説明

合成樹脂溶解用溶剤組成物

【課題】合成樹脂を含む複合材料又は合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を溶解・剥離するための溶剤組成物を提供する。
【解決手段】溶剤組成物が、(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ−ビチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量%〜99.5質量%、及び(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量%〜30質量%からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂を含む複合材料又は合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を溶解・剥離するための溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維と合成樹脂の複合材料であるCFRPは、強くて軽いといった利点から、金属に代わる自動車や航空機の車体軽量化による燃費向上のために用いる新規材料として大いに注目されている。CFRP中の合成樹脂は、一般的にはエポキシ樹脂が採用されている。しかしながら、CFRPのリサイクルは、炭素繊維と合成樹脂との分離技術等に高い技術が要求されること等からリサイクル技術が確立されておらず、埋め立て処理されるのが現状である。従って、更なるCFRPの需要拡大及びCFRPの環境負荷低減を図るためには、リサイクル技術の確立は必要不可欠な課題である。
【0003】
エポキシ樹脂とは、高分子内に残存させたエポキシ基で架橋ネットワーク化させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂の総称である。架橋ネットワーク化前のプレポリマーと硬化剤を混合して、熱硬化処理を行うと製品として完成する。耐水性・耐薬品性・電気絶縁性が高いことから電子回路の基板やICパッケージの封入剤として汎用されるほか接着剤・塗料・積層剤としても利用されている。エポキシ樹脂の多くは2液、即ちプレポリマーと硬化剤を混合し熱処理を加えることで完成するが、このプレポリマーと硬化剤の種類と組み合わせによって物性が多様化するためエポキシ樹脂の溶解は、より困難を極めていた。このため製品に不良が発生した場合、製品からエポキシ樹脂のみを分離して再利用することができなかった。
【0004】
レンズの外周部には、レンズ端面の乱反射光によるゴーストやフレアと言った現象を抑えるために墨が塗られている。かつては実際に和墨が塗られていたが、現在はキャノン化成株式会社製GTシリーズを代表とするレンズ内面反射防止エポキシ系塗料等が多く採用されている。和墨であればある程度水で洗浄することが可能である。しかしながら焼付型塗料の場合、墨除去に非常に困難を要する。この墨を除去することができればレンズ製造工程で発生する不良品の再利用に大いに役立つ。
【0005】
特許文献1には、プラスチックレンズ成形ガラス型の表面に付着した未反応モノマー、オリゴマー、ポリマー樹脂を洗浄するための洗浄剤組成物が記載されている。未反応モノマー、オリゴマー、ポリマー樹脂とは言い換えると未重合樹脂のことであり、その洗浄は比較的容易である。また、特許文献1に記載の組成物は、水を20重量%以上含むため洗浄能力が乏しく、さらに沸点が低いため溶剤活性能力を上げるための100℃以上の加熱試験ができないという問題がある。
【0006】
特許文献2には、アルカリ金属化合物、特にアルカリ金属リン酸塩と、有機溶媒、特にモノアルコール類とを含むことを特徴とする炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の処理液及びそれを用いた分離方法が記載されている。しかし、特許文献2に記載の組成は、触媒であるアルカリ金属リン酸塩がモノアルコール類にほとんど溶解しないため不均一系である。このため有機溶媒と触媒を混合して用時調製する必要があり、取り扱いにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−124696号公報
【特許文献2】特開2005−255899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような事情から、溶解・剥離除去が困難であるエポキシ樹脂等の合成樹脂の複合材料又は合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を効果的に溶解・剥離するための溶剤組成物が望まれたていた。更に、合成樹脂を加熱溶解・剥離させる際に、100℃以上の加熱条件下でも容易に適用することができる、高沸点を有し均一系である溶剤組成物が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量%〜99.5質量%、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量%〜30質量%からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物が、特許文献1及び2に開示された組成物と比較して、CFRPマトリックスとして使用されるエポキシ樹脂、金属上のエポキシ樹脂やレンズ墨塗りに使用されるエポキシ樹脂の溶解・剥離に対して、優れた溶解・剥離効果を有することを見出し本発明に至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明の合成樹脂溶剤組成物は、従来の合成樹脂溶解剤よりも高い溶解・剥離効果を有する。本発明は一般的に洗浄困難とされる重合済みの樹脂を洗浄することができる強力な洗浄用樹脂溶解剤であり、例えば、従来の合成樹脂溶解剤では、溶解・剥離が困難であったCFRPマトリックスとして使用されるエポキシ樹脂、金属上のエポキシ樹脂やレンズ墨塗りに使用されるエポキシ樹脂の溶解・剥離にも効果があった。本発明の合成樹脂溶解溶剤組成物は、触媒として塩基性有機化合物を採用することにより、塩基性無機化合物を溶解させるための水溶媒では達成できなかった100℃以上の加熱試験に耐え、かつ均一系の溶液であるため取り扱いが容易である。本発明の合成樹脂溶剤組成物は、安定な単一かつ均一な液相系であるが、コロイドのような分散系ではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量%〜99.5質量%、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量%〜30質量%からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0012】
本発明は、
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量部〜99.5質量部、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部
の合計100質量部に対して、
(c)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択されるエタノールアミン類5質量部〜45質量部
からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0013】
本発明は、
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70.0質量部〜99.5質量部、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部
の合計100質量部に対して、
(d)ノニオン性界面活性剤5質量部〜25質量部
からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0014】
本発明は、
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量部〜99.5質量部、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部
の合計100質量部に対して、
(c)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択される、エタノールアミン類5質量部〜45質量部、及び
(d)ノニオン性界面活性剤5質量部〜25質量部
からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0015】
本発明は、(a)の有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン及びγ-ブチロラクトンからなる群より選択される、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0016】
本発明は、(b)塩基性有機化合物が、ジアザビシクロウンデセン及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0017】
本発明は、(c)のエタノールアミン類が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択される、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0018】
本発明は、(c)のエタノールアミン類が、モノエタノールアミンである、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0019】
本発明は、(d)のノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリエチレングリコールオレート、ラウリルアルコールアルコキシレート、及びオレイルアルコールエトキシレート前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0020】
本発明は、(d)のノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンモノオレートである、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0021】
本発明は、樹脂がCFRPからの樹脂である、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0022】
本発明は、金属上の樹脂の洗浄用である、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0023】
本発明は、レンズ上の墨の除去用である、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0024】
本発明は、樹脂が、エポキシ樹脂である、前記の樹脂溶解用溶剤組成物に関する。
【0025】
本発明は、合成樹脂を含む複合材料又は合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を溶解・剥離するための方法であって、前記の溶剤組成物を複合材料または固体基材と接触させる工程を含むことを特徴とする方法に関する。
【0026】
本発明の溶剤組成物は、(a)1種以上の有機溶媒70質量%〜99.5質量%、好ましくは、80質量%〜99質量%、さらに好ましくは、90質量%〜98質量%を含む。
【0027】
本発明に用いる(a)有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールが挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン及びγ-ブチロラクトンが特に好ましい。これらは単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。
【0028】
本発明の溶剤組成物は、(b)1種以上の塩基性有機化合物0.5質量%〜30質量%、好ましくは、1質量%〜20質量%、さらに好ましくは、2質量%〜10質量%を含む。
【0029】
本発明に用いる(b)塩基性有機化合物としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンが挙げられ、ジアザビシクロウンデセン及びジアザビシクロノネンが特に好ましい。これらは単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。
【0030】
本発明の溶剤組成物は、
(a)1種以上の有機溶媒70質量部〜99.5質量部、及び
(b)1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部の合計100質量部に対して、
(c)エタノールアミン類5質量部〜45質量部、好ましくは、5質量部〜30質量部、さらに好ましくは、10質量部〜20質量部を含む。
【0031】
本発明に用いる(c)エタノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンが挙げられ、モノエタノールアミンが特に好ましい。これらは単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。エタノールアミン類は、処理速度を向上させる。
【0032】
本発明の溶剤組成物は、
(a)1種以上の有機溶媒70質量部〜99.5質量部、及び
(b)1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部の合計100質量部に対して、
(d)ノニオン性界面活性剤5質量部〜25質量部、好ましくは、5質量部〜15質量部、さらに好ましくは、5質量部〜10質量部を含む。
【0033】
本発明に用いる(d)ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノオレート、ラウリルアルコールアルコキシレート、及びオレイルアルコールエトキシレートが挙げられ、ポリオキシエチレンモノオレートが特に好ましい。これらは単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。ノニオン性界面活性剤は、表面張力を減少させて、処理速度を向上させる。
【0034】
本発明において、固体基材上付着した合成樹脂には、硬化性樹脂のほかに、硬化性樹脂に配合される添加剤を含む硬化性樹脂が含まれる。
【0035】
本発明において、合成樹脂としては、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0036】
また、合成樹脂に配合される添加剤としては、合成樹脂に通常用いられている添加剤であれば、特に限定されるものではなく、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤が挙げられる。
【0037】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多塩基酸のポリグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びヒダントイン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等の添加剤が挙げられる。
【0038】
エポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として通常使用されているものであればいずれであってもよく、例えばフェノールノボラック、ビフェノール型ノボラック、及びビスフェノールA型ノボラック等のノボラック、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン、及びヘキサメチレンテトラミン等のアミン類、並びにポリアミドアミン等のアミド樹脂等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば第三級アミン類(三井化学ファイン株式会社:ジェファーミンT−403など)又は有機リン化合物が挙げられる。
【0039】
本発明において、固体基材上に付着した合成樹脂の硬化物には、合成樹脂の硬化反応が促進することにより硬化する硬化物のほかに、反応希釈剤等の合成樹脂に配合された添加剤が揮発し、粘度が上昇するによって固化した固化物も含まれる。
【0040】
本発明の溶剤組成物を用いて処理される固体基材上として、合成樹脂を取り扱うために用いられる装置、例えば、容器、混合機、成形機、貯蔵タンク、加工機、混合槽、注型機、注入機、コーティング装置及び封入機;並びに、合成樹脂の加工物、例えばエポキシ樹脂の加工物(例えば電子部品、配管部品及び自動車部品など)が挙げられる。
【0041】
合成樹脂を取り扱うために用いられる装置には、樹脂成分の充填及び混合、硬化成型などの樹脂の加工工程、及び装置の処理を繰り返して使用されるものが含まれる。また、注型器及び容器等は、一般に、原料成分の注入、硬化成型及び処理を繰り返して使用される。
【0042】
合成樹脂の加工物、例えばエポキシ樹脂の加工物は、加工物の成型の際に用いられたエポキシ樹脂以外の素材を再利用する目的で用いられる物が含まれる。具体的には、これらエポキシ樹脂の加工物に不良が発生した場合、エポキシ樹脂以外の素材を、エポキシ樹脂の硬化物から分離して再利用する。
【0043】
このような素材として、例えば、ステンレス等の各種金属部品がある。すなわち、自動車や家庭電化製品、事務用スチール家具等の塗装材料としてエポキシ樹脂塗料が用いられる。
【0044】
本発明の溶剤組成物は、合成樹脂を含む複合材料又は合成樹脂が付着した固体基材上から、該合成樹脂又は付着した合成樹脂を、溶解除去又は剥離除去して、固体基材上を処理するために用いられる。
【0045】
本発明の溶剤組成物は、
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量%〜99.5質量%、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量%〜30質量%からなり、より好ましくは、
(a)1種以上の有機溶媒80質量%〜99質量%、及び
(b)1種以上の塩基性有機化合物1質量%〜20質量%からなり、更に好ましくは、
(a)1種以上の有機溶媒90質量%〜98質量%、及び
(b)1種以上の塩基性有機化合物2質量%〜10質量%からなることを特徴とする。
このような範囲であれば、合成樹脂に対する溶解・剥離力も高く、なおかつ、溶剤組成物は均一であり、しいては、固体基材上に対する浸透力が高くなり、処理時間が短くなる点で良好である。
【0046】
本発明の溶剤組成物は、
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量部〜99.5質量部、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部
の合計100質量部に対して、
(c)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択されるエタノールアミン類5質量部〜45質量部、又は
(d)ノニオン性界面活性剤5質量部〜25質量部
好ましくは、
(c)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択されるエタノールアミン類5質量部〜45質量部、及び
(d)ノニオン性界面活性剤5質量部〜25質量部
からなることを特徴とする。
このような範囲であれば、合成樹脂に対する溶解・剥離力も高く、なおかつ、溶剤組成物は均一であり、しいては、固体基材上に対する浸透力が高くなり、処理時間が短くなる点で良好である。
【0047】
本発明の樹脂溶剤組成物は、合成樹脂を含む複合材料、例えばCFRPからのエポキシ樹脂を溶解・剥離に用いることができる。すなわち、エポキシバインダーCFRPから、エポキシ樹脂と炭素繊維を乖離するための乖離剤として用いることができる。CFRPからの樹脂を溶解・剥離に用いる場合には、好ましくは、
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量%〜99.5質量%、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量%〜30質量%からなる溶剤組成物;又は
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量部〜99.5質量部、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部
の合計100質量部に対して、
(c)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択されるエタノールアミン類5質量部〜45質量部、及び
(d)ノニオン性界面活性剤5質量部〜25質量部
からなる溶剤組成物である。
【0048】
CFRPの炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が挙げられる。
【0049】
CFRPからの樹脂としては、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0050】
本発明の溶剤組成物は、レンズ上の墨の除去に用いることができる。すなわち、墨塗りのレンズから、墨とレンズを乖離するためのするための乖離剤として用いることができる。
【0051】
レンズとしては、ガラスレンズの複合レンズが挙げられる。好ましくはタブレット型、トリプレット型レンズが挙げられる。
【0052】
レンズ上の塗料としては、エポキシ樹脂系の塗料が挙げられる。
【0053】
本発明の溶剤組成物は、原料成分である有機溶媒及び塩基性有機化合物を混合することにより製造することができる。本発明の溶剤組成物は、更に、エタノールアミン類及び/又はノニオン性界面活性剤を加えてもよい。本発明の溶剤組成物に用いる原料成分は、市販のものを用いることができる。
【0054】
本発明において、合成樹脂を含む複合材料又は合成樹脂が付着した固体基材を処理する方法は、本発明の溶剤組成物を、前記固体基材と接触させる工程を含む。本発明において、本発明の溶剤組成物を前記固体基材に接触させる工程において、前記固体基材上に付着した合成樹脂は、前記固体基材から溶解除去されるか、又は剥離除去される。本発明において、合成樹脂が付着した前記固体基材上を処理するための方法は、本発明の溶剤組成物を前記固体基材に接触させる工程において、合成樹脂が前記固体基材上から剥離することが好ましい。
【0055】
本発明の溶剤組成物と、前記合成樹脂が付着した固体基材とを接触させるための方法としては、特に制限はなく、本発明の溶剤組成物への前記固体基材の浸漬、溶剤組成物を含浸したウエスまたはスポンジによる前記固体基材上の拭き取りが好ましく、浸漬による方法がより好ましい。
【0056】
本発明において、本発明の溶剤組成物及び固体基材の接触時間に相当する処理時間は、固体基材に付着した合成樹脂を溶解・剥離除去できる時間であれば特に制限されない。
【0057】
本発明において処理温度は、20〜190℃である。処理温度が高温であるほど溶剤活性は高まり樹脂の溶解・剥離効果を上昇させることができる。例えばCFRPのバインダーとして用いられるような溶解が非常に困難な樹脂の場合、120℃〜190℃で処理することにより溶解が可能になる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0059】
実施例1〜7及び比較例1〜4
【0060】
実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物を、表1で示される組成で各成分を混合することにより調製した。
【0061】
試験例1 エポキシバインダーCFRPの炭素繊維乖離試験
【0062】
PAN系CFRP織物タイプの板材(東邦テナックス株式会社:型番QFU135−7U61A)を、15mm角にカットした(CFRP試験片)。ガラスビーカー(100ml)に、表1の実施例1〜3及び比較例1〜3の溶剤組成物を40ml及びCFRP試験片を入れた。そして、ガラスビーカーを実験用小型ホットプレート(製造元:アズワン株式会社、名称:ECONOMY HOT PLATE,型番:EHP-170)上において、180℃で8時間加熱放置した。その後、CFRP試験片を取り出してエポキシ樹脂が剥離除去できているかを目視により判定した。
【0063】
試験例1の結果を表1に示す。
【0064】
【表1】


○:CFRP試験片が、積層構造を乖離させ、さらに織物小片にまで乖離した。
×:CFRP試験片が、積層構造までしか乖離しなかった、または変化が無かった。
【0065】
本発明の好ましい含有量の溶剤組成物である実施例1〜7の溶剤組成物を用いた場合は、エポキシバインダーCFPRからのエポキシ樹脂、すなわち合成樹脂を含む複合材料からの合成樹脂に対して優れた溶解・剥離効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、広範囲な合成樹脂を含む複合材料又は合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を良好に溶解・剥離することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量%〜99.5質量%、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量%〜30質量%からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物。
【請求項2】
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量部〜99.5質量部、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部
の合計100質量部に対して、
(c)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択されるエタノールアミン類5質量部〜45質量部
からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物。
【請求項3】
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70.0質量部〜99.5質量部、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部
の合計100質量部に対して、
(d)ノニオン性界面活性剤5質量部〜25質量部
からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物。
【請求項4】
(a)N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒70質量部〜99.5質量部、及び
(b)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される1種以上の塩基性有機化合物0.5質量部〜30質量部
の合計100質量部に対して、
(c)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択される、エタノールアミン類5質量部〜45質量部、及び
(d)ノニオン性界面活性剤5質量部〜25質量部
からなることを特徴とする樹脂溶解用溶剤組成物。
【請求項5】
(a)の有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン及びγ-ブチロラクトンからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂溶解用溶剤組成物。
【請求項6】
(b)塩基性有機化合物が、ジアザビシクロウンデセン及びジアザビシクロノネンからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂溶解用溶剤組成物。
【請求項7】
樹脂がCFRPからの樹脂である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂溶解用溶剤組成物。
【請求項8】
樹脂が、エポキシ樹脂である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂溶解用溶剤組成物。
【請求項9】
合成樹脂を含む複合材料又は合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を溶解・剥離するための方法であって、請求項1〜8のいずれか1項記載の溶剤組成物を複合材料または固体基材と接触させる工程を含むことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2013−91727(P2013−91727A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234853(P2011−234853)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【特許番号】特許第5192581号(P5192581)
【特許公報発行日】平成25年5月8日(2013.5.8)
【出願人】(597115750)株式会社カネコ化学 (12)
【Fターム(参考)】