説明

台車のブレーキ装置

【課題】ブレーキ操作、ブレーキ解除操作を簡便に行なうことができ、製造時、各部材を嵌め込むのみで、非常に簡単に組み付けることができ、製造コストを削減することができる台車のブレーキ装置を提供する。
【解決手段】台車本体1の底面部に取付筒3が鉛直に設けられ、取付筒3の両側に取付軸4が水平方向に突設される。ブレーキ解除レバー11が取付軸4を軸に揺動可能に取付筒3の外側に嵌入される。取付筒内には筒状体8が上下方向に摺動可能に且つコイルばね9より上方に付勢されて挿入される。中間部に大径孔を有したブレーキペダル10が、大径孔を筒状体8に挿通させ且つ軸ピン12を軸に揺動可能に軸支される。筒状体8の下端部にブレーキシュー13が嵌着され、ブレーキ解除レバー11の両側にカム溝11cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車のブレーキ装置に関し、特に、台車本体上に商品等を載置して搬送し、或いは台車本体上に商品等を載置した状態で店舗内に搬送し、商品等を台車本体上に載置したまま陳列するように使用される台車のブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット、ホームセンター、各種量販店などで、平台車本体上に商品等を載置した状態で店舗内に搬送し、商品等を平台車本体上に載置したまま陳列するように使用される小型の台車が、下記特許文献1などで知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−310737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の小型の台車は、平台車本体の底部に2対の自在キャスターを備え、自在な方向に移動可能であるが、通常、自在キャスターにはブレーキを設けず、1本のブレーキレバーの押し下げにより、1個のブレーキシューを床面に押し付けて、簡便に制動がかけられるようになっている。
【0005】
しかし、この種の簡易な構造のブレーキ装置は、ブレーキを解除する際、ブレーキレバーを動かしてその係止を解除するように操作する必要があるため、ブレーキの解除操作がしにくいという課題がある。
【0006】
また、このブレーキ装置は、上記特許文献1に記載されるように、通常、平台車本体の底部に、ブレーキレバーの先端を、平台車本体の下側から側方に突出させると共に、平台車本体の側部の係合孔を通して係合保持させ、ブレーキシューがブレーキレバーの中間部に固定され、ばねの付勢力に抗したブレーキレバーの押し下げ操作により、ブレーキシューを床面に押し付けて、ブレーキをかけるように構成される。
【0007】
然るに、このブレーキ装置は、その製造時、金属製のブレーキレバーの末端部を、軸ピンによって回動可能に枢支し、ゴム製のブレーキシューを金属製のブレーキレバーにボルト締めで固定するが、軸ピンの抜け止めに、抜け止めピンを軸ピンに嵌め込む必要があり、また、ボルトの締め作業が必要となるため、製造時の組み付け作業が煩雑化し、製造コストも高くなる課題があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ブレーキ操作、ブレーキ解除操作を簡便に行なうことができ、製造時、各部材を嵌め込むのみで、非常に簡単に組み付けることができ、製造コストを削減することができる台車のブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る台車のブレーキ装置は、複数のキャスターを設けた台車本体の底面部に、ブレーキペダルが揺動可能に設けられ、該ブレーキペダルの操作によってブレーキシューが床面に押し付け可能に配設されてなる台車のブレーキ装置において、
該台車本体の底面部に設けたブレーキ取付部に取付筒が鉛直に設けられると共に該取付筒の両側に取付軸が水平方向に突設され、ブレーキ解除レバーが該取付軸を軸に揺動可能に該取付筒の外側に嵌入され、該取付筒内には筒状体が上下方向に摺動可能に且つばねより上方に付勢されて挿入され、中間部に大径孔を有した該ブレーキペダルが該大径孔を該筒状体に挿通させ且つ該筒状体の下部と該ブレーキペダルの中間部を水平方向に貫通した軸孔に軸ピンが挿通されて、該ブレーキペダルが該軸ピンを軸に揺動可能に軸支され、該筒状体の下端部に該ブレーキシューが嵌着され、該ブレーキ解除レバーの両側にカム溝が設けられ、
該カム溝には該軸ピンの両側の端部が係合すると共に、該カム溝の外側には該軸ピンを嵌入した状態でキャップが被せられ、
該ブレーキペダルを押し下げて制動をかけたとき、該カム溝の一部に該軸ピンが保持されて該筒状体及びブレーキシューが制動位置に保持され、該ブレーキ解除レバーを押し下げ操作したとき、該カム溝内での該軸ピンの保持が外れ制動が解除されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ブレーキ装置の製造時、筒状体、ブレーキ解除レバー、ブレーキペダル、軸ピンを嵌め込むのみの簡単な作業で、ブレーキ装置を台車本体に組み付けることができ、製造時の組み付け作業性を改善して、製造コストを削減することができる。また、ブレーキペダルの押し下げにより、ブレーキシューが床上に押し付けられ、制動がかかり、ブレーキ解除レバーを押し下げると、ブレーキシューがばねにより上昇して、制動を解除するように動作するので、ブレーキ操作とブレーキ解除操作を簡便に且つ円滑に行なうことができる。
【0011】
ここで、上記ブレーキ装置においては、ブレーキ解除レバーの両側基部に、取付軸を嵌入するための開口部を有した係合溝が設けられ、ブレーキ解除レバーは、係合溝の開口部から取付軸を係合溝内に進入させ、ブレーキ解除レバーを略90度回動させることにより、取付軸を軸に揺動可能に取り付けることができる。これによれば、ブレーキ解除レバーをブレーキ取付部に装着する際、固定用ボルトや止めピンなどを用いずに、非常に簡単に組み付けることができる。
【0012】
また、上記ブレーキ装置においては、台車本体の底面部に設けたブレーキ取付部の取付筒に、台車本体の上面から開口する筒状体挿入孔が設けられ、筒状体挿入孔の上面側に蓋用開口部が設けられ、筒状体挿入孔に筒状体を上面側から挿入した状態で、蓋体を蓋用開口部に嵌着するように構成することができる。これによれば、簡単な操作で、筒状体を取付筒に対し摺動可能に、容易に嵌入することができる。
【0013】
また、上記ブレーキ装置では、上記筒状体を上方に付勢するばねとしてコイルばねを筒状体と蓋体間にかけて装着することができる。これによれば、製造時、筒状体を上方に付勢するばねを簡単に装着することができ、ブレーキシューを非制動方向に付勢することができる。
【0014】
また、上記ブレーキ装置において、ブレーキペダルは、中間部から末端部にかけて上方に湾曲した形状に形成され、ブレーキペダルの先端を押し下げて制動操作を行なったとき、末端部が台車本体の底面部に当接して末端部を支点にブレーキペダルが下方に揺動し、軸ピンを介して筒状体及びブレーキシューが下降するように構成することができる。これによれば、ブレーキペダルの軽い押し下げ操作で、ブレーキシューを下降させ制動をかけることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の台車のブレーキ装置によれば、ブレーキ操作、ブレーキ解除操作を簡便に行なうことができ、製造時、各部材を嵌め込むのみで、非常に簡単に組み付けることができ、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示すブレーキ装置を有した台車の斜視図である。
【図2】同台車の底面部のブレーキ装置を斜め下方から見た斜視図である。
【図3】台車を反転して同ブレーキ装置を分解し、斜めから見た分解斜視図である。
【図4】筒状体、コイルばね及び蓋体の分解斜視図である。
【図5】反転した台車の取付筒に筒状体を挿入した状態を斜めから見た分解斜視図である。
【図6】筒状体を台車の取付筒に挿入する際の分解斜視図である。
【図7】反転した台車のブレーキ取付部にブレーキ解除レバーを組み付ける際の分解斜視図である。
【図8】反転した台車のブレーキ取付部にブレーキ解除レバーを組み付ける際の部分拡大斜視図である。
【図9】ブレーキ解除レバーの拡大斜視図(a)、ブレーキペダルの拡大斜視図(b)である。
【図10】反転した台車の底面部のブレーキ取付部にブレーキペダルを取り付ける際の分解斜視図である。
【図11】反転した台車の底面部のブレーキ取付部にブレーキペダルを取り付けた後、軸ピンを軸孔に挿入し、ブレーキシューを嵌着する際の分解斜視図である。
【図12】ブレーキ解除レバーの軸孔の端部にキャップを被せる際の分解斜視図である。
【図13】非ブレーキ状態の形態を示す動作説明図である。
【図14】ブレーキペダルを押し下げた時の状態を示す動作説明図である。
【図15】ブレーキ作動時の形態を示す動作説明図である。
【図16】ブレーキ解除レバーを押し下げてブレーキを解除するときの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は各種量販店などで商品の陳列や搬送に使用される、平台車の斜視図を示し、図2はその底面側から見た斜視図を示しており、台車のブレーキ装置は、台車本体1の底面部に形成されたブレーキ取付部2に、装着されている。図3に示すように、底面部のブレーキ取付部2には、取付筒3が設けられる。
【0018】
図2に示すように、ブレーキ装置は、キャスター20を設けた台車本体1の底面部に、ブレーキペダル10が揺動可能に設けられ、ブレーキペダル10の操作によって、ブレーキシュー13が床面に押し付け可能に配設される。図3に示す如く、台車本体1の底面部に設けたブレーキ取付部2には、取付筒3が鉛直に設けられ、取付筒3の両側に取付軸4が水平方向に突設されている。
【0019】
ブレーキ取付部2の取付筒3内は、筒状体挿入孔5となっており、筒状体挿入孔5は、図6のように台車本体1の上面に開口し、その筒状体挿入孔5の上面側の両側縁部に蓋用開口部6が設けられている。図6のように、取付筒3内の筒状体挿入孔5には、台車本体1の上面側から、筒状体8が筒状体挿入孔5内に挿入され、筒状体8の上端部に嵌合した蓋体7は、台車本体1の上面の蓋用開口部6に嵌着される。
【0020】
筒状体8は、図4に示すように形成され、さらに、筒状体8の上部に位置する蓋体7には、その底面部にはばね掛け部7bが設けられ、そのばね掛け部7bにコイルばね9の上端が掛けられる。また、蓋体7の両側は両側に延設され、その下面に係止爪7aが設けられ、台車本体1の上面の蓋用開口部6内に蓋体7を嵌入したとき、係止爪7aが蓋用開口部6の内側に係止されるようになっている。
【0021】
一方、筒状体8内にもばね掛け部8aが設けられ、コイルばね9の下端がこのばね掛け部8aに掛けられる。これにより、コイルばね9は筒状体8内に収納され、筒状体8がブレーキ操作時に下降したとき、筒状体8を上方に付勢する構造となっている。また、筒状体8の下部には、軸孔8cが水平方向に穿設され、後述の軸ピン12がこの軸孔8cに挿通される。図4に示すように、筒状体8は内部にコイルばね9を取り付けた状態で蓋体7の底部に嵌合し、図6に示すように、一体となって上方から筒状体挿入孔5に挿入され、蓋体7はその係止爪7aにより台車本体1に嵌着されるが、筒状体8は、後述のように、ブレーキ操作に応じて、取付筒3内を上下に摺動することとなる。
【0022】
一方、ブレーキ解除レバー11は、筒状体8を取付筒3に挿入する前に、図7に示すように、台車本体1底部のブレーキ取付部2に、揺動可能に嵌め込まれる。ブレーキ解除レバー11は、図9(a)に示すように、レバー部の端部に両側に開くように両側基部11aを一体に設けて形成され、両側基部11aの末端部内側の両側に、係合溝11b、11bが形成される。両側の係合溝11b、11bは、後方に開口部を有すると共に、上述の取付筒3の両側に設けた取付軸4、4に嵌合されるようになっている。
【0023】
このため、図7に示すように、ブレーキ解除レバー11は、組み付ける際、そのレバー部を取付筒3と平行にした状態で、両側基部11aを取付筒3の両側の取付軸4に、跨ぐように位置させ、取付軸4を開口から係合溝11b内に挿入するように組み付けられる。そして、この後、図7に示すように、ブレーキ解除レバー11を前方に倒し、取付軸4を中心に略90度前方に回動させる。
【0024】
これにより、ブレーキ解除レバー11を前方に倒し、取付軸4を中心に略90度前方に回動させた状態では、図8に示す如く、ブレーキ解除レバー11の両側基部11aの後端部両側の凸部11eが、ブレーキ取付部2側の凸部2aに係止可能となり、且つ取付軸4が両側基部11aの係合溝11bに嵌合された状態となる。したがって、図8のように、ブレーキ解除レバー11をブレーキ取付部2に嵌め込んだ状態において、図7の嵌入工程の逆を経ない限り、ブレーキ解除レバー11はブレーキ取付部2から外れない状態となる。
【0025】
上述の如く、筒状体8は、内部にコイルばね9を取り付けて蓋体7の底部に嵌合した状態で、図6に示すように、台車本体1の上方から筒状体挿入孔5に挿入され、蓋体7が台車本体1の蓋用開口部6に嵌着され、図5のように、筒状体8の先端部は取付筒3から下側に突出する状態となる。
【0026】
ブレーキペダル10は、図10に示す如く、その大径孔10aを筒状体8の先端に嵌め込むように、装着される。ブレーキペダル10は、図9に示すように、中間部から末端部10cにかけて上方に湾曲した形状に形成され、ブレーキペダル10の先端を押し下げて制動操作を行なったとき、末端部10cが台車本体1の底面部に当接して末端部10cを支点にブレーキペダル10が下方に揺動し、軸ピン12を介して筒状体8及びブレーキシュー13が下降するように構成される。
【0027】
また、ブレーキペダル10の中間部には非円形の大径孔10aが形成され、さらに、その大径孔10aを直角に横断する方向(水平方向)に軸孔10bが穿設されている。ブレーキペダル10は図10に示す如く、この非円形の大径孔10aを筒状体8の先端に嵌め込むように装着され、ブレーキペダル10の押し下げ操作に応じて、筒状体8を下方に摺動させることができる。
【0028】
ブレーキシュー13は、図11に示すように、ブレーキペダル10を取り付けた状態の、筒状体8の先端(下端)に嵌着される。ブレーキシュー13はゴムまたはゴム状弾性体により形成され、先端部には多数の溝が形成され、末端部には係止用の係止爪13aが形成される。筒状体8の下端部にブレーキシュー13を嵌め込んだ際、係止爪13aが筒状体8内の係止部8bに係止され、ブレーキシュー13を筒状体8の下端部に嵌着できるようになっている。
【0029】
さらに、図11に示すように、軸ピン12が横方向(水平方向)からブレーキ解除レバー11の両側基部11aの軸孔11dを使用して挿入される。軸ピン12は、ブレーキペダル10の軸孔10bを貫通し、さらに、筒状体8の軸孔8cを貫通して装着され、装着された軸ピン12の両端部はブレーキ解除レバー11の両側基部11aのカム溝11cに係合することとなる。
【0030】
図9に示すように、ブレーキ解除レバー11の両側基部11aにカム溝11c、11cが形成される。両側のカム溝11c、11cには、図13に示すように、ブレーキペダル10を押し下げて制動をかけたとき、その制動を保持するための制動保持凹部11fが形成される。さらに、制動状態でブレーキ解除レバー11を押し下げたとき、ブレーキを解除して非ブレーキ位置に保持するための非ブレーキ用凹部11gが形成されている。
【0031】
さらに、図11のように、軸ピン12を軸孔11dに挿通した状態で、ブレーキ解除レバー11の両側基部11aの軸孔11dに、キャップ14が被せられ、軸孔11dは閉じられる。これにより、軸ピン12は筒状体8内の所定位置に保持され、ブレーキペダル10を支持すると共に、その両端がカム溝11c、11c内に保持される。また、軸ピン12は筒状体8の上下摺動と共に上下動可能に装着され、ブレーキペダル10は軸ピン12を中心に揺動可能となり、軸ピン12の両端は、ブレーキ解除レバー11の揺動操作に応じて、その両側基部11aのカム溝11c内を移動可能となる。
【0032】
このように、上記構成のブレーキ装置は、筒状体8、蓋体7、ブレーキペダル10、ブレーキ解除レバー11、ブレーキシュー13、キャップ14などを、台車本体1の底面部に簡単に組み付けて装着することができ、台車の製造時、極めて少ない組付け作業工数で、組み立てることができ、製造コストを低減することができる。筒状体8、蓋体7、ブレーキペダル10、ブレーキ解除レバー11、ブレーキシュー13、キャップ14などは、全て合成樹脂で成形することができ、これにより量産時の製造コストの削減を図ることができる。また、上記部材は全て金属により形成することもでき、一部を合成樹脂で、一部を金属で形成することもできる。
【0033】
次に、上記構成の台車のブレーキ装置の動作を、図13〜図16を参照して説明する。非ブレーキ時、つまり制動をかけない通常時、ブレーキ装置は、図13に示すように、筒状体8及びブレーキシュー13がコイルばね9のばね力により上方に位置して床から離れ、ブレーキ解除レバー11の両側基部11aのカム溝11c内で、軸ピン12は、非ブレーキ用凹部11gに位置している。非ブレーキ時、台車本体1は2対のキャスター20により自在に移動可能であり、平台車の上には、各種の商品が載置され、任意の場所に移動することができる。
【0034】
制動をかける場合、図14に示すように、ブレーキペダル10を押し下げる。ブレーキペダル10の先端は台車本体1の縁部から突出しているため、その先端を踏み込むと、ブレーキペダル10は先ず軸ピン12を中心に下方に回動し、次にブレーキペダル10の末端部10cが台車本体1の底面部に当接すると、てこの作用により、その末端部10cを支点にして軸ピン12及び筒状体8が下に押し下げられる。これにより、筒状体8先端のブレーキシュー13は、図14の如く、床面に押し付けられ、ブレーキがかかり、制動状態となる。このとき、図14のように、軸ピン12はカム溝11cの下端部に到達し、一方、台車本体1はブレーキシュー13の下降とは相対的に押し上げられ、近傍のキャスター20は床から離れる。
【0035】
そして、使用者がブレーキペダル10を踏み込んだ足をペダルから離すと、図15に示すように、軸ピン12はカム溝11c内を少し上昇し、制動保持凹部11fの位置に保持された状態となり、ブレーキ状態が安定して保持されることとなる。
【0036】
またこの状態では、台車本体1の荷重(台車に載置される商品の荷重も含めた荷重)が制動保持凹部11fを介して軸ピン12に印加され、軸ピン12を介して筒状体8及びブレーキシュー13の押し下げ力として作用するため、ブレーキシュー13が床面を押圧する押圧力は大きく作用し、充分なブレーキ力を発生させることができる。
【0037】
一方、このような制動状態で、ブレーキを解除する場合、図16のように、ブレーキ解除レバー11の先端を、踏み込み、押し下げる。このとき、ブレーキ解除レバー11は取付軸4を中心に図16の時計方向に回動し、カム溝11cも同方向に回動して、相対的に軸ピン12がカム溝11cの制動保持凹部11fから外れ、軸ピン12はカム溝11c内を上方に移動可能な状態となる。
【0038】
この状態となると、コイルばね9の付勢力により、軸ピン12、筒状体8、及びブレーキシュー13が上昇し、図13に示すように、ブレーキシュー13は床面から離れて非ブレーキ状態となる。また、このとき、ブレーキ解除レバー11は踏み込まれることにより、図13に示すように、取付軸4を中心に時計方向に更に回動し、カム溝11c内を上方に移動した軸ピン12は非ブレーキ用凹部11gに到達し、そこに安定して保持され、非ブレーキ状態が保持されることとなる。
【0039】
このように、ブレーキペダル10を踏み込むのみの簡単な操作で、ブレーキ装置は、制動状態となり、ブレーキ解除レバー11を踏み込むのみの簡単な操作で、制動状態を解除して、非ブレーキ状態とすることができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、上記構成のブレーキ装置を平台車に適用した例を説明したが、平台車の他の搬送台車等に本発明のブレーキ装置を適用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 台車本体
2 ブレーキ取付部
2a 凸部
3 取付筒
4 取付軸
5 筒状体挿入孔
6 蓋用開口部
7 蓋体
7a 係止爪
7b ばね掛け部
8 筒状体
8a ばね掛け部
8b 係止部
8c 軸孔
9 コイルばね
10 ブレーキペダル
10a 大径孔
10b 軸孔
10c 末端部
11 ブレーキ解除レバー
11a 両側基部
11b 係合溝
11c カム溝
11d 軸孔
11e 凸部
11f 制動保持凹部
11g 非ブレーキ用凹部
12 軸ピン
13 ブレーキシュー
13a 係止爪
14 キャップ
20 キャスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャスターを設けた台車本体の底面部に、ブレーキペダルが揺動可能に設けられ、該ブレーキペダルの操作によってブレーキシューが床面に押し付け可能に配設されてなる台車のブレーキ装置において、
該台車本体の底面部に設けたブレーキ取付部に取付筒が鉛直に設けられると共に該取付筒の両側に取付軸が水平方向に突設され、ブレーキ解除レバーが該取付軸を軸に揺動可能に該取付筒の外側に嵌入され、該取付筒内には筒状体が上下方向に摺動可能に且つばねより上方に付勢されて挿入され、中間部に大径孔を有した該ブレーキペダルが該大径孔を該筒状体に挿通させ且つ該筒状体の下部と該ブレーキペダルの中間部を水平方向に貫通した軸孔に軸ピンが挿通されて、該ブレーキペダルが該軸ピンを軸に揺動可能に軸支され、該筒状体の下端部に該ブレーキシューが嵌着され、該ブレーキ解除レバーの両側にカム溝が設けられ、
該カム溝には該軸ピンの両側の端部が係合すると共に、該カム溝の外側には該軸ピンを嵌入した状態でキャップが被せられ、
該ブレーキペダルを押し下げて制動をかけたとき、該カム溝の一部に該軸ピンが保持されて該筒状体及びブレーキシューが制動位置で保持され、該ブレーキ解除レバーを押し下げ操作したとき、該カム溝内での該軸ピンの保持が外れ制動が解除されることを特徴とする台車のブレーキ装置。
【請求項2】
前記ブレーキ解除レバーの両側基部には、前記取付軸を嵌入するための開口部を有した係合溝が設けられ、該ブレーキ解除レバーは、該係合溝の開口部から該取付軸を該係合溝内に進入させ、該ブレーキ解除レバーを略90度回動させることにより、該取付軸を軸に揺動可能に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の台車のブレーキ装置。
【請求項3】
前記台車本体の底面部に設けたブレーキ取付部の取付筒には、台車本体の上面から開口する筒状体挿入孔が設けられ、該筒状体挿入孔の上面側に蓋用開口部が設けられ、該筒状体挿入孔に前記筒状体を該上面側から挿入した状態で、蓋体が該蓋用開口部に嵌着されることを特徴とする請求項1または2記載の台車のブレーキ装置。
【請求項4】
前記筒状体を上方に付勢するばねとしてコイルばねが該筒状体と前記蓋体間にかけられたことを特徴とする請求項1乃至3記載の台車のブレーキ装置。
【請求項5】
前記ブレーキペダルは、中間部から末端部にかけて上方に湾曲した形状に形成され、該ブレーキペダルの先端を押し下げて制動操作を行なったとき、該末端部が前記台車本体の底面部に当接して該末端部を支点に該ブレーキペダルが下方に揺動し、前記軸ピンを介して前記筒状体及びブレーキシューが下降することを特徴とする請求項1乃至4記載の台車のブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−18407(P2013−18407A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154191(P2011−154191)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000213138)中日産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】