合成樹脂管
【課題】
重量が重くなることなく、樹脂素材が多く必要となって製品のコストアップにつながることなく、それでいて、方形筒部の角隅部の強度、殊に両隅部分の強度が局部的に弱くなることなく、所要の耐圧変形強度と、損傷し難い強度を備え、製造上も生産能率の低下を招くことなく、効率よく製造することができる合成樹脂管体の提供。
【解決手段】
断面略方形の筒部と断面略円形の筒部とが管軸方向において交互に配設されている管壁を備えた管体であって、方形筒部における各角隅部が、角頂部の方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている構成としたもの。また、更に、方形筒部における各角隅部が断面円弧状に形成されている構成としたもの。
重量が重くなることなく、樹脂素材が多く必要となって製品のコストアップにつながることなく、それでいて、方形筒部の角隅部の強度、殊に両隅部分の強度が局部的に弱くなることなく、所要の耐圧変形強度と、損傷し難い強度を備え、製造上も生産能率の低下を招くことなく、効率よく製造することができる合成樹脂管体の提供。
【解決手段】
断面略方形の筒部と断面略円形の筒部とが管軸方向において交互に配設されている管壁を備えた管体であって、方形筒部における各角隅部が、角頂部の方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている構成としたもの。また、更に、方形筒部における各角隅部が断面円弧状に形成されている構成としたもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設したり地上の建屋内外に配管したりして、管内に電線や電話線・光ケーブル等のケーブルを挿通して保護管としたり、排水管や暗渠管等として使用するのに適した合成樹脂管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、管壁の形状を環状または螺旋状の凹凸波形状に形成した合成樹脂製波形管は広く一般に知られている。また、このような合成樹脂管は、既にケーブル保護管や排水管等として既に広く使用されている。
【0003】
このような従来の管体は、管全体の形状が円形の凹凸波形であるため、配管時に安定性が悪く、平行に隣接配管させることが難しく、地中配管の場合には、それぞれの管体間に土砂が入り込んで直行性が乱され易く、複数段に積層配管するにも安定性が悪く、電線等のケーブル挿通作業時には抵抗が大きくなり易く、また流体の抵抗も大きくなり易いという課題を有しているものであった。
【0004】
そこで、このような従来の円形凹凸状の波形管が有していた課題の解決を可能とする管体構造として、別紙図19乃至図21に示したように、断面形状が略方形の筒部2と断面形状が略円形の筒部3とを管体の軸線方向において交互に配設してある構造とした管体P1を開発した(特許文献1参照)。
【0005】
このようにした管体は、断面形状を略方形とした筒部2が軸線方向において順次配設されているので、配管時に安定性がよく、隣接させて平行に配管させ易く、地中配管の場合でも管体間に土砂が入り込んで直行性が乱されることが少なく、安定よく複数段に積層配管させることも容易にでき、電線等のケーブル挿通作業時には抵抗少なく作業を行うことができ、また流体移動の抵抗も少なくできるという利点がある。
【0006】
しかしながら、この管体を量産化すべく、種々の生産手段について種々の実験を試みたところ、このような構造とした管体P1は、別紙図20に示したように、前記断面円形とした筒部3の肉厚を均等肉厚に形成したものであるため、前記方形筒部2における各角隅部2a…の肉厚が、各辺の中央部分2b…の肉厚Cに比して薄肉化すること、図21において拡大して示したように、即ち、図14におけるF−F線で示した断面において、各角隅部2a…における軸線方向の中間部分Aに比して両隅部分B,Bが極端に薄肉化し、この薄肉化した部分が他の部分に比して極端に耐圧変形性に劣り破損し易くなることを究明するに至った。
【0007】
そこで、この課題を確実に解決し得る手段として、ここにいう耐圧変形性に弱く破損の原因になり易い方形筒部2の各角隅部2a…、殊に、角隅部2aの軸線方向両隅部分B,Bが、局部的に弱くなることなく所要の耐圧変形強度を有する程度に強化させてある管体を開発し、既に提案している。
【0008】
即ち、その技術解決手段として、本出願人は、別紙図22乃至図24に示したように、該管体を形成する樹脂チューブ(パリソン)Tを、周方向の4カ所において肉厚T1を他の部分の肉厚T2よりも部分的に厚く形成してある非均一肉厚の樹脂チューブ(図16)とし、この周方向4カ所の厚い肉厚T1…部分をして、管体P2における前記方形筒部2の各角隅部2a…を形成するようにし、各角隅部2a…を、殊に、角隅部2aにおける軸線方向両隅部分B,Bを強化させてある管体P2を開発した(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−219333号公報
【特許文献2】特開平10−325490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この管体P2は、前者の方形筒部2の角隅部2aが耐圧変形性に乏しく破損の原因になり易いという課題を有する特許文献1の管体P1に比して、方形筒部2の角隅部2aの強度、殊に両隅部分B,Bの強度を、局部的に弱くなることなく所要の耐圧変形強度を備えていて、損傷し難い程度に強化された管体である点で、実用性に優れ、産業上において好ましい管体である。
【0010】
しかしこの管体P2の場合は、製造に当たって、前記のように、部分的ながら肉厚を厚くした箇所を形成した非均一肉厚の樹脂チューブTを使用しなければならないため、前者の特許文献1に記載の管体P1に比して、管体の重量が重くなり、管形成のための樹脂素材を多く必要とし、僅かながらでも製品のコストアップにつながるという看過し得ない新たな課題を有するものとなっていた。
【0011】
そこで、本発明は、このように樹脂素材を多く必要とすることなく、前者の特許文献1に記載の管体に比して、重量が重くなるようなことがなく、製品のコストアップにつながるような管形成樹脂素材も多く必要とすることなく、それでいて、後者の特許文献2に記載の管体がもつところの、方形筒部の角隅部の強度、殊に両隅部分の強度が局部的に弱くなることなく所要の耐圧変形強度と、損傷し難い程度の強度を備えた管体を得ることを目的とし、しかも、製造上においても生産能率の低下を招くことなく、前記特許文献1・2に記載の管体と同様に効率よく製造することができる合成樹脂管体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために講じた本発明にいう合成樹脂管の第1の構成は、断面略方形の筒部2と断面略円形の筒部3とが管軸方向において交互に配設されている管壁1を管体の少なくとも一部に備えた管体Pであって、方形筒部2における各角隅部2aが、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている構成としたものである。
【0013】
また、第2の構成は、断面略方形の筒部2と断面略円形の筒部3とが管軸方向において交互に配設されている管壁1を備えた管体Pであって、方形筒部2における各角隅部2aが断面円弧状に形成され、かつ、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている構成としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にいうところの請求項1に記載の発明は、管壁の形状を断面略方形の筒部と断面略円形の筒部とが管軸方向において交互に配設されている合成樹脂管であって、方形筒部における各角隅部の構造を、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されているものとしてあることにより、断面略方形筒部の各角頂部が管軸方向に向かって大きく膨張することがないので、該方形筒部の各角頂部における肉薄化現象を生ずることを防止でき、殊に、管軸方向の両隅部分B,Bの強度が局部的に弱くなって所要の耐圧変形強度を保持させることができず、外力によって損傷し易いという欠陥を確実に補償でき、該両隅部分B,Bの強度が確実に強化された管体を周方向における肉厚を均一にした樹脂チューブによって得ることができるという顕著な効果が得られるに至った。
【0015】
したがって、周方向の4カ所において肉厚を部分的に厚肉とした非均一肉厚の樹脂チューブを使用しなければならないという必要性がなく、そのため、管体の重量が重くなったり、管形成樹脂素材を多く必要とし製品のコストアップにつながるという課題をも同時に解決し得るという効果をも期待し得るに至ったのである。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、方形筒部における各角隅部の形状が、断面円弧状に形成されているものとし、更に、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成したものとしてあるので、方形筒部の各角頂部の強度、殊に管軸方向両隅部分B,Bの強度が、より一層確実に強化された管体を得ることができるという効果を期待できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この本発明にいう管体を形成する合成樹脂素材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が耐候性と耐久性に優れ、入手の容易性もあり、人体に無害である点において好ましい。しかしながら、樹脂素材を特定することの利点はないので、例えば、ポリ塩化ビニールやその他任意の合成樹脂素材を選択使用してもよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0018】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1乃至図6は、本発明の第1実施例の管体を示した図である。図1及び図2は管体Pの外観形状を示した図、図3及び図4は断面略方形筒部と断面略円形筒部との切断端面側の形状を示した正面図、図5は図2のD−D線に沿った円形筒部の断面と方形筒部の一部を破断した拡大図、図6は図3のE−E線に沿って管体の長手方向に切断した断面図である。
【0019】
該実施例に示した管体Pは、図1に見られるように、管壁1の外面形状を、管軸方向において断面方形筒部2と断面円形筒部3とを交互に配置してある状態に形成してある合成樹脂管である。而して、この管体Pは、図1,2及び図6にみられるように、方形筒部2における四つの各辺2bを管軸方向において幅のある平坦面に形成し、四つの各角隅部2aの形状を、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が順次狭くなる形状に形成したものである。
【0020】
このようにすることによって、図5及び図6の下半部に断面形状を示したように、角頂部tにおいても肉厚が局部的に極端に薄くなることなく、円形筒部3における肉厚wよりも少し薄肉となる程度であって、膨出基部aの肉厚と変わらない程度の肉厚を維持しているようにしたものである。
【0021】
このような管体Pを形成する手段の一つとして、一般に知られたブロー成型手段による成形方法がある。このブロー成型法による場合は、図面は省略したが、樹脂押出装置における樹脂押出口から、全周面において均等な肉厚とした樹脂チューブを押出し、この樹脂チューブをブロー成形金型内に導入し、内圧をかけて周方向に膨張させることにより金型内面に当て付けて成形する成型方法を採用して成形することができる。
【0022】
図7乃至図9は、第2実施例の管体を示したものであって、該実施例に示した管体Pは、方形筒部2における各角隅部2aの角頂部tを斜めに切断してある形状としたものである。このようにすることによって、仮想角頂部tの最頂端まで膨出させることなく、局部的な薄肉化現象の発生を予防することができるようにしたものであって、本発明にいうところの断面方形筒部2における各角隅部2aを角頂部tに至るほど管軸方向の幅を狭くすることによる肉厚の均一化をより効果のあるものとした実施例を示したものである。その他の点については前記第1実施例に準じた構造としたものである。
【0023】
図10乃至図12は、第3実施例について示したものであって、該実施例に示した管体Pは、方形筒部2における各角隅部2aを角頂部tを断面円弧状となるように、該実施例図のものにあっては、図12にみられるように、円形筒部3と同心円状曲線S1に沿って、その内側の同じく同心円状曲線S2の部分から角頂部t側に向って管軸方向の幅が狭くなるように、断面円弧状に形成した構成としたものである。その他の点は、前記第1実施例に示した管体Pと同様の構造としたものである。
【0024】
別紙図13乃至図18は、第4、第5、第6実施例について管体Pの外観形状と側面形状とを示したものである。而して、図13及び図14に示した第4実施例の管体Pは、前記第1実施例に示した管体Pにおける各方形筒部2の各角隅部2aに至る管軸方向への幅狭形状を、円形筒部3から次第に各角隅部2aの方向に向かって側面視で傾斜している形状としたものである。
【0025】
即ち、前記第1実施例の管体Pでは、円形筒部3が短円筒の状態で存在し、その管軸方向両端から方形筒部2を形成する管軸方向の側壁が一旦鉛直方向に立ち上がっていて、該鉛直方向壁が各角隅部2aにおいて管軸方向に幅狭となる形状に形成したものであるが、該第4実施例の管体Pは、各方形筒部2における各角隅部2aに対向する部分の円形筒部3が、前記の鉛直壁を介することなく、円形筒部3から直ちに各角隅部2aの方向に向かって適宜の角度で管軸方向に幅狭となる形状としたものである。その他の点は、前記第1実施例の管体Pと同様の構造としたものである。
【0026】
図15及び図16に示した第5実施例の管体Pは、前記図8乃至図10に示した第2実施例の管体Pと、また、図17及び図18に示した第6実施例の管体Pは、前記図11乃至図13に示した第3実施例の管体Pと対比したとき、それぞれ前記第4実施例において説明した円形筒部3の形状と同様に、各方形筒部2における各角隅部2aと対向する部分に存在する円形筒部3が鉛直壁を介することなく、方形筒部2の角隅部2a方向に向かって管軸方向幅狭とする構造に形成したものである。その他の点は、それぞれ第2実施例、第3実施例の管体Pと同様に形成したものである。
【0027】
このような構造とすることによって、本発明にいうところの合成樹脂管体は、方形筒部2の各角隅部2aの薄肉化と、殊にその管軸方向における両隅部分の局部的な薄肉化と、それに伴う脆弱化の発生を効率よく確実に防止できるようにしたものである。ここにいう角頂部tの曲線S1は、前記のように円形筒部3と同心円の曲線とする必要はない。しかしながら、同心円曲線となるようにしておくと、該曲線S1の全曲線部分の円形筒部3からの膨出率を同じものとすることができる点で角頂部tの肉厚を均一なものとすることができる。なお、ここにいう曲線S1は、円形筒部3との同心円曲線に限られるものではなく、直線上に形成することもできる。
【0028】
本発明にいう管体Pを形成する合成樹脂素材には、合成ゴム素材を含むものとする。また、製造する管体の大きさや使用場所等によって管体の硬さは変更する必要があるので、使用する樹脂素材も任意の硬度のものを選定使用すればよい。しかしながら、地中に埋設して使用する管の場合には管壁1に受ける外圧を考慮して十分な耐圧偏平強度をもつ肉厚の管体としておくことが必要である。上記の各実施例に示した管体Pは、断面略方形の筒部2と断面略円形の筒部3とが、管軸方向において各1個づつが交互に、かつ、管全体に亘って形成されているものとして示したが、これらの筒部2、3は各1個づつが交互に配置されているものである必要はなく、また、管全体ではなく管体の一部に形成されているものであってもよい。
【0029】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備え、かつ、本発明にいう目的を達成し、前記の効果を有する範囲内において適宜改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にいう管体は、断面略方形とした方形筒部を管軸方向に配してあるので、配管に際して姿勢の安定化を図ることができるものでありながら、局部的な脆弱部がなく、しかも、管体の重量が重くなることなく、使用素材を多く必要とすることがないので、市場において大いに愛用され使用されると期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施例の管体を示す斜視図。
【図2】同管の側面図。
【図3】同管の右側正面図。
【図4】同管の左側正面図。
【図5】図2のD−D線に沿った拡大断面図で、方形筒部の一部も破断した断面図。
【図6】図3のE−E線に沿った断面図。
【図7】第2実施例の管体を示す斜視図。
【図8】同管体の側面図。
【図9】同管体の左側正面図。
【図10】第3実施例の管体を示す斜視図。
【図11】同管体の側面図。
【図12】同管体の左側正面図。
【図13】第4実施例の管体を示す斜視図。
【図14】同管体の側面図。
【図15】第5実施例の管体を示す斜視図。
【図16】同管体の側面図。
【図17】第6実施例の管体を示す斜視図。
【図18】同管体の側面図。
【図19】従来例の管体を示す斜視図。
【図20】同管体の左側拡大正面図で、方形筒部の一部も破断した断面図。
【図21】同管体の角隅部を管軸方向図14のF−F線に沿って切断した拡大断面図。
【図22】比較例を示す管体を形成するチューブの斜視図。
【図23】同管体の図5相当部分の拡大断面図。
【図24】同管体の図6相当部分の断面図。
【符号の説明】
【0032】
1 管壁
2 方形筒部
2a 角隅部
2b 辺部分
t 角頂部
3 円形筒部
w 円形筒部の肉厚
P 管体
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設したり地上の建屋内外に配管したりして、管内に電線や電話線・光ケーブル等のケーブルを挿通して保護管としたり、排水管や暗渠管等として使用するのに適した合成樹脂管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、管壁の形状を環状または螺旋状の凹凸波形状に形成した合成樹脂製波形管は広く一般に知られている。また、このような合成樹脂管は、既にケーブル保護管や排水管等として既に広く使用されている。
【0003】
このような従来の管体は、管全体の形状が円形の凹凸波形であるため、配管時に安定性が悪く、平行に隣接配管させることが難しく、地中配管の場合には、それぞれの管体間に土砂が入り込んで直行性が乱され易く、複数段に積層配管するにも安定性が悪く、電線等のケーブル挿通作業時には抵抗が大きくなり易く、また流体の抵抗も大きくなり易いという課題を有しているものであった。
【0004】
そこで、このような従来の円形凹凸状の波形管が有していた課題の解決を可能とする管体構造として、別紙図19乃至図21に示したように、断面形状が略方形の筒部2と断面形状が略円形の筒部3とを管体の軸線方向において交互に配設してある構造とした管体P1を開発した(特許文献1参照)。
【0005】
このようにした管体は、断面形状を略方形とした筒部2が軸線方向において順次配設されているので、配管時に安定性がよく、隣接させて平行に配管させ易く、地中配管の場合でも管体間に土砂が入り込んで直行性が乱されることが少なく、安定よく複数段に積層配管させることも容易にでき、電線等のケーブル挿通作業時には抵抗少なく作業を行うことができ、また流体移動の抵抗も少なくできるという利点がある。
【0006】
しかしながら、この管体を量産化すべく、種々の生産手段について種々の実験を試みたところ、このような構造とした管体P1は、別紙図20に示したように、前記断面円形とした筒部3の肉厚を均等肉厚に形成したものであるため、前記方形筒部2における各角隅部2a…の肉厚が、各辺の中央部分2b…の肉厚Cに比して薄肉化すること、図21において拡大して示したように、即ち、図14におけるF−F線で示した断面において、各角隅部2a…における軸線方向の中間部分Aに比して両隅部分B,Bが極端に薄肉化し、この薄肉化した部分が他の部分に比して極端に耐圧変形性に劣り破損し易くなることを究明するに至った。
【0007】
そこで、この課題を確実に解決し得る手段として、ここにいう耐圧変形性に弱く破損の原因になり易い方形筒部2の各角隅部2a…、殊に、角隅部2aの軸線方向両隅部分B,Bが、局部的に弱くなることなく所要の耐圧変形強度を有する程度に強化させてある管体を開発し、既に提案している。
【0008】
即ち、その技術解決手段として、本出願人は、別紙図22乃至図24に示したように、該管体を形成する樹脂チューブ(パリソン)Tを、周方向の4カ所において肉厚T1を他の部分の肉厚T2よりも部分的に厚く形成してある非均一肉厚の樹脂チューブ(図16)とし、この周方向4カ所の厚い肉厚T1…部分をして、管体P2における前記方形筒部2の各角隅部2a…を形成するようにし、各角隅部2a…を、殊に、角隅部2aにおける軸線方向両隅部分B,Bを強化させてある管体P2を開発した(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−219333号公報
【特許文献2】特開平10−325490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この管体P2は、前者の方形筒部2の角隅部2aが耐圧変形性に乏しく破損の原因になり易いという課題を有する特許文献1の管体P1に比して、方形筒部2の角隅部2aの強度、殊に両隅部分B,Bの強度を、局部的に弱くなることなく所要の耐圧変形強度を備えていて、損傷し難い程度に強化された管体である点で、実用性に優れ、産業上において好ましい管体である。
【0010】
しかしこの管体P2の場合は、製造に当たって、前記のように、部分的ながら肉厚を厚くした箇所を形成した非均一肉厚の樹脂チューブTを使用しなければならないため、前者の特許文献1に記載の管体P1に比して、管体の重量が重くなり、管形成のための樹脂素材を多く必要とし、僅かながらでも製品のコストアップにつながるという看過し得ない新たな課題を有するものとなっていた。
【0011】
そこで、本発明は、このように樹脂素材を多く必要とすることなく、前者の特許文献1に記載の管体に比して、重量が重くなるようなことがなく、製品のコストアップにつながるような管形成樹脂素材も多く必要とすることなく、それでいて、後者の特許文献2に記載の管体がもつところの、方形筒部の角隅部の強度、殊に両隅部分の強度が局部的に弱くなることなく所要の耐圧変形強度と、損傷し難い程度の強度を備えた管体を得ることを目的とし、しかも、製造上においても生産能率の低下を招くことなく、前記特許文献1・2に記載の管体と同様に効率よく製造することができる合成樹脂管体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために講じた本発明にいう合成樹脂管の第1の構成は、断面略方形の筒部2と断面略円形の筒部3とが管軸方向において交互に配設されている管壁1を管体の少なくとも一部に備えた管体Pであって、方形筒部2における各角隅部2aが、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている構成としたものである。
【0013】
また、第2の構成は、断面略方形の筒部2と断面略円形の筒部3とが管軸方向において交互に配設されている管壁1を備えた管体Pであって、方形筒部2における各角隅部2aが断面円弧状に形成され、かつ、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている構成としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にいうところの請求項1に記載の発明は、管壁の形状を断面略方形の筒部と断面略円形の筒部とが管軸方向において交互に配設されている合成樹脂管であって、方形筒部における各角隅部の構造を、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されているものとしてあることにより、断面略方形筒部の各角頂部が管軸方向に向かって大きく膨張することがないので、該方形筒部の各角頂部における肉薄化現象を生ずることを防止でき、殊に、管軸方向の両隅部分B,Bの強度が局部的に弱くなって所要の耐圧変形強度を保持させることができず、外力によって損傷し易いという欠陥を確実に補償でき、該両隅部分B,Bの強度が確実に強化された管体を周方向における肉厚を均一にした樹脂チューブによって得ることができるという顕著な効果が得られるに至った。
【0015】
したがって、周方向の4カ所において肉厚を部分的に厚肉とした非均一肉厚の樹脂チューブを使用しなければならないという必要性がなく、そのため、管体の重量が重くなったり、管形成樹脂素材を多く必要とし製品のコストアップにつながるという課題をも同時に解決し得るという効果をも期待し得るに至ったのである。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、方形筒部における各角隅部の形状が、断面円弧状に形成されているものとし、更に、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成したものとしてあるので、方形筒部の各角頂部の強度、殊に管軸方向両隅部分B,Bの強度が、より一層確実に強化された管体を得ることができるという効果を期待できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この本発明にいう管体を形成する合成樹脂素材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が耐候性と耐久性に優れ、入手の容易性もあり、人体に無害である点において好ましい。しかしながら、樹脂素材を特定することの利点はないので、例えば、ポリ塩化ビニールやその他任意の合成樹脂素材を選択使用してもよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0018】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1乃至図6は、本発明の第1実施例の管体を示した図である。図1及び図2は管体Pの外観形状を示した図、図3及び図4は断面略方形筒部と断面略円形筒部との切断端面側の形状を示した正面図、図5は図2のD−D線に沿った円形筒部の断面と方形筒部の一部を破断した拡大図、図6は図3のE−E線に沿って管体の長手方向に切断した断面図である。
【0019】
該実施例に示した管体Pは、図1に見られるように、管壁1の外面形状を、管軸方向において断面方形筒部2と断面円形筒部3とを交互に配置してある状態に形成してある合成樹脂管である。而して、この管体Pは、図1,2及び図6にみられるように、方形筒部2における四つの各辺2bを管軸方向において幅のある平坦面に形成し、四つの各角隅部2aの形状を、角頂部tの方向に至るほど管軸方向における幅が順次狭くなる形状に形成したものである。
【0020】
このようにすることによって、図5及び図6の下半部に断面形状を示したように、角頂部tにおいても肉厚が局部的に極端に薄くなることなく、円形筒部3における肉厚wよりも少し薄肉となる程度であって、膨出基部aの肉厚と変わらない程度の肉厚を維持しているようにしたものである。
【0021】
このような管体Pを形成する手段の一つとして、一般に知られたブロー成型手段による成形方法がある。このブロー成型法による場合は、図面は省略したが、樹脂押出装置における樹脂押出口から、全周面において均等な肉厚とした樹脂チューブを押出し、この樹脂チューブをブロー成形金型内に導入し、内圧をかけて周方向に膨張させることにより金型内面に当て付けて成形する成型方法を採用して成形することができる。
【0022】
図7乃至図9は、第2実施例の管体を示したものであって、該実施例に示した管体Pは、方形筒部2における各角隅部2aの角頂部tを斜めに切断してある形状としたものである。このようにすることによって、仮想角頂部tの最頂端まで膨出させることなく、局部的な薄肉化現象の発生を予防することができるようにしたものであって、本発明にいうところの断面方形筒部2における各角隅部2aを角頂部tに至るほど管軸方向の幅を狭くすることによる肉厚の均一化をより効果のあるものとした実施例を示したものである。その他の点については前記第1実施例に準じた構造としたものである。
【0023】
図10乃至図12は、第3実施例について示したものであって、該実施例に示した管体Pは、方形筒部2における各角隅部2aを角頂部tを断面円弧状となるように、該実施例図のものにあっては、図12にみられるように、円形筒部3と同心円状曲線S1に沿って、その内側の同じく同心円状曲線S2の部分から角頂部t側に向って管軸方向の幅が狭くなるように、断面円弧状に形成した構成としたものである。その他の点は、前記第1実施例に示した管体Pと同様の構造としたものである。
【0024】
別紙図13乃至図18は、第4、第5、第6実施例について管体Pの外観形状と側面形状とを示したものである。而して、図13及び図14に示した第4実施例の管体Pは、前記第1実施例に示した管体Pにおける各方形筒部2の各角隅部2aに至る管軸方向への幅狭形状を、円形筒部3から次第に各角隅部2aの方向に向かって側面視で傾斜している形状としたものである。
【0025】
即ち、前記第1実施例の管体Pでは、円形筒部3が短円筒の状態で存在し、その管軸方向両端から方形筒部2を形成する管軸方向の側壁が一旦鉛直方向に立ち上がっていて、該鉛直方向壁が各角隅部2aにおいて管軸方向に幅狭となる形状に形成したものであるが、該第4実施例の管体Pは、各方形筒部2における各角隅部2aに対向する部分の円形筒部3が、前記の鉛直壁を介することなく、円形筒部3から直ちに各角隅部2aの方向に向かって適宜の角度で管軸方向に幅狭となる形状としたものである。その他の点は、前記第1実施例の管体Pと同様の構造としたものである。
【0026】
図15及び図16に示した第5実施例の管体Pは、前記図8乃至図10に示した第2実施例の管体Pと、また、図17及び図18に示した第6実施例の管体Pは、前記図11乃至図13に示した第3実施例の管体Pと対比したとき、それぞれ前記第4実施例において説明した円形筒部3の形状と同様に、各方形筒部2における各角隅部2aと対向する部分に存在する円形筒部3が鉛直壁を介することなく、方形筒部2の角隅部2a方向に向かって管軸方向幅狭とする構造に形成したものである。その他の点は、それぞれ第2実施例、第3実施例の管体Pと同様に形成したものである。
【0027】
このような構造とすることによって、本発明にいうところの合成樹脂管体は、方形筒部2の各角隅部2aの薄肉化と、殊にその管軸方向における両隅部分の局部的な薄肉化と、それに伴う脆弱化の発生を効率よく確実に防止できるようにしたものである。ここにいう角頂部tの曲線S1は、前記のように円形筒部3と同心円の曲線とする必要はない。しかしながら、同心円曲線となるようにしておくと、該曲線S1の全曲線部分の円形筒部3からの膨出率を同じものとすることができる点で角頂部tの肉厚を均一なものとすることができる。なお、ここにいう曲線S1は、円形筒部3との同心円曲線に限られるものではなく、直線上に形成することもできる。
【0028】
本発明にいう管体Pを形成する合成樹脂素材には、合成ゴム素材を含むものとする。また、製造する管体の大きさや使用場所等によって管体の硬さは変更する必要があるので、使用する樹脂素材も任意の硬度のものを選定使用すればよい。しかしながら、地中に埋設して使用する管の場合には管壁1に受ける外圧を考慮して十分な耐圧偏平強度をもつ肉厚の管体としておくことが必要である。上記の各実施例に示した管体Pは、断面略方形の筒部2と断面略円形の筒部3とが、管軸方向において各1個づつが交互に、かつ、管全体に亘って形成されているものとして示したが、これらの筒部2、3は各1個づつが交互に配置されているものである必要はなく、また、管全体ではなく管体の一部に形成されているものであってもよい。
【0029】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備え、かつ、本発明にいう目的を達成し、前記の効果を有する範囲内において適宜改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にいう管体は、断面略方形とした方形筒部を管軸方向に配してあるので、配管に際して姿勢の安定化を図ることができるものでありながら、局部的な脆弱部がなく、しかも、管体の重量が重くなることなく、使用素材を多く必要とすることがないので、市場において大いに愛用され使用されると期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施例の管体を示す斜視図。
【図2】同管の側面図。
【図3】同管の右側正面図。
【図4】同管の左側正面図。
【図5】図2のD−D線に沿った拡大断面図で、方形筒部の一部も破断した断面図。
【図6】図3のE−E線に沿った断面図。
【図7】第2実施例の管体を示す斜視図。
【図8】同管体の側面図。
【図9】同管体の左側正面図。
【図10】第3実施例の管体を示す斜視図。
【図11】同管体の側面図。
【図12】同管体の左側正面図。
【図13】第4実施例の管体を示す斜視図。
【図14】同管体の側面図。
【図15】第5実施例の管体を示す斜視図。
【図16】同管体の側面図。
【図17】第6実施例の管体を示す斜視図。
【図18】同管体の側面図。
【図19】従来例の管体を示す斜視図。
【図20】同管体の左側拡大正面図で、方形筒部の一部も破断した断面図。
【図21】同管体の角隅部を管軸方向図14のF−F線に沿って切断した拡大断面図。
【図22】比較例を示す管体を形成するチューブの斜視図。
【図23】同管体の図5相当部分の拡大断面図。
【図24】同管体の図6相当部分の断面図。
【符号の説明】
【0032】
1 管壁
2 方形筒部
2a 角隅部
2b 辺部分
t 角頂部
3 円形筒部
w 円形筒部の肉厚
P 管体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略方形の筒部(2)と断面略円形の筒部(3)とが管軸方向において交互に配設されている管壁(1)を管体の少なくとも一部に備えた管体(P)であって、方形筒部(2)における各角隅部(2a)が、角頂部(t)の方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている合成樹脂管。
【請求項2】
断面略方形の筒部(2)と断面略円形の筒部(3)とが管軸方向において交互に配設されている管壁(1)を備えた管体(P)であって、方形筒部(2)における各角隅部(2a)が断面円弧状に形成され、かつ、角頂部(t)の方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている合成樹脂管。
【請求項1】
断面略方形の筒部(2)と断面略円形の筒部(3)とが管軸方向において交互に配設されている管壁(1)を管体の少なくとも一部に備えた管体(P)であって、方形筒部(2)における各角隅部(2a)が、角頂部(t)の方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている合成樹脂管。
【請求項2】
断面略方形の筒部(2)と断面略円形の筒部(3)とが管軸方向において交互に配設されている管壁(1)を備えた管体(P)であって、方形筒部(2)における各角隅部(2a)が断面円弧状に形成され、かつ、角頂部(t)の方向に至るほど管軸方向における幅が狭くなる形状に形成されている合成樹脂管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−57656(P2008−57656A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235207(P2006−235207)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000221502)東拓工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000221502)東拓工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
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