説明

合成樹脂製シートの成型装置

【課題】 成型される合成樹脂製シートの剥離性を向上させ、高品質の合成樹脂製シートを得ることのできる成型装置を提供する。
【解決手段】 互いに所定の間隔を保って設けられた複数のスリーブロール9,10,11間に回転自在に掛け渡した薄肉パイプ15と、薄肉パイプ15の一部分に対設して設けられた第一キャストロール2と、第一キャストロール2を回転駆動させる駆動源とからなり、薄肉パイプ15及び第一キャストロール2間に溶融合成樹脂材料を供給し、薄肉パイプ15及び第一キャストロール2で挟圧して合成樹脂製シートを成型する。薄肉パイプ15には、この薄肉パイプ15を冷却する冷却手段を設けてあり、その冷却手段はスリーブロール9,10,11内に冷媒を供給するようにしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂製シートの成型装置に係り、特に成型時における成型用ロール等からの合成樹脂製シートの剥離性を向上させた合成樹脂製シートの成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の合成樹脂製シートの成型装置は、ダイからポリプロピレンやポリエチレン等の溶融合成樹脂材料を連続的に成型ロールを備えた成型機構に供給し、この供給された溶融合成樹脂材料を成型機構によって圧延冷却して所定肉厚の合成樹脂製シートを成型するように構成されている。
【0003】
また、本出願人は、上記成型機構を改良した合成樹脂製シートの成型装置を提案している(特許文献1)。この提案に係る成型機構は、成型ベースブロック上に回転自在に支承された成型ロールと、この成型ロールの外周面の一部に円弧状に当接回転して成型ロールとともに挟圧して、ダイから供給される溶融合成樹脂材料を所定肉厚に設定成型する径方向に可撓性の薄肉パイプからなる筒状の成型ドラム手段と、成型ロール外周面に対しての成型ドラム手段表面との圧着力を調整する圧着代調整手段とを備えている。
【0004】
この従来提案に係る合成樹脂製シートの成型装置は、成型時に合成樹脂製シートへの空気の巻き込みがなく、成型された合成樹脂製シートの表面が均一で、かつ鏡面性が高く平滑状に優れたシート状物またはエンボス絞様の精密な転写が施されたシート状物を安定して効率よく成型できるとともに、操作性が優れているという特長を有している。したがって、上記提案に係る合成樹脂製シートの成型装置は、高品質の合成樹脂製シートを安価に製造することができる。
【特許文献1】特許第2808251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この合成樹脂製シートの成型装置は、高品質の合成樹脂製シートを安価に製造できる優れた特長を有しているが、成型された合成樹脂製シートがキャストロール(成型ロール)に沿って移動せずに薄肉パイプ側に付着して移動することがある。そうすると、この場合、成型された合成樹脂製シートには、薄肉パイプから剥離したときの剥離模様が付くという欠点があった。
【0006】
そこで、この発明は上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、成型時の剥離性を良好にして、常時、高品質の合成樹脂製シートを安定して成型することのできる合成樹脂製シートの成型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る合成脂製シートの成型装置は、上記目的を達成するために、互いに所定の間隔を保って設けられた複数のスリーブロール9,10,11間に回転自在に巻回された薄肉パイプ15と、この薄肉パイプ15の一部分に対設して設けられたキャストロール2と、このキャストロール2を回転駆動させる駆動源とからなり、薄肉パイプ15及びキャストロール2間に溶融合成樹脂材料を供給し、薄肉パイプ15及びキャストロール2で挟圧して合成樹脂製シート18を成型する合成脂製シートの成型装置において、薄肉パイプ15には、この薄肉パイプ15を冷却する冷却手段が設けられていることを特徴としている。
このような構成からなる合成脂製シートの成型装置において、薄肉パイプ15は、冷却手段により冷却されることで、薄肉パイプ15からの合成脂製シート18の剥離性を良好にさせる。
合成脂製シートの成型装置において、冷却手段は、スリーブロール10を冷却して薄肉パイプ15を冷却するものであることを特徴としている。
合成脂製シートの成型装置において、スリーブロール10の冷却は、このスリーブロール10に冷媒を供給して行うものであることを特徴としている。
合成脂製シートの成型装置において、冷却されるスリーブロール10は、複数のスリーブロール9,10,11のうちの一部のスリーブロール10であることを特徴としている。
合成脂製シートの成型装置において、一部のスリーブロール10は、キャストロール2と対向するスリーブロール9以外のスリーブロール10であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のようなこの発明に係る合成脂製シートの成型装置は、薄肉パイプ15及びキャストロール2で溶融合成樹脂材料を挟圧して合成樹脂製シート18を成型する際、薄肉パイプ15を冷却するので、薄肉パイプ15からの合成樹脂製シート18の剥離性が向上し、合成樹脂製シート18に剥離模様が発生するのを未然に防止することができる。したがって、高品質の合成樹脂製シート18を製造することができる。
【0009】
冷却手段は、スリーブロール10を冷却して薄肉パイプ15を冷却するものであるから、薄肉パイプ15を簡単に冷却することができる。
【0010】
スリーブロール10の冷却は、このスリーブロール10に冷媒を供給して行うものであるから、温度調整を容易に行うことができる。
【0011】
冷却されるスリーブロール10は、複数のスリーブロール9,10,11のうちの一部のスリーブロール10であるから、冷却機構を簡素化することができる。
【0012】
一部のスリーブロール10は、キャストロール2と対向するスリーブロール9以外のスリーブロール10,11であるから、薄肉パイプ15の温度調整をきめ細かにおこなうことができる。
【0013】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項夫々において付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付したもので、図面中の符号によって示された構造・形状にこの発明が限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図に示されるこの発明の一実施の形態に係る合成樹脂製シートの成型装置は、基台(ベースフレーム)1を有しており、この基台1の上側の一端側(図示の例では右端側)には、鋼製等の剛性からなる同一直径の第一キャストロール2及び第二キャストロール3が水平方向において互いに当接して並設されている。
【0015】
そしてこれら第一キャストロール2及び第二キャストロール3のうち、第二キャストロール3は回転自在に設けられているとともに、基台1の一端側(図示の例では右端側)に設けられている油圧シリンダからなるキャストロール移動機構4を介して基台1上を水平方向に移動できるように設けられている。
【0016】
第一キャストロール2は、図示しない駆動源により回転されるように構成されている。すなわち第一キャストロール2は、図示しないモータ及び減速機構からなる駆動源により一方向(図示の例では反時計方向)に回転されるように構成されている。
【0017】
図1中の符号5は移動台であって、基台1の上側の他端側(図示の例では左端側)で、その基台1上を水平方向に移動できるように設けられている。すなわちこの移動台5は、基台1の他端側(図示の例では左端側)に設けられている油圧シリンダからなるスリーブロール移動機構6を介して基台1上を水平方向に移動できるように設けられている。そしてこの移動台5上には、移動台5に対して上下動機構7を介して上下動することのできるスリーブロール取付台8が設けられている。
【0018】
このスリーブロール取付台8には、鋼製等の剛性からなる第一スリーブロール9、第二スリーブロール10及び第三スリーブロール11の3本のスリーブロールが側面からみて上辺がほぼ水平な逆三角形状を呈する位置となるようにして所定の間隔を保って回転自在に設けられている。これら3本のスリーブロール9,10,11の軸心方向は同方向でかつ並行していて、さらに前記した第一キャストロール2及び第二キャストロール3の軸心方向とも同方向でかつ並行して設けられている。そしてこれら3本のスリーブロール9,10,11のうち、第一スリーブロール9及び第三スリーブロール11は、逆三角形の上辺の二つの頂点にそれぞれ位置しているとともに、第二スリーブロール10は、その逆三角形の残りの頂点に位置している。また、逆三角形の二つの頂点にそれぞれ位置しているうちの一方の頂点に位置している第一スリーブロール9は前記した第一キャストロール2に対向するように基台1の一端側に位置して設けられている。そして逆三角形の残りの頂点に位置している第二スリーブロール10は、その第一キャストロール2の下方に位置するように設けられている。
【0019】
このような3本のスリーブロール9,10,11及び前記した第一キャストロール2、第二キャストロール3の軸心方向の長さは、図2に示されるように、ほぼ同じ長さに決められている。また、図示にあっては、3本のスリーブロール9,10,11の直径は、それぞれ同じ直径でかつ第一キャストロール2及び第二キャストロール3よりも小さく決められている。もとより、キャストロール2,3及びスリーブロール9,10,11等の直径は同径であったり、大小異径であったりしても良く、また場合によっては中空あるいは中実構成とすることもある。
【0020】
また、3本のスリーブロール9,10,11は中空に構成されており、冷媒あるいは熱媒がこれらに供給されることで所定の温度に制御されるようにしてある。これは後述する薄肉パイプ15を温度制御するためのもので、場合によってはこれらの3本のスリーブロール9,10,11のうち1本あるいは2本に熱媒体が供給されるように構成されることもある。尚、キャストロール2,3も同様に中空に構成し、熱媒体を供給することで、温度制御を可能にする。
【0021】
すなわち第二スリーブロール10は、これの端部の二つの軸部12も軸心部が中空に形成されているとともに、二つの軸部12に水密性の回転継手13例えばロータリージョイントを介して冷媒供給パイプ14がそれぞれ接続されている。したがって、一方の冷媒供給パイプ14から空気、水、オイル等の熱媒体からなる冷媒が供給されると、第二スリーブロール10を所定の温度に冷却することができる。なお、この冷媒が液体からなるときは、好ましくは循環使用され、このときは、その液体の循環経路の途中に液体を冷却する冷却装置が設けられる。
【0022】
各スリーブロール9,10,11における冷却のための内部構造は、例えば中空にしてあり、場合によっては二重管構造にしたり、二重管構造にスクリュー構造を付加したり、真空区画室を設けて左右部分の温度差を少なくするいわゆるハイブリッドロール構造としたりすることができる。
【0023】
図1中の符号15は鋼製又は合成樹脂等の可撓性の薄板からなる薄肉パイプであって、上述した3本のスリーブロール9,10,11に、これらを内側にして外周に掛け渡すようにして巻回されている。このため、この薄肉パイプ15の巻回方向の長さは、3本のスリーブロール9,10,11に掛け渡すことができるように決められている。そしてこの薄肉パイプ15の幅は、図2に示されるように、各ロール2,3,9,10及び11の軸方向の長さよりも好ましくは少し小さくなるように決められている。なお、この薄肉パイプ15は、スリーブロール9,10,11から外されたときに、その可撓性の薄板からなる性状により筒状を呈するので、「薄肉パイプ」と称されている。
【0024】
図1中の符号16は第三キャストロールであって、上述した第一キャストロール2及び第二キャストロール3と同様に鋼製等の剛性からなり、同一の直径を有し、そして各ロール2,3,9,10及び11の軸心方向と同方向でかつ並行し、さらに上述の第二スリーブロール10の下方で第一スリーブロール9の真下に位置するように設けられている。また、図1中の符号17はダイであって、加熱(加温)されているポリプロピレンやポリエチレン等の溶融合成樹脂材料を連続的に第一キャストロール2及び第一スリーブロール9の当接箇所に向けて供給できるように構成されている。
【0025】
以上の構成からなる合成樹脂製シートの成型装置を用いて合成樹脂製シート18を成型するには、先ず、第一スリーブロール9の軸心位置と第一キャストロール2の軸心位置とが同一位置(同一高さ)となるように、上下動機構7を介して調整する。そしてスリーブロール移動機構6を介して移動台5を第一キャストロール2側に移動させて、その第一キャストロール2と薄肉パイプ15との間の狭圧力が所定の値になるように調整する。また、第二キャストロール3も第一キャストロール2が均一な狭圧力を生成できるようにキャストロール移動機構4を介して移動調整する。
【0026】
次いで、第一キャストロール2が図示しない駆動源により回転駆動されると、その回転により薄肉パイプ15も転回させられる。また、スリーブロール9,10,11の内部に冷媒あるいは熱媒が供給され、これにより薄肉パイプ15が所定の温度となるように間接的に冷却あるいは加熱される。この状態において、ダイ17から加熱(加温)されているポリプロピレンやポリエチレン等の溶融合成樹脂材料が連続的に第一キャストロール2、薄肉パイプ15相互の当接箇所に向けて供給されると、供給された溶融合成樹脂材料が第一キャストロール2及び薄肉パイプ15により狭圧されて所定の厚さの合成樹脂製シート18が成型される。
【0027】
成型された合成樹脂製シート18は、薄肉パイプ15の転回移動に伴って第二スリーブロール10側に移動し、その第二スリーブロール10の位置で冷却されて、薄肉パイプ15からの剥離性が向上される。その後、その合成樹脂製シート18は、第三キャストロール16側で移動方向を変えて図示しない製品巻取装置側へ移動させられる。
【0028】
図示にあっての合成樹脂製シート18のパスラインは、第二スリーブロール10の下方に配置した第三キャストロール16に掛け渡した後で、ガイドロール19にてこれの上方を通過して製品巻取装置側に移動されるようにしてあるも、(図3における丸囲み数字の1線参照)この図示側に限定されるものではない。例えば、ガイドロール19の下面を通過させて、相互の間隔が少し開けられている第一キャストロール2及び第二キャストロール3相互間に導出し、第二キャストロール3で反転させて製品巻取装置側に移動させるようにすることもでき(図3における丸囲み数字の2線参照)、このときの第二キャストロール3は冷却またはアニリングロールとして使用される。更には図示を省略したが、第一キャストロール2と薄肉パイプ15との間に供給されて成型された合成樹脂製シート18を第一キャストロール2で反転させるようにして第二キャストロール3との間を移動させ、第二キャストロール3にて再度反転させるようにして製品巻取装置側に移動させるようにしてもよい。
【0029】
上述のように、この実施の形態に係る合成樹脂製シートの成型装置は、第二スリーブロール10の位置で更には第一、第三のスリーブロール9,11によって薄肉パイプ15が冷却されるので、薄肉パイプ15からの合成樹脂製シート18の剥離性が向上し、合成樹脂製シート18に剥離模様が発生するのを未然に防止することができる。したがって、高品質の合成樹脂製シート18を製造することができる。
【0030】
なお、上述の例では、複数のスリーブロールとして3本のスリーブロール9,10,11を用いたが、例えば、第三スリーブロール11を省略して第一スリーブロール9及び第二スリーブロール10の2本のスリーブロールによる構成とすることもできる。また、第二スリーブロール10及び第三スリーブロール11間にさらにもう一本のスリーブロールを設けるようにしてもよい。
【0031】
さらに、上述の例では、薄肉パイプ15の冷却は、第二スリーブロール10を介して間接的に冷却したが、冷気等の冷媒を薄肉パイプ15の内側に直接接触させて冷却するようにしてもよい。また、薄肉パイプ15の温度が第二スリーブロール10のみの冷却処理で所定の温度に低下できないようなとき、すなわち、第一スリーブロール9の位置で薄肉パイプ15の温度が既に所定温度以上となるようなときは、第三スリーブロール11も第二スリーブロール10と同様に構成して薄肉パイプ15を冷却するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る合成樹脂製シートの成型装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】第一スリーブロール及び第一キャストロール部分の平面図である。
【図3】第二スリーブロールを一部断面して示した詳細図である。
【符号の説明】
【0033】
1…基台 2…第一キャストロール
3…第二キャストロール 4…キャストロール移動機構
5…移動台 6…スリーブロール移動機構
7…上下動機構 8…スリーブロール取付台
9…第一スリーブロール 10…第二スリーブロール
11…第三スリーブロール 12…軸部
13…回転継手 14…冷媒供給パイプ
15…薄肉パイプ 16…第三キャストロール
17…ダイ 18…合成樹脂製シート
19…ガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定の間隔を保って設けられた複数のスリーブロール間に回転自在に巻回された薄肉パイプと、この薄肉パイプの一部分に対設して設けられたキャストロールと、このキャストロールを回転駆動させる駆動源とからなり、薄肉パイプ及びキャストロール間に溶融合成樹脂材料を供給し、薄肉パイプ及びキャストロールで挟圧して合成樹脂製シートを成型する合成脂製シートの成型装置において、
薄肉パイプには、この薄肉パイプを冷却する冷却手段が設けられていることを特徴とする合成脂製シートの成型装置。
【請求項2】
請求項1に記載の合成脂製シートの成型装置において、冷却手段は、スリーブロールを冷却して薄肉パイプを冷却するものであることを特徴とする合成脂製シートの成型装置。
【請求項3】
請求項2に記載の合成脂製シートの成型装置において、スリーブロールの冷却は、このスリーブロールに冷媒を供給して行うものであることを特徴とする合成脂製シートの成型装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の合成脂製シートの成型装置において、冷却されるスリーブロールは、複数のスリーブロールのうちの一部のスリーブロールであることを特徴とする合成脂製シートの成型装置。
【請求項5】
請求項4に記載の合成脂製シートの成型装置において、一部のスリーブロールは、キャストロールと対向するスリーブロール以外のスリーブロールであることを特徴とする合成脂製シートの成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−62245(P2007−62245A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253049(P2005−253049)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(393017384)千葉機械工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】