説明

合成樹脂フィルムの製造方法および合成樹脂フィルム

本発明は、エレクトロニクス分野で有用と考えられる、フィルムの全幅において物性が安定した合成樹脂フィルム、その中でもMD方向に分子配向が制御された合成樹脂フィルムの連続生産法に関する。すなわち本発明は(A)高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程、(B)ゲルフィルムを支持体から引き剥がしゲルフィルムの両端を固定する工程、(C)フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程、を含む合成樹脂フィルムの連続的な生産方法であって、前記(C)工程の少なくとも一部においてフィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように固定されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、合成樹脂フィルムの製造方法に関する。詳しくは、全幅において物性が安定化した合成樹脂フィルムの製造方法に関するものであり、例えば、合成樹脂フィルムの分子配向軸が機械的送り方向(以降、MD方向と略す)に向くように制御された合成樹脂フィルム、の新規な製造方法に関するものである。さらに詳しくは、連続的に生産される広幅の合成樹脂フィルムの全幅において、分子配向軸がMD方向に向くよう制御された合成樹脂フィルムの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
例えば、エレクトロニクスの技術分野においては、益々高密度実装の要求が高くなっており、それに伴いフレキシブルプリント配線板(以降、FPCという)を用いる技術分野においても、高密度実装の要求が高くなってきている。FPCの製造工程は、ベースフィルムに金属を積層する工程、金属表面に配線を形成する工程に大別されるが、寸法変化が大きい工程は、金属を積層する際にベースフィルムを加熱しながら金属を積層する工程の前後、金属をパターニングする際のエッチング工程前後、また、FPCの状態で加熱される工程の前後であり、この工程の前後においてFPCの寸法変化が小さいことが要求されている。この要求に応えるには、機械的送り方向(以降、MD方向と略す)に分子の配向が制御された合成樹脂フィルム、すなわち、フィルムの分子配向をMD方向に配向させ、機械的送り方向と垂直な方向(以降、TD方向と略す)の物性に差をもたせたフィルムが有用であると本発明者らは考える。より具体的には、MD方向に分子の配向が制御された合成樹脂フィルムをベースフィルムとし、金属を積層する際に、ベースフィルムを加熱しながら金属箔を積層する工程に用いることが寸法変化(パターニング前後、FPC加熱前後)を小さくすることに有用と考える。
なぜなら、MD方向に分子の配向が制御されていると、フィルム流れ方向(MD方向)の弾性率が高くなり張力の影響が少なくなる為、上記工程の前後での寸法変化を小さくすることが可能だからである。
また、例えば、MD方向に分子の配向が制御されたフィルムでは、MD方向の弾性率が高くなり、その為にMD方向に向いたフィルムの摺動屈曲性がよくなると考えられる。
このように、MD方向に分子の配向が制御されたフィルムは、特にエレクトロニクス分野の、FPC、TAB(Tape Automated Bonding)用フィルム、COF(チップオンフィルム)用基板等に有用であると考えられるが、フィルムの分子配向を任意に制御しうる製造方法およびMD方向に分子配向が制御されたフィルムは現在のところ得られていない。特に、連続的に合成樹脂フィルムを生産する場合において、全幅においてフィルムの特性を制御することは非常に困難と考えられており、全幅においてMD方向に分子配向が制御された合成樹脂フィルムを得る方法は、これまでに知られていない。
例えば、特許文献1には、焼成後のポリイミドフィルムをMD方向にアニール処理を施しながら延伸する方法が提案されている。
また特許文献2には、フィルム製造時にMD方向に1.0〜1.5倍に、TD方向に0.5〜0.99倍に延伸する方法が提案されている。
特許文献3には、溶剤によって3〜100倍膨潤したゲルフィルムを延伸することで一軸方向に延伸したポリイミドを得る方法が提案されている。
特許文献4には、ポリイミドフィルムに250℃以上、10kg/mm以上の張力を付与してゾーン延伸することでMD方向に配向制御したポリイミドフィルムを製造する方法が提案されている。
特許文献5には、溶媒が残存する芳香族ポリイミド前駆体フィルムを膨潤剤で膨潤させた後、少なくとも一軸方向へ延伸し、その後該フィルムより膨潤剤を除去してから、加熱乾燥させる製造方法が提案されている。
特許文献6には、溶剤によって3〜20倍膨潤したゲルフィルムを延伸することで一軸方向に延伸したポリイミドを得る方法が提案されている。
特許文献7には、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分とp−フェニレンジアミン成分とを必須とするポリイミドフィルムにおいて、自己支持性フィルムの両端部を把持させて加熱炉に挿入し、自己支持性フィルムの収縮がほぼ完了する300℃までの工程においてフィルム把持幅を徐々に狭くする方法が記載されている。
特許文献8には、ゲルフィルムの両端部を固定し、加熱炉中でフィルム幅を順次小さくするように固定端距離を設定し、次にフィルム幅を順次大きくするように固定端距離を設定した後、更にフィルム幅を順次小さくするように固定端距離を設定するポリイミドフィルムの製造方法が記載されている。
しかし、上記いずれの文献にも、本発明の特徴的部分である、TD方向の張力が実質的に無張力となるようにゲルフィルムの両端が固定されて加熱炉内を搬送する工程については、一切開示がなく、本発明とは全く異なるものである。
【特許文献1】特開平8−174659 0017段落
【特許文献2】特開平11−156936 0021段落
【特許文献3】特許文献3 特開2003−128811 0010段落
【特許文献4】特開昭63−197628 2頁右上段15行目
【特許文献5】特開2002−1804 0007段落
【特許文献6】特開2003−145561 0014段落
【特許文献7】特開2002−179821 0020段落
【特許文献8】特開2004−331792 0008段落
【発明の開示】
以上のように、FPCなどのエレクトロニクスの技術分野に特に有用と考えられる、フィルムの全幅において、MD方向に分子配向が制御された合成樹脂フィルムを製造する方法はこれまでに得られていない。本発明者らは、連続生産において、特にエレクトロニクス分野で有用と考えられる、フィルムの全幅においてMD方向に分子配向が制御された合成樹脂フィルム、特にはポリイミドフィルムを製造することを目的に鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
本発明は以下の新規な合成樹脂フィルムの製造方法により上記課題を解決しうる。
1)連続的に生産される合成樹脂フィルムの製造方法において、少なくとも下記(A)〜(C)、
(A)高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)ゲルフィルムを支持体から引き剥がしゲルフィルムの両端を固定する工程、
(C)フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程、
を含む合成樹脂フィルムの製造方法であって、前記(C)工程の少なくとも一部において(C−1)フィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように両端が固定されて搬送する工程を含むことを特徴とする合成樹脂フィルムの製造方法。
2)前記(C)工程における加熱炉の入り口においてTD方向の張力が実質的に無張力となるように両端が固定されていることを特徴とする1)記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
3)前記加熱炉は、2以上の複数の加熱炉からなり、第一の加熱炉の温度が300℃以下であることを特徴とする2)記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
4)前記(C)工程において、両端部固定端の距離をX、両端部固定端間のフィルムの幅をYとしたとき、XとYが下記式を満足するようにTD方向の張力が実質的に無張力となるように両端間を固定することを特徴とする1)〜3)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
20.0≧(Y−X)/Y×100>0.00
5)前記(C)工程の少なくとも一部において、(C−2)フィルムをTD方向に引き延ばす工程を含むことを特徴とする1)〜4)記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
6)前記(C−2)工程において、引き延ばす前の、TD方向の両端部固定端の距離をZ、フィルムが炉内で引き伸ばされた際の両端部固定端の距離をWとしたとき、ZとWが下記式を満足するようにTD方向にフィルムを引き伸ばすことを特徴とする5)に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
40.0≧(W−Z)/Z×100>0.00
7)前記合成樹脂フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする1)〜6)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
8)1)〜7)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法を用いて製造された合成樹脂フィルム。
本発明の合成樹脂フィルムの製造方法によれば、MD方向に分子配向が制御された合成樹脂フィルムを得ることができ、特に、連続生産される広幅の合成樹脂フィルムであっても、全幅において、MD方向に分子配向が制御された合成樹脂フィルムを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、ポリイミドフィルムの製造装置模式図である。
図2は、ポリイミドフィルムの把持装置間のフィルム把持状況を説明するための模式図である。
図3は、実施例及び比較例において配向度及び配向角を測定するためのサンプリング方法を示す図である。
なお、図1及び/又は図2中、符号1はフィルム搬送装置を、符号2、3、4、5及び6は焼成炉を、符号7はフィルム把持開始部位を、符号8はフィルムの把持装置間の幅Xを、符号9は把持装置間に把持したゲルフィルムのTD方向のフィルム幅Yを、符号10はフィルム搬送方向を、符号11は、引き伸ばす前のTD方向の両端部固定端の幅Zを、符号12は、フィルムが炉内でTD方向に引き伸ばされた際の両端部固定端の幅Wを、符号13は有機溶剤溶液を流延・塗布する装置(ダイス)を、符号14は有機溶剤溶液の支持体を、符号15はゲルフィルムに張力をかける装置を、そして符号16はゲルフィルムが引き剥がされる部位を、それぞれ表す。
また図3中、符号20はフィルム幅が800mm以上の場合を、符号21はMD方向(フィルム搬送方向)を、符号22はフィルム幅が800mm未満の場合を、そして符号23はサンプルフィルム幅40mmを、それぞれ表す。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、連続的に生産される合成樹脂フィルムの製造方法において、少なくとも下記(A)〜(C)、
(A)高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)ゲルフィルムを支持体から引き剥がしゲルフィルムの両端を固定する工程、
(C)フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程、
を含む合成樹脂フィルムの製造方法であって、前記(C)工程の少なくとも一部においてフィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように両端が固定されて搬送することを特徴とする合成樹脂フィルムの製造方法である。以下、各工程を詳細に説明する。
(A)工程
(A)工程は、高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを得る工程である。本願発明の合成樹脂フィルムの製造方法において好適に適用できる高分子とは一般に「ポリマー」と表現される物質であることが好ましく、該高分子を用いた合成樹脂フィルムとして、例えばPI(ポリイミドフィルム)、PA(ポリアミドフィルム)、PEN(ポリエチレンナフタレートフィルム)、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、PC(ポリカーボネートフィルム)、PPS(ポリフェニレンサルファイドフィルム)、LCP(液晶ポリマーフィルム)、PET(ポリエチレンテレフタレートフィルム)、PE(ポリエチレンフィルム)、PVA(ポリビニルアルコールフィルム)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレンフィルム)、PVDF(ポリビニリデンフルオライドフィルム)、PVF(ポリビニルフルオライドフィルム)等の合成樹脂フィルムが挙げられる。特に電子・電気用途に好ましく用いられる合成樹脂フィルムとしてポリイミドフィルムを好適に用いることが好ましい。
本願発明における高分子と有機溶剤を含む組成物とは、高分子を有機溶剤に溶解してそのまま用いてもよいし、最終的に得られる合成樹脂フィルムを構成する高分子の前駆体を、有機溶剤に溶解させた組成物であってもよい。また、前駆体となる高分子体と反応しうる反応剤など、その他の成分を添加した組成物を用いてもよい。
例えば、合成樹脂フィルムとしてポリイミドフィルムを製造する場合は、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を有機溶剤に溶解した組成物を用いることができる。この組成物には、剥形剤、イミド化触媒、脱水剤などの添加剤を含んでいてもよい。また、イミド化したポリイミド樹脂を有機溶剤に溶解させた組成物も同様に用いることができる。さらに、他の樹脂の場合においては、例えば、PETフィルムはポリエチレンテレフタレートを有機溶剤中に溶解させたポリエチレンテレフタレートを含む組成物が挙げられる。
尚、上記組成物として好適に用いられる有機溶剤溶液の固形分濃度は、全溶液重量に対して該高分子重量が5〜40重量%の割合で溶解している有機溶剤溶液であることが製造工程において除去する有機溶剤量が減少できるので好ましい。また、上記範囲以上の固形分濃度での合成樹脂フィルムの製造方法においても溶液に流動性があり、ダイスのスリット口からの吐出が可能で、ダイスから支持体表面にキャストした際に自己支持性を示すフィルムが製造される溶液であればどのような濃度の溶液も用いることが可能である。
上記有機溶剤として好適に用いられる溶剤は、溶解する高分子によって異なるが、例えば、ポリイミドフィルムを製造する場合には、テトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア類、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン類、N,N−ジメチルアセトアミド(略称DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(略称DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(略称NMP)、γ−ブチルラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、またはホスホリルアミド類の非プロトン性溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられることができ、通常これらの溶剤を単独で用いるが必要に応じて2種以上を適宜、組合わせて用いて良い。これらのうちDMF、DMAc、NMPなどのアミド類を用いることが、高分子溶解性が高いという点から溶剤として好ましく使用される。
合成樹脂フィルムとしてポリイミドフィルムを製造する場合を例に挙げると、(A)工程で用いる高分子として、ポリイミドフィルムの前駆体となるポリアミド酸を用いることができる。ポリアミド酸としては、特に限定されないが、有機溶媒中にて酸二無水物とジアミン類とをおおよそ等モル反応させることで得られるポリアミド酸溶液であれば良い。尚、ポリアミド酸の重合方法としてはどのような重合方法を用いても良く、例えば、1種以上のジアミン類を有機溶媒中に溶解或いは分散し、その溶液中に1種以上の酸二無水物を添加して重合するランダム共重合方法、1以上の酸二無水物を溶解或いは分散させた溶液中に1種以上のジアミンを添加して重合するランダム共重合方法、1種以上のジアミンと1種以上の酸二無水物を重合させた溶液中にさらにジアミン或いは酸二無水物を添加して重合を完結する重合方法等の方法を用いることが出来る。しかし、本願発明の要旨は合成樹脂フィルムの製造方法であり、ポリイミドフィルムの前駆体である前記ポリアミド酸溶液の製造方法における重合方法は特に制限は無く、どのような重合方法を用いても良い。
ポリアミド酸の重合に使用される有機溶媒としては、テトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア類、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン類、N,N−ジメチルアセトアミド(略称DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(略称DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(略称NMP)、γ−ブチルラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、またはホスホリルアミド類の非プロトン性溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられることができ、通常これらの溶媒を単独で用いるが必要に応じて2種以上を適宜組合わせて用いて良い。これらのうちDMF、DMAc、NMPなどのアミド類が高分子溶解性が高いという点から溶剤として好ましく使用される。
ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸固形分の重量%は、有機溶媒中にポリアミド酸が5〜40wt%、好ましくは10〜30wt%、更に好ましくは、13〜25wt%溶解されているのが取り扱い面から好ましい。尚、ポリアミド酸の平均分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で10000以上である方がフィルム物性上好ましい。
また、上記ポリアミド酸溶液の粘度は、23℃に保温された水浴中で1時間保温し、その時の粘度をB型粘度計で、ローターはNo.7を回転数は4rpmで測定を行いその粘度が50Pa・s以上1000Pa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは100Pa・s以上500Pa・s以下、最も好ましくは200Pa・s以上350Pa・s以下であることがフィルム成形体を作製する際に取扱い上で最も好ましい。
本発明に係るポリアミド酸溶液の製造において好適に用いることのできる酸二無水物としては、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−メチルフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(2,3−ジメチルフェニレン)ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4’−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,4−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,6−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等のエステル酸無水物類、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−無水ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−無水ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−無水ジカルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3,4−無水ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−無水ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−無水ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−無水ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−無水ジカルボキシフェニル)スルホン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,2−ビス[(2,3−無水ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等の酸二無水物が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上用いることができる。
これらの酸二無水物の中で、ピロメリット酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の酸二無水物から選択される少なくとも1種以上を用いることがポリイミドフィルムに耐熱性を付与し、フィルムの弾性率を向上させてポリイミドフィルムの配向を行いやすくする上で好ましい。
ポリイミドフィルムの弾性率が向上するとフィルム中の残留揮発成分が揮発する際の体積収縮により、フィルム面内に収縮応力が発生し、該収縮応力により面内の分子配向が促進されることになる。その結果、ポリイミドフィルムの分子配向が進むのである。
また、アミン化合物類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、
3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、
ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシジベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェニル)スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェニル)スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、
1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−フルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、ジアミノポリシロキサンが挙げられ、これらを単独であるいは2種以上を用いることができる。
これらの中でも、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンから選択される少なくとも1種以上を用いることが用いることがポリイミドフィルムの耐熱性を向上しフィルムの剛性を付与できる点から好ましい。更に、p−フェニレンジアミン及び/もしくは、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テルを必須成分として併用することでポリイミドフィルムの弾性率を向上させてポリイミドフィルムの配向を行いやすくする上で好ましい。
特に好ましいポリイミドフィルムは、▲1▼p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物、
p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の4つのモノマーで作製されるポリイミドフィルム、▲2▼p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、▲3▼p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、▲4▼p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、▲5▼p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、▲6▼4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、▲7▼p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、▲8▼p−フェニレンジアミン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルムが分子配向角を制御しやすくなる利点があり、好適に用いられる。
後述する、本工程における高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延する方法には、例えばポリイミドフィルムの場合には、▲1▼上記ポリアミド酸を含む溶液を直接に流延する方法、▲2▼上記ポリアミド酸を含む溶液を流延する前にイミド化触媒を混合しその溶液を流延する方法、▲3▼上記ポリアミド酸を含む溶液を流延する前にイミド化触媒と脱水剤を混合しその溶液を流延する方法、▲4▼上記ポリアミド酸溶液を流延する前に剥形剤を混合しその溶液を流延する方法などが採用される。そこで、イミド化触媒、脱水剤、剥形剤についてまず説明する。
本工程におけるイミド化触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、イソキノリン、ピコリンなどの複素環式第3級アミン類などが用いられる。脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物や芳香族酸無水物などが挙げられる。剥形剤としては、例えば酢酸等を用いることができる。
イミド化触媒や脱水剤、剥形剤をポリアミド酸有機溶媒溶液と混合する前にフィルター等にて不溶解原料や混入異物を取り除く工程設けることがフィルム中の異物・欠陥を減少させる上で好ましい。上記フィルターの目開きは、取得フィルム厚みの1/2、好ましくは1/5、更に好ましくは1/10が良い。
ポリアミド酸溶液にイミド化触媒だけを混合する割合については、ポリアミド酸を構成する構造式に依存するが、イミド化触媒/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましい。夏に好ましくは、イミド化触媒/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましい。
ポリアミド酸に対して脱水剤及びイミド化触媒を混合させる場合の含有量は、ポリアミド酸を構成する構造式に依存するが、脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましく、イミド化触媒/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましい。更に好ましくは、脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましく、イミド化触媒/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましい。なお、この場合には、アセチルアセトン等の反応遅延剤を併用しても良い。また、ポリアミド酸に対する脱水剤及び触媒の含有量は、0℃にてポリアミド酸と脱水剤・触媒混合物とが混合されてから粘度上昇が始まるまでの時間(ポットライフ)から決定しても良い。一般にはポットライフが0.1分〜120分、さらに好ましくは0.5分〜60分が好ましい。
また、本発明を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、有機滑剤(例えばワックス)などが通常添加される程度添加されてもよい。また、表面の易滑性や耐磨耗性、耐スクラッチ性等を付与するために、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子等を添加したり、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子を含有していてもよいし、界面活性剤を含有していてもよい。
尚、本願発明では用いるポリイミドフィルムの弾性率が高い程、配向制御が行い易く、弾性率はポリイミドフィルムの組成だけによらず製造過程等にも大きく依存する。その為、生産後のポリイミドフィルムのMD方向及び、TD方向(MD方向に対して垂直方向)の弾性率を測定して、その値の平均値をフィルムの弾性率と定義すると、フィルムの弾性率が4.0GPa以上7.0GPa以下であることがポリイミドフィルムの配向制御を行う上で好ましい。弾性率が高い程、ポリイミドフィルムの配向が進みやすい。本願発明ではこのような弾性率を発現するポリイミドフィルムであることが好ましく、このような構造は、ポリイミドフィルムに用いる酸二無水物もしくはジアミンを適宜選定する、或いは、用いるモノマーを適宜選んだ後に重合処方を適宜変更する、更には、弾性率を高くするための製造方法(ベルト部位での乾燥方法、テンター炉内の温度等)を適宜選定することにより達成される。
このようにして得られた組成物を、支持体上に連続的に流延・塗布する。支持体としては、該溶液樹脂により溶解することが無く、該合成樹脂溶液の有機溶剤溶液を除去するために要する加熱にも耐えうる支持体であればどのような支持体でも用いることができる。特に好ましくは、金属板を繋ぎ合わせて作製した、エンドレスベルトもしくは金属ドラムが溶液状の塗布液を乾燥させる上で好ましい。尚、エンドレスベルトもしくはドラムの材質は、金属が好ましく用いられ中でも、SUS材が好ましく用いられる。表面には、クロム、チタン、ニッケル、コバルト等の金属にてメッキを施したものを用いることで表面上の溶剤の密着性が向上する、或いは、乾燥した合成樹脂フィルムが剥離しやすくなるのでメッキ処理を施すことが好ましい。エンドレスベルト、金属ドラム上は平滑な表面を有することが好ましいが、エンドレスベルト上もしくは金属ドラム上には無数の凸凹を作製して用いることも可能である。エンドレスベルトもしくは金属ドラム上に加工される凸凹の直径は0.1μm〜100μmで深さが0.1〜100μmであることが好ましい。金属表面に凸凹を作製することで合成樹脂フィルムの表面に微細な突起を作製することが可能となり、該突起によりフィルム同士の摩擦による傷の発生、もしくは、フィルム同士のすべり性を向上させることが可能となる。
本願発明におけるゲルフィルムとは、高分子と有機溶剤を含有した有機溶剤溶液を加熱・乾燥させて一部の有機溶剤もしくは反応生成物(これらを残存成分と称する)が高分子フィルム中に残存している高分子樹脂フィルムをゲルフィルムと称する。ポリイミドフィルムの製造工程においては、ポリアミド酸溶液を溶解している有機溶剤、イミド化触媒、脱水剤、反応生成物(脱水剤の吸水成分、水)がゲルフィルム中の残存成分として残る。ゲルフィルム中に残存する残存成分割合は、該ゲルフィルム中に存在する完全乾燥合成樹脂重量a(g)に対して残存する残存成分重量b(g)を算出した際に、残留成分割合cは下記の算出式で算出される値であり、該残存成分割合が500%以下であることが好ましく、さらに好ましくは25%以上200%以下、特に好ましくは30%以上150%以下であることが好ましい。
c=b/a×100・・・(式1)
500%以上の場合にはハンドリング性が悪く、しかも溶媒除去時の溶媒量が多くなるとフィルムの縮みが大きく配向の制御が難しくなるので好ましくない。また、残留成分割合が、25%以上であることが、ポリイミドフィルムの配向がMD方向に向き易く、幅方向のフィルムの物性値が安定しやすくなるため好ましい。
完全乾燥合成樹脂重量aと残存成分重量bの算出方法は、100mm×100mmのゲルフィルム重量dを測定した後に、該ゲルフィルムを300℃のオーブン中で20分乾燥した後、室温まで冷却後、重量を測定し完全乾燥合成樹脂重量aとする。残存成分重量bは、ゲルフィルム重量dと完全乾燥合成樹脂重量aからb=d−aの算出式より算出される。
ゲルフィルムを製造する工程において、支持体上で加熱・乾燥させる際の温度・風速・排気速度は残存成分割合が上記範囲内になるように決定することが好ましい。特に、ポリイミドフィルムの製造過程においては50〜200℃の範囲の温度で高分子と有機溶剤を含有した有機溶剤溶液を加熱・乾燥させることが好ましく、特に好ましくは50〜180℃で加熱・乾燥させることが好ましい。尚、乾燥時間は、1〜300分の範囲内で乾燥させ、多段式の温度管理で乾燥させることが好ましい。
(B)工程
(B)工程は、ゲルフィルムを支持体から引き剥がし連続的にゲルフィルムの両端を固定する工程である。本願発明における、ゲルフィルムの端部を固定する工程とは、ピンシート、クリップ等の一般にフィルムの製造装置において用いられる把持装置を用いてゲルフィルムの端部を把持する工程である。なお、本願発明でいう両端を固定する部位としては、例えば図1の1に記載している、フィルム搬送装置に取り付けられた端部把持装置(ピンシートもしくはクリップ)でフィルム端部を把持し始める部位(図1の7)を挙げることができる。
後述する(C)工程においての少なくともー部においてTD方向の張力が実質的に無張力となるように固定する方法として、この(B)工程の、ゲルフィルムの端部を固定する際に、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定してもよい。フィルムを固定する段階で、TD方向の張力が実質的に無張力となるように行い、そのまま(C)工程へ送る方法である。具体的には、端部を固定する際に、フィルムを弛ませて固定するのである。
(C)工程
(C)工程は、フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程である。本発明においては、この(C)工程の少なくとも一部においてフィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように固定されて搬送することが、MD方向に配向が制御された合成樹脂フィルムを得るという点で重要である。
ここで、TD方向の張力が実質的に無張力であるとは、フィルムの自重による張力以外に、機械的なハンドリングによる引っ張り張力がTD方向にかからないことを意味している。実質的にはフィルムの両端部固定端の距離(図2の8)よりも両端部固定端間のフィルムの幅(図2の9)が広いことを意味しており、そのような状況下でのフィルムを実質的に無張力下のフィルムと言う。図2を用いて説明すると、フィルムは、把持装置によって固定され、このとき図2の8の長さが両端部固定装置端の距離である。通常は、フィルムの両端はピンと張力がかかった状態であり、このとき、両端部固定端距離8と両端部固定端間のフィルムの幅9は同じである。本発明においては、図2のように、両端部固定端距離8とこの間のフィルムの幅9は異なり、両端部固定端の距離が小さくなっている。具体的には、フィルムは弛ませて固定されているのである。特に、MD方向の分子配向を制御しやすいという点から、両端部固定端の距離8をX、両端部固定端間のフィルムの幅9をYとしたとき、XとYが下記式を満足するように固定されていることが好ましい。
20.0≧(Y−X)/Y×100>0.00・・・・(式2)
(Y−X)/Y×100(これを便宜上TD収縮率という場合がある)を上記範囲以上に大きくすると、フィルムの弛みを安定的に制御することが難しくなり、弛み量が進行方向に対して変化する場合がある。また場合によってはフィルムの弛みによる端部把持装置からの脱落が生じ、安定したフィルムの製造ができない場合がある。さらに好ましくは
15.0≧(Y−X)/Y×100>0.00である。特に好ましくは10.0≧(Y−X)/Y×100>0.00である。
本発明においては、(C)工程における加熱炉の入り口において、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定されていることが、フィルム全幅においてMD方向に配向軸を向けてフィルムを製造する点から好ましい。加熱炉の入り口において、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定されて搬送するには、前述の(B)工程の、ゲルフィルムの端部を固定する際に、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定し、そのまま(C)工程に送る方法(第一の方法)の他に、(B)工程の後、一旦両端部固定端の距離を縮める操作(図1記載の方式)を行って、(C)工程に送る方法(第二の方法)が挙げられる。第一の方法は、ゲルフィルムの両端を固定する際に、式(2)を満たすように固定する方法が好ましく、第二の方法は、式(2)を満たすように固定端の距離を縮めることが好ましい。
第一の方法もしくは、第二の方法を行った後に、さらに、(C)工程の加熱炉に入った後、両端部固定端の距離を縮める操作を行ってもよい(第三の方法)。第三の方法では、両端部固定端の距離を縮める操作は300℃以下、さらには250℃以下、特には200℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。300℃より高い温度領域において第三の操作を行った場合には、フィルムの配向を制御しにくくなる傾向にあり、特にフィルム端部での配向が制御しにくくなる傾向にある。
以上本願発明では、ゲルフィルムに温度がかかる直前にTD方向の張力が実質的に無張力である状態を経由することが重要である。
(C)工程では、フィルムが乾燥し、さらにイミド化反応が進むためフィルムはある程度収縮する。従って、加熱炉の入り口で、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定して搬送すると、その後、加熱によるフィルムの収縮によって、フィルム幅が小さくなるので、両端部固定端距離と両端部固定端間のフィルムの幅は同じとなり、しわのないフィルムが製造できるのである。
本発明においては、(C)工程において、(C−2)フィルムをTD方向に引き延ばす工程を含んでいてもよい。この(C−2)工程をさらに含むことで、フィルムの配向度を制御することが可能となる。配向度とは、フィルムの分子の配向度合いを示す指標である。以下に配向度合いとして用いるMOR並びにMOR−cについて説明する。フィルム状またはシート状に成形された試料に、マイクロ波を照射した場合、マイクロ波の吸収強度は試料の異方性に依存する。つまり、360°の全方向に渡ってマイクロ波透過強度を測定することで、透過強度の極座標(配向パターン)を求めることができる。この透過強度の極座標の長軸と短軸の比から算出される値がMORである。また、本特許ではMORを、分子配向状態を示す配向度と定義する。なお、上記配向パターンから、配向角および異方性の程度を知ることができる。
MOR値の測定は、王子計測機器製マイクロ波分子配向計
MOA2012A型を用い測定することができる。
尚、MOR−cはMORを厚み変換した値である。配向度は厚みに比例するため、本測定器で得られるMORを下式(3)を用いて厚みを75μmに換算したものをMOR−cと定義する。
MOR−c=(tc/t×(MOR−1))+1 ・・・ 式(3)
ここで、t =試料の厚み
tc=補正したい基準厚さ(75μm)
MOR=上述の測定により得られた値
MOR−c=補正後のMOR
上記式中、75をtcに代入して、補正後のMOR値を求める。得られたMCR−cの値は、MOR−cが、1.000に近いほど配向度の小さい等方的フィルムであることを表す。
等方的に近く配向度の小さいフィルム程、MD方向とTD方向の物性値の違いを無くすことができ、例えば合成樹脂フィルムの使用方向を考慮せずに使用することが可能な合成樹脂フィルムを生産することができる利点がある。
具体的には、MD配向した合成樹脂フィルムでしかも、より小さい配向度を示す合成樹脂フィルムを得たい時には、(C−2)工程を含む製造方法とすればよい。
本発明における、(C−2)フィルムをTD方向に引き延ばす工程は、(C−1)工程を経た後、加熱炉の中で、フィルムをTD方向に引き延ばす工程である。(C−1)工程で、フィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように固定されて搬送するが、加熱炉内でフィルムが加熱されると、フィルムはある程度収縮する。収縮してフィルムの弛みがなくなった後、フィルムをTD方向に引き延ばすのである。引き延ばす量(これを便宜上膨張率という)は、引き延ばす前のTD方向の両端部固定端の幅をZ(図1の11)、フィルムが炉内でTD方向に引き伸ばされた際の両端部固定端の幅をW(図1の12)としたとき、下記式を満たすことが好ましい。
40.0≧(W−Z)/Z×100>0.00・・・・(式4)
(W−Z)/Z×100(これを便宜上TD膨張率という場合がある)を上記範囲以上に大きくすると、フィルムの分子配向軸をMD方向に制御することが難しくなる場合がある。さらに好ましくは
30.0≧(W−Z)/Z×100>0.00である。特に好ましくは
20.0≧(W−Z)/Z×100>0.00である。
(C−2)工程は、フィルムの把持幅を徐々に広げながらTD方向にフィルムを引き伸ばせばよい。さらに、必要に応じて(C−2)工程以降に再度収縮を行ってもよく、さらに、フィルム幅を広げることも可能であり、収縮量、拡大量に関しては適宜選定することが好ましい。
(C−2)工程を行う温度は、耐熱性に優れるポリイミドフィルムの場合には、300℃以上500℃以下、特に好ましくは350℃以上480℃以下がポリイミドフィルムの弾性率が低下してフィルムを引き伸ばしやすくなるので好ましい。尚、上記温度では、フィルムが軟化して伸びきってしまう場合がある。その場合には、上記範囲以外の温度を適宜設定することが好ましい。
さらに、(C−2)工程においては、TD膨張率を調整することによって、MD配向した状態でフィルムの配向度を小さくできる。つまり、
(C−2)工程においてフィルムを引き伸ばすことによりフィルムの配向度を自在に制御することができる。
本願発明においては、(C−1)工程での収縮及び、(C−2)工程での引き伸ばし、更には、搬送する際のMD方向のフィルム張力、ゲルフィルムの残存成分重量、加熱温度を適宜調節して、MD方向に配向が制御されたフィルムを製造すればよい。また、合成樹脂フィルムがポリイミドフィルムである場合は、化学イミド化を行うか、熱イミド化を行うかにより、フィルムの加熱温度、加熱時間が全く異なるが、熱イミド化の場合であっても、本願発明の方法内での制御を行えば、目的とするフィルムを得ることができる。
本願発明に好適に用いられる加熱炉は、フィルム上面もしくは下面、或いは、両面から60℃以上の熱風をフィルム全体に噴射して加熱する方式の熱風炉、もしくは、遠赤外線を照射してフィルムを焼成する遠赤外線発生装置を備えた遠赤外線炉が用いられる。加熱工程においては、段階的に温度を上げて焼成することが好ましく、その為に、熱風炉、もしくは、遠赤外線炉、もしくは、熱風炉と遠赤外線炉を混在させながら数台連結して焼成する段階式の加熱炉を用いることが好ましい。
上記焼成過程において本願発明では、ポリイミドフィルムの製造工程においては、ゲルフィルムを把持し、炉内に搬送した際の最初に与えられる加熱温度は、300℃以下が好ましく、さらに60℃以上250℃以下であることが好ましく、特に好ましくは100℃以上200℃以下であることが、MD方向に配向が制御された合成樹脂フィルムを得やすい点から好ましい。具体的には、2以上の複数の加熱炉内を搬送させ、第一の加熱炉(図1の2)の温度を300℃以下とすることが好ましい。また、他の合成樹脂フィルムに適応させる場合には、合成樹脂フィルムの種類及び溶剤の揮発温度を考慮して決定することが好ましい。特に、ゲルフィルム中に含まれる溶剤の沸点を調査し、該溶剤の沸点よりも100℃高い温度以下の温度で管理することが望ましい。
ポリイミドフィルムの製造において、炉内に搬送した際の最初に与えられる加熱温度が300℃より高い場合には、ボーイング現象(フィルムの収縮の影響で中央部がフィルムの端部よりも早く加熱炉内部に搬送されるため、端部に強い分子配向状態が発生する現象)が発生しフィルムの端部の配向軸をMD方向に制御しにくくなる傾向にある。ポリイミドフィルムの焼成の際には、2番目の炉(図1の3)の温度は1番目の炉(図1の2)の温度プラス50℃以上、1番目の炉の温度プラス300℃以下に設定することが好ましい。特に好ましくは、1番目の炉の温度プラス60℃以上、1番目の炉の温度プラス250℃以下に設定することがポリイミドフィルムの分子配向軸をMD方向に制御する上で好ましい。それ以降の炉の温度は、通常のポリイミドフィルムの製造に用いられる温度にて、焼成することが好ましい。但し、1番目の炉(図1の2)の温度が60℃以下の場合には、次ぎの炉(図1の3)の温度を100℃以上、250℃以下の温度に設定することが好ましい。1番目の炉(図1の2)の温度が60℃以下の場合に2炉の温度を上記温度に設定することで、分子配向軸を制御したポリイミドフィルムの製造が可能となる。また、初期温度及び次炉の温度は上記のように設定することが好ましいが、それ以外の温度は通常のポリイミドフィルムの製造に用いられる焼成温度にて焼成することが好ましい。例えば、その一例として、ポリイミドフィルムの焼成には最高600℃までの温度に段階的に焼成し、室温まで徐々に冷却する方法等を用いることができる。最高焼成温度が低い場合には、イミド化率が完全でない場合があり充分に焼成することが必要となる。
炉内に搬送される際のゲルフィルムに与えるMD方向に与えられる張力はフィルム1mあたりにかけられる張力(荷重)を算出することで、1〜20kg/mであることが好ましく、更に好ましくは1〜15kg/m、特に好ましくは1〜10kg/mであることが好ましい。張力が1kg/m以下の場合にはフィルムを安定して搬送することが難しく、フィルムを把持して安定したフィルムが製造しにくくなる傾向にある。また、フィルムにかける張力が20kg/m以上の場合には、特に、フィルムの端部においてMD方向に分子配向を制御しにくく、しかも、フィルム端部の配向度が中央部位よりも大きくなり、全幅均一な配向度に制御することが難しくなる傾向にある。炉内に搬送されるゲルフィルムに与える張力発生装置としては、ゲルフィルムに荷重をかける荷重ロール、ロールの回転速度を調整して荷重を変化させるロール、ゲルフィルムを2つのロールで挟み込み張力の制御を行う二ップロールを用いる方式等の種々の方法を用いてゲルフィルへの張力を調整することができる。
尚、フィルムに与える張力はポリイミドフィルムの厚みにより上記範囲内で適宜調整することが好ましい。フィルム厚みとしては、1〜200μmの厚みが好ましく、特に好ましくは1〜100μmであることがポリイミドフィルムを成形する上で好ましい。フィルムの厚みが200μm以上の場合にはフィルムに発生する収縮応力が大きくなり、本願方法を適応しても、ポリイミドフィルムの配向度をMD方向に制御できない場合があるので好ましくない。
本発明の製造方法を用いれば、MD方向に分子が配向した合成樹脂フィルムを得ることができる。MD方向に分子が配向しているか否かは、分子配向計を用いることで確認できる。本発明の製造方法により得られるフィルムの分子配向は、王子計測機器株式会社製分子配向計MOA2012Aを用いてフィルムの配向を測定した場合に、分子配向角が0±25°以下となっていることが好ましい。分子配向角が0°とは、分子配向軸がMD方向(フィルムの機械的送り方向)に向いていることを意味する。上記範囲内に分子配向軸を制御することでMD方向の弾性率が向上し、線膨張係数値が小さくなり、ポリイミドフィルムの寸法安定性が良くなる。また、上記角度範囲を越えると、フィルムの斜め方向への線膨張係数が大きくなり、しかも、同一方向の弾性率も低下するのでフィルムを加熱しながら金属箔を積層する工程に用いた場合に、斜め方向の寸法変化量(パターニング前後、FPC加熱前後)が大きくなり寸法安定性が低下するので好ましくない。
また、本発明の製造方法を用いれば、全幅においてMD方向に分子が配向した合成樹脂フィルムを得ることができる。本願発明におけるフィルムの全幅においてMD方向に分子が配向した状態とは、図3に示すように、フィルム幅が800mm以上であるフィルムでは、両端が含まれるよう、少なくとも等間隔に7点サンプルを採取する。フィルム幅が800mmに満たないフィルムは、両端が含まれるよう、少なくとも等間隔に5点サンプルを採取する。この方法は、厳密には全幅において測定していないが、このように採取したサンプルすべてにおいて分子配向角が0±25°以下を満たせば、厳密に全幅においてサンプルを測定した場合にも分子配向角が0±25°以下を満たすフィルムのことをいう。
本発明における合成樹脂フィルムは、本発明の製造方法による得られる合成樹脂フィルムの片面もしくは両面に、他の1層以上のポリマー層を塗布して用いてもよい。例えば、熱可塑性ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンおよびアクリル系ポリマーを直接、あるいは接着剤などの層を介して積層してもよい。また、ポリイミドフィルムの場合は、例えば、熱可塑性ポリイミド層を形成するための溶液(熱可塑性ポリイミド樹脂またはその前駆体であるポリアミド酸を含む溶液)と耐熱性ポリイミド層を形成するための溶液(耐熱性ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を含む溶液)を、同時に1以上のスリット口より支持体表面に同時に塗布し、ゲルフィルムを作製して焼成する形態でも良い。
また、本発明の合成樹脂フィルムの製造方法においては、流延・塗布する高分子樹脂溶液を1層以上同時にもしくは、支持体上で順次重ね合わせるように塗布して合成樹脂フィルムの積層体を作製することもできる。さらに、ポリイミドフィルムの場合は、ポリイミドのゲルフィルムを作製した後に、フィルムをポリアミド酸溶液に浸漬する、或いは、イミド溶液中に浸漬する、もしくは、フィルムの表面にコーターを用いてポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液を塗布する方法で作製したポリイミドゲルフィルムを焼成する形態でフィルムを作製しても良い。
本発明の製造方法により得られる合成樹脂フィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
本発明の製造方法により得られる合成樹脂フィルムの用途は、特に限定されないが、フレキシブルプリント基板用途、TAB用テープ基板あるいは高密度記録媒体用ベースフィルム等の電気・電子機器基板用途、磁気記録媒体用途、電気絶縁用途などに特に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。特に、本願発明ではポリイミドフィルムの製造方法における実施例を記載する。
【実施例】
(弾性率の測定)
取得したフィルムの中央部位のMD方向(フィルムの搬送方向)及びTD方向(MD方向に垂直な方向)の弾性率をJIS C2318の6.3.3に準拠した方法で島津製作所株式会社製 AUTOGRAPH(型番AGS−J)を用いて測定して、MD方向及びTD方向の弾性率の測定結果より下記算出式にてフィルムの弾性率を求めた。
フィルムの弾性率=((MD方向の弾性率)+(TD方向の弾性率))÷2 (式5)
(配向度、配向角の測定)
図3に示すように、フィルム幅が800mm以上であるフィルムでは、両端が含まれるよう、少なくとも等間隔に7点サンプルを採取する。フィルム幅が800mmに満たないフィルムは、両端が含まれるよう、少なくとも等間隔に5点サンプルを採取する。このサンプルを王子計測機器製マイクロ波分子配向計MOA2012A型を用い測定を行い、フィルムの配向度及び配向角を求めた。
(実施例1)
本実施例では、N,N’−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)50モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)50モル%、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)50モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)50モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して8kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、175℃の熱風オーブン(以下175℃炉ともいう)、325℃の熱風オーブン(以下325℃炉ともいう)、450℃の熱風オーブン(以下450℃炉ともいう)、510℃の遠赤外線炉(以下510℃遠赤外線炉ともいう)を通過させ焼成した。
ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を956mm(ゲルフィルム幅1000mm)、175℃炉と325℃炉の間の固定端間を956mm、325℃と450℃炉の間の固定端間を956mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を956mm、炉出口の固定端間を956mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅で分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.0GPaであった。
(実施例2)
本実施例1で使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して8kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、190℃の熱風オーブン(以下190℃炉ともいう)、400℃の熱風オーブン(以下400℃炉ともいう)、450℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を956mm(ゲルフィルム幅1000mm)、190℃炉と400℃炉の間の固定端間を956mm、400℃と450℃炉の間の固定端間を956mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を956mm、炉出口の固定端間を956mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.0GPaであった。
(実施例3)
本実施例1で使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、820mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜120℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が60重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して2kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、130℃の熱風オーブン(以下130℃炉ともいう)、260℃の熱風オーブン(以下260℃炉ともいう)、360℃の熱風オーブン(以下360℃炉ともいう)、450℃の熱風オーブン、515℃の遠赤外線炉(以下515℃遠赤外線炉ともいう)を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾800mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を769mm(ゲルフィルム幅800mm)、130℃炉と260℃炉の間の固定端間を769mm、260℃と360℃炉の間の固定端間を769mm、360℃と450℃炉の間の固定端間を769mm、515℃遠赤外線炉の出口の固定端間を769mm、炉出口の固定端間を769mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.1GPaであった。
(実施例4)
本実施例1で使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、850mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜120℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が60重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力としてMD方向に対して2kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、130℃の熱風オーブン、260℃の熱風オーブン、360℃の熱風オーブン、450℃の熱風オーブン、515℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾820mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を765mm(ゲルフィルム幅820mm)、130℃炉と260℃炉の間の固定端間を765mm、260℃と360℃炉の間の固定端間を765mm、360℃と450℃炉の間の固定端間を765mm、515℃遠赤外線炉の出口の固定端間を765mm、炉出口の固定端間を765mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.1GPaであった。
(実施例5)
本実施例1で使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して4kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、160℃の熱風オーブン、300℃の熱風オーブン、400℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を970mm(ゲルフィルム幅1000mm)、160℃炉と300℃炉の間の固定端間を970mm、300℃と400℃炉の間の固定端間を970mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を970mm、炉出口の固定端間を970mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は5.9GPaであった。
(実施例6)
本実施例1使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して5kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、160℃の熱風オーブン(以下160℃炉ともいう)、300℃の熱風オーブン、400℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を960mm(ゲルフィルム幅1000mm)、160℃炉と300℃炉の間の固定端間を960mm、300℃と400℃炉の間の固定端間を960mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を960mm、炉出口の固定端間を960mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は5.9GPaであった。
(実施例7)
本実施例1で使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して6kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、160℃の熱風オーブン、300℃の熱風オーブン、400℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を960mm(ゲルフィルム幅1000mm)、160℃炉と300℃炉の間の固定端間を960mm、300℃と400℃炉の間の固定端間を960mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を960mm、炉出口の固定端間を960mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は5.9GPaであった。
(実施例8)
本実施例1使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して8kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、160℃の熱風オーブン、300℃の熱風オーブン、400℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を960mm(ゲルフィルム幅1000mm)、160℃炉と300℃炉の間の固定端間を960mm、300℃と400℃炉の間の固定端間を960mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を960mm、炉出口の固定端間を960mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.0GPaであった。
(実施例9)
本実施例では、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)75モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)25モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)100モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して8kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、175℃の熱風オーブン、325℃の熱風オーブン、450℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を956mm(ゲルフィルム幅1000mm)、175℃炉と325℃炉の間の固定端間を956mm、325℃と450℃炉の間の固定端間を956mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を956mm、炉出口の固定端間を956mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅で分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は4.2GPaであった。ポリイミドフィルムの種類を変更しても、ポリイミドフィルムの弾性率が4.0GPa以上であるポリイミドフィルムであればMD方向に配向したポリイミドフィルムを作製することが可能となる。
(実施例10)
本実施例では、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)45モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)55モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)80モル%、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して8kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、175℃の熱風オーブン、325℃の熱風オーブン、450℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を956mm(ゲルフィルム幅1000mm)、175℃炉と325℃炉の間の固定端間を956mm、325℃と450℃炉の間の固定端間を956mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を956mm、炉出口の固定端間を956mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅で分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は5.5GPaであった。ポリイミドフィルムの種類を変更しても、ポリイミドフィルムの弾性率が4.0GPa以上であるポリイミドフィルムであればMD方向に配向したポリイミドフィルムを作製することが可能となる。
(実施例11)
本実施例1使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜140℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が28重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力としてMD方向に対して8kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、焼成条件は、各炉内での焼成時間は、175℃の熱風オーブン、325℃の熱風オーブン、450℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。
ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を956mm(ゲルフィルム幅1000mm)、175℃炉と325℃炉の間の固定端間を956mm、325℃と450℃炉の間の固定端間を956mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を956mm、炉出口の固定端間を956mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。得られたポリイミドフィルムの弾性率は
6.2GPaであった。
(実施例12)
本実施例1使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜120℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が107重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力としてMD方向に対して3kg/単の張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、焼成条件は、各炉内での焼成時間は、175℃の熱風オーブン、325℃の熱風オーブン、450℃の熱風オーブン、510℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。
ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を956mm(ゲルフィルム幅1000mm)、175℃炉と325℃炉の間の固定端間を956mm、325℃と450℃炉の間の固定端間を956mm、510℃遠赤外線炉の出口の固定端間を956mm、炉出口の固定端間を956mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。得られたポリイミドフィルムの弾性率は5.8GPaであった。
(実施例13)
本実施例1で使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、900mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜120℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が60重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力としてMD方向に対して2kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、130℃の熱風オーブン、260℃の熱風オーブン、360℃の熱風オーブン、450℃の熱風オーブン、515℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾820mm、ゲルフィルムの幅を860mmで弛ませた状態で固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を820mm、130℃炉と260℃炉の間の固定端間を820mm、260℃と360℃炉の間の固定端間を820mm、360℃と450℃炉の間の固定端間を820mm、515℃遠赤外線炉の出口の固定端間を820mm、炉出口の固定端間を820mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度を測定した。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.0GPaであった。
(実施例14)
本実施例では、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)30モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)20モル%を溶解した。ここに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20モル%を添加して溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)35モル%を溶解させる。この溶液中に、パラフェニレンジアミン(p−PDA)50モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)45モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.3倍当量の無水酢酸と0.5倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、820mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜130℃で熱風乾燥し、自己指示性を有する残存成分割合が75重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して6kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。ゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mmで弛み無く固定した(ゲル幅は800mm)。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。TD収縮率を3.9、TD膨張率を0.0となるようにポリイミドフィルムをTD方向に弛ませ・引き伸ばしながらフィルムの搬送を行った。TD方向への収縮はゲルフィルムのピン固定部位から収縮を開始し、130℃の炉の入り口で収縮を完了させた。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.7GPaであった。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。
(実施例15)
本実施例では、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)50モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)50モル%、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)50モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)50モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、820mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜130℃で熱風乾燥し、自己指示性を有する残存成分割合が60重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して2kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。ゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mmで弛み無く固定した(ゲル幅は800mm)。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。TD収縮率を3.9、TD膨張率を4.1となるようにポリイミドフィルムをTD方向に弛ませ・引き伸ばしながらフィルムの搬送を行った。TD方向への収縮はゲルフィルムのピン固定部位から収縮を開始し、130℃の炉の入り口で収縮を完了させた。TD方向の引き伸ばしは450℃の炉の入り口から広げ始めて450℃の炉の出口で引き伸ばしを完了した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.1GPaであった。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。
(実施例16)
TD収縮率を2.0、TD膨張率を4.0とした以外は、実施例15と同じ製造方法にてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.0GPaであった。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。
(実施例17)
本実施例15と同じポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、1200mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜140℃で熱風乾燥し、自己指示性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して8kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。ゲルフィルムは幅方向両端をピン巾1100mm(ゲル輻は1100mm)で弛み無く固定した。該ゲルフィルムを、175℃(熱風オーブン)、300℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。TD収縮率を4.4、TD膨張率を2.3となるようにポリイミドフィルムをTD方向に弛ませ・引き伸ばしながらフィルムの搬送を行った。TD方向への収縮はゲルフィルムのピン固定部位から収縮を開始し、175℃の炉の入り口で収縮を完了させた。TD方向の引き伸ばしは450℃の炉の入り口から広げ始めて450℃の炉の出口で引き伸ばしを完了した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.0GPaであった。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。
(実施例18)
TD収縮率を4.4、TD膨張率を4.6とした以外は、実施例17と同じ製造方法にてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。得られたポリイミドフィルムの弾性率は5.9GPaであった。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。
(実施例19)
本実施例14と同じポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、1200mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜140℃で熱風乾燥し、自己指示性を有する残存成分割合が62重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して3.5kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。ゲルフィルムは幅方向両端をピン巾1100mm(ゲル幅は1100mm)で弛み無く固定した。該ゲルフィルムを、165℃(熱風オーブン)、300℃(熱風オーブン)、400℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。TD収縮率を4.0、TD膨張率を2.1となるようにポリイミドフィルムをTD方向に弛ませ・引き伸ばしながらフィルムの搬送を行った。TD方向への収縮はゲルフィルムのピン固定部位から収縮を開始し、165℃の炉の入り口で収縮を完了させた。TD方向の引き伸ばしは400℃の炉の入り口から広げ始めて400℃の炉の出口で引き伸ばしを完了した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.0GPaであった。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。
(実施例20)
本実施例では、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)75モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)25モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)100モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、820mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己指示性を有する残存成分割合が60重量%のゲルフィルムを得た。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して2kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。ゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mm(ゲル幅は800mm)で弛み無く固定した。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。TD収縮率を3.9、TD膨張率を4.1となるようにポリイミドフィルムをTD方向に弛ませ・引き伸ばしながらフィルムの搬送を行った。TD方向への収縮はゲルフィルムのピン固定部位から収縮を開始し、130℃の炉の入り口で収縮を完了させた。TD方向の引き伸ばしは450℃の炉の入り口から広げ始めて450℃の炉の出口で引き伸ばしを完了した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。得られたポリイミドフィルムの弾性率は4.2GPaであった。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。ポリイミドフィルムの種類を変更しても、ポリイミドフィルムの弾性率が4.0GPa以上であるポリイミドフィルムであればMD方向に配向したポリイミドフィルムを作製することが可能となる。
(実施例21)
本実施例では、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)45モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)55モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)80モル%、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、820mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己指示性を有する残存成分割合が60重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して2kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。ゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mm(ゲル幅は800mm)で弛み無く固定した。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、450℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。TD収縮率を3.9、TD膨張率を4.1となるようにポリイミドフィルムをTD方向に弛ませ・引き伸ばしながらフィルムの搬送を行った。TD方向への収縮はゲルフィルムのピン固定部位から収縮を開始し、130℃の炉の入り口で収縮を完了させた。TD方向の引き伸ばしは450℃の炉(熱風オーブン)の入り口から広げ始めて450℃の炉(熱風オーブン)の出口で引き伸ばしを完了した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。得られたポリイミドフィルムの弾性率は5.5GPaであった。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。ポリイミドフィルムの種類を変更しても、ポリイミドフィルムの弾性率が4.0GPa以上であるポリイミドフィルムであればMD方向に配向したポリイミドフィルムを作製することが可能となる。
(実施例22)
本実施例では、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)30モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)20モル%を溶解した。ここに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20モル%を添加して溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)35モル%を溶解させる。この溶液中に、パラフェニレンジアミン(p−PDA)50モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)45モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.3倍当量の無水酢酸と0.5倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、820mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜130℃で熱風乾燥し、自己指示性を有する残存成分割合が75重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して6kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。ゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mmで弛み無く固定した(ゲル幅は800mm)。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。TD収縮率を3.9、TD膨張率を4.0となるようにポリイミドフィルムをTD方向に弛ませ・引き伸ばしながらフィルムの搬送を行った。TD方向への収縮はゲルフィルムのピン固定部位から収縮を開始し、130℃の炉の入り口で収縮を完了させた。TD方向の引き伸ばしは450℃の炉の入り口から広げ始めて450℃の炉の出口で引き伸ばしを完了した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。得られたポリイミドフィルムの弾性率は6.7GPaであった。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。分子配向軸の測定結果、フィルム全幅において分子配向軸の角度が0±25°に制御されたMD配向ポリイミドフィルムが作製できることが明らかになった。
(比較例1)
本実施例1使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、1100mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜140℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が54重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して8kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、350℃の熱風オーブン、400℃の熱風オーブン、450℃の熱風オーブン、515℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾1000mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を1000mm(ゲルフィルム幅1000mm)、350℃炉と400℃炉の間の固定端間を1000mm、400℃と450℃炉の間の固定端間を1000mm、515℃遠赤外線炉の出口の固定端間を1000mm、炉出口の固定端間を1000mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って940mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。
(比較例2)
本実施例1で使用したポリアミド酸溶液と実施例1と同量の無水酢酸及びイソキノリンを混合し、焼成後20μmとなる厚さで、820mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜130℃で熱風乾燥し、自己支持性を有する残存成分割合が60重量%のゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がした。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して2kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。尚、本実施例では、130℃の熱風オーブン、260℃の熱風オーブン、360℃の熱風オーブン、450℃の熱風オーブン、515℃の遠赤外線炉を通過させ焼成した。ゲルフィルムはTD方向の両端部をピン巾800mmで弛み無く固定し、ゲルフィルムを搬送しながら炉入り口の固定端間を800mm(ゲルフィルム幅800mm)、130℃炉と260℃炉の間の固定端間を800mm、260℃と360℃炉の間の固定端間を800mm、360℃と450℃炉の間の固定端間を800mm、515℃遠赤外線炉の出口の固定端間を800mm、炉出口の固定端間を800mmに設定して炉の内部にポリイミドフィルムを搬送させてポリイミドフィルムを作製した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。
(比較例3)
本実施例では、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)100モル%と、ピロメリット酸二無水物(PMDA)100モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、820mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜150℃で熱風乾燥し、自己指示性を有する残存成分割合が40重量%のゲルフィルムを得た。引き剥がしたゲルフィルムには張力として、MD方向に対して2kg/mの張力をかけた状態でテンター炉内に搬送して焼成を行った。ゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mm(ゲル幅は800mm)で弛み無く固定した。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。TD収縮率を4.0、TD膨張率を3.9となるようにポリイミドフィルムをTD方向に弛ませ・引き伸ばしながらフィルムの搬送を行った。TD方向への収縮はゲルフィルムのピン固定部位から収縮を開始し、130℃の炉の入り口で収縮を完了させた。TD方向の引き伸ばしは450℃の炉の入り口から広げ始めて450℃の炉の出口で引き伸ばしを完了した。ポリイミドフィルムは、固定を外して巻き取る際に端部スリットを行って740mm幅のフィルムを取得した。得られたポリイミドフィルムの弾性率は3.5GPaであった。
このようにしてできたポリイミドフィルムの配向角、配向度の測定を行った。実験結果を表1、表2に記載する。
【表1】

【表2】

【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に生産される合成樹脂フィルムの製造方法において、少なくとも下記(A)〜(C)、
(A)高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)ゲルフィルムを支持体から引き剥がしゲルフィルムの両端を固定する工程、
(C)フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程、
を含む合成樹脂フィルムの製造方法であって、前記(C)工程の少なくとも一部において(C−1)フィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように両端が固定されて搬送する工程を含むことを特徴とする合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記(C)工程における加熱炉の入り口においてTD方向の張力が実質的に無張力となるように両端が固定されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記加熱炉は、2以上の複数の加熱炉からなり、第一の加熱炉の温度が300℃以下であることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記(C)工程において、両端部固定端の距離をX、両端部固定端間のフィルムの幅をYとしたとき、XとYが下記式を満足するようにTD方向の張力が実質的に無張力となるように両端間を固定することを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
20.0≧(Y−X)/Y×100>0.00
【請求項5】
前記(C)工程の少なくとも一部において、(C−2)フィルムをTD方向に引き延ばす工程を含むことを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記(C−2)工程において、引き延ばす前の、TD方向の両端部固定端の距離をZ、フィルムが炉内で引き伸ばされた際の両端部固定端の距離をWとしたとき、ZとWが下記式を満足するようにTD方向にフィルムを引き伸ばすことを特徴とする請求の範囲第5項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
40.0≧(W−Z)/Z×100>0.00
【請求項7】
前記合成樹脂フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする請求の範囲第1項〜第6項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法を用いて製造された合成樹脂フィルム。

【国際公開番号】WO2005/082594
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510492(P2006−510492)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003240
【国際出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】