外形と輪郭の異なる生地シートを作ることにより、本発明の方法では更にその他様々な形のポケット状容器を作ることができる。例えば、長方形の生地シートを半分に折り畳み、あるいは正方形の生地シートを重ね合わせることによって、四角形の可食性ポケット状容器を形成することが可能であり、また、ひし形の生地シートを半分に折り畳み、あるいは三角形の生地シートを重ね合わせることによって、三角形の可食性ポケット状容器を形成することも可能である。
【0017】
上記の説明は、本発明の原理及びその効果を例示する目的で示すものであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。本発明は、この技術分野に精通した当業者が本発明の要旨及び範囲を逸脱しない限り、上記の実施例に対して修飾や変更を施すことが可能であり、そうした修飾や変更は本発明の請求範囲に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】従来の刈包の皮を製造する工程を示す説明図である。
【図1B】従来の刈包の皮を製造する工程を示す説明図である。
【図1C】従来の刈包の皮を製造する工程を示す説明図である。
【図2】従来の刈包の皮の使用状態を示す説明図である。
【図3A】本発明の第1の実施例の製造工程を示す説明図である。
【図3B】本発明の第1の実施例の製造工程を示す説明図である。
【図3C】本発明の第1の実施例の製造工程を示す説明図である。
【図3D】本発明の第1の実施例の製造工程を示す説明図である。
【図4A】本発明の方法で製造する可食性容器を示す説明図である。
【図4B】本発明の方法で製造する可食性容器を示す説明図である。
【図5A】本発明の第2の実施例の製造工程を示す説明図である。
【図5B】本発明の第2の実施例の製造工程を示す説明図である。
【図5C】本発明の第2の実施例の製造工程を示す説明図である。
【図5D】本発明の第2の実施例の製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
300 生地シート
300' 折り畳まれた生地シート
310 油脂面
330 水分浸潤部
350 折れ目
370 開口
390 密封側の縁部
400 生地シート
400' 重ね合せられた生地シート
410 油脂面
430 水分浸潤部
450 非アーチ状の一側の縁部
470 開口
490 密封側の縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性容器の製造方法であって、
(a)生地シートを用意する工程と、
(b)前記生地シート表面の中間部分に油脂面を形成し、且つ前記表面の縁部に水分浸潤部を形成する工程と、
(c)前記油脂面が内側に向くように前記生地シートを半分に折り畳み、前記生地シートに前記水分浸潤部が形成されている縁部を機械により圧着する工程と、
(d)前記生地シートを水蒸気により熟成させ、折れ目に沿って切断することによって、ポケット状の容器を形成する工程と、を含むことを特徴とする可食性容器の製造方法。
【請求項2】
可食性容器の製造方法であって、
(a)同様の形状、輪郭である生地シートを二枚用意する工程と、
(b)前記生地シートの表面の中間部分及び縁部の一側に油脂面を形成し、縁部の残りの側辺に水分浸潤部を形成する工程と、
(c)油脂面が対向するように二枚の前記生地シートを重ね合わせ、その重ね合わせられた二枚の前記生地シートに水分浸潤部が形成されている縁部を機械により圧着する工程と、
(d)前記生地シートを水蒸気により熟成させ、ポケット状の容器を形成する工程と、を備えることを特徴とする可食性容器の製造方法。
【請求項3】
前記生地シートは、半円状の輪郭を有することを特徴とする請求項2に記載の可食性容器の製造方法。
【請求項4】
前記半円状である生地シートは、表面のアーチ状の一側の縁部に水分浸潤部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の可食性容器の製造方法。
【請求項5】
前記半円状である生地シートは、表面の中間部分と非アーチ状の一側の縁部に油脂面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の可食性容器の製造方法。
【請求項6】
前記油脂面は、食用油脂を塗布することにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の可食性容器の製造方法。
【請求項7】
前記水分浸潤部は、濾過水を噴霧することにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の可食性容器の製造方法。
【請求項8】
可食性容器であって、請求項1または2に記載の製造方法により製造されてポケット状になり、刈包の製作に用いられることを特徴とする可食性容器。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2007−181460(P2007−181460A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352611(P2006−352611)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(507000637)義美食品股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】