説明

合成HLA結合ペプチド類似体及びその使用方法

【課題】癌細胞に対するより高い免疫反応を引き出すための、向上したHLA結合及び向上した親和性の両方を有する合成ペプチド類似体を提供する。
【解決手段】本発明は、哺乳類の病態生理学的状態を示す細胞(例えば癌細胞など)上でHLA A0201又はHLA A0301分子と特異的に結合する天然ペプチドの類似体を少なくとも含む合成ペプチドを提供する。また、本発明は、ペプチド類似体断片又はそれをエンコードしているDNAを少なくとも含む医薬組成物及び免疫組成物を提供する。また、本発明は、合成ペプチド及び免疫組成物の使用してヘテロクリティック免疫反応を引き起こすことにより、癌を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的及び白血病治療の分野に関するものである。より詳細には、本発明は合成類似体ペプチドの使用に関するものであり、前記合成類似体の天然ペプチドに対するヒトT細胞ヘテロクリティック反応を引き起こすことを目的とする。
【背景技術】
【0002】
慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)は多能性幹細胞の疾患であり、フィラデルフィア染色体(Philadelphia chromosome:Ph)が存在することを特徴とする。フィラデルフィア染色体は、c−abl腫瘍遺伝子が9番染色体から22番染色体のbcr遺伝子内の切断点クラスター領域(breakpoint cluster region:bcr)へ移動するという転座を示し、bcr−ablキメラ遺伝子を作成する。融合遺伝子は、通常は210−kDa又は190−kDaタンパク質に変換される、8.5kbのキメラmRNAをエンコードする。bcr−ablタンパク質は、慢性骨髄性白血病患者の白血病細胞内にユニークに存在するチロシン−キナーゼであり、形質変換に必要であり十分である。
【0003】
慢性骨髄性白血病では、bcr遺伝子内の切断点は、bcrエクソン2(b2)と3(b3)との間、又はbcrエクソン3(b3)と4(b4)との間で生じる。また、異常なbcr−abl融合遺伝子と、bcr−abl mRNAとのスプライシングが生じ得る。そのため、慢性骨髄性白血病患者の大部分は、p210−b3a2又はp210−b2a2を発現する。多くの場合は、p210とpl90の両タンパク質が、低レベルのp190−e1a2 bcr−ablタンパク質と共に発現する。Ph1陽性の急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia:ALL)では、主要切断点は、e1a2部位に生じる。
【0004】
キメラ融合遺伝子は、潜在的な抗原である。第1に、前記タンパク質は、その接合部が正常タンパク質では発現しないアミノ酸配列を含んでいる慢性骨髄性白血病細胞内にユニークに発現する。第2に、融合したメッセージ上にコドンが等分(split)された結果、新規なアミノ酸であるb3a2内のリシン、及びb3a2内の保存されたアミノ酸であるグルタミン酸は、各タンパク質の正確な融合点に存在する。そのため、b3a2及びb2a2切断点領域を含んでいるユニークなアミノ酸配列は、まさに、腫瘍特異性抗原と考えられる。それらのタンパク質が細胞内局在であるにも関わらず、融合タンパク質の生産物の細胞処理によって作成された短ペプチドは、細胞表面のHLA分子の裂溝内に存在することができる。したがって、前記短ペプチドは、T細胞によって認識することが可能である。
【0005】
最近の臨床試験によって、腫瘍特異的なbcr−abl由来多価ワクチンを、慢性期の慢性骨髄性白血病患者に対して安全に投与できることが分かっている。このワクチンは、bcr−ablペプチドに対して特異的なCD4免疫反応を確実に誘導する。前記反応は、インビボでのDTHによって、生体外でのCD4+T細胞増殖によって、及び、ELISPOT分析でのガンマ・インターフェロン分泌によって測定される。しかしながら、高感度ガンマ・インターフェロンELISPOT分析により測定すると、HLA A0201患者ではCD8反応は検出されず、HLA A0301患者に弱い反応が検出されるだけである。
【0006】
ウィルムス腫瘍タンパク質1(WT1)は、正常な個体発生時に、胎児の腎臓、睾丸及び卵巣などに発現するジンク・フィンガー転写因子である。成人の場合は、WT1発現は、造血幹細胞、筋上皮前駆細胞、腎臓有足細胞、及び、睾丸及び卵巣内のある細胞上で、低いレベルに制限される。最近では、WT1は、いくつかのタイプの白血病で過剰発現することが実証されている。このことは、WT1は、免疫療法のための魅力的な標的であることを示唆している。WT1由来の3つのペプチド九量体が、HLA 0201及びHLA 2402におけるWT1特異的細胞傷害反応を示すことが知られている。しかしながら、WT1タンパク質は自己抗原なので、破壊の許容範囲は、潜在的な懸案事項である。
【0007】
反応の促進に関しては、CD8反応の強度は、標的ペプチドのクラスI MHC分子に対する結合親和力、ペプチド−HLA複合体の安定性、及び、ペプチド複合体へ結合するためのT細胞受容体の親和力に依存する。天然CML細胞の死滅は、天然抗原の適切な処理及び提示を必要とする。そのため、それらの臨床試験における再現可能なCD8反応の欠如は、それらのクラスIペプチド−HLA生化学的相互作用の結果であり、それらの細胞傷害性CD8細胞に対する弱い免疫原性をもたらす。HLAポケットと高親和的に結合したヒトMHCと結合するCML天然ペプチドは全く報告されていない。このことは、この抗原がCML細胞に見られるのにも関わらず、慢性骨髄性白血病患者に見られるタンパク質であるbcr−ablペプチドに対する免疫反応が検出されないことを部分的に説明している。
【0008】
ある抗原性システムでは、ペプチド類似体は、免疫原性反応の不良を回避するのに使用される。類似体ペプチド全体のMHCクラスI分子に対する親和性と、HLA−A2Kb遺伝子組み換えマウスのインビボでのペプチド免疫原性との間に高度な相関関係があることが分かっている。ペプチドの安定したHLA A0201複合体を形成する能力と、免疫原性との緊密な相関関係も報告されている。自己ペプチドの類似体、gp100154−162についての、HLA A0201/Kb遺伝子組み換えマウスでの向上した免疫原性は、高い親和性と天然ペプチドよりも長期の複合体安定性との両方を示すことが報告されている。
【0009】
ペプチド類似体をデザインするために、適切な結合モチーフの存在を調べるために多数のタンパク質配列を読み取ることに成功したアルゴリズムが使用される。このアルゴリズムによって、予測される抗原が同定される。同定された抗原は、その後、実験的に確認される。抗原性ペプチドの類似体は、“MHCアンカー修正リガンド”と呼ばれるMHCアンカー位置を変更することによって、又はTCR接触部位(一般的には“改変ペプチド・リガンド”と呼ばれる)を修正することによって作成される。インビボ及びインビトロでのMHC−ペプチド複合体の安定性を強化するペプチド・エピトープ類似体の同定は、元来は弱い、免疫原性ペプチドの関係するT細胞のサブセットを活性化及び増幅させるための能力を向上させると考えられる。この考えは、元々は、HIVペプチドを使用した、ネズミのCD4+ T細胞モデルで説明されていたが(1)、現在では、様々なウイルス及び腫瘍免疫系に拡大されている。
【0010】
MHCクラスI−結合自己ペプチドの人工変異体がデザインされている(2)。それらの様々なペプチドはホスト免疫系と異質であるので、強力なCTL反応が引き起こされる。自己ペプチド−MHC複合体に対するT細胞反応とは違って、様々なペプチドに対するCTL反応は、細胞分裂又は生存のための信号の不足に起因してクローンを絶滅させることなく、長期間持続することが可能である。そのようなCTLの十分な破片が、腫瘍細胞で発現した非突然変異自己ペプチドと非常に少ない量で交差反応するので、様々なペプチドへの免疫付与は、腫瘍に対するCTLを誘導するためのより効率的な方法であり得る。MHCクラスI−結合ペプチドの採点システムは、免疫付与のための交差反応性自己模倣ペプチドをデザインする便利な方法を提供する。
【0011】
インビボでの改善された免疫原性と、MHCアンカー改変リガンドの関連性は、gp100由来のメラノーマ関連のA0201制限ペプチドを使用して悪性黒色腫患者の対照試験を行ったヒト腫瘍性疾患において最初に正式に示された。最近は、HLA四量体ベースの検出方法によって、母体となっているメラン−A抗原ペプチドは、抗原特異的T細胞を準最適に活性化させる弱いアゴニストであることが分かっている(3)。対照的に、メランAペプチド類似体は、十分なアゴニストとして作用し、十分なT細胞活性化を誘導し、強力な腫瘍抗原特異的CTL反応をもたらすことが分かっている(4)。
【0012】
単純モチーフ(simple motifs)及び統計的な結合マトリックスを、MHC−結合ペプチドの大雑把な調査に使用することができる。残念なことに、単純な配列モチーフの存在は、結合とは必ずしも良好に相関しない。そのため、これらの単純なモチーフは、結合には常に必要又は十分ではない。生化学的な結合分析の試験を行ったところ、そのような単純モチーフを有するペプチドの30%だけが十分に結合する。拡張モチーフ(extended motifs)を使用した場合、結合の予測は、単純モチーフよりも大幅に向上する。拡張モチーフを有するペプチドの約70%が十分に結合する。
【0013】
各位置の各アミノ酸が、隣接残基とは無関係にある結合エネルギーに貢献する、及び所定のペプチドの結合は異なる残基によってもたらされる結合の結果であると推測すると、関連したマトリックス値の増加は、対応するペプチドの結合の目安となる。そのような統計的なマトリクスによる予測はより成功的であり、MHC結合がある程度の結合の特異性をもたらすことを示唆する。それらの方法に基づいた類似体断片の同定は、プロテイナーゼ3、メラノーマ抗原3、ムチン1、及びテロメラーゼから推定されるCTLエピトープを同定するために、最近になって適用された。
【0014】
天然bcr−abl融合タンパク質の低い免疫原性は、細胞の溶解の乏しさ、又は、自己抗原由来の天然ペプチド(例えばWT1)の使用の耐性の問題によって証明されている。そのため、それらの天然ペプチドのCMLに対する効果的なワクチンとしての使用は避けられてきた。そのため、当該分野では、新生組織形成に必要とされる発癌タンパク質でもある真性腫瘍特異性抗原に対するワクチン接種を用いた治療方法が必要とされている。したがって、より強い免疫反応を引き出すようにデザインされた、改善された合成ペプチド類似体が求められている。
【0015】
従来技術では、免疫エピトープを認識するだけではなく、オリジナルの天然ペプチドと交差反応する免疫反応を生成できる合成類似体ペプチドは無かった。特に、従来技術では、癌細胞に対するより高い免疫反応を引き出すための、向上したHLA結合及び向上した親和性の両方を有する合成ペプチド類似体は無かった。本発明は、この当該分野における長年の要求を満たすものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、哺乳類の病態生理学的状態を示す細胞上でHLA A0201又はHLA A0301分子と特異的に結合する天然ペプチドの類似体である断片を少なくとも含んでいるアミノ酸配列を有する合成ペプチドに関するものである。前記合成ペプチドは、bcr−abl融合タンパク質又はWT1タンパク質の切断点領域を含んでいる天然ペプチドから得られる。
【0017】
また、本発明は、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KQSSKALQV(SEQ ID NO: 4)、KLSSKALQV(SEQ ID NO: 5)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、TLFKQSSKV(SEQ ID NO: 9)、及びYLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)、LLINKEEAL(SEQ ID NO: 12)、LTINKVEAL(SEQ ID NO: 13)、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)、YLINKEEAV(SEQ ID NO: 15)、及びYLINKVEAL(SEQ ID NO: 16)、MYQRNMTK(SEQ ID NO: 36)、NMHQRVMTK(SEQ ID NO: 37)、NMYQRVMTK(SEQ ID NO: 38)、QMYLGATLK(SEQ ID NO: 40)、QMNLGVTLK(SEQ ID NO: 41)、QMYLGVTLK(SEQ ID NO: 42)、FMYAYPGCNK(SEQ ID NO: 44)、FMCAYPFCNK(SEQ ID NO: 45)、FMYAYPFCNK(SEQ ID NO: 46)、KLYHLQMHSR(SEQ ID NO: 48)、KLSHLQMHSK(SEQ ID NO: 49)、及びKLYHLQMHSK(SEQ ID NO: 50)から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する関連合成ペプチドに関するものである。
【0018】
また、本発明は、治療効果がある量のここに記載された合成ペプチド又は前記合成ペプチドをエンコードしているDNAと、適切な担体とを含んでいる医薬組成物に関するものである。
【0019】
また、本発明は、免疫効果がある量のここに記載された合成ペプチドと、薬学的に許容される担体、補助剤、希釈剤、又はそれらの組み合わせとを含んでいる免疫原性組成物に関するものである。
【0020】
また、本発明は、人間の癌の治療方法に関するものである。ここに記載された医薬組成物は、人間に投与される。ここに記載された合成ペプチドの類似体断片を少なくとも認識する細胞傷害性T細胞によって、前記類似体断片が由来する天然ペプチドに存在する癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応が引き起こされる。したがって、前記細胞傷害性T細胞が前記癌細胞を認識する又は死滅させることによって、前記癌を治療できる。また、本発明は、WT1タンパク質の天然ペプチドに由来する類似体断片を少なくとも含んでいる合成ペプチド、又は前記合成ペプチドをエンコードしているDNAを有する医薬組成物を使用して行う、人間の白血病の治療方法に関するものである。
【0021】
また、本発明は、癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導する方法に関するものである。ヒト免疫細胞は、ここに記載された類似体断片を少なくとも含んでいる合成ペプチドと接触する。このことにより、前記合成ペプチドの類似体断片内に存在する活性化された細胞との反応性を有するヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖が誘導される。前記増殖性T細胞は、前記類似体断片が由来する天然ペプチド内に存在する癌細胞と交差反応して、癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こす。また、本発明は、ヒトの白血病細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導する方法に関するものである。この方法は、前記した癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導する方法と同様である。
【0022】
本発明は、ヒトにおけるヘテロクリティック反応を誘導する方法に関するものである。ヒト免疫細胞を活性化させるために、ここに記載された免疫原性組成物はヒトに投与される。このことにより、ここに記載された合成ペプチド(免疫原性組成物を有している)の類似体断片に存在する活性化細胞に対する細胞傷害性T細胞の形成及び増殖が誘導される。前記細胞傷害性T細胞は、前記類似体断片が由来する天然ペプチドに存在する癌細胞と交差反応して、前記ヘテロクリティック免疫反応が引き起こされる。また、本発明は、ヒトにおける、白血病細胞に対するヘテロクリティック反応を誘導する方法に関するものである。この方法は、前記した癌細胞に対するヘテロクリティック反応を誘導する方法と同様である。
【0023】
本発明のさらなる態様、特徴、利点、及び長所は、以下に説明する現時点での発明の好適な実施形態から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のある実施形態では、哺乳類の病態生理学的状態を示す細胞上でHLA A0201又はHLA A0301分子と特異的に結合する天然ペプチドの類似体である断片を少なくとも含んでいるアミノ酸配列を有する合成ペプチドが提供される。この実施形態では、前記類似体断片に含まれるアミノ酸の数は、前記天然ペプチドに含まれるアミノ酸の数の約70〜130%である。前記類似体断片に含まれるアミノ酸の数は、約8〜12である。
【0025】
本発明の全ての態様では、前記病態生理学的状態は癌であり得る。前記癌は、白血病(例えば慢性骨髄性白血病)であり得る。或いは、前記癌は、乳癌、リンパ腫癌、中皮腫癌、肺癌、睾丸癌、又は卵巣癌であり得る。さらに、全ての態様では、前記哺乳類は人間であり得る。
【0026】
さらに、本実施形態の全ての態様では、前記合成ペプチドは、該合成ペプチドと結合する免疫原性担体を含み得る。前記担体の例としては、タンパク質、ペプチド、又は抗原提示細胞がある。タンパク質又はペプチドの典型的な例は、キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)、アルブミン、又はポリアミノ酸である。抗原提示細胞の典型的な例は、樹枝状細胞である。
【0027】
本実施形態のある態様では、前記アミノ酸は、前記類似体断片の分解産物である、前記類似体断片の前駆体を含んでいる。この態様では、前記前駆体は、bcr−abl融合タンパク質であり、前記類似体断片は前記融合タンパク質の切断点領域をスパン(span)する。または、前記前駆体はWT1であり、前記類似体断片はWT1の天然ペプチドを置換する。
【0028】
関連する態様では、前記類似体断片は、bcr−abl融合タンパク質の切断点領域を含んでいる天然ペプチドに由来する。前記天然ペプチドは、p210−31a2天然ペプチドである。または、前記天然ペプチドはp210−b3a2天然ペプチドであり、前記類似体断片のアミノ酸配列は、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KQSSKALQV(SEQ ID NO: 4)、KLSSKALQV(SEQ ID NO: 5)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、TLFKQSSKV(SEQ ID NO: 9)、又はYLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)である。好ましくは、前記アミノ酸配列は、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、又はYLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)である。
【0029】
または、前記天然ペプチドは、p210−b2a2天然ペプチドであり、前記類似体断片のアミノ酸配列は、LLINKEEAL(SEQ ID NO: 12)、LTINKVEAL(SEQ ID NO: 13)、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)、YLINKEEAV(SEQ ID NO: 15)、又はYLINKVEAL(SEQ ID NO: 16)である。好ましくは、前記アミノ酸配列は、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)である。
【0030】
本実施形態の他の態様では、前記類似体断片は、WT1タンパク質を含んでいる天然ペプチドに由来する。前記WT1由来類似体断片の前記アミノ酸配列は、YMFPNAPYL(SEQ ID NO: 18)、YLGEQQYSV(SEQ ID NO: 20)、YLLPAVPSL(SEQ ID NO: 22)、YLGATLKGV(SEQ ID NO: 24)、YLNALLPAV(SEQ ID NO: 26)、GLRRGIQDV(SEQ ID NO:28)、KLYFKLSHL(SEQ ID NO: 30)、ALLLRTPYV(SEQ ID NO: 32)、YMTWNQMNL(SEQ ID NO: 34)、NMYQRNMTK(SEQ ID NO: 36)、NMHQRVMTK(SEQ ID NO: 37)、NMYQRVMTK(SEQ ID NO: 38)、QMYLGATLK(SEQ ID NO: 40)、QMNLGVTLK(SEQ ID NO: 41)、QMYLGVTLK(SEQ ID NO: 42)、FMYAYPGCNK(SEQ ID NO: 44)、FMCAYPFCNK(SEQ ID NO: 45)、FMYAYPFCNK(SEQ ID NO: 46)、KLYHLQMHSR(SEQ ID NO: 48)、KLSHLQMHSK(SEQ ID NO: 49)、又はKLYHLQMHSK(SEQ ID NO: 50)である。
【0031】
本発明の関連する実施形態では、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KQSSKALQV(SEQ ID NO: 4)、KLSSKALQV(SEQ ID NO: 5)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、TLFKQSSKV(SEQ ID NO: 9)、YLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)、LLINKEEAL(SEQ ID NO: 12)、LTINKVEAL(SEQ ID NO: 13)、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)、YLINKEEAV(SEQ ID NO: 15)、又はYLINKVEAL(SEQ ID NO: 16)の内の1つ以上のアミノ酸配列を有する合成ペプチドが提供される。または、NMYQRNMTK(SEQ ID NO: 36)、NMHQRVMTK(SEQ ID NO: 37)、NMYQRVMTK(SEQ ID NO: 38)、QMYLGATLK(SEQ ID NO: 40)、QMNLGVTLK(SEQ ID NO: 41)、QMYLGVTLK(SEQ ID NO: 42)、FMYAYPGCNK(SEQ ID NO: 44)、FMCAYPFCNK(SEQ ID NO: 45)、FMYAYPFCNK(SEQ ID NO: 46)、KLYHLQMHSR(SEQ ID NO: 48)、KLSHLQMHSK(SEQ ID NO: 49)、又はKLYHLQMHSK(SEQ ID NO: 50)の内の1つ以上のアミノ酸配列を有する合成ペプチドが提供される。
【0032】
他の関連する実施形態では、治療効果がある量の請求項1に記載の合成ペプチド又は前記合成ペプチドをエンコードしているDNAと、薬学的に許容される担体とを含んでいる医薬組成物が提供される。本実施形態のある態様では、前記医薬組成物は前記合成ペプチドをエンコードしているDNAを含んでおり、前記DNAはベクター又は抗原提示細胞内に挿入される。抗原提示細胞の例としては、樹枝状細胞がある。
【0033】
本実施形態のある態様では、前記合成ペプチドを含んでいる類似体断片は、p210−b3a2天然ペプチド、p210−b2a2天然ペプチド、又はp190−e1a2天然ペプチドに由来する。これらの類似体断片のアミノ酸配列は、上記したp210−b3a2及びp210−b2a2由来類似体のアミノ酸配列と同じである。本実施形態の関連する態様では、前記合成ペプチドを含んでいる前記類似体断片は、WT1タンパク質を含んでいる天然ペプチドに由来する。これらのWT1由来類似体断片のこれらのアミノ酸配列は、上記したWT1由来類似体断片のアミノ酸配列と同じである。
【0034】
また、本発明の他の実施形態では、免疫効果がある量の、上記した合成ペプチドと、薬学的に許容される担体、補助剤、希釈剤、又はそれらの組み合わせとを含んでいる免疫原性組成物が提供される。前記担体は、前記合成ペプチドと結合する、タンパク質、ペプチド、又は抗原提示細胞であり得る。前記タンパク質又はペプチド担体の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、アルブミン、又はポリアミノ酸がある。前記抗原提示細胞の例としては、樹枝状細胞がある。前記合成ペプチド、及び前記合成ペプチドを含んでいる類似体断片は、上記した通りである。本実施形態のある態様では、前記類似体断片は上記した天然ペプチドから由来し、前記アミノ酸配列は上記した医薬組成物のアミノ酸配列と同じである。
【0035】
本発明の他の実施形態では、癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導するための方法が提供される。この方法は、前記免疫細胞を活性化させるためにヒト免疫細胞を上記した合成ペプチドと接触させるステップと、前記合成ペプチドの前記類似体断片に少なくとも存在する前記活性化された細胞と反応する前記ヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導するステップとを含んでおり、前記増殖性T細胞は、前記類似体断片が由来する前記天然ペプチドに存在する前記癌細胞と交差反応して、前記癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすことができる。
【0036】
この実施形態では、前記方法は、前記合成ペプチドをエンコードしているDNAを作成するステップと、前記DNAを発現させるステップとをさらに含む。前記DNAは、適切なベクターに挿入される。または、前記DNAは、抗原提示細胞に挿入される。抗原提示細胞の例としては、樹枝状細胞がある。
【0037】
この実施形態のある態様では、前記ヒト免疫細胞は癌患者の生体内で接触する。関連する態様では、前記ヒト免疫細胞はドナーの生体内で接触し、前記方法は、前記ドナーから前記細胞傷害性T細胞を取得するステップと、前記細胞傷害性T細胞を前記癌患者に注入するステップとを更に含む。
【0038】
他の態様では、前記ヒト免疫細胞は体外で接触し、前記方法は、前記ヒト免疫細胞を医薬組成物と接触させる前に、ドナーから前記ヒト免疫細胞を取得するステップと、細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導する前に、前記免疫細胞を癌患者に注入するステップとを更に含む。関連する態様では、前記ヒト免疫細胞は体外で接触し、前記方法は、前記ヒト免疫細胞を接触させる前に、ドナーから前記ヒト免疫細胞を取得するステップを更に含む。この態様では、前記ヒト免疫細胞の接触と、前記細胞傷害性T細胞の形成及び増殖との両方は体外で行われる。そして、前記細胞傷害性T細胞は癌患者に注入される。
【0039】
この実施形態の全ての態様では、ヒト免疫細胞の典型例は、末梢血単核細胞、骨髄細胞、樹枝状細胞、又はマクロファージである。前記合成ペプチド、及び前記合成ペプチドを含む類似体断片は、上記した通りである。この実施形態のいくつかの態様では、前記合成ペプチドを含む類似体断片は、上記したp210−b3a2天然ペプチド、p210−b2a2天然ペプチド、p190−e1a2天然ペプチド、又はWT1天然ペプチドに由来する。さらに、これらの合成ペプチド又は前記合成ペプチドを含んでいる類似体断片のアミノ酸配列は、上記したp210−b3a2、p210−b2a2又はWT1に由来する類似体断片の場合と同様である。
【0040】
関連する態様では、WT1類似体断片、及びp210−b3a2又はp210−b2a2に由来する類似体断片は、白血病細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こす。白血病細胞の典型例は、慢性骨髄性白血病細胞である。他の関連する態様では、WT1類似体断片は、乳癌、リンパ腫癌、中皮腫癌、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こす。
【0041】
本発明の別の実施形態では、人間の癌を治療する方法が提供される。この方法は、ここに記載された医薬組成物を人間に投与するステップと、前記合成ペプチドの前記類似体断片を少なくとも認識する細胞傷害性T細胞によって、前記類似体断片が由来する前記天然ペプチドに存在する癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすステップとを含み、前記細胞傷害性T細胞が前記癌細胞を認識して死滅させることによって、癌を治療する。
【0042】
前記合成ペプチド、又は前記合成ペプチドをエンコードしているDNAは、上記した通りである。この実施形態のいくつかの態様では、前記合成ペプチドを含んでいる類似体断片は、上記したp210−b3a2天然ペプチド、p210−b2a2天然ペプチド、p190−e1a2天然ペプチド、又はWT1天然ペプチドに由来する。さらに、前記合成ペプチド、又は前記合成ペプチドを含んでいる類似体断片のアミノ酸配列は、上記したp210−b3a2、p210−b2a2又はWT1に由来する類似体断片の場合と同様である。
【0043】
ある態様では、少なくとも、前記合成ペプチドを含んでいるWT−1類似体断片及びp210−b3a2又はp210−b2a2由来類似体断片は、白血病を治療する。白血病の典型例は、慢性骨髄性白血病である。他の態様では、少なくとも、前記類似体断片が合成ペプチドを含んでいるWT−1は、乳癌、リンパ腫癌、中皮腫癌、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌を治療する。
【0044】
関連する実施形態では、人間におけるヘテロクリティック免疫反応を誘導する方法が提供される。この方法は、免疫効果がある量の上記した免疫原性組成物を人間に投与するステップと、前記免疫原性組成物によって前記ヒト免疫細胞を活性化するステップと、前記免疫原性組成物を含んでいる前記合成ペプチドの類似体断片に少なくとも存在する活性化された細胞に対するヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導するステップとを含む。この方法では、前記ヒト細胞傷害性T細胞が、前記類似体断片が由来する天然ペプチドに存在する癌含有細胞と交差反応することによって、ヘテロクリティック免疫反を引き起こす。
【0045】
この実施形態のある態様では、前記人間は、活性癌を有する、癌は寛解期にある、又は癌が発病する危険性がある。この実施形態の他の態様では、活性癌の患者にヒト細胞傷害性T細胞を提供する人間は、癌は寛解期にある又は癌が発病する危険性がある。
【0046】
この実施形態のいくつかの態様では、前記医薬組成物、前記ヒト免疫細胞、及び前記合成ペプチド又は前記合成ペプチドを含んでいる類似体断片は、上記した通りである。ある態様では、少なくとも、合成ペプチドを含んでいるWTI由来類似体断片及びp210−b3a2又はp210−b2a2由来類似体断片は、人間の白血病に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こす。白血病の典型例は、慢性骨髄性白血病である。他の態様では、少なくとも、WT−1由来類似体断片は、人間の乳癌、リンパ腫癌、中皮腫癌、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こす。
【0047】
また、天然ペプチドの類似体断片を少なくとも含んでいるアミノ酸配列を有する合成免疫原性ペプチドが提供される。この合成免疫原性ペプチドは、天然ペプチドのHLA A0201又はHLA A0301複合体との結合を向上させる。これらの合成ペプチド又は類似体断片は、T細胞が天然ペプチドと交差反応するのを促進することができる。このことにより、天然ペプチド内に存在する細胞を認識又は死滅させるヘテロクリティック免疫反応を引き起こすことができる。そのような細胞は、これに限定されるものではないが、例えば癌などの病態生理学的状態の特性を示す。少なくとも、合成ペプチドを含んでいる類似体断片は、類似体断片を天然ペプチド自身ではなくT細胞に提示することに関与するHLAクラスI及びクラスII分子とより高い親和力で結合する。
【0048】
合成ペプチド類似体断片は、アンカー又は置換残余での、1つ又は2つのアミノ酸の置換によってデザインされる。また、特にここに記載された天然ペプチドは、アンカー又は置換残余を含む九量体である。類似体は、天然ペプチド内に、約70〜130%のアミノ酸を持つようにデザインされる。本発明では、合成ペプチド類似体は、約8〜12個のアミノ酸を有している。そのような置換は、生物情報モデル系(bioinformatic model system:BIMAS)によって測定される。前記生物情報モデル系は、結合を予測するのにマトリックスアプローチを使用し、予測されるHLA分子への結合に基づいてペプチドをランク付ける。HLA A0201及びHLA A0301と結合するアミノ酸配列及び結合の予測値は、オンラインソフトウエアであるBIMAS及びSYFPEITHIによって生成される。前記BIMASは、http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken parker comboformから入手できる。また、前記SYFPEITHIは、http://syfpeithi.bmi-heidelberg.com/から入手できる。
【0049】
前記合成ペプチドは、前記合成ペプチドの分解産物である類似体断片の前駆体であり得る。前記前駆体は、bcr−abl融合タンパク質であり、前記合成類似体は前記融合タンパク質の切断点領域を補う。または、前記前駆体はWT1タンパク質であり、前記類似体断片はWT1内の天然ペプチド配列を置換する。
【0050】
さらに、前記合成ペプチドは、慢性骨髄性白血病において新生組織形成に必要な発癌性タンパク質であるbcr−abl融合タンパク質の切断点領域の類似体である類似体断片である(又は前記類似体断片を含む)。前記合成ペプチドは、p210−b3a2、p210−b2a2、及びp190−e1a2の結合配列に由来する類似体断片である(又は前記類似体断片を含む)。より好ましくは、前記合成ペプチド又は前記類似体断片は、HLA A0201キー結合位置でペプチドに単一アミノ酸置換又は二重アミノ酸置換が導入されるp210−b3a2及びp210−b2a2に由来する。これらの高親和性ペプチド類似体断片は、特異的CD8+T細胞を天然ペプチドよりもはるかに効率良く生成することができ、白血病細胞に存在する天然配列と交差反応するヒトCD8+CTLヘテロクリティック反応を促進することができる。
【0051】
好ましい合成ペプチド又は類似体断片は、p210−b3a2類似体 p210C、p210D、p210E、及びp210Fであり、より好ましくは、p210C、及びp210−b2a2類似体b2a2 A3、b2a2 A4、及びb2a2 A5であり、最も好ましくは、b2a2 A3である。表1は、天然及び合成類似体のアミノ酸配列及び結合予測を示す。b3a2における下線を引いたK、及び、b2a2における下線を引いたEは、切断点のアミノ酸である。強調された残基は、天然配列からの修飾を示している。
【0052】
表1:bcr−abl融合タンパク質のHLA 0201天然ペプチド、及び合成ペプチド類似体
【表1】

【0053】
合成免疫原性ペプチドは、類似体断片であり得る、又はWT1タンパク質由来の類似体断片を含む。ここに記載されたコンピュータ予測分析は、HLA A0201結合で単一アミノ酸置換が導入され、A0301結合位置で単一又は二重アミノ酸置換が導入されるWT1タンパク質のnonamer配列由来の合成ペプチド類似体を予測する。これらの合成ペプチド類似体又は類似体断片は、CD8+又はCD3+T細胞を天然ペプチドよりもはるかに効率良く生成することができ、これらのWT1天然ペプチドに存在する白血病細胞又は他の細胞の天然配列と交差反応するヒトCD8+又はCD3+CTLヘテロクリティック反応を促進することができる。表2及び表3は、天然WT1及び合成WT1ペプチド類似体のアミノ酸配列及び結合予測を示す。強調された残基は、天然配列からの修飾を示している。
【0054】
表2:WT1由来のHLA 0201天然ペプチド、及び合成類似体
【表2】

【0055】
表3:WT1由来のHLA 0201天然ペプチド、及び合成類似体
【表3】

【0056】
また、本発明は、治療効果がある量の合成ペプチド或いは類似体断片、又はそれらをエンコードしている遺伝子の配列或いはDNAと、当該技術分野では周知である薬学的に許容される担体とを含んでいる医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は、当該技術分野では周知である様々な方法で投与するために、薬学的担体と共に作成される。例えば、前記医薬組成物は、非経口で、経静脈で、皮下に、経皮的に、粘膜内に、局所的に、経口で、又は吸入によって投与される。
【0057】
そのため、合成ペプチド又は類似体断片又はその医薬組成物は、患者に免疫性を与えるのに適した免疫原性組成物の作成に使用できると考えられる。前記免疫原性組成物は、当該技術分野では周知である、担体又は免疫反応を高めるのに適した補助剤、或いはそれらの組み合わせを含み得る。前記免疫原性組成物は、ここに記載されているように、当該技術分野では標準的な希釈剤をさらに含み得る。前記免疫原性組成物は、ワクチンを含み得る。
【0058】
担体は、1つ又は複数のタンパク質又はペプチドを含み得る。担体の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)、アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)、又はポリアミノ酸がよく知られている(ただし、これに限定されるものではない)。また、担体は、ここに記載された合成ペプチドを示す樹枝状細胞などの抗原提示生細胞を含み得る。適切な補助剤としては、フロインド(Freund's)アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバン、QS21、BCGがある。これらの組成物は、薬学的に許容される希釈剤(水、リン酸緩衝生理食塩水、又は生理食塩水)をさらに含み得る。
【0059】
さらに、合成ペプチド又はその類似体断片をエンコードしている遺伝子配列は、裸のDNAとして、当該技術分野では周知の適切な方法によって個人に送達される。または、前記遺伝子配列は、弱毒化ウイルスや細菌ベクターなど(ただし、これらに限定されるものではない)の当該技術分野では標準的な適切なベクターに組み込まれる又は挿入される。さらに、前記裸のDNA、又は前記遺伝子配列又はDNAを含んでいるベクターは、抗原提示細胞(例えば樹枝状細胞など)に形質導入される。前記遺伝子配列、DNA、ベクター、又は形質導入された抗原提示細胞は、治療を必要としている患者、又は健康なドナーに導入されとすぐに、遺伝子配列をエンコードしているDNAは合成ペプチドを発現し、細胞傷害性T細胞反応を引き起こす。ドナーT細胞は、その後、それを必要としている患者に注入される。
【0060】
薬学的又は免疫原性組成物は、例えば癌などの疾患や病気を治療するのに使用される。
前記医薬組成物を含んでいる前記合成ペプチド又は類似体断片の投与は、癌細胞上で発現した天然ペプチドに対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こし、そのことによって効果的な治療結果が得られる。慢性骨髄性白血病では、bcr−ablタンパク質の切断点領域の天然ペプチド、及びWT1タンパク質の天然ペプチドは、白血病細胞上で発現する。WT1天然ペプチドは、他の白血病細胞上、又は他の固形腫瘍の癌性細胞上で発現する。そのような癌としては、乳癌、リンパ腫癌、中皮腫癌、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌などがある(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0061】
合成ペプチド或いはその合成類似体断片、又はそれをエンコードしている遺伝子配列、又はその医薬組成物或いは免疫原性組成物は、癌細胞(例えば白血病細胞)に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすことができると考えられる。ヒト免疫細胞を、合成ペプチドである又は合成ペプチドを含んでいる類似体断片と少なくとも接触させると、前記免疫細胞が活性化し、合成ペプチドに存在する細胞を認識する又は細胞と反応するヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導する。ヒト細胞傷害性T細胞は、類似体断片が由来する天然ペプチドに存在するヒト細胞と交差反応し、ヘテロクリティック反応を引き起こす。
【0062】
当業者なら、「接触」という用語は、その後の免疫反応を誘導するために、標的免疫細胞を活性化するという意味だと認識する。免疫原は、任意の適切な送達方法によって標的T細胞に接触させられる。生体内又は生体外では、このことは、適切な培地内で前記免疫原に対して前記標的T細胞を露出させることにより実現される。インビボの場合は、ここに記載されたように、任意の周知の投与方法が適切である。
【0063】
したがって、ここに記載された合成ペプチド又はその類似体断片は、生体外又は生体内でT細胞を活性化させるのに使用される。インビボでは、合成ペプチド或いはその類似体断片、又はそれをエンドードしているDNAは、細胞傷害性T細胞を誘導するために、患者又は健康ドナーに投与される。ドナーに投与した場合は、それらの細胞傷害性T細胞はドナーから得られ、それを必要としている個人(癌が活発である、癌が寛解期にある、又は癌が発症する危険性がある個人)に注入される。
【0064】
生体外の場合は、T細胞は患者又は健康ドナーから得られ、T細胞を活性化させるために、抗原提示細胞及び合成ペプチド又は少なくともそれの類似体断片の存在下で培養される。活性化されたT細胞は、その後、患者に注入して戻され、天然ペプチドに存在する細胞を認識及び/又は破壊する。または、ヒト免疫細胞は、合成ペプチド又は少なくともその類似体断片と共に培養される。そして、その後すぐに、活性化された免疫細胞は患者に注入されて戻され、活性化された細胞及び天然ペプチドに存在する細胞の両方に対してのT細胞の生成を誘導する。免疫細胞の例としては、末梢血単核単球細胞、骨髄細胞、樹枝状細胞、又はマクロファージがある。
【0065】
さらに、合成ペプチド或いは少なくともその類似体断片、又はその医薬組成物の投与は、被験者内での免疫反応、好ましくはCD8/HLA A又はCD3/HLA AクラスI免疫反応(ただし、これらに限定されるものではない)を誘導すると考えられる。合成ペプチド又は少なくともその類似体断片は、HLA分子(慢性骨髄性白血病などの白血病)に存在する病態生理的病状又は病気に対して、被験者に免疫性を与える方法に使用できる。また、WT1合成ペプチド又はその類似体断片は、他の白血病又は癌(胸部、リンパ腫、中皮腫、肺、睾丸又は卵巣癌など)の患者の免疫反応を誘導するために使用できる。ここに記載される、患者に「免疫を与える」又は「免疫付与」は、完全及び部分的な免疫付与を含んでいる。したがって、患者は病気に対して完全に免疫になる、又は病気に対して部分的に免疫になる。患者は哺乳類、好ましくはヒトである。
【0066】
患者は、免疫付与前に、活発な又は寛解期にある病気又は疾患を持っている。または、前記病気又は疾患が発病する危険性がある場合は、患者はその発病前に免疫付与される。当業者なら、患者のリスクを決定するために、環境リスク要因や個人リスク要因(家族歴、遺伝子構造、習慣)などのリスク要因を評価することができるであろう。
【0067】
医薬組成物及び免疫原性組成物は、治療又は免疫効果を得るために、1回又は複数回投与される。当業者なら、1回投与の場合でも複数回投与の場合でも、投与量を容易に決定できるであろう。適切な投与量は、患者の健康状態、病気の進行又は回復状態、投与経路、及び使用される剤形に応じて決定される。
【0068】
次の実施例は、本発明の様々な実施形態を説明するためのものである。ただし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0069】
(実施例1:合成ペプチド)
【0070】
この研究で使用される各ペプチドは、Genemed Synthesis Inc(CA)から購入した。ペプチドは、フルオレニルメトキシカルボニル化学反応、固相合成、及び高速液体クロマトグラフィーによる精製によって合成される。ペプチドの品質は、高速液体クロマトグラフィー分析によって評価される。また、予想される分子量は、マトリックス支援プラズマ脱離質量分析法によって観察される。ペプチドは殺菌され、純度は>90%である。ペプチドは、DMSO内に溶解され、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline:PBS)又は生理食塩水によって5mg/mlの濃度に希釈され、−80℃で保存される。インビトロでの実験では、無関係の対照ペプチド、HLA A24コンセンサスを使用した。
【0071】
(実施例2:細胞株)
【0072】
細胞株は、5%のFCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、2mMのグルタミン、及び2−メルカプトエタノールが追加されたRPMI 1640培地内で、37℃、5%のC0を含んでいる加湿空気中で培養される。SKLY−16は、HLA A0201を発現するヒトB細胞リンパ腫である。また、T2は、ヒト細胞株であり、TAP1及びTAP2を欠いているために、サイトゾルタンパク質由来のペプチドを提示することができない。
【0073】
(実施例3:HLA A0201分子のペプチド結合及び安定性のT2評価)
【0074】
T2細胞(TAP−、HLA A0201+)は、27℃、1×10E6細胞/mlで、5μg/mlのヒトβ2m(Sigma, St Louis, MO)が加えられた、FCSを含まないRPMI培地上で一晩培養される。培養は、様々な最終濃度(50、10、1、0.1μg/ml)の正の対照であるチロシナーゼペプチド或いはテストペプチドの存在下で、又は存在しない状態(すなわち負の対照)で行われる。5μg/mlのブレフェルジンA(Sigma)と培養した4時間後、T2細胞は飽和濃度の抗HLA−A2.1(BB7.2)mAbによって標識化され(4℃、30分間)、その後2回洗浄される。そして、前記細胞は、飽和濃度のFITC結合ヤギIgG F(ab´)2抗マウスIg(Caltag, South San Francisco, CA)によって培養され(4℃、30分間)、その後2回洗浄される。そして、前記細胞は、PBS/1% パラホルムアルデヒドに固定されFACS Calibur細胞蛍光光度計(Becton Dickinson, Immunocytometry systems, San Jose, CA)を使用して分析される。
【0075】
各ペプチド濃度で観察された蛍光の平均強度(mean intensity of fluorescence:MIF)は、ペプチドが存在しない場合に観察されたMIFを引き算した後、ペプチド結合を推定するのに使用される。安定性の分析も、同様にして行われる。時間ゼロで最初のペプチド結合の評価を行った後に、細胞は、フリーペプチドを除去するために、RPMI完全培地内で洗浄される。そして、前記細胞は、0.5μg/mlのブレフェルジンAの継続的な存在下で、2、4、6、及び8時間培養される。安定したペプチド−HLA−A2.1複合体の量は、上記したように、間接的な免疫蛍光分析によって推定される。前記複合体の半減時間は、時間ゼロでの蛍光値の平均強度が50%減少するのに必要と推定される時間である。
【0076】
(実施例4:放射免疫競合分析:Competition Radioimmunoassay)
【0077】
標的T細胞は、1%のウシ血清アルブミン(Fisher Chemicals, Fairlawn, NJ)を含むPBS内で2回洗われる。細胞は、氷上で10/mlで再懸濁され、ペプチドと結合された天然ペプチドの表面は、3mg/mlのベータミクログロブリンの存在下でクエン酸塩−リン酸緩衝液を使用して、0℃で2分間裸にされる。ペレットは、3mg/mlのベータミクログロブリン及び30mg/mlのデオキシリボヌクレアーゼの存在下で、PBS/1% BSA内で、5〜10×10細胞/mlで再懸濁される。そして、200mlのアリコートは、HLA特異的ペプチドと共に、20℃で10分間培養される。
【0078】
125I標識化されたペプチドの結合は、競合する標識化されていないペプチドの有無に関わらず、20℃で30分間行われる。結合された125Iの合計は、PBS/2% BSAを使用した2回の洗浄、及びPBSを使用した1回の洗浄の後に測定される。相対的親和力は、既知の結合ペプチドと対比しての、試験ペプチドの濃度増加の比較によって測定される。ペプチドは、親和力が<500nMのものを使用する。
【0079】
生細胞表面(SKLY−16)における、ペプチドのHLAへの結合の特異性分析は、結合が適切なHLA分子に対してなされ、その特性を制限することを確認するために行われる。これは、過度の標識されていない、同じ又は異なるHLA分子と結合することが知られているペプチドとの比較、同じ又は異なるHLA型を発現する標識T細胞の使用を含んでいる。この分析は、生きている新鮮な又は0.25%パラホルムアルデヒド固定されたヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)、白血病細胞株、及び特異的HLA型のEBV形質転換T細胞に対して行われる。特異的細胞上でMHC分子と結合することが知られているペプチドの相対親和性は、関連するHLA分子(例えば、チロシナーゼ又はHBVペプチド配列)に対する高い親和性が知られている125I標識化されたペプチドに対しての上記した競合分析(competition assay)によって分析される。
【0080】
(実施例5:インビトロでの免疫付与、及びヒトT細胞の培養)
【0081】
インフォームド・コンセント(informed consent)を得た後、HLA A0201ポジティブ健康ドナー及び慢性骨髄性白血病患者由来の末梢血単核細胞を、密度勾配遠心法によって取得する。末梢血樹枝状細胞(dendritic cell:DC)は次のようにして作成する。プラスチック付着法を使用して、末梢血単核細胞全体から、単球に富んだ末梢血単核細胞の破片を単離する。プラスチックに付着したT細胞は、1〜5%の自己血漿、1000U/mLの組み換えヒトインターロイキン(Shering-Plough, NJ)、及び1000U/mLの組み換えヒト顆粒球マクロファージコロニー形成単位(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor:GM-CSF)(Immunex, Seattle)が追加されたRPMI 1640培地内でさらに培養する。
【0082】
培養の2日目及び4日目に、前記培地の一部を、IL−4及びGM−CSFが追加された新鮮な培養培地と交換する。その後、培養は続けられる。6日目に、前記培地の半分を、IL−4、GM−CSF、10μg/mlの組み換えヒト腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)−アルファ(R & D system)、及び、500ng/mlの三量体溶性CD40L(Immunex, Seattle)が追加された培養培地と交換する。9日目に、細胞は採取され、抗原刺激用の単球由来樹枝状細胞として使用される。前記細胞は、その細胞の表面上に、例えばCD80、CD83、CD86、及びHLAクラスI及びIIなどの発現樹枝状細胞関連抗原を生成する(データは示さない)。
【0083】
Tリンパ球は、抗CD11b、抗CD56、CD19モノクローナル抗体(Miltenyi, CA)による除去を用いた陰性選択によって、同一のドナーから分離される。合計で1x10E6の純粋なTリンパ球は、1x10E6の自己樹枝状細胞と培養される。この培養は、24ウエルのプレート内で、10μg/mlの濃度の合成ペプチドを有する5%の加熱不活性化したヒト自己血漿及び2μg/mlのb2ミクログロブリンが追加されたRPMI 1640培地内で、5〜10ng/mLの組み換えヒトDNAIL−7(Genzyme)及び0.1ng/mlのIL−12の存在下で行われる。
【0084】
3日間培養した後、20U/mlのIL−2が加えられる。10日後、1x10E6の細胞は、10ng/mlのIL−7、20U/mlのIL−2、及び10μg/mLの濃度のペプチドと共に、磁気的に単離された自己CD14+ 単球2x10E5を添加することによって、再び刺激される。場合によっては、さらに7日間培養した後に、細胞は同様の方法で、3回目の刺激を受ける。2回目又は3回目の刺激後、CD8T細胞は磁気的に単離され、細胞毒性及びガンマIFN分泌が検査される。
【0085】
(実施例6:ガンマインターフェロンELISPOT)
【0086】
HA−マルチスクリーンプレート(Millipore, Burlington, MA)は、PBS内で100μlのマウス抗ヒトIFNガンマ抗体(10μg/ml;クローン1−D1K, Mabtech, Sweden)によって覆われ、4℃で一晩培養した後、非結合抗体を除去するためにPBSで洗われ、RPMI/自己血漿によって37℃で1時間ブロックされる。95%以上の純度に精製されたCD8+T細胞は、1x10/ウエルの濃度でプレートされる。T細胞は、1x10E4/ウエルのT2細胞によって刺激され、10μg/mlのβ2−ミクログロブリン(Sigma, St. Louis)、及び50μg/mlのテストペプチド、陽性対照インフルエンザ基質ペプチド、又は無関係の対照ペプチドによってパルスされる(最終量は100〜200μl/ウエル)。対照ウエルは、CD8+細胞の有無に関わらず、T2細胞を含んでいる。さらなる対照は、培地又はCD8+のみに加えて、T2細胞をパルスするのに使用されたペプチドの濃度に対応して希釈されたPBS/5%のDMSOを含んでいる。
【0087】
37℃で20時間培養した後に、プレートはPBS/0.05%のTweenにより広範囲にわたって洗浄され、100μl/ウエルの、ヒトIFN−gに対するビオチン化検出抗体(クローン7−B6−1、Mabtech, Sweden)が2μg/mlで添加される。プレートは、37℃でさらに2時間培養され、スポットの発達が行われる。スポットの数は、KS ELISPOT 4.0ソフトウエア(Carl Zeiss Vision, Germany)を用いたコンピュータ使用ビデオイメージ分析器によって、自動的に測定される。
【0088】
(実施例7:細胞毒性分析)
【0089】
特異的CTLの存在は、標準的な4h−クロム遊離分析によって測定した。4x10E6の標的は、Na51CrO(NEN Life Science Products, Inc. Boston, MA)の300μCiによって標識化した(37℃で1時間)。洗浄後、2x10E6/mlの細胞を、3μg/mlのβミクログロブリンの存在下で、10μg/mlの合成ペプチドと共に又は無しで、20℃で2時間培養した。遠心分離による洗浄後、標的T細胞は、5x10E4細胞/mlの完全培地内で再懸濁され、エフェクター細胞と共に、E/T(effector/target ratio)が100:1〜10:1の範囲で、96ウエルU底プレート(Becton Dickinson (TR), NY)に5x10E3細胞/ウエルでプレートされた。プレートは、5%のCO内で、37℃で5時間培養された。
【0090】
上澄みを採取し、ガンマカウンターで放射活性を測定した。特異的溶解の割合は、次の式から決定した。
100×{(実験的放出−自然的な放出)/(最大放出−自然放出)}
最大放出は、2.5% Triton X−100内の標的の溶解から判断した。
【0091】
(実施例8:HLA 0201と結合する可能性が高いペプチドの識別及び生成)
【0092】
95%のHLA−A02対立遺伝子を含むサブタイプである、HLA A0201と結合する潜在能力を有するペプチドの、ヒトb3a2及びb2a2融合タンパク質のアミノ酸配列をスキャンした。HLA−A0201は、白人集団の約40%で発現した。天然b3a2又はb2a2融合タンパク質内では、ペプチドの予測される半減時間の1分以上では、高い又は中間の親和性を有するペプチドは同定されなかった。コンセンサスHLA 0201結合モチーフを示さないペプチドが説明されたが、それのMHCに対する親和力は弱い。
【0093】
この情報に基づいて、及びhttp://bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin!molbio/ken parker comboformから入手可能なBioinformatics & Molecular Analysis Section(National Institutes of Health, Washington, DC)のソフトウエアを使用して行う。このソフトウエアは、HLAクラスI分子からの予測される半減時間分離係数(predicted half-time dissociation coefficient)で、9−mer又は10−merペプチドをランク付けする(Pinilla, et al. Curr Opin Immunol, 11(2): p. 193-202 (1999))。類似体ペプチドは、予測される半減時間の1分間以上アンカーアミノに隣接する、アミノ酸配又はさらなるアミノ酸の一方又は両方の変化によってデザインされる。1つ又は2つのアミノ酸置換は、HLA A0201分子について予測される比較的高い結合スコアを有する配列を生成するための位置1,2,6及び9での好ましい残基(表1)であるHLA A0201で行われる。
【0094】
HLA A0201結合するための予測される半減時間は、4つの合成ペプチドでは240分以上であり、7つの合成ペプチドでは240分未満である。全ての天然ペプチドの半減時間は1時間未満であると予想される。ほとんどの置換は、主要な又は第2のアンカーモチーフ、すなわち位置2にあるロイシン、又は位置9或いは位置6にあるバリンに影響を与える(しかし、場合によっては、位置1でチロシンが置換される)。この置換は、位置2のアンカー残基の結合を安定させることが知られている。
【0095】
(実施例9:b2a2及びb3a2天然ペプチドの合成ペプチド類似物によるHLA A0201の結合)
【0096】
MHCクラスI−制限ペプチドの免疫原性は、生細胞表面にあるMHCクラスI分子と結合する及び安定させる能力を必要とする。さらに、上記のコンピュータ予測モデルの予測精度は、60〜80%にすぎない。ペプチドとHLA A0201分子との間の相互作用強度の直接的な測定は、抗原輸送不完全(TAP2−)HLA A0201 ヒトT2細胞を用いる従来の結合及び安定性分析を使用して行われる。T2細胞欠乏TAP機能及びその結果は、シトソル内で生成された抗原ペプチドを有する適切な挿入クラスI分子のローディングに不具合がある。体外から加えられた、不耐熱性でHLA−A2分子が空のペプチドはそれらを安定させ、特異的mAb(例えばBB7.2)によって認識されるHLA A0201表面のレベルを増加させる。
【0097】
高い結合スコアを有するようにデザインされたペプチドの11の内の7つは、T2分析(図1A−1B)によって測定すると、HLA A0201分子に対して比較的高い結合親和性を示す。結合スコアと結合親和力との間のおおよその相互関係が確立された。したがって、生細胞においてMHCクラスI分子に結合するペプチドを予測するために、コンピュータで作成された結合スコアの部分的な有用性を示す。こららのペプチドの内のいくつかは、結合親和力は、CTLを引き起こす最も強力な既知の抗原であるインフルエンザなどのウイルス抗原の結合親和力と同じオーダーであることを実証する。4つの場合で、コンピュータで予測された半減時間と、T2安定化との間の良好な相互関係は見られなかった。
【0098】
b3a2,p210C由来のペプチドの1つは、予測スコアが良好でなかったペプチドから突然変異したものである。しかしながら、天然配列は、HLA A0201と弱くではあるが、前述したCMLA2ペプチドと同じレベルで結合可能である。p210Cをデザインするために、位置2にある中性アラニンはロイシンによって置換され、位置9にあるセリンはバリンによって置換される。
【0099】
p210Cは、T2結合分析データ(図1A)と相関関係がある高いBIMASスコアを持っている。p210Cは、以前にYotondaらによって開示された配列に由来するペプチドである。CMLA2は、弱いバインダーであることがT2分析によって分かっている。p210Fの場合は、位置1及び2にある2つのセリンは、チロシン及びロイシンによって置換される。BIMAS予測は、700フォルドの向上を示し、HLA A0201分子(図1A)への優れた親和性が明らかになっているT2細胞と結合する。
【0100】
b2a2由来のペプチドの1つは、HLA A0201への良好な結合を予測できないペプチドから全て生成される。3つのペプチドb2a2 A3−A5(表1)は、HLA A0201分子(図1B)と良好に結合する。これら3つのペプチドは、位置1及び2においてチロシン−ロイシン配列置換を有しており、位置6及び9においてバリン置換を有している。
【0101】
(実施例10:HLA A0201由来のb2a2及びb3a2合成ペプチド類似体の解離時間の評価)。
【0102】
ペプチド抗原の免疫原性は、MHC/ペプチド複合体の低い解離速度に依存する。HLA A0201とb3a2類似体ペプチドとの間に形成された複合体の安定性は、T2細胞上で長期にわたって測定された。飽和量のHLA A0201結合ペプチド及びヒトβ2 ミクログロブリンとのT2細胞の一晩の培養により、HLA A0201分子の表面発現は増加する。ペプチドの除去、及びタンパク質の合成を抑制するためのにブレフェルジンAを添加した後、T2細胞は37℃で培養する。そして、細胞表面でのHLA A0201分子の量を、様々な培養後の時間に測定する。
【0103】
各ペプチド/HLA A0201複合体の安定性は、その後、親和性及び半減時間が高いことが知られているチロシナーゼDペプチド又はHIV−gagペプチドに見られる安定性と比較して、正常化する。ペプチドp210A及びp210Bと共に形成されたHLA A0201複合体は不安定であり、37℃での培養で、1時間以内に基礎濃度に達する。対照的に、ペプチドp210C、p210D、p210E及びp210Fは、6〜8時間は比較的安定的である複合体を形成する。
【0104】
(実施例11:b2a2及びb3a2合成ペプチド類似体に対するCD8免疫反応の誘導)。
【0105】
MHC分子の親和性はペプチド免疫原性に必要なので、適切なT細胞受容体を有する反応性前駆体T細胞の存在が必要とされている。単球由来DC、CD14+細胞(APCなど)、及び精製されたT細胞を有する、最適化されたT細胞エクスパンション・システムを使用して、合成b3a2及びb2a2類似体のペプチド特異的CTLを刺激する能力を試験した。10の健康的なHLA A0201ドナーと、5人のCML患者について試験を行った。
【0106】
10人中5人の患者は、免疫付与に応答して、異なるペプチドをパルス化された標的としてのT細胞と接触したときにIFNガンマを分泌するT細胞を生成する。p210D及びp210Eは、ある試験されたドナーで免疫反応を生成する。また、p210C及びp210Fは、より一致及び高い免疫反応を生成する(図2A)。応答は、CD8+を単離した後のペプチド刺激の2番目又は3番目のときに、又は精製されたCD3+Tで見られる。
【0107】
スポット数は、T2分析で測定したところ、HLA 0201分子と高い親和性で結合するペプチドよりも常に高い。さらに重要なのは、新規な合成類似体の存在下で作成されたT細胞は、天然配列を認識することができる。p210C及びp210Fは、それらの各天然配列を認識するために、T細胞を刺激することができる(図2A)。p210F由来の天然配列であるCML A2は、天然の弱いバインダーであり、慢性骨髄性白血病芽球の表面に自然に発現できるという間接的な証拠がある。異なるドナーを使用したのにも関わらず、p210A及びp210Bに対する免疫反応は全く生成されない。結果は、MHCに対する親和性の減少と一致する。
【0108】
慢性期の慢性骨髄性白血病患者HLA A0201は、T細胞のp210C刺激に反応して、T細胞のp210cn天然ペプチドとの交差反応性を示す。応答は、インビトロでのT細胞刺激の2回目のときに見られる(図2B)。
【0109】
b2a2由来のペプチドは、CD3+ T細胞のガンマ・インターフェロン分泌によって測定すると、大きな免疫反応を示す。ペプチドb2a2 A3、A4及びA5は、2つの健康的なドナーで免疫反応を生成する(図3A)。b2a2 A3に対する反応は、ドナー間でより安定している。b2a2 A3の存在下で生成されるT細胞は、オリジナルの天然配列を同定することができる。天然ペプチド配列はHLAに対する弱い/中間のバインダーなので、これは特に関連性がある。繰り返すと、慢性期のCML患者HLA A0201は、T細胞のb2a2 A3刺激に反応して、b2a2 A天然ペプチドによるT細胞交差反応性を示す(図3B)。
【0110】
ガンマ・インターフェロンELISPOTは、機能的な致死と常に関連しているわけではない。そのため、類似体ペプチドからいくつかの刺激を得るT細胞株は、ペプチドによってパルス化された標的T細胞系を使用した、従来のクロム51分析でテストされる。p210C(図4A)及びb2a2 A3(図4B)の存在下で、インビトロで生成されたT細胞は、特異的ペプチドによってパルス化されたT2細胞系を死滅させることができるが、ペプチドなしでは又は対照ペプチドでは死滅させることができない。この実験は、それぞれb3a2又はb2a2転座を示す、慢性骨髄性白血病細胞系又はCML芽球に対応したHLAを使用しても行われる。大きな細胞毒性が生成され、天然ペプチドが自然に処理されない及び/又は白血病細胞の表面上に十分に発現しない可能性を高める。
【0111】
(実施例12:WT1癌タンパク質由来の合成ペプチド類似体による、HLA A0201及びA0301の結合)。
【0112】
TAP 1/2ネガティブ細胞株(T2)を使用した熱安定化分析、及び、Raji A0301細胞を使用した修正プロトコル(modified protocol)は、HLA A0201又はA0301分子に対する良好なバインダーであると予測されるいくつかのペプチドが、MHCクラスI A0201又はA0301分子を安定化させることを示す(表2)。WT1天然ペプチドよりも良好にHLA A0201と結合することが予測される全ての合成類似体WT1−A1、Bl、Cl、及びD1は、WT1−A、−B、C、及びDと比べると同等の又は向上した結合を示す(図5A)。WT1−D1は、対照と同様であるWT1−Dよりも、HLA A0201に対する著しく高いレベルの結合を示す。A3 WT1−A、−B、C、及びDのHLA A0301結合の比較は、それらの3つの類似体の各々は比較的同様の結合を示す(図5B〜5E)。
【0113】
(実施例13:WT1癌タンパク質由来の合成ペプチド類似体に対するCD8又はCD3免疫反応の誘導)。
【0114】
細胞は、主に、GM−CSF、IL−4、TNFアルファ、PGE2、及びCD40Lの存在下で生成された、自己単球由来、ペプチドによってパルス化された樹枝状細胞によって刺激される。そして、IL−2及びIL−7の存在下で、ペプチドによってパルス化されたCD14+単球で再度刺激される。2〜4時間の刺激後、CD8+ CTL株は、IFNアルファ ELISPOT、又は、パルス化されたHLA対応白血病細胞株を利用したクロム遊離分析により評価される(図6A〜6B)。いくつかの類似体ペプチドは、より強い免疫反応、すなわち天然ペプチドよりもCD8T細胞前駆体の頻度が増加した反応を生成する(図7A〜7D)。新規な合成ペプチドにより刺激されたCD8+T細胞は、WT1天然ペプチド配列と交差反応し、HLAに対応する慢性骨髄性白血病芽球(図8A〜8B)を死滅させる。
【0115】
前記した文献は、次の通りである。
(1)Kessler et al. J Exp Med, 185 (4): p. 629-40 (1997).
(2)Dyallet al. J Exp Med, 188 (9): p. 1553-61 (1998).
(3)Valmori et al. J Immunol, 165 (1): p. 533-8 (2000).
(4)Valmori et al. J Immunol, 164 (2): p. 1125-31 (2000).
【0116】
上記の刊行物および特許出願の全ては、ここで言及することにより本明細書の一部とする。
【0117】
以上、本発明の実施例を示したが、特許請求の範囲で規定された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その形態や細部に種々の変更を加え得ることは勿論である。したがって、本発明の細部の実施にあたっては、当業者は、開示された実施例に様々な改良を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1A】b3a2転座により得られるペプチドを使用したT2安定性分析を示す。
【図1B】b2a2転座により得られるペプチドを使用したT2安定性分析を示す。
【図2A】p210C及びp210Fペプチドを使用した、健康なHLA A0201ドナーのCD8+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図2B】p210Cペプチドを使用した、慢性期CML患者HLA A0201のCD8+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図3A】b2a2 A3〜A5ペプチドを使用した、健康なHLA A0201ドナーのCD3+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図3B】b2a2 A3ペプチドを使用した、慢性期の慢性骨髄性白血病患者のHLA A0201のCD8+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図4A】p210C、p210F及びp190Bペプチドを使用した、健康なHLA A0201ドナー由来T細胞の細胞毒性分析の結果を示す。
【図4B】b2a2 A3ペプチドを使用した、健康なHLA A0201ドナー由来T細胞の細胞毒性分析の結果を示す。
【図5A】天然及び合成WT1ペプチドのHLA A0201細胞への結合を示す。
【図5B】天然及び合成WT1ペプチドのHLA A0301細胞への結合を示す。
【図5C】天然及び合成WT1ペプチドのHLA A0301細胞への結合を示す。
【図5D】天然及び合成WT1ペプチドのHLA A0301細胞への結合を示す。
【図5E】天然及び合成WT1ペプチドのHLA A0301細胞への結合を示す。
【図6A】天然及び合成ペプチドによりパルス化されたT2細胞に対する健康HLA A0201ドナーのCD3+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図6B】天然及び合成ペプチドによりパルス化されたT2細胞に対する健康HLA A0201ドナーの細胞毒性の結果を示す。
【図7A】天然及び合成ペプチドを使用した、健康HLA A0201ドナーのCD8+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図7B】天然及び合成ペプチドを使用した、健康HLA A0201ドナーのCD3+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図7C】天然及び合成ペプチドを使用した、健康HLA A0201ドナーのCD3+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図7D】天然及び合成ペプチドを使用した、健康HLA A0201ドナーのCD3+ガンマ・インターフェロンELISPOTの結果を示す。
【図8A】天然ペプチド配列に存在する、HLAに対応したCML芽球に対する、HLA A0201ドナー由来の合成 WT1 A1ペプチドによって刺激されたCD8+T細胞を使用した、細胞毒性分析の結果を示す。
【図8B】天然ペプチド配列に存在する、HLAに対応したCML芽球に対する、HLA A0201ドナー由来の合成 WT1 A1ペプチドによって刺激されたCD8+T細胞を使用した、細胞毒性分析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ペプチドであって、
哺乳類の病態生理学的状態を示す細胞上でHLA A0201又はHLA A0301分子と特異的に結合する天然ペプチドの類似体の断片を少なくとも含んでいるアミノ酸配列を有する合成ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の合成ペプチドであって、
前記アミノ酸配列は、前記類似体断片の分解産物である、前記類似体断片の前駆体を含んでいることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項3】
請求項2に記載の合成ペプチドであって、
前記前駆体はbcr−abl融合タンパク質であり、前記類似体断片は前記bcr−abl融合タンパク質の切断点領域をスパンニングすることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項4】
請求項2に記載の合成ペプチドであって、
前記前駆体はWT1であり、前記類似体断片は前記WT1に含まれている天然ペプチド配列を置換することを特徴とする合成ペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載の合成ペプチドであって、
当該合成ペプチドと結合する免疫原性担体をさらに有することを特徴とする合成ペプチド。
【請求項6】
請求項5に記載の合成ペプチドであって、
前記免疫原性担体は、タンパク質、ペプチド、又は抗原提示細胞であることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項7】
請求項6に記載の合成ペプチドであって、
前記タンパク質又はペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン、アルブミン、又はポリアミノ酸であることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項8】
請求項6に記載の合成ペプチドであって、
前記抗原提示細胞は、樹枝状細胞であることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項9】
請求項1に記載の合成ペプチドであって、
前記類似体断片に含まれるアミノ酸の総数は、前記天然ペプチドに含まれるアミノ酸の総数の約70〜130%であることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項10】
請求項9に記載の合成ペプチドであって、
前記類似体断片は、約8〜12個のアミノ酸を有することを特徴とする合成ペプチド。
【請求項11】
請求項1に記載の合成ペプチドであって、
前記類似体断片は、bcr−abl融合タンパク質の切断点領域を含んでいる天然ペプチドに由来することを特徴とする合成ペプチド。
【請求項12】
請求項11に記載の合成ペプチドであって、
前記類似体断片は、p210−b3a2天然ペプチド、p210−b2a2天然ペプチド、又はp190−e1a2天然ペプチドに由来することを特徴とする合成ペプチド。
【請求項13】
請求項12に記載の合成ペプチドであって、
前記p210−b3a2天然ペプチドに由来する前記類似体断片のアミノ酸配列は、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KQSSKALQV(SEQ ID NO: 4)、KLSSKALQV(SEQ ID NO: 5)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、TLFKQSSKV(SEQ ID NO: 9)、及びYLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)から成る群より選択されることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項14】
請求項13に記載の合成ペプチドであって、
前記類似体断片のアミノ酸配列は、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、及びYLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)から成る群より選択されることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項15】
請求項13に記載の合成ペプチドであって、
前記p210−b2a2天然ペプチドに由来する前記類似体断片のアミノ酸配列は、LLINKEEAL(SEQ ID NO: 12)、LTINKVEAL(SEQ ID NO: 13)、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)、YLINKEEAV(SEQ ID NO: 15)、及びYLINKVEAL(SEQ ID NO: 16)から成る群より選択されることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項16】
請求項15に記載の合成ペプチドであって、
前記類似体断片のアミノ酸配列は、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)であることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項17】
請求項1に記載の合成ペプチドであって、
前記類似体断片は、WT1タンパク質を含んでいる天然ペプチドに由来することを特徴とする合成ペプチド。
【請求項18】
請求項17に記載の合成ペプチドであって、
前記WT1天然ペプチドに由来する前記類似体断片のアミノ酸配列は、YMFPNAPYL(SEQ ID NO: 18)、YLGEQQYSV(SEQ ID NO: 20)、YLLPAVPSL(SEQ ID NO: 22)、YLGATLKGV(SEQ ID NO: 24)、YLNALLPAV(SEQ ID NO: 26)、GLRRGIQDV(SEQ ID NO:28)、KLYFKLSHL(SEQ ID NO: 30)、ALLLRTPYV(SEQ ID NO: 32)、YMTWNQMNL(SEQ ID NO: 34)、NMYQRNMTK(SEQ ID NO: 36)、NMHQRVMTK(SEQ ID NO: 37)、NMYQRVMTK(SEQ ID NO: 38)、QMYLGATLK(SEQ ID NO: 40)、QMNLGVTLK(SEQ ID NO: 41)、QMYLGVTLK(SEQ ID NO: 42)、FMYAYPGCNK(SEQ ID NO: 44)、FMCAYPFCNK(SEQ ID NO: 45)、FMYAYPFCNK(SEQ ID NO: 46)、KLYHLQMHSR(SEQ ID NO: 48)、KLSHLQMHSK(SEQ ID NO: 49)、及びKLYHLQMHSK(SEQ ID NO: 50)から成る群より選択されることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項19】
請求項1に記載の合成ペプチドであって、
前記病態生理学的状態は、白血病、乳癌、リンパ腫、中皮腫、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌から成る群より選択される癌であることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項20】
請求項19に記載の合成ペプチドであって、
前記白血病は慢性骨髄性白血病であることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項21】
請求項1に記載の合成ペプチドであって、
前記哺乳類は人間であることを特徴とする合成ペプチド。
【請求項22】
癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導する方法であって、
ヒト免疫細胞を請求項1に記載の合成ペプチドに接触させて、前記免疫細胞を活性化させるステップと、
前記合成ペプチドの前記類似体断片に少なくとも存在する前記活性化された細胞と反応する前記ヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導するステップとを含んでおり、
前記増殖性T細胞が、前記類似体断片が由来する前記天然ペプチドに存在する前記癌細胞と交差反応することによって、前記ヒト細胞傷害性T細胞の癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応が引き起こされることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、癌患者の生体内で接触することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞はドナーの生体内で接触し、
前記ドナーから前記細胞傷害性T細胞を取得するステップと、
前記細胞傷害性T細胞を癌患者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は体外で接触し、
前記接触ステップの前に、ドナーから前記活性化したヒト免疫細胞を取得するステップと、
前記誘導ステップの前に、前記活性化された免疫細胞を前記癌患者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は体外で接触し、
前記接触ステップの前に、ドナーからヒト免疫細胞を取得するステップと、
前記接触ステップの後に、生体外で形成及び増殖された前記細胞傷害性T細胞を前記癌患者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項22に記載の方法であって、
前記合成ペプチドをエンコードしているDNAを作成するステップと、
前記DNAを発現させるステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
前記DNAは、ベクター又は抗原提示細胞に挿入されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項22に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄細胞、樹枝状細胞、又はマクロファージであることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項22に記載の方法であって、
前記癌細胞は、白血病、乳癌、リンパ腫、中皮腫、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌から成る群より選択される癌に由来することを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、
前記白血病は慢性骨髄性白血病であることを特徴とする方法。
【請求項32】
白血病細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすヒト免疫T細胞の形成及び増殖を誘導するための方法であって、
ヒト免疫細胞を請求項11に記載の合成ペプチドに接触させて、前記免疫細胞を活性化させるステップと、
前記合成ペプチドの前記類似体断片に少なくとも存在する前記活性化された細胞と反応する前記ヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導するステップとを含んでおり、
前記増殖性T細胞が、前記類似体断片が由来する前記天然ペプチドに存在する前記白血病細胞と交差反応することによって、前記ヒト細胞傷害性T細胞の前記白血病細胞に対するヘテロクリティック免疫反応が引き起こされることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、癌患者の生体内で接触することを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞はドナーの生体内で接触し、
前記ドナーから前記細胞傷害性T細胞を取得するステップと、
前記細胞傷害性T細胞を癌患者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は体外で接触し、
前記接触ステップの前に、ドナーからヒト免疫細胞を取得するステップと、
前記誘導ステップの前に、前記活性化された免疫細胞を前記ドナー又は他の受容者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項32に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は体外で接触し、
前記接触ステップの前に、ドナーからヒト免疫細胞を取得するステップと、
前記接触ステップの後に、生体外で形成及び増殖された前記細胞傷害性T細胞を前記ドナー又は他の受容者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項32に記載の方法であって、
前記合成ペプチドをエンコードしているDNを作成するステップと、
前記DNAを発現させるステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、
前記DNAは、ベクター又は抗原提示細胞に挿入されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項22に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄細胞、樹枝状細胞、又はマクロファージであることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項32に記載の方法であって、
前記類似体断片は、p210−b3a2天然ペプチド、p210−b2a2天然ペプチド、又はp190−e1a2天然ペプチドに由来することを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、
前記類似体断片のアミノ酸配列は、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KQSSKALQV(SEQ ID NO: 4)、KLSSKALQV(SEQ ID NO: 5)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、TLFKQSSKV(SEQ ID NO: 9)、YLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)、LLINKEEAL(SEQ ID NO: 12)、LTINKVEAL(SEQ ID NO: 13)、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)、YLINKEEAV(SEQ ID NO: 15)、及びYLINKVEAL(SEQ ID NO: 16)から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項32に記載の方法であって、
前記白血病細胞は、慢性骨髄性白血病細胞であることを特徴とする方法。
【請求項43】
癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導する方法であって、
ヒト免疫細胞を請求項17に記載の合成ペプチドに接触させて、前記免疫細胞を活性化させるステップと、
前記合成ペプチドの前記類似体断片に少なくとも存在する前記活性化された細胞と反応する前記ヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を誘導するステップとを含んでおり、
少なくとも前記合成ペプチドの前記類似体断片に存在している前記活性化された細胞に対して反応性を有する前記ヒト免疫T細胞の形成及び増殖を誘導するステップとを含んでおり、
前記増殖性T細胞が、前記類似体断片が由来する前記天然ペプチドに存在する前記癌細胞と交差反応することによって、前記ヒト細胞傷害性T細胞の癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応が引き起こされることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、癌患者の生体内で接触することを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項43に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞はドナーの生体内で接触し、
前記ドナーから前記細胞傷害性T細胞を取得するステップと、
前記細胞傷害性T細胞を癌患者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項43に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は体外で接触し、
前記接触ステップの前に、ドナーからヒト免疫細胞を取得するステップと、
前記誘導ステップの前に、前記活性化された免疫細胞を前記ドナー又は受容者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項43に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は体外で接触し、
前記接触ステップの前に、ドナーからヒト免疫細胞を取得するステップと、
前記接触ステップの後に、生体外で形成及び増殖された前記細胞傷害性T細胞を前記癌患者又は他の受容者に注入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項43に記載の方法であって、
前記合成ペプチドをエンコードしているDNAを作成するステップと、
前記DNAを発現させるステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、
前記DNAは、ベクター又は抗原提示細胞に挿入されることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項43に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄細胞、樹枝状細胞、又はマクロファージであることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項43に記載の方法であって、
前記類似体断片は、YMFPNAPYL(SEQ ID NO: 18)、YLGEQQYSV(SEQ ID NO: 20)、YLLPAVPSL(SEQ ID NO: 22)、YLGATLKGV(SEQ ID NO: 24)、YLNALLPAV(SEQ ID NO: 26)、GLRRGIQDV(SEQ ID NO:28)、KLYFKLSHL(SEQ ID NO: 30)、ALLLRTPYV(SEQ ID NO: 32)、YMTWNQMNL(SEQ ID NO: 34)、NMYQRNMTK(SEQ ID NO: 36)、NMHQRVMTK(SEQ ID NO: 37)、NMYQRVMTK(SEQ ID NO: 38)、QMYLGATLK(SEQ ID NO: 40)、QMNLGVTLK(SEQ ID NO: 41)、QMYLGVTLK(SEQ ID NO: 42)、FMYAYPGCNK(SEQ ID NO: 44)、FMCAYPFCNK(SEQ ID NO: 45)、FMYAYPFCNK(SEQ ID NO: 46)、KLYHLQMHSR(SEQ ID NO: 48)、KLSHLQMHSK(SEQ ID NO: 49)、及びKLYHLQMHSK(SEQ ID NO: 50)から成る群より選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項43に記載の方法であって、
前記癌細胞は、白血病細胞、又は、乳癌、リンパ腫、中皮腫、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌から成る群より選択される細胞であることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法であって、
前記白血病細胞は、慢性骨髄性白血病細胞であることを特徴とする方法。
【請求項54】
医薬組成物であって、
治療効果がある量の、請求項1に記載の合成ペプチド又は前記合成ペプチドをエンコードしているDNAと、
薬学的に許容される担体とを含んでいる医薬組成物。
【請求項55】
請求項54に記載の医薬組成物であって、
前記DNAは、ベクター又は抗原提示細胞に挿入されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項56】
人間の癌を治療する方法であって、
請求項54に記載の医薬組成物を前記人間に投与するステップと、
少なくとも前記合成ペプチドの前記類似体断片を認識する細胞傷害性T細胞によって、前記類似体断片が由来する前記天然ペプチドに存在する癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすステップとを含み、
前記細胞傷害性T細胞が前記癌細胞を認識又は死滅させることによって、癌を治療することを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、
前記癌は、白血病、乳癌、リンパ腫、中皮腫、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法であって、
前記白血病は、慢性骨髄性白血病であることを特徴とする方法。
【請求項59】
医薬組成物であって、
治療効果がある量の、請求項11に記載の合成ペプチド又は前記合成ペプチドをエンコードしているDNAと、
薬学的に許容される担体とを含んでいる医薬組成物。
【請求項60】
請求項59に記載の医薬組成物であって、
前記DNAは、ベクター又は抗原提示細胞に挿入されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項61】
請求項59に記載の医薬組成物であって、
前記合成ペプチドを含んでいる類似体断片は、p210−b3a2天然ペプチド、p210−b2a2天然ペプチド、又はp190−e1a2天然ペプチドに由来することを特徴とする医薬組成物。
【請求項62】
請求項61に記載の医薬組成物であって、
前記類似体断片のアミノ酸配列は、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KQSSKALQV(SEQ ID NO: 4)、KLSSKALQV(SEQ ID NO: 5)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、TLFKQSSKV(SEQ ID NO: 9)、及びYLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)、LLINKEEAL(SEQ ID NO: 12)、LTINKVEAL(SEQ ID NO: 13)、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)、YLINKEEAV(SEQ ID NO: 15)、及びYLINKVEAL(SEQ ID NO: 16)から成る群より選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項63】
人間の白血病を治療する方法であって、
請求項59に記載の医薬組成物を前記人間に投与するステップと、
少なくとも前記合成ペプチドの前記類似体断片を認識する細胞傷害性T細胞によって、前記類似体断片が由来する前記天然ペプチドに存在する白血病細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすステップとを含み、
前記細胞傷害性T細胞が前記癌細胞を認識又は死滅させることによって、白血病を治療することを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項63に記載の方法であって、
前記白血病は、性骨髄性白血病であることを特徴とする方法。
【請求項65】
医薬組成物であって、
治療効果がある量の、請求項17に記載の合成ペプチド又は前記合成ペプチドをエンコードしているDNAと、
薬学的に許容される担体とを含んでいる医薬組成物。
【請求項66】
請求項65に記載の医薬組成物であって、
前記DNAは、ベクター又は抗原提示細胞に挿入されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項67】
請求項65に記載の医薬組成物であって、
前記合成ペプチドの前記類似体断片のアミノ酸配列は、YMFPNAPYL(SEQ ID NO: 18)、YLGEQQYSV(SEQ ID NO: 20)、YLLPAVPSL(SEQ ID NO: 22)、YLGATLKGV(SEQ ID NO: 24)、YLNALLPAV(SEQ ID NO: 26)、GLRRGIQDV(SEQ ID NO:28)、KLYFKLSHL(SEQ ID NO: 30)、ALLLRTPYV(SEQ ID NO: 32)、YMTWNQMNL(SEQ ID NO: 34)、NMYQRNMTK(SEQ ID NO: 36)、NMHQRVMTK(SEQ ID NO: 37)、NMYQRVMTK(SEQ ID NO: 38)、QMYLGATLK(SEQ ID NO: 40)、QMNLGVTLK(SEQ ID NO: 41)、QMYLGVTLK(SEQ ID NO: 42)、FMYAYPGCNK(SEQ ID NO: 44)、FMCAYPFCNK(SEQ ID NO: 45)、FMYAYPFCNK(SEQ ID NO: 46)、KLYHLQMHSR(SEQ ID NO: 48)、KLSHLQMHSK(SEQ ID NO: 49)、及びKLYHLQMHSK(SEQ ID NO: 50)から成る群より選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項68】
人間の癌を治療する方法であって、
請求項65に記載の医薬組成物を前記人間に投与するステップと、
少なくとも前記合成ペプチドの前記類似体断片を認識する細胞傷害性T細胞によって、前記類似体断片が由来する前記天然ペプチドに存在する癌細胞に対するヘテロクリティック免疫反応を引き起こすステップとを含み、
前記細胞傷害性T細胞が前記癌細胞を認識又は死滅させることによって、癌を治療することを特徴とする方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法であって、
前記癌は、白血病、乳癌、リンパ腫、中皮腫、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項70】
請求項69に記載の方法であって、
前記白血病は、慢性骨髄性白血病であることを特徴とする方法。
【請求項71】
免疫原性組成物であって、
免疫効果がある量の、請求項1に記載の合成ペプチドと、
薬学的に許容される担体、補助剤、希釈剤、又はそれらの組み合わせとを含んでいる免疫原性組成物。
【請求項72】
請求項71に記載の免疫原性組成物であって、
前記免疫原性担体は、前記合成ペプチドと結合する、タンパク質、ペプチド、又は抗原提示細胞であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項73】
請求項72に記載の免疫原性組成物であって、
前記タンパク質又はペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン、アルブミン、又はポリアミノ酸であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項74】
請求項72に記載の免疫原性組成物であって、
前記抗原提示細胞は、樹枝状細胞であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項75】
人間のヘテロクリティック免疫反応を誘導する方法であって、
免疫効果がある量の、請求項71に記載の免疫原性組成物を前記人間に投与するステップと、
前記免疫原性組成物によって前記ヒト免疫細胞を活性化するステップと、
前記免疫原性組成物を含んでいる前記合成ペプチドの前記類似体断片に少なくとも存在する活性化された細胞に対するヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を引き起こすステップとを含み、
前記ヒト細胞傷害性T細胞が、前記類似体断片が由来する天然ペプチドに存在する癌含有細胞と交差反応することによって、前記ヘテロクリティック免疫反を引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項76】
請求項75に記載の方法であって、
活性癌を有する前記人間は、癌が寛解している、又は癌が発病する危険性があることを特徴とする方法。
【請求項77】
請求項75に記載の方法であって、
活性癌を有する患者に前記細胞傷害性T細胞を提供する前記人間は、癌が寛解している、又は癌が発病する危険性があることを特徴とする方法。
【請求項78】
請求項75に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄細胞、樹枝状細胞、又はマクロファージであることを特徴とする方法。
【請求項79】
前記癌は、白血病、乳癌、リンパ腫、中皮腫、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項80】
請求項79に記載の方法であって、
前記白血病は、慢性骨髄性白血病であることを特徴とする方法。
【請求項81】
免疫原性組成物であって、
免疫効果がある量の、請求項11に記載の合成ペプチドと、
薬学的に許容される担体、補助剤、希釈剤、又はそれらの組み合わせとを含んでいる免疫原性組成物。
【請求項82】
請求項81に記載の免疫原性組成物であって、
前記免疫原性担体は、前記合成ペプチドと結合する、タンパク質、ペプチド、又は抗原提示細胞であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項83】
請求項82に記載の免疫原性組成物であって、
前記タンパク質又はペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン、アルブミン、又はポリアミノ酸であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項84】
請求項82に記載の免疫原性組成物であって、
前記抗原提示細胞は、樹枝状細胞であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項85】
請求項81に記載の免疫原性組成物であって、
前記合成ペプチドの前記類似体断片は、p210−b3a2天然ペプチド、p210−b2a2天然ペプチド、又はp190−e1a2天然ペプチドに由来することを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項86】
請求項85に記載の免疫原性組成物であって、
前記類似体断片は、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KQSSKALQV(SEQ ID NO: 4)、KLSSKALQV(SEQ ID NO: 5)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、TLFKQSSKV(SEQ ID NO: 9)、YLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)、LLINKEEAL(SEQ ID NO: 12)、LTINKVEAL(SEQ ID NO: 13)、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)、YLINKEEAV(SEQ ID NO: 15)、及びYLINKVEAL(SEQ ID NO: 16)から成る群より選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項87】
人間のヘテロクリティック免疫反応を誘導する方法であって、
免疫効果がある量の、請求項81に記載の免疫原性組成物を前記人間に投与するステップと、
前記免疫原性組成物によって前記ヒト免疫細胞を活性化するステップと、
前記免疫原性組成物を含んでいる前記合成ペプチドの類似体断片に少なくとも存在する白血病細胞に対するヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を引き起こすステップとを含み、
前記ヒト細胞傷害性T細胞が、前記類似体断片が由来する天然ペプチドに存在する前記白血病細胞と交差反応することによって、前記ヘテロクリティック免疫反を引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項88】
請求項87に記載の方法であって、
活性癌を有する前記人間は、癌が寛解している、又は癌が発病する危険性があることを特徴とする方法。
【請求項89】
請求項87に記載の方法であって、
活性癌を有する患者に前記細胞傷害性T細胞を提供する前記人間は、癌が寛解している、又は癌が発病する危険性があることを特徴とする方法。
【請求項90】
請求項87に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄細胞、樹枝状細胞、又はマクロファージであることを特徴とする方法。
【請求項91】
請求項87に記載の方法であって、
前記白血病細胞は、慢性骨髄性白血病細胞であることを特徴とする方法。
【請求項92】
免疫原性組成物であって、
免疫効果がある量の、請求項17に記載の合成ペプチドと、
薬学的に許容される担体、補助剤、希釈剤、又はそれらの組み合わせとを含んでいる免疫原性組成物。
【請求項93】
請求項92に記載の免疫原性組成物であって、
前記免疫原性担体は、前記合成ペプチドと結合する、タンパク質、ペプチド、又は抗原提示細胞であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項94】
請求項93に記載の免疫原性組成物であって、
前記タンパク質又はペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン、アルブミン、又はポリアミノ酸であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項95】
請求項93に記載の免疫原性組成物であって、
前記抗原提示細胞は、樹枝状細胞であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項96】
請求項92に記載の免疫原性組成物であって、
前記合成ペプチドの前記類似体断片は、YMFPNAPYL(SEQ ID NO: 18)、YLGEQQYSV(SEQ ID NO: 20)、YLLPAVPSL(SEQ ID NO: 22)、YLGATLKGV(SEQ ID NO: 24)、YLNALLPAV(SEQ ID NO: 26)、GLRRGIQDV(SEQ ID NO:28)、KLYFKLSHL(SEQ ID NO: 30)、ALLLRTPYV(SEQ ID NO: 32)、YMTWNQMNL(SEQ ID NO: 34)、NMYQRNMTK(SEQ ID NO: 36)、NMHQRVMTK(SEQ ID NO: 37)、NMYQRVMTK(SEQ ID NO: 38)、QMYLGATLK(SEQ ID NO: 40)、QMNLGVTLK(SEQ ID NO: 41)、QMYLGVTLK(SEQ ID NO: 42)、FMYAYPGCNK(SEQ ID NO: 44)、FMCAYPFCNK(SEQ ID NO: 45)、FMYAYPFCNK(SEQ ID NO: 46)、KLYHLQMHSR(SEQ ID NO: 48)、KLSHLQMHSK(SEQ ID NO: 49)、及びKLYHLQMHSK(SEQ ID NO: 50)から成る群より選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項97】
人間のヘテロクリティック免疫反応を誘導する方法であって、
免疫効果がある量の、請求項92に記載の免疫原性組成物を前記人間に投与するステップと、
前記免疫原性組成物によって前記ヒト免疫細胞を活性化するステップと、
前記免疫原性組成物を含んでいる前記合成ペプチドの前記類似体断片に少なくとも存在する活性化された細胞に対するヒト細胞傷害性T細胞の形成及び増殖を引き起こすステップとを含み、
前記ヒト細胞傷害性T細胞が、前記類似体断片が由来する天然ペプチドに存在する癌含有細胞と交差反応することによって、前記ヘテロクリティック免疫反を引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項98】
請求項97に記載の方法であって、
活性癌を有する前記人間は、癌が寛解している、又は癌が発病する危険性があることを特徴とする方法。
【請求項99】
請求項97に記載の方法であって、
活性癌を有する患者に前記細胞傷害性T細胞を提供する前記人間は、癌が寛解している、又は癌が発病する危険性があることを特徴とする方法。
【請求項100】
請求項97に記載の方法であって、
前記ヒト免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄細胞、樹枝状細胞、又はマクロファージであることを特徴とする方法。
【請求項101】
請求項97に記載の方法であって、
前記癌は、白血病、乳癌、リンパ腫、中皮腫、肺癌、睾丸癌、及び卵巣癌から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項102】
請求項97に記載の方法であって、
前記白血病細胞は、慢性骨髄性白血病細胞であることを特徴とする方法。
【請求項103】
合成ペプチドであって、YLKALQRPV(SEQ ID NO: 2)、KQSSKALQV(SEQ ID NO: 4)、KLSSKALQV(SEQ ID NO: 5)、KLLQRPVAV(SEQ ID NO: 7)、TLFKQSSKV(SEQ ID NO: 9)、YLFKQSSKV(SEQ ID NO: 10)、LLINKEEAL(SEQ ID NO: 12)、LTINKVEAL(SEQ ID NO: 13)、YLINKEEAL(SEQ ID NO: 14)、YLINKEEAV(SEQ ID NO: 15)、及びYLINKVEAL(SEQ ID NO: 16)から成る群より選択される1つ又は複数のアミノ酸配列を有することを特徴とする合成ペプチド。
【請求項104】
合成ペプチドであって、NMYQRNMTK(SEQ ID NO: 36)、NMHQRVMTK(SEQ ID NO: 37)、NMYQRVMTK(SEQ ID NO: 38)、QMYLGATLK(SEQ ID NO: 40)、QMNLGVTLK(SEQ ID NO: 41)、QMYLGVTLK(SEQ ID NO: 42)、FMYAYPGCNK(SEQ ID NO: 44)、FMCAYPFCNK(SEQ ID NO: 45)、FMYAYPFCNK(SEQ ID NO: 46)、KLYHLQMHSR(SEQ ID NO: 48)、KLSHLQMHSK(SEQ ID NO: 49)、及びKLYHLQMHSK(SEQ ID NO: 50)から成る群より選択される1つ又は複数のアミノ酸配列を有することを特徴とする合成ペプチド。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2007−516966(P2007−516966A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542741(P2006−542741)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/040347
【国際公開番号】WO2005/053618
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(599158890)スローン−ケターリング インスティチュート フォー キャンサー リサーチ (5)
【Fターム(参考)】