説明

合成樹脂パイプ及びその製造方法並びに接続方法

【課題】 複数の層の接着強度を高める。
【解決手段】 複数の層1,2の間に接着層3を形成し、複数の層1,2の各々の層と接着層3との間に、補強材として螺旋状補強材4a,5aを夫々の傾斜角度が逆向きになるように螺旋状に巻回して、前記接着層3の内周面及び外周面に沿って前記補強層4,5を夫々形成することにより、内側の層1の外周面と接着層3の内周面とが、螺旋状補強材4aに形成される螺旋状の隙間を通って直接接触し固着されるとともに、外側の層2の内周面と接着層3の外周面とが、螺旋状補強材5aの螺旋状の隙間を通って直接接触し固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水やその他の流体又は気体の導管として用いられ、熱溶着で配管施工する剛性の合成樹脂パイプ、及びその製造方法、並びに合成樹脂パイプを用いた接続方法に関する。
詳しくは、複数の層を積層してパイプ本体が形成され、これら複数の層の間に補強材を螺旋状に巻回して補強層が形成される合成樹脂パイプ及びその製造方法並びに接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の合成樹脂パイプとして、ポリエチレン製の最内層及びメルトインデックスが最も高い最外層で構成される内層管と、この内層管の外周面に帯状の延伸ポリオレフィン系樹脂シートを夫々の傾斜角度が逆向きになるように螺旋状に巻回した2層構造の補強層と、この補強層上に積層されたポリエチレン製の外層を有し、延伸ポリオレフィン系樹脂シートが巻回された内層管の表面を赤外線炉で加熱して該樹脂シートを内層管に融着し、この際、シート隙間(シート端面間の隙間)に内層管の樹脂を充填し、その後、外層を押出し被覆することにより、内層管と補強層との間及び補強層と外層との間に管端面から水が浸入しないようにした複合高圧管がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第4076440号号公報(第18−21頁、図3,4,9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の合成樹脂パイプでは、内層と外層との間で2層の補強層同士が接触するものの内層と外層が直接接触する箇所がないため、内層と外層の接着強度が低く、パイプ内の急激な圧力変化に伴って2層の補強層の間から剥離するおそれがあるという問題があった。
さらに、2層の補強層同士が直接接触するため、パイプ全体に曲げなどの外力が作用する度に、これら補強層の間に摩擦が発生して位置ズレしたり破損するおそれがあるという問題があった。
また、延伸ポリオレフィン系樹脂シートが巻回された内層管の表面を赤外線炉で加熱して該樹脂シートを内層管に融着し、この際、シート隙間に内層管の樹脂を充填し、その後、外層を押出し被覆するため、この延伸ポリオレフィン系樹脂シートが熱の影響を受け易く、それにより延伸した樹脂シートが収縮したり、物性が劣化し易くなってパイプ全体の耐圧性能及び耐久性能が低下するという問題もあった。
【0005】
本発明のうち第一の発明は、複数の層の接着強度を高めることを目的としたものである。
第二の発明は、第一の発明の目的に加えて、パイプ本体の内周面及び外周面を平坦にすることを目的としたものである。
第三の発明は、第一の発明又は第二の発明の目的に加えて、螺旋状補強材への熱伝動を最小限に抑制することを目的としたものである。
第四の発明は、第一の発明又は第二の発明の目的に加えて、パイプ接続状態でパイプ端面からの水の浸入によるウィーピング現象やブリスター破壊の発生を防止することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち第一の発明は、複数の層の間に接着層を形成し、複数の層の各々の層と接着層との間に、補強材として螺旋状補強材を夫々の傾斜角度が逆向きになるように螺旋状に巻回することで、前記接着層の内周面及び外周面に沿って前記補強層を夫々形成したことを特徴とするものである。
第二の発明は、第一の発明の構成に、前記複数の層を熱可塑性樹脂で形成するとともに、これら複数の層の熱可塑性樹脂よりも流動性の高い熱可塑性樹脂で接着層を形成した構成を加えたことを特徴とする。
第三の発明は、前記接着層を積層した後に冷却し、この冷却工程の後に接着層の外周面に沿って螺旋状補強材を螺旋状に巻回したことを特徴とするものである。
第四の発明は、前記複数の層及び接着層と螺旋状補強材が同系の合成樹脂で形成されてなる前記パイプ本体の軸方向端部を加熱溶融し、接続相手に圧接させて熱溶着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち第一の発明は、複数の層の間に接着層を形成し、複数の層の各々の層と接着層との間に、補強材として螺旋状補強材を夫々の傾斜角度が逆向きになるように螺旋状に巻回して、前記接着層の内周面及び外周面に沿って前記補強層を夫々形成することにより、内側の層の外周面と接着層の内周面とが、螺旋状補強材に形成される螺旋状の隙間を通って直接接触し固着されるとともに、外側の層の内周面と接着層の外周面とが、螺旋状補強材の螺旋状の隙間を通って直接接触し固着される。
したがって、複数の層の接着強度を高めることができる。
その結果、内層と外層との間で2層の補強層同士が接触するものの内層と外層が直接接触する箇所がない従来のものに比べ、パイプ内の急激な圧力変化に伴って層間が剥離し難くなって耐圧性能が向上する。
さらに、2層の補強層同士が直接接触する従来のものに比べ、接着層を挟んで補強層が配置されて螺旋状補強材同士が直接触れないため、パイプ全体に曲げなどの外力が作用しても、螺旋状補強材の位置ズレや糸切れなどの破損を防止できる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の効果に加えて、複数の層を熱可塑性樹脂で形成するとともに、これら複数の層の熱可塑性樹脂よりも流動性の高い熱可塑性樹脂で接着層を形成することにより、この接着層の流動性の高い熱可塑性樹脂が、螺旋状補強材の螺旋状の隙間に夫々スムーズに入り込んで、これら螺旋状補強材の有無による厚み寸法の違いを吸収するため、内側の層の内周面及び外側の層の外周面に凹凸が生じない。
したがって、パイプ本体の内周面及び外周面を平坦にすることができる。
【0009】
第三の発明は、接着層を積層した後に冷却し、この冷却工程の後に接着層の外周面に沿って螺旋状補強材を螺旋状に巻回することにより、接着層の被覆積層時に発生した熱が、接着層の内周の螺旋状補強材へ伝動し難くなるとともに、接着層の外周の螺旋状補強材aへも伝動し難くなる。
したがって、螺旋状補強材への熱伝動を最小限に抑制することができる。
その結果、延伸樹脂シートが巻回された内層管の表面を加熱して融着した後に外層を押出し被覆する従来のものに比べ、延伸加工された螺旋状補強材の収縮や物性劣化を抑えることができ、それによりバイブ全体の耐圧性能及び耐久性能を向上できる。
【0010】
第四の発明は、複数の層及び接着層と螺旋状補強材が同系の合成樹脂で形成されてなるパイプ本体の軸方向端部を加熱溶融し、接続相手に圧接させて熱溶着することにより、複数の層及び接着層と螺旋状補強材が隙間なく一体に溶着される。
したがって、パイプ接続状態でパイプ端面からの水の浸入によるウィーピング現象やブリスター破壊の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の合成樹脂パイプAの実施形態は、図1に示す如く、熱可塑性樹脂からなる複数の層1,2として内層と外層を設け、この内層1と外層2の間に中間層として接着層3を形成するとともに、これら内層1及び外層2の各々の層と接着層3との間に、補強材として螺旋状補強材4aを夫々の傾斜角度が逆向きになるように螺旋状に巻回することで、接着層3の内周面及び外周面に沿って補強層4,5を夫々形成している。
【0012】
これら内層1、外層2及び接着層3を例えばポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂で成形し、それらを一体的に積層することでパイプ本体A′が形成され、このパイプ本体A′の軸方向端部をヒータなどの加熱手段で加熱することにより、接続相手に熱溶着して接続される。
特に、接着層3には、内層1及び外層2に用いる熱可塑性樹脂よりも流動性(メルトインデックス)の高い熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0013】
パイプ本体A′の製造方法は、先ず内層1を押出し成形し、この内層1の外周面1aに沿って螺旋状補強材4aを螺旋状に巻回し、その後、その外側に接着層3を押出し成形して積層し、この積層後に、これらを冷却用水槽などに浸漬して冷却する。
この冷却工程の後は、接着層3の外周面3aに沿って螺旋状補強材5aを、螺旋状補強材4aと傾斜角度が逆向きになるように螺旋状に巻回し、その後、必要に応じて冷却してから、最後に外層2を押出し成形して積層する。
【0014】
また、図示せぬが必要に応じて内層1の内側に、パイプ本体A′内を通る流体又は気体に合わせた材料からなる最内層を設けたり、外層2の外側に保護用の材料からなる最外層を設けることも可能である。
さらに、これら内層1と最内層の間や外層2と最外層の間又は内層1や外層2や接着層3の内部には、これらと同系の合成樹脂からなる補強線材を、パイプ本体A′の軸方向略全長に亘って配置することも可能である。
【0015】
螺旋状補強材4a,5aは、内層1、外層2及び接着層3と同じポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂で形成された例えばモノフィラメント(monofilament:単繊維)などの糸や補強繊維などであり、その具体例として太いモノフィラメント(延伸モノフィラメント)を螺旋状に巻回すれば、剛性に優れながらパイプ本体A′の切断が容易で軽量化も図れることから好ましい。
【0016】
また、その他の例として、細いモノフィラメントが編まれたマルチフィラメントを螺旋状に巻回するだけでなく、パイプ本体A′の周方向へ螺旋状に編組して中空円筒形の均一な網状にするか、あるいはニット編みなどで中空円筒形の均一な網状に編み込んだものを追加して配置することも可能である。
さらに、延伸モノフィラメントやマルチフィラメントに代えて、テープ状の糸からなるフラットヤーン(又はテープヤーン)を用いることも可能であり、この場合には該補強線材3の肉厚寸法が薄くなって、パイプ本体A′全体の肉厚寸法を薄くすることができるという利点がある。
【0017】
そして、本発明の合成樹脂パイプAを用いた接続方法(パイプ接続構造)の実施形態として、図2に示す如く、2本の合成樹脂パイプA同士を直接接続する場合には、夫々のパイプ本体A′の軸方向端部を加熱して、それらの端面同士を互いに突き合わせ、適度に加圧し圧接させて熱溶着する。
【0018】
また、合成樹脂パイプAが後述する継手管Bを用いて接続される場合には、図3〜図5に示す如く、合成樹脂パイプAの軸方向端部を加熱し、該継手管Bに圧接させて熱溶着する。
このパイプ接続構造は、上述した合成樹脂パイプAと、この合成樹脂パイプAの軸方向端部A1に嵌合する継手管Bとを備え、これら合成樹脂パイプAの軸方向端部A1と継手管Bとの対向面を加熱手段(図示しない)により溶融し、これら溶融された対向面を相互に圧接させて溶着している。
【0019】
その具体例としては、継手管Bの内径を合成樹脂パイプAの軸方向端部A1の外径と同じ又はそれよりも小径に形成し、これら合成樹脂パイプAの軸方向端部A1の外周面A2と継手管Bの内周面B1を夫々加熱した後に、この継手管B内に合成樹脂パイプAを押し込むことにより、これら継手内周面B1とパイプ外周面A2を互いに圧接させて熱溶着している。
【0020】
継手管Bは、合成樹脂パイプAの層1,2と同系の熱可塑性樹脂、詳しくは例えばポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂で形成され、接続される合成樹脂パイプAの数に対応した開口を開設して、例えば直管やT字管などに一体成形される。
図示例では、該継手管Bの2つの開口を一直線上に開設し、これら開口に2本の合成樹脂パイプAが夫々押し込まれて接続される直管の場合を示している。
【0021】
さらに必要に応じて、合成樹脂パイプAの軸方向端部A1が接続される開口の内周面B1には、それに挿入した合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3が突き当たる段部B2を周方向へ環状に突出するように一体成形することが好ましい。
この場合には、継手管Bに対する合成樹脂パイプAの押し込みにより、継手内周面B1とパイプ外周面A2が圧接すると同時に、継手管B内の段部B2と合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3が圧接して、これらの圧接部分が夫々溶着される。
【0022】
ところで、図6(a)(b)に示す如く、上述のように継手管Bの開口に合成樹脂パイプAを押し込み、その対向するパイプ外周面A2と継手内周面B1を圧接させることによって、これら対向面から溶融した樹脂Rが溢れ出ると、この圧接部分から合成樹脂パイプAの内側へ向かう溶融樹脂Rは、該合成樹脂パイプAの内周面A4からパイプ内側へ盛り上がって流出し、そのまま環状に突出して硬化する。
また、これと逆に圧接部分からパイプ外周面A2に沿って継手管Bの端面B3へ向かう溶融樹脂Rは、該継手管Bの端面B3からパイプ外側に盛り上がって流出し、そのまま環状に突出して硬化する。
それにより、パイプ内周面A4よりも内側へ盛り上がって硬化した環状の樹脂Rは、流路を部分的に絞って、所定の流量を確保できないおそれがあり、またパイプ外周面A2よりも外側へ盛り上がって硬化した環状の樹脂Rは、外観を低下させるおそれがある。
【0023】
そこで、このような問題点を解決するため、本発明のパイプ接続方法(パイプ接続構造)では、合成樹脂パイプAの軸方向端部A1と継手管Bと圧接部分から合成樹脂パイプAの内側へ向かう溶融樹脂Rの流れを抑制する流動規制手段Cを設けている。
この流動規制手段Cとしては、図3(a)(b)に示す如く、合成樹脂パイプAの軸方向端部A1と継手管Bとの接続部分を封止カバーC1で該合成樹脂パイプAの内側から覆うように取り付けることにより、該合成樹脂パイプAの押し込み及び圧接に伴って溢れ出る溶融樹脂Rを、パイプ外周面A2沿いに継手管Bの端面B3へ向け誘導して硬化させることが好ましい。
【0024】
その他の例として、図4(a)(b)及び図5(a)(b)に示す如く、合成樹脂パイプAの軸方向端部A1と継手管Bとの圧接部分に貯留部C2,C3を形成することにより、該合成樹脂パイプAの押し込み及び圧接に伴って溢れ出る溶融樹脂Rを、該貯留手段C2,C3内へ流し込んで硬化させることも可能である。
【0025】
また、複数の層1,2及び補強線材3を構成するポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂としては、そのパイプ接続構造において、合成樹脂パイプAの軸方向端面同士を突き合わせて溶着させる場合には、軟質のオレフィン系樹脂及び硬質のオレフィン系樹脂のどちらで成形しても良いが、継手管Bを介して複数本の合成樹脂パイプAが熱溶着される場合には、継手管Bの開口に対して合成樹脂パイプAを挿入する必要があるため、ある程度硬質なオレフィン系樹脂で成形することが好ましい。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
この実施例1は、図1に示す如く、前述した合成樹脂パイプAが、前記内層1を押出し成形した後に、この内層1の外周面1aに沿って、前記螺旋状補強材4a,5aと同系の合成樹脂製で軸方向へ直線状に延びる太いモノフィラメント(延伸モノフィラメント)などの補強線材6を周方向へ複数本夫々適宜間隔ごとに配置し、その外側から加圧して各補強線材6が内層1の内部に押し込まれ、その外側に前記補強層4(螺旋状補強材4a)、接着層3、補強層5(螺旋状補強材5a)及び外層2を順次積層することにより、これらを一体化してパイプ本体A′が形成される場合を示すものである。
【0027】
したがって、図1に示す実施例1は、内層1の外周面1aと接着層3の内周面とが、螺旋状補強材4aに形成される螺旋状の隙間を通り直接接触して固着されるとともに、接着層3の外周面3aと外層2の内周面とが、螺旋状補強材5aの螺旋状の隙間を通り直接接触して固着される。
【0028】
それにより、接着層3を介して内層1と外層2の接着強度が高くなり、パイプ内の急激な圧力変化に伴って層間が剥離するのを防止できる。
さらに、接着層3を挟んで補強層4,5の螺旋状補強材4a,5aが配置されて、これら螺旋状補強材4a,5a同士が直接触れないため、螺旋状補強材4a,5aのピッチズレや糸切れが発生しない。
【0029】
特に、接着層3として、内層1及び外層2に用いる熱可塑性樹脂よりも流動性(メルトインデックス)の高い熱可塑性樹脂を用いた場合には、螺旋状補強材4a,5aの螺旋状の隙間に、該接着層3の流動性の高い熱可塑性樹脂が夫々スムーズに入り込んで、これら螺旋状補強材4a,5aの有無による厚み寸法の違いを吸収するため、内層1の内周面及び外層2の外周面に凹凸が生じない。
それにより、パイプ本体A′の内周面及び外周面を平坦にできる。
【0030】
そして、パイプ本体A′の製造工程では、接着層3を積層した後に、この接着層3と該接着層3の内周面に沿って螺旋状に巻回された螺旋状補強材4aとが冷却され、この冷却工程の後に接着層3の外周面に沿って螺旋状補強材5aを螺旋状に巻回するため、接着層3の被覆積層時に発生した熱が、接着層3の内周の螺旋状補強材4aへ伝動し難くなるとともに、接着層3の外周の螺旋状補強材5aへも伝動し難くなる。
それにより、螺旋状補強材4a,5aへの熱伝動を最小限に抑制してこれら螺旋状補強材4a,5aの熱収縮や熱劣化を確実に抑えることができる。
【0031】
次に、斯かる合成樹脂パイプAの接続例について説明する。
図2に示す如く、先ず、各パイプ本体A′の軸方向端部のみを例えばヒータなどの加熱手段(図示しない)で加熱した後に、これらパイプ本体A′が一直線上になるように各端面を突き合わせて相互に圧接させると、夫々の内層1、外層2、接着層3と螺旋状補強材4a,5a及び補強線材6の軸方向端部が溶融して一体になり、これら螺旋状補強材4a,5a、補強線材6が内層1、外層2及び接着層3に熱溶着される。
【0032】
それにより、特にパイプ本体A′を屈曲させるなど変形させても、螺旋状補強材4a,5a及び補強線材6が内層1の内部及び各層間で移動して抜けることがなく、その結果として、このパイプ本体A′を使用する環境が高温雰囲気になっても、該パイプ本体A′が軸方向へ伸びたり、弓状に撓むことが抑制されて、パイプ本体A′の直線強度が保たれ、更に各パイプ本体A′の接続部分に無理な力が掛からない。
【0033】
また、内層1、外層2、接着層3と螺旋状補強材4a,5a及び補強線材6が同系のオレフィン系樹脂であるため、パイプ本体A′を分解することなく、そのまま廃棄処理やリサイクルが可能である。
なお、図示例の場合には、各パイプ本体A′の軸方向端面同士から流出した溶融樹脂Rが、内層1の内側及び外層2の外側に夫々盛り上がって環状に突出して硬化した例を示しているが、上述したように少なくとも内層1の内側には環状に盛り上がって硬化しないようにすることが好ましい。
【実施例2】
【0034】
この実施例2は、図3(a)(b)に示す如く、前記合成樹脂パイプAを用いたパイプ接続方法として前記継手管Bを介して接続するものであり、これら合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3と継手B内の段部B2が突き当たる部分に、前記流動規制手段Cとして封止カバーC1を合成樹脂パイプAの内側から被着した場合を示している。
【0035】
封止カバーC1は、合成樹脂パイプA及び継手Bを構成する例えばポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂よりも溶融温度が高い合成樹脂又は金属などで形成され、必要に応じてこれら合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3と継手B内の段部B2との間に挟み込まれる挟持部C1′を突設することが好ましい。
【0036】
次に、斯かるパイプ接続方法を工程順に従って詳しく説明する。
先ず、図3(a)の二点鎖線に示す如く、合成樹脂パイプAの軸方向端部A1の外周面A2及び先端面A3と、それに対向する継手管Bの内周面B1とを、それらに例えばヒータなどの加熱手段(図示しない)を接触させるなどして夫々が加熱される。
【0037】
該パイプ外周面A2及びパイプ先端面A3と継手内周面B1の表面部分が溶融可能な温度に達したところで、これら合成樹脂パイプAと継手管Bとの間に封止カバーC1を挟み入れる。
その後、図3(b)に示す如く、この加熱された継手内周面B1に沿って、加熱されたパイプ外周面A2を挿入することで、これら両者を圧接させるとともに、パイプ先端面A3を継手管B内の段部B2に突き当てる。
【0038】
それにより、これら合成樹脂パイプAの押し込み及びパイプ外周面A2及び継手内周面B1の圧接に伴って流出する溶融樹脂Rは、パイプ先端面A3と継手段部B2との隙間が封止カバーC1で封鎖されるため、そこからパイプ内周面A4側には流れ出ず、そのすべてがパイプ外周面A2に沿って継手管Bの端面B3へ向け誘導され、それから流出し外側へ環状に盛り上がって突出して硬化する。
したがって、図3(a)(b)に示す実施例2は、合成樹脂パイプAと継手管Bとのパイプ接続部において溶融樹脂Rがパイプ内周面A4に盛り上がって硬化することを防止でき、流路を絞ることがないため、所定の流量を確保できる。
【実施例3】
【0039】
この実施例3は、図4(a)(b)に示す如く、前記図3(a)(b)に示した実施例2の封止カバーC1に代え、前記継手B内の段部B2に前記流動規制手段Cとして貯留部C2を、前記パイプ内周面A3と対向するように凹設することにより、前記合成樹脂パイプAの押し込み及び圧接に伴って流出する溶融樹脂Rを、該貯留部C2内へ流し込んで硬化させる構成が、前記図2に示した実施例2とは異なり、それ以外の構成は図2に示した実施例2と同じものである。
【0040】
貯留部C2は、段部B2の端面の周方向全周に亘って環状に形成することが好ましく、その容量を増やすために継手内周面B1側へ拡張することも可能である。
【0041】
したがって、図4に示す実施例3も、上述した実施例2と同様な作用効果が得られ、更に加えて、実施例2のように封止カバーC1を更に必要としないから、その接続作業が容易になるとともに、その分だけ部品点数が減少してコストの低減が図れるという利点がある。
また、合成樹脂パイプAの押し込み及びパイプ外周面A2及び継手内周面B1の圧接に伴って流出する溶融樹脂Rの一部又はほとんどが貯留部C2内へ流れ込むため、パイプ外周面A2に沿って継手管Bの端面B3へ向かう溶融樹脂Rの量が減り、それにより、パイプ外周面A2よりも外側へ盛り上がって硬化する樹脂Rが大幅に減少して目立たなくなり、外観の低下が緩和されるという利点もある。
【実施例4】
【0042】
この実施例4は、図5(a)(b)に示す如く、前記図4(a)(b)に示した実施例3の貯留部C2に代え、前記流動規制手段Cとして貯留部C3を前記パイプ先端面A3と対向するように凹設することにより、前記合成樹脂パイプAの押し込み及び圧接に伴って流出する溶融樹脂Rを、該貯留部C3内へ流し込んで硬化させる構成が、前記図4に示した実施例3とは異なり、それ以外の構成は図4に示した実施例3と同じものである。
【0043】
貯留部C3は、図示例のようにパイプ先端面A3においてパイプ外周面A2側が最も凹むように直線状又は湾曲状に傾斜させて、パイプ内周面A4側への流出を防ぎながら、その容量を増やすことが好ましい。
その他の例として、合成樹脂パイプAの軸方向と垂直なパイプ先端面A3に環状の貯留部C3を形成することも可能である。
【0044】
したがって、図5に示す実施例4も、上述した実施例3と同様な作用効果が得られ、更に加えて、図示例のようにパイプ先端面A3を貯留部C3の容量が増えるように傾斜させた場合には、合成樹脂パイプAの押し込み及びパイプ外周面A2及び継手内周面B1の圧接に伴って流出する溶融樹脂Rのほとんどが貯留部C3内へ流し込むため、パイプ外周面A2に沿って継手管Bの端面B3へ向け流出する量が著しく減少し、それにより、パイプ外周面A2よりも外側へ盛り上がって硬化する樹脂Rが無くなって、外観が向上するという利点もある。
【0045】
なお、前述した合成樹脂パイプAの実施例1では、内層1の押出し成形後に補強線材6を周方向へ複数本夫々適宜間隔ごとに配置し、その外側から加圧して各補強線材6が内層1の内部に押し込まれる場合を示したが、これに限定されず、内層1の内部に補強線材6を配置しなくても良い。
さらに、前述したパイプ接続方法の実施例2〜実施例4では、合成樹脂パイプAの軸方向端部A1が接続される開口の内周面B1に、それに挿入される合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3が突き当たる段部B2を突出形成したが、これに限定されず、該段部B2無しで、接続する2本の合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3同士が突き当たるようにして、これら先端面A3同士の圧接部分と、継手内周面B1及びパイプ外周面A2の圧接部分を夫々溶着するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の合成樹脂パイプの一実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図2】本発明の合成樹脂パイプの接続例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の合成樹脂パイプを用いたパイプ接続方法の一例を示す縦断面図で、(a)が接続前の状態を示しており、(b)が接続後の状態を示している。
【図4】パイプ接続方法の他の例を示す縦断面図で、(a)が接続前の状態を示しており、(b)が接続後の状態を示している。
【図5】パイプ接続方法の他の例を示す縦断面図で、(a)が接続前の状態を示しており、(b)が接続後の状態を示している。
【図6】従来のパイプ接続方法の一例を示す縦断面図で、(a)が接続前の状態を示しており、(b)が接続後の状態を示している。
【符号の説明】
【0047】
A 合成樹脂パイプ A′ パイプ本体
1 内層 1a 外周面
2 外層 3 接着層
3a 外周面 4,5 補強層
4a,5a 螺旋状補強材 6 補強線材
A1 軸方向端部 A2 外周面(パイプ外周面)
A3 軸方向先端面(パイプ先端面) A4 内周面(パイプ内周面)
B 継手管 B1 内周面(継手内周面)
B2 段部(継手段部) B3 端面
C 流動規制手段 C1 封止カバー
C1′ 挟持部 C2,C3 貯留部
R 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層(1,2)を積層してパイプ本体(A′)が形成され、これら複数の層(1,2)の間に補強材を螺旋状に巻回して補強層が形成される合成樹脂パイプにおいて、
前記複数の層(1,2)の間に接着層(3)を形成し、前記複数の層(1,2)の各々の層と接着層(3)との間に、前記補強材として螺旋状補強材(4a,5a)を夫々の傾斜角度が逆向きになるように螺旋状に巻回することで、前記接着層(3)の内周面及び外周面に沿って前記補強層(4,5)を夫々形成したことを特徴とする合成樹脂パイプ。
【請求項2】
前記複数の層(1,2)を熱可塑性樹脂で形成するとともに、これら複数の層(1,2)の熱可塑性樹脂よりも流動性の高い熱可塑性樹脂で前記接着層(3)を形成した請求項1記載の合成樹脂パイプ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の合成樹脂パイプを製造するに際し、前記接着層(3)を積層した後に冷却し、この冷却工程の後に前記接着層(3)の外周面に沿って螺旋状補強材(5a)を螺旋状に巻回したことを特徴とする合成樹脂パイプを製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の合成樹脂パイプを接続するに際し、前記複数の層(1,2)及び接着層(3)と螺旋状補強材(4a,5a)が同系の合成樹脂で形成されてなる前記パイプ本体(A′)の軸方向端部(A1)を加熱溶融し、接続相手に圧接させて熱溶着したことを特徴とする合成樹脂パイプの接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−48329(P2010−48329A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212765(P2008−212765)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】