説明

合成樹脂製気泡シート積層体の製造方法

【課題】合成樹脂製気泡シート積層体の生産性を向上させる。さらに、完成品の寸法を制限されることなく合成樹脂製気泡シート積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも凹凸シート11と平坦シート12とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部13が形成されている合成樹脂製気泡シート10を積層した状態でシート流れ下流側に送り出し、積層された合成樹脂製気泡シート10を対向面同士が接触するように外側から加圧し、加圧された状態の合成樹脂製気泡シート10を合成樹脂の溶融温度以上に加熱し、積層された合成樹脂製気泡シート10の対向面同士を融着させる。加熱工程では、加圧された状態の合成樹脂製気泡シート10に合成樹脂の溶融温度以上の高温空気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の合成樹脂製気泡シートが積層された合成樹脂製気泡シート積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から緩衝材として発泡スチロールが広く用いられているが、発泡スチロールはリサイクル性の面で好ましくない。他方、多数の突起部が形成された凹凸シートに平坦シートが接合され、気体が密閉された多数の気泡部が形成された合成樹脂製気泡シートが知られている(特許文献1参照)。この気泡シートは、気泡部の存在によって緩衝効果に優れており、包装材料として多く用いられており、リサイクル性にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−129366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者は、合成樹脂製気泡シートを複数枚積層させた気泡シート積層体を発泡スチロール代用の緩衝材として用いることを検討した。気泡シート積層体を製造する方法として、気泡シートのシート面に接着用樹脂を塗布しながらをロール状に巻き取って、複数枚の合成樹脂製気泡シートを積層させた後、所望の大きさに裁断して気泡シート積層体を得ることが考えられる。しかしながら、気泡シートをロール状に巻き取る方法では、1回転毎に1枚の気泡シートを積層することしかできず、生産速度が遅くなるという問題がある。また、気泡シートをロール状に巻き取る場合には、巻き取り長さが気泡シート積層体の最大寸法となり、完成品の寸法が制限されるという問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、合成樹脂製気泡シート積層体を製造する際に生産性を向上させることを目的とする。さらに、本発明は、完成品の寸法を制限されることなく合成樹脂製気泡シート積層体を製造できるようにすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の発明は、少なくとも凹凸シート(11)と平坦シート(12)とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部(13)が形成されている合成樹脂製気泡シート(10)を複数枚積層した状態でシート流れ下流側に送り出す送出工程と、前記積層された複数枚の合成樹脂製気泡シート(10)を対向面同士が接触するように外側から加圧する加圧工程と、前記加圧された状態の合成樹脂製気泡シート(10)を前記合成樹脂の溶融温度以上に加熱し、前記積層された合成樹脂製気泡シート(10)の対向面同士を融着させる加熱工程とを備え、前記加熱工程では、前記加圧された状態の合成樹脂製気泡シート(10)に前記合成樹脂の溶融温度以上の高温空気を供給することを特徴としている。
【0007】
このように、複数枚の気泡シート(10)を積層した状態で各気泡シート(10)を同時に融着させることで、ロール状に巻き取って気泡シート積層体を製造する場合に比べて、生産性を向上させることができる。さらに、積層した複数枚の気泡シート(10)を同時に融着させることで、連続的に気泡シート積層体100を製造することができ、気泡シート積層体(100)の長さが制限されることがない。
【0008】
さらに、加熱工程で高温空気を用いて気泡シート(10)を加熱することで、気泡シート(10)全体を均一に加熱することができ、気泡シート(10)の積層枚数が増加した場合にも、外側に位置する気泡シート(10)と中央付近に位置する気泡シート(10)を同様に加熱することができる。このため、積層された気泡シート(10)を効果的に融着させることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、前記加圧工程において、前記積層された合成樹脂製気泡シート(10)を外側から加圧する加圧手段(32a、33b、33a、33b)は、前記合成樹脂の溶融温度以上にならないように冷却される冷却機構を備えていることを特徴としている。
【0010】
このように、冷却機構を備えた加圧手段を用いることで、気泡シート(10)と接触する加圧手段が高温になることがなく、気泡シート(10)における加圧手段に接触する部位は溶融しないので、製造後の気泡シート積層体(100)の外表面の美観を損ねることがない。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】気泡シート積層体を構成する気泡シートの斜視図である。
【図2】気泡シート積層体製造装置の主要構成部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。図1は本発明の気泡シート積層体を構成する合成樹脂製気泡シート10の斜視図である。図1に示すように、本実施形態の気泡シート10は、多数の突起部11aが形成された第1シート(キャップフィルム)11と、平坦状の第2シート(バックフィルム)12とから構成される2層構造となっている。本実施形態の第1シート11には、多数の円柱状突起部11aがエンボス加工されており、第1シート11の突起部開口側に平坦状の第2シート12が接合されている。これにより、第1シート11と第2シート12との間には、空気が密閉された気泡部13が形成される。
【0014】
本実施形態では、気泡シート10を構成する合成樹脂として、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を用いており、柔軟性が必要とされる用途に用いる場合にはポリエチレンを用いることが望ましい。ポリオレフィン系樹脂は、ナイロンなどと異なり、溶融温度範囲が広いので、気泡シート10同士を融着により接合する用途に適している。また、合成樹脂製気泡シート10は、用途が包装材のような柔軟性が必要とされる場合には単位面積当り重量(目付重量)を35〜300グラム/m2とすることが望ましい。
【0015】
図2は、本実施形態の気泡シート積層体100を製造する気泡シート積層体製造装置の主要構成部の一例を示している。図2に示すように、気泡シート積層体製造装置には、気泡シート10を供給するシート供給部20、シート供給部20から供給された複数枚の気泡シート10を融着するシート融着部30、シート融着部30に熱風を供給する高温空気供給部40が設けられている。
【0016】
シート供給部20は、図1に示した気泡シート10がロール状になった原反ロールとして構成されている。シート供給部20は、気泡シート10の積層数に応じた数だけ用意される。気泡シート10の積層数は、気泡シート積層体100の用途に応じて任意に設定でき、本実施形態では4枚としている。このため、本実施形態では、4枚の気泡シート10を供給するために、4つのシート供給部20を設けている。
【0017】
シート融着部30は、加熱炉31、加圧コンベア32、33を備えている。加熱炉31には、シート供給部20から供給される気泡シート10を導入する入口部31aと、気泡シート積層体100を排出する出口部31bがそれぞれ開口されている。さらに、加熱炉31の内部には、後述の高温空気供給部40から高温空気が導入されるようになっており、入口部31aと出口部31bは加熱炉31内部の高温空気がなるべく漏れないように必要最低限の大きさとなっている。
【0018】
加熱炉31の内部には、一対の加圧コンベア32、33が収納されている。本実施形態では、第1加圧コンベア32が上方、第2加圧コンベア33が下方に配置されている。加圧コンベア32、33には、コンベアベルト32a、33aと、コンベアベルト32a、33aを回転移動させる加圧ロール32b、33bが設けられている。加圧ロール32b、33bは、冷却水が循環する水冷式の冷却機構を備えており、気泡シート10を融着する際にも加圧ロール32b、33bの温度が気泡シート10の融点以上に上昇しないようになっている。
【0019】
第1加圧コンベア32のコンベアベルト32aと第2加圧コンベア33のコンベアベルト33aは、所定間隔を設けて対向するように配置されている。各コンベアベルト32a、33aの対向面の間隔は、積層枚数(本実施形態では4枚)の気泡シート10を重ね合わせた厚みより若干小さくなるように設定されており、対向するコンベアベルト32a、33aの間に挟み込まれた複数枚の気泡シート10を加圧できるようになっている。対向するコンベアベルト32a、33aは、互いに反対方向に所定速度で同期回転するように構成されている。
【0020】
高温空気供給部40は、ブロア41、空気通路42、ヒータ43を備えている。ブロア41は、空気通路41を介して加熱炉31の内部に向かって空気を送風するように構成されている。空気通路41は、加熱炉31の底面に接続されている。空気通路42には、空気通路42を通過する空気を加熱するためのヒータ43が設けられており、ヒータ43にて加熱された空気が加熱炉31の内部に導入される。ヒータ43による空気の加熱温度は、気泡シート10を構成する合成樹脂の溶融温度以上に設定されている。
【0021】
次に、本実施形態の気泡シート積層体製造装置の作動を説明する。まず、送出工程を行う。一対の加圧コンベア32、33を作動させ、複数のシート供給部20のそれぞれから気泡シート10を連続的に加熱炉31の内部に導入する。加熱炉31の内部に導入された気泡シート10は、シート流れ下流側に向かって送り出され、複数枚が積層された状態で一対の加圧コンベア32、33の間に供給される。
【0022】
次に、加圧工程と加熱工程を行う。加熱炉31の内部は高温空気により全体が均一に加熱されている。加圧コンベア32、33で加圧された状態の複数枚の気泡シート10は、加熱炉31内の高温空気により溶融温度以上に加熱される。これにより、気泡シート10の表面層が溶融し、隣接する気泡シート10同士が融着され、気泡シート積層体100が生成される。複数枚の気泡シート10が融着した気泡シート積層体100は、加熱炉31から外部に排出されることで冷却される。
【0023】
以上説明した本実施形態では、複数枚の気泡シート10を積層した状態で各気泡シート10を同時に融着させるので、気泡シート10をロール状に巻き取って気泡シート積層体100を製造する場合に比べて、生産性を向上させることができる。さらに、積層した複数枚の気泡シート10を同時に融着するので、連続的に気泡シート積層体100を製造することができ、気泡シート積層体100の長さが制限されることがない。
【0024】
また、例えば赤外線ヒータにより気泡シート10を加熱する場合には、輻射熱により気泡シート10の外側部位のみが加熱され、奥側部位を効果的に加熱することができない。特に気泡シート10は気泡部13の存在により断熱性を有しているため、赤外線ヒータに対向する部位のみが昇温されることとなる。同様に、加圧ロール32b、33bを加熱して、加圧ロール32b、33bまたは加圧コンベア32a、33cにより気泡シート10を加熱する場合にも、高温となった加圧ロール32b、33b等に直接接触する部位のみが昇温されることとなる。
【0025】
これに対し、本実施形態のシート融着部30のように高温空気を用いることで、高温空気が凹凸状の気泡部13間の隙間に入り込むことができ、気泡シート10全体を均一に加熱することができる。また、気泡シート10の積層枚数が増加した場合にも、外側に位置する気泡シート10と中央付近に位置する気泡シート10を同様に加熱することができる。このように、高温空気を用いて気泡シート10を加熱することで、積層された気泡シート10を効果的に融着させることができる。
【0026】
また、本実施形態では、水冷式の加圧ロール32b、33bを用いてコンベアベルト32a、33aを回転移動させているので、加圧ロール32b、33bによりコンベアベルト32a、33aも冷却される。このため、気泡シート10と接触するコンベアベルト32a、33aが高温になることがなく、気泡シート10におけるコンベアベルト32a、33aに接触する部位は溶融しないので、製造後の気泡シート積層体100の外表面の美観を損ねることがない。
【0027】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0028】
例えば、上記実施形態では、凹凸シート11と平坦シート12からなる二層品の気泡シート10を用いたが、これに限らず、本発明は凹凸シート11の両面に平坦シートを接合する三層品の気泡シートにも適用可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、積層された複数枚の気泡シート10を互いに融着するように構成したが、これに限らず、1枚の気泡シート10を半折して、積層された対向面同士を融着するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…気泡シート、13…気泡部、20…シート供給部、30…シート融着部、31…加熱炉、32、33…加圧コンベア、40…高温空気供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも凹凸シート(11)と平坦シート(12)とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部(13)が形成されている合成樹脂製気泡シート(10)を複数枚積層した状態でシート流れ下流側に送り出す送出工程と、
前記積層された複数枚の合成樹脂製気泡シート(10)を対向面同士が接触するように外側から加圧する加圧工程と、
前記加圧された状態の合成樹脂製気泡シート(10)を前記合成樹脂の溶融温度以上に加熱し、前記積層された合成樹脂製気泡シート(10)の対向面同士を融着させる加熱工程とを備え、
前記加熱工程では、前記加圧された状態の合成樹脂製気泡シート(10)に前記合成樹脂の溶融温度以上の高温空気を供給することを特徴とする合成樹脂製気泡シート積層体の製造方法。
【請求項2】
前記加圧工程において、前記積層された合成樹脂製気泡シート(10)を外側から加圧する加圧手段(32a、33b、33a、33b)は、前記合成樹脂の溶融温度以上にならないように冷却される冷却機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製気泡シート積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−247463(P2010−247463A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100846(P2009−100846)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】