説明

合わせガラス用ポリエステルフィルム

【課題】 曲面を持ったガラスを使用した際においても、ガラスの曲面に添うようにポリエステルフィルムが追従して積層され、光学歪みが出ることがない、優れた特性を有する合わせガラス用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも2枚のガラス板の間に中間膜を介在させて構成される合わせガラスにおいて、前記中間膜が、130℃、30分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向ともに1.5〜5.0%の範囲である、片面に水系易接着樹脂塗布層を有するポリエステルフィルムの当該塗布層上に軟質樹脂層を積層した複合体を含むことを特徴とする合わせガラス用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス用ポリエステルフィルムに関し、特に曲率の大きいガラスを使用した合わせガラス用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓ガラス、特に自動車等の車両の窓ガラスには、車内温度上昇を防止するために熱線遮断機能を付与する取り組みが行われている。合わせガラスには、飛散防止効果や耐貫通性を向上させるために、中間膜としてポリビニルブチラール(以下、PVBと略記することがある)などの軟質樹脂が使用されており、軟質樹脂に有機染料や無機酸化物を配合して熱線吸収する方法やポリエステル等のプラスチックフィルムに熱線遮断層を真空蒸着法やスパッタリング法等で積層したものを新たに中間膜として追加する方法が知られている。
【0003】
軟質樹脂に有機染料を配合して熱線吸収する方法では、軟質樹脂は曲面を持ったガラスへの追従性に優れるので、合わせガラスにおいて光学歪みはないが、軟質樹脂が着色フィルムとなり、可視光領域で高い透過率を必要とする用途には使えない。軟質樹脂に無機酸化物を配合する方法では、曲面を持ったガラスへの追従性には優れるものの、当該方法では熱線を吸収してガラスが割れてしまうことがある。
【0004】
ポリエステル等のプラスチックフィルムに熱線遮断層を真空蒸着法やスパッタリング法等で積層したものを新たに中間膜として追加する方法は、可視領域での透過率が高く、熱線遮断機能を有する合わせガラスとして優れた性能を有しているが、曲面を持ったガラスを使用した際にガラスの曲面にプラスチックフィルムが追従せず、光学歪みが出ることがある。
【0005】
また、PVBなどの軟質樹脂とプラスチックフィルムを接着する必要があるが、PVBはガラスとの接着性に優れる反面、ポリエステル等のプラスチックフィルムとの接着性に劣るため一般に何らかの易接着処理が必要とされる。この方法として、従来、プラスチックフィルムにアミノ官能性シランを下塗りする方法(特許文献4)、ポリアリルアミンコーティングで下塗りする方法(特許文献5)、PVBと該フィルムの間にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)よりなる層を設ける方法(特許文献6)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−32352号公報
【特許文献2】特開平6−191906号公報
【特許文献3】特開平8−217500号公報
【特許文献4】特開平2−38432号公報
【特許文献5】特表2007−513813号公報
【特許文献6】特開2003−176159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、曲面を持ったガラスを使用した際であっても、ガラスの曲面に添うようにポリエステルフィルムが追従して積層され、光学歪みが出ることがなく、界面の密着性が高い合わせガラス用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、両面に水系易接着樹脂塗布層を有し、ある特定の収縮率を有するポリエステルフィルムを中間膜として用いれば、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも2枚のガラス板の間に中間膜を介在させて構成される合わせガラスにおいて、前記中間膜が、130℃、30分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向ともに1.5〜5.0%の範囲である、片面に水系易接着樹脂塗布層を有するポリエステルフィルムの当該塗布層上に軟質樹脂層を積層した複合体を含むことを特徴とする合わせガラス用ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲面を持ったガラスを使用した際においても、ガラスの曲面に添うようにポリエステルフィルムが追従して積層され、光学歪みが出ることがない、優れた特性を有する合わせガラスを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうポリエステルフィルムとは、いわゆる押出法に従い、押出口金から溶融押出されたシートを延伸したフィルムである。
【0012】
上記のフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンー2、6ナフタレート等が例示される。
【0013】
本発明におけるポリエステルフィルムには、取り扱いを容易にするために透明性を損なわない条件で粒子を含有させてもよい。本発明で用いる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また粒子を添加する方法としては、原料とするポリエステル中に粒子を含有させて添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、2つの方法を併用してもよい。
【0014】
用いる粒子の粒径は、通常0.05〜5.0μm、好ましくは0.1〜4.0μmである。平均粒径が5.0μmより大きいと、フィルムのヘーズが大きくなり、フィルムの透明性が低下することがある。平均粒径が0.1μmより小さいと、表面粗度が小さくなりすぎて、フィルムの取り扱いが困難になる場合がある。粒子含有量は、ポリエステルに対し、通常0.001〜30.0重量%であり、好ましくは0.01〜10.0重量%である。粒子含有量が多いとヘーズが大きくなり、可視光領域の透過率が低下することがあり、粒子含有量が少ないとフィルムの取り扱いが困難になる場合がある。
【0015】
ポリエステルに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混錬押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混錬押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0016】
本発明では必要に応じて上記粒子の他にも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0017】
本発明においては、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましいが、得られたフィルムが本発明の要旨を逸脱しない限り、未延伸または少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムの長手方向および幅方向の130℃、30分における熱収縮率は、1.5〜5.0%の範囲であることが必要である。長手方向および幅方向の130℃、30分における熱収縮率が1.5%より小さい場合には、合わせガラス加工時にフィルムが合わせガラスの曲面に沿わず合わせガラスに光学歪みが発生し、長手方向および幅方向の130℃、30分における熱収縮率が5.0%より大きい場合には、合わせガラス加工時にフィルムの収縮により合わせガラスに光学歪みが発生する場合があり、好ましくない。
【0019】
また、本発明においては、130℃、30分における長手方向と幅方向の熱収縮率の差が0.3%以下であることが好ましい。長手方向と幅方向の熱収縮率の差が0.3%より大きい場合には、長手方向、幅方向のバランスがくずれてポリエステルフィルムの平面性が悪化し、合わせガラスにおいて光学歪みが発生することがある。
【0020】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層は、フィルムの少なくとも一方の面に設けられる。もう一方の面には、同様の水系易接着樹脂塗布層を設けてもよいし、別の機能(帯電防止、熱線遮断、滑り性、透明性等)を付与する塗布層を設けてもよい。
【0021】
水系易接着樹脂層を構成する成分としては、アミドエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合の少なくとも1種を含有してなることが好ましい。当該結合を水系易接着樹脂層中に含有させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、当該結合を有する化合物からなる水系易接着樹脂層を設けたり、架橋性官能基を有する樹脂と架橋剤の組み合わせ、あるいは架橋性官能基を有する樹脂同士の組み合わせで、架橋反応によって当該結合を有する水系易接着樹脂層を設けたりする方法などを用いることができる。特に、架橋性官能基を有する樹脂と架橋剤を組み合わせ、架橋反応によって当該結合を有する水系易接着樹脂層を設ける方法は、架橋剤使用による架橋密度向上により、水系易接着樹脂層の強度、耐水性の点で優れ、かつ、接着性も良好になるため、より好適に用いることができるものである。
【0022】
各結合を得るための官能基の組み合わせとしては、アミドエステル結合を得るためには、カルボン酸基とオキサゾリン基の反応などを用いることができ、ウレタン結合を得るためには、水酸基とイソシアネート基の反応などを用いることができ、アミド結合を得るためには、カルボン酸基とイソシアネート基の反応、あるいはカルボン酸とイミノ基の反応などを用いることができ、ウレア結合を得るためには、アミノ基とイソシアネート基の反応などをそれぞれ用いることができるが、これらの反応に限定されるものではない。
【0023】
上述したカルボン酸基、水酸基、アミノ基、オキサゾリン基、イソシアネート基、イミノ基などの架橋性官能基を、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス系樹脂などの樹脂に導入することにより用いることができるが、その導入方法としては、架橋性官能基を有するモノマーを上述した樹脂に共重合する方法を好適に用いることができる。さらに、本発明においては、上述した樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0024】
これらの中でも、基材フィルムとの接着性および軟質樹脂層との接着性の点で、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂を用いることが好ましく、異なる2種の樹脂、例えば、アクリル樹脂とポリエステル樹脂、アクリル樹脂とウレタン樹脂、あるいはポリエステル樹脂とウレタン樹脂を組み合わせて用いることによれば、両者の特性が発現し、接着性がさらに向上するなどの利点がある。
【0025】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層の構成成分として用いられるアクリル樹脂は、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、オキサゾリン基、イソシアネート基、イミノ基などの架橋性官能基をアクリル樹脂の共重合モノマー中に含有していることが好ましい。
【0026】
アクリル樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。さらに、これらは他種のモノマーと併用することができる。
【0027】
他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどを用いることができる。
【0028】
また、本発明の水系易接着樹脂塗布層に用いることができるアクリル樹脂としては、変性アクリル共重合体、例えば、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体なども可能である。
【0029】
本発明の水系易接着樹脂塗布層に用いられるアクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は特に限定されるものではないが、好ましくは0〜90℃、より好ましくは10〜80℃である。Tgが低いアクリル樹脂を用いる場合は、高温高湿下での接着性が劣る傾向があり、逆に高すぎる場合は延伸時に亀裂を生じることがある。また、アクリル樹脂の分子量は10万以上が好ましく、30万以上とするのが接着性の点で特に望ましい。このような水系アクリル樹脂は、親水性基を有するモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩など)との共重合や反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合などの方法によって作成することができる。
【0030】
本発明の水系易接着樹脂塗布層に用いられる好ましいアクリル樹脂としては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、アクリル酸から選ばれる共重合体などである。
【0031】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層の構成成分として用いられるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるものであり、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、オキサゾリン基、イソシアネート基、イミノ基などの架橋性官能基を該ポリエステル樹脂の共重合成分として含有していればよい。
【0032】
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。これらの芳香族ジカルボン酸は、水系易接着樹脂層の強度や耐熱性の点で、好ましくは全ジカルボン酸成分の30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、最も好ましくは40モル%以上のものを用いるのがよい。脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0033】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
【0034】
また、ポリエステル樹脂を水系樹脂とした塗液として用いる場合、ポリエステル樹脂の接着性を向上させるため、あるいはポリエステル樹脂の水溶性化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
【0035】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
また、本発明の水系易接着樹脂塗布層に用いられるポリエステル樹脂は、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体なども可能である。
【0038】
好ましいポリエステル樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれる共重合体などである。
【0039】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層に用いられるポリエステル樹脂は、以下の製造法によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール、1,4ブタンジオールからなるポリエステル樹脂について説明すると、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸とエチレングリコール、1,4ブタンジオールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸およびエチレングリコール、1,4ブタンジオールとをエステル交換反応させる第一段階と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階とによって製造する方法などにより製造することができる。
【0040】
この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることができる。
【0041】
また、本発明において、水系易接着樹脂塗布層に用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、最も好ましくは0.4dl/g以上であることである。水系ポリエステル樹脂のガラス転移点(以後、「Tg」と略称する)は、0〜90℃であることが好ましく、より好ましくは10〜80℃である。Tgが0℃未満では、耐湿接着性が劣り、逆に90℃を越える場合、樹脂の造膜性に劣るようになる傾向がある。
【0042】
また、水系ポリエステル樹脂の酸価は好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、酸価が高いほど、接着性、特に耐湿接着性の点で良好となる。
【0043】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層に用いられるポリエステル樹脂のジオール成分として、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールが共重合されていることが好ましい。また、ジカルボン酸成分として、セバチン酸、アジピン酸、アゼライン酸が共重合されていることが接着性の点で好ましい。
【0044】
また、ポリエチレングリコールの共重合は、ポリエステル樹脂を水溶性化するのに有効であり、中でも、分子量が600〜20000のものが好ましく、より好ましくは1000〜6000であり、その共重合比は、ジオール成分中、0.2〜10モル%が好ましく、より好ましくは、0.4〜5モル%である。さらに、上述の共重合比はポリエチレングリコールの分子量によってその共重合比が同じでも大きく変わるため、ポリエチレングリコールの共重合量は、ポリエステル樹脂中の重量%に換算して、1〜20重量%が好ましく、より好ましくは2〜15重量%である。
【0045】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層の構成成分として用いられるウレタン樹脂は、アニオン性基を有する水溶性あるいは水分散性のウレタン樹脂であれば特に限定されるものではなく、主要構成成分としては、ポリオール、ポリイソシアネートを共重合して得られるものである。ウレタン樹脂は、ウレタン結合を有するものであるが、本発明においては、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、オキサゾリン基、イソシアネート基、イミノ基などの架橋性官能基を該ウレタン樹脂の共重合モノマー中に含有させることにより、さらに、接着性が向上するので好ましい。
【0046】
ウレタン樹脂としては、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、または硫酸半エステル塩基により水への親和性が高められたものなどを用いることができる。カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、または硫酸半エステル塩基などの含有量は、0.5〜15重量%が好ましい。
【0047】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、アクリル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどを用いることができる。
【0048】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
【0049】
ここで、ウレタン樹脂の主要な構成成分は、上記ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物の他に、鎖長延長剤、架橋剤などを含んでいてもよい。
【0050】
鎖延長剤あるいは架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを用いることができる。
【0051】
アニオン性基を有するウレタン樹脂は、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤などに、アニオン性基を有する化合物を用いる方法、生成したウレタン樹脂の未反応イソシアネート基とアニオン性基を有する化合物を反応させる方法、ウレタン樹脂の活性水素を有する基と特定の化合物を反応させる方法などを用いて製造することができるが、特に限定されるものではない。
【0052】
また、分子量300〜20000のポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖長延長剤およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物からなる樹脂が好ましい。
【0053】
ウレタン樹脂中のアニオン性基は、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基およびこれらのアンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩あるいはマグネシウム塩として用いられ、特に好ましくは、スルホン酸塩基である。
【0054】
ポリウレタン樹脂中のアニオン性基の量は、0.05〜8重量%の範囲が好ましい。0.05重量%未満では、ウレタン樹脂の水分散性が悪くなる傾向があり、8重量%を超えると、樹脂の耐水性や耐ブロッキング性が劣る傾向がある。
【0055】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層は、上記樹脂以外にビニル系樹脂、ポリエーテル樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン系樹脂、ゼラチン類等からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことができる。
【0056】
ビニル樹脂は、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ソーダ、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルエーテル、ビニルスルホン酸ソーダ、メタリル酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を主成分とする分子内に不飽和二重結合を有する単量体から得られる重合体あるいは共重合体であり、数平均分子量が5,000〜250,000のものが好ましい。
【0057】
ポリエーテル樹脂としては、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、フェノキシ樹脂等を挙げることができ、数平均分子量が800〜400,000のものが好ましい。
【0058】
セルロース系樹脂とは、メチルセルロース、ニトロセルロース等分子内にセルロース構造を有する樹脂である。
【0059】
エポキシ樹脂は、分子内に2官能以上のグリシジル基を有する化合物から得られる重合体あるいは共重合体であり、数平均分子量が150〜30,000のものが好ましい。上記の化合物としては例えばビスフェノールグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、アミノグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0060】
ナイロン樹脂としては、6ナイロン、6,6ナイロン等をメトキシメチル化樹脂およびこれらにアクリル酸などの共重合体を挙げることができる。
【0061】
ゼラチンとは、高分子量のポリペプチドのことであり、コラーゲン等のタンパク質原料から得られるものを用いることができる。
【0062】
本発明の水系易接着樹脂塗布層においては、上記した架橋性官能基を有する樹脂と架橋反応する架橋剤を併用することにより、高温高湿下での接着性が向上することを見いだした。特に、水系易接着樹脂層に用いる樹脂として、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂の少なくとも1種から選ばれた樹脂に、架橋剤を併用することが好ましい。
【0063】
用いられる架橋剤は、上記した樹脂に存在する官能基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メチロール基、アミド基などと架橋反応しうるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、(ブロック)イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、アクリルアミド系、ポリアミド系樹脂、カルボジイミド樹脂、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
特に、架橋反応により、アミドエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合を生じるものが、本発明においては好適である。
【0064】
用いられる架橋剤の中でも、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤が架橋性や接着性の点で好ましく、特に、オキサゾリン系架橋剤と他架橋剤を併用することにより、常態下での接着性が向上すると同時に、高温高湿下での接着性が飛躍的に向上する。
【0065】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層において用いられるメラミン系架橋剤は、特に限定されないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン系架橋剤としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基などのアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でも、イミノ基型メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂が好ましく、最も好ましくは、イミノ基型メラミン樹脂である。さらに、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えば、p−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
【0066】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層に用いられるオキサゾリン系架橋剤は、当該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであれば特に限定されるものではないが、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含むオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。
【0067】
かかるオキサゾリン系架橋剤としては、特開平2−60941号公報、特開平2−99537号公報、特開平2−115238号公報、特公昭63−48884号公報などに記載の共重合体あるいはその誘導体を用いることができる。
【0068】
オキサゾリン化合物としては、2−オキサゾリン、3−オキサゾリン、4−オキサゾリン化合物があり、いずれを用いてもよいが、特に2−オキサゾリン化合物が反応性に富みかつ工業的にも実用化されている。
【0069】
例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン(VOZO),5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン(MVOZO)、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン(DMVOZO)、4,4−ジメチル−2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,−オキサジン(DMVOZI)、4,4,6ートリメチル−2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン(TMVOZI)、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(IPOZO),4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(DMIPOZO),4−アクリロイル−オキシメチル−2,4−ジメチル−2−オキサゾリン(AOZO),4−メタクリロイル−オキシメチル−2,4−ジメチル−2−オキサゾリン(MAOZO)、4−メタクリロイル−オシメチル−2−フェニル−4−メチル−2−オキサゾリン(MAPOZO),2−(4−ビニルフェニル)−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン(VPMOZO),4−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(EHMIPOZO)、4−エチル−4−カルボエトキシメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(EEMIPOZO)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
ビニルオキサゾリン類は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル(BPO)により容易にラジカル重合し、側鎖にオキサゾリン環を有するポリマーを生成する。ビニルオキサゾリン類は、n−ブチルリチウム等を触媒としたアニオン重合でも同様のポリ(ビニルオキサゾリン)類を生成する。なお、ポリ(ビニルオキサゾリン)類の合成にオキサゾリン環をもつモノマーによらない方法もある。例えば、ポリ(メタクリロイルアジリジン)の異性化反応による方法が挙げられる。
【0071】
本発明で用いる、オキサゾリン系架橋剤は、他の共重合可能な任意のモノマーと共重合されていてよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合されていることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルのいずれかまたは複数との共重合であることがさらに好ましい。
【0072】
オキサゾリン基の密度は高いことが好ましく、オキサゾリン価が300g(固形分)/当量未満であることが好ましく、さらに好ましくは180g(固形分)/当量未満である。
【0073】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層は、樹脂と架橋剤とを任意の比率で混合して用いることができるが、本発明の効果をより顕著に発現させるには、塗布層全体を100重量部としたときの有効成分比において、架橋剤は、塗布層中に10〜80重量部添加することが常態下での接着性向上の点で好ましく、より好ましくは20〜80重量部添加、最も好ましくは40〜70重量部添加である。架橋剤の添加量が10重量部未満添加の場合、その添加効果が小さくなる傾向があり、また、80重量部添加を超える場合は、接着性が低下する傾向がある。
【0074】
さらに、本発明において特筆すべきは、オキサゾリン基含有共重合体からなるオキサゾリン系架橋剤を上記した範囲とし、かつ第2架橋剤(メラミン系架橋剤またはエポキシ架橋剤等の低分子量多官能架橋剤)との添加重量比([オキサゾリン系架橋剤]/[第2架橋剤]、括弧は各架橋剤の添加重量を表す)を0.1〜10の範囲とすることにより、接着性に著しい効果がある。本発明者らの知見によれば、添加重量比を0.5〜5とすることにより、特に接着性に優れたものとなる。
【0075】
また、本発明において、水系易接着樹脂塗布層中には、本発明の効果が損なわれない範囲内で各種の添加剤、例えば、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、核剤などが配合されていてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0076】
特に、水系易接着樹脂層中に無機粒子を添加したものは、易滑性や耐ブロッキング性が向上するのでさらに好ましい。この場合、添加する無機粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。用いられる無機粒子は、平均粒径0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜3μm、最も好ましくは0.08〜2μmであり、水系易接着樹脂層中の樹脂に対する混合比は特に限定されないが、固形分重量比で0.05〜8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0077】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法は、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、リバースロールコータ、トランスファロールコータ、グラビアコータ、キスロールコータ、キャストコータ、スプレイコータ、カーテンコータ、カレンダコータ、押出コータ等のような技術が挙げられ、これら以外の塗布装置を使用することもできる。
【0078】
ポリエステルフィルムに塗布層を設ける場合、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法、すなわちインラインコートが好適に採用される。例えば、未延伸フィルムに塗布した後延伸する方法、一軸延伸フィルムに塗布した後延伸する方法、二軸延伸フィルムに塗布した後延伸する方法等がある。特に、未延伸または一軸延伸フィルムに塗布液を塗布した後、テンターにおいて乾燥および延伸を同時に行う方法が経済的である。特に、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに水系易接着樹脂を塗布し、延伸、熱処理により結晶配向を完了させる方法によることが、高温での熱処理が可能であることや、より均一で薄膜の水系易接着樹脂層を得ることができるので特に好ましい。なお、必要に応じて、フィルムの製造後に塗布するオフラインコートと呼ばれる方法で処理してもよい。
【0079】
本発明の水系易接着樹脂塗布層における塗布液は、上記インラインコート方法によって水系易接着樹脂塗布層を形成する場合、水溶液または水分散液(乳化・懸濁)であることが環境汚染や防爆性の点で望ましいが、水を主たる媒体としている範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。オフラインコートの場合は水系および/または溶剤系いずれでもよい。
【0080】
本発明において、水系易接着樹脂塗布層を形成するための塗布液の固形分濃度に特に制限はないが、通常0.3〜65重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。また、塗布量は乾燥後で、通常0.003〜1.5g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.3g/mである。塗布量が0.003g/m未満の場合は十分な接着性能が得られない恐れがあり、1.5g/mを超えるとフィルム同士のブロッキングが起こりやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする傾向がある。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる。
【0081】
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0082】
合わせガラスに用いる軟質樹脂としては、ポリビニルブチラール(PVB)またはエチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に用いられる。
【0083】
合わせガラスに用いるガラスとしては、建築用または自動車用等に用いられるものであればいずれも使用可能である。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。実施例中、「%」は「重量%」を意味する。
【0085】
(1)熱収縮率の測定
フィルムの長手方向、フィルムの幅方向に対して10、50、90%に相当する位置より15mm巾×150mm長のサイズの短冊状にサンプルを切り出し、無張力状態にして150℃に設定されたオーブン中で30分間の加熱処理を行ない、加熱処理前後の長さを測微計により測定し、下記式にて熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=[(a−b)/a]x100
(上記式中a、bはそれぞれ加熱前後のフィルム長さ(mm))
【0086】
(2)合わせガラスにおける光学歪み
曲面を持った2枚のガラス板の間にポリビニルブチラールフィルムおよびポリエステルフィルムを挟み込み、ガラス温度80〜100℃、減圧度650mmHg以上で予備圧着し、次いで、温度120〜150℃、圧力10〜15kg/cmのオートクレーブ中で20〜40分間の本接着を行うことにより、合わせガラスとした。作成した合わせガラスの外観を観察して、合わせガラスにおける光学歪みについて以下の基準で評価を行った。
○:合わせガラスにおいてポリエステルフィルムに起因するシワなく、光学歪みの全くない優れた外観
×:合わせガラスにおいてポリエステルフィルムに起因するシワがあり、透明性が低下し実用上問題がある
【0087】
(3)PVBとの接着性
・評価用PVBシートの作成
粉末状のPVB(分子量約11万、ブチラール化度65mol%、水酸基量約34mol%)6重量部、トリ(エチレングリコール) ビス(2−エチルヘキサノエート)(可塑剤)4重量部を45重量部のトルエンと混合し膨潤させた後、45重量部のエタノールを加え溶解させた。この溶液をテフロン(登録商標)製シャーレに深さ4mmになるように入れ、熱風オーブンにて100℃、1時間乾燥して厚さ約0.4mmのPVBシートを作成した。
【0088】
・接着性評価
上記PVBシートを幅1cm、長さ10cmに切り出し、2枚の供試フィルムで易接着面が該シートに向くように挟み、ヒートシールテスター(テスター産業(株)製 TP−701)で熱圧着する。条件は以下のとおりである。
荷重:1000N(接着面におおよそ1MPaの圧力がかかる);温度:140℃;時間:1分
【0089】
放冷後、圧着部分を手で剥離し下記の基準により接着性を判定した。
◎:極めて良好(無理に剥がすと供試フィルムまたはPVBシートが損傷するほど接着している)
○:良好(接着界面で剥離するが強い力を要する)
△:普通(接着界面で剥離するが軽い手応えがある)
×:不良(接着界面でほとんど手応えがなく、簡単に剥離する)
【0090】
実施例および比較例において、水系易接着樹脂塗布液を構成する成分として使用した化合物は、以下のとおりである。
・ポリエステル樹脂:A1
テレフタル酸56モル%、イソフタル酸40モル%、5−ソジウムスルホイソフタル酸4モル%、エチレングリコール70モル%、1,4ブタンジオール17モル%およびジエチレングリコール13モル%からなるポリエステルの水分散体
【0091】
・ポリエステル樹脂:A2
テレフタル酸50モル%、イソフタル酸50モル%、エチレングリコール73モル%、ジエチレングリコール27モル%からなるポリエステルを、無水ピロメリット酸と反応させ、分子量15000、カルボン酸基量87mgKOH/gのポリエステルを得た。このポリエステルをアンモニアで中和させることにより、水分散させた。この水分散液中でMMAを乳化重合させてアクリルグラフトポリエステルを得た(水分散体)。ポリエステルとMMAの仕込み量比は、50/50重量%であった。
【0092】
・オキサゾリン基含有ポリマー:B1
(メタ)アクリル系モノマーとの共重合タイプ。オキサゾリン価 220g(固形分)/当量((株)日本触媒製 エポクロス WS−700)
【0093】
・オキサゾリン基含有ポリマー:B2
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合タイプ。オキサゾリン価 130g(固形分)/当量((株)日本触媒製 エポクロス WS−300)
【0094】
・メラミン系化合物:C1
アルキロールメラミン(DIC(株)製 ベッカミンJ101)
・不活性粒子:D1
平均粒径0.05μmのシリカゾル(日産化学工業(株)製 スノーテックス)
・ポリアクリレート系ポリマー:E1
メチルメタクリレート41モル%、エチルアクリレート46モル%、アクリロニトリル7モル%、N−メチロールアクリルアミド5モル%、メタクリル酸1モル%からなるアクリレートの水分散体。
【0095】
【表1】

【0096】
実施例1:
(ポリエステルチップの製造法)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、および酢酸カルシウム一水塩0.07部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次に燐酸0.04部および三酸化アンチモン0.035部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化してポリエステル(A)を得た。得られたポリエステルチップの溶液粘度IVは、0.66であった。また、上記ポリエステル(A)を製造する際、平均粒径2μmの非晶質シリカを1000ppm添加し、ポリエステル(B)を作成した。
【0097】
(ポリエステルフィルムの製造)
上記ポリエステル(A)をB層用の原料としポリエステル(B)をA層用の原料とし、A層およびB層用原料をそれぞれ別個の溶融押出機により溶融押出して(A/B/A)の2種3層積層の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、90℃にて縦方向に3.6倍延伸した後、両面に水系易接着塗布液1をそれぞれの面で5g/m2の塗布量で塗布し、更にテンター内で予熱工程を経て90℃で横方向に4倍延伸、210℃で10秒間の熱処理を行い、厚さ125μmの両面に水系易接着樹脂塗布層を有するポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルム、ポリビニルブチラール、曲面を持った2枚のガラスを用いて合わせガラスを作成し、合わせガラスの外観を確認した。合わせガラスには光学歪みがなく、良好な外観だった。
【0098】
実施例2:
ポリエステルフィルムを製膜する際の熱処理温度を225℃とする以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスには光学歪みがなく、良好な外観だった。
【0099】
実施例3:
ポリエステルフィルムを製膜する際の熱処理温度を200℃とする以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスには光学歪みがなく、良好な外観だった。
【0100】
実施例4:
ポリエステルフィルムの水系易接着塗布液1を水系易接着塗布液2とする以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスには光学歪みがなく、良好な外観だった。
【0101】
実施例5:
ポリエステルフィルムの水系易接着塗布液1を水系易接着塗布液3とする以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスには光学歪みがなく、良好な外観だった。
【0102】
実施例6:
ポリエステルフィルムの水系易接着塗布液1を水系易接着塗布液4とする以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスには光学歪みがなく、良好な外観だった。
【0103】
実施例7:
ポリエステルフィルムの水系易接着塗布液1を水系易接着塗布液5とする以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスには光学歪みがなく、良好な外観だった。
【0104】
比較例1:
ポリエステルフィルムを製膜する際の熱処理温度を230℃とする以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスではポリエステルフィルムに起因するシワがあり、透明性が低下し実用上問題があった。
【0105】
比較例2:
ポリエステルフィルムを製膜する際の熱処理温度を180℃とする以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスではポリエステルフィルムに起因するシワがあり、透明性が低下し実用上問題があった。
【0106】
比較例3:
ポリエステルフィルムを製膜する際に縦方向に延伸した後に塗布層を儲けない以外は実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。得られた合わせガラスではポリエステルフィルムとPVBとの密着性不十分であった。
【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の合わせガラスは、例えば、建材、自動車等の窓用として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚のガラス板の間に中間膜を介在させて構成される合わせガラスにおいて、前記中間膜が、130℃、30分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向ともに1.5〜5.0%の範囲である、片面に水系易接着樹脂塗布層を有するポリエステルフィルムの当該塗布層上に軟質樹脂層を積層した複合体を含むことを特徴とする合わせガラス用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2010−215492(P2010−215492A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31887(P2010−31887)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】